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【発明の名称】 圃場(ほじょう)の復旧方法
【発明者】 【氏名】田所 好男

【氏名】田所 陽司

【要約】 【課題】連作障害を未然に防止できるように改良された圃場の復旧方法を提供することを主要な目的とする。

【解決手段】圃場の上で、作土と水とを混ぜ繰り返し、作土を洗浄する。作土洗浄後に、圃場に溜まった水溶液は自然排水により排水される。この発明によれば、畑作等で使用された化学肥料、農薬の残存成分や殺虫剤等の成分を作土中から除去することができるので、作土中の化学肥料、農薬の残留濃度が減少し、連作障害を未然に防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 圃場の上で、作土と水とを混ぜ繰り返す作土洗浄工程を備えた圃場の復旧方法。
【請求項2】 前記圃場の、少なくとも表面から20cm〜30cmまでの所を前記水と混ぜ繰り返す、請求項1に記載の圃場の復旧方法。
【請求項3】 前記作土洗浄工程は、前記作土に向けて、水を噴射し、この水の噴射力により、前記水と前記作土を混ぜ繰り返す工程を含む、請求項1または2に記載の圃場の復旧方法。
【請求項4】 前記作土洗浄工程を経た後、放置し、その後、洗浄後の前記作土を均一になるように混合する工程をさらに備えた、請求項1から3のいずれか1項に記載の圃場の復旧方法。
【請求項5】 前記作土洗浄工程は、少なくとも下記の部材(a)、(b)および(c)を備えた農業機械を用いて実行する請求項3に記載の圃場の復旧方法。
(a) 前記圃場を走行する走行台車(b) 前記走行台車に搭載され、該走行台車を駆動させる駆動機構(c) 前記走行台車に搭載され、前記作土に向けて前記水を噴射するノズル
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、一般に、圃場(ほじょうと読み、田、畑、農園等をいう)の復旧方法に関するものであり、より特定的には、連作障害を未然に防止することができるように改良された圃場の復旧方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビニールハウス内の同一の土壌で、たとえばトマトやメロン等の作物を毎年続けて栽培するいわゆる連作を行うと、その作物の生育や収穫が年々悪くなるという連作障害(たとえば根茎腐敗病)が発生する。
【0003】この連作障害の原因は、未だ完全には究明できていないが、近年の連作障害の多くは、化学肥料、農薬の残留濃度が高いことが主たる原因と思われる。この連作障害を解決する方法の1つの方法として、たとえば、去年トマトを栽培した土壌で、今年は異なる作物であるメロンを栽培するという、いわゆる輪作がある。
【0004】しかし、この従来の輪作を行った場合においても、先の作物栽培で使用した利用済みの薬剤・化学肥料等の有害残留物等の不要な成分が土壌に含まれる。また害虫や病菌も活動を続けているので、新たな作物を栽培するに必ずしも適切な土壌であるとは言えない。したがって、輪作も連作障害の絶対的な解決方法とはなっておらず、土の入れ替え等による土壌改良等を必要としている。土の入れ替えは非常に煩わしい作業を伴う。
【0005】また、露地、ハウス栽培での施設園芸において、土壌活力の復旧および雑草防除対策として、刺激臭の強いクロルピクリンおよび大気に影響を及ぼす有害ガスを用いる場合があるが、都市近郊地帯で住宅地が隣接している圃場では、これらの使用が困難である。また、これらは、大気汚染の原因となり、問題となっている。
【0006】このような問題点を解決するために、特開2000−69869号公報では、図2に示すような装置が提案されている。
【0007】図2を参照して、地面Gの上に、枠11を載置する。枠11の内面に透明のビニールシート12を敷いて槽10を形成する。槽10の底上面に沿って、複数の通水孔21を具備する配管20を配置する。配管20の一端を、給水設備30に連結している。配管20を、薫炭や砂利等の透水材層Pによって埋設するとともに、透水材層P上に土層Sを設けている。給水設備30より、水槽31内の水を槽10内に充満させ、その後、排水口22を地面Gに下げ、槽10内の水Wを抜き出す。これによって、畑作で使用された塩化カリウム等の肥料や殺虫剤等の成分を水Wとともに排出することができるので、土層Sの土壌は活性化され、新たな作物40を栽培するに適したものとなり、連作障害を未然に防止することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の連作障害の防止方法は以上のように構成されている。
