| 【発明の名称】 |
種子の発芽不良・ロゼット化防止方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】河野 靖司
|
| 【要約】 |
【課題】発育不良、ロゼット化を生じやすい種子に関して、すなわち、大がかりな設備が不要で容易に実施でき、処理後の播種が容易な種子の発芽不良・ロゼット化防止方法を提供する。
【解決手段】発芽不良、または、生育時にロゼット化を起こす植物体種子を、高水分状態で低温・暗黒条件下に放置したのち、乾燥処理する種子の発芽不良・ロゼット化防止方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 発芽不良、または、生育時にロゼット化を起こす植物体種子を、高水分状態で低温・暗黒条件下に放置したのち、乾燥処理することを特徴とする種子の発芽不良・ロゼット化防止方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、発芽不良、または、生育時にロゼット化を起こす植物体種子の発芽不良・ロゼット化防止方法技術に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、発芽不良や生育時にロゼット化する種子は、主にセルトレイやポットに苗養生したものを一定期間、低温条件下に保管して、発芽不良を解消し、かつ、高温ロゼットを防止していた。 【0003】しかし、苗養生する場合、圃場10a当たり、通常、約30000本の苗が必要になるため、施設面や作業性の問題で実施困難な場合が多かった。ここで、近年注目されてきたのが、種子の冷蔵処理技術である。しかし、この技術では冷蔵処理中には種子に充分な水分が供給されている必要があり、そのため容器内に満たされた水に種子を水没・浸漬して冷蔵処理を行う。 【0004】しかし、これら高温ロゼット、発芽不良の改良が求められる種子の中にはトルコギキョウなどの超微小種子もあり、このような微小な種子は通常の乾燥した状態であっても播種しにくい上に、処理を行った後の濡れた種子はさらに播種が困難になると云った問題があった。さらに最近はペレット処理されている種子も多く、このような場合、水中冷蔵処理は困難である。 【0005】このような問題に対して、スラリー状の造粒高分子吸収材などの流体ゲルを利用した冷蔵処理が提案された。これは流体ゲルに種子を均一に分散させ、冷蔵処理後に流体ゲルとともに播種するものであるが、処理前に流体ゲル中に種子を分散させた場合、処理途中に流体ゲルが離水してしまい、種子を保持できなくなってしまう。 【0006】また、冷蔵処理を行った処理を播種のために流体ゲル中に分散させて播種する場合には、流体ゲル中に冷蔵処理後の濡れた種子の均一分散は困難で、播種時の精度が低く、無駄が多くなってしまう(間引きが必要になったり、あるいは、播種されない箇所ができたりする)と云った問題があった。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従来の問題点を改善する、発育不良、ロゼット化を生じやすい種子に関して、すなわち、大がかりな設備が不要で容易に実施でき、処理後の播種が容易な種子の発芽不良・ロゼット化防止方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明の種子の発芽不良・ロゼット化防止方法は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、発芽不良、または、生育時にロゼット化を起こす植物体種子を、高水分状態で低温・暗黒条件下に放置したのち、乾燥処理する種子の発芽不良・ロゼット化防止方法であり、この構成により、広大な面積を必要とする大がかりな設備も不要で、効果的に発芽不良やロゼット化を防止でき、処理後の種子は保存ができ、播種が容易であり、さらに、ペレット処理することも可能であるため、そのとき正確な播種が可能となるため、機械播種が可能となり、間引きなどの手間も防止でき、計画的な収穫が可能となる。さらに、上記構成により、本発明の副次効果として、出芽率(播いた種が発芽し、その芽が土壌表面より出る割合)が向上し、さらに、出芽勢が向上すると云った予想外の効果が得られる。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明の種子の発芽不良・ロゼット化防止方法が応用される植物体種子としては、発芽不良を起こす植物体の種子、あるいは、生育時にロゼット化を起こす植物体の種子であり、例えば、トルコギキョウ、種子系スターチス、スイトピー等が挙げられる。 【0010】本発明において、低温・暗黒条件下に放置するためには高水分状態であることが必要である。