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【発明の名称】 木本植物種子の早期検定法
【発明者】 【氏名】吉田 寛

【氏名】長 信也

【氏名】秋元 利之

【氏名】江刺 洋司

【要約】 【課題】木本植物種子を対象としたほぼ7日以内という短期間で発芽率を検定するための種子の発芽率検定方法を提供する。

【解決手段】木本植物種子の構造的特性に基づき種子を分類し、その分類及び生理的特性に応じて事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、選択された方法により種子を加工し、加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に選択された処理方法により置床し、置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を7日以内で測定し、測定された発芽能力保有個体の割合又は発芽力と実際の発芽率との相関関係を導出し、相関関係を適用して発芽能力保有個体の割合又は発芽力から実際の発芽率を推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 木本植物種子の早期検定法において、前記木本植物種子の構造的特性に基づき該種子を分類し、前記種子の分類及び前記種子の生理的特性に応じて該種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、前記選択された事前処置方法及び前記置床方法により前記種子を加工し、前記加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に前記選択された処理方法により置床し、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定することを特徴とする木本植物種子の早期検定法。
【請求項2】 木本植物種子の早期検定法において、前記木本植物種子の構造的特性に基づき該種子を分類し、前記種子の分類及び前記種子の生理的特性に応じて該種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、前記選択された事前処置方法及び前記置床方法により前記種子を加工し、前記加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に前記選択された処理方法により置床し、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定し、前記測定された発芽能力保有個体の割合又は発芽力と前記種子の実際の発芽率との相関関係を導出し、前記相関関係を適用することにより前記発芽能力保有個体の割合又は発芽力から前記種子の実際の発芽率を推定することを特徴とする木本植物種子の早期検定法。
【請求項3】 前記木本植物種子の構造的特性に基づき該種子を分類する場合に、該種子を少なくとも完全胚未熟型種子、胚未熟型種子、胚成熟型種子、硬実型種子のいずれかに分類することを特徴とする請求項1又は2に記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項4】 前記完全胚未熟型種子に分類される種子の置床方法が、少なくとも下記(1-A)〜(1-F)に記載のいずれかの方法から選択されることを特徴とする請求項3に記載の木本植物種子の早期検定法。
(1-A):内種皮まで除去した後、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する方法。
(1-B):内種皮のみが付いたまま、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する方法。
(1-C):外種皮が付いたまま、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する方法。
(1-D):上記(1-A)〜(1-C)のいずれかの方法で胚乳組織を切断した後、さらに胚を含むように該胚乳組織の側面を切断した種子切片を置床する方法。
(1-E):種子から胚を取り出して置床する方法。
(1-F):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
【請求項5】 前記胚未熟型種子に分類される種子の置床方法が、少なくとも下記(2-A)〜(2-I)に記載のいずれかの方法から選択されることを特徴とする請求項3に記載の木本植物種子の早期検定法。
(2-A):内種皮まで除去した後、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(2-B):内種皮のみが付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(2-C):外種皮が付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(2-D):上記(2-A)〜(2-C)に記載のいずれかの方法で胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織切断した後、さらに胚又は胚の幼根組織を含むように該胚乳組織又は該胚乳組織及び該子葉組織の側面を切断した種子切片を置床する方法。
(2-E):種子から胚を取り出して置床する方法。
(2-F):内種皮まで除去した後、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(2-G):内種皮のみが付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(2-H):外種皮が付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(2-I):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
【請求項6】 前記胚成熟型種子に分類される種子の置床方法が、少なくとも下記(3-A)〜(3-I)に記載のいずれかの方法から選択されることを特徴とする請求項3に記載の木本植物種子の早期検定法。
(3-A):内種皮まで除去した後、胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(3-B):内種皮のみが付いたまま、胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(3-C):外種皮が付いたまま、胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(3-D):上記(3-A)〜(3-C)のいずれかの方法で子葉組織を切断した後、さらに胚の幼根組織を含むように子葉組織の側面を切断した種子切片を置床する方法。
(3-E):内種皮まで除去した後、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(3-F):内種皮のみが付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(3-G):外種皮が付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(3-H):種子が結実して落下した直後に発根する個体又は貯蔵中に発根しやすい個体の場合、既に発根している個体は幼根を根元から、発根していない個体は幼根組織の先端部を切除した後、オーキシンを含む発芽床に置床する方法。
(3-I):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
【請求項7】 前記硬実型種子に分類される種子の置床方法が、少なくとも下記(4-A)〜(4-D)に記載のいずれかの方法から選択されることを特徴とする請求項3に記載の木本植物種子の早期検定法。
(4-A):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に完全胚未熟型種子に分類できる場合は、前述の完全胚未熟型種子における(1-A)〜(1-E)のいずれかの方法で置床する方法。
(4-B):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に胚未熟型種子に分類できる場合は、前述の胚未熟型種子における(2-A)〜(2-G)のいずれかの方法で置床する方法。
(4-C):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に胚成熟型種子に分類できる場合は、前述の胚成熟型種子における(3-A)〜(3-F)のいずれかの方法で置床する方法。
(4-D):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸、強アルカリ、熱湯のいずれかに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮のを物理的に傷付けた後置床する方法。
【請求項8】 加工された種子については、置床するに先立って該加工された種子を水洗浄することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項9】 前記種子の前記処理方法として、サイトカイニン若しくはジベレリンの溶液又はこれらの混合溶液を該種子に適した濃度及び混合比に調整した後、これを前記発芽試験床に加えてから置床することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項10】 前記種子の前記処理方法として、チオウレア若しくは硝酸カリウムの溶液又はこれらの混合溶液を該種子に適した濃度及び混合比に調整した後、これを前記発芽試験床に加えてから置床することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項11】 前記種子の前記処理方法として、前記発芽試験床を高酸素分圧下に置くことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項12】 前記種子の前記処理方法として、前記発芽試験床をエチレンガス、エチレンガスに二酸化炭素を加えた混合ガス、又はエチレンガスに二酸化炭素及び酸素を加えた混合ガス下に置くことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項13】 前記種子の事前処置方法として、該種子の殺菌処理を行なうことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項14】 前記種子の事前処置方法として、該種子を一晩水浸処理することを特徴とする請求項l〜13のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項15】 前記種子の事前処置方法として、該種子の外種皮又は内種皮の表面の油脂成分を除去することを特徴とする請求項l〜14のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
【請求項16】 前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合を測定する際に、下記a)〜d)のいずれかの測定方法が選択されることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法。
a):幼根組織が伸長した個体又は種子組織から幼根が突出した個体の割合を測定する方法。
b):幼根組織が重力方向に彎曲した個体の割合を測定する方法。
