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【発明の名称】 マルチシートの補修方法
【発明者】 【氏名】山本 泰弘

【氏名】川端 一誠

【要約】 【課題】既設のマルチシートの破損部分の改良された補修方法であって、多大の労力を要せずに簡単に行うことが出来、補修部分からマルチシート片が風によって吹き飛ばされるという事故が全くなく、しかも、補修部分のマルチシート片を回収する必要もない、改良されたマルチシートの補修方法を提供する。

【解決手段】既設のマルチシートの破損部分の土壌表面に生分解性ポリマー又は当該ポリマーが含有された組成物から成る補修材を散液して被膜を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 既設のマルチシートの破損部分の土壌表面に生分解性ポリマー又は当該ポリマーが含有された組成物から成る補修材を散液して被膜を形成することを特徴とするマルチシートの補修方法。
【請求項2】 生分解性ポリマーがシェラック、ガムロジン、ウッドロジンの群から選ばれた1種以上である請求項1に記載の補修方法。
【請求項3】 補修材が生分解性ポリマーと水および/または低級アルコールとを含有する組成物である請求項1又は2に記載の補修方法。
【請求項4】 補修材がシェラックと低級アルコールを含有する組成物である請求項1〜3の何れかに記載の補修方法。
【請求項5】 補修材がコロイダルシリカを含有する請求項1〜4の何れかに記載の補修方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マルチシートの補修方法に関し、詳しくは、既設のマルチシートの破損部分の改良された補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、地熱の放散を抑制し、雑草の生育を阻止する等のため、植物生育地域の土壌表面にマルチシート(温床シート又はフイルム)を敷設(マルチング)する植物の生育調節方法が知られている。そして、この方法は、マルチ敷設機でマルチシートを土壌表面に敷設し、風で飛ばない様にマルチシートの上に重し用の土を載せる作業により行われる。
【0003】ところで、土壌表面に敷設されたマルチシートが破損して土壌表面が露出した場合、局所的に地熱放散抑制効果などが発現されない個所が生じるため、マルチシートを補修する必要がある。
【0004】従来、マルチシートの補修方法としては、破損部分の大きさに見合った寸法に切り取ったマルチシート片を粘着剤で固定する方法が知られている。
【0005】しかしながら、上記の補修方法による場合は、多大の労力が掛かる他、粘着剤の劣化によりマルチシート片が風によって吹き飛ばされ、しかも、吹き飛ばされたマルチシート片が電線に絡んで環境を悪化させ、また、道路に吹き飛ばされたマルチシート片によって交通が妨害される等の重大な問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、既設のマルチシートの破損部分の改良された補修方法であって、多大の労力を要せずに簡単に行うことが出来、補修部分からマルチシート片が風によって吹き飛ばされるという事故が全くなく、しかも、補修部分のマルチシート片を回収する必要もない、改良されたマルチシートの補修方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、次の様な知見を得た。すなわち、近時、植物の生育調節方法として、前記の従来法を完全に否定し、植物生育地域の土壌表面にマルチシートを形成する方法が提案されている。この方法によれば、植物生育地域の土壌表面にマルチシート形成用ポリマー又はその組成物を散液してマルチシートを形成する。従って、前記の従来法におけるマルチングの労力を皆無にすることが可能である。
【0008】そして、例えば、特開平11−92304号公報に記載の方法ではポリ乳酸などの生分解性ポリマーの溶融液または溶液が使用され、特開平2000−4687号公報に記載の方法ではアスファルト乳剤などの樹脂エマルジョンが使用されている。また、特開平11−299369号公報には、生分解性ポリマーとして澱粉やポリビニルアルコール等の数多くの親水性ポリマーが提案され、また、溶媒(分散媒)として水やアルコールも提案されている。
