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【発明の名称】 調節計
【発明者】 【氏名】畔上 忠

【氏名】田中 覚

【氏名】梅井 紀彦

【氏名】王 金蘭

【氏名】真野 修一

【要約】 【課題】制御パラメータを設定するためには経験を要し、また、負荷変動など状況が変化したときに制御パラメータを再設定しなければならないという課題を解決する。

【解決手段】プロセス量に第2応答時定数で追従する信号に操作出力の変化分を加算した信号を第2応答出力とし、この第2応答出力に第3応答時定数で追従する信号を第3応答出力として、この第3応答出力の変化分を加算した信号を第5応答時定数でプロセス量に追従させた信号から補償信号を作成して、プロセス量の代わりにPID演算部に入力するようにした。また、操作出力に第1応答時定数で追従する信号によって、補償信号に加算する偏差を補正するようにした。補償信号は操作出力の変化分のみに応答し、また常にプロセス量と概略同じ大きさになるので、プロセス量の位相を補償することができ、またプロセスゲインが変動しても正確に制御することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】プロセスが出力するプロセス量を入力し、このプロセスを制御する操作出力を出力する調節計において、設定値およびプロセス量に関連する値が入力されその内部に保持された制御パラメータに基づいてプロセスを制御する操作出力を演算して出力する調節部と、この操作出力が入力され前記プロセス量の位相を補償する補償信号を出力する入力部とを有し、設定値とプロセス量の偏差により制御の可能性を決定し、制御が可能なときは前記補償信号を前記調節部に入力し、制御が不可能なときは前記プロセス量を前記調節部に入力するようにしたことを特徴とする調節計。
【請求項2】入力部は、所定の時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号から補償信号を作成するようにして、そのレベルをプロセス量のレベルに合わせるようにしたことを特徴とする請求項1記載の調節計。
【請求項3】補償信号として、プロセス量と設定値の偏差成分を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の調節計。
【請求項4】所定の時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号を第2応答出力とし、この第2応答出力に所定の時定数で追従する信号から補償信号を生成するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の調節計。
【請求項5】所定の時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号を第2応答出力とし、この第2応答出力に所定の時定数で追従する信号を第3応答出力として、この第3応答出力の変化量を加算した信号を所定の時定数でプロセス量に追従させた信号から補償信号を作成するようにしたことを特徴とする請求項4記載の調節計。
【請求項6】プロセス量と設定値の偏差と、制御すべきプロセスの無駄時間値と等価応答時間値との比とを比較して、このプロセスが制御可能かどうかを決定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の調節計。
【請求項7】プロセス量と所定の時定数で操作出力に追従する信号との差信号に基づいて、補償信号に加算するプロセス量と設定値の偏差を補正するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6記載の調節計。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、プロセスを制御する調節計に関し、特に制御位相を補償して適応性を高めた調節計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】調節計はプロセスが出力するプロセス量を入力して、このプロセス量および別に設定された設定値から操作出力を演算し、この操作出力によりプロセスを制御して、プロセス量を設定値に一致させるようにするものである。このような調節計の構造方式(操作出力を求める方式)としては、いわゆるPID演算方式が一般的に用いられている。
【0003】このようなPID演算方式の調節計では、制御するプロセスに適合した比例帯幅、積分時間、微分時間などの制御パラメータを設定することが重要である。このようなパラメータは、プロセスにテスト信号を入力してその応答特性から求める方法が従来から用いられており、限界感度法やジーグラー・ニコルスの調整則などがよく知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような調節計には次のような課題があった。
【0005】調節計ではプロセスに適合した制御パラメータを設定しなければならないが、この制御パラメータを正確に設定する一般的な方法はなく、熟練を要するという課題があった。また、負荷変動などプロセスの状況の変化に応じて制御パラメータを再設定しなければならないという課題もあった。この再設定を的確に行わないと制御動作が不安定になり、場合によっては制御ができなくなってしまう場合もあった。
