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【発明の名称】 木本植物種子の早期検定法
【発明者】 【氏名】吉田 寛

【氏名】長 信也

【氏名】秋元 利之

【氏名】江刺 洋司

【要約】 【課題】木本植物種子を対象としたほぼ7日以内という短期間で発芽率を検定するための種子の発芽率検定方法を提供する。

【解決手段】木本植物種子の生理的特性及び構造的特性に基づき事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、選択された方法により種子を加工し、加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に選択された処理方法により置床し、置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を7日以内で測定し、測定された発芽能力保有個体の割合又は発芽力と実際の発芽率との相関関係を導出し、相関関係を適用して発芽能力保有個体の割合又は発芽力から実際の発芽率を推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 木本植物種子の早期検定法において、前記木本植物種子の生理的特性及び構造的特性に基づき該種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、前記選択された事前処置方法及び前記置床方法により前記種子を加工し、前記加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に前記選択された処理方法により置床し、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定することを特徴とする木本植物種子の早期検定法。
【請求項2】 木本植物種子の早期検定法において、前記木本植物種子の生理的特性及び構造的特性に基づき該種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、前記選択された事前処置方法及び前記置床方法により前記種子を加工し、前記加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に前記選択された処理方法により置床し、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定し、前記測定された発芽能力保有個体の割合又は発芽力と前記種子の実際の発芽率との相関関係を導出し、前記相関関係を適用することにより前記発芽能力保有個体の割合又は発芽力から前記種子の実際の発芽率を推定することを特徴とする木本植物種子の早期検定法。
【請求項3】 前記種子の置床方法が、少なくとも下記A〜Jに記載のいずれかの方法から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の木本植物種子の早期検定法。
A:内種皮まで除去した後、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子切片を置床する方法。
B:内種皮のみが付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子切片を置床する方法。
C:外種皮が付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子切片を置床する方法。
D:上記A〜Cのいずれかの方法で種子組織を切断した後、さらに胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれかの側面、又は子葉組織及び胚乳組織の双方の側面も切断した種子切片を置床する方法。
E:内種皮まで除去した後、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
F:内種皮のみが付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
G:外種皮が付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
H:種子を強酸、強アルカリ若しくは熱湯のいずれかに浸した後、又は、該外種皮若しくは内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
I:種子から胚を取り出して置床する方法。
J:既に発根している個体は幼根を根元から切除し、発根していない個体は幼根組織の先端部を切除した後、オーキシンを含む発芽床に置床する方法。
【請求項4】 加工された種子については、置床するに先立って該加工された種子を水洗浄することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項5】 前記種子の前記処理方法として、サイトカイニン、ジベレリン、チオウレア、硝酸カリウムのいずれかの溶液又はこれらの混合溶液を該種子に適した濃度及び混合比に調整した後、これを前記発芽試験床に加えてから置床することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項6】 前記種子の前記処理方法として、前記発芽試験床を高酸素分圧下に置くことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項7】 前記種子の前記処理方法として、前記発芽試験床をエチレンガス、エチレンガスに二酸化炭素を加えた混合ガス、又はエチレンガスに二酸化炭素及び酸素を加えた混合ガス下に置くことを特徴とする請求項1〜5に記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項8】 前記種子の事前処置方法として、該種子の殺菌処理を行なうことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項9】 前記種子の事前処置方法として、該種子を一晩水浸処理することを特徴とする請求項l〜8のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項10】 前記種子の事前処置方法として、該種子の外種皮又は内種皮の表面の油脂成分を除去することを特徴とする請求項l〜9のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項11】 前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合を測定する際に、下記a)〜d)のいずれかの測定方法が選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
a):幼根組織が伸長した個体又は種子組織から幼根が突出した個体の割合を測定する方法。
b):幼根組織が重力方向に彎曲した個体の割合を測定する方法。
c):子葉組織が堅固なまま膨張した個体の割合又は子葉組織に葉緑素が形成されて緑色化した個体の割合を測定する方法。
d):不定根が形成された個体の割合を測定する方法。
【請求項12】 前記置床された種子について前記発芽能力保有個体の発芽力を測定する際に、下記i)〜v)のいずれかの測定方法が選択されることを特徴とする請求項1〜10に記載の木本植物種子の早期検定法。
i):一定期間内に伸長した幼根の長さを測定又は該幼根の長さを1日当りに換算する測定方法。
ii):一定期間内に増加した胚の重量を測定又は該胚の重量を1日当りに換算する測定方法。
iii):一定期間内に請求項11に記載のa)〜d)のいずれかの測定方法により測定された発芽能力保有個体の割合を百分率で表す測定方法。
iv):一定期間内に伸長した不定根の長さを測定又は該不定根の長さを1日当りに換算する測定方法。
v):一定期間内での葉緑素の形成の程度を測定又は該葉緑素の形成の程度を1日当りに換算する測定方法。
【請求項13】 下記のア)又はイ)の少なくともいずれか一を提示することにより種子の品質証明を行うことを特徴とする木本植物種子の早期品質証明法。
