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【発明の名称】 |
神経インターフェイスシステム |
| 【発明者】 |
【氏名】鈴木 隆文 【氏名】國本 雅也 【氏名】満渕 邦彦 |
【課題】生体の神経系との間で直接的に情報の入出力を行う神経インターフェイスシステムを構築する。
【解決手段】生体の神経系を構成する個々の神経に情報の授受が可能な状態で接続される神経インターフェイスシステムであって、該システムは、接続先の神経に情報を入力する入力デバイスと、接続先の神経から情報を取出す出力デバイスの少なくともいずれか一つのデバイスを含み、接続先の神経線維の神経信号と該信号の意味する情報との対応関係を用いて、所望の情報を接続された神経線維に入力し、あるいは所望の情報を該神経線維から取出すように構成されている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】生体の神経系を構成する個々の神経に情報の授受が可能な状態で接続される神経インターフェイスシステムであって、該システムは、接続先の神経に情報を入力する入力デバイスと、接続先の神経から情報を取出す出力デバイスの少なくともいずれか一つのデバイスを含み、接続先の神経線維の神経信号と該信号の意味する情報との対応関係を用いて、所望の情報を接続された神経線維に入力し、あるいは所望の情報を該神経線維から取出すように構成されていることを特徴とする神経インターフェイスシステム。 【請求項2】前記システムは、接続先の神経線維の同定を行う手段を含むことを特徴とする神経インターフェイスシステム。 【請求項3】前記システムは、接続先の神経線維の神経信号と、該信号の意味する情報との対応関係を調査する手段とを含むことを特徴とする請求項1、2いずれかに記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項4】前記システムは信号変換部を有しており、該信号変換部は接続先の神経線維の神経信号と該信号の意味する情報との対応関係に基づいて、該神経に入力する情報、あるいは該神経より出力された情報を変換するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項5】前記出力デバイスにおいて、神経信号は、電気的、化学的、熱的、あるいは磁気的手法によって検出されることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項6】前記検出手段は、電極、化学物質センサ、測温体あるいは磁気センサであることを特徴とする請求項5に記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項7】前記入力デバイスにおいて、神経への情報入力手段は、電気刺激、機械的刺激、化学的刺激、光学的刺激、磁気刺激のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項8】前記情報入力手段は、電極、機械的刺激素子、薬物放出装置、光照射装置、磁気的刺激素子のいずれかであることを特徴とする請求項7に記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項9】前記神経インターフェイスは、生体の神経系と人工器官との情報の授受を行うものであることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項10】前記人工器官は、生体外部に直接接続されるもの、生体内部に直接接続されるもの、生体表面に埋め込み使用されるもの、生体から離れて操作されるものを含むことを特徴とする請求項9に記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項11】前記人工器官は義肢であることを特徴とする請求項9,10いずれかに記載の神経インターフェイスシステム。 