c):子葉組織が堅固なまま膨張した個体の割合又は子葉組織に葉緑素が形成されて緑色化した個体の割合を測定する方法。
d):不定根が形成された個体の割合を測定する方法。
【請求項17】 前記置床された種子について前記発芽能力保有個体の発芽力を測定する際に、下記i)〜v)のいずれかの測定方法が選択されることを特徴とする請求項1〜15に記載の木本植物種子の早期検定法。
i):一定期間内に伸長した幼根の長さを測定又は該幼根の長さを1日当りに換算する測定方法。
ii):一定期間内に増加した胚の重量を測定又は該胚の重量を1日当りに換算する測定方法。
iii):一定期間内に請求項16に記載のa)〜d)のいずれかの測定方法により測定された発芽能力保有個体の割合を百分率で表す測定方法。
iv):一定期間内に伸長した不定根の長さを測定又は該不定根の長さを1日当りに換算する測定方法。
v):一定期間内での葉緑素の形成の程度を測定又は該葉緑素の形成の程度を1日当りに換算する測定方法。
【請求項18】 下記のア)又はイ)の少なくともいずれか一を提示することにより種子の品質証明を行うことを特徴とする木本植物種子の早期品質証明法。
ア):請求項1〜17のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力。
イ):請求項1〜17のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力から推定された実際の発芽率。
【請求項19】 下記のア)〜ウ)の少なくともいずれか一を用いることにより播種工における木本植物種子の単位播種量を算出することを特徴とする木本植物種子の播種量設計法。
ア):請求項l〜17のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合。
イ):請求項l〜17のいずれかに記載の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力から推定された実際の発芽率。
ウ):請求項18に記載の品質証明法により提示された発芽率。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木本植物種子の早期検定法及び該早期検定法を用いた植物種子の早期品質証明方法、並びにこれらの方法により得られた発芽率を用いて播種工における木本植物種子の播種量を設定する設計法に関する。この方法は、木本植物のように胚の生長が遅い種子、生理的休眠性を有しているため発芽速度が遅い種子、硬実種子であるため発芽速度が遅い種子等、通常の発芽試験が困難な種子に対して適用する。特に、広葉樹種子を対象とした方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】種子は、種によってその構造は様々に変化しているが、本明細書においては、種子は基本的に下記の三組織からなる器官として説明を行なう。
1)胚(Embryo):幼根(Radicle)、下胚軸(Hypocoty1)、子葉(Cotyledon)、幼芽(Plumule)(頂端分裂組織)(Apical meristem)、上胚軸(Epicoty1)(茎)(Stem)から構成。
2)胚乳(Endosperm):種によっては内胚乳(Endosperm)ではなく外胚乳(Perisperm)と呼称される。
3)種皮(Seed-coat):何れの種も最低2層から構成されるが、本明細書では内種皮(胚乳が発達したものを含む)(Inner seed-coat or Endopleura)と外種皮((種によっては果皮(Pericarp)あるいは仮種皮(Aril)を含む)(Outer seed-coat or Testa)に用語を統一する。種によっては、種皮がさらに粘液質(多糖類)や脂質(ワックス)で包まれていることもある。
【0003】木本植物種子を扱う緑化工(播種工)の場合、木本植物種子の発芽率の測定においては、通常湿った濾紙を1〜2枚敷いたシャーレに種子を並べ、定期的に発芽した個体数を数えて発芽率を求める方法が一般的に行われている。この場合、試験温度は23〜25℃の定温又は樹種により変温処理等を行い、試験期間は14〜28日間で行われている。また、試験期間が過ぎても発芽しない種子は、種子を切り開いて充実種子か不充実種子か等の不発芽の原因も併せて調査されることもある。
【0004】法面緑化工事等で用いられる種子の発芽試験法は、社団法人日本道路協会発行の「道路土工−のり面工・斜面安定工指針、1999」に記載されている方法が広く行なわれている。この発芽試験法は、シャーレに濾紙を2枚敷き、その上に種子を並べて水で浸し、定温の場合は20〜25℃、変温の場合は18〜28℃で行われる。調査は、毎日正常な幼芽を発生した種子を数えて取り除き、外来草本の場合は14日、それ以外の植物は28日で〆切り、発芽率を算出する。
【0005】この発芽試験法のほか、種子の発芽率及び発芽力を測定するための方法として、国際種子検査協会(ISTA:International Seed Testing Association)発行の「International Rules for Seed Testing 1985(19861989に一部改正)」が公知となっている。これには、種子の発芽率又は発芽力を測定する方法として下記のような発芽試験及び胚摘出による発芽力試験が記載されており、農林水産省種苗管理センターから「国際種子検査規定」として翻訳発行されている。
1)発芽試験種子を紙又は砂を用いた発芽床に置床し、該種子の発芽に適した温度条件下に5〜70日間放置した後、正常芽生の百分率で発芽率を測定する。
2)胚摘出による発芽力試験(摘出胚法)
発芽力を求めるため、種子を一定時間水に浸漬した後、内種皮を剥離して完全に胚を摘出し、20〜25℃の恒温条件下で少なくとも1日あたり8時間の光を照射して、5〜14日間培養する。評価方法に関しては、発芽力を有する胚が生育の徴候を示すか、葉緑素の発達を示すか、堅固で新鮮なまま残るか、子葉の彎曲を示す針葉樹の胚の何れかの個体数の百分率で表し、成育可能な胚を持っている個体の割合で評価する。
【0006】生理的休眠の打破方法としては、上記「国際種子検査規定」において、乾燥貯蔵処理(休眠が短い種)、予冷処理(樹木種子では1〜5℃の温度の湿潤下で2週間〜12ケ月間貯蔵)、予熱処理(30〜35℃を超えない温度で7日以下開放通気下で過熱)、光照射(750〜1,250ルクスの光を試験区に照射)、硝酸カリウムの添加(水の代わりに0.2%硝酸カリウム溶液を発芽床に加える)、ジベレリン(GA)の添加(水の代わりに0.02〜0.1%GA溶液を発芽床に加える)、ポリエチレン袋による封入処理(発芽試験終了時に高い割合で新鮮不発芽種子が見出される場合は封入処理を行なってから再試験)の何れかの方法で休眠打破を行って発芽試験を行ない、発芽した個体数の百分率を発芽率として評価することが開示されている。
【0007】硬実による発芽遅延に対する対処方法としては、「国際種子検査規定」において、水の中に24〜48時間浸漬する、アカシア属では種子の容積の3倍量の沸騰した湯に放り込んで冷めるまで浸漬する、機械的な剥皮、濃硫酸による処理、1規定の硝酸に24時間浸漬する等の処理を行なった後に、発芽試験を行なう方法が開示されている。また、その他の方法として、「樹木の生長と環境、畑野健一・佐々木恵彦編、1993」において、酸素分圧を高めることによって容易に発芽に導かれることが開示されている。
【0008】摘出胚法における胚摘出前の処理方法としては、「国際種子検査規定」及び「農林種子学総論、中村俊一郎著、1985」において、種子又は果実を5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に15分間潰けた後に水でよく洗うべきであることが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、種子の発芽試験法として、個別の処理方法等については周知、公知の事実は多いが、休眠性の高い木本植物種子の発芽率を効率的に短期間で求める汎用性のある手法は、未だ提示されていない。実際の業務上において、こうした公知事実を容易に組み合わせて木本植物種子の適切な発芽試験法を導くことは困難を極めているのが実情である。
【0010】前述した「道路土工−のり面工・斜面安定工指針、1999」並びに「国際種子検査規定」による発芽試験は、例えばイネ科牧草(外来草本)のように発芽速度が早い従来から多用されてきた緑化用草本種子は、種子の貯蔵安定性に優れているため、施工前に種子の発芽率をチェックする必要がなく、発芽試験を行ったとしても、1週間程度の短期間で結果が導けるため問題は生じなかった。しかし、近年緑化工事で用いられるケースが増大している木本植物種子の多くは様々な休眠性を有しているものが多いため、その発芽速度は非常に遅く、郷土種の中には発芽の遅いものや発芽するまでに1〜2年を要するものも少なくない。そのため、従来の発芽試験方法では測定期間中にシャーレ等の発芽試験容器内にカビが大量に発生し、その発生したカビによって発芽能力を有している健全種子までもが腐敗してしまうため、正確な発芽率を測定することは困難であった。
【0011】「国際種子検査規定」に記載の発芽試験では、発芽速度の遅い種子に関しては1〜2ケ月の発芽試験期間が必要とされている。さらに木本植物種子のように強力な休眠性を有する個体では、休眠覚醒処理のため長期間の低温湿層処理(予冷処理)や低温湿層処理と高温湿層処理を組み合わせる等の処理を必要とする。その上、木本植物種子は、発芽速度が遅いことに加えて貯蔵性が低いために種子の劣化が速いことから、実際には、発芽率の測定前に必要となる長期間の休眠覚醒処理を行なってから発芽試験が終了するまでの間に種子の劣化が進行し、正確に発芽率を測定することは困難であった。
【0012】一方、「国際種子検査規定」に記載の胚摘出による発芽力試験では、通常の発芽試験が難しい発芽の遅い種、休眠性を有する種の発芽力を判断をする手法として定義されている。しかし、この摘出胚法は、種子の処理に手間がかかることに加え、大部分の木本植物種子においては測定期間が1週間以上に及ぶことから、早期に発芽率の検定が要求される緑化工事等の事業の実用面では、本手法を適用することができない。特に、工期等の制約から施工前に使用種子の品質の迅速なチェックを行なって播種量を求める必要がある場合には、期間的理由から適用不可能であった。
【0013】また、摘出胚法は、どのような生理的及び構造的特性を有している種子に対しても、種皮を除去して完全に胚を露出した状態で置床する。しかし、極小の種子等のように、種皮の除去が困難であったり、構造的に種皮の除去が困難な場合がある。さらに、こうした処理は実務的に非常に細かい作業であり、発芽試験に対応する程度の標本数の種子を処理して試験を実施するには、かなりの時間と手間を必要とする。
【0014】加えて、摘出胚法は、検査前処理として外種皮及び内種皮を除去する際に、外種皮を有する種子に対しては水中に一晩〜48時間浸漬した後に外種皮を除去し、さらに一晩〜72時間水中に浸漬して内種皮を除去して胚を露出させる必要がある。また、内種皮のみを有している種子に対しては、水中に24〜96時間浸漬した後に、内種皮を除去して胚を露出する必要がある。そして、さらに胚を露出した後の培養期間に5〜14日間必要となるため、試験期間として6〜18日間に亙る長い期間が必要となる。これらの方法は、種子の劣化を促すことに留意していない。
【0015】尚、「国際種子検査規定」には、胚摘出による発芽力試験において特別指示が記されており、木本植物種子の取扱いとして、カエデ属(トネリコバノカエデ、イロハモミジを除く)、ナナカマド属、ニシキギ属、トネリコ属、リンゴ属、ナシ属、モンチコラマツ、バルカンゴヨウ、ストローブマツ、ヨーロッパハイマツ、シシマツ、ボスニアンシロマツ、ジェフリーマツ、チョウセンゴヨウ、ゴヨウマツ、サクラ属、シナノキ属について胚の取り出し方法が示されている。しかし、これらの方法のみでは、現在緑化工事等で使用されている多種類の木本植物には対応できない。