ア):請求項1〜12のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力。
イ):請求項1〜12のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力から推定された実際の発芽率。
【請求項14】 下記のア)〜ウ)の少なくともいずれか一を用いることにより播種工における木本植物種子の単位播種量を算出することを特徴とする木本植物種子の播種量設計法。
ア):請求項l〜12のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合。
イ):請求項l〜12のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力から推定された実際の発芽率。
ウ):請求項13に記載の品質証明法により提示された発芽率。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木本植物種子の早期検定法及び該早期検定法を用いた植物種子の早期品質証明方法、並びにこれらの方法により得られた発芽率を用いて播種工における木本植物種子の播種量を設定する設計法に関する。この方法は、木本植物のように胚の生長が遅い種子、生理的休眠性を有しているため発芽速度が遅い種子、硬実種子であるため発芽速度が遅い種子等、通常の発芽試験が困難な種子に対して適用する。特に、広葉樹種子を対象とした方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】種子は、種によってその構造は様々に変化しているが、本明細書においては、種子は基本的に下記の三組織からなる器官として説明を行なう。
1)胚(Embryo):幼根(Radicle)、下胚軸(Hypocoty1)、子葉(Cotyledon)、幼芽(Plumule)(頂端分裂組織)(Apical meristem)、上胚軸(Epicoty1)(茎)(Stem)から構成。
2)胚乳(Endosperm):種によっては内胚乳(Endosperm)ではなく外胚乳(Perisperm)と呼称される。
3)種皮(Seed-coat):何れの種も最低2層から構成されるが、本明細書では内種皮(胚乳が発達したものを含む)(Inner seed-coat or Endopleura)と外種皮((種によっては果皮(Pericarp)あるいは仮種皮(Aril)を含む)(Outer seed-coat or Testa)に用語を統一する。種によっては、種皮がさらに粘液質(多糖類)や脂質(ワックス)で包まれていることもある。
【0003】木本植物種子を扱う緑化工(播種工)の場合、木本植物種子の発芽率の測定においては、通常湿った濾紙を1〜2枚敷いたシャーレに種子を並べ、定期的に発芽した個体数を数えて発芽率を求める方法が一般的に行われている。この場合、試験温度は23〜25℃の定温又は樹種により変温処理等を行い、試験期間は14〜28日間で行われている。また、試験期間が過ぎても発芽しない種子は、種子を切り開いて充実種子か不充実種子か等の不発芽の原因も併せて調査されることもある。
【0004】法面緑化工事等で用いられる種子の発芽試験法は、社団法人日本道路協会発行の「道路土工−のり面工・斜面安定工指針、1999」に記載されている方法が広く行なわれている。この発芽試験法は、シャーレに濾紙を2枚敷き、その上に種子を並べて水で浸し、定温の場合は20〜25℃、変温の場合は18〜28℃で行われる。調査は、毎日正常な幼芽を発生した種子を数えて取り除き、外来草本の場合は14日、それ以外の植物は28日で〆切り、発芽率を算出する。
【0005】この発芽試験法のほか、種子の発芽率及び発芽力を測定するための方法として、国際種子検査協会(ISTA:International Seed Testing Association)発行の「International Rules for Seed Testing 1985(19861989に一部改正)」が公知となっている。これには、種子の発芽率又は発芽力を測定する方法として下記のような発芽試験及び胚摘出による発芽力試験が記載されており、農林水産省種苗管理センターから「国際種子検査規定」として翻訳発行されている。
1)発芽試験種子を紙又は砂を用いた発芽床に置床し、該種子の発芽に適した温度条件下に5〜70日間放置した後、正常芽生の百分率で発芽率を測定する。
2)胚摘出による発芽力試験(摘出胚法)
発芽力を求めるため、種子を一定時間水に浸漬した後、内種皮を剥離して完全に胚を摘出し、20〜25℃の恒温条件下で少なくとも1日あたり8時間の光を照射して、5〜14日間培養する。評価方法に関しては、発芽力を有する胚が生育の徴候を示すか、葉緑素の発達を示すか、堅固で新鮮なまま残るか、子葉の彎曲を示す針葉樹の胚の何れかの個体数の百分率で表し、成育可能な胚を持っている個体の割合で評価する。
【0006】生理的休眠の打破方法としては、上記「国際種子検査規定」において、乾燥貯蔵処理(休眠が短い種)、予冷処理(樹木種子では1〜5℃の温度の湿潤下で2週間〜12ケ月間貯蔵)、予熱処理(30〜35℃を超えない温度で7日以下開放通気下で過熱)、光照射(750〜1,250ルクスの光を試験区に照射)、硝酸カリウムの添加(水の代わりに0.2%硝酸カリウム溶液を発芽床に加える)、ジベレリン(GA)の添加(水の代わりに0.02〜0.1%GA溶液を発芽床に加える)、ポリエチレン袋による封入処理(発芽試験終了時に高い割合で新鮮不発芽種子が見出される場合は封入処理を行なってから再試験)の何れかの方法で休眠打破を行って発芽試験を行ない、発芽した個体数の百分率を発芽率として評価することが開示されている。
【0007】硬実による発芽遅延に対する対処方法としては、「国際種子検査規定」において、水の中に24〜48時間浸漬する、アカシア属では種子の容積の3倍量の沸騰した湯に放り込んで冷めるまで浸漬する、機械的な剥皮、濃硫酸による処理、1規定の硝酸に24時間浸漬する等の処理を行なった後に、発芽試験を行なう方法が開示されている。また、その他の方法として、「樹木の生長と環境、畑野健一・佐々木恵彦編、1993」において、酸素分圧を高めることによって容易に発芽に導かれることが開示されている。
【0008】摘出胚法における胚摘出前の処理方法としては、「国際種子検査規定」及び「農林種子学総論、中村俊一郎著、1985」において、種子又は果実を5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に15分間潰けた後に水でよく洗うべきであることが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、種子の発芽試験法として、個別の処理方法等については周知、公知の事実は多いが、休眠性の高い木本植物種子の発芽率を効率的に短期間で求める汎用性のある手法は、未だ提示されていない。実際の業務上において、こうした公知事実を容易に組み合わせて木本植物種子の適切な発芽試験法を導くことは困難を極めているのが実情である。
【0010】前述した「道路土工−のり面工・斜面安定工指針、1999」並びに「国際種子検査規定」による発芽試験は、例えばイネ科牧草(外来草本)のように発芽速度が早い従来から多用されてきた緑化用草本種子は、種子の貯蔵安定性に優れているため、施工前に種子の発芽率をチェックする必要がなく、発芽試験を行ったとしても、1週間程度の短期間で結果が導けるため問題は生じなかった。しかし、近年緑化工事で用いられるケースが増大している木本植物種子の多くは様々な休眠性を有しているものが多いため、その発芽速度は非常に遅く、郷土種の中には発芽の遅いものや発芽するまでに1〜2年を要するものも少なくない。そのため、従来の発芽試験方法では測定期間中にシャーレ等の発芽試験容器内にカビが大量に発生し、その発生したカビによって発芽能力を有している健全種子までもが腐敗してしまうため、正確な発芽率を測定することは困難であった。