【0009】本発明は、上記の方法を巧みに利用することにより着想されたものであり、植物生育地域の土壌表面にマルチシートを形成する植物の生育調節方法を当該方法が否定した従来法の補修方法として利用せんとしたものである。更に、この様な利用は、既設のマルチシートの破損部分の土壌表面にマルチシートを形成した場合、形成された補修部マルチシートが直接土壌に絡み合うため、既設のマルチシートが風で飛ばない様に土壌に固定する機能(アンカー効果)を発揮するとの新規な知見に基づくものである。そして、既設のマルチシートの撤去の際、土壌に絡み合った補修部マルチシートが土壌表面に残存しても何ら問題が起こらない様に生分解性ポリマーが使用されている。
【0010】すなわち、本発明は、上記の様な巧みな着想と新規な知見に基づき達成されたものであり、その要旨は、既設のマルチシートの破損部分の土壌表面に生分解性ポリマー又は当該ポリマーが含有された組成物から成る補修材を散液して被膜を形成することを特徴とするマルチシートの補修方法に存する。
【発明の実施の形態】
【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、既設のマルチシートの破損部分の補修方法である。既設のマルチシートは、通常、ポリ塩化ビニルやポリエチレンで構成される。斯かる、マルチシートは、前述の通り、マルチ敷設機で植物生育地域の土壌表面に敷設され、風で飛ばない様に、その上に重し用の土が載せられる。植物生育地域は、平畝、半台形畝、半円形畝の何れであってもよく、また、雑草の発生を阻止するために畝以外であってもよい。ところで、時として、土壌表面に敷設されたマルチシートが破損して土壌表面が露出する場合がある。
【0012】本発明の補修方法は、上記の様なマルチシートの破損部分の土壌表面に補修材を散液して被膜を形成する。従って、本発明においては、破損部分の大きさに見合った寸法に切り取ったマルチシート片を粘着剤で固定する従来法に比し、手間暇が掛からず大幅な省力化が達成される。また、上記の様に形成された補修部マルチシートは、直接土壌に絡み合い、既設のマルチシートに対してアンカーとして作用する。その結果、既設のマルチシートが風で飛ばされない様になる。
【0013】本発明の補修方法においては、生分解性ポリマー又は当該ポリマーが含有された組成物から成る補修材を使用する必要がある。一般に、セルロース、澱粉などの天然高分子は、生体系において、加水分解とそれに続く酸化によって分解されることが知られており、このことから、生分解性ポリマーは、加水分解され易い結合を主鎖中に含むという構造上の特徴を持っているとされている。そして、例えば、特開平11−92304号公報、特開平11−299369号公報には、各種の生分解性ポリマーが提案されている。
【0014】本発明において、補修材に使用する生分解性ポリマーの種類は特に制限されず、前記各公報に記載されたものを含む各種の生分解性ポリマーを使用することが出来、その具体例としては次の通りである。すなわち、天然物として知られる生分解性ポリマーとしては、グッタペルカ、サンダラック樹脂、シェラック、カゼイン、膠(ゼラチン)、ジェルトン、ソルバ、チクル、ダンマル樹脂、ミルラ、ペルーバルサム、ロジン(ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等)、レシチン、セルロース、リグニン、ギルソナイト、ゴム等が挙げられ、合成品として知られる生分解性ポリマーとしては、硝化綿、エチルセルロース、γ−ラクトン、乳酸などが挙げられる。
【0015】本発明においてては、耐雨水性に優れ且つ適切な生分解速度を有するとの観点から、シェラック、ガムロジン、ウッドロジンの群から選ばれた1種以上のポリマーが好適である。
【0016】本発明において、補修材の散液方法は特に制限されずポリマーの溶融で散液しても溶液または分散液(エマルジョン)で散液してもよい。しかしながら、ポリマーの溶融を散液する場合は散液ノズルの加熱手段が必要であり、また、クロロホルム、塩化メチレン等の溶媒によって調製された溶液を散液する場合は散液時の環境・衛生問題が懸念される。そこで、本発明においては、生分解性ポリマーと水および/または低級アルコールとを含有する組成物から成る補修材を散液するのが好ましい。
【0017】前記のシェラック、ガムロジン、ウッドロジンは、水に不溶であるが低級アルコールに溶解する。しかしながら、シェラックは、カルボン酸基を含む樹脂酸の1種であり、塩に中和することにより水に溶解させることが出来る。また、ガムロジン及びウッドロジンは、シェラックの塩の存在下で水に分散させることが出来る。これはシェラック塩による分散作用に基づくものと考えられる。シェラックの中和用アルカリとしては、例えば、アンモニア、草木灰、水酸化カリウム等が好適に使用される。