高水分状態とは、望ましくは種子が充分な量の水に水没・浸漬された状態、あるいは、相対湿度がほぼ100%に保たれた状態等、種子が低温・暗黒条件下で吸収する水分が充分に供給される状態を云う。 【0011】また、低温とは通常0℃(氷点)以上15℃以下で、従来の種子の発芽不良・ロゼット化防止方法で用いられる温度であり、暗黒条件とは積極的に遮光された状態を云うが、特に、光が存在すると発芽する種子や催芽される種子を取り扱う場合には、発芽しないように、あるいは、催芽されないように充分に暗くする必要がある。 【0012】このような高水分状態の低温・暗黒条件下に種子を一定期間放置する。この放置の期間は通常、数日〜数ヶ月の任意の期間であるが、必要に応じて多少長くしても、あるいは短くしても良い。 【0013】このような高水分状態の低温・暗黒条件下で種子を一定期間放置することにより、発芽不良やロゼット化を抑制する性質が種子に発現する。しかしながらこのような処理後の種子は表面が濡れているために、取扱性が極めて悪い。このため本発明では乾燥を行う。 【0014】乾燥は通常の裸種子と同程度に、あるいは、種子同士や容器に付着しない程度の表面水分状態になるように行う。このような乾燥は、乾燥した空気に曝露し、通風乾燥によって速やかに水分を除去して行うことが望ましい。この乾燥処理中も、催芽されるような、あるいは、発芽するような光量未満で行うことが望ましく、より好ましくは暗黒条件で行う。なお、温風によって乾燥をおこなっても良いが、この場合、種子が吸水しており、高温で通風を行うと発芽力が低下してしまうため、比較的低温、望ましくは20〜35℃の空気温度範囲、であることが必要である。 【0015】この乾燥処理は高水分状態の低温・暗黒条件下での放置処理が終わった後、速やかに行うことが望ましく、さらに乾燥も可能な限り迅速に行うことが必要である。 【0016】乾燥処理は、種子が活動しているときに行うと出芽に対して悪影響を及ぼすが、このような高水分状態の低温・暗黒条件下での種子の一定期間放置後、直ちに上記に示した条件で行うことにより、悪影響もなく、かつ、本発明の優れた効果が得られる。 【0017】乾燥した種子は、通常の種子と同様に扱うことができる。すなわち、そのまま圃場に播種でき、また、ペレット種子やゲル被覆種子に加工することもできる。このような加工を行っても、本発明の効果のうち発芽不良防止効果、生育時でのロゼット化抑制効果は得られる。 【0018】そのため、種子供給者が予め本発明の種子の発芽不良・ロゼット化防止方法を施し、需要者に供給することにより、需要者は従来の種子と同様の取り扱いで播種でき、そのときに、発芽不良防止効果、生育時でのロゼット化抑制効果を得ることができる。 【0019】 【実施例】以下に本発明の種子の発芽不良・ロゼット化防止方法について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 (実施例1:発芽不良の回避、高温ロゼット抑制能力発現の確認)出芽までの日数が比較的多く、かつ、高温ロゼットを形成しやすい3種類のトルコギキョウ種子A(品種名:プラチナキング)、トルコギキョウ種子B(品種名:キュートピンクピコティー)、およびトルコギキョウ種子C(品種名:つくしの波)の裸種子を約1000粒ずつ、それぞれ500mlビーカー中の300mlの水道水に水没・浸漬させ、これら種子に光が当たらないように、アルミニウムホイルにて遮光した上10℃の低温で35日間放置して冷蔵処理した。 【0020】その後各種子A〜Cをそれぞれ400粒づつ取り出し、それぞれの200粒はは25℃の乾燥空気で通風乾燥し、種子含水率8%w.b.(%w.b.:湿量基準の水分量)に調整した。これら冷蔵処理しただけの種子(「冷蔵処理」)、冷蔵処理後に速やかに乾燥した種子(「冷蔵・乾燥処理」:実施例)、および、未処理の種子(「無処理」)それぞれを200粒づつを、灌水および温度調節を行える設備内圃場に15cm間隔で播種(6月13日)し、同条件で育成させた。 【0021】なお、圃場への播種において、本発明に係る「冷蔵・乾燥処理」した種子は、乾燥しているために非常に取扱性が良好であった。これら種子のその後の、出芽日、抽だい日、開花日、ロゼット化率、圃場出芽率、および、切り花としたときの長さ(切り花長)を調べた。結果を表1に示す。 【0022】 【表1】