【0006】このような課題を解決するために自動的に制御パラメータを求めて設定するということも行われていたが、プロセスに外乱を与えなければならなかったり、また調節計の構成が複雑になるなどの課題があり、その効果は限定的なものであった。
【0007】従って本発明が解決しようとする課題は、プロセスの状況が変化しても安定に制御動作を維持できる、いわゆる丈夫な調節計を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、設定値とプロセス量に関連する値が入力されプロセスを制御する操作出力を出力する調節部と、この操作出力が入力され前記プロセス量の位相を補償する補償信号を出力する入力部とを有し、設定値とプロセス量の偏差により制御の可能性を決定して、制御が可能なときは補償信号を調節部に入力し、制御が不可能なときはプロセス量を調節部に入力するようにしたものである。制御が不可能なときは自動的に補償信号による制御を行わないようにすることができる。
【0009】請求項2記載の発明は、請求項1の発明において、設定された時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号から補償信号を作成するようにして、補償信号のレベルの概略値をプロセス量のレベルに合わせるようにしたものである。補償信号は操作出力の絶対値に影響されないので、プロセスゲインの変動の影響を受けることがない。
【0010】請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、補償信号にプロセス量と設定値の偏差成分を含めるようにしたものである。プロセス量の位相を補償する成分と偏差を補償する成分に誤差を許容することができる。
【0011】請求項4の発明は、請求項1乃至3の発明において、設定された時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号を第2応答出力とし、この第2応答出力に所定の時定数で追従する信号から補償信号を生成するようにしたものである。請求項2の発明の効果を更に高めることができる。
【0012】請求項5の発明は、請求項4の発明において、所定の時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号を第2応答出力とし、この第2応答出力に所定の時定数で追従する信号を第3応答出力として、この第3応答出力の変化量を加算した信号を所定の時定数でプロセス量に追従させた信号から補償信号を作成するようにしたものである。請求項4の発明の効果を更に高めることができる。
【0013】請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5の発明において、プロセス量と設定値の偏差と、制御すべきプロセスの無駄時間値と等価応答時間値との比とを比較して、このプロセスが制御可能かどうかを決定するようにしたものである。簡単に制御の可否を決定することができる。
【0014】請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6の発明において、プロセス量と所定の時定数で操作出力に追従する信号との差信号に基づいて、補償信号に加算するプロセス量と設定値の偏差を補正するようにしたものである。ループゲインの影響を補償することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に、図に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る調節計の一実施例を示す構成図である。図1において、1は本発明に係る調節計である。2は制御対象であるプロセスであり、調節計1が出力する操作出力MVを入力し、プロセス量PVを出力する。
【0016】調節計1は調節部3、入力部4およびセレクタ5から構成される。調節部3は一般的なPID制御を行う。すなわちプロセス量に相当する信号SLTおよび設定値SPを入力し、内部に保持されたプロセスの同定値である無駄時間値TLおよび等価応答時間値TR等からPID演算により操作出力MVを演算して出力する。これら無駄時間値TLおよび等価応答時間値TRは既知のステップ応答法などによるオートチューニング・シーケンスを用いて同定される。入力部4は調節部3が出力する操作出力MV、設定値SP、プロセス量PV、無駄時間値TLおよび等価応答時間値TRを入力し、補償信号CPVを出力する。セレクタ5はプロセス量PVと入力部4の出力である補償信号CPVを選択して、信号SLTとして調節部3に出力する。
【0017】入力部4は本発明の根幹をなす部分であり、位相補助部41および補償主部42から構成される。位相補助部41は操作出力MV、プロセス量PV、設定値SP、無駄時間値TL、等価応答時間値TRおよび補償信号CPVを入力し、第1応答出力REF1および生補償信号CPRAWを出力する。補償主部42はプロセス量PVおよび位相補助部41の出力である第1応答出力REF1と生補償信号CPRAWを入力し、補償信号CPVを出力する。この補償信号CPVはセレクタ5に入力される。