【0009】しかしながら、図2のような方法によれば、大規模になった場合、その装置費用が膨大なものとなり、適切でない。また、水を土層Sに浸すだけでは、土粒子と土粒子の間に侵入している肥料成分を十分に除去できないという問題点がある。したがって、この方法は、圃場を復旧させるための根本的な対策となっていない。
【0010】この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、土壌中の化学肥料、農薬の残留濃度を減少させ、ひいては連作障害を未然に防止することができるように改良された、圃場の復旧方法を提供することを目的とする。
【0011】この発明の他の目的は、広大な面積を有する圃場の復旧方法を実現することができるように改良された圃場の復旧方法を提供することにある。
【0012】この発明のさらに他の目的は、ビニールハウスのような大気を遮断した圃場、雨水を遮断した圃場の復旧方法を提供することにある。
【0013】この発明のさらに他の目的は、経費が安く、しかも、確実に連作障害を防止することができるように改良された、圃場の復旧方法を提供することにある。
【0014】この発明のさらに他の目的は、クロルピクリンおよび有害ガスを用いる方法の代替、すなわち、クロルピクリンおよび有害ガスを使用することなく土壌活力を回復することができるように改良された圃場の復旧方法を提供することにある。
【0015】この発明のさらに他の目的は、雑草に対し高い防除効果を有する圃場の復旧方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】この発明に係る圃場の復旧方法においては、圃場の上で、作土と水とを混ぜ繰り返す(作土洗浄工程)。本明細書において作土とは、作物を栽培する時に掘り起される範囲の土をいい、圃場の表層を形成するものである。
【0017】この発明によれば、水と作土とを混ぜ繰り返すことにより、作土中に残留していた化学肥料、農薬等を水に溶け込ませる。作土洗浄後に圃場に溜まった水は、化学肥料、農薬等残留物が溶け込んでおり、水溶液になっている。放置すると、この水溶液は、自然排水により、既設の水路等を通って排出されるので、作土中の化学肥料、農薬の残留濃度が減少し、連作障害を未然に防止することができる。
【0018】この発明の好ましい実施態様によれば、上記圃場の、少なくとも表面から20cm〜30cmまでの所を上記水と混ぜ繰り返す。
【0019】この発明の好ましい実施態様によれば、上記作土洗浄工程は、上記作土に向けて水を噴射し、この水の噴射力により、水と作土を混ぜ繰り返すことによって行う。
【0020】この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記水の噴射量は、800リットル/m2以上の条件で行なう。
【0021】この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記放置により、上記水溶液がが自然排水により排出された後、洗浄後の上記作土を均一になるように混合する工程をさらに備える。
【0022】この発明のさらに好ましい実施態様によれば、既設の水路がない場合、上記作土を洗浄するに先立ち、上記圃場の周辺に、排水されるべき上記水溶液を逃がす排水路を形成する。
【0023】この発明のさらに好ましい実施態様によれば、上記作土洗浄工程は、少なくとも下記の部材(a)、(b)および(c)を備えた農業機械を用いて実行する。
【0024】(a) 上記圃場を走行する走行台車(b) 上記走行台車に搭載され、該走行台車を駆動させる駆動機構(c) 上記走行台車に搭載され、上記作土に向けて上記水を噴射するノズル【0025】
【実施例】以下、この発明の実施例を図について説明する。
【0026】実施例1図1は、実施例1に係る圃場の復旧方法の概念図である。
【0027】図1を参照して、圃場の上に、農業機械7が設置されている。農業機械7は、走行台車1を備える。走行台車1には、該走行台車1を駆動させる駆動機構2が搭載されている。駆動機構2は、走行台車1を自走させるものであってもよい。走行台車1には、圃場に向けて水を噴射するノズル3を先端に有する水噴射筒6が搭載されている。