【請求項12】(1)選択されたヒトの正中神経に刺入されたタングステン微小針電極からなる入力デバイスと、(2)生体の皮膚を実際に機械的に刺激することによって、選択された神経線維の感覚受容野の位置と該神経線維の種類を同定する手段と、(3)実際に神経線維に様々な電圧強度と周波数の方形波電気刺激を行うことによって、その刺激周波数と生成される感覚強度との関係を調査する手段と、(4)義肢の表面に触覚センサを装着し、該センサで検出した圧力強度の変化に応じて、タングステン微小針電極からの電気刺激のパルス周波数を変化させる信号変換手段とを有し、義肢にある圧刺激を加えると、対応する位置で対応する強度の圧力感覚をヒトが感じることのできる神経インターフェイスシステム。 【請求項13】感覚神経に感覚情報としての電気刺激を加え、人工感覚を生じさせる方法であって、該人工感覚は電気刺激として入力される刺激波形のパルス周波数の選択によって制御されるものであることを特徴とする電気刺激による人工感覚生成法。 【請求項14】義肢部と、信号変換部と、入力デバイスとを有し、該義肢部の表面に装着した感覚センサが受けた機械的刺激を感覚情報として該信号変換部に伝達し、該信号変換部では該感覚情報から刺激波形を演算し、該刺激波形を該入力デバイスを介して生体の感覚神経に伝達することで人工的な感覚を生成させるようにしたことを特徴とする人工感覚生成法。 【請求項15】該刺激波形は、該義肢部の感覚センサ出力に応じて変化させたパルス周波数のみによって制御されることを特徴とする請求項14に記載の人工感覚生成法。 【請求項16】刺激電圧値を、対象とする神経線維のみが刺激可能な所定値に固定し、パルス周波数を変化させることで、人工感覚の強度を変化させるようにしたことを特徴とする請求項13乃至15いずれかに記載の人工感覚生成法。 【請求項17】刺激波形はパルス幅250μsecの方形波であり、刺激電圧を感覚が生じる閾値の略120%に固定したことを特徴とする請求項13乃至16いずれかに記載の人工感覚生成法。 【請求項18】表面に感覚センサを備えた義肢部と、該感覚センサが感知した機械的刺激から刺激波形を演算する信号変換部と、該刺激波形を生体の感覚神経に伝達する入力デバイスとから構成される人工感覚呈示システム。 【請求項19】該刺激波形は、義肢部の感覚センサ出力に応じて変化させたパルス周波数のみによって制御されることを特徴とする請求項18に記載のシステム。 【請求項20】該刺激波形はパルス幅250μsecの方形波であり、刺激電圧を感覚が生じる閾値の略120%に固定したことを特徴とする請求項18、19いずれかに記載のシステム。 【請求項21】該義肢部に装着された触覚センサは圧電ゴムセンサであることを特徴とする請求項18乃至20に記載のシステム。 【請求項22】該入力デバイスは被験者に装着される電極であることを特徴とする請求項18乃至21に記載のシステム。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、生体の神経系に接続された神経情報入出力デバイスを情報の入出力端子とし、神経系と各種人工器官などの機器と間の直接的な情報授受を行うシステムの構築法に関する。 【0002】 【従来の技術】現在、高齢化社会への対応のため、直接的に人間の生活を支援するための工学研究領域が拡大している。「バリアフリーテクノロジー」と呼ばれるこの技術は、劣化ないし欠損している人体の機能を街、住宅等の社会基盤の物理的構造の改善によって、あるいは個人が利用可能な新規な機器を開発することによって支援しようとするものである。このような観点からの技術開発は、結果的には障害の有無にかかわらず、人間が社会生活を営みやすい環境をつくることに寄与している。 【0003】従来は電子・機械・建築関係が主であったバリアフリーテクノロジーであるが、最近その領域は次第に拡大し、直接的に医学と関わる分野での研究も見られるようになった。身体障害者等の身体の機能を補完する機能義手・義足等、高度医療機器の研究はその典型的な例である。 【0004】現在、そのような機器の制御は筋電検出、あるいは目や舌の動きを検出するといった手法で行われているが、生体が持つ運動・感覚機能に必要な情報量を考えるとこのような入力手段で得られる情報は量的に全く不十分である。