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【発明の名称】 トラクタの油圧装置
【発明者】 【氏名】村上 徹司

【要約】 【課題】トラクタ(芝刈機)へ装着した作業機(モーア)の接地ローラとゲージ輪とは、地面へ接地させて、昇降ユニットの油圧バルブの制御弁を下げ位置への操作で芝刈取り作業を開始するが、作業機の重量が重いことにより、これら接地ローラとゲージ輪とは、土中へ沈み正確な刈取り高さで芝刈取り作業ができないことがあった。

【解決手段】前輪を操舵するパワーステリングユニット3と、作業機を昇降する昇降ユニット6と、走行動力を変速する油圧変速ユニット7とを一連の油圧回路で直列に連通させ、昇降ユニット6の油圧バルブ9を下げ状態の操作に基づいて、油圧変速ユニット7の油圧無段変速装置25のチャージ圧力を利用して油圧シリンダ8へ背圧を付加する構成である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ステアリングハンドル1の操作で前輪2を操舵するパワーステリングユニット3と、走行車体4に昇降自在に支持した作業機5の昇降ユニット6と、走行動力の変速を行う油圧変速ユニット7とを一連の油圧経路で直列に連通した構成の油圧回路にあって、昇降ユニット6の油圧バルブ9を下げ状態の操作に基づいて、油圧変速ユニット7の油圧無段変速装置25のチャージ圧力を利用して油圧シリンダ8へ背圧を付加すべく設けたことを特徴とするトラクタの油圧装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パワーステリングユニットと、昇降ユニットと、油圧変速ユニットとを一連の油圧経路で直列に連通した構成の油圧回路で、油圧シリンダに背圧を付加する技術であり、トラクタの油圧装置として利用できる。
【0002】
【従来の技術】トラクタ(例えば、芝刈機)の油圧装置は、ステアリングハンドルの操作角に基づいて、前輪を操舵するパワーステアリングユニットと、走行車体に昇降自在に支持した作業機(例えば、モーア)の昇降制御ユニットと、走行動力の変速を行う油圧変速ユニットとを一連の油圧経路で直列に連通した構成である。そして、モーアを昇降操作する油圧シリンダは、昇降ユニット6に設けた上げ回路と下げ回路と中立回路を介して連通した制御弁の切換えによって、作動油の供給、停止、排油を行って、上昇、停止、下降の各作動ができる構成としている。
【0003】そして、従来の前記油圧装置では、所定の刈取り高さにゲージ輪の上下位置の操作で設定すると、モーアの接地ローラと、このゲージ輪とは、地面へ接地して走行し、油圧装置の昇降ユニットの油圧バルブの制御弁を下げ位置へ操作して作業を開始すると、このモーアは設定した所定の刈取り高さにすべく油圧シリンダの作動により、モーアは下降制御されて、所定の刈取り高さで刈取りすべく、常に、これら接地ローラと、ゲージ輪とは、地面へ接地状態に制御されて、芝は刈取りされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】モーアの接地ローラとゲージ輪とは、地面へ接地させて、昇降ユニットの油圧バルブの制御弁を下げ位置への操作で芝刈取り作業を開始するが、モーアの重量が重いと、このモーアのこれら接地ローラとゲージ輪とは、土中へ沈み込むことがあり、このゲージ輪の接地位置から芝の刈取り高さが設定されていることにより、このために、土中へ沈み込んだ分は、芝は低刈りとなり、設定した所定の刈取り高さを得ることができなかったり沈み込んだ分の部材破損等が生じていた。この発明により、これらの問題点を解決しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】このために、この発明は、ステアリングハンドル1の操作で前輪2を操舵するパワーステリングユニット3と、走行車体4に昇降自在に支持した作業機5の昇降ユニット6と、走行動力の変速を行う油圧変速ユニット7とを一連の油圧経路で直列に連通した構成の油圧回路にあって、昇降ユニット6の油圧バルブ9を下げ状態の操作に基づいて、油圧変速ユニット7の油圧無段変速装置25のチャージ圧力を利用して油圧シリンダ8へ背圧を付加すべく設けたことを特徴とするトラクタの油圧装置としたものである。