【0016】このように、「国際種子検査規定」が一部の木本種子に対して示している発芽力試験法は、不適切であるだけでなく、現在の緑化工事等で愛用されている多くの木本種子に対応したものではなく、木本植物を主体とする播種工のように施工前に実際に使用する種子の発芽率を早期に検定する必要がある場合における実用的な手法とはいえない。
【0017】近年の緑化工事では、従来の外来草本に代表される緑化用植物を主体に用いる緑化から、施工地周辺に生育している郷土樹木を用いた緑化に移り変わってきている。このような工事で用いられる自然採取された種子(計画採取する場合や住民参加によって採取する場合などがある。)は、採取地や採取年、採取時期、採取後の保管方法等によって発芽率が大きく変動する。従って、設計施工の実用面では、施工前に実際に使用する種子の発芽率を測定して播種量を設計したり修正したりする必要がある。こうした緑化工事を行なう上で、既存の発芽試験方法は時間的にも精度的にも不十分なものであり、迅速に発芽力を検定して設計に活用できる発芽率の検定システムの確立が急務となっており、社会的にもその早期確立が求められる。
【0018】木本植物種子は、草本植物種子とは異なる様々な構造を有しているだけでなく、種々の休眠様式を保有している。また、さらに種子の貯蔵過程での劣化速度が速く、その活力を短期間で判定することが困難であることから、土木施工(緑化工)は施工上の大きな困難に直面している。
【0019】以上の現状に鑑み本発明は、木本植物種子を対象とした、ほぼ7日以内という短期間で発芽率を検定するための種子の事前処置方法、種子の置床方法、種子の処理方法を含む発芽率検定方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、現在緑化工等で用いられている多様な木本植物種子のいずれにも適用可能な汎用性を有する方法を提供することを目的とする。さらに、かかる発芽率検定方法を実現することにより、環境問題が大きく取り上げられている時代の要請に応え、上述した諸問題を解決し、合理的緑化技術の基礎を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明は、樹木種子(特に広葉樹種子)の構造上並びに休眠上の特性に関わらず、一定の試験条件(作業し易く、温度管理が経済的に済む室温(23℃近辺)の明所)で、1週間前後という短期間でそれらの種子母集団の平均発芽力あるいは発芽率を検定する事を実現する。本発明による検定法は、全ての広葉樹種の種子構造と休眠性に応じたシステマティックな手法として適用可能な汎用性を具備しており、1週間前後でその発芽率や発芽力を検定することを実現した。本発明の具体的構成は以下の通りである。
【0021】(1)本発明の木本植物種子の早期検定法の第1の態様では、木本植物種子の早期検定法において、前記木本植物種子の構造的特性に基づき該種子を分類し、前記種子の分類及び前記種子の生理的特性に応じて該種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、前記選択された事前処置方法及び前記置床方法により前記種子を加工し、前記加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に前記選択された処理方法により置床し、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定する。
【0022】(2)本発明の木本植物種子の早期検定法の第2の態様では、木本植物種子の早期検定法において、前記木本植物種子の構造的特性に基づき該種子を分類し、前記種子の分類及び前記種子の生理的特性に応じて該種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を選択し、前記選択された事前処置方法及び前記置床方法により前記種子を加工し、前記加工された種子を連続光照射条件下及び一定温度条件下の発芽試験床に前記選択された処理方法により置床し、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定し、前記測定された発芽能力保有個体の割合又は発芽力と前記種子の実際の発芽率との相関関係を導出し、前記相関関係を適用することにより前記発芽能力保有個体の割合又は発芽力から前記種子の実際の発芽率を推定する。
【0023】(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記木本植物種子の構造的特性も基づき該種子を分類する場合に、該種子を少なくとも完全胚未熟型種子、胚未熟型種子、胚成熟型種子、硬実型種子のいずれかに分類する。
【0024】(4)上記(3)の態様において、前記完全胚未熟型種子に分類される種子の置床方法が、少なくとも下記(1-A)〜(1-F)に記載のいずれかの方法から選択される。
(1-A):内種皮まで除去した後、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する方法。
(1-B):内種皮のみが付いたまま、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する方法。
(1-C):外種皮が付いたまま、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する方法。
(1-D):上記(1-A)〜(1-C)のいずれかの方法で胚乳組織を切断した後、さらに胚を含むように該胚乳組織の側面を切断した種子切片を置床する方法。
(1-E):種子から胚を取り出して置床する方法。
(1-F):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
【0025】(5)上記(3)の態様において、前記胚未熟型種子に分類される種子の置床方法が、少なくとも下記(2-A)〜(2-I)に記載のいずれかの方法から選択される。
(2-A):内種皮まで除去した後、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(2-B):内種皮のみが付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(2-C):外種皮が付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(2-D):上記(2-A)〜(2-C)に記載のいずれかの方法で胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織切断した後、さらに胚又は胚の幼根組織を含むように該胚乳組織又は該胚乳組織及び該子葉組織の側面を切断した種子切片を置床する方法。
(2-E):種子から胚を取り出して置床する方法。
(2-F):内種皮まで除去した後、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(2-G):内種皮のみが付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(2-H):外種皮が付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(2-I):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
【0026】(6)上記(3)の態様において、前記胚成熟型種子に分類される種子の置床方法が、少なくとも下記(3-A)〜(3-I)に記載のいずれかの方法から選択される。
(3-A):内種皮まで除去した後、胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(3-B):内種皮のみが付いたまま、胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(3-C):外種皮が付いたまま、胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床する方法。
(3-D):上記(3-A)〜(3-C)のいずれかの方法で子葉組織を切断した後、さらに胚の幼根組織を含むように子葉組織の側面を切断した種子切片を置床する方法。
(3-E):内種皮まで除去した後、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(3-F):内種皮のみが付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(3-G):外種皮が付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する方法。
(3-H):種子が結実して落下した直後に発根する個体又は貯蔵申に発根しやすい個体の場合、既に発根している個体は幼根を根元から、発根していない個体は幼根組織の先端部を切除した後、オーキシンを含む発芽床に置床する方法。
(3-I):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
【0027】(7)上記(3)の態様において、前記硬実型種子に分類される種子の置床方法が、少なくとも下記(4-A)〜(4-D)に記載のいずれかの方法から選択される。
(4-A):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に完全胚未熟型種子に分類できる場合は、前述の完全杯未熟型種子における(1-A)〜(1-E)のいずれかの方法で置床する方法。
(4-B):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に胚未熟型種子に分類できる場合は、前述の胚未熟型種子における(2-A)〜(2-G)のいずれかの方法で置床する方法。
(4-C):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に胚成熟型種子に分類できる場合は、前述の胚成熟型種子における(3-A)〜(3-F)のいずれかの方法で置床する方法。
(4-D):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸、強アルカリ、熱湯のいずれかに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮のを物理的に傷付けた後置床する方法。
【0028】(8)上記(1)〜(7)のいずれかの態様において、加工された種子については、置床するに先立って該加工された種子を水洗浄する。
【0029】(9)上記(1)〜(8)のいずれかの態様において、前記種子の前記処理方法として、サイトカイニン若しくはジベレリンの溶液又はこれらの混合溶液を該種子に適した濃度及び混合比に調整した後、これを前記発芽試験床に加えてから置床する。
【0030】(10)上記(1)〜(9)のいずれかの態様において、前記種子の前記処理方法として、チオウレア(チオ尿素)若しくは硝酸カリウムの溶液又はこれらの混合溶液を該種子に適した濃度及び混合比に調整した後、これを前記発芽試験床に加えてから置床する。
【0031】(11)上記(1)〜(10)のいずれかの態様において、前記種子の前記処理方法として、前記発芽試験床を高酸素分圧下に置く。
【0032】(12)上記(1)〜(10)のいずれかの態様において、前記種子の前記処理方法として、前記発芽試験床をエチレンガス、エチレンガスに二酸化炭素を加えた混合ガス、又はエチレンガスに二酸化炭素及び酸素を加えた混合ガス下に置く。