例えば事故や戦傷により手足を失った場合、義手、義足の装着が必要になるが、義手・義足に対し本来の人体と同レベルの動作制御、そして温度、接触等の感覚を人体へフィードバックするためには、神経を対象にした信号の授受が必要となる。神経の情報処理について、生理学的な知見は様々に解析されてきたが、システムとしての神経インターフェイスは現在のところきわめて未熟なものしか開発されていない。 【0005】すなわちこのような人体支援機器の制御において、解決すべき最大の問題は神経系と電子機器との情報授受をいかに行うかという点にある。そこで生体情報の源である神経に直接接続して各種機器との情報の入出力を行えるようなシステム「神経インターフェイス」の研究が現在様々な研究機関で進められている。 【0006】生体の神経系は多数の神経線維によって構成され、神経情報は一般的に神経細胞の細胞膜電位の変化、すなわち活動電位によって伝達される。このため神経系に対して情報の入出力を行うためには、個々の神経線維に対して何らかの方法で情報入出力を行うことが不可欠であるが、機能的な情報入出力システムを構築するためには、さらにその神経線維の種類の同定や、その活動電位の意味する情報の解釈を行い、必要に応じてその対応関係の情報を利用しなければならない。 【0007】個々の神経線維に対する情報入出力、すなわち神経情報の計測と刺激を実現するデバイスは様々な方式が検討されているが、現在のところ、神経情報を電気的に計測、刺激するデバイスが主流であり、無麻酔下のヒトの個々の神経線維に接続する方法は、マイクロニューログラム法で用いられる、タングステン微小針電極による方法[Acta Physiologica Scandinavica, 69, 121-122 (1967), Experimental Neurology, 21, 270-289 (1968)]が現実的である。 【0008】神経インターフェイスの分野で現在最も成功している例として、人工内耳と呼ばれる機器を挙げることができる[リハビリテーション医学, 31, 233-239 (1994)]。これは聴覚障害のうち、鼓膜から内耳に至る部分が機能しなくなった場合に、蝸牛器官の聴覚神経を直接刺激することでその機能を代行する機器である。この人工内耳はマイクより入力した音を個人ごとの聴覚特性に合わせてデジタル信号処理をした後,聴覚神経の末端部、蝸牛神経に電気刺激を行うもので、3万余の聴覚神経が並んでいる蝸牛内部に22カ所程度の球形電極を設置し、この電極を介して神経に音声信号を入力するタイプが一般的である。人工内耳の埋め込み手術当初は、ほとんどの被験者が非常に奇妙な音声が聞こえると感じるそうだが、脳における情報処理が人工内耳に適合すると、最終的には音声の聞き取りまで可能になる。この人工内耳用の電極の解析・改善はそれ自体で一つの大きな研究領域になっている。 【0009】聴覚情報の入力が本来の3万本の神経を使用した入力から22ヶ所程度の人工的な電極入力へと大幅に低下することは、脳が受け取る聴覚情報も大幅に低下することを意味する。そのため、音声聞き取り能力の再生には、大幅に減少した聴覚情報を脳が補い理解できるようになるかに左右される。この脳の聴覚処理機能の、人工内耳に合わせた最適化には数ヶ月を要すると言われている。このように、現在の人工内耳は、個々の神経線維との接続をベースとしたものではなく、その機能も制限されたものとなっている。 【0010】また、現在人工視覚呈示装置に関しても様々な方法で研究がすすめられており、網膜内外に装着した多チャンネル電極によって、網膜内に残存する視神経に電気刺激を行い、これによって、人工的な視覚を生成する方式が主流となっている。しかしながら、これらの研究も個々の神経線維に対する接続をベースとするものではないのが現状である。 【0011】以上で述べたように、個々の神経線維との接続をベースとした神経インターフェイスシステムは、その大きな有用性にもかかわらず、これまでシステムの構築法に関して具体的な議論がなく、そのためシステム全体を構築した例もなかったのが現状である。 【0012】 【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、生体の神経系との間で直接的に情報の入出力を行う神経インターフェイスシステムを構築することにある。