【0006】
【発明の作用】トラクタ(芝刈機)の油圧装置は、ステアリングハンドル1の操作角に基づいて、前輪2を操舵するパワーステアリング3と、走行車体4に昇降自在に支持した作業機(モーア)5の昇降制御ユニット6と、走行動力の変速を行う油圧変速ユニット7とを一連の油圧経路で直列に連通した構成である。そして、作業機5を昇降操作する油圧シリンダ8は、昇降ユニット6の油圧バルブ9の上げ回路と下げ回路とを介して連通した制御弁の切換によって、作動油の供給、停止、排油を行って、上昇、停止、下降の各作動ができる。更に、油圧バルブ9の制御弁の下げ操作により、油圧変速ユニット7の油圧無段変速装置25のチャージ圧力を利用して、油圧シリンダ8に背圧が付加される。
【0007】芝刈り作業のときには、所定の刈取り高さにゲージ輪の上下位置を操作すると、作業機5の接地ローラとこのゲージ輪とは地面へ接地して走行可能となり、油圧装置の昇降ユニット6の油圧バルブ9の制御弁を下げ位置へ操作して作業を開始すると、この作業機5は設定した所定の刈取り高さにすべく油圧シリンダ8の作動により、作業機5は下降制御されて、所定の刈取り高さで芝は刈取るべく、常に、これら接地ローラとゲージ輪とは、地面へ接地状態に制御されようとすると共に、油圧変速ユニット7の油圧無段変速25のチャージ圧力がさらに油圧シリンダ8へ背圧として作用し、この作業機5は浮上ぎみに接地荷重が軽減されながら芝は刈取りされる。
【0008】
【発明の効果】油圧変速ユニット7の油圧無段変速装置25のチャージ圧力は、油圧シリンダ8へ背圧として掛かることとなり、作業機5の接地荷重が軽減され、この作業機5の接地ローラと、ゲージ輪とは、土中へ沈み込むことを防止することができ、これにより、設定した所定の刈取り高さを維持して、芝を刈取りすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。トラクタ15は、例えば実施例では、芝刈機15で説明する。この芝刈機15の走行車体4の下部へ装置する作業機5は、例えば、実施例では、モーア5を装着して説明する。この芝刈機15の油圧装置は、車体フレーム16の前部に設けたステアリングハンドル1の操作で前輪2を操舵するパワーステリングユニット3と、走行車体4に昇降自在に支持したモーア5を昇降させる昇降ユニット6と、走行動力の変速を行う油圧変速ユニット7との一連の油圧経路で直列に連通した構成の油圧回路であり、この油圧回路で形成される油圧装置を主として図示して説明する。
【0010】前記芝刈機5は、図で示す如く車体フレーム16の前部には、ステアリングハンドル1からパワーステリングユニット3を介して操舵される前輪2を軸支し、後部には、駆動輪となる後輪17を設けた構成である。エンジン18は車体フレーム16の前側にあるボンネットカバー19によって覆われたエンジンルームに内装して載置した構成であり、回転動力を走行ミッションケース20と、後逑する油圧ポンプ21とモーア5とに伝達する構成である。34は油タンクである。
【0011】前記モーア5は、刈刃ハウジング22の内部には、縦軸で回転する刈刃を設け、車体フレーム16の中央下部左右に、それぞれ主リンク23aと、前部リンク23bとにより、吊り下げ状態に支持している。このモーア5は上端部を油圧シリンダ8に接続したクランクアーム23cの突出下端部を、リフトリンク23dを介してモーア5と一体の支枠40の略中間部へ装着して設け、この油圧シリンダ8の伸縮作動により、このモーア5は昇降自在な構成である。
【0012】前記モーア5は図3で示す如く前側から延長した入力軸22aを設け、更に前部下面に接地ローラ24aと、後部にゲージ輪24bとを設けた構成である。前記油圧装置の油圧回路上の各ユニット3、6、7の配置図は、図1で示す如くエンジン18によって駆動される油圧ポンプ21を基点にして、ステアリングハンドル1に接続したパワーステアリングユニット3を設け、油圧シリンダ8に接続している昇降ユニット6を配設しており、更に油圧無段変速装置25を構成する油圧変速ユニット7を配設した構成である。