【0028】ノズル3の口径は、たとえば、φ28mm〜φ30mmである。圧力計5によってノズル3から出る水の圧力が測定される。ノズル3から、作土に向けて水を噴射する。
【0029】水の噴射量は、800リットル/m2以上の条件で行なうのが好ましい。水の噴射量が800リットル/m2未満では、水溶液中の溶質の濃度が濃くなり過ぎて、作土中に残っていた化学肥料の残留分、農薬の残留分、殺虫剤の成分等を充分に該水溶液に溶かし込むことができず、ひいては、これらを充分に除去できない。
【0030】ポンプ吸い込み側のホースの口径がφ75mmで、ノズルとして口径φ28mm〜φ30mmのものを用いると、噴射される水の圧力を2Mpaにできる。圃場の状態により変わるが、噴射される水の圧力は、2Mpa以上が好ましい。
【0031】水源として、たとえば、地下水、農業用水が好ましく利用されるが、これに限られるものではない。水を供給し得るものであれば、いずれも使用できる。溜め水場を圃場内に設け、そこから給水してもよい。また、別途準備されたタンクから給水してもよい。
【0032】このように強い墳射力により水を噴射すると、水の噴射力により、土が攪拌され、土は微細に粉砕され、水と土が充分に混ぜ繰り返される。これにより、圃場の表層は、最上部から、水(水溶液)層4、有機質を含む土や粒度の細かい土(比重の小さい土)を含むヘドロ層と、砂と、石(比重の大きな土)の部分に分離される。このとき、作土中に残っていた化学肥料の残留分、農薬の残留分、殺虫剤の成分等が水に抽出され、水溶液が圃場の表面に溜まる。水溶液という表現を用いたのは、化学肥料の残留分、農薬の残留分等が溶けこんでいるからである。
【0033】作土の洗浄には、上記条件で、10アールの圃場の場合、7時間から34時間、要する。
【0034】農作物を植える作土は、一般的に、圃場の表面から20cm〜30cmまでの所であるので、洗浄すべき部分は、この20cm〜30cmまでの所で十分である。
【0035】ビニールハウス、田、畑等の圃場では、一般的に、土壌表面から20cm〜35cmぐらいのところに、耕盤層がある。この耕盤層は、土圧の関係で、固くなった層である。この耕盤層があるために、圃場内に噴射された水は、それ以上、土の中に浸み込まずに、圃場の上層部に水溶液4として溜まるのである。
【0036】この水溶液4は自然排水により、既設の水路等を通って、排出される。自然排水は放置することによって自動的に行われるので、労力を必要としない。さらには、この放置時に、連作障害の原因となる肥料成分や殺虫剤成分が時間をかけて充分に水に抽出され、取り除かれる。排水を急ぐ場合には、ポンプを利用して排水してもよい。
【0037】既設の水路がない場合には、作土を洗浄するに先立ち、圃場の周辺に、排水されるべき水溶液4を逃がす排水路を形成するのが好ましい。
【0038】この作土の洗浄を行うと、水溶液4の排水後、上述のように、圃場の表層では、比重の小さい土成分が上層に、比重の重い土成分が下層になり、作土が不均一になる。そのため、元の圃場に復旧させるために、必ず作土を混合し、均一にすることが重要である。なぜなら、作土を混合しないと、作土の粒子の分離が行われた状態では、通気性が非常に悪くなるからである。作土の混合は、耕うんで可能である。
【0039】この発明によれば、連作障害の原因となる、肥料成分や殺虫剤成分を、水とともに排出することができるので、土壌中の化学肥料、農薬の残留濃度が減少し、土壌活力が復旧する。また、雑草防除効果も得られる。
【0040】この発明は、特に、ビニールハウスのような大気を遮断した圃場、雨水を遮断した圃場の復旧に効果を発揮する。
【0041】なお、本実施例では、水を噴射させる手段として、ノズルを備えた農業機械を用いる場合を例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、土壌活力を回復すべき圃場の作土に向けて、水を噴射し、水の噴射力により水と作土を混ぜ繰り返すことができるものであれば、いずれも使用することができる。人手でノズルを持って、作土を洗浄してもよい。
【0042】実施例2上記実施例では、水の噴射力により、水と作土を混ぜ繰り返すことを例示したが、この発明はこれに限られるものでない。すなわち、圃場に水を給水し、その後、あるいはそれと同時に、水と作土とを、ミキサー等の機械により混ぜ繰り返し、作土を洗浄する。かかる方法によっても、実施例1と同様の効果が得られる。この場合、人手で混ぜ繰り返すことも可能だが、機械の方がより精密に混合でき、大きい効果が得られる。
