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【発明の名称】 肥料散布機
【発明者】 【氏名】北沢 文章

【要約】 【課題】攪拌アームを円振動の付随した旋回運動に変換する磁力継手を実現することにより、比較的湿潤性のある肥料でも所謂ブリッジ現象を抑制できて連続散布が持続可能であって、タンク内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化を実現できる肥料散布機の提供。

【解決手段】肥料散布機の肥料攪拌装置50は、偏心軸33と、この軸心を回転中心として自転容易であって攪拌アーム32を支持する遊星輪34と、偏心軸33に対する遊星輪34の相対的な逃がし抵抗性自転を許容しながら偏心軸33の動力を遊星輪34に伝達する磁力継手60を有する。磁力継手60は、偏心軸33に固着された第1の磁石板62と、これに重なって遊星輪34に固着された第2の磁石板63とから成る。第1及び第2の磁石板62,63は回転中心の周りに等間隔で環状離散的に穿った6個の丸穴を有し、これらの丸穴には磁石円盤M1,M2が埋め込み固定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 底部に肥料落とし孔を持ち、肥料を貯留するための肥料タンクと、前記肥料タンクの外部から前記タンク内へ回転駆動力を伝達するためのタンク内縦従動軸により前記肥料タンク内で旋回して貯留肥料を攪拌するための攪拌アームを持つ肥料攪拌手段とを備え、前記肥料攪拌手段は、前記タンク内縦従動軸に対し所定の偏心量を以って偏心回転する偏心体と、この偏心体の軸心を回転中心として自転容易であって前記攪拌アームを支持する遊星体と、前記偏心体と前記遊星体の対向面間に介在し、前記偏心体に対する前記遊星体の相対的逃がし抵抗性自転を許容しながら前記偏心体の動力を前記遊星体に伝達する磁力継手とを有する肥料散布装置であって、前記磁力継手は、前記偏心体側に固定した第1の磁石板と、この第1の磁石板に重なり前記遊星体側に固定した第2の磁石板とを有し、両磁石板は前記回転中心の周りに環状離散的に穿った複数の穴を持つ穴付き磁性板と、前記穴に埋め込んだ磁石とを有して成ることを特徴とする肥料散布機。
【請求項2】 請求項1において、前記第1の磁石板の磁石と前記第2の磁石板の磁石とは同磁極で相対向していることを特徴とする肥料散布機。
【請求項3】 請求項1において、前記第1の磁石板の磁石と前記第2の磁石板の磁石とは異磁極で相対向していることを特徴とする肥料散布機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、タンク内の肥料を攪拌する肥料攪拌手段を備えた肥料散布機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自走しながら肥料を遠心力で散布する自走式肥料散布機は、例えば図6に示すように、左右一対の前輪である駆動輪1a(1b)及び操縦輪である尾輪1cを備えた車体フレーム1と、この車体フレーム1の後部に搭載された小型エンジン2と、車体フレーム1に起立した垂直フレーム3から後方に延びた操縦用二叉ハンドル3a(3b)と、車体フレーム1の前部に搭載された肥料散布装置4とを有しており、小型エンジン2からの原動力はVベルト(図示せず)を経て駆動輪1a(1b)間のトランスミッション部5(図7参照)へ伝達され、そのトランスミッション部5から分岐して水平軸の走行駆動用車軸6と垂直軸の散布駆動軸7とに伝達されるようになっている。アクセルレバー7cの操作でエンジン回転数が変化し、肥料散布機の走行速度を可変できるようになっている。
【0003】また、肥料散布装置4は、図7に示すように、散布駆動軸7にボス部7aを介して固定され、複数の散布羽根9aを有する回転式散布板9と、この上方のタンク取付台板10の上に固定された肥料タンク(肥料ホッパ)15と、肥料タンク15の底板15aを貫通した散布軸7の先端部に締め付けボルト(図示せず)を以て固定されて水平回転する棒状攪拌アーム12と、肥料タンク15の底板15aに形成された1又は2以上の肥料落とし孔15bと、これらの肥料落とし孔15bと揃い合う肥料落とし孔11aを有し、肥料タンク15aの底板15aの裏面に重ね合わせられて軸受7bの周りに回動可能の円板状シャッタ板11とを備えて成る。底板15aとシャッタ板11とが肥料落下調節板機構を構成している。