【0023】表1により「冷蔵・乾燥処理」を行った種子はいずれの品種であっても、無処理のものに比べて、発芽が早くなると共に、高温ロゼットの出現は著しく低下していることが判る。このように冷蔵処理した種子を乾燥しても冷蔵処理によって付加された特性は失われないことが確認された。さらに、表1により冷蔵・乾燥処理を施した種子の場合、冷蔵処理した種子に比べて、圃場出芽率が高くなることが判る。 【0024】(実施例2:貯蔵性の確認)実施例1と同様の方法で冷蔵処理を行った種子をA〜Cの各品種400粒ずつを取り出し、そのうち各200粒ずつは、25℃の乾燥空気で温風乾燥し、種子含水率を8%w.b.に調整した。 【0025】これら、冷蔵処理した種子(濡れたままのもの)および冷蔵・乾燥処理した種子(実施例品)をそれぞれ200粒ずつポリエチレン製の袋に入れ、密封した。これらポリエチレン製の袋を22℃に調整した恒温器内(暗黒)内で180日間貯蔵し、その後、実施例1と同様に、同日(6月13)に播種した。 【0026】これら種子のその後の、出芽日、抽だい日、開花日、ロゼット化率、圃場出芽率、および、切り花としたときの長さ(切り花長)を調べた。結果を表2に示す。 【0027】 【表2】
【0028】表2により、冷蔵処理のみしか行わなかった種子では、種子が吸水していたため、常温保管(22℃)により著しく出芽率が低下したと考えられる。これに対して冷蔵処理後乾燥処理を行ったものは、実施例1の冷蔵・乾燥処理品と比べて、圃場出芽率に若干(5%程度)低下があったものの、85%程度の出芽率は維持しており、半年間の常温保存によっても充分な出芽率を維持することが確認されている。 【0029】(実施例3:種子処理への適応性の確認)実施例1と同様の方法で冷蔵・乾燥処理を行ったA〜Cの各品種の種子を、市販されているトルコギキョウペレット種子と同様の方法で(ペレット種子加工の専門業者に依頼して)、種子の周囲に微粒の土からなる層を設け、ペレット種子化した。これらペレット種子をそれぞれ200粒ずつ、実施例1と同様に、同日(6月13)に播種した。 【0030】これら種子のその後の、出芽日、抽だい日、開花日、ロゼット化率、圃場出芽率、および、切り花としたときの長さ(切り花長)を調べた。結果を表3に示す。なお、種子は通常の種子と同様にペレット種子化できたとのことであった。 【0031】 【表3】
【0032】表3により、ペレット化しても、圃場での出芽が早くなると云う効果が得られ、高温ロゼットの出現は著しく低下していることが判る。また、ペレット処理を行っても圃場出芽率への悪影響はなかった。 【0033】(実施例4:出芽率の向上および出芽勢の向上の確認)本発明の検討を進める中で、出芽率および出芽勢(播種後短期間での出芽率で、種子の勢いや出芽そろいの目安となる)の向上が観察された。これは、高水分状態で低温・暗黒条件下に放置された種子内部の水分が乾燥処理により移動し、その水分の移動に伴って発芽を開始させる酵素が移動することにより、このような副次効果が得られるのではないかと考えられている。 【0034】すなわち上記実施例1のときと同様に冷蔵処理を行った種子、冷蔵・乾燥処理を行った種子(種子含水率8%w.b.)および、無処理の種子について、400粒ずつを、それぞれ、200穴セルトレイに充填され、充分に水を含ませた育苗培土に播種(6月8日)し、覆土を行わず、20℃の人工環境試験機内(照明は常時点灯)に、放置した。このとき、土壌の湿り具合を観察しながら適宜灌水した。その後の出芽日、出芽そろい日(出芽数が増えなくなった最初の日)、最終出芽率について表4に示した。 【0035】 【表4】
【0036】表4より、冷蔵処理の後に乾燥を行う本発明の種子の発芽不良・ロゼット化防止方法により、出芽日、出芽そろい日が早くなり、かつ、最終出芽率が高くなっていることが理解できる。また、表1〜表3での結果(圃場での実験結果)と比べた場合、出芽率、出芽日に関して差異が生じているのは、圃場での発芽・出芽が、その環境の影響を受けたためであると考えられる。 【0037】 【発明の効果】本発明の種子の発芽不良・ロゼット化防止方法は、通常の無処理の種子と同様の取扱性が得られながら、発芽不良・ロゼット化が防止される上に、出芽率ならびに出芽勢が向上するという副次効果が得られる優れた種子の発芽不良・ロゼット化防止方法である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】597041747 【氏名又は名称】アグリテクノ矢崎株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年12月14日(2000.12.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100060690 【弁理士】 【氏名又は名称】瀧野 秀雄 (外3名)
|
| 【公開番号】 |
特開2002−176811(P2002−176811A) |
| 【公開日】 |
平成14年6月25日(2002.6.25) |
| 【出願番号】 |
特願2000−380505(P2000−380505) |
|