【0033】(13)上記(1)〜(12)のいずれかの態様において、前記種子の事前処置方法として、該種子の殺菌処理を行う。
【0034】(14)上記(1)〜(13)のいずれかの態様において、前記種子の事前処置方法として、該種子を一晩水浸処理する。
【0035】(15)上記(1)〜(14)のいずれかの態様において、前記種子の事前処置方法として、該種子の外種皮又は内種皮の表面の油脂成分を除去する。
【0036】(16)上記(1)〜(15)のいずれかの態様において、前記置床された種子について発芽能力保有個体の割合を測定する際に、下記a)〜d)のいずれかの測定方法が選択される。
a):幼根組織が伸長した個体又は種子組織から幼根が突出した個体の割合を測定する方法。
b):幼根組織が重力方向に彎曲した個体の割合を測定する方法。
c):子葉組織が堅固なまま膨張した個体の割合又は子葉組織に葉緑素が形成されて緑色化した個体の割合を測定する方法。
d):不定根が形成された個体の割合を測定する方法。
【0037】(l7)上記(1)〜(15)のいずれかの態様において、前記置床された種子について前記発芽能力保有個体の発芽力を測定する際に、下記i)〜v)のいずれかの測定方法が選択される。
i):一定期間内に伸長した幼根の長さを測定又は該幼根の長さを1日当りに換算する測定方法。
ii):一定期間内に増加した胚の重量を測定又は該胚の重量を1日当りに換算する測定方法。
iii):一定期間内に上記(16)の態様のa)〜d)のいずれかの測定方法により測定された発芽能力保有個体の割合を百分率で表す測定方法。
iv):一定期間内に伸長した不定根の長さを測定又は該不定根の長さを1日当りに換算する測定方法。
v):一定期間内での葉緑素の形成の程度を測定又は該葉緑素の形成の程度を1日当りに換算する測定方法。
【0038】(18)本発明における木本植物種子の品質証明法においては、下記のア)又はイ)の少なくともいずれか一を提示することにより種子の早期品質証明を行う。
ア):上記(1)〜(17)のいずれかの態様の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力。
イ):上記(1)〜(17)のいずれかの態様の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力から推定された実際の発芽率。
【0039】(19)本発明における木本植物種子の播種量設計法においては、下記のア)〜ウ)の少なくともいずれか一を用いることにより播種工における木本植物種子の単位播種量を算出する。
ア):上記(1)〜(17)のいずれかの態様の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合。
イ):上記(1)〜(17)のいずれかの態様の木本植物種子の早期検定法により得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力から推定された実際の発芽率。
ウ):上記(18)の態様の品質証明法により提示された発芽率。
【0040】
【作用】本発明は、木本植物種子の構造上並びに休眠上(生理的特性)の特性に拘らず、一定の試験条件(作業しやすく、温度管理が経済的にすむ室温23℃近辺の明所で1週間前後という短期間)で、それらの種子母集団の平均発芽力若しくは発芽率を求めることができる。従来手法には、全ての木本植物種子の発芽率や発芽力を1週間前後で確認できる汎用性はない。
【0041】従来の種子発芽力検定法においては、種子の発芽は自然界での気温の日変化に適応して順調に進行することから、発芽試験においても各々の種に応じた変温条件の設定を推奨している。しかし、この温度変動幅と温度域は様々であり、それらに応えるとすれば各々の種の温度自動管理型の施設を導入しなくてはならず、そのための投資額は莫大となり普及させ易い手法とはいえない。本発明は、エネルギーコストを最低に抑えることができ常温近辺の一定気温(23℃近辺(21〜25℃))の下で実施できる点で他に優っている。
【0042】種子の中には、発芽に際して暗所を好む嫌光性種子(例:アキグミ等)があるが、本発明は、例外なく作業し易い明所で試験を行える点で優位である。
【0043】樹木種子の休眠性は、その構造とも相侯って極めて複雑である上、種による後熟の速度は温度とも関わって著しく異なるために、自然界でも発芽を確認できる迄の期間は数日から2年に亙っている。しかし、当該方法では例外なく1週間前後で種子の品質を評価し、緑化工事等に活用できるか否か、あるいは設計の変更が必要であるかなどを確認することができる。
【0044】採取後にすぐに発芽を開始する種子(例:コナラ、ミズナラ等)は、種子採取者から納入された時点において既に幼根の突出(実質的発芽の第一歩)が起こり、またそれが枯死してしまっているような種子を緑化工事等に使用できるか否かの判断は、緑化(植生復元)や施工コストの面から極めて重要な事項である。当該手法においては、下胚軸組織が二次分裂組織活力をまだ保有している場合には、不定根としてその切断面の縁から側根・支根を分化可能であるという特質を利用し、通常は挿し木において不定根分化誘導剤として普及しているオーキシン(好適には人工オーキシン(NAA)等)を活用し、木本植物種子の検定に新しい可能性を切り開いている。
【0045】最終的には、試験結果提出までの必要経費を最低に抑えるために、それぞれの種子に適用する試験法は極力単純なものとし、かつ薬剤は最も安価なものを使用することを前提にシステム化を図った。
【0046】
【発明の実施の形態】本発明は、前述の摘出胚法を基本原理とし、これを発展させたものである。摘出胚法は、種子が発芽する際に必要になる水分や酸素の供給を図るため、幼根組織を含むような種子組織の切断、外種皮や内種皮の除去、種子からの胚の取出し等を含む事前処置方法、置床方法、処理方法を含み、短期間で発芽率や発芽力を測定しようとするものであるが、木本植物種子に汎用的に適用するには前述の通り種々の問題がある。
【0047】発明者らは、発芽試験に当たって先ず対象となる木本植物種子の生理的及び構造的特性に基づく分類を行い、その分類された構造的特性に応じて個別に選択すべき種子の事前処置方法、置床方法及び処理方法を見出した。そして、試験対象の木本植物種子に対して選択された各方法を適用し、連続光照射条件下において、例えば23〜25℃の一定温度条件下の発芽試験床に置床することにより、発芽能力を有する個体の割合(以下、「発芽能力保有個体の割合」と称する)及び/又は発芽力を7日以内という短期間で測定することができ、これらの値から発芽率を推定可能であることを見出した。
【0048】具体的には、例えば、発芽能力保有個体の割合を以って発芽率としたり、予め統計的に求められた該割合又は発芽力と実際の発芽率の相関関係を示す関係式(検量線)から発芽率を推定する等の方法が採られる。以下、本発明による木本植物種子の早期検定法、早期品質証明法、及び播種量設計法の実施の形態を説明する。
【0049】(1)木本植物種子の早期検定法図1は、本発明による木本植物種子の早期検定法の手順を概略的に示した流れ図である。早期検定法の主要な工程としては、種子の構造的特性による分類ステップ11、必要に応じて置床前に行われる事前処置方法を選択及び実施するステップ12、分類に応じて適切な置床方法を選択及び実施するステップ13及び15、必要に応じて置床中に行われる処理方法を選択及び実施するステップ14及び15、発芽能力保有個体の割合の測定ステップ16、及び発芽力の測定ステップ17を含む。
【0050】(1-1)種子の構造的特性による分類ステップ図1のステップ11においては、対象とする木本植物種子の構造的特定により、その種子がいずれの分類に属するか否かを判断し、分類を実行する。前述の通り、「国際種子検査規定」に記載されている種子の処理は、種子によってはその構造的特性や種子が小さいため、実務的に外種皮や内種皮を取り除く作業自体に困難を伴うことがある。また、このような困難を伴う処理を行わなくても、植物ホルモンや発芽促進物質等を与えること、種子組織の切断等により、短期間で発芽力を測定することが可能な種子もある。発明者らは、これらの点について鋭意研究を重ねた結果、種子の構造的特性に応じて、少なくとも種子を次の4つの型に分類し、それぞれ分類された型に適する種子の置床方法を選択することにより、より合理的かつ迅速に発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を測定することができることを突き止めた。
分類1:完全胚未熟型種子分類2:胚未熟型種子分類3:胚成熟型種子分類4:硬実型種子以下、4分類した種子の構造的特性について説明する。
【0051】(1-1-1)分類1:完全胚未熟型種子この型に分類される種子は、種子が結実し成熟した段階では種子の内部の胚(子葉組織及び幼根組織)は完全に未熟な状態であり、基本的に胚乳内の末端に完全に未発達な極小な胚を有しており、これらを外種皮や内種皮が覆っている構造の種子である。発芽する過程で、未熟胚は種子内部で胚乳からの栄養分補給に依存して生長し、発達した胚は外種皮や内種皮に圧力をかけて幼根や子葉を突き出す発芽パターンを示す。
【0052】(1-1-2)分類2:胚未熟型種子この型に分類される種子は、種子が結実し成熟した段階では種子内部の胚(子葉組織及び幼根組織)は未熟な状態であるが、完全胚未熟型種子と比較すると胚は発達している。この胚は、胚乳内にあり、これらを外種皮や内種皮が覆っている構造の種子である。この種子の胚は、完全胚未熟型種子の胚よりも発達しており、胚乳内で子葉組織及び幼根組織が肥大している。発芽する過程で、完全に発達しきっていない胚は種子内部で胚乳からの栄養分補給に依存して生長し、発達した胚は外種皮や内種皮に圧カをかけて幼根や子葉を突き出す発芽パターンを示す。
【0053】(1-1-3)分類3:胚成熟型種子この型に分類される種子は、種子が結実し成熟した段階で、胚乳は存在せずに成熟胚(幼根組織+子葉組織)のみとなっており、これらを外種皮や内種皮が覆っている構造の種子である。これらの種子は、発芽する過程で幼根と下胚軸を伸長し、子葉組織を地上部で展開し、さらに上胚軸を伸長し第一本葉を展開するか、子葉組織を地下に留め、上胚軸を伸長し地上部で第一本葉を展開する発芽パターンを示す。
【0054】(1-1-4)分類4:硬実型種子この型に分類される種子は、種子内部は、上記分類1〜3に記載した型に分類された種子と同様の構造を示すが、外種皮や内種皮が堅固であり、種子組織への酸素や水分等の供給を妨げる構造の種子である。
【0055】(1-2)事前処置方法の選択及び実施ステップ図1のステップ12においては、ステップ11で行われた種子の分類に基づいて、置床前の事前処置の必要な木本植物種子に対して適切な事前処置方法を選択し、実施する。事前処置の不要な木本植物種子に対しては行われない。
【0056】(1-2-1)殺菌処理及び水洗浄どの型の種子においても、カビの胞子や細菌を通常の水洗浄で除去できず、試験中にそれらの弊害を受けかねない樹種に対してのみ、前処理として次亜塩素酸ナトリウム等による殺菌処理とその後の水洗浄を実施する。発芽試験において、カビの発生は正確な発芽率や発芽力を測定する上で大きな障害となる。カビを防止するためには、例えば、種子に対して2%次亜塩素酸ナトリウムによる15分間の殺菌処理を行なった後、後述する適宜の処理方法を実施して発芽試験床に置床することにより対応できる。この方法は、種子の構造的な特性として、クサギ種子のように発芽孔が大きく、菌類が種子内部に侵入しやすい種子、ヤマモモ種子のように外種皮に果肉繊維が強固に付着した種子、トベラ種子のように内種皮から粘着物質を分泌して種子表面に菌類が付着しやすい種子等に対して適用することが望ましい。
