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【発明の名称】 リチウムイオン電池タブおよびタブ材の化成処理方法
【発明者】 【氏名】山下 力也

【氏名】奥下 正隆

【氏名】山田 一樹

【氏名】宮間 洋

【要約】 【課題】リチウムイオン電池のタブが、外装体または接着性フィルムと接着している部位において、電解質と水分により発生するフッ化水素酸により腐食されることのないタブおよび耐腐食性を有するタブの表面層の形成方法を提供する。

【解決手段】リチウムイオン電池用包装材料にリチウムイオン電池本体を収納し、タブを挟持する部分を含め周縁部をヒートシールにより密封してなるリチウムイオン電池のタブ材であって、前記リチウムイオン電池の周縁部のヒートシールにおいて、少なくとも、ヒートシールされる部分の表裏面および側面に化成処理が施されているリチウムイオン電池タブであって、前記化成処理がリン酸クロメート処理であることを含み、また、リチウムイオン電池のタブ材となる金属シートを最終使用巾にスリッターしてタブ材とした後、その表裏面および側面を脱脂した後、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物からなる溶液を前記タブ材表面に塗布し、乾燥加熱して化成処理層を形成することを特徴とするリチウムイオン電池タブの化成処理方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】リチウムイオン電池用包装材料にリチウムイオン電池本体を収納し、タブを挟持する部分を含め周縁部をヒートシールにより密封してなるリチウムイオン電池のタブであって、前記リチウムイオン電池の周縁部のヒートシールにおいて、少なくとも、ヒートシールされる部分の表裏面および側面に化成処理が施されていることを特徴とするリチウムイオン電池タブ。
【請求項2】前記化成処理がリン酸クロメート処理であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池タブ。
【請求項3】リチウムイオン電池のタブ材となる金属シートを最終使用巾にスリッターしてタブ材とした後、その表裏面および側面を脱脂した後、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物からなる溶液を前記タブ材表面に塗布し、乾燥加熱して化成処理層を形成することを特徴とするリチウムイオン電池タブの化成処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、包装材料との安定した密封性を示すリチウムイオン電池のタブ材に関する。
【0002】
【従来の技術】リチウムイオン電池とは、リチウム2次電池ともいわれ、液状、ゲル状および高分子ポリマー状の電解質を持ち、リチウムイオンの移動で電流を発生する電池であって、正極・負極活物質が高分子ポリマーからなるものを含むものである。前記リチウム2次電池の構成は、正極集電材(アルミニウム、ニッケル)/正極活性物質層(金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子正極材料)/電解質層(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、エチレンメチルカーボネート等のカーボネート系電解液、リチウム塩からなる無機固体電解質、ゲル電解質等)/負極活性物質層(リチウム金属、合金、カーボン、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子負極材料)/負極集電材(銅、ニッケル、ステンレス)及び、これらを包装する外装体からなる。リチウムイオン電池の用途としては、パソコン、携帯端末装置(携帯電話、PDA等)ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等に用いられる。前記リチウムイオン電池の外装体としては、金属をプレス加工し円筒状または直方体状等に容器化した金属製缶、あるいは、最外層アルミニウムシーラント層から構成される多層フィルムを袋状にしたものが用いられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、リチウムイオン電池の外装体として次のような問題があった。金属製缶においては、容器外壁がリジッドであるため、電池自体の形状が決められてしまう。そのため、ハード側を電池に合わせ設計するため、該電池を用いるハードの寸法が電池により決定されてしまい形状の自由度がなくなる。そこで、積層体を袋状にして、リチウムイオン電池本体を収納するパウチタイプ、または、前記積層体をプレスしてエンボスタイプとした外装体は、前記金属缶のように、電池自体により、電池を用いるハードの形状設計における自由度の制限は無くなるが、リチウムイオン電池の外装体として要求される物性・機能を、十分に満足しうる包装材料は未だ開発されていないのが現状である。