人工的な諸感覚を生成したり、運動指令信号によって義肢などの外部機器を制御するためには、個々の神経線維との接続をベースとした機能的な神経インターフェイスシステムの構築が不可欠であるが、こうしたシステムを構築する方法に関して具体的な提案とシステムの試作を行うことを課題とする。 【0013】 【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するために本発明が採用した技術手段は、生体の神経系を構成する個々の神経に情報の授受が可能な状態で接続される神経インターフェイスシステムであって、該システムは、接続先の神経に情報を入力する入力デバイスと、接続先の神経から情報を取出す出力デバイスの少なくともいずれか一つのデバイスを含み、接続先の神経線維の神経信号と該信号の意味する情報との対応関係を用いて、所望の情報を接続された神経線維に入力し、あるいは所望の情報を該神経線維から取出すように構成されていることを特徴とする。 【0014】システムが1チャンネルであり、接続先の神経が感覚神経線維である場合には、上記対応関係を調査するにあたって、神経線維の同定が重要である。接続先の神経線維の同定とは、神経線維の感覚受容野の位置の同定、神経線維の種類(どのような感覚を担当する神経か)の同定を含むものである。このような同定は、予め判っている場合にはその情報を利用してもよく、あるいは本発明に係るシステムは、接続先の神経線維の同定を行う手段を含むものである。また、この同定方法は、神経信号の計測による方法と、神経線維への刺激による方法を含むものとする。例としては、皮膚上の受容野を機械的に刺激することによる感覚神経線維の同定や、感覚神経線維を電気刺激して生成される感覚によって行う同定が挙げられる。 【0015】接続先の神経線維の神経信号と該信号の意味する情報との対応関係は、予め判っている場合にはその情報を利用してもよく、あるいは本発明に係るシステムは、接続先の神経線維の神経信号と、該信号の意味する情報との対応関係を調査する手段とを含むものである。 【0016】上記の同定や、神経信号と情報の対応関係の調査は、神経との接続点が複数存在し、複数の神経との接続が可能なシステムにおいては、個々の神経信号とその信号の持っている情報との対応関係を調べるだけでなく、複数の神経信号の時間的集団的なパターンと、そのパターンで表現される情報との対応を適宜調べる必要がある。システムの多チャンネル化については、1チャンネルのシステムをプロトタイプとして、当業者が適宜なしうるものと考えられる。 【0017】本システムでは、入出力したい情報を、前記同定手段で得られた関係の情報と、前記対応関係の情報を利用して、神経系に対して入出力を行うことにより、機能的な意味ある情報入出力が実現される。 【0018】後述する実施例では、本システムは、■ヒトの手首正中神経に刺入されたマイクロニューログラム法で用いられるタングステン微小針電極から構成された入力デバイスと、■手掌部の皮膚を実際に機械的に刺激することによって、神経線維の感覚受容野の位置と神経線維の種類を同定する手段と、■実際に神経線維に様々な電圧強度とパルス周波数の方形波電気刺激を行うことによって、その刺激パルス周波数と生成される感覚強度との関係を得る手段と、■義肢を想定したロボットハンドの表面に触覚センサ(感圧ゴムセンサ)を装着し、このセンサで検出した圧強度の変化に応じて、タングステン微小針電極からの電気刺激のパルス周波数をリアルタイムで変化させる信号変換手段とから構成され、義手にある圧力刺激を加えると、対応する位置で対応する強度の圧力感覚をヒトが感じることのできるシステムとして開示されている。 【0019】本発明において、個々の神経とは、神経情報経路の最小単位である、末端のシナプスおよび軸索を含む神経細胞を示す。本発明の対象とする神経は、中枢神経系を構成する神経と、末梢神経系を構成する神経の両者を含むものとする。また末梢神経系を構成する神経とは、運動神経、感覚神経、自律神経を含む。 【0020】本明細書において、接続とは、神経情報の授受が可能な状態を示す。