【0011】「国際種子検査規定」に記載の発芽試験では、発芽速度の遅い種子に関しては1〜2ケ月の発芽試験期間が必要とされている。さらに木本植物種子のように強力な休眠性を有する個体では、休眠覚醒処理のため長期間の低温湿層処理(予冷処理)や低温湿層処理と高温湿層処理を組み合わせる等の処理を必要とする。その上、木本植物種子は、発芽速度が遅いことに加えて貯蔵性が低いために種子の劣化が速いことから、実際には、発芽率の測定前に必要となる長期間の休眠覚醒処理を行なってから発芽試験が終了するまでの間に種子の劣化が進行し、正確に発芽率を測定することは困難であった。
【0012】一方、「国際種子検査規定」に記載の胚摘出による発芽力試験では、通常の発芽試験が難しい発芽の遅い種、休眠性を有する種の発芽力を判断をする手法として定義されている。しかし、この摘出胚法は、種子の処理に手間がかかることに加え、大部分の木本植物種子においては測定期間が1週間以上に及ぶことから、早期に発芽率の検定が要求される緑化工事等の事業の実用面では、本手法を適用することができない。特に、工期等の制約から施工前に使用種子の品質の迅速なチェックを行なって播種量を求める必要がある場合には、期間的理由から適用不可能であった。
【0013】また、摘出胚法は、どのような生理的及び構造的特性を有している種子に対しても、種皮を除去して完全に胚を露出した状態で置床する。しかし、極小の種子等のように、種皮の除去が困難であったり、構造的に種皮の除去が困難な場合がある。さらに、こうした処理は実務的に非常に細かい作業であり、発芽試験に対応する程度の標本数の種子を処理して試験を実施するには、かなりの時間と手間を必要とする。
【0014】加えて、摘出胚法は、検査前処理として外種皮及び内種皮を除去する際に、外種皮を有する種子に対しては水中に一晩〜48時間浸漬した後に外種皮を除去し、さらに一晩〜72時間水中に浸漬して内種皮を除去して胚を露出させる必要がある。また、内種皮のみを有している種子に対しては、水中に24〜96時間浸漬した後に、内種皮を除去して胚を露出する必要がある。そして、さらに胚を露出した後の培養期間に5〜14日間必要となるため、試験期間として6〜18日間に亙る長い期間が必要となる。これらの方法は種子の劣化を促すことに留意していない。
【0015】尚、「国際種子検査規定」には、胚摘出による発芽力試験において特別指示が記されており、木本植物種子の取扱いとして、カエデ属(トネリコバノカエデ、イロハモミジを除く)、ナナカマド属、ニシキギ属、トネリコ属、リンゴ属、ナシ属、モンチコラマツ、バルカンゴヨウ、ストローブマツ、ヨーロッパハイマツ、シシマツ、ボスニアンシロマツ、ジェフリーマツ、チョウセンゴヨウ、ゴヨウマツ、サクラ属、シナノキ属について胚の取り出し方法が示されている。しかし、これらの方法のみでは、現在緑化工事等で使用されている多種類の木本植物には対応できない。
【0016】このように、「国際種子検査規定」が一部の木本種子に対して示している発芽力試験法は、不適切であるだけでなく、現在の緑化工事等で愛用されている多くの木本種子に対応したものではなく、木本植物を主体とする播種工のように施工前に実際に使用する種子の発芽率を早期に検定する必要がある場合における実用的な手法とはいえない。
【0017】近年の緑化工事では、従来の外来草本に代表される緑化用植物を主体に用いる緑化から、施工地周辺に生育している郷土樹木を用いた緑化に移り変わってきている。このような工事で用いられる自然採取された種子(計画採取する場合や住民参加によって採取する場合などがある。)は、採取地や採取年、採取時期、採取後の保管方法等によって発芽率が大きく変動する。従って、設計施工の実用面では、施工前に実際に使用する種子の発芽率を測定して播種量を設計したり修正したりする必要がある。こうした緑化工事を行なう上で、既存の発芽試験方法は時間的にも精度的にも不十分なものであり、迅速に発芽力を検定して設計に活用できる発芽率の検定システムの確立が急務となっており、社会的にもその早期確立が求められる。
【0018】木本植物種子は、草本植物種子とは異なる様々な構造を有しているだけでなく、種々の休眠様式を保有している。また、さらに種子の貯蔵過程での劣化速度が速く、その活力を短期間で判定することが困難であることから、土木施工(緑化工)は施工上の大きな困難に直面している。
【0019】以上の現状に鑑み本発明は、木本植物種子を対象とした、ほぼ7日以内という短期間で発芽率を検定するための種子の事前処置方法、種子の置床方法、種子の処理方法を含む発芽率検定方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、現在緑化工等で用いられている多様な木本植物種子のいずれにも適用可能な汎用性を有する方法を提供することを目的とする。さらに、かかる発芽率検定方法を実現することにより、環境問題が大きく取り上げられている時代の要請に応え、上述した諸問題を解決し、合理的緑化技術の基礎を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は、樹木種子(特に広葉樹種子)の構造上並びに休眠上の特性に関わらず、一定の試験条件(作業し易く、温度管理が経済的に済む室温(23℃近辺)の明所)で、1週間前後という短期間でそれらの種子母集団の平均発芽力あるいは発芽率を検定することを実現する。本発明による検定法は、全ての広葉樹種の種子構造と休眠性に応じたシステマティックな手法として適用可能な汎用性を具備しており、1週間前後でその発芽率や発芽力を検定することを実現した。本発明の具体的構成は以下の通りである。
【0021】(1)本発明の木本植物種子の早期検定法の第1の態様では、前記木本植物種子の生理的特性及び構造的特性に基づき該種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、前記選択された事前処置方法及び前記置床方法により前記種子を加工し、前記加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に前記選択された処理方法により置床し、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定する。
【0022】(2)本発明の木本植物種子の早期検定法の第2の態様では、前記第1の態様に加え、前記測定された発芽能力保有個体の割合又は発芽力と前記種子の実際の発芽率との相関関係を導出し、前記相関関係を適用することにより前記発芽能力保有個体の割合又は発芽力から前記種子の実際の発芽率を推定する。
【0023】(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記種子の置床方法が、少なくとも下記A〜Jに記載のいずれかの方法から選択される。
A:内種皮まで除去した後、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子切片を置床する方法。
B:内種皮のみが付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子切片を置床する方法。
C:外種皮が付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子切片を置床する方法。
D:上記A〜Cのいずれかの方法で種子組織を切断した後、さらに胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれかの側面、又は子葉組織及び胚乳組織の双方の側面も切断した種子切片を置床する方法。
E:内種皮まで除去した後、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
F:内種皮のみが付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
G:外種皮が付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
H:種子を強酸、強アルカリ、熱湯のいずれかに浸した後、又は、該外種皮若しくは内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
I:種子から胚を取り出して置床する方法。