前記要求される物性・機能とは、高度な防湿性あるいは表面絶縁性等であり、特に、防湿性は特に重要である。リチウムイオン電池用包装材料としては、少なくとも、基材層、バリア層、ヒートシール層からなる積層体であり、前記各層の材質と各層の層間の接着強度がリチウムイオン電池の外装体としての必要な性質に影響を与えることが確認されている。例えば、バリア層とヒートシール層との接着強度が不十分であると、外部から水分の浸入の原因となり、リチウムイオン電池を形成する成分の中の電解質と前記水分との反応により生成するフッ化水素酸により前記バリア層であるアルミニウム面が腐食して、バリア層とヒートシール層との間にデラミネーションが発生するという問題があり、この課題に対して種々の提案がなされている。リチウムイオン電池本体を外装体により密封する際、リチウムイオン電池本体のタブ部を含む部分も確実に密封される必要がある。しかし、従来、リチウムイオン電池用包装材料としてアルミニウム、SUS、ニッケル等の金属からなるタブに熱熱融着性を有するヒートシール層の選定、または、ヒートシール層が金属に対して熱融着性を有しない場合には、タブのシール予定部に接着性フィルムを介在させてヒートシールすること等はなされていたが、タブ部表面の腐食による剥離防止の対策はされていなかった。そのため、長期にわたって、タブ部の表面が徐々に腐食して、タブ部において、該タブ部に接着するヒートシール層または接着性フィルム層が剥離して密封系が破壊されることがあった。本発明の目的は、リチウムイオン電池のタブが、外装体または接着性フィルムと接着している部位において、電解質と水分により発生するフッ化水素酸により腐食されることのないタブおよび耐腐食性を有するタブの表面層の形成方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、リチウムイオン電池用包装材料にリチウムイオン電池本体を収納し、タブを挟持する部分を含め周縁部をヒートシールにより密封してなるリチウムイオン電池のタブ材であって、前記リチウムイオン電池の周縁部のヒートシールにおいて、少なくとも、ヒートシールされる部分の表裏面および側面に化成処理が施されているリチウムイオン電池タブであって、前記化成処理がリン酸クロメート処理であることを含み、また、リチウムイオン電池のタブ材となる金属シートを最終使用巾にスリッターしてタブ材とした後、その表裏面および側面を脱脂した後、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物からなる溶液を前記タブ材表面に塗布し、乾燥加熱して化成処理層を形成することを特徴とするリチウムイオン電池タブの化成処理方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】図1は、本発明のリチウムイオン電池タブおよびタブ材の化成処理方法による実施例を示す、(a)リチウムイオン電池本体の斜視図、(b)X1−X1部断面図、(c)Y1部の拡大図(d)リチウムイオン電池の斜視図、(e)X2−X2部断面図、(f)Y2部の拡大図である。図2は、リチウムイオン電池用包装材料とタブとの接着における接着性フィルムの装着方法を説明する斜視図である。図3は、リチウムイオン電池のパウチタイプの外装体を説明する斜視図である。図4は、リチウムイオン電池のエンボスタイプの外装体を説明する斜視図である。図5は、本発明のリチウムイオン電池用包装材料における積層体の実施例の構成を説明する断面図である。
【0006】リチウムイオン電池は、リチウムイオン電池本体を包装する外装体のタイプにより、図2に示すようなパウチタイプ、また、図3に示すようなエンボスタイプとがある。本発明はいずれのタイプにも適用し得るものである。外装体5に収納されたリチウムイオン電池本体2はその周縁を密封することにより、防湿性が付与される。金属であるタブ部は、リチウムイオン電池用包装材料の最内層を金属接着性フィルムとする。前記最内層が金属に対してヒートシール性を持たない材質を用いてもよいが、その場合には、金属接着性と前記リチウムイオン電池用包装材料の最内層との双方にヒートシール性を有する接着性フィルムを介し、ヒートシールされ溶着する。タブ部は金属であるため、内容物である電解液中に発生するフッ化水素(HF)で表面腐食が起こり、タブと該タブに積層されている樹脂層との間で、デラミが起こり電解液が外部に漏れてしまうことがあった。タブとしては、厚さが50〜200μm、 巾 が5〜10μm程度であって、その材質としては、 AL、Ni、Cu、SUS等である。前記、タブの材質のうち、ニッケルおよびSUSは、フッ化水素酸により腐食される危険性が少なく、アルミニウムが最も腐食されやすいという問題があった。さらに、本発明者らは、タブ部に化成処理層を設けることにより、リチウムイオン電池の電解質と水分との反応で生成するフッ化水素(化学式:HF)に起因するタブ表面の溶解、腐食を防止し、かつタブとリチウムイオン電池用包装材料の最内層または接着性フィルムとの接着性(濡れ性)を向上させ、タブ部における接着力の安定化を図る課題に対して顕著な効果のあることをみいだした。