【0057】(1-2-2)水中への浸漬ヤマウルシ種子、ヌルデ種子等のように、外種皮は硬いが種子組織は柔らかい種子は、実際問題として外種皮が硬いため、種子を切断する際に種子組織まで破壊してしまう割合が多くなる。そのため、種子を一晩水中に浸漬することによって外種皮を軟らかくし、切断の際に種子組織を破壊しないようにすることができる。この方法はカエデ類種子のように、外種皮を除去する際に外種皮が吸水することによって軟らかくなり、外種皮の除去が行いやすくなる場合や、トベラ種子のように吸水させることにより種子の切断が容易になる場合等に対しても適用するとよい。尚、この方法は、外種皮に限らず、内種皮の除去、切断に困難を要する場合にも適用できる。
【0058】(1-2-3)漂白又は洗浄どの型の種子においても、種皮表面に粘液状物質やワックス状物質が付着している場合にのみ、種子による吸水・酸素呼吸を促すために、前処理として次亜塩素酸ナトリウム等による漂白か中性洗剤等による洗浄を行う。例えば、アカメガシワ種子等のように、種子の表面に油脂成分が付着しているものがある。このような種子は、油脂が種子の吸水を妨げることによって、発芽速度が遅くなってしまう。これらの種子は、例えば適量の中性洗剤等で種子の外種皮又は内種皮の表面の油脂成分をよく洗浄した後に置床を行うことにより、発芽速度を早くすることが可能になる。
【0059】(1-3)置床方法の選択ステップ図1のステップ13においては、ステップ11で行われた種子の分類に基づいて種子の置床方法の選択を行う。種子の型毎に複数の可能な置床方法があり、適切な置床方法を選択する。尚、置床方法には、種子の切断又は切除等、種子を物理的に加工することを含む。
【0060】(1-3-1)完全未熟型種子の置床方法完全胚未熟型種子に分類される種子の発芽には、温度や水分等の発芽条件が揃っていても、種子内部で胚が発達するまでの時間だけ、他の構造の種子よりも発芽までの時問が必要になってしまう。従って、この型の種子には次の(1-A)〜(1-F)のような置床方法を適用する。
(1-A):内種皮まで除去した後、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する。
(1-B):内種皮のみが付いたまま、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する。
(1-C):外種皮が付いたまま、胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床する。
(1-D):上記(1-A)〜(1-C)のいずれかの方法で胚乳組織を切断した後、さらに胚を含むように該胚乳組織の側面を切断した種子切片置床する。
(1-E):種子から胚を取り出して置床する。
(1-F):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する。
【0061】・置床方法(1-A)〜(1-C)の説明必ず胚を含むように胚乳組織を切断した種子切片を置床することにより、酸素や水分等の供給を高め胚の生長を促すことができる。また、この種子の切断の理由には、胚乳組織を切断して種子切片を小さくすることにより、その分だけ胚乳組織内で発達した胚が早く種子切片外に突き出すことが可能になり、胚の発達の程度が短期間で確認できるようにするということもある。このことから、種子断片の大きさが異なると、正確に胚の発達の程度が確認できないため、極力、種子断片の大きさは均一にする。これらの置床方法では、外種皮や内種皮の除去に関しては、基本的には酸素や水分等の供給を高める意味で極力行った方が望ましい。しかし、種子の大きさや形によって、外種皮や内種皮の除去に困難を要する場合にはあえて行わなくてもよい。これらの置床方法を用いる樹種としては、例えば置床方法(1-A)にはアオキ(置床方法(1-D)を併用)、ガマズミ等、置床方法Bにはイヌツゲ、トベラ、ナンテン等、置床方法(1-C)にはウメモドキ等がある。
【0062】・置床方法(1-D)の説明種子が大型の場合、上述した置床方法(1-A)〜(1-C)に記載の種子の切断方法を適用した後、酸素や水分等の供給をさらに高めるため、また、発芽床に加える植物ホルモンや発芽促進物質等が胚に早期に染み渡るように、胚を含むように胚乳組織の側面も切断し、胚を含んだ種子切片がブロック状になるようにして置床することにより、発芽速度を速くすることが可能となる。この置床方法を用いる樹種としては、例えばアオキ(置床方法(1-A)を併用)等がある。
【0063】・置床方法(1-E)の説明非常に胚の生長が遅い場合には、種子内から胚だけを取り出して置床することで対応する。
【0064】・置床方法(1-F)の説明この型の種子で、種子の大きさが小さく、外種皮や内種皮の除去や種子組織の切断に困難を要する場合、例えば、強酸ならば濃硫酸等、強アルカリならば次亜塩素酸ナトリウム等に種子を浸すことにより種皮を薄くしたり、精米機やジューサーミキサー等を用いて、種子の表面に物理的に傷をつけて種子の切断を行なわずそのまま置床する。このことにより、水、植物ホルモン、酸素の吸収を促すことにより発芽速度を速くすることが可能となる。
【0065】(1-3-2)胚未熟型種子の置床方法胚未熟型種子に分類される種子の発芽は、完全胚未熟型種子と同様に温度や水分等の発芽条件が揃っても、種子内部で胚が発達するまでの時間だけ、他の型の種子よりも発芽までの時間が必要になり、この時間は胚の発達が小さいものほど長期間であり、胚の発達が大きいものほど短期間となる。従って、この型の種子は次の(2-A)〜(2-I)ような置床方法を適用する。
(2-A):内種皮まで除去した後、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する。
(2-B):内種皮のみが付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する。
(2-C):外種皮が付いたまま、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する。
(2-D):上記(2-A)〜(2-C)に記載のいずれかの方法で胚乳組織若しくは胚乳組織及び子葉組織切断した後、さらに胚を含むように該胚乳組織又は該胚乳組織及び該子葉組織の側面を切断した種子切片を置床する。
(2-E):種子から胚を取り出して置床する。
(2-F):内種皮まで除去した後、種子を切断せずにそのまま置床する。
(2-G):内種皮のみが付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する。
(2-H):外種皮が付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する。
(2-I):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する。
【0066】・置床方法(2-A)〜(2-C)の説明胚の幼根組織を含むように胚乳組織又は胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床することにより、酸素や水分等の供給を高め胚の生長を促すことが可能となる。また、この種子組織の切断の理由には、胚乳組織を切断して種子切片を小さくすることにより、その分だけ胚乳組織内で発達した胚が早く種子切片外に突き出すことになり、胚の発達の程度が短期間で確認できるようにするということもある。このことから、種子断片の大きさが異なると、正確に胚の発達の程度が確認できないため、極力、種子断片の大きさは均一にする。これらの置床方法で、外種皮や内種皮の除去に関しては、基本的には酸素や水分等の供給を高める意味で極力行った方が望ましい。しかし、種子の大きさや形によって、外種皮や内種皮の除去に困難を要する場合にはあえて行わなくてもよい。これらの置床方法を用いる樹種としては、例えば置床方法(2-B)にはイボタノキ、エゴノキ、ナツハゼ、ハナミズキ、マサキ、ヤマボウシ、ナツツバキ、ヒメシャラ、ホルトノキ等、例えば置床方法(2-C)には、キハダ、ツリバナ、ハシドイ、ムラサキハシドイ等がある。
【0067】・置床方法(2-D)の説明種子が大型の場合、上述した置床方法(2-A)〜(2-C)に記載の種子の切断方法を適用した後、酸素や水分等の供給をさらに高めるため、また、発芽床に加える植物ホルモンや発芽促進物質等が早期に幼根組織に染み渡るように、胚又は胚の幼根組織を含むように胚乳組織又は胚乳組織及び子葉組織の側面も切断し、胚又は胚の幼根組織を含んだ種子切片がブロック状になるようにして置床することにより、発芽速度を速くすることが可能となる。
【0068】・置床方法(2-E)の説明非常に胚の生長が遅い場合には、種子内から胚だけを取り出して置床することで対応する。この置床方法を用いる樹種としては、例えばネズミモチ等がある。
【0069】・置床方法(2-F)〜(2-H)の説明胚の発達が進んでいる場合又は胚の生長が速い場合、若しくは植物ホルモンや発芽促進物質等を加えることによって種子の切断を行わなくても短期間で発芽する場合、種子が小さいため種子の切断に困難を有する場合は、種子を切断せずにそのまま置床することで対応する。これらの置床方法で、外種皮や内種皮の除去に関しては、基本的には酸素や水分等の供給を高める意味で極力行った方が望ましい。しかし、種子の大きさや形によって、外種皮や内種皮の除去に困難を要する場合にはあえて行わなくてもよい。これらの置床方法を用いる樹種としては、例えば置床方法(2-G)にはクコ、クチナシ、サカキ等がある。
【0070】・置床方法(2-I)の説明この型の種子で、種子の大きさが小さく、外種皮や内種皮の除去や種子組織の切断に困難を要する場合、例えば、強酸ならば濃硫酸等、強アルカリならば次亜塩素酸ナトリウム等に種子を浸すことにより種皮を薄くしたり、精米機やジューサーミキサー等を用いて、種子の表面に物理的に傷をつけて種子の切断を行なわずそのまま置床する。このことにより、水、植物ホルモン、酸素の吸収を促すことにより発芽速度を速くすることが可能となる。例えば置床方法(2-I)には、イイギリ等がある。
【0071】(1-3-3)胚成熟型種子の置床方法胚成熟型種子に分類される種子は次の(3-A)〜(3-I)ような置床方法を適用する。
(3-A):内種皮まで除去した後、胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床する。
(3-B):内種皮のみが付いたまま、胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床する。
(3-C):外種皮が付いたまま、胚の幼根組織を含むように胚乳組織及び子葉組織を切断した種子切片を置床する。
(3-D):上記(3-A)〜(3-C)のいずれかの方法で子葉組織を切断した後、さらに胚の幼根組織の先端を含むように子葉組織の側面を切断した種子切片を置床する。
(3-E):内種皮まで除去した後、種子を切断せずにそのまま置床する。
(3-F):内種皮のみが付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する。
(3-G):外種皮が付いたまま、種子を切断せずにそのまま置床する。
(3-H):種子が結実して落下した直後に発根する個体又は貯蔵申に発根しやすい個体の場合、既に発根している個体は幼根を根元から、発根していない個体は幼根組織の先端部を切除した後、オーキシンを含む発芽床に置床する。
(3-I):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸又は強アルカリに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮を物理的に傷付けた後置床する方法。