【0043】実施例3上記実施例では、水として、地下水または農業用水を例示し、水温が室温である場合を例示した。しかし、本発明において、水として、熱水を利用することも可能である。圃場に、熱水(70℃〜95℃)を投入することで、地温を上げ、有害微生物の防除を行うことができる。また、この熱水が投入された作土を混ぜ繰り返すことで、連作障害の原因となる肥料成分や殺虫剤成分を熱水に溶かせ、これを自然排水により排出する。これにより、作土中の化学肥料、農薬の残留濃度を減少させ、土壌活力を復旧させることができる。
【0044】なお、圃場に熱水を投入すると、表面は容易に高温となるが、さめやすく、逆に深部は高温となりにくいが、いったん到達した温度は長く維持される。この土壌の持つ温度特性を利用し、高温による瞬間的殺菌と比較的低温(50℃〜60℃)による緩効的殺菌を組み合わせることにより、土壌消毒を効率的に行うことができる。
【0045】実施例4実施例3に関連して、他の実施態様として、熱水で、まず、作土を消毒する。次に、圃場に室温の水を給水する。その後、あるいはそれと同時に、水と作土とを混ぜ繰り返し、作土を洗浄する。かかる方法によっても、作土の消毒と作土中の化学肥料、農薬の残留濃度の減少を行わせることができる。この方法によると、熱水の量を少なくすることができ、熱水だけを用いる場合に比べて、処理コストを下げることができる。
【0046】実施例5この発明は、ビニールハウスのような大気を遮断した圃場、雨水を遮断した圃場の復旧に特に効果があるが、これに限られるものでなく、蓮根畑にも適用が可能である。蓮根畑では、水が満たされているが、作土と水とが混ぜ繰り返されていないので、土粒子間に侵入している化学肥料の残留分、農薬の残留分、殺虫剤の成分が充分に水に抽出されていない。
【0047】したがって、たとえ自然排水されたとしても、土粒子間に侵入している化学肥料の残留分、農薬の残留分、殺虫剤の成分の多くが作土中に残留しており、連作障害の原因となる。このような場合には、土粒子間に侵入している化学肥料の残留分、農薬の残留分、殺虫剤の成分を除くために、本発明を適用するのが好ましい。
【0048】また、田、畑、マルチ栽培を行なう畑、蓮根畑のみならず、化学肥料、農薬、殺虫剤等が残存するため、連作障害を含む種々の障害が生じている全ての土壌に、本発明を適用することができる。
【0049】実施例6上記実施例においては、圃場の前処理をせず、圃場の上で作土と水とを混ぜ繰り返す場合を例示したが、この発明はこれに限られない。すなわち、予め、洗浄すべき作土を耕うんしておいて、その後、作土と水とを混ぜ繰り返してもよい。予め作土を耕うんしておくと、土壌の粒子が小さくなり、作土と水とを混ぜ繰り返す際、化学肥料、農薬、殺虫剤等の残存成分と水との接触機会が多くなり、洗浄効率が高まる。
【0050】今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0051】
【発明の効果】以上説明したとおり、この発明によれば、畑作等で使用された肥料の残存成分や殺虫剤等の成分を水に溶かせ、水溶液として排出することができるので、作土中の化学肥料、農薬の残留濃度が減少し、土壌活力が回復するという効果を奏する。さらに、連作障害を未然に防止することができる。圃場の上で、作土と水を混ぜ繰り返すだけであるので、経費も多く要しない。
【0052】また、この発明によれば、土壌改良のために土の入れ替えを行なわずに、連作障害を未然に防止することができる。さらに、クロルピクリンおよび有害ガスを用いないので、大気を汚染することなく、土壌活力を回復させることができる。また、雑草防除対策を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】301009195
【氏名又は名称】田所 陽司
【出願日】 平成13年5月31日(2001.5.31)
【代理人】 【識別番号】100064746
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎 (外3名)
【公開番号】 特開2002−354906(P2002−354906A)
【公開日】 平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願番号】 特願2001−164115(P2001−164115)