【0018】位相補助部41は第1補助部411、第2補助部412および第3補助部413から構成される。第1補助部411は操作出力MVを入力し、第1応答出力REF1を補償主部42に出力する。第2補助部412は操作出力MVを入力して、第2応答出力REF2を第3補助部413に出力する。第3補助部413は第2応答出力REF2を入力して第3応答出力REF3を生成し、更にこのREF3から生補償信号CPRAWを生成して補償主部42に出力する。
【0019】次に、フローチャートに基づいて入力部4の動作を説明する。そのために、最初にコントロールステータスCSTとタイマステータスTMSTについて説明する。コントロールステータスCSTは制御の状態を表すステータス信号であり、下記の意味を有する。
―1:制御不可能。手動コマンドにより制御を停止した。
0:制御不可能。偏差が過大で操作出力MVが飽和した。
1:制御可能。プロセス量PVが整定した。
2:制御可能。プロセス量PVが整定していない。
3:反応答。外乱状態である。
………………………………… (1)
【0020】続いて、図2に基づいてタイマステータスTMSTを説明する。運転が開始されるとタイマステータスTMSTが0になり、所定の時間が経過すると1に変化する。その後、設定値SPとプロセス量PVの差である偏差が所定の値より小さくなると2に変化する。そして、設定値SPとプロセス量PVが一致する整定状態になると、3に変化する。なお、タイマステータスTMSTが0〜3のいずれの状態でも、運転が停止されるとー1に変化する。コントロールステータスCSTが前の状態に戻る場合があるという意味で可逆的であるのに対して、タイマステータスTMSTは前の状態に戻ることがなく、非可逆的である。
【0021】次に、図3フローチャートに基づいて位相補助部41の動作を説明する。なお、フローチャートの左側の数字は説明のために追加したものである。各々の処理について説明するときは、この番号でフローチャートの位置を特定する。まず、202で、下記(2)式により第1応答出力REF1を演算する。この演算は第1補助部411で行う。
REF1=REF1+(MV―REF1)*dt/T1 ……………… (2)
なお、dtは制御周期であり、T1は第1応答時定数である。この第1応答時定数T1は、例えば等価応答時間値TRの1/4の値に設定される。この演算によって、第1応答出力REF1を時定数T1で操作出力MVに追従させている。すなわち、MV応答を形成している。続いて203と204により、第3応答出力REF3の新しい値を生成するための前処理を行う。すなわち、第3応答出力REF3に補償信号CPVを代入し、その前回値LREF3にも同じ値を代入する。この処理は第3補助部413で行う。
【0022】次に、205で制御が可能であるかを判定している。前記(1)で示したように、コントロールステータスCSTが1以上であると制御が可能である。このときは206に示すように、下記(3)式により第2応答出力REF2を演算する。この演算は第2補助部412で行う。
REF2=REF2+(PV―REF2)*dt/T2 ……………… (3)
ここにおいて、T2は第2応答時定数であり、例えば無駄時間値TLの5倍の値が用いられる。この演算によって第2応答出力REF2を時定数T2でプロセス量PVに追従させる。次に、CSTが1、すなわちPVが整定していると、設定値SPの変化量をREF2に加算する。LSPは設定値SPの前回値である。但し、一般的な定置制御の場合は設定値SPが変化しないので、この操作は意味を持たない。そして、212で制御の可能/不可能に関わらず、第2応答出力REF2に操作出力MVの変化量を加算する。LMVは操作出力MVの前回値である。
【0023】次に、214でタイマステータスTMSTがゼロ以下であるかを判定する。図2に示したように、これは運転を停止しているか、運転開始から所定の時間が経過していないことを表す。このときは、第2応答出力REF2に操作出力MVを代入する。
【0024】次に、218でCST=3、すなわち外乱状態であるかを判定する。外乱状態であると、第2応答出力REF2にプロセス量PVを代入する。
【0025】続いて、222で再びCSTが1以上である、すなわち制御が可能であるかを判定する。制御が可能であると、下記(4)式により第3応答出力REF3を演算する。この演算は第3補助部413で行う。
REF3=REF3+(REF2―REF3)*dt/T3 ……………… (4)
ここにおいて、T3は第3応答時定数であり、例えば等価応答時間値TRの1/2の値に設定される。この演算によって、REF3を時定数T3で第2応答出力REF2に追従させている。また、制御が不可能であるときはREF3にPVを代入する。
【0026】図3フローチャートの要点の1つは第2応答出力REF2と第3応答出力REF3の生成過程にある。前記(3)式でわかるように、REF2は時定数T2でプロセス量PVに追従しているので、その動作レベルはPV上にある。また、操作出力MVの変化量が加算されているので、MVの変化を反映するが、その絶対値には影響されないという特徴がある。前記(4)式から明らかなように、REF3は時定数T3でREF2に追従しているので、REF3もREF2と同様の特徴を有している。