【0072】・置床方法(3-A)〜(3-C)の説明胚の幼根組織を含むように子葉組織を切断した種子切片を置床することにより酸素や水分等の供給を高め、幼根組織の生長を促すことが可能となる。これらの置床方法で、外種皮や内種皮の除去に関しては、基本的には酸素や水分等の供給を高める意味で極力行った方が望ましい。しかし、種子の大きさや形によって、外種皮や内種皮の除去に困難を要する場合にはあえて行わなくてもよい。これらの置床方法を用いる樹種としては、例えば置床方法(3-A)にはシャリンバイ、ヤブツバキ、スダジイ等、置床方法(3-A)を用い、さらに置床方法(3-D)と併用するものにはアラカシ、ウバメガシ、クリ、シラカシ、チャノキ等、置床方法(3-B)にはアキグミ、オオヤマザクラ、ウワミズザクラ、サザンカ、ナナカマド、フヨウ、モッコク、ヤマザクラ、ヤマモモ等、置床方法(3-B)を用い、さらに置床方法(3-D)と併用するものにはマテバシイ等、置床方法(3-C)にはオヒョウ、ブナ、ノイバラ等がある。
【0073】・置床方法(3-D)の説明種子が大型の場合は、上述した置床方法(3-A)〜(3-C)に記載の種子の切断方法をとった後、酸素や水分等の供給をさらに高めるため、また、発芽床に加える植物ホルモンや発芽促進物質等が早期に幼根組織に染み渡るように、胚の幼根組織を含むように子葉組織の側面も切断し、幼根組織を含んだ種子切片がブロック状になるようにして置床することにより、発芽速度を速くすることが可能となる。この置床方法を用いる樹種としては、例えば置床方法(3-A)を併用するものにはアラカシ、ウバメガシ、クリ、シラカシ、チャノキ等、置床方法(3-B)を併用するものにはマテバシイ等、置床方法(3-H)を併用するものにはアベマキ、クヌギ等がある。
【0074】・置床方法(3-E)〜(3-G)の説明生理的休眠を有しておらず、種子の切断を行なわなくても短期間で発芽したり、植物ホルモンや発芽促進物質等を加えることによって、種子の切断を行わなくても短期間で発芽する種子や、種子が小さいため種子の切断に困難を有したり、子葉組織が入り組んで種子組織を構成しているため、切断を行うと種子組織が細かい断片になってしまう種子の場合は、種子を切断せずにそのまま置床することで対応する。ここでいう子葉組織が入り組んで種子組織を構成している種子とは、外種皮の内側に子葉組織が渦巻状になっているような種子をいう(以下同じ)。これらの置床方法で、外種皮や内種皮の除去に関しては、基本的には酸素や水分等の供給を高める意味で極力行った方が望ましい。しかし、種子の大きさや形によって、外種皮や内種皮の除去に困難を要する場合にはあえて行わなくてもよい。これらの置床方法を用いる樹種としては、例えば置床方法(3-E)ではシャリンバイ、チャノキ、ヤブツバキ等、置床方法(3-F)にはイロハモミジ、オオモミジ、ウリハダカエデ、クスノキ、クサギ、トネリコバノカエデ、ノリウツギ、フジウツギ、ウラジロフジウツギ、ムクゲ、オオモミジ等、置床方法(3-G)にはアキニレ、カツラ、ケヤキ、サルスベリ、シラカンバ、ダケカンバ、ヤシャブシ、ヤマハンノキ等がある。なお、前述した本置床方法の適用種子であるシャリンバイ、チャノキ、ヤブツバキについては、通常では、より発芽速度が速くなる置床方法(3-A)を用いて試験を行うとよい。
【0075】・置床方法(3-H)についてナラ類等のように種子が結実して落下した直後に発根する個体又は貯蔵中に発根しやすい個体の場合は、既に発根している個体は幼根を根元から、発根していない個体は幼根組織の先端部を切除し、NAA等を含む発芽床に置床することによって対応する。この置床方法を用いる樹種としては、例えばアベマキ、クヌギ(置床方法(3-D)を併用)、コナラ、ミズナラ等がある。
【0076】・置床方法(3-I)についてこの型の種子で、種子の大きさが小さく、外種皮や内種皮の除去や種子組織の切断に困難を要する場合、例えば、強酸ならば濃硫酸等、強アルカリならば次亜塩素酸ナトリウム等に種子を浸すことにより種皮を薄くしたり、精米機やジューサーミキサー等を用いて、種子の表面に物理的に傷をつけて種子の切断を行なわずそのまま置床する。このことにより、水、植物ホルモン、酸素の吸収を促すことにより発芽速度を速くすることが可能となる。
【0077】(1-3-4)硬実型種子の置床方法硬実型種子に分類される種子の発芽を促すには、堅固な外種皮や内種皮の除去、一部除去、傷つけ、薄くする等の方法をとり、酸素や水分等の供給を促すことが第一条件をなる。従って、この型の種子は次の(4-A)〜(4-D)ような置床方法を適用する。
(4-A):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に完全胚未熟型種子に分類できる場合は、前述の完全杯未熟型種子における(1-A)〜(1-E)のいずれかの方法で置床する。
(4-B):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に胚未熟型種子に分類できる場合は、前述の胚未熟型種子における(2-A)〜(2-G)のいずれかの方法で置床する。
(4-C):硬実型種子であるが外種皮又は内種皮の除去若しくは種子の切断が困難ではなく、構造的に胚成熟型種子に分類できる場合は、前述の胚成熟型種子における(3-A)〜(3-F)のいずれかの方法で置床する。
(4-D):外種皮又は内種皮の除去及び種子の切断に困難を要する場合、種子を強酸、強アルカリ、熱湯のいずれかに浸した後、若しくは該外種皮又は内種皮のを物理的に傷付けた後置床する。
【0078】・置床方法(4-A)〜(4-C)の説明種子の大きさや作業性を考慮して、完全胚未熟型種子の場合は置床方法(1-A)〜(1-E)、胚未熟型種子の場合は置床方法(2-A)〜(2-G)、胚成熟型種子の場合は置床方法(3-A)〜(3-F)にそれぞれ記載のいずれかの方法で適した置床方法を適用することによって対応できる。これらの置床方法を用いる樹種としては、例えば胚成熟型種子の置床方法(3-A)にはナンキンハゼ等があり、胚成熟型種子の置床方法(3-B)にはイタチハギ、コマツナギ、センダン、ネムノキ、ヤマハギ等があり、胚成熟型種子の置床方法(3-C)にはヌルデ、ヤマウルシ、ヤマハゼ等があり、胚成熟型種子の置床方法(3-F)にはアカメガシワ等がある。
【0079】・置床方法(4-D)について種子が小さいために、上述した置床方法(4-A)〜(4-C)で述べた完全胚未熟型種子、胚未熟型種子、胚成熟型種子の各置床方法の作業ができない場合や、外種皮及び内種皮の除去や種子の切断が困難な場合は、例えば、種子を強酸の場合は濃硫酸等、強アルカリの場合には次亜塩素酸ナトリウム等に浸すことにより外種皮又は内種皮を薄くするか、熱湯に浸すことにより外種皮又は内種皮を軟らかくするか、外種皮又は内種皮の一部を物理的に傷付けて置床することによって対応できる。この方法を用いる樹種としては、例えばエノキ等がある。
【0080】(1-4)処理方法の選択ステップ図1のステップ14においては、種子の処理方法の選択を行う。本発明における木本植物種子の処理方法とは、木本植物種子の置床期間中に木本植物種子に対して所定の環境条件を付与するための処理の方法をいう。それぞれの種子の構造的特性に応じて上述の置床方法のいずれかにより置床しても、種子の生理的休眠の強度、胚の生長速度等の種子の生理的特性、あるいは外種皮及び内種皮の除去や種子の切断が極めて困難な構造的特性等の原因により、7日以内に発芽しない種子もあり得る。7日以内に発芽しないような樹種の種子は、正確な値を測定することができない。しかしながら、このような種子であっても、置床中に発芽促進処理を並行して行うことにより発芽速度を早め、7日以内に正確な値を測定することが可能になる。
【0081】(1-4-1)生長促進溶液による処理種子が生理的休眠性を有する場合、胚の生長が遅い場合、種子の構造的特性により外種皮及び内種皮の除去や種子の切断が困難である場合等は、サイトカイニン(好適にはベンジルアデニン等(BA))、ジベレリン(GA)、チオウレア、硝酸カリウムのいずれかの溶液又はこれらの混合溶液を該種子に適した濃度及び混合比に調整した後、これを発芽試験床に加えてから置床することにより、検査期間を短縮させることができる。具体的には、発芽床である濾紙等にそれぞれの溶液を染み込ませて行うとよい。
【0082】サイトカイニンの代表であるBA、及び加水分解酵素群の活性化誘導のためのGAは、植物ホルモンであり、これらにより還元力(NADPH)生産性向上と、それによる子葉展開力の誘導が得られる。BA及びGAは、幼根、胚軸、子葉の生長を促すため、全ての種子に対して適用できる。BA及びGAの濃度はそれぞれの生理的休眠の強度、胚の生長速度、種子の大きさ等によって変える。基本的には、生理的に休眠が強い場合、胚の生長が遅い場合、種子の大きさが大きい場合ほど高濃度になる。また、休眠がさらに強い場合等にはBAとGAの混合液の使用が有効である。
【0083】胚成熟型種子やこの型を共有する硬実型種子の場合で、生理的休眠を有する場合、又は種子の構造的特性により外種皮及び内種皮の除去や種子の切断を行うことが困難である場合は、発芽促進物質であるチオウレア、硝酸カリウムの溶液を該種子に適した濃度に調整した後、これを前記発芽試験床に加えてから置床することにより、検査期間を短縮させることが可能となる。具体的には、発芽床である濾紙等にそれぞれの溶液を染み込ませて行うとよい。
【0084】休眠打破剤としてのチオウレアは、幼根及び胚軸の生長のみを促すもので、子葉の生長を促す効果は小さく、発芽後の生長を促進するようなものではないが、種によっては休眠打破作用がある。従って、カエデ類の種子のように、子葉の生長はほぼ完了しており、幼根及び胚軸の生長のみで発芽する種子に対して適用する。チオウレアの濃度はそれぞれの休眠の強度、種子の大きさ等によって変える。基本的に休眠が強い場合や種子の大きさが大きいほど高濃度が必要になる。BAやGAでも同様の効果はあるが、これらの物質は価格的に高額である。これに対して、チオウレアは安価なため、生理的な特性によってチオウレアを用いることができる種子に対して用いることにより、安価に試験を行うことが可能になる。
【0085】電子受容体並びにアミノ酸原料としての硝酸カリウムは、種子の呼吸促進とアミノ酸、タンパク質の生合成を補うことにより発芽を促進させるものである。ダケカンバ種子のように小型の種子は、アミノ酸、タンパク質の貯蔵量が少ないため、硝酸カリウムを与えることにより7日以内という短期間で発芽力を測定することが可能となる。この方法は、硝酸カリウムを単独で添加するほか、植物ホルモンやチオウレアだけでは短期間で発芽しない種子に対しては、さらに添加すると有効である。硝酸カリウムの濃度はそれぞれの休眠の強度、種子の大きさ等によって変える。基本的に休眠が強い場合や種子の大きさが大きいほど高濃度が必要になる。
【0086】(1-4-2)高酸素分圧による処理種子が生理的休眠性を有する場合、胚の生長を促す必要がある場合、種子の構造的特性により外種皮及び内種皮の除去や種子の切断が困難である場合等は、別の方法として発芽試験床を高酸素分圧下に置くことにより対応できる。種子は、発芽する際に呼吸して発芽に必要なエネルギー生産を行っていることから、酸素濃度を高めた条件下で置床することによって種子の呼吸活性を高め、発芽速度を速くすることが可能になる。
【0087】具体的には、それぞれの種子を置床したシャーレを、例えばデシケーターのような密閉減圧ができる容器に入れ、その容器内の気体を酸素と置き換えて置床する。また、休眠が強力な種子の場合や胚の生長が非常に遅い場合等は、上記方法(1-4-1)と組み合わせることによって発芽速度を速くすることが可能になる。