【0007】前記化成処理層は、図1(a)または図1(b)に示すように、タブ材4Mの表面の少なくとも、外装体によりヒートシールされる部位に耐フッ化水素層4Sを形成するもので、該化成処理層4Sは、前記リチウムイオン電池用包装材料の最内層または接着性フィルムと確実にヒートシールすることができる。。耐フッ化水素層の形成は、リン酸クロム、クロム酸等で化成処理(以下、リン酸クロメート処理と記載する)を行なうことにより、図1(c)または図1(d)に示すようにリチウムイオン電池用包装材料の最内層14またはタブ4に対する接着シート6とタブと4の間での接着が向上することを見出し、本発明を完成するに到った。化成処理について、さらに具体的に説明する。例えば、アルミニウム等のタブ用の金属シートを最終使用巾にスリッターし、所定巾のタブ材の表裏面側面を脱脂処理する。脱脂処理は、酸またはアルカリ液をコーティングまたは、酸またはアルカリ液中に耐酸性皮膜部材を浸漬することにより行うことができる。酸、アルカリ液を乾燥した後、クロム酸塩の液を用い金属表面を化成処理する。化成処理の方法は、前記、クロム酸塩液にタブ材を浸漬する方法、タブ材にクロム酸塩液を吹き付ける方法、ロールコート法を用いて、タブ材にクロム酸塩液をコートする等の方法により、タブ材にクロム酸塩液を塗布乾燥して、タブ材の表裏面および側面を化成処理する。
【0008】タブ材は、金属シートを形成する際にその表面に油性成分が付着することがあり、また、タブ材として、広い巾のシートからスリッターによって、一般に所定の巾に断裁する際に、切断刃の保護のためにオイルを用いる。前記脱脂は、これらの油性成分やオイルを除去するために行なわれるものである。脱脂に用いる酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、リン酸、スルファミン酸などの無機酸、クエン酸、グルコン酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、ヒドロオキシ酢酸、EDTA(エチレン・ジアミン・テトラ・アセティック・アッシド)およびその誘導体、チオグリコール酸アンモニウム等が挙げられる。また、アルカリ性物質としては、カセイソーダ(NaOH)、ソーダ灰(Na2CO3)、重曹(NaHCO3)、ボウ硝(Na2SO4・10H2O)、セスキ炭酸ソーダ(Na2CO3・NaHCO3・2H2O)などのソーダ塩類、オルソケイ曹(2Na2O・SI2、水分10〜40%)、メタケイ曹(2NA2O・SI2・9H2O)、一号ケイ曹(Na2O・2SI2、水分42〜44%)、二号ケイ曹(Na2O・3SI2、水分65%)等のケイ酸塩、第一リン酸ソーダ(NaH2PO4)、ピロリン酸ソーダ(Na427)、第二リン酸ソーダ(Na2HPO4)、ヘキサメタリン酸ソーダ{(NaPO36}、第三リン酸ソーダ(Na3PO4)、トリポリリン酸ソーダ(Na5310)等のリン酸塩類が挙げられる。
【0009】本発明のリチウムイオン電池タブ材の化成処理方法について説明する。リン酸クロメート処理は、タブに用いる金属シートの巻き取りを所定の巾に、スリッターした後、脱脂処理をする。その後、化成処理を行う。化成処理の方法は、少なくともタブ部における密着部を処理できればよいが、浸漬法、シャワー法、ロールコート法等を用いてタブ材の全周を処理することが望ましい。
【0010】リン酸クロメート処理は、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液を用いる。タブに、前記水溶液を塗布後、乾燥し、さらに、皮膜温度が180℃以上となる温度条件において焼付ける。クロムの塗布量は8〜10mg/m2(乾燥重量)程度が適当である。
【0011】本発明者らは、リチウムイオン電池の電解質と水分との反応により生成する、フッ化水素酸(化学式:HF)により、リチウムイオン電池用包装材料のバリア層であるアルミニウム表面の溶解、腐食、特に、表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつアルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、積層体形成時のアルミニウムと最内層の接着力の安定化を図る課題に対して、アルミニウム表面に耐酸性皮膜の形成をすることが極めて効果的であることを見出し、密封性を安定させる方法として提案してきたが、タブ部においても耐フッ化水素酸皮膜として優れた性質を発現することを見出した。