【0027】図4は第3応答出力REF3から生補償信号CPRAWを生成する過程を説明するためのフローチャートである。図3と同様に、フローチャートの左側の数字は処理を特定するために用いる。また、この処理は第3補助部413で行う。図4において、240でコントロールステータスCSTが1より小さいかまたは3であるかを判定する。前記(1)より、この場合は制御が不可能であるか外乱状態であるので、生補償信号CPRAWにプロセス量PVを代入して終了する。
【0028】次に、コントロールステータスCSTが1または2であると、250で第3応答出力REF3の変化量をDREFに代入する。LREF3はREF3の前回値である。続いて252〜260の処理に入る。つまり、CSTが1でない、つまり2であり、かつプロセス量PVの変化量の絶対値がREF3の変化量の絶対値より大きい場合に、変化量DREFにプロセス量PVの変化量を加算する。但し、この処理が行われる機会は少ない。そして、CSTの値にかかわらず、生補償信号CPRAWにDREFを加算する。なお、LPVはプロセス量PVの前回値を表す。
【0029】次に、262〜270で回帰量REWINDを求める。まず、下記(5)式で回帰量REWINDの初期値を演算する。すなわち、プロセス量PVと生補償信号CPRAWの差を回帰量REWINDの初期値とする。
REWIND=PV―CPRAW ……………………………… (5)
そして、その値がーLIM1とLIM1の間になるように制限する。制限値LIM1はあらかじめ与えられた値であり、例えば回帰量REWIMDが±5%になるように設定される。
【0030】最後に、下記(6)式により生補償信号CPRAWを演算する。
CPRAW=CPRAW+REWIND*dt/T5 ………………… (6)
つまり、CPRAWを回帰時定数T5を介してREWINDの値で変更する。回帰時定数T5は、例えば無駄時間値TLの値を用いる。前記(5)式からわかるように、REWINDはプロセス量PVから生成されるので、CPRAWを時定数T5でプロセス量PVに追従させていることになる。
【0031】図4フローチャートの要点の1つは、生補償信号CPRAWの生成過程にある。前述したようにCPRAWは第3応答出力REF3の変化分を加算しているので、REF3の絶対値には影響されず、その変化分のみの影響を受けるという特徴がある。また、所定の時定数でプロセス量PVに追従させているので、その動作レベルは常にPV上にある。PVに追従する部分が直流成分であり、MVの変化分から生成される部分が交流成分、すなわち位相補償成分になる。図3フローチャートで説明したように、REF3もMVの変化分のみを加算して生成されるので、CPRAWは2段階の過程を経てMVの変化分に追従していることになる。これは、例えばまず粗調整を行った後に微調整を行うという効果に類似するものである。CPRAWをPVに追従させる時定数として、1回目(T2)は無駄時間値TLの5倍、2回目(T5)はTLの1倍と5倍の違いを与えている。
【0032】図5は補償主部42の動作を表したフローチャートである。図3と同様に、フローチャートの左側の数字は説明のために入れたものである。まず、下記(7)式で偏差OFFSETの初期値を与える。
OFFSET=PV―SP …………………………………… (7)
つまり、プロセス量PVと設定値SPの差をOFFSETとする。続いて下記(8)式で偏差OFFSETを補正する。
OFFSET=OFFSET*(1−(PV―REF1)/50) …… (8)
OFFSETへの乗率(1−(PV―REF1)/50)は、定性的には比率(REF1/PV)と同等である。例えば、PV=50、REF1=80では乗率は1.6になり、PV=50、REF1=30では0.6になる。この演算によっていわゆるループゲインの影響が補償される。
【0033】続いて、308〜310で導入係数RN3を求める。308でタイマステータスTMSTが2以上であるかを判定し、2以上なら下記(9)式で導入係数RN3を更新し、1以下であるとRN3=0とする。
RN3=RN3+(1−RN3)*dt/T4 …………………… (9)
つまり導入時定数T4を介して、RN3を1に追従させている。導入時定数T4は、例えば無駄時間値TLの2倍に設定される。
【0034】次に、314〜318で補償信号CPVを求める。CPVは下記(10)式で演算し、CSTが0以下か3のとき、すなわち制御不可能なときか外乱状態のときは、プロセス量PVとする。
CPV=CPRAW+OFFSET*RN3 ………………………… (10)
このCPVはセレクタ5を介して、信号SLTとして調節部3に入力される。このRN3によってCPVにOFFSETを加算する割合を変化させている。
【0035】このように、補償信号CPVはプロセス量PVのレベル成分と操作出力MVの変化量から導出される位相補償成分と設定値SPとPVの偏差である偏差成分が含まれている。位相補償成分と偏差成分は制御の必然性としてゼロに回帰するので、これらの成分には誤差が許される。