【0088】(1-4-3)生長促進ガスによる処理種子が生理的休眠性を有する場合、胚の生長を促す必要がある場合、種子の構造的特性により外種皮及び内種皮の除去や種子の切断を行なうことが困難である場合等は、さらに別の方法として、発芽試験床をエチレンガス、エチレンガスに二酸化炭素を加えた混合ガス、又はエチレンガスに二酸化炭素及び酸素を加えた混合ガス下に置くことにより発芽期間を短縮させることができる。エチレンガスを加えることによって種子の呼吸活性を高め発芽が促進される。そこに二酸化炭素を加えることで必要な炭素骨格を補充することにより、エチレンガスの効果が増し、酸素を加えることでエチレンガスの呼吸活性効果が強められ、更に発芽速度を早くすることが可能になる。
【0089】具体的には、それぞれの種子を置床したシャーレを、例えばデシケーターのような密閉できる容器に入れ、その容器内に規定の濃度のエチレンガスを加えて置床する。エチレンガスの濃度は、種子の休眠の強度、胚の生長の速度、種子の大きさ等によって変える。また、エチレンガスと共に、種子の生長に必要な炭素骨格を与える二酸化炭素、若しくはさらに呼吸に必要な酸素を混合した混合ガスを加えることによって発芽速度を速くすることができる。なお、休眠が強力な種子や胚の生長が非常に遅い場合等は、上記(1-4-1)の方法と組み合わせることによって、発芽速度を速くすることが可能になる。
【0090】(1-5)置床方法及び処理方法の実施ステップ図1のステップ15において、上記ステップ13及び14で選択された置床方法及び処理方法に従って置床方法及び処理方法を実施し、置床前には置床する個体を十分水洗浄する。ステップ15の作業では、果皮を除去したり種子を切断する作業が伴うため、置床前にみず洗浄を行なうことによりカビ等の発生を抑制することができる。特に、切断に伴って種子から分泌される物質を洗浄によって取り除くことは、カビの発生を抑える上で重要である。置床及び処理の方法の実施においては、対象とする木本植物種子を、それぞれ種子の大きさに適した径のシャーレ内に置床し、発芽床には湿らせた濾紙を適用して、23℃下に置床することが標準的な方法となる。なお、シャーレ以外の容器やその他の素材の発芽床を用いても差し支えない。温度条件も限定されるものではないが、本発明の検定法では常温近傍の一定温度下で検定を完了できることに特徴がある。
【0091】(1-6)発芽能力保有個体の割合の測定ステップ図1のステップ16においては、上記のような置床方法及び処理方法を実施した種子の発芽能力保有個体の割合を測定する。具体的な測定方法として、その種子が発芽能力を有していると判断する基準として次のa)〜d)のいずれを樹種に応じて選択し適用する。そして、測定の結果得られた割合の「数値」を「発芽能力保有個体の割合」とする。
【0092】(1-6-1)測定方法a)幼根組織が伸長した個体又は種子組織から幼根が突出した個体の割合を測定する。
【0093】(1-6-2)測定方法b)幼根組織が重力方向に彎曲した個体の割合を測定する。
【0094】(1-6-3)測定方法c)子葉組織が堅固なまま膨張した個体の割合又は子葉組織に葉緑素が形成されて緑色化した個体の割合を測定する。
【0095】(1-6-4)測定方法d)不定根が形成された個体の割合を測定する。
【0096】(1-7)発芽力の測定ステップ図1のステップ17においては、上記のような置床方法及び処理方法を実施した種子の発芽力を測定する。具体的な測定方法として、次のi)〜v)のいずれかを選択し適用することが有効である。そして、測定の結果得られた「数値」を「発芽力」とする。
【0097】(1-7-1)測定方法i)一定期間(好適には7日以内)に種子組織内から伸長又は種子組織を突き破り伸長した幼根の長さ又はこの値を1日当りに換算した伸長した長さを「数値」とする。
【0098】(1-7-2)測定方法ii)置床する前の胚の重量を測定しておき、一定期間内(好適には7日以内)に再び胚の重量を測定し、算出した胚の重量増加率又はこの値を1日当たりに換算した重量増加率を「数値」とする。
【0099】(1-7-3)測定方法iii)一定期間内(好適には7日以内)に、前述の発芽能力保有個体の割合の測定方法a)〜d)のいずれかの方法により生長を示した個体の割合を定期的に測定した発芽勢を以って発芽力とし、生長を示した個体の百分率を「数値」とする。
【0100】(1-7-4)測定方法iv)一定期間内(好適には7日以内)に伸長した不定根の長さ又はこの値を1日当りに換算した伸長した長さを「数値」とする。
【0101】(1-7-5)測定方法v)
一定期間内(好適には7日以内)での葉緑素の形成の程度を測定又は該葉緑素の形成の程度を1日当りに換算した値を「数値」とする。葉緑素の形成の程度を計測する方法としては、例えば、葉緑素計(比色計)等公知の方法が利用できる。
【0102】(2)木本植物種子の早期品質証明方法図2は、本発明による木本植物種子の早期品質証明方法の手順を概略的に示した流れ図である。品質証明方法の主要な工程には、検量線の作成ステップ20と、発芽率推定及び品質証明ステップ30の2段階のステップが含まれる。
【0103】(2-1)検量線の作成ステップ図2のステップ20は、検量線の作成ステップである。このステップ20は、次の発芽率推定及び品質証明ステップ30を実施するにあたり必要な検量線を予め作成するステップである。検量線は、木本植物種子の早期検定法を実施して得られた発芽力(の数値)と、実際に当該種子を播種した後に得られる実際の発芽率との相関関係を表したグラフである。また、発芽能力保有個体の割合の測定結果(数値)と実際の発芽率との相関関係を表したグラフも含まれるものとする。図2のステップ21において、前述の早期検定法を実施して発芽能力保有個体の割合又は発芽力を数値として得る。これと並行して別途、ステップ22において実際に当該種子を播種した場合の実際の発芽率を測定する。そして、ステップ23において、発芽力等と実際の発芽率との間に導出された相関関係をグラフに表し、検量線を作成する。図3は、ステップ20により作成された検量線の一例を示すグラフである。この検量線は、発芽力と実際の発芽率との相関関係を示している。尚、相関関係を図示のようなグラフで表現することは、好適例であるが、発芽能力保有個体の割合又は発芽力と実際の発芽率との間に導出された相関関係を示すものであれば、その表現形式は任意である。
【0104】(2-2)発芽率推定及び品質証明ステップ予めステップ20により検量線を得た後、ステップ30の発芽率推定及び品質証明ステップを実施する。ステップ31では、品質証明の対象とする木本植物種子に対して前述の早期検定法を実施し、発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を数値として得る。次にステップ32において、得られた発芽能力保有個体の割合又は発芽力に検量線を適用することにより、検量線から得られる発芽率の数値を実際の発芽率として推定する(以下、「推定発芽率」と称する)。この方法は、比較的生理的休眠性が低い樹木に対して容易に適用できる。そしてステップ33において、ステップ32で得た推定発芽率により、又は、ステップ32で得た推定発芽率並びにステップ31で得た発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力により品質証明を行う。「品質証明を行う」とは、具体的には例えば、得られた数値データを品質証明書等の形態で表現し、状況に応じて測定方法や状況写真等の補足説明を提示することが含まれる(以下、同様)。これにより、木本植物種子の品質証明を短期間(好適には7日以内)で行うことを実現する。
【0105】(3)木本植物種子の播種量設計法図4は、本発明による木本植物種子の播種量設計法の手順を概略的に示した流れ図である。播種量設計法の主要な工程には、発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力の測定ステップ、検量線の適用による発芽率推定ステップ、並びに品質証明ステップのうち1又は複数のステップにより発芽率を得るステップと、得られた発芽率を用いた播種量の決定ステップとが含まれる。
【0106】(3-1)発芽能力保有個体の割合及び発芽力の測定ステップステップ41においては、播種の対象とする木本植物種子に対して前述の早期検定法を実施し、発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力を数値として得る。
【0107】(3-2)発芽率推定ステップステップ42においては、前述の図2のステップ20と同様に予め得た検量線をステップ41で得た発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力に適用し、実際の発芽率を推定した推定発芽率を得る。
【0108】(3-3)品質証明ステップステップ43においては、ステップ42で得た推定発芽率により、又は、ステップ42で得た推定発芽率並びにステップ41で得た発芽能力保有個体の割合及び/又は発芽力により品質証明を行う。
【0109】(3-4)播種量の決定ステップステップ44においては、播種工の実施に当たって木本植物種子の単位播種量を算出することにより決定する。播種量の決定は、ステップ41で得られた発芽能力保有個体の割合を用いる場合、ステップ42で得られた推定発芽率を用いる場合、又は、ステップ43で得られた品質証明に含まれる発芽率を用いる場合があり得る。いずれの場合も、本発明の早期検定法により7日以内の一定期間内に信頼性のある数値データを確実に得ることができる。これにより、これまで利用が困難であった郷土樹木種子の緑化工への適用を大幅に推進することが可能となり、郷土種を用いた生物多様性を考慮した植生復元が効率的に行なえるようになる。また、緑化工に用いる種子のほか、苗木生産等の分野においても、本手法を活用して発芽率を検定することにより、効率的な苗木生産を行うことができる。
【0110】(4)本発明の適用例本発明による木本植物種子の早期検定法は、種子の特性に応じて処理方法等を適宜選択し、7日以内という短期間で発芽率を測定及び推定する方法である。この方法を効率的に活用するためには、前述の事前処置方法、置床方法、処理方法の各方法を効果的に組み合わせることが好適である。具体的な各手法を組み合わせた適用例を、以下に示す。
【0111】(4-1)完全胚未熟型種子への適用例完全胚未熟型種子は発芽能を発現できるまでに通常は長期の後熟(After-ripening)過程を経るのが一般的であるが、実際に自然採取する種子には採取時期が異なるために後熟段階が一定とは限らないものもある。しかし、この型の種子は、原則として後熟が進行していないものと見なして下記の(4-1-1)〜(4-1-3)の手法を適用するとよい。
【0112】(4-1-1)例えば、大きさが径5mm程度以上の場合には、胚乳から胚摘出を行い、発芽能力を引き出すための措置(植物ホルモンのGA、BA、GA+BAのいずれかでの処理、及び/又は酸素置換)を施す。その後、1週間前後で伸び出した幼根あるいは子葉の生長の度合いを必要に応じてマイクロメーター等を用いて測定すると共に色素形成の調査を行い、発芽能力保有個体の割合(発芽率)や種子の発芽力を検定するとよい。
【0113】(4-1-2)例えば、大きさが径4mm程度以下の小型種子の場合には、胚を含むように種子を切断し、種子切片の胚乳内に胚が位置するように配慮する。上記植物ホルモン及び/又は酸素置換下で1週間前後置床し、伸び出した幼根又は子葉の生長の程度を必要に応じてマイクロメーター等を用いて測定すると共に色素形成の程度を調査するとよい。
【0114】(4-1-3)例えば、大きさがさらに小さいために胚摘出法を適用できない種子に対しては、種子を精米機等に入れて緩く撹拌して種皮表面に擦り傷や掻き傷を多数付けて、上記植物ホルモンや酸素の浸入を促すと共に、種皮による胚発達の物理的圧力を低減し、1週間前後で発芽するように配慮し、発芽の兆候を、必要に応じて拡大鏡または実体顕微鏡下で検出するとよい。
