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【発明の名称】 コンバインのこぎ深さ制御装置
【発明者】 【氏名】山崎 弘章

【氏名】江田 秀弥

【氏名】錦織 将浩

【要約】 【課題】刈取作業を中断した後、刈取り作業を開始する際に、深こぎが発生しないようにしたコンバインのこぎ深さ制御装置を提供する。

【解決手段】刈取作業を開始して、第1の検出手段が刈取られた穀稈を検出した時T2、こぎ深さの制御の開始を遅らせる制御開始遅延時間TAを設定し、このとき、第2の検出手段が先に刈取った穀稈を検出している場合、先に刈取られた穀稈の脱穀を行うための、前記制御開始遅延時間より短いこぎ深さ制御の一時作動時間TBを設定し、一時作動時間経過後、第2の検出手段が新たに刈取られた穀稈を検出した時T5、こぎ深さ制御を再開するようにしたので、刈取部から脱穀部に向けて搬送される穀稈の流れが途切れても、深こぎを発生させることなく、全ての穀稈を適正なこぎ深さで処理できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 刈取った穀稈を刈取部の近傍で検出する第1の検出手段と、脱穀部の近傍で刈取られた穀稈の穂先位置を検出する第2の検出手段とを備え、前記第1の検出手段で穀稈を検出したとき、こぎ深さ制御を行うようにしたコンバインのこぎ深さ制御装置において、第1の検出手段が、穀稈を検出したとき、こぎ深さ制御の開始を遅延させる制御開始遅延時間を設定し、このとき、既に第2の検出手段が穀稈を検出している場合、刈取作業中断前に刈取られ、刈取部と第2の検出手段までの搬送経路に滞留している穀稈の脱穀を行うための、前記制御開始遅延時間より短いこぎ深さ制御の一時作動時間を設定し、前記一時作動時間経過後、前記制御開始遅延時間中に前記第2の検出手段の検出信号が出力されるか、もしくは前記制御開始遅延時間が経過した後、こぎ深さ制御を開始するようにした、ことを特徴とするコンバインのこぎ深さ制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンバインのこぎ深さ制御装置に係り、更に詳しくは、刈取部に穀稈が残った状態で刈取作業を一時中断し、中断時の状態から刈取作業を再開する場合におけるコンバインのこぎ深さ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンバインでは、穀稈の刈取と脱穀を同時に行うため、穀稈の刈取部に搬送手段を設け、刈取った穀稈を脱穀部に送り込むようになっている。刈取部には、刈取られた穀稈を検出するメインセンサと、刈取られた穀稈の穂先を検出する株元センサ及び穂先センサとを設け、メインセンサの検出出力に基づいて、株元センサ及び穂先センサが作動し、刈取られた穀稈の穂先を検出して、こぎ胴に対する穀稈の穂先の通過位置を制御するこぎ深さ制御が行われている。
【0003】コンバインの中には、運転を止めると刈取部を押し上げるタイプのものがある。このタイプのコンバインでは、刈取部が押し上げられると、刈取部に対する動力の伝達が断たれる。このため、刈取った穀稈が刈取部と脱穀部の間に残った状態で作業を中断することになる。
【0004】また、穀稈の刈取作業を継続している場合には、コンバインの方向変更などで穀稈の刈取が中断している間も、前処理部に刈りこまれた穀稈が脱穀部に向けて搬送される。新たに穀稈の刈取を再開した場合、先に刈取られた穀稈と新たに刈取られた穀稈との間に穀稈のない空間(間隔)が発生する。そして、新たに刈取られた穀稈がメインセンサで検出されたとき、株元センサもしくは穂先センサが穀稈の穂先を検出していることがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような状態で、こぎ深さ制御が開始されると、作業中断前に刈取った穀稈と作業再開後に刈取った穀稈の間の間隔が開いていると、この間隔では、株元センサと穂先センサが穀稈を検出しないため、穀稈の穂先が適正な位置にないと判断して、穀稈の経路をこぎ胴に対し穀稈を深く押し込む方向に変更することになる。
【0006】このため、新たに刈取られた穀稈は、こぎ胴に対し深く押し込まれ、適正な脱穀を行うことができないばかりでなく、脱穀部や穀稈の排出部に穀稈が詰まり作業の継続が困難になることがある。穀稈の詰まりが発生するとその都度コンバインを止めて穀稈を取り除きこのため、作業を再開することが必要になり作業能率を低下させる。