すなわち、該デバイスが細胞に内蔵されても、刺入されていても、接触していても、あるいは直に接していなくても構わない。また神経情報の授受のために、神経と入出力デバイスの中継として人工物のみならず生体組織が使用されても構わない。 【0021】神経情報入出力デバイスにおいて、神経信号の検出手段としては、電気的、化学的、熱的、磁気的等の方法を用いることが出来る。具体的な出力検出デバイスとしては神経の電気的な活動を検出する電極、化学的な活動を検出する化学物質センサ、熱の発生を測定する測温体を挙げることが出来る。 【0022】また神経への情報入力手段としては電気刺激、機械的刺激、化学的刺激、光学的刺激等を挙げることが出来る。具体的な入力デバイスとしては電極、圧電素子、薬物放出装置、光照射装置が挙げられる。 【0023】また、神経情報入出力デバイスにおいて、入力デバイスと出力デバイスは別種の機構であっても、また同一であっても構わない。同一な例として、電極は神経の電気的な情報を検出可能であるほか、神経を電気刺激可能である。また、本発明は、必ずしも入力デバイス、出力デバイスの両方を備えている必要はなく、いずれか一方のデバイスのみを有するものであってもよい。 【0024】人工器官とは、生体外部に直接接続され運用されるもの(義手・義足等)の他、生体内部に直接接続されるもの(人工尿道弁等)、生体表面に埋め込み使用されるもの(人工眼等)、生体から離れて運用されるもの(潜水調査船のアーム等の遠隔操作型マニピュレータ)を挙げることが出来る。 【0025】また、人工器官が本来の生体器官の置換を目的としたものとは限らない。すなわち、人工器官による末梢器官、及び中枢神経機能も含めた生体機能の拡張も可能である。 【0026】本発明は、さらに当業者が適宜簡明な応用を施すことにより、様々な分野における技術として利用されうる。以下にその一例を紹介する。 【0027】本発明は人体同様に制御可能な関節や感覚器官を備えた義手・義足等の制御にも用い得る。現在、交通事故等による四肢切断後の機能補助のための動力義手・動力義足等の機器の性能向上が著しい。しかしながらその制御情報源は装着者の残存している筋電を利用するものがほとんどであり、本来の四肢の制御に要する情報量に比較すると圧倒的に少ない。また、義手・義足からの装着者側への感覚の伝達に至っては、義手装着部を介した物理的接触情報程度に限られている。そのため訓練によってそのような義手・義足の操作を習得しても、実際には大きな不便を強いられつつ使用するというのが現状である。この装着者と人工肢との間の情報授受経路が貧弱であることが、人工肢の性能向上を妨げる原因の一つとなっている。本システムの応用により、装着者の切断肢につながっていた神経を人工肢の制御情報源、感覚信号入力端子として使用できる。すなわち、本来の体と変わらない運動性能・感覚器官を備えた人工肢を制御することが可能になる。 【0028】本発明は、例えば種々の条件下での人工器官により送信される感覚情報と主観的な感覚の対応について解析を行うことで、脳の基礎研究用途等、生体情報処理機構の解明に応用することが可能である。 【0029】さらに本発明は、人工感覚器官(視覚・聴覚等)と生体との接続・制御に利用しうる。個々の神経線維との接続をベースとして、現在よりも高機能な人工内耳、人工視覚呈示装置に利用しうる。 【0030】さらに本発明は、アルツハイマー病やパーキンソン病等で損傷した患者の脳機能拡張機器の一部や、先天性疾患等で欠損している生体機能を回復するための生体機能拡張装置の一部としてシステムを用いることができる。 【0031】 【発明の実施の形態】本発明が提供するシステムは、個々の神経に接続可能な神経情報入出力デバイスを中継して人工器官と神経系の情報の授受を行うものである。図1に、神経インターフェイスシステムの概略ブロック図を示す。システムは、生体の神経系を構成する個々の神経に情報の授受が可能な状態で接続される神経インターフェイスシステムであって、該システムは、接続先の神経に情報を入力する入力デバイスと、接続先の神経から情報を取出す出力デバイスと、接続先の神経線維の同定情報と、接続先の神経線維の神経信号と該信号の意味する情報との対応関係に係る情報と、前記同定情報と対応関係情報を利用して情報を変換する信号変換部とを備えている。