J:既に発根している個体は幼根を根元から切除し、発根していない個体は幼根組織の先端部を切除した後、オーキシンを含む発芽床に置床する方法。
【0024】(4)上記(1)〜(3)のいずれかの態様において、加工された種子については、置床するに先立って該加工された種子を水洗浄する。
【0025】(5)上記(1)〜(4)のいずれかの態様において、前記種子の前記処理方法として、サイトカイニン、ジベレリン、チオウレア(チオ尿素)、硝酸カリウムのいずれかの溶液又はこれらの混合溶液を該種子に適した濃度及び混合比に調整した後、これを前記発芽試験床に加えてから置床する。
【0026】(6)上記(1)〜(5)のいずれかの態様において、前記種子の前記処理方法として、前記発芽試験床を高酸素分圧下に置く。
【0027】(7)上記(1)〜(5)のいずれかの態様において、前記種子の前記処理方法として、前記発芽試験床をエチレンガス、エチレンガスに二酸化炭素を加えた混合ガス、又はエチレンガスに二酸化炭素及び酸素を加えた混合ガス下に置く。
【0028】(8)上記(1)〜(7)のいずれかの態様において、前記種子の事前処置方法として、該種子の殺菌処理を行なう。
【0029】(9)上記(1)〜(8)のいずれかの態様において、前記種子の事前処置方法として、該種子を一晩水浸処理する。
【0030】(10)上記(1)〜(9)のいずれかの態様において、前記種子の事前処置方法として、該種子の外種皮又は内種皮の表面の油脂成分を除去する。
【0031】(11)上記(1)〜(10)のいずれかの態様において、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合を測定する際に、下記a)〜d)のいずれかの測定方法が選択される。
a):幼根組織が伸長した個体又は種子組織から幼根が突出した個体の割合を測定する方法。
b):幼根組織が重力方向に彎曲した個体の割合を測定する方法。
c):子葉組織が堅固なまま膨張した個体の割合又は子葉組織に葉緑素が形成されて緑色化した個体の割合を測定する方法。
d):不定根が形成された個体の割合を測定する方法。
【0032】(12)上記(1)〜(10)のいずれかの態様において、前記置床された種子について前記発芽能力保有個体の発芽力を測定する際に、下記i)〜v)のいずれかの測定方法が選択される。
i):一定期間内に伸長した幼根の長さを測定又は該幼根の長さを1日当りに換算する測定方法。
ii):一定期間内に増加した胚の重量を測定又は該胚の重量を1日当りに換算する測定方法。
iii):一定期間内に上記(11)の態様のa)〜d)のいずれかの測定方法により測定された発芽能力保有個体の割合を百分率で表す測定方法。
iv):一定期間内に伸長した不定根の長さを測定又は該不定根の長さを1日当りに換算する測定方法。
v):一定期間内での葉緑素の形成の程度を測定又は該葉緑素の形成の程度を1日当りに換算する測定方法。
【0033】(13)本発明の木本植物種子の品質証明法では、下記のア)又はイ)の少なくともいずれか一を提示することにより種子の早期品質証明を行う。
ア):上記(1)〜(12)のいずれかの態様の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力。
イ):上記(1)〜(12)のいずれかの態様の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力から推定された実際の発芽率。
【0034】(14)本発明の木本植物種子の播種量設計法では、下記のア)〜ウ)の少なくともいずれか一を用いることにより播種工における木本植物種子の単位播種量を算出する。
ア):上記(1)〜(12)のいずれかの態様の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合。
イ):上記(1)〜(12)のいずれかの態様の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力から推定された実際の発芽率。
ウ):上記(12)の態様の品質証明法により提示された発芽率。
【0035】
【作用】本発明は、木本植物種子の構造上並びに休眠上(生理的特性)の特性に拘らず、一定の試験条件(作業しやすく、温度管理が経済的にすむ室温23℃近辺の明所でl週間前後という短期間)で、それらの種子母集団の平均発芽力若しくは発芽率を求めることができる。従来手法には、全ての木本植物種子の発芽率や発芽力を1週間前後で確認できる汎用性はない。
【0036】従来の種子発芽力検定法においては、種子の発芽は自然界での気温の日変化に適応して順調に進行することから、発芽試験においても各々の種に応じた変温条件の設定を推奨している。しかし、この温度変動幅と温度域は様々であり、それらに応えるとすれば各々の種の温度自動管理型の施設を導入しなくてはならず、そのための投資額は莫大となり普及させ易い手法とはいえない。本発明は、エネルギーコストを最低に抑えることができる常温近辺の一定気温(23℃近辺(21〜25℃))の下で実施できる点で他に優っている。
【0037】種子の中には、発芽に際して暗所を好む嫌光性種子(例:アキグミ等)があるが、本発明は、例外なく作業し易い明所で試験を行える点で優位である。
【0038】樹木種子の休眠性は、その構造とも相侯って極めて複雑である上、種による後熟の速度は温度とも関わって著しく異なるために、自然界でも発芽を確認できる迄の期間は数日から2年に亙っている。しかし、当該方法では例外なく1週間前後で種子の品質を評価し、緑化工事等に活用できるか否か、あるいは設計の変更が必要であるかなどを確認することができる。
【0039】採取後にすぐに発芽を開始する種子(例:コナラ、ミズナラ等)は、種子採取者から納入された時点において既に幼根の突出(実質的発芽の第一歩)が起こり、またそれが枯死してしまっているような種子を緑化工事等に使用できるか否かの判断は、緑化(植生復元)や施工コストの面から極めて重要な事項である。当該手法においては、下胚軸組織が二次分裂組織活力をまだ保有している場合には、不定根としてその切断面の縁から側根・支根を分化可能であるという特質を利用し、通常は挿し木において不定根分化誘導剤として普及しているオーキシン(好適には人工オーキシン(NAA)等)を活用し、木本植物種子の検定に新しい可能性を切り開いた。
【0040】最終的には、試験結果提出までの必要経費を最低に抑えるために、それぞれの種子に適用する試験法は極力単純なものとし、かつ薬剤は最も安価なものを使用することを前提にシステム化を図った。
【0041】
【発明の実施の形態】本発明は、前述の摘出胚法を基本原理とし、これを発展させたものである。摘出胚法は、種子が発芽する際に必要になる水分や酸素の供給を図るため、幼根組織を含むような種子組織の切断、外種皮や内種皮の除去、種子からの胚の取出し等を含む事前処置方法、置床方法、処理方法を含み、短期間で発芽率や発芽力を測定しようとするものであるが、木本植物種子に汎用的に適用するには前述の通り種々の問題がある。
【0042】発明者らは、発芽試験の対象となる木本植物種子の生理的及び構造的特性に応じて個別に選択すべき種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を見出した。そして、試験対象の木本植物種子に対して選択された各方法を適用し、連続光照射条件下において、例えば23〜25℃の一定温度条件下の発芽試験床に置床することにより、発芽能力を有する個体の割合(以下、「発芽能力保有個体の割合」と称する)及び/又は発芽力を7日以内という短期間で測定することができ、これらの値から発芽率を推定可能であることを見出した。
【0043】具体的には、例えば、発芽能力保有個体の割合を以って発芽率としたり、予め統計的に求められた該割合又は発芽力と実際の発芽率の相関関係を示す関係式(検量線)から発芽率を推定する等の方法が採られる。以下、本発明による木本植物種子の早期検定法、早期品質証明法、及び播種量設計法の実施の形態を説明する。