【0007】本発明は、上記の事情に鑑み、一時中断した刈取作業を再開しても、運転再開時に深こぎになるのを防止するようにしたコンバインのこぎ深さ制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の請求項1は、刈取った穀稈を刈取部の近傍で検出する第1の検出手段(70)と、脱穀部(14)の近傍で刈取られた穀稈の穂先位置を検出する第2の検出手段(72)とを備え、前記第1の検出手段(70)で穀稈を検出したとき、こぎ深さ制御を行うようにしたコンバインのこぎ深さ制御装置において、第1の検出手段(70)が、穀稈を検出したとき、こぎ深さ制御の開始を遅延させる制御開始遅延時間を設定し、このとき、既に第2の検出手段(72)が穀稈を検出している場合、刈取作業中断前に刈取られ、刈取部と第2の検出手段(72)までの搬送経路に滞留している穀稈の脱穀を行うための、前記制御開始遅延時間より短いこぎ深さ制御の一時作動時間(TB)を設定し、前記一時作動時間(TB)経過後、前記制御開始遅延時間(TA)中に前記第2の検出手段(72)の検出信号が出力されるか、もしくは前記制御開始遅延時間(TA)が経過した後、こぎ深さの制御を開始するようにした、ことを特徴とする、コンバインのこぎ深さ制御装置にある。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明を実施するコンバインの断側面図、図2は、センサと制御のタイミングを示すタイムチャート、図3は、制御の過程を示すフローチャートである。
【0010】図1において、コンバイン10は、左右一対のクローラ走行装置12、12により支持された機体11を有している。この機体11の上部左右一側には、刈取った穀稈を脱穀し、かつ脱穀した穀粒を選別する脱穀部14が配置され、左右他側には運転席16が設けられている。さらに、機体11の前方(図1の左側)には、穀稈を刈取る前処理部18が昇降自在に支持されている。
【0011】前記運転席16の下方には、エンジン20が搭載されていて、このエンジン20から、前述した脱穀部14及び前処理部18に動力が伝達され、刈取・脱穀作業が行われると共に、クローラ走行装置12にも動力が伝達されて、機体11の走行が行われる。
【0012】前記前処理部18は、その作動基端側を走行機体11の前方に配置された伝動軸ケース22に回転可能に支持されている。この伝動軸ケース22から機体11に対し、機体11の前方斜め下方に向けて延出された伝動ケース24は、その長手方向の中間位置に配置された油圧シリンダ26の伸縮により、伝動軸ケース22を中心として揺動する。前記伝動軸ケース22には、伝動ケース24の回動量を検出するリフトポテンショメータ25が設けられている。
【0013】また、前記伝動ケース24の下方には、機体11の左右方向(図1の紙面前後方向)に亘って延設され、かつ該伝動ケース24と略T字状に直交する伝動軸筒28が一体的に連結されている。
【0014】また、前処理部18には、未刈り穀稈を分草して引起し通路に導く複数個のデバイダ30と、左右両端のデバイダ30の下方に設けられ、コンバイン10の自動走行を可能とする方向センサ(図示せず)を有し、これらデバイダ30と方向センサは、伝動軸筒28から機体11の前方に伸びる前処理フレーム34に取り付けられている。
【0015】このデバイダ30の後方には、分草された穀稈を引起こす引起し装置36が、前方から後方に向けて上昇する傾斜状に設けられている。この引起し装置36は、爪付チェーン37と引起しケース38を有し、爪付チェーン37には所定の間隔で複数本の爪が取付けられ、これらの爪が引起しケース38を上方に回動して穀稈をすき上げる。この爪付チェーン37を駆動する動力は、図示しないトランスミッションから前記伝動軸筒28内の駆動軸を介し、該伝動軸筒28から機体11の斜め前方に伸びる前処理伝動ギヤケース(図示せず)にによって伝達される。
【0016】前記引起し装置36の後方で、かつ伝動軸筒28の前方下部には、地面に近接して穀稈の株元を切断する刈刃40が設けられている。この刈刃40により切断された穀稈は、掻込み装置42によって掻き込まれて後方に移送される。この掻込み装置42の後方には、こぎ深さ搬送装置44が配設されていて、このこぎ深さ搬送装置44にて穀稈の長さが感知されて自動的に適正なこぎ深さに調節される。更に、穀稈はこのこぎ深さ搬送装置44から脱穀フィードチェーン46に引き継がれ、このフィードチェーン46により前記脱穀部14に向けて搬送される。