【0004】散布駆動軸7の回転と共に肥料タンク15内の攪拌アーム12もその底板15aを這うように旋回するため、肥料タンク15内に堆積した貯留肥料(図示せず)は片寄り無く連続的に底板15aの肥料落とし孔15bへ供給されて掻き落され、シャッタ板11の肥料落とし孔11aを介して回転する散布板9上に落下し続けるので、散布板9の遠心力により進行方向前方の扇状の所定散布範囲(散布角内)に肥料が連続的に撒き散らされる。シャッタ操作レバー7dを操作すると、シャッタ11が回動してその肥料落とし孔11aと底板15aの肥料落とし孔15bとの開口度(孔重なり度合い)を絞り調整することができるため、肥料タンク15内から回転式散布板9上へ落下する肥料の落とし込み流量を加減できるので、肥料の厚撒き・薄撒きが可能となっている。
【0005】なお、本出願人が既に開示した特開平7−298741号公報に記載の肥料散布装置の肥料落下調節板機構のように、シャッタ板11の下に肥料落とし孔を持つ第2のシャッタ板を重ねて設け、この第2のシャッタ板の回動位置を調節することにより、肥料の散布方向を変更できるように構成しても良い。この肥料落下調節板機構は2枚のシャッタ板で肥料の落下流量と落下位置とを変更することで肥料の散布範囲と散布方向を調節できるものである。
【0006】ところが、化学肥料のように比較的乾燥した肥料や粒状又は顆粒状の肥料を散布する場合は、漏斗状の肥料タンク15内の底面側で旋回する攪拌アーム12の掻きだし作用によって、散布板9へ落とし込まれた後に残る肥料の空き間には比較的滑落性ないし流動性(易動性)のある貯留肥料が崩落して逐次補給され続けるものであるから、肥料撒きに間断なく連続散布を維持できるが、有機肥料(堆肥)などの比較的湿潤性のある肥料は、粘着性が残っているため、攪拌アーム12の掻きだしによって残る空き間への肥料の崩落が自律的に継続し難く、貯留肥料のうち攪拌アーム12の旋回域だけが空洞化し、その余に肥料が固まって架橋状に残るという所謂ブリッジ現象が生じ易く、攪拌アーム12の空回りにより、連続散布の持続が殆ど不可能となる。
【0007】かかる不都合を改善するため、タンク15の上部まで長く延ばした攪拌アームを散布駆動軸7に取付けて、貯留肥料の上位をも全体的に攪拌する方法が考えられるが、上記の自走式肥料散布機では、散布軸7の回転速度が自走速度と同期して比較的高速であるため、攪拌アームが受ける負荷抵抗(トルク)が過大化し、攪拌アームの堅牢化を余儀なくされ、自走式肥料散布機の重量化と高コスト化を招く。また、タンク内の貯留肥料は強引な攪拌作用により却って混練化が強まるため、粘性化と共に団塊化(連結化)が進み、むしろ肥料落とし孔から粒片状の肥料が落下し難くなる。
【0008】他方、攪拌アーム12を低速旋回させる構成を採用する場合は、散布板9を回転するための散布駆動軸7とは別系統の駆動軸に減速機を介して攪拌アーム12を取付ける必要があることから、攪拌アーム12のための新たな駆動伝達系は勿論のこと、タンク内にギアボックスなどを定置せねばならず、貯留容積の実質減少や高コスト化を招く。
【0009】このような問題を解決するために、本出願人は、比較的湿潤性のある肥料でも所謂ブリッジ現象を抑制できて連続散布が持続可能であって、タンク内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化を実現できる自走式肥料散布機に関し、特願平11−363295号を以って開示した。