人工器官から伝達された情報は信号変換部によって所望の信号に変換され、入力デバイスを介して選択された神経に入力される。出力デバイスによって神経の神経信号から取り出された情報は信号変換部によって所望の信号に変換され、人工器官に伝達される。 【0032】 【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0033】義肢において触覚や圧覚等の感覚を生体にフィードバックさせる手法の一つとして、残存する感覚神経に電気刺激によって感覚信号を入力することが挙げられる。そこで、感覚神経への刺激信号波形と、それによって生成される人工の感覚との関係について以下のような実験を行った。 【0034】 【実験1】ヒトの手首部の正中神経にマイクロニューログラム用のタングステン微小針電極を超音波モニター下で刺入する。触刺激しながら神経信号を計測し、単一の感覚神経線維からの波形が得られる場所を検索し、その位置で、同一の針電極によって電気刺激を行い、生成される人工感覚と入力波形との関係を調べた。 【0035】刺激実験の手順は以下のとおりである。単一の感覚神経信号が得られる指上のエリアを記録し、触刺激に対応する神経信号も記録する。針電極の接続を刺激装置に切り替え、パルス幅250μsec、パルス間隔50msecの低電圧刺激にて電圧値を上昇させ、間隔の生じる閾値を求める。刺激電圧値を閾値の120%程度に固定して、パルス間隔を変化させて、生じる主観的感覚量を調べる。刺激提示は4秒間とし、各刺激の前に、毎回、刺激間隔50msec(20Hz)の刺激を4秒間行い、これを基準感覚量100として、各刺激に対する感覚量を決定する。刺激実験後に再び、針電極によって神経活動を計測し、針先が動いていないことを確認する。 【0036】実験の結果、図2に示すような結果が得られた。刺激電圧値を上昇させるとある閾値において触覚が生成される。さらに刺激電圧量を上昇させると触覚を感じるエリアが広がるか、あるいは別の部位で感覚が生じる。刺激電圧値を単一の感覚神経線維のみが刺激されると推察される閾値の120%程度に固定して、パルス間隔(パルス周波数)を変化させると、周波数に応じて、生成される触覚の強度が変化する。 【0037】前記実験結果をもとに、触覚フィードバック機能を持つ義手システムを試作し、義肢へ加えた機械的刺激の変化を感覚神経電気刺激により、生体に呈示することについて研究を行った。以下に、本発明に係る人工感覚提示システムの実施の形態を図3に基づいて説明する。システムは義肢部1、刺激波形を生成する信号変換部2、生体3に刺激を伝達する入力デバイス4とから構成される。義肢部1の表面に装着した触覚センサ5が受けた機械的刺激は、触覚情報として信号変換部2に伝達され、適当な刺激波形が演算されて、入力デバイス4から生体の感覚神経に伝えられる。それが中枢神経系に感覚神経信号として伝達され、人工的な触覚が生成される。 【0038】義肢部1には手部の木製模型が用いられる。被験者の正中神経に刺入したタングステン微小針電極計測にて機械受容ユニット(感覚神経)の受容野中心に対応する模型表面に触覚センサ5を装着する。触覚センサ5によって模型表面での機械刺激強度を出力する。触覚センサは5mmX9mmの感圧導電性ゴムシートと電極から構成され、加えた圧力強度に略比例した0〜3Vの電圧を出力する。 【0039】信号変換部2では、義肢部1の触覚センサ5の出力に応じて、被験者の微小針電極への電気刺激波形を計算し出力する。信号変換部2では、刺激波形をパルス幅250μsecの方形波として、刺激電圧を閾値の120%程度に固定し、パルス周波数のみを、義肢部1の触覚センサ出力に応じて変化させるようにした。触覚センサ出力電圧をVt[V]、パルス周波数をFp[Hz]とした場合に、Fp=70Vtとなるようにパルス周波数を計算し、電気刺激波形としてアイソレータ6を経由して入力デバイス4に出力させた。 【0040】入力デバイス4は被験者に装着した二個の電極から構成される。マイクロニューログラム用のタングステン針電極(シャンク径125μm、電極インピーダンス9〜12MΩ)を被験者の正中神経に手首部より刺入して(−)極とする。