【0012】脱脂処理後のタブ材への化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液を浸漬法、シャワー法、ロールコート法等を用いてタブ材の全周に塗布乾燥し、さらに熱風、遠近赤外線の照射等により皮膜を硬化させる。望ましい皮膜の塗布量は、乾燥重量として、10mg/m2程度が望ましい。
【0013】本発明のリチウムイオン電池タブおよびタブ材の化成処理方法において用いられる外装体の材質について説明する。前記外装体は、図4(a)に示すように、少なくとも、基材層11、バリア層12、ヒートシール層14からなり、これらの各層間を、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法、熱ラミネート法等の方法でラミネートして積層する。また、図4(b)に示すように、バリア層12とヒートシール層14との間に中間層13を設けてもよい。
【0014】最外層は、延伸ポリエステル又はナイロンフィルムからなるが、この時、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。またナイロン樹脂としては、ポリアミド系樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,6とナイロン6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
【0015】前記最外層は、リチウムイオン電池として用いられる場合、ハードと直接接触する部位であるため、基本的に絶縁性を有する樹脂層がよい。フィルム単体でのピンホールの存在、および加工時のピンホールの発生等を考慮すると、最外層は6μm以上の厚さが必要であり、好ましい厚さとしては12〜25μmである。
【0016】前記最外層は耐ピンホール性および電池の外装体とした時の絶縁性を向上させるために、積層化することも可能である。最外層を積層体化する場合、最外層が2層以上の樹脂層を少なくとも一つを含み、各層の厚みが6μm以上、好ましくは、12〜25μmである。最外層を積層化する例としては、図示はしないが次の1)〜7)が挙げられる。
1)延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン2)延伸ナイロン/延伸延伸ポリエチレンテレフタレートまた、包装材料の機械適性(包装機械、加工機械の中での搬送の安定性)、表面保護性(耐熱性、耐電解質性)、2次加工とてリチウムイオン電池用の外装体をエンボスタイプとする際に、エンボス時の金型と最外層との摩擦抵抗を小さくする目的で、最外層を多層化、最外層表面にフッ素系樹脂層、アクリル系樹脂層、シリコーン系樹脂層等を設けることが好ましい。例えば、3)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(フッ素系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
4)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(シリコーン系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
5)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン6)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン7)アクリル系樹脂/延伸ナイロン(アクリル系樹脂はフィルム状、または液状コーティング後乾燥で硬化)
【0017】リチウムイオン電池用包装材料の積層体を形成する際の積層方法は、ドライラミネート法、熱ラミネート法、押出ラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出ラミネート法等を利用することができる。
【0018】リチウムイオン電池用包装材料におけるバリア層12は、外装体を通して外部からリチウムイオン電池の内部に特に水蒸気が進入することを防止するための層で、バリア層単体のピンホール、及び加工適性(パウチ化、エンボス成形)を安定化し、かつ耐ピンホール性をもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、または、無機化合物、例えば酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルム等も挙げられるが、バリア層としては、好ましくは15μm〜80μmのアルミニウムである。