【0010】その自走式肥料散布機は、図8に示すように、左右一対の前輪である駆動輪1a(1b)及び操縦輪である尾輪1cを備えた車体フレーム1と、この車体フレーム1の後部に搭載された小型エンジン2と、車体フレーム1に起立した垂直フレーム3から後方に延びた操縦用二叉ハンドル3a(3b)と、車体フレーム1の前部に搭載された肥料散布装置24とを有し、小型エンジン2からの原動力はVベルト2aを経て駆動輪1a(1b)間のトランスミッション部5へ伝達され、そのトランスミッション部5から分岐して水平軸の走行駆動用車軸6と垂直軸の散布駆動軸7とに伝達されるようになっている。アクセルレバー(図示せず)の操作でエンジン回転数が変化し、肥料散布機の走行速度を可変できるようになっている。肥料散布装置24は、散布駆動軸7にボス部7aを介して固定され、複数の散布羽根9aを有する回転式散布板9と、この上方のタンク取付台板(図示せず)上に固定された肥料タンク(肥料ホッパ)25と、肥料タンク25の底板25aを貫通した散布軸7の先端部に締め付けボルト31を以って固定されて肥料攪拌装置30と、肥料タンク25の底板25aに形成された1又は2以上の肥料落とし孔25bと、これらの肥料落とし孔25bと揃い合う肥料落とし孔11aを有し、肥料タンク25の底板25aの裏面に重ね合わせられて回動可能の円板状シャッタ板11とを備えて成る。底板25aとシャッタ板11とが肥料落下調節板機構を構成している。散布駆動軸7の回転に同期して肥料タンク25内の攪拌アーム32も旋回するため、肥料タンク25内に堆積した貯留肥料(図示せず)は片寄り無く連続的に底板25aの肥料落とし孔25bへ供給されて掻き落され、シャッタ板11の肥料落とし孔11aを介して回転する散布板9上に落下し続けるので、散布板9の遠心力により進行方向前方の扇状の所定散布範囲(散布角内)に肥料が連続的に撒き散らされる。
【0011】肥料攪拌装置30は、図9及び図10に示す如く、タンク25内の散布軸7に対して偏心量dで偏心回転する鉄製の偏心軸33と、この偏心軸33体の軸心を回転中心として自転容易であって攪拌アーム32をボルト32aを以って支持する鉄製の遊星輪34と、偏心軸33に対する遊星輪34の相対的な逃がし抵抗性自転を許容しながら偏心軸33の動力を遊星輪34に伝達する磁力継手35と、遊星輪34と偏心軸33との間に介装されたボールベアリング36とを有している。偏心軸33は略円柱形状で、中心から偏心量dだけオフセットした位置に散布軸7を挿入するための軸孔33aと、周側面には軸孔33aに達し、締め付けボルト31を螺入するための横ねじ孔33bと、上部中央には縮径突起部33cとを有している。遊星輪34は倒立の略有底筒状で、筒内に差し込んだ偏心軸33と筒壁34aの間にはボールベアリング36が介在している。このボールベアリング36は、筒壁34aに嵌る外輪36aと、偏心軸33に嵌る内輪36bと、両輪間に挟まる複数の鋼球36cとから成る。このボールベアリング36は止め輪37によって抜け止めされている。また、偏心軸33も止め輪38によって抜け止めされている。磁力継手35は、偏心軸33の縮径突起部33cとその段部に溶接などで固着された原動側の磁石板35aと、これに無限小のクリアランスで相合う従動節の遊星輪34の底面35bとから成る。磁石板35aは、縮径突起部33cに嵌る嵌め孔を持つ鉄製の円環状底板35aaと、縮径突起部33cに隙間を以って嵌る嵌め孔を持ち、環状離散的に穿った6個の孔に小円盤状磁石Mを埋め込んだ孔付き磁性板35abとを溶接などで固着して成る。
【0012】散布軸7が回転すると、偏心軸33が偏心量dを以って偏心回転(公転)する。偏心軸33と遊星輪34とは磁力継手35を介してカップリングしているものの、磁力継手35であるため、スリップ動(脱調)によって、両者間では相対的な逃がし抵抗性自転(空転)が可能となっている。原理的には、両者間の摩擦力、遊星輪34及び攪拌アーム32の自重や攪拌アーム32の受ける負荷抵抗が皆無の場合、磁力継手35の微弱な吸着力でも、遊星輪34は相対的な逃がし自転を生じずに偏心軸33と一体的に同期して偏心回転(1公転1自転)するため、図11の攪拌アーム32の点Aの実線軌跡が円弧状であるように、攪拌アーム32が散布軸7を略旋回中心とする旋回運動を行うものである。しかし、現実には、摩擦力や遊星輪34及び攪拌アーム32の自重が存在することは勿論、攪拌アーム32には貯留肥料から負荷抵抗や空気抵抗を受けているため、遊星輪34にかかる総負荷抵抗が磁力継手35の吸着力を超えるほどになると、遊星輪34は偏心軸33との公転に随伴して公転するも、遊星輪34が徐々に逃がし自転するため、その逃がし回り量に応じただけ攪拌アーム32の旋回速度が遅くなる分、逃がし回り量に見合うだけの円振動(振動半径は偏心量d)の軌跡長が攪拌アーム32に付加されることになり、図4の破線軌跡で示すように、攪拌アーム32は、タンク25内の散布軸7に対して偏心量dで偏心回転する。過負荷状態の場合には、磁力継手35に引きずりのない完全なスリップ動が生じるため、攪拌アーム32の旋回運動が停止し、円振動の振動数が最大になる。この最大振動数は遊星輪34の公転周波数である。