【0044】(1)木本植物種子の早期検定法図1は、本発明による木本植物種子の早期検定法の手順を概略的に示した流れ図である。早期検定法の主要な工程としては、必要に応じて置床前に実施される事前処置ステップ、適切に選択された方法による置床ステップ、必要に応じて置床中に実施される処理ステップ、発芽能力保有個体の割合の測定ステップ、及び発芽力の測定ステップを含む。
【0045】(1-1)事前処置方法の選択及び実施ステップ図1のステップ11においては、置床前の事前処置の必要な木本植物種子に対して適切な事前処置方法を選択し、実施する。事前処置の不要な木本植物種子に対しては行われない。
【0046】(1-1-1)殺菌処理及び水洗浄カビの胞子や細菌を通常の水洗浄で除去できず、試験中にそれらの弊害を受けかねない樹種に対してのみ、前処理として次亜塩素酸ナトリウム等による殺菌処理とその後の水洗浄を実施する。発芽試験において、カビの発生は正確な発芽率や発芽力を測定する上で大きな障害となる。カビを防止するためには、例えば、種子に対して2%次亜塩素酸ナトリウムによる15分間の殺菌処理を行なった後、後述する適宜の処理方法を実施して発芽試験床に置床することにより対応できる。この方法は、種子の構造的な特性として、クサギ種子のように発芽孔が大きく、菌類が種子内部に侵入しやすい種子、ヤマモモ種子のように外種皮に果肉繊維が強固に付着した種子、トベラ種子のように内種皮から粘着物質を分泌して種子表面に菌類が付着しやすい種子等に対して適用することが望ましい。
【0047】(1-1-2)水中への浸漬ヤマウルシ種子、ヌルデ種子等のように、外種皮は硬いが種子組織は柔らかい種子は、実際問題として外種皮が硬いため、種子を切断する際に種子組織まで破壊してしまう割合が多くなる。そのため、種子を一晩水中に浸漬することによって外種皮を軟らかくし、切断の際に種子組織を破壊しないようにすることができる。この方法はカエデ類種子のように、外種皮を除去する際に外種皮が吸水することによって軟らかくなり、外種皮の除去が行いやすくなる場合や、トベラ種子のように吸水させることにより種子の切断が容易になる場合等に対しても適用するとよい。尚、この方法は、外種皮に限らず、内種皮の除去、切断に困難を要する場合にも適用できる。
【0048】(1-1-3)漂白又は洗浄種皮表面に粘液状物質やワックス状物質が付着している場合にのみ、種子による吸水・酸素呼吸を促すために、前処理として次亜塩素酸ナトリウム等による漂白か中性洗剤等による洗浄を行う。例えば、アカメガシワ種子等のように、種子の表面に油脂成分が付着しているものがある。このような種子は、油脂が種子の吸水を妨げることによって、発芽速度が遅くなってしまう。これらの種子は、例えば適量の中性洗剤等で種子の外種皮又は内種皮の表面の油脂成分をよく洗浄した後に置床を行うことにより、発芽速度を早くすることが可能になる。
【0049】(1-2)置床方法の選択ステップ図1のステップ12においては、種子の置床方法の選択を行う。前述の通り、「国際種子検査規定」に記載されている種子の処理は、種子によってはその構造的特性や種子が小さいため、実務的に外種皮や内種皮を取り除く作業自体に困難を伴うことがある。また、このような困難を伴う処理を行わなくても、植物ホルモンや発芽促進物質等を与えること、種子組織の切断等により、短期間で発芽力を測定することが可能な種子もある。発明者らは、これらの点について鋭意研究を重ねた結果、少なくとも次のA〜Jの置床方法を樹種毎に選択することにより、より合理的かつ迅速に発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定することができることを突き止めた。尚、置床方法には、種子の切断又は切除等、種子を物理的に加工することを含む。
【0050】(1-2-1)置床方法A置床方法Aは、内種皮まで除去した後、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子切片を置床する方法である。この方法は、種子が大型であることから作業が容易である種子や、外種皮及び内種皮の除去や種子組織の切断が容易にできる種子に対して適用する。この方法に適する種子としては、例えばアオキ(置床方法Dと併用)、シラカシ、アラカシ、ウバメガシ、クリ、チヤノキ、ガマズミ、キハダ、シャリンバイ、サンショウ、ナンキンハゼ、ヤブツバキ、スダジイ等があげられる。
【0051】(1-2-2)置床方法B置床方法Bは、内種皮のみが付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子切片を置床する方法である。この方法は、外種皮がなく種子組織の切断が容易である種子や、外種皮の除去や種子組織の切断は容易であるが、内種皮の剥離に困難を有する種子に対して適用する。この方法に適する種子としては、例えばイタチハギ、ヤマハギ、コマツナギ、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、ウワミズザクラ、アキグミ、イヌツゲ、イボタノキ、エゴノキ、コマツナギ、サザンカ、サネブトナツメ、センダン、トベラ、ナツハゼ、ナナカマド、ナンテン、ネムノキ、ハナミズキ、フヨウ、マサキ、モッコク、ヤマブキ、ヤマボウシ、ヤマモモ、ナツツバキ、ヒメシャラ、ホルトノキ、マテバシイ(置床方法Dと併用)等があげられる。
【0052】(1-2-3)置床方法C置床方法Cは、外種皮が付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように子葉組織若しくは胚乳組織のいずれか、又は子葉組織及び胚乳組織の双方を切断した種子組織を置床する方法である。この方法は、種子組織の切断は容易であるが、外種皮及び内種皮の剥離に困難を有する種子に対して適応する。この方法に適する種子としては、例えばウメモドキ、ヌルデ、ノイバラ、ヤマウルシ、ヤマハゼ、ツリバナ、ブナ、オヒョウ、ハシドイ、ムラサキハシドイ、キハダ等があげられる。
【0053】(1-2-4)置床方法D置床方法Dは、上記A〜Cのいずれかの方法で種子組織を切断した後、さらに胚又は胚の幼根組織を含むように、子葉組織若しくは胚乳組織のいずれかの側面、又は子葉組織及び胚乳組織の双方の側面も切断した種子切片を置床する方法である。種子を切断する場合は、通常一箇所しか切断を行わない。しかし、酸素や水分の供給をさらに高めるため、又は発芽床に加える植物ホルモンや発芽促進物質等が幼根組織に早期に染み渡るように幼根組織を含むように側面も切断し、幼根組織を含んだ種子組織がブロック状になるようにして置床することにより、発芽速度を速めることが可能となる。この方法は、上述した置床方法A〜Cのいずれかと併用する点で効果的である。この方法に適する種子としては、例えば、置床方法Aを併用するものとして、アオキ、アラカシ、シラカシ、ウバメガシ、クリ、チャノキ等、置床方法Bを併用するものとして、マテバシイ等、後述する置床方法Jを併用するものとしてアベマキ、クヌギ等があげられる。
【0054】(1-2-5)置床方法E置床方法Eは、内種皮まで除去した後、切断せずにそのまま置床する方法である。この方法は、外種皮及び内種皮の除去は容易であり、種子組織の切断を行わなくても短期間で発芽する種子、植物ホルモンや発芽促進物質等を発芽床に加えることによって短期間で発芽する種子、種子が小さいため種子の切断に困難を有する種子、子葉組織が入り組んで種子組織を構成しているため切断を行うと種子組織が細かい断片になる種子に対して適用する。ここでいう子葉組織が入り組んで種子組織を構成している種子とは、種皮の内側に子葉組織が渦巻状になっているような種子をいう(以下同じ)。この方法に適する種子としては、例えばシャリンバイ、チャノキ、ナンキンハゼ、ヤブツバキ等があげられる。尚、これら本方法Eの適用種子であるシャリンバイ、チャノキ、ナンキンハゼ、ヤブツバキは、通常の場合、より発芽速度が速くなる置床方法Aを用いる方が好適である。