ピンホールの発生を減らすようにさらに改善し、リチウムイオン電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする際、エンボス部におけるクラック等の発生のないものとするために、本発明者らは、バリア層として用いるアルミニウムの材質が、鉄含有量が0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%とすることによって、鉄を含有していないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、積層体として折り曲げによるピンホールの発生が少なくなり、かつ前記エンボスタイプの外装体をエンボスする時に側壁の形成も容易にできることを見出した。前記鉄含有量が0.3重量%未満の場合は、ピンホールの発生の防止、エンボス成形性の改善等の効果が認められず、また、前記アルミニウムの鉄含有量が9.0重量%を超える場合はアルミニウムとしての柔軟性が阻害され積層体として製袋性が悪くなる。
【0019】また、冷間圧延で製造されるアルミニウムは焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化するが、本実施例で用いられるアルミニウムは焼きなましをしていない硬質処理品より、焼きなましを適宜行った、柔軟性がある軟質処理品が好ましい。また、柔軟性・腰の強さ・硬さの度合い、すなわち焼きなましの条件は、加工適性(パウチ化、エンボス適性)に合わせ適宜選定すればよい。たとえば、エンボス成形時のピンホールやしわを防止するためには、焼きなましをしていない硬質アルミニウムより多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウムが良好である。
【0020】さらに、本発明者らは、リチウムイオン電池の電解質と水分とによる反応で生成する、フッ化水素(化学式:HF)により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特に表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつアルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、積層体形成時のアルミニウムと最内層との接着力の安定化を図る課題に対して、アルミニウム表面に耐酸性皮膜の形成、接着性向上処理に顕著な効果のあることをみいだし提案してきた。
【0021】本発明におけるタブの化成処理における、リチウムイオン電池用包装材料の最内層は、最内層同士がヒートシール性を有するとともに、タブを形成している金属に対してもヒートシール性を示し、かつ、内容物により変質、劣化しない材質を検討した結果、厚さ10μm以上、好ましくは20〜100μmであって融点80℃以上、ビカット軟化点が70℃以上の不飽和カルボングラフトポリエチレン、不飽和カルボン酸グラフトポリプロピレン、不飽和カルボングラフトポリメチルペンテンなどの不飽和カルボングラフトポリオレフィン系樹脂、金属イオン架橋ポリエチレン、またはエチレンまたはプロピレンとアクリル酸、またはメタクリル酸との共重合物、およびこれらの変性物の少なくとも一つを含むものが良好な結果を示した。
【0022】最内層には、金属接着性を持たないポリオレフィン等を用いることもできるが、この場合には、電極と前記最内層との間に前記不飽和カルボングラフトポリオレフィン、金属架橋ポリエチレン、エチレンまたはプロピレンとアクリル酸、またはメタクリル酸との共重合物から形成される熱接着性タブ材(厚さ15μm以上)を用いることによって、タブと包装材料とが完全に接着され、密封することができる。タブ4と前記最内層14との間に接着性フィルム6を介在させることにより、密封性を確保することができる。タブ部への接着性フィルムのセット方法は、図5(a)、図5(b)、図5(c)に示すように、タブ4とヒートシール層14との間に、金属とヒートシール層との双方に対してシール性を有する接着性フィルム6を介在させてもよいし、また、図5(d)、図5(e)、図5(f)に示すように、タブ4の所定の位置に巻き付けても良い。前記接着性フィルム6としては、不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィン、金属架橋ポリエチレン、エチレンまたはプロピレンとアクリル酸、またはメタクリル酸との共重合体からなるフィルム等を用いることができる。なお、本発明の積層体における最内層14は、前記の樹脂からなる単層でもよいし、また、前記樹脂を含む2層以上の複層としてよい。
【0023】前記不飽和カルボングラフトポリオレフィン系樹脂は、電極との接着性、耐熱性、耐寒性、加工適性(パウチ化、エンボス成形性)のいずれにも適している。最内層の厚さが20μm未満では、電極をヒートシールした時、その端部部分に隙間ができバリア性がなくなる。また、最内層の厚さが100μmを超えても、ヒートシール強度は変わらず、積層体としての厚さが増して、本発明の課題である省スペースに逆行する。また、融点、ビカット軟化点が低い場合、耐熱性、耐寒性がなくなりフィルム同士および電極との接着強度が低下し破袋する。また、前記各種の不飽和カルボングラフトポリマーは、それぞれ単体で用いてもよいが、2種以上の樹脂をブレンドすることでもその性質は満足される。