【0036】なお、これらのフローチャートではコントロールステータスCSTが1以上であると制御が可能であると判断している。コントロールステータスCSTは、例えば下記(11)の条件が成立するときに1以上とする。
ABS(PV―SP)<(TL/TR)*100 …………… (11)
ここで、ABS()は絶対値を求める関数である。すなわち、偏差が過大でないと調節部3は何らかの応答をするはずであるので、制御が可能であると見なしている。但し、実際に調節部3が応答するのを待つ意図はない。
【0037】また、処理の流れを判断するためにコントロールステータスCST、タイマステータスTMSTを用いたが、必ずしもこれらのステータスを用いる必要はない。これらのステータスが意味する条件をその都度判断するようにしてもよい。
【0038】図6は本実施例の効果を説明するための波形図である。なお、無駄時間値TLを40秒、等価応答時間値TRを200秒とし、調節部3の制御パラメータとして比例帯幅PBを18%、積分時間TIを54秒、微分時間TDを10秒に設定している。本実施例の効果を明らかにするために比例帯幅PBを小さめに設定しており、従来の制御方法ではプロセス量PVと操作出力MVの振幅が次第に増大する、いわゆる発散の傾向が現れるような設定になっている。
【0039】図6の(1)は、調節部3にプロセス量PVが入力されるようにセレクタ5を設定した場合であり、従来の制御、すなわち通常制御の特性を表している。それに対して、(2)は補償信号CPVを調節部3に入力するようにセレクタ5を設定した場合であり、本実施例の特性を表している。
【0040】図6(A)はプロセス量PV、生補償信号CPRAWおよび補償信号CPVの変化を表したものである。通常制御ではPVが振動しているのに対して、本実施例の補償制御ではすぐに安定している。(B)は操作出力MVの変化を表したものであり、通常制御では振動しながら増大しているのに対して、補償制御では短時間で一定値に落ち着いている。(C)は第2応答出力REF2および第3応答出力REF3の変化を表したものである。通常制御では発散傾向が現れているのに対して、補償制御では短時間で安定している。なお、REF3は図3および図4に示したように所定の時定数でプロセス量PVに追従させて操作出力MVの変化を加算する操作を2回繰り返して生成したものである。(D)はコントロールステータスCSTとタイマステータスTMSTの変化を表したものである。通常制御ではプロセス量PVが整定しないのでCSTは1に戻らず、TMSTも3になることはない。なお、通常制御の場合はCPRAW、CPV、REF2、REF3は制御には用いられないが、いつでも補償制御に変更できるようにスタンバイ状態になっている。
【0041】なお、CPRAWはPVのレベルに追従しかつMVの変化分にのみ応答するようにしているので、(A)からわかるようにレベルはPVにほぼ一致し、かつ位相的にはPVに先行している。また、CPVはCPRAWに偏差成分(SP―PV)が加算されているので、その位相はCPRAWよりもPVよりになっている。図3〜図5に示したように制御不可能か外乱状態の時はCPV=PVなどとして補償制御をしないようになっているが、CPVが常にレベル的にPVに一致しているので、バンプレスで補償制御あり、なしを切り替えることができる。
【0042】また、CPVはPVレベル上にゼロ回帰性の位相補償成分と偏差成分を乗せているので、この位相補償成分と偏差成分の大きな誤差があっても的確な制御ができるという特徴がある。
【0043】図7は図4に示した生補償信号CPRAWの導出処理を行わず、第3応答出力REF3をCPRAWの代わりに用いた場合の波形である。すなわち、操作出力MVの変化量に追従させる操作を1回だけ行った場合である。なお、通常制御の波形であり、制御条件は図6と同じである。図6に比べて、REF3が右肩上がりに増大する傾向が見られる。これは制御性能が劣化していることを示している。但し、大筋では図6の波形と同じであり、大きな制御性能の劣化は見られない。
【0044】図6、図7の波形では制御の可能/不可能を判定して、不可能なときは第3応答出力REF3をプロセス量PVに一致させるようにしているが、図8の波形はこの判定を行わず、REF3を常に第2応答出力REF2に応答させるようにした制御例である。なお、(A)〜(C)の波形の意味は図7と同じなので、説明を省略する。(C)のa、bはそれぞれ等価応答時間値TRを図7の2倍、1.5倍に設定した場合のREF3の波形であり、(A)のA、Bはそのときの生補償信号CPRAWの波形である。特にB(b)ではPVの変化と大きく違っており、独自の動きをしている。本実施例では制御不可能のときはREF3をPVに一致させるようにしているので、CPRAWがPVから大きく離れることはない。
【0045】図9〜図11はプロセスゲイン(プロセス量/操作出力)を変化させた場合の制御の結果を示す波形図である。図9は通常制御すなわち調節部3にプロセス量PVを入れるようにセレクタ5を設定した場合、図10は補償制御で図5の314の導入係数RN3を1に固定した場合、図11は前記(9)式に従ってRN3を変化させた場合である。いずれの図も(A)はPVの変化、(B)は操作出力MVの変化、(C)は第1応答出力REF1と第3応答出力REF3の変化、(D)はコントロールステータスCSTとタイマステータスTMSTの変化を表す。また、いずれの図も無駄時間値TL=20秒、等価応答時間値TR=400秒、比例帯幅PB=8%、積分時間値TI=40秒、微分時間値TD=10秒に設定した。