【0013】従って、攪拌アーム32の旋回運動による攪拌で比較的湿潤性のある貯留肥料に空き間が生じても、攪拌アーム32の小刻みな円振動によって貯留肥料を加振するので、空き間周囲の肥料の崩落を誘発でき、連続して肥料を攪拌することができる。肥料攪拌装置30は、散布軸7とは別系統の動力を受けて励振するのではなく、また振動モータ等の自励振動手段でもなく、散布軸7の従動回転を基に攪拌アーム32の旋回運動成分と攪拌アーム32自身の循環軌跡運動成分との合成運動たる振動旋回運動に変換するものであるため、散布軸7と攪拌アーム32との間に設けることができ、その余に部材を配する必要がないので、攪拌装置30の構成の簡略化とコンパクト化を実現できる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の磁力継手を用いた肥料散布装置にあっては、次のような問題点があった。即ち、負荷抵抗が次第に増大すると、攪拌アーム32は旋回運動に円振動を随伴しながら円振動が徐々に増強するのではなく、閾値負荷抵抗の発生により、一旦、磁力継手にスリップが生じると、そのまま円振動だけが継続し、攪拌作用が働かない。磁力継手にスリップが生じると、動摩擦力による摩擦力の減少に相反して遊星輪が慣性を持つため、磁気吸着力を振り切ってスリップ(脱調)し続けるからであり、磁力継手の逃がし抵抗性の幅が狭いからである。このため、円振動は発生するものの、旋回運動を伴わないものになるため、掻き出し作用が一時的にも減退するので、円滑な連続散布が困難となる。
【0015】磁力継手の磁力を増強させた場合、負荷抵抗が減少した際の円振動から旋回運動への速やかな遡及を実現できるが、円振動を随伴しながらの旋回運動はやはり得にくく、また閾値負荷抵抗が高くなるため、円振動の発生が遅くなる。このため、やはり円滑な連続散布が困難となる。
【0016】そこで、本発明は、攪拌アームを円振動の付随した旋回運動に変換する磁力継手を実現することにより、比較的湿潤性のある肥料でも所謂ブリッジ現象を抑制できて連続散布が持続可能であって、タンク内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化を実現できる肥料散布機を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、底部に肥料落とし孔を持ち、肥料を貯留するための肥料タンクと、肥料タンクの外部からタンク内へ回転駆動力を伝達するためのタンク内縦従動軸により肥料タンク内で旋回して貯留肥料を攪拌するための攪拌アームを持つ肥料攪拌手段とを備え、肥料攪拌手段は、タンク内縦従動軸に対し所定の偏心量を以って偏心回転する偏心体と、この偏心体の軸心を回転中心として自転容易であって前記攪拌アームを支持する遊星体と、偏心体と前記遊星体の対向面間に介在し、偏心体に対する遊星体の相対的逃がし抵抗性自転を許容しながら偏心体の動力を前記遊星体に伝達する磁力継手とを有する肥料散布装置であって、磁力継手は、偏心体側に固定した第1の磁石板と、この第1の磁石板に重なり遊星体側に固定した第2の磁石板とを有し、両磁石板は回転中心の周りに環状離散的に穿った複数の穴を持つ穴付き磁性板と、該穴に埋め込んだ磁石とを有して成ることを特徴とする。