【0013】図1で示す油圧回路について説明する。この油圧回路は油圧ポンプ21に近い側からポートオービットロールを使用したパワーステアリングユニット3と高圧油路50で接続し、所定流量以上の圧油が流れていれば分流弁51を介して分流油路52で油圧バルブ9と接続し、所定流量以下の圧油の場合、パワーステアリングユニット3を経た圧油をポンプ油路53として油圧バルブ9に接続供給している。又、油圧バルブ9から出る油路は、後述するアンロード回路31やタンク回路30の外に、昇降用の油圧シリンダ8と接続する昇降油路54を設けている。
【0014】そしてアンロード回路31は、走行動力の変速を行う油圧変速ユニット7へと一連の油圧経路で直列に連通した構成としている。パワーステアリングユニット3は、ステアリングハンドル1の操作角によって作動する弁26の切換えによって、2室シリンダ41を介して前輪2を左右に操舵する構成である。
【0015】前記モーア5の昇降制御ユニット6は、油圧バルブ9の制御弁9aをU位置とした上げ回路10と、D位置とした下げ回路11とによって、油圧シリンダ8へ連通し、このモーア5を昇降自在な構成である。前記油圧変速ユニット7は、可変式油圧ポンプ27と、油圧モータ28とからなる油圧無段変速装置25を構成し、走行動力を変速する構成である。
【0016】図1で示す油圧回路の主として、モーア5の昇降ユニット6についてさらに説明する。この昇降ユニット6は、油圧ポンプ21に連通して作動油を供給するポンプ回路29と、作動油を排出するタンク回路30と、油圧シリンダ8に対して作動油を供給する上げ回路10と、排出する下げ回路11と、更に油圧変速ユニット7のチャージ油路に送るアンロード回路31とを連通した構成としている。
【0017】前記油圧バルブ9の制御弁9aは油圧レバー42の操作に基づいて、左右にスライドする切換弁であって、中立位置(N)を中央に配設し、その一方側に下げ位置(D)を設け、他方側に上げ位置(U)をそれぞれ設けている。したがって、制御弁9aは上げ位置(U)へ切換えると、アンロード回路31は閉され、絞り43を介してポンプ回路29の圧油がチェック弁12を開けて上げ回路10と連通する。下げ位置(D)へ切換えると、ポンプ回路29の圧油はアンロード回路31と排油路44へ直接流入し、パイロット回路32によりパイロットチェック弁13を開き、絞り45を経て油圧シリンダ8内に作用し、これによりモーア5を浮き上がり方向に作用させる。更に、パイロットチェック弁13は該パイロット回路32に圧が立っていない時外部から人為的に押し操作ができる押圧ピン14によって、開き作動ができるように接続した構成としている。
【0018】前記油圧シリンダ8は油圧バルブ9の制御弁9aの切換操作に連動して、上げ回路10と下げ回路11とによって、作動油が供給、又は、排出されてモーア5は昇降する。そして、この下げ回路11のパイロットチェック弁13は、前述のようにこの制御弁9a側からパイロット回路32に供給される油のパイロット圧が発生したときに開き、作動油をアンロード回路31側に排出して、モーア5を浮上り勝手にしながら下げ操作になる下降に抵抗を与えている構成としている。
【0019】前記モーア5で芝刈取り作業を行うときは、芝の刈取り高さにより、ゲージ輪24bを所定の高さ位置へ調節操作し、昇降ユニット6の油圧バルブ9の制御弁9aを下げ位置(D)へ切換操作して、下げ回路11とアンロード回路31とを連通状態にして、芝刈取り作業を開始すると、刈刃ハウジング22に設けた接地ローラ24aとゲージ輪24bとは、地面へ接地して走行し、このモーア5は設定した所定の刈取り高さにすべく、油圧シリンダ8は浮上り勝手に作動して、このモーア5は下降制御され、所定の刈取り高さで芝を刈取りすべく、常にこれら接地ローラ24aと、ゲージ輪24bとは、地面へ接地状態で浮上りぎみに制御されて刈取りされ土中への沈み込みを防止している。