【0017】前記掻込み搬送装置42は、掻き込み搬送ベルト48と株元搬送スターホイル49、株元搬送チェーン50等を有し、刈刃40によって刈取られた穀稈は、掻き込み搬送ベルト48と株元搬送スターホイル49によって掻き込まれて各々の通路に寄せられ、株元搬送チェーン50によって挟持され、こぎ深さ搬送装置44に引き継がれる。
【0018】また、前記こぎ深さ搬送装置44は、こぎ深さ調整が可能なように、その後部を前記伝動軸ケース22を中心として回動可能に支持されていて、穀稈の穂先側を搬送する穂先搬送チェーン52と株元側を搬送する株元搬送チェーン54を備えている。これら穂先搬送チェーン52と株元搬送チェーン54は、前述した後部を支点に一体となって上下動自在とされていて(図の矢印方向)、その始端側は株元搬送チェーン50の搬送方向終端側の上方に延設されている。
【0019】前記脱穀部14には、脱穀フィードチェーン46と略平行してこぎ室56が設けられていて、該こぎ室56内には機体11の前後方向に沿う回転軸を中心としてこぎ胴58が回転自在に配置されている。このこぎ胴58の下方には、脱穀された穀粒を漏下する受網60が設けられていて、該受網60の下方には、揺動選別部が前後揺動可能に配設されている。
【0020】この揺動作用と唐箕61及び吸引ファン63から発生される選別風とにより稈枝混じりの穀粒物が選別される。揺動選別部62にて選別された穀粒は、下方に配置された1番樋64又は2番樋66に落下収容される。なお、こぎ室56内でこぎ胴58により脱穀された後の穀稈は、脱穀フィードチェーン46から機体11後部に設けられた排わらチェーン68に引き継がれて処理される。
【0021】前記掻込み搬送装置41には、搬送途中の刈取穀稈の有無を検出する第1の検出手段としてのメインセンサ70が配設されている。このメインセンサ70は、例えばオン・オフスイッチが用いられ、刈刃40によって刈取られ掻込み搬送装置42で移送される途中の穀稈の有無を検出する。また、前記こぎ深さ搬送装置44のUパイプ部45には、第2の検出手段としての株元センサ72aと、穂先センサ72bからなる株元・穂先センサ72が取り付けられている。この株元・穂先センサ72は、掻込み搬送装置42からこぎ深さ搬送装置44に引き継がれる穀稈の長短を検出する。
【0022】このような構成で、こぎ深さ制御の開始タイミングを設定する手順を図2及び図3を用いて説明する。なお、図2、図3は、こぎ深さ搬送装置44内に穀稈が残っている状態で、刈取作業を再開する場合のこぎ深さ制御について示してある。
【0023】図2の時刻T1で、メインセンサ70と株元・穂先センサ72を始動させる。このとき、メインセンサ70の出力は、OFFになっている。一方、株元・穂先センサ72は、こぎ深さ搬送装置44内に穀稈が残っているため、少なくとも株元センサ72a、穂先元センサ72bのいずれか一方(通常は株元センサ72a)の出力がONになる。
【0024】メインセンサ70の出力を判定し、その出力がOFFからONになるタイミングを検出する(図3のステップS1、以下、単にステップS○という)。
【0025】図2の時刻T2で、穀稈の刈取を開始すると、メインセンサ70が刈取られた穀稈を検出し、その出力がOFFからONに変わる。ここで、メインセンサ70がOFFからONになったとき、新たに刈取られた穀稈がメインセンサ70で検出されてから株元・穂先センサ72で検出されるまでに要する搬送時間に相当する時刻T2から時刻T6までの制御開始遅延時間TAをタイマーに設定する(ステップS2)。同時に、制御遅延時間TAの経過時間の計測を開始する。
【0026】時刻T2で、株元・穂先センサの出力を確認する(ステップS3)。そして、少なくとも株元センサ72aと穂先センサ72bのいずれか一方がONのときには、こぎ深さ搬送装置44内に残されていた穀稈の脱穀時間として、時刻T2から時刻T4までこぎ深さ制御を行う一時作動時間TBをタイマーに設定する(ステップS4)。同時に、一時作動時間TBの経過時間の計測を開始する。すると、制御開始遅延時間TA内であっても、こぎ深さ制御を一時的に実行して(ステップS5)、こぎ深さ搬送装置44内に残されていた穀稈の脱穀を行う。