【0018】斯かる構成において、攪拌アームに掛る負荷抵抗が磁気継手の磁力閾値内にある場合、第2の磁石板は第1の磁石板と一体的に固着状態にあるため、攪拌アームはタンク内縦従動軸旋回中心として旋回運動を行い、肥料を攪拌してそれを掻き出すが、負荷抵抗が磁気継手の磁力閾値を超えると、第2の磁石板が第1の磁石板に対してスリップ回転するため、攪拌アームのタンク内縦従動軸旋回中心とする旋回運動が弱まる分、攪拌アームに偏心体の軸心を回転中心として円振動が生じることになる。ここで例えば、磁力継手が第1の磁石板の磁石と第2の磁石板の磁石とが同磁極で相対向している構成の場合、無スリップ状態では、磁力反発により第1の磁石板の磁石と第2の磁石板の磁石とが食違い位置である磁力安定点で磁気結合しているが、第1の磁石板の磁石に対して第2の磁石板の磁石が相対的にスリップ回転すると、徐々に同極同士が近接対向する状態になるため、スリップ回転を引き戻す向きの反発磁力が強まり、スリップ回転し難いものとなっている。その反発磁力に抗して負荷抵抗が強いとき、第2の磁性板がスリップ回転し、引き戻し最大点を超えると次の食違い位置で安定する。このため、滑り抵抗性が磁石食違い位置の磁力安定点と磁石至近対向位置の最大反発点とを交互に繰り返して波状特性であるため、円振動自身が1周期内で節動的ないし歩進的に生じることとなる。特に、反発磁力の引き戻しにより第1の磁性板に対する回り止め作用が強いので、一度スリップし初めても負荷抵抗が軽くなると、円振動は停止し、円振動がそのまま継続することがなくなる。このため、攪拌アームの旋回速度は遅くなるものの、直ちに中断することがなく、それ故、連続散布を持続できる。また、攪拌アームの旋回速度が遅くなる期間では、単なる定速円振動ではなく、節動的ないし歩進的な加減速円振動が生じているため、円振動の周期よりも短い衝撃的な加動が発生するので、肥料への突き崩し作用が増強し、所謂ブリッジ現象の抑制に奏功する。
【0019】第1の磁石板の磁石と第2の磁石板の磁石とが異磁極で相対向している場合は、無スリップ状態では磁石同士が重なり、最大磁力吸引点に相当し、回り止めの引き戻し力がスリップ回転量に応じて漸減する磁気吸引力であるため、同磁極で相対向した構成に比して回り止め作用を低いものである。しかしながら、やはり、円振動は1周期内で節動的ないし歩進的に生じるものであるから、連続散布を持続できる。
【0020】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る肥料散布装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1(a)は本発明に係る肥料散布装置に用いる肥料攪拌装置を示す平面図、図1(b)はその縦断正面図、図2は肥料攪拌装置を分解して示す縦断面図である。なお、図1において、図9に示す部分と同一部分には同一参照符号を付し、その説明は省略する。
【0021】本例の自走式肥料散布機も、前述した特願平11−363295号の自走式肥料散布機と同様な構成を有しているが、肥料攪拌装置50の磁力継手60の構成を異にしている。
【0022】磁力継手60は、偏心軸33の縮径突起33cに嵌めて固着されたバックヨーク円板61と、偏心軸33の縮径突起33cに嵌めてバックヨーク円板61に固着された円形の第1の磁石板62と、この第1の磁石板62に重なって縮径突起33cに遊嵌し、遊星輪34に固着された円形の第2の磁石板63とから成る。第1及び第2の磁石板62,63は回転中心の周りに等間隔で環状離散的に穿った6個の丸穴を有し、これらの丸穴には磁石円盤M1,M2が埋め込み固定されている。本例では、図2に示す如く、第1の磁石板62の磁石円盤M1と第2の磁石板63の磁石円盤M2とは磁極が同磁極となるように相対向して配置されている。なお、51は防塵カバーである。
【0023】磁力継手60が第1の磁石板62の磁石円盤M1と第2の磁石板63の磁石円盤M2とが同磁極で相対向しているため、無スリップ状態では、図3(a−1),(a−2)に示す如く、磁力反発により第1の磁石板62の磁石円盤M1と第2の磁石板63の磁石円盤M2とが平面視で食違い位置である磁力安定点で磁気結合しており、第2の磁石板63は第1の磁石板6と同方向に同速で回転するため、攪拌アーム32は旋回運動のみを行う。
【0024】図3(b−1),(b−2)に示す如く、第1の磁石板62に対して第2の磁石板63が相対的にスリップ回転すると、徐々に同極同士が近接対向する状態になるため、スリップ回転を引き戻す向きの反発磁力が強まり、スリップ回転し難いものとなっている。このため、第2の磁石板63は第1の磁石板6と同方向に回転するが、その回転速度はやや遅い。