【0115】(4-2)胚未熟型種子への適用例胚未熟型種子においては、胚の後熟は種子完成時点においてある程度進行しており、胚が種子内で成熟するまでの期間は完全杯未熟型種子と比べて相対的に短い。これには、休眠の程度は浅く、既に採取時点において休眠覚醒状態にあるものも含まれる。従って、この型の種子の発芽力の検定にはマイクロメーターは不要であり、下記の(4-2-1)〜(4-2-7)の手法を適用するとよい。
【0116】(4-2-1)例えば、後熟がほぼ完了していて胚のみを摘出できる場合には、大気下での水供与濾紙上での幼根の伸長の程度(単位時間当りの伸長量)から発芽力を検定するとよい。
【0117】(4-2-2)例えば、後熟がほぼ完了していても胚のみを摘出できない場合であって、種子の大きさが3mm程度以上の場合には、種子から胚を含む部分だけを分離するために、種子の切断あるいはさらに種子切片の側面の切断との組み合わせで「胚組織+胚乳」のブロック化を行い、これらの種子切片の水供与大気下での酸素呼吸を容易にすることで、胚の生長を促し、突出して来る幼根又は子葉の生長の程度や、子葉における色素形成の程度から発芽力を検定するとよい。
【0118】(4-2-3)例えば、種子の大きさが前記(4-2-2)程度であって後熟が未了で休眠性が残存している場合には、前記(4-2-2)に加えて大気下で植物ホルモン(GA単独かGAとBAの組み合わせ)投与を行い、同様な調査を行うとよい。
【0119】(4-2-4)例えば、種子の大きさが前記(4-2-2)程度で後熟が未了で休眠性が残存している場合であって、前記(4-2-3)でl週間前後で見るべき胚の発達を誘導できないタイプの種子には、水供与下で大気の酸素置換を行うとよい。
【0120】(4-2-5)例えば、種子の大きさが前記(4-2-2)程度で後熟が未了で休眠性が残存している場合であって、前記(4-2-3)及び前記(4-2-4)でも1週間前後で見るべき胚の発達を誘導できないタイプの種子には、前記(4-2-3)と前記(4-2-4)を組み含わせ、大気の酸素置換の下で種子切片を植物ホルモンと共に置床するとよい。
【0121】(4-2-6)例えば、種子の大きさが切断し難い程小さな径2mm以下の場合で、後熟が終了している種子で水供与大気下で1週間程度で発芽しないタイプの種子の場合には、種子の切断は行わずに、前記(4-2-3)、前記(4-2-4)、前記(4-2-5)のいずれかを適用して、発芽率や発芽力を検定するとよい。
【0122】(4-2-7)例えば、前記(4-2-6)によっても発芽の兆候を1週間前後で検知できないタイプの種子においては、種子を精米機等に入れて撹拌するなどして種子表面に掻き傷を与え、種皮による胚生長に対する物理的圧力を軽減しながら、植物ホルモンや酸素吸収を促して発芽速度を速め、発芽率や発芽力を検定するとよい。
【0123】(4-3)胚成熟型種子への適用例胚成熟型種子は、種子完成時点において胚が形態学的には完全に発達し終え、種子内の胚乳組織は消滅してしまっているが、胚自体の後熟までもが完全に終了している訳ではない。これらの種子の、検定方法は生長様式に基づいて次の(4-3-1)〜(4-3-3)の3グループに区分するとよい。
【0124】(4-3-1)非休眠性(後熟が未完の場合には発芽までに多少の期間を要する)種子グループへの適用例例1):例えば、非休眠種子であって、通常の水供与大気化でl週間前後までに幼根を突出するタイプの種子はそのまま置床して発芽率や発芽力を検定するとよい。
例2):例えば、非休眠性種子であっても、通常の水供与大気下で1週間前後までに幼根突出をしないタイプの種子であって大型の種子は、種皮の除去や種子の切片を行い置床し、発芽率や発芽力を検定するとよい。
例3):例えば、小型の種子で種皮の除去や種子の切断が困難なタイプの種子の場合には植物ホルモン(GA、BA、GA+BA、エチレンガス、混合ガスのいずれか)を添加すると共に、それでも1週間前後で発芽を誘致できないタイプの種子の場合には硝酸カリウム溶液と組み合わせて置床し、発芽率や発芽力を検定するとよい。また、必要に応じて酸素置換を併用するとよい。
【0125】(4-3-2)一次休眠性種子グループへの適用例例l):例えば、広葉樹種子の一次休眠覚醒は、自然界では一般的には湿潤低温条件下で2乃至3ケ月をかけて進行する。従って、このグループの種子の発芽力検定に際しては何らかの処理が不可欠となるが、切断が可能な大型の種子の場合には、何らかの形の胚を含む種子切片とし、植物ホルモン(GA、BA、GA+BA、エチレンガス、混合ガスのいずれか)を添加すると共に、必要に応じて酸素置換を併用するとよい。
【0126】例2):例えば、中型で切断できても種子の構造上から「幼根+下胚軸+子葉」の組み含わせ部分を切除できない種子においては、外種皮のみを除去し、植物ホルモン(GA、BA、GA+BA、エチレンガス、混合ガスのいずれか)を添加するか、安価な休眠打破剤チオウレア溶液と共に置床し、生重量の増大の程度、幼根突出・子葉展開の割合から発芽率や発芽力を検定するとよい。また、必要に応じて酸素置換を併用するとよい。
【0127】例3):例えば、種子切片を作ることも種皮剥離もできない小型の種子においては、植物ホルモンを添加するか、必要に応じて酸素置換を併用するのが基本であるが、1週間前後に何らかの発芽現象を観察できるように、植物ホルモンの濃度を最適水準に調節するほか、必要に応じて植物ホルモンに硝酸カリウム溶液を組み合わせると共に、それらと共に酸素吸収効率を高め、種皮による胚生長に対する圧力を軽減するために精米機に入れて種皮表面にだけ掻き傷を与える程度に撹拌するとよい。
【0128】(4-3-3)幼芽のみの一次休眠性種子グループへの適用例例1):例えば、幼芽のみが休眠するが、地上に落下した途端に幼根を伸ばして吸水しながら越冬する性質を有する種子であっても、幼根突出速度の遅い種子の場合には、種子を切断あるいは更にその種子切片の側面も切断した幼根部位を含む種子切片・ブロックを作製し、水供与大気下での幼根の伸長速度から発芽力を検定するとよい。もし、幼芽の発芽も実際に観察する必要がある場合には、前述のGAを添加するか、さらに大気の酸素置換を行なうとよい。
【0129】例2):例えば、種子の幼根が既に伸長してしまっているか、あるいは伸長した上で枯死してしまっている場合には、種子切片・ブロック化するだけでなく、幼根の根元から除去し、伸長していない個体は幼根組織の先端部を除去し、オーキシン溶液と共に置床し、茎切断面から分化して来る不定根の数とその全長から発芽率や発芽力を検定するとよい。
【0130】(4-4)硬実型種子への適用例硬実型種子は、胚が完全に発達し終えて後熟も終了し、種皮が堅固であるために発芽できないものが典型的であるが、前述のどの樹種においても種皮の硬さや厚さで種皮が発芽に一定の力学的圧力を加えると同時に、程度の違いがあっても水分と酸素吸収の妨げとなっているのが実状である。場合によっては、発芽阻害物質を含み、発芽の進行を妨げる場合もあるが、ここでは典型的な硬実型種子への適応に限定して次の(4-4-1)〜(4-4-3)の通り整理する。
【0131】(4-4-1)例えば、種子母集団中に種皮の強度の変異があるのが普通なので、その変異を回避するために、胚又は胚の幼根組織を含む種子切片を作成し、水供与大気下で発芽の程度(幼根伸長速度や子葉組織での色素形成)から発芽力を検定するとよい。
【0132】(4-4-2)例えば、前記(4-4-1)の方法で1週間前後で発芽現象を検出できないタイプの種子の場合には、上記の種子切片を植物ホルモン(GA、BA、GA+BA)添加か、高酸素分圧下で置床し、発芽の程度を観察し発芽率や発芽力を検定するとよい。
【0133】(4-4-3)例えば、種子が小さいために、外種皮及び内種皮の除去や種子の切断が困難な場合は、種子を強酸の場合は濃硫酸等、強アルカリの場合には次亜塩素酸ナトリウム等に浸すことにより外種皮又は内種皮を薄くするか、外種皮又は内種皮の一部を物理的に傷付けて置床するとよい。
【0134】
【発明の効果】本発明の効果は、第1に全ての種類の木本植物種子(特に広葉樹種子)に適用可能な、種子発芽率の早期検定法を実現したことである。第2にこれを基礎にして使用種子母集団あるいは売買種子母集団の品質証明法となすことが可能となる。即ち、本検定法によって直接・間接的に種子母集団の発芽率を推計できることになり、種子品質の保証並びに取り扱い指針を提供できることになる。第3に、推計された種子発芽率に基づいて、播種工法による緑化工事における木本種子の適正な播種・混合量を設定することによって、施工発注者に応える最も合理的な施工計画を提示できることになる。また、それぞれの木本植物種子固有の様々な構造上の特性並びに休眠・劣化に関する生理的特性を熟知した上での種子品質の認知であるために、ここで得られた品質保証を基礎として行われる設計・施工計画はより高い確実性を有することになる。
【0135】具体的効果として、本発明によれば、7日以内という短期間で対象植物の発芽力を有する個体の割合を測定できることから、種子の劣化を生じることなく正確な発芽能力を有する個体の割合を効率的かつ迅速に測定することが可能となる。また、種子の特性によって外種皮や内種皮が付いたまま種子組織を切断することや、外種皮や内種皮がついたままで置床することが可能になる種子が大部分を占めるため、従来の摘出胚法のように全ての種類の種子に対して完全に胚を露出する必要はなく、作業性を大幅に容易にすることが可能となる。さらに外種皮や内種皮の除去や、種子の切断を行う前に浸漬処理が必要となる種類の種子もあるが、本発明によればどの種類の種子に対しても浸漬処理期間は一晩でよいことから、試験期間の大幅な短縮化が実現する。
【0136】緑化工事においては、種子という生き物を取り扱う性格上、施工時期が限定されることから、施工前に迅速な発芽率の計測が求められる。本手法は、こうした場合に極めて有効な方法であり、実際問題として木木植物種子への適用が困難であった従来の発芽試験法に代わる検定法として社会的にも大きく貢献できるものである。特に、本発明の方法はその全ての場合において最長でも7日以内に発芽率を検定することができる。従って、これまで発芽試験の適用が困難であった強い休眠を有する種子でも7日以内という短期間で発芽率を検定することを可能とした。これは、地域住民によって自然採取した種子を活用する緑化工事等のように種子の品質を事前に早急に確認しなければならない場合において極めて有効な方法である。また、緑化工事に用いる種子のほか、苗木生産等の分野においても、本手法を活用して発芽率を検定することにより、効率的な苗木生産を行うことができる。
【0137】この発芽力検定法を用いて種子の品質証明を行なうことにより、これまでよりも精度が高くかつ早期に種子の品質を証明することが可能となる。また、この検定結果(品質証明)を用いて緑化工事における木本植物種子の播種量を設定することにより、郷土樹木種子を設計に組み入れることを容易にし、その結果種子の無駄のない確実性の高い緑化工事を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】392012261
【氏名又は名称】東興建設株式会社
【識別番号】392007577
【氏名又は名称】日本合同肥料株式会社
【出願日】 平成13年3月26日(2001.3.26)
【代理人】 【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
【公開番号】 特開2002−281808(P2002−281808A)
【公開日】 平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願番号】 特願2001−87751(P2001−87751)