【0018】また、上記のシェラックには、熱溶融法、ソーダ法、溶剤抽出法によって得られ各種のシェラックが知られている。本発明においては、何れの種類のシェラックであってもよく、特にアルコールによって精製されたシェラック(アルコールシェラック)が好適に使用される。
【0019】低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の炭素数が通常6以下のアルコールが使用される。これらの中ではエタノールが好適に使用される。
【0020】補修材用組成物としては、得られるシートの強度の点からシェラックと低級アルコールを含有する組成物(シェラックの低級アルコール溶液または当該溶液を含む組成物)が特に好適である。しかしながら、アルカリ中和された水溶性シェラックと水とを含有する組成物、または、アルカリ中和された水溶性シェラック及びロジンと水を含有する組成物であっても十分に使用し得る。ロジンに対する水溶性シェラックの割合は、通常1〜100重量%、好ましくは10〜50重量%である。
【0021】補修材用組成物中の生分解性ポリマーの含有量は、通常1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%である。ポリマーの含有量が上記の範囲より低い場合はマルチシート形成時の散液量が多くする必要があり、上記の範囲より高い場合は組成物の粘度が高くなりすぎる。
【0022】本発明においては、遮光によって雑草の発生を抑制し、太陽熱の吸収によって地表面の温度をコントロールするため、補修材用組成物中に炭素系材料を含有させることが出来る。炭素系材料としては、例えば、備長炭、竹炭、モミガラ燻炭、広葉樹木炭、針葉樹木炭、椰子殻炭などの各種の炭の他、黒鉛、コークス、カーボンブラック等が挙げられる。また、遮光材としては、上記の他に、弁柄、酸化チタン、水酸化鉄などの着色材を使用することも出来る。
【0023】補修材組成物中の炭素系材料や上記の着色剤の含有量は、通常1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%である。炭素系材料の含有量が上記の範囲より低い場合はその効果が不十分であり、上記の範囲より高い場合は組成物の粘度が高くなりすぎる。また、炭素系材料の含有量は、マルチシートの強度の観点から、生分解性ポリマーに対して10重量倍以下とするのがよい。
【0024】本発明においては、種々の目的により、白色、褐色、黄色、黄土色、灰色などに着色されたマルチシートとするため、補修材用組成物中に各種の着色材を含有させることが出来る。着色材としては、二酸化チタン、アルミナ、亜鉛華、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ(以上は白色)、ベンガラ、酸化鉄(茶・褐色)、酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄(黄・黄土色)、クレー、カオリン、ケイ酸塩鉱物(白・灰色)、アルミニウム、マイカ、パール顔料(金属光沢)等が挙げられる。補修材組成物中の着色材の含有量は、上記の炭素系材料の場合と同様の理由により同様の範囲とされる。
【0025】本発明においては、補修材用組成物に防腐効果を付与するためリモネンを含有させることが出来る。補修材組成物中のリモネンの含有量は、通常0.05〜50重量%である。更に、本発明においては、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ソルビトール等の可塑剤やN、P、K、Mg、Ca等の肥効成分を適量含有させることが出来る。
【0026】上記の補修材用組成物にはコロイダルシリカを含有させることが好ましい。これにより、前記の無機材料の沈降が抑制され且つ補修材用組成物の保存性が高められる。しかも、マルチシートの耐水性が一層高められ且つ被膜強度が向上する。コロイダルシリカは、水和によって表面にOH基を有するのコロイド懸濁液である。従って、コロイダルシリカは、前述の水および/または低級アルコールの一部または全部として使用することも出来る。
【0027】市販されているコロイダルシリカとしては、デュポン社製の「ルドックス(Ludux)」、モンサント社製の「サイトン(Syton)」、ナルコ社製の「ナルコアグ(Naclcoag)」、日産化学社製の「スノーテックス」等が挙げられる。補修材用組成物中のコロイダルシリカに由来する二酸化ケイ素(SiO2)の含有量は、通常1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%である。二酸化ケイ素の含有量が上記の範囲より低い場合はその効果が不十分であり、上記の範囲より高い場合は補修材用組成物の粘度が高くなりすぎる。また、二酸化ケイ素の含有量は、マルチシートの強度の観点から、生分解性ポリマーに対して50重量倍以下とするのがよい。