【0024】本発明の積層体の前記各層には、適宜、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性を向上、安定化する目的のために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理をしてもよい。
【0025】本発明の積層体の最外層、バリア層、中間層、最内層の各層を形成する、または、各層間の積層方法等は、具体的にはTダイ法、インフレーション法、共押出し法等を用いて製膜することができる。必要に応じて、コーティング、蒸着、紫外線硬化、電子線硬化等の方法によって2次膜を形成してもよい。また、貼り合わせの方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出ラミネート法、熱ラミネート法等の方法を用いることができる。
【0026】前記、ドライラミネート法により貼り合わせを行う際には、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリエーテル系、シアノアクリレート系、ウレタン系、有機チタン系、ポリエーテルウレタン系、エポキシ系、ポリエステルウレタン系、イミド系、イソシアネート系、ポリオレフィン系、シリコーン系の各種接着剤を用いることができる。また、これらの接着層には適宜、酸化珪素、炭酸カルシウム、亜鉛、鉛丹、亜酸化鉛、酸化鉛、シアナミド鉛、ジンククロメート、クロム酸バリウムカリウム、クロム酸バリウム亜鉛の少なくとも一つを含有することを特徴とした添加剤を添加することも耐薬品性、耐有機溶剤性をさらに向上させる。特に、酸化珪素、炭酸カルシウム、亜鉛、鉛丹、亜酸化鉛、酸化亜鉛、シアナミド鉛、ジンククロメート、クロム酸バリウムカリウム、クロム酸バリウム亜鉛などは電解液と水分との反応で発生するフッ化水素を吸収・吸着する効果があり、各層、特にバリア層(アルミニウム)に対するフッ化水素の腐食を防止する効果がある。
【0027】また、前記押出ラミネート法を用いる場合、接着する各層間の接着力を安定化する接着促進化方法として、ポリエステル系、ポリエーテ系、ウレタン系、ポリエーテルウレタン系、ポリエステルウレタン系、イソシアネート系、ポリオレフィン系、ポリエチレンイミン系、シアノアリレート系、有機チタン化合物系、エポキシ系、イミド系、シリコーン系、およびこれらの変性物、または、混合物等の樹脂を1μm程度塗布したり、オゾン処理による表面活性化処理を行うことができる。また、前記押出ラミネート法あるいはサーマルラミネート法により貼り合わせる際の樹脂として不飽和カルボン酸グラフトポリオレフィンを用いることによって、接着性とともに耐内容物性も向上する。
【0028】
【実施例】本発明のリチウムイオン電池タブおよびタブ材の化成処理方法について、実施例により説明する。以下の実施例、比較例ともに共通条件は以下の通りである。
(1)タブは、陽極をニッケル、陰極をアルミニウムとし、いずれも、巾8mm、長さ50mm、厚さ100μmである。
(2)パウチタイプは、ピロータイプとし、パウチサイズは外寸で、巾60mm、長さ80mmとした(シール巾はいずれも5mm)。
(3)エンボスタイプは、片面エンボスタイプとし、凹部は35mm×50mm凹部の深さは3.5mm、フランジ部(シール部)の巾は5mmとした。
(4)実施例におけるタブの脱脂処理および化成処理は、リチウムイオン電池本体に装着するサイズに断裁したものに対して処理した。実際の製造においては、前述のように、タブ材の金属シートをスリッターした長尺状態で処理することができる。
[実施例1](パウチタイプ)
1.タブ材を0.1規定の硫酸液に10秒間浸漬してから水洗いして乾燥し、フエノール樹脂、フッ化水クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液中に5秒間浸漬して引上げ、熱風により、水分を除去した後、遠赤外線ヒーターにより、皮膜温度が190℃に到達するまで加熱して、リチウムイオン電池のセル端部に接合して、本体実施例1とした。
2.外装体を形成する積層体は、次のようにして作成した。アルミニウム20μmの片面に化成処理を施し、化成処理していない面に延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理したアルミニウムの面、化成処理層に、酸変性ポリプロピレンフィルム50μmをドライラミネートにより貼り合わせて得られた積層体を用いてパウチ化して、外装体1を得た。