同側の手首関節部radial側にペーストで装着した皿電極を(+)極とする。アイソレータの出力はこの二個の電極に接続される。 【0041】 【実験2】システム動作確認実験はシールドされた検査室内で行われた。健常男性被験者は上腕を露出しベッド上に仰臥してリラックスした状態で実験を行った。被験者の正中神経(手首より5cm程度中枢側の皮膚を刺入点とする)にタングステン微小金属針電極を刺入した。この針電極を(−)極、手首関節部にペーストで装着した円板電極をアースとして、差動増幅器に接続し、500〜5kHzのバンドバスフィルターを通して、オシロスコープに表示すると共に、聴覚的モニタも行った。 【0042】触刺激に対応する神経信号をモニタしながら針電極の針先の位置を少しずつ動かし、単一機械受容ユニット(感覚神経)からの信号が記録できる位置を探索した。単一機械的受容ユニットからの信号であることの確認は、皮膚の各部に圧迫等の刺激を加え、特徴的な時系列応答を示す同強度の活動電位列を確認することで行った。単一機械受容ユニットからの波形が得られる場所で、針電極を固定し、受容野の大きさと応答波形から、ユニットの種類を固定した。 【0043】機械受容ユニットの受容野の中心付近を、実際に機械的に刺激し、刺激強度の変化と、被験者の感じた感覚強度の変化を記録した。被験者の感じた感覚強度は、刺激電極と反対側の手によってスライド式のボリュームを操作することで表現され、計測された。 【0044】次いで、タングステン針電極と手首関節部の皿電極をそれぞれ、アイソレータ出力の(−)極、(+)極に接続し、パルス幅250μsec、パルス周波数20Hzの方形波電気刺激を行った。刺激電圧を上昇させて触覚の生起する閾値電圧を求め、その120%の刺激電圧値で固定した。 【0045】本システムの義肢部の手模型の、上記の受容野に対応する部位の表面に触覚センサを装着し、本システムの作動を開始すると共に、その義肢部の触覚センサを機械的に刺激した。機械的刺激強度の変化と被験者の感じた感覚強度の変化を記録した。被験者の感じた感覚強度は、上記のスライド式ボリュームで表現され、計測された。 【0046】義肢部触覚センサへの機械的刺激の強度変化に応じて、被験者の対応する部位に触覚が生成されたことが、被験者より報告された。義肢部触覚センサへの機械的刺激の強度変化に対する被験者感覚強度の変化と、比較対象である実際の指への機械的刺激の強度変化を図4に示す。触覚センサへの機械的刺激の強度変化に応じて、主観的感覚量が変化していることがわかる。 【0047】前記システム動作確認実験の結果より、本システムによれば、義肢に加えられた機械的刺激を、感覚神経電気刺激により被験者に呈示すると共に、さらに機械的刺激の強度の変化を呈示できることがわかった。 【0048】 【発明の効果】個々の神経に接続しうる神経信号入出力デバイスと、概デバイスにより得られた神経信号の解析・応用によって、神経を対象に直接に情報授受が可能であることが示された。この結果、人工感覚器を装備した人工器官を自己の体の一部として知覚しうるようなシステムの構築が可能となった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】899000024 【氏名又は名称】株式会社 先端科学技術インキュベーションセンター
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| 【出願日】 |
平成11年6月25日(1999.6.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091904 【弁理士】 【氏名又は名称】成瀬 重雄 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−14082(P2001−14082A) |
| 【公開日】 |
平成13年1月19日(2001.1.19) |
| 【出願番号】 |
特願平11−180781 |
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