【0027】一時作動時間TB中、株元・穂先センサ72の出力を確認する(ステップS6)。株元センサ72aもしくは穂先センサ72bのいずれか一方がONしているとき、一時作動時間TBが経過したか否かを確認する(ステップS7)。一時作動時間TBが経過していない場合には、ステップS5からステップS7を繰り返す。
【0028】また、一時作動時間TBの終了時刻T4より前の時刻T3で、株元・穂先センサ72の出力がOFFになると、こぎ深さ搬送装置44内に残された穀稈の脱穀は終了したものとみなされ、こぎ深さの制御は終了する。
【0029】前記ステップS3、ステップS6で、株元・穂先センサ72の出力がOFFの場合、ステップS7で、株元・穂先センサ72の出力がONであっても、一時作動時間TBが経過した場合、こぎ深さ制御は停止して制御開始遅延状態に入る。
【0030】設定と同時に経過時間が計測されている制御開始遅延時間TAが、終了時間T6になったか否かを判定する(ステップS8)。そして、制御開始遅延時間TBが経過していない場合、株元・穂先センサ72の出力を判定する(ステップS9)。株元センサ72a、穂先センサ72bの両方がOFFの場合には、ステップS8とステップS9を繰り返す。
【0031】前記ステップS8で、設定された制御開始遅延時間TAが経過した場合、前記ステップS9で、制御開始遅延時間TAが経過する前(制御開始遅延時間TAの終了時刻T6より前の時刻T5)に、株元センサ72aもしくは穂先センサ72bのいずれか一方もしくはその両方がONになった場合、こぎ深さ制御を開始する(ステップS10)。
【0032】なお、制御開始遅延時間TA経過後は、株元・穂先センサ72のON、OFFに拘わりなく、時刻T6でこぎ深さ制御を開始する。このとき、株元・穂先センサ72がOFFの状態で、こぎ深さ制御を開始することになっても、メインセンサ70が穀稈を検出してから制御開始遅延時間TAを経過しているので、穀稈が株元・穂先センサ72に到達するまでの時間は、極めて短い時間となり、こぎ深さ制御を開始しても、深こぎになる心配はない。
【0033】上述のように、コンバイン10のこぎ深さ搬送装置44内に穀稈が残っている状態で刈取作業を一旦中断し、中断時の状態で刈取作業を再開した場合、刈取作業を中断する前に刈取られ、こぎ深さ搬送装置44内に残っている穀稈と、再開後新たに刈取られた穀稈との間が開いている。
【0034】こぎ深さ搬送装置44内に残っていた穀稈の脱穀を行う際に、一時的にこぎ深さ制御を行い、新たに刈取られた穀稈が株元・穂先センサ72で検出されるまでこぎ深さ制御を停止し、株元・穂先センサ72が新たに刈取られた穀稈を検出した後、こぎ深さ制御を行うことにより、刈取られた全ての穀稈のこぎ深さを制御しながら脱穀することができ、深こぎになるのを防止することができる。
【0035】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、こぎ深さ搬送装置内に穀稈が残っている状態で、刈取作業を一旦中断し、中断時の状態で刈取作業を再開して、第1の検出手段が新たに刈取られた穀稈を検出したとき、新たに刈取られた穀稈が第2の検出手段に到達するまでこぎ深さの制御を停止させる制御開始遅延時間を設定し、このとき、第2の検出手段が中断前に刈取った穀稈を検出している場合、中断前に刈取られ、刈取部から第2の検出手段までの搬送経路に滞留している穀稈の脱穀を行うための、前記制御開始遅延時間より短いこぎ深さ制御の一時作動時間を設定し、前記一時作動時間経過後、制御開始遅延時間内に第2のセンサが新たに刈取られた穀稈を検出したとき、もしくは制御開始遅延時間が経過した後、こぎ深さ制御を再開するようにしたので、刈取部から脱穀部に向けて搬送される穀稈の流れが途切れた場合でも、深こぎを発生させることなく、全ての穀稈を適正なこぎ深さで処理することができる。
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【出願日】 平成13年5月21日(2001.5.21)
【代理人】 【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫 (外1名)
【公開番号】 特開2002−335738(P2002−335738A)
【公開日】 平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願番号】 特願2001−150320(P2001−150320)