【0046】これらの図の(C)から明らかなように、プロセス量PVに追従させ、操作出力MVの変化量を加算しているREF3はほぼ一定値になっているのに対して、MVに追従させているだけのREF1はプロセスゲインの変化に従って段階的に変化している。また、通常制御の図9ではPVが振動しており、RN3を固定した図10でもわずかながら振動傾向が見られる。それに対して、RN3を前記(9)式に従って変化させた図11では振動が完全に抑止されている。すなわち、本実施例の効果が顕著に見られる。
【0047】図12は、図11と同条件で制御を行った場合の波形であり、(A)の縦軸を10倍に拡大したものである。そのため、プロセス量PV、生補償信号CPRAW、補償信号CPVはスケールオーバーしている。また、(C)で第3応答出力REF3の代わりに第2応答出力REF2を表している。プロセスゲインが変化するとまずプロセス量PVが変化する。そのため、偏差OFFSETが変化して補償信号CPVが変化して操作出力MVが変化する。このMVの変化は第2応答出力REF2を変化させ、それがCPRAWを変化させてCPVに伝えられる。このようにして、プロセスゲインの変動が補償される。REF2、CPRAW、CPVはPVに追従しているので、プロセスゲインが変化してもそのレベルは変化しない。
【0048】
【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次の効果が期待できる。請求項1記載の発明によれば、設定値とプロセス量に関連する値が入力されプロセスを制御する操作出力を出力する調節部と、この操作出力が入力され前記プロセス量の位相を補償する補償信号を出力する入力部とを有し、設定値とプロセス量の偏差により制御の可能性を決定して、制御が可能なときは補償信号を調節部に入力し、制御が不可能なときはプロセス量を調節部に入力するようにした。自動的に補償信号による制御を行わないようにすることができる。また、生捕縄信号CPRAWがプロセス量PVから乖離することがなくなる(図8(A)のB参照)。
【0049】請求項2記載の発明によれば、請求項1の発明において、設定された時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号から補償信号を作成するようにして、補償信号の概略レベルをプロセス量のレベルに合わせるようにした。補償信号は常にプロセス量のレベルになるので、操作出力の絶対値に影響されず、プロセスゲインの変動の影響を受けることがない。
【0050】請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明において、補償信号にプロセス量と設定値の偏差成分を含めるようにした。プロセス量の位相を補償する成分と偏差を補償する成分に誤差があっても正確にプロセスを制御することができる。
【0051】請求項4の発明によれば、請求項1乃至3の発明において、設定された時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号を第2応答出力とし、この第2応答出力に所定の時定数で追従する信号から補償信号を生成するようにした。請求項2の発明の効果を更に高めることができる。
【0052】請求項5の発明によれば、請求項4の発明において、所定の時定数でプロセス量に追従する成分に操作出力の変化量を加算した信号を第2応答出力とし、この第2応答出力に所定の時定数で追従する信号を第3応答出力として、この第3応答出力の変化量を加算した信号を所定の時定数でプロセス量に追従させた信号から補償信号を作成するようにしたものである。補償信号をプロセス量に追従させる操作を重複させることにより、より正確に制御を行うことができる。
【0053】請求項6の発明によれば、請求項1乃至請求項5の発明において、プロセス量と設定値の偏差と、制御すべきプロセスの無駄時間値と等価応答時間値との比とを比較して、このプロセスが制御可能かどうかを決定するようにしたものである。調節部の動作に先行して制御の可否を決定することができる。
【0054】請求項7の発明によれば、請求項1乃至請求項6の発明において、プロセス量と所定の時定数で操作出力に追従する信号との差信号に基づいて、補償信号に加算するプロセス量と設定値の偏差を補正するようにした。プロセスゲインが過大になっても正確に制御を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河エムアンドシー株式会社
【出願日】 平成12年3月17日(2000.3.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−265401(P2001−265401A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−76229(P2000−76229)