3.外装体1の中に、本体実施例1を収納して、本体実施例の未シール部をタブと共にヒートシールして検体実施例1を得た。
[実施例2](エンボスタイプ)
1.タブ材を1.0規定の水酸化ナトリウム液に10秒間浸漬してから水洗いして乾燥し、フエノール樹脂、フッ化水クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液中に5秒間浸漬して引上げ、熱風により、水分を除去した後、遠赤外線ヒーターにより、皮膜温度が190℃に到達するまで加熱して、リチウムイオン電池のセル端部に接合して、本体実施例2とした。
2.アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理したアルミニウムの他の面に、MDPEをヒートシール層として30μmの厚さの溶融樹脂膜として押出して、該溶融樹脂膜のアルミニウムとのラミネート面をオゾン処理しながら、押出ラミネートして積層体とした後、MDPEの軟化点以上に加熱して得られた積層体を用いてエンボス成形し、蓋体は成形せずに所定のサイズに断裁して外装体2を得た。接着性フィルムとして、酸変性LLDPE100μmによってタブを挟持した状態として、外装体2のエンボス部の中に収納して、蓋体を被覆して周縁をヒートシールして検体実施例2を得た。
【0029】[比較例1](パウチタイプ)
1.タブ材を0.1規定の硫酸液に10秒間浸漬してから水洗いして乾燥して、リチウムイオン電池のセル端部に接合して、本体比較例1とした。
2.外装体を形成する積層体は、次のようにして作成した。アルミニウム20μmの片面に化成処理を施し、化成処理していない面に延伸ポリエステルフィルム(厚さ16μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理したアルミニウムの面、化成処理層に、酸変性ポリプロピレンフィルム50μmをドライラミネートにより貼り合わせて得られた積層体を用いてパウチ化して、外装体比較例1を得た。
3.外装体比較例1の中に、本体比較例1を収納して、外装体比較例1の未シール部をタブとともにヒートシールして検体比較例1を得た。
[比較例2](エンボスタイプ)
1.タブ材を0.1規定の硫酸液に10秒間浸漬してから水洗いして乾燥して、リチウムイオン電池のセル端部に接合して、本体比較例2とした。
2.アルミニウム40μmの両面に化成処理を施し、化成処理した一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネート法により貼り合わせ、次に、化成処理したアルミニウムの他の面に、MDPEをヒートシール層として30μmの厚さの溶融樹脂膜として押出して、該溶融樹脂膜のアルミニウムとのラミネート面をオゾン処理しながら、押出ラミネートして積層体とした後、該積層体を、MDPEの軟化点以上に加熱して、得られた積層体を用いてエンボス成形し、蓋体は成形せずに所定のサイズに断裁して外装体2を得た。接着性フィルムとして、酸変性LLDPE100μmによってタブを挟持した状態として、外装体2のエンボス部の中に収納して、蓋体を被覆して周縁をヒートシールして検体比較例2を得た。
<評価方法>【0030】前記のようにして得られた各検体のタブ部を下にして、静置し、外装体の中に、電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の液に1molの6フッ化リン酸リチウムを添加)の5gを入れて、85℃、30日間の保存テストを行い、タブ部からの内容物の漏れと漏れている部位を目視によりチェックした。
<結果>【0031】実施例は、いずれも、漏れはなく、タブのアルミニウムでの密封性は良好であった。比較例1は、1000検体中、2検体において、タブの陰極(アルミニウム)から液漏れがあった。また、比較例2においては、1000検体中3検体に同様の漏れが発生した。
【0032】
【発明の効果】タブと外装体との接着が確実となり、特に、リチウムイオン電池の構成要素である電解液成分と、外部からリチウムイオン電池内に浸入した水分との反応により生成するフッ化水素酸によるタブ表面の腐食、溶解を防止でき、タブ部での密封性が安定した。
【出願人】 【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
【出願日】 平成12年4月19日(2000.4.19)
【代理人】 【識別番号】100111659
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 聡
【公開番号】 特開2001−307715(P2001−307715A)
【公開日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願番号】 特願2000−117836(P2000−117836)