【0020】又このときは、前記油圧シリンダ8のポートは油圧変速ユニット7の油圧無段変速装置25のアンロード回路31と連通し、この油圧無段変速装置25のリリーフ弁33のチャージ圧力の、例えば、5kg/cmを利用して、油圧シリンダ8へ背圧とし付加されて、この圧力シリンダ8でモーア5を持上げるようとする力が発生し、このモーア5の接地荷重は軽減される構成であり、このモーア5の刈取ハウジング22に設けた接地ローラ24a、及びゲージ輪24bの沈み込みを防止した構成である。
【0021】前記のチャージ圧力の、例えば5kg/cmは、モーア5を完全に持ち上げて、浮上させる圧力ではなく、あくまでも、このモーア5は地面に追従して走行できる構成である。これにより、前記モーア5の重量は大重量であるが、チャージ圧力は油圧シリンダ8へ背圧として掛かることにより、このモーア5の接地荷重が軽減され、接地ローラ24aとゲージ輪24bとは、土中へ沈み込むことを防止でき、これにより、設定した所定の刈取り高さを維持して、芝を刈取ることができる。
【0022】図2で示すものは、パイロットチェック弁13の詳細別図例であり以下説明する。モーア5を下げ操作時にパイロットチェックスイッチ35を押し開き操作するパイロットピストン36を設け、このパイロットピストン36はパイロットチェックスイッチ35のポペット37より、径方向の断面積を大きくした構成である。これにより、押圧ピン14を押す時、低圧にて、パイロットチェックスイッチ35を押し開くことを可能とした構成である。38は押圧抵抗用のスプリングである。
【0023】図2の制御弁9a中立状態Nでは、油圧ポンプ21よりの圧油は、制御弁9aN位置を介して油圧無段変速装置25のアンロード回路31へ供給される。又、制御弁9aが下げ状態D時では、スプールである制御弁9aが右へ移動し、油圧ポンプ21からの圧油は、油圧無段変速装置25のアンロード回路31へ供給されながら、矢印(ハ)で示すように排油路44を経てパイロットチェック弁13内のパイロットチェックスイッチ35の背部と、パイロットピストン36へ連通し断面積の差によりポペット37を矢印(ニ)方向に押圧移動して、パイロットチェック弁13を開放状態とする。
【0024】前記パイロットピストン36が作動し、ポペット37を押し開き、油圧無段変速装置25のアンロード回路31が矢印ホから絞り45を経て上げ回路10と連通し、油圧シリンダ8へチャージ圧の、例えば、5kg/cmの背圧が付加される構成としている。
【0025】これにより、従来のパイロットピストン36がない構成では、パイロットチェックスイッチ35の背部46に直接圧をかけるのに径方向寸法差が小さくてポペット37を押し開くのに高圧力が必要となり、馬力ロス、及び油温の上昇を招くことがあったが、この別図例構成により、大径のパイロットピストン36を構成したことにより、ポペット37との断面積の差を設けることで、低圧、又は同圧であっても、このポペット37を開き、油圧シリンダ8に背圧を掛けることが径方向寸法差を大きくしたので可能になった。
【0026】図1、及び図2(N状態)で示す構成において、前記油圧バルブ9の制御弁9aは中立位置(N)の時は、パイロットチェックスイッチ35とパイロットピストン36部とは、矢印へで示すように直接油タンク34ポートへ連通させた構成としている。
【0027】これにより、従来はエンジン18を停止して、モーア5の着脱を行うときは、パイロットピストン36の背部に背圧が残って押圧ピン14を押し戻していると、押圧ピン14を押す手動操作をすることができなかったが、中立時に本発明により、パイロットピストン36の背部を油タンク34ポートと連通することにより、手動操作時に油圧シリンダ8を自由に動かすことができて、モーア5の脱着が容易にできる。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成13年2月16日(2001.2.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−238309(P2002−238309A)
【公開日】 平成14年8月27日(2002.8.27)
【出願番号】 特願2001−40211(P2001−40211)