【0025】次に、図3(c−1),(c−2)に示す如く、その反発磁力に抗して負荷抵抗が強いとき、第2の磁性板63がスリップ回転し、引き戻し最大点を超えると次の食違い位置で安定する。この遷移過程では食違い位置が1ピッチだけずれるため、第2の磁性板63の同調回転速度が最大低下する。このため、滑り抵抗性が磁石食違い位置の磁力安定点と磁石至近対向位置の最大反発点とを交互に繰り返して波状特性であるため、円振動自身が1周期内で節動的ないし歩進的に生じることとなる。特に、反発磁力の引き戻しにより第1の磁性板62に対する回り止め作用が強いので、一度スリップし初めても負荷抵抗が軽くなると、円振動は停止し、円振動がそのまま継続することがなくなる。このため、攪拌アーム32の旋回速度は遅くなるものの、直ちに中断することがなく、それ故、連続散布を持続できる。また、攪拌アーム32の旋回速度が遅くなる期間では、単なる定速円振動ではなく、節動的ないし歩進的な加減速円振動が生じているため、円振動の周期よりも短い衝撃的な加動が発生するので、肥料への突き崩し作用が増強し、所謂ブリッジ現象の抑制に奏功する。
【0026】図4は、本発明に係る肥料散布装置に用いる別の肥料攪拌装置を分解して示す縦断正面図である。本例の肥料攪拌装置における磁力継手は、上記と同様に、偏心軸33の縮径突起33cに嵌めて固着されたバックヨーク円板61と、偏心軸33の縮径突起33cに嵌めてバックヨーク円板61に固着された円形の第1の磁石板62と、この第1の磁石板62に重なって縮径突起33cに遊嵌し、遊星輪34に固着された円形の第2の磁石板63とから成り、第1及び第2の磁石板62,63は回転中心の周りに等間隔で環状離散的に穿った6個の丸穴を有し、これらの丸穴には磁石円盤M1,M2が埋め込み固定されていが、第1の磁石板62の磁石円盤M1と第2の磁石板63の磁石円盤M2とは磁極が異磁極となるように相対向して配置されている。
【0027】このため、図5(a−1),(a−2)に示す如く、第1の磁石板62の磁石円盤M1と第2の磁石板63の磁石円盤M2は、無スリップ状態では重なり状態にあり、最大磁力吸引点に相当している。負荷抵抗が強くなると、回り止めの引き戻し力がスリップ回転量に応じて漸減する磁気吸引力であるため、同磁極で相対向した構成に比して回り止め作用を低く、図5(b−1),(b−2)に示す如く状態を経過した後、図5(c−1),(c−2)に示す如く状態になる。このような磁力継手でも、円振動は1周期内で節動的ないし歩進的に生じるものであるから、連続散布を持続できる。
【0028】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明に係る肥料散布機は、対向磁石による反発磁力又は吸引磁力による回り止め作用を利用して逃がし抵抗性を高めた磁力継手を用いた点を特徴としている。負荷抵抗が強くなっても、攪拌アームは節動又は歩進的に円振動を生じるため、旋回運動が中断することがなく、比較的湿潤性のある肥料でも所謂ブリッジ現象を抑制できて連続散布が持続可能である。また、磁力継手の利用により円振動が得られるため、タンク内の貯留容積の大幅減少を招かずに済み、しかも低コスト化を実現できる。特に、第1の磁石と第2の磁石とが同極で相対向した構成の磁力継手の場合、逃がし抵抗性が頗る向上し、また、1円振動周期内で衝撃的な加振を発生させることができ、湿潤肥料への突き崩し作用が増大する。
【出願人】 【識別番号】000104434
【氏名又は名称】カンリウ工業株式会社
【出願日】 平成13年5月29日(2001.5.29)
【代理人】 【識別番号】100089945
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 稔
【公開番号】 特開2002−345314(P2002−345314A)
【公開日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【出願番号】 特願2001−160256(P2001−160256)