【0055】(1-2-6)置床方法F置床方法Fは、内種皮のみが付いたまま、切断せずにそのまま置床する方法である。この方法は、もともと外種皮は存在しなかったり外種皮の除去は容易であるが、内種皮の除去には困難を要し、種子組織の切断を行わなくても短期間で発芽する種子、植物ホルモンや発芽促進物質等を発芽床に加えることによって短期間で発芽する種子、種子が小さいため種子の切断に困難を有する種子、子葉組織が入り組んで種子組織を構成しているため切断を行うと種子組織が細かい断片になる種子に対して適用する。この方法に適する種子としては、例えばカエデ類(イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジ、トネリコバノカエデ、ウリハダカエデ)、アカメガシワ、クコ、クサギ、クスノキ、クチナシ、ノリウツギ、ウジウツギ、ウラジロフジウツギ、サカキ、ムクゲ等があげられる。
【0056】(1-2-7)置床方法G置床方法Gは、外種皮が付いたまま、切断せずにそのまま置床する。この方法は、外種皮及び内種皮の除去に困難を要し、種子組織の切断を行わなくても短期間で発芽する種子、植物ホルモンや発芽促進物質等を発芽床に加えることによって短期間で発芽する種子、種子が小さいため種子の切断に困難を有する種子、子葉組織が入り組んで種子組織を構成しているため、切断を行うと種子組織が細かい断片になる種子に対して適用する。この方法に適する種子としては、例えばカンバ類(ダケカンバ、シラカンバ)、ハンノキ類(ヤマハンノキ、ヤシャブシ)、アキニレ、カツラ、ケヤキ、サルスベリ、ピラカンサ、ムラサキシキブ、ユキヤナギ等があげられる。
【0057】(1-2-8)置床方法H置床方法Hは、外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸、強アルカリ、熱湯のいずれかに浸した後、又は、該外種皮若しくは内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法である。この方法は、主に硬実種子に対して用いる。外種皮又は内種皮の除去や種子の切断を行うと、幼根組織、子葉組織、胚乳等の破壊を招く等して、外種皮又は内種皮の除去作業に困難を要し、置床方法Gを用い、植物ホルモン等を加えても外種皮又は内種皮があるために種子への水分や酸素等の供給が妨げられることから長期間の試験期間が必要な個体に対して適用する。この場合、種子を強酸の場合は濃硫酸等、強アルカリの場合は次亜塩素酸ナトリウム等に浸すことにより、外種皮若しくは内種皮を薄くした後、熱湯に浸すことにより外種皮や内種皮を軟らかくした後、外種皮若しくは内種皮の一部を物理的に傷つけた後、置床する。この方法に適する種子としては、例えばイイギリ、エノキ等があげられる。
【0058】(1-2-9)置床方法I置床方法Iは、種子から胚を取り出して置床する方法である。この方法は、種子組織から胚を容易に取り出すことができる種子に対して適用する。この方法に適する種子としては、例えばネズミモチ等があげられる。
【0059】(1-2-10)置床方法J置床方法Jは、種子が結実して落下した直後に発根する個体又は貯蔵中に発根しやすい個体の場合に、既に発根している個体については幼根を根元から切除し、発根していない個体については幼根組織の先端部を切除した後、オーキシンを含む発芽床に置床する方法である。この方法は、ナラ類等のように種子が結実して落下した直後に発根する種子又は貯蔵中に発根しやすい種子に対して適用する。既に発根している個体については幼根を根元から切除し、発根していない個体については幼根組織の先端部を切除し、オーキシン(好適にはNAA)を含む発芽床に置床することによって対応する。この方法に適する種子としては、例えばアベマキ、クヌギ(置床方法Dと併用)、コナラ、ミズナラ等のように、結実して落下した直後に発根したり、貯蔵中に発根を開始してしまった種子に適用する。
【0060】(1-3)処理方法の選択ステップ図1のステップ13においては、種子の処理方法の選択を行う。本発明における木本植物種子の処理方法とは、木本植物種子の置床期間中に木本植物種子に対して所定の環境条件を付与するための処理の方法をいう。それぞれの種子の構造的特性に応じて上記置床方法A〜Jのいずれかに記載した処理を行って置床しても、種子の生理的休眠の強度、胚の生長速度等の種子の生理的特性、あるいは外種皮及び内種皮の除去や種子の切断が極めて困難な構造的特性等の原因により、7日以内に発芽しない種子もあり得る。7日以内に発芽しないような樹種の種子は、正確な値を測定することができない。しかしながら、このような種子であっても、置床中に発芽促進処理を並行して行うことにより発芽速度を早め、7日以内に正確な値を測定することが可能になる。
【0061】(1-3-1)生長促進溶液による処理種子が生理的休眠性を有する場合、胚の生長が遅い場合、種子の構造的特性により外種皮及び内種皮の除去や切断が困難である場合等は、ベンジルアデニン(BA)、ジベレリン(GA)、チオウレア、硝酸カリウムのいずれかの溶液又はこれらの混合溶液を該種子に適した濃度及び混合比に調整した後、これを発芽試験床に加えてから置床することにより、検査期間を短縮させることができる。具体的には、発芽床である濾紙等にそれぞれの溶液を染み込ませて行うとよい。サイトカイニンの代表であるBA、及び加水分解酵素群の活性化誘導のためのGAは、植物ホルモンであり、これらにより還元力(NADPH)生産性向上と、それによる子葉展開力の誘導が得られる。BA及びGAは、幼根、胚軸、子葉の生長を促すため、全ての種子に対して適用できる。BA及びGAの濃度はそれぞれの生理的休眠の強度、胚の生長速度、種子の大きさ等によって変える。基本的には、生理的に休眠が強い場合、胚の生長が遅い場合、種子の大きさが大きい場合ほど高濃度になる。また、休眠がさらに強い場合等にはBAとGAの混合液の使用が有効である。休眠打破剤としてのチオウレアは、幼根及び胚軸の生長のみを促すもので、子葉の生長を促す効果は小さく、発芽後の生長を促進するようなものではないが、種によっては休眠打破作用がある。従って、カエデ類の種子のように、子葉の生長はほぼ完了しており、幼根及び胚軸の生長のみで発芽する種子に対して適用する。チオウレアの濃度はそれぞれの休眠の強度、種子の大きさ等によって変える。基本的に休眠が強い場合や種子の大きさが大きいほど高濃度が必要になる。BAやGAでも同様の効果はあるが、これらの物質は価格的に高額である。これに対して、チオウレアは安価なため、生理的な特性によってチオウレアを用いることができる種子に対して用いることにより、安価に試験を行うことが可能になる。電子受容体並びにアミノ酸原料としての硝酸カリウムは、種子の呼吸促進とアミノ酸、タンパク質の生合成を補うことにより発芽を促進させるものである。ダケカンバ種子のように小型の種子は、アミノ酸、タンパク質の貯蔵量が少ないため、硝酸カリウムを与えることにより7日以内という短期間で発芽力を測定することが可能となる。この方法は、硝酸カリウムを単独で添加するほか、植物ホルモンやチオウレアだけでは短期間で発芽しない種子に対しては、さらに添加すると有効である。硝酸カリウムの濃度はそれぞれの休眠の強度、種子の大きさ等によって変える。基本的に休眠が強い場合や種子の大きさが大きいほど高濃度が必要になる。
【0062】(1-3-2)高酸素分圧による処理種子が生理的休眠性を有する場合、胚の生長を促す必要がある場合、種子の構造的特性により外種皮及び内種皮の除去や種子の切断が困難である場合等は、別の方法として発芽試験床を高酸素分圧下に置くことにより対応できる。種子は、発芽する際に呼吸して発芽に必要なエネルギー生産を行っていることから、酸素濃度を高めた条件下で置床することによって種子の呼吸活性を高め、発芽速度を速くすることが可能になる。具体的には、それぞれの種子を置床したシャーレを、例えばデシケーターのような密閉減圧ができる容器に入れ、その容器内の気体を酸素と置き換えて置床する。また、休眠が強力な種子の場合や胚の生長が非常に遅い場合等は、上記方法(1-3-1)の方法と組み合わせることによって発芽速度を速くすることが可能になる。