【0028】上記の補修材用用組成物は、例えば、ディゾルバー等の攪拌機、ボールミル、ニーダー等の分散機、ホモミキサー等の乳化機を適宜使用し、前記の必要な成分を均質となるまで処理することにより得ることが出来る。補修材用用組成物の粘度は、25℃における測定値として、通常3〜5,000mPa・sとされる。
【0029】補修材として上記の様な補修材用組成物を使用した場合、その散液は、一般に適宜の噴霧装置を使用して行われる。土壌表面に噴霧された組成物は、それに含有される溶媒(例えば水および/低級アルコール)の揮散除去により、1〜120分程度で乾燥されて補修部マルチシートを形成する。斯かる補修部マルチシートは、土壌表面の凹凸に関係なく形成される。補修部マルチシートの厚さは、通常、既設のマルチシートの厚さと同程度にすればよく、その厚さは、通常0.01〜5mmである。
【0030】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例中の「部」は「重量部」を表す。
【0031】製造例1アルコールシェラック40部とエタノール50部とをディゾルバーで60分撹拌して褐色の液体を得た。この褐色液の全量とモミガラ燻炭10部とをダイノミルにて60分間分散処理した後、濾過により粗大粒子を除去し、黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0032】製造例2製造例1において、アルコールシェラック40部の代わりに、アルコールシェラック20部およびガムロジン20部を使用した以外は、製造例1と同様にして黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0033】製造例3シェラックアンモニウム塩20部と水70部とをディゾルバーで60分撹拌して褐色の液体を得た。この褐色液の全量とモミガラ燻炭10部とをダイノミルにて60分間分散処理した後、濾過により粗大粒子を除去し、黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0034】製造例4製造例3において、シェラックアンモニウム塩20部の代わりに、シェラックアンモニウム塩10部およびガムロジン10部を使用した以外は、製造例1と同様にして黒色のマルチシート形成用組成物を得た。
【0035】表1に上記の製造例で得られたマルチシート形成用組成物の組成をまとめて示す。
【0036】
【表1】

【0037】実施例1〜4温室内に形成された4床の畝の上にマルチ敷設機で厚さ約0.03mmのポリ塩化ビニルをマルチングした。そして、展張されたマルチシートの中央部に畝の長手方向に30cmの切り傷を入れて破損させ土壌表面を楕円状に露出させた。そして、露出した土壌表面およびその周囲に製造例1〜4で得られた補修材用組成物をそれぞれ噴霧して1時間放置した。得られた補修部マルチシートの厚さは何れも厚さ約0.03mmとなる様にした。そして、4床の畝ともに朝夕の定期的散水を同一条件で植物の生育区間として4ケ月に亘って繰り返した。その後、ポリ塩化ビニル製のマルチシートを回収し、土壌表面に取り残された補修部マルチシートを土壌中にすき込み、更に8ケ間(合計1年間)に亘って観察を行った。
【0038】製造例1〜4で得られた補修材用組成物を使用した実施例1〜4の場合は、何れも、何れも、散水による補修部マルチシートの溶解や破損などの異常は全く認められず、そして、1年後には補修部マルチシートの残骸は観察されなかった。
【0039】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、既設のマルチシートの破損部分の改良された補修方法であって、多大の労力を要せずに簡単に行うことが出来、補修部分からマルチシート片が風によって吹き飛ばされるという事故が全くなく、しかも、補修部分のマルチシート片を回収する必要もない、改良された補修方法が提供され、本発明の産業的価値は大きい。
【出願人】 【識別番号】591064508
【氏名又は名称】御国色素株式会社
【出願日】 平成12年11月2日(2000.11.2)
【代理人】 【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
【公開番号】 特開2002−136232(P2002−136232A)
【公開日】 平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願番号】 特願2000−335375(P2000−335375)