【0063】(1-3-3)生長促進ガスによる処理種子が生理的休眠性を有する場合、胚の生長を促す必要がある場合、種子の構造的特性により外種皮及び内種皮の除去や種子の切断を行なうことが困難である場合等は、さらに別の方法として、発芽試験床をエチレンガス、エチレンガスに二酸化炭素を加えた混合ガス、又はエチレンガスに二酸化炭素及び酸素を加えた混合ガス下に置くことにより発芽期間を短縮させることができる。エチレンガスを加えることによって、種子の呼吸活性を高め発芽が促進される。そこに二酸化炭素を加えることで必要な炭素骨格を補充することにより、エチレンガスの効果が増し、酸素を加えることでエチレンガスの呼吸活性効果が強められ、更に発芽速度を早くすることが可能になる。具体的には、それぞれの種子を置床したシャーレを、例えばデシケーターのような密閉できる容器に入れ、その容器内に規定の濃度のエチレンガスを加えて置床する。エチレンガスの濃度は、種子の休眠の強度、胚の生長の速度、種子の大きさ等によって変える。また、エチレンガスと共に、種子の生長に必要な炭素骨格を与える二酸化炭素、若しくはさらに呼吸に必要な酸素を混合した混合ガスを加えることによって発芽速度を速くすることができる。なお、休眠が強力な種子や胚の生長が非常に遅い場合等は、上記(1-3-1)の方法と組み合わせることによって、発芽速度を速くすることが可能になる。
【0064】(1-4)置床方法及び処理方法の実施ステップ図1のステップ14において、上記ステップ12及び13で選択された置床方法及び処理方法に従って置床方法及び処理方法を実施し、置床前には置床する個体を十分水洗浄する。ステップ14の作業では、果皮を除去したり種子を切断する作業が伴うため、置床前にみず洗浄を行うことによりカビ等の発生を抑制することができる。特に、切断に伴って種子から分泌される物質を洗浄によって取り除くことは、カビの発生を抑える上で重要である。置床及び処理の方法の実施においては、対象とする木本植物種子を、それぞれ種子の大きさに適した径のシャーレ内に置床し、発芽床には湿らせた濾紙を適用して、23℃下に置床することが標準的な方法となる。なお、シャーレ以外の容器やその他の素材の発芽床を用いても差し支えない。温度条件も限定されるものではないが、本発明の検定法では常温近傍の一定温度下で検定を完了できることに特徴がある。
【0065】(1-5)発芽能力保有個体の割合の測定ステップ図1のステップ15においては、上記のような置床方法及び処理方法を実施した種子の発芽能力保有個体の割合を測定する。具体的な測定方法として、その種子が発芽能力を有していると判断する基準として次のa)〜d)のいずれを樹種に応じて選択し適用する。そして、測定の結果得られた割合の「数値」を「発芽能力保有個体の割合」とする。
【0066】(1-5-1)測定方法a)幼根組織が伸長した個体又は種子組織から幼根が突出した個体の割合を測定する。
【0067】(1-5-2)測定方法b)幼根組織が重力方向に彎曲した個体の割合を測定する。
【0068】(1-5-3)測定方法c)子葉組織が堅固なまま膨張した個体の割合又は子葉組織に葉緑素が形成されて緑色化した個体の割合を測定する。
【0069】(1-5-4)測定方法d)不定根が形成された個体の割合を測定する。
【0070】(1-6)発芽力の測定ステップ図1のステップ16においては、上記のような置床方法及び処理方法を実施した種子の発芽力を測定する。具体的な測定方法として、次のi)〜v)のいずれかを選択し適用することが有効である。そして、測定の結果得られた「数値」を「発芽力」とする。
【0071】(1-6-1)測定方法i)一定期間内(好適には7日以内)に種子組織内から伸長又は種子組織を突き破り伸長した幼根の長さ又はこの値を1日当りに換算した伸長した長さを「数値」とする。
【0072】(1-6-2)測定方法ii)置床する前の胚の重量を測定しておき、一定期間内(好適には7日以内)に再び胚の重量を測定し、算出した胚の重量増加率又はこの値を1日当たりに換算した重量増加率を「数値」とする。
【0073】(1-6-3)測定方法iii)一定期間内(好適には7日以内)に、前述の発芽能力保有個体の割合の測定方法a)〜d)のいずれかの方法により生長を示した個体の割合を定期的に測定した発芽勢を以って発芽力とし、生長を示した個体の百分率を「数値」とする。
【0074】(1-6-4)測定方法iv)一定期間内(好適には7日以内)に伸長した不定根の長さ又はこの値を1日当りに換算した伸長した長さを「数値」とする。
【0075】(1-6-5)測定方法v)
一定期間内(好適には7日以内)での葉緑素の形成の程度を測定又は該葉緑素の形成の程度を1日当りに換算した値を「数値」とする。葉緑素の形成の程度を計測する方法としては、例えば、葉緑素計(比色計)等公知の方法が利用できる。
【0076】(2)木本植物種子の早期品質証明方法図2は、本発明による木本植物種子の早期品質証明方法の手順を概略的に示した流れ図である。品質証明方法の主要な工程には、検量線の作成ステップ20と、発芽率推定及び品質証明ステップ30の2段階のステップが含まれる。
【0077】(2-1)検量線の作成ステップ図2のステップ20は、検量線の作成ステップである。このステップ20は、次の発芽率推定及び品質証明ステップ30を実施するにあたり必要な検量線を予め作成するステップである。検量線は、木本植物種子の早期検定法を実施して得られた発芽力(の数値)と、実際に当該種子を播種した後に得られる実際の発芽率との相関関係を表したグラフである。また、検量線の別の例として、発芽能力保有個体の割合の測定結果(数値)と実際の発芽率との相関関係を表したグラフも含まれるものとする。図2のステップ21において、前述の早期検定法を実施して発芽能力保有個体の割合又は発芽力を数値として得る。これと並行して別途、ステップ22において実際に当該種子を播種した場合の実際の発芽率を測定する。そして、ステップ23において、発芽力等と実際の発芽率との間に導出された相関関係をグラフに表し、検量線を作成する。図3は、ステップ20により作成された検量線の一例を示すグラフである。この検量線は、発芽力と実際の発芽率との相関関係を示している。尚、相関関係を図示のようなグラフで表現することは、好適例であるが、発芽能力保有個体の割合又は発芽力と実際の発芽率との間に導出された相関関係を示すものであれば、その表現形式は任意である。
【0078】(2-2)発芽率推定及び品質証明ステップ予めステップ20により検量線を得た後、ステップ30の発芽率推定及び品質証明ステップを実施する。ステップ31では、品質証明の対象とする木本植物種子に対して前述の早期発芽率検定法を実施し、発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を数値として得る。次にステップ32において、得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力に検量線を適用することにより、検量線から得られる発芽率の数値を実際の発芽率として推定する(以下、「推定発芽率」と称する)。この方法は、比較的生理的休眠性が低い樹木に対して容易に適用できる。そしてステップ33において、ステップ32で得た推定発芽率により、又は、ステップ32で得た推定発芽率並びにステップ31で得た発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力により品質証明を行う。「品質証明を行う」とは、具体的には例えば、得られた数値データを品質証明書等の形態で表現し、状況に応じて測定方法や状況写真等の補足説明を提示することが含まれる(以下、同様)。これにより、木本植物種子の品質証明を短期間(好適には7日以内)で行うことを実現する。
【0079】(3)木本植物種子の播種量設計法図4は、本発明による木本植物種子の播種量設計法の手順を概略的に示した流れ図である。播種量設計法の主要な工程には、発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力の測定ステップ、検量線の適用による発芽率推定ステップ、並びに品質証明ステップのうち1又は複数のステップにより発芽率を得るステップと、得られた発芽率を用いた播種量の決定ステップとが含まれる。
【0080】(3-1)発芽能力保有個体の割合及び発芽力の測定ステップステップ41においては、播種の対象とする木本植物種子に対して前述の早期検定法を実施し、発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を数値として得る。
【0081】(3-2)発芽率推定ステップステップ42においては、前述の図2のステップ20と同様に予め得た検量線をステップ41で得た発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力に適用し、実際の発芽率を推定した推定発芽率を得る。
【0082】(3-3)品質証明ステップステップ43においては、ステップ42で得た推定発芽率により、又は、ステップ42で得た推定発芽率並びにステップ41で得た発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力により品質証明を行う。
【0083】(3-4)播種量の決定ステップステップ44においては、播種工の実施に当たって木本植物種子の単位播種量を算出することにより決定する。播種量の決定は、ステップ41で得られた発芽能力保有個体の割合を用いる場合、ステップ42で得られた推定発芽率を用いる場合、又は、ステップ43で得られた品質証明に含まれる発芽率を用いる場合があり得る。いずれの場合も、本発明の早期検定法により7日以内の一定期間内に信頼性のある数値データを確実に得ることができる。これにより、これまで利用が困難であった郷土樹木種子の緑化工への適用を大幅に推進することが可能となり、郷土種を用いた生物多様性を考慮した植生復元が効率的に行なえるようになる。また、緑化工に用いる種子のほか、苗木生産等の分野においても、本手法を活用して発芽率を検定することにより、効率的な苗木生産を行うことができる。
【0084】(4)本発明の適用例本発明による木本植物種子の早期検定法は、種子の特性に応じて処理方法等を適宣選択し、7日以内という短期間で発芽率を推定する方法である。この方法を効率的に活用するためには、前述の事前処置方法、置床方法、処理方法の各方法を効果的に組み含わせることが好適である。特に、発芽率検定においては種子の生理的休眠との関係が強く関係する。種子は必ず生理的休眠を保持しており、すぐ発芽するものは休眠が非常に弱く、なかなか発芽しないものは休眠が強い。具体的な検査手法を組み合わせる一例を示すと次のとおりである。
【0085】(4-1)生理的休眠が非常に弱い場合外種皮又は内種皮が付いた種子をそのまま置床する(上記置床方法F〜Gを選択する)。
【0086】(4-2)生理的休眠が弱い場合外種皮若しくは内種皮の除去を行ったり種子の切断を行う(上記置床方法A〜E又はHを選択する)。
【0087】(4-3)生理的休眠が強い場合作業性や種子の構造等を踏まえて、可能な限り外種皮、内種皮の除去、種子の切断を行い、さらにBA、GA、チオウレア、硝酸カリウム、若しくはこれらの混合液を与える方法(上記(1-3-1)の処理方法)を併用する。また、作業性や種子の構造により、外種皮、内種皮の除去、種子の切断が行えない場合は、上記置床方法F〜Gを用い、上記の発芽促進物質を与える。
【0088】(4-4)生理的休眠が非常に強い場合上記(4-3)の「強い場合」で解説した方法に、高酸素分圧下に置床する方法(上記(1-3-2)の処理方法)のほか、エチレンガス又はこれに二酸化炭素を、若しくはさらに酸素を加えた混合ガスを加える方法(上記(1-3-3)の処理方法)を併用する。
【0089】(4-5)胚が未熟である後熟型休眠の場合作業性や種子の構造等を踏まえて、可能な限り外種皮、内種皮の除去、種子の切断を行い、未熟な胚を生長させるため、植物ホルモンであるBA、GA若しくはこれらの混合液を加える方法(上記(1-3-1)の処理方法)を併用する。後熟型休眠の場合は子葉の生長も促す必要があるため、子葉の生長効果が小さいチオウレアは適用しない方が望ましい。また、植物ホルモンを加えても不十分な場合は、高酸素分圧下に置床する方法のほか、エチレンガス又はこれに二酸化炭素、若しくはさらに酸素を加えた混合ガスを加える方法(上記(1-3-3)の処理方法)を併用する。
【0090】(4-6)硬実型休眠の場合硬い外種皮又は内種皮が種子組織への水分及び酸索の供給を妨げることによる休眠である。従って、硬い外種皮又は内種皮の影響をなくすため、これらの除去や種子の切断、強酸又は強アルカリ処理、これらに物理的に傷をつける等の処理(上記(1-2)の置床方法のうち置床方法G以外の全ての置床方法)を行う。具体的には、種子の構造や作業性等を踏まえて、置床方法G以外の適した置床方法を適用する。なお、例外として、アカメガシワは硬い内種皮があるが、これを取り除くことは困難であることから、内種皮の除去、種子の切断を行わずに、植物ホルモンを与えて短期間で発芽させるとよい。
【0091】
【発明の効果】本発明の効果は、第1に全ての種類の木本植物種子(特に広葉樹種子)に適用可能な、種子発芽率の早期検定法を実現したことである。第2にこれを基礎にして使用種子母集団あるいは売買種子母集団の品質証明法となすことが可能となる。即ち、本検定法によって直接・間接的に種子母集団の発芽率を推計できることになり、種子品質の保証並びに取り扱い指針を提供できることになる。第3に、推計された種子発芽率に基づいて、播種工法による緑化工事における木本種子の適正な播種・混合量を設定することによって、施工発注者に応える最も合理的な施工計画を提示できることになる。また、それぞれの木本植物種子固有の様々な構造上の特性並びに休眠・劣化に関する生理的特性を熟知した上での種子品質の認知であるために、ここで得られた品質保証を基礎として行われる設計・施工計画はより高い確実性を有することになる。
【0092】具体的効果として、本発明によれば、7日以内という短期間で対象植物の発芽力を有する個体の割合を測定できることから、種子の劣化を生じることなく正確な発芽能力を有する個体の割合を効率的かつ迅速に測定することが可能となる。また、種子の特性によって外種皮や内種皮が付いたまま種子組織を切断することや、外種皮や内種皮がついたままで置床することが可能になる種子が大部分を占めるため、従来の摘出胚法のように全ての種類の種子に対して完全に胚を露出する必要はなく、作業性を大幅に容易にすることが可能となる。さらに外種皮や内種皮の除去や、種子の切断を行う前に浸漬処理が必要となる種類の種子もあるが、本発明によればどの種類の種子に対しても浸漬処理期間は一晩でよいことから、試験期間の大幅な短縮化が実現する。
【0093】緑化工事においては、種子という生き物を取り扱う性格上、施工時期が限定されることから、施工前に迅速な発芽率の計測が求められる。本手法は、こうした場合に極めて有効な方法であり、実際問題として木木植物種子への適用が困難であった従来の発芽試験法に代わる検定法として社会的にも大きく貢献できるものである。特に、本発明の方法はその全ての場合において最長でも7日以内に発芽率を検定することができる。従って、これまで発芽試験の適用が困難であった強い休眠を有する種子でも7日以内という短期間で発芽率を検定することを可能とした。これは、地域住民によって自然採取した種子を活用する緑化工事等のように種子の品質を事前に早急に確認しなければならない場合において極めて有効な方法である。また、緑化工事に用いる種子のほか、苗木生産等の分野においても、本手法を活用して発芽率を検定することにより、効率的な苗木生産を行うことができる。
【0094】この発芽力検定法を用いて種子の品質証明を行なうことにより、これまでよりも精度が高くかつ早期に種子の品質を証明することが可能となる。また、この検定結果(品質証明)を用いて緑化工事における木本植物種子の播種量を設定することにより、郷土樹木種子を設計に組み入れることを容易にし、その結果種子の無駄のない確実性の高い緑化工事を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】392012261
【氏名又は名称】東興建設株式会社
【識別番号】392007577
【氏名又は名称】日本合同肥料株式会社
【出願日】 平成13年3月26日(2001.3.26)
【代理人】 【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
【公開番号】 特開2002−281809(P2002−281809A)
【公開日】 平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願番号】 特願2001−87750(P2001−87750)