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【発明の名称】 定着ローラ及びその成形方法
【発明者】 【氏名】村田 誠

【氏名】小島 敏男

【氏名】石部 篤

【要約】 【課題】剛性を確保すると同時に薄肉化に伴う立ち上がり時間の短縮化を実現することができ、しかも加工性並びに汎用性を向上することができる定着ローラを提供する。

【解決手段】熱源15によって加熱されると共に円筒形状の加圧ローラ12との圧接により記録体Sを挟時搬送しつつ熱エネルギーを記録体Sに付与するように略円筒形状に形成された定着ローラ11が金属材料を基体とする薄肉円筒管からなるローラ芯金18と離型層19とから構成されると共に、ローラ芯金18の内周面に軸線方向に沿って設定された通紙領域L以下の領域内でその中心から左右均等に振り分け配置された偶数若しくはその中心とその左右均等に振り分け配置された奇数の周回凸部18aが一体に形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】熱源によって加熱されると共に円筒形状の加圧ローラとの圧接により記録体を挟時搬送しつつ熱エネルギーを記録体に付与するように略円筒形状に形成されると共に、金属材料を基体とする薄肉円筒管からなるローラ芯金と、該ローラ芯金の外周面に被覆された離型層とを備えた定着ローラにおいて、前記ローラ芯金の内周面に、軸線方向に沿って設定された通紙領域に対して該通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分け配置された偶数若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分け配置された奇数の周回凸部が一体に形成されていることを特徴とする定着ローラ。
【請求項2】前記ローラ芯金の基体となる金属材料がマンガン系アルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の定着ローラ。
【請求項3】前記周回凸部が前記通紙領域の1/4〜1/1の範囲内で振り分けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着ローラ。
【請求項4】前記周回凸部の前記ローラ芯金の内周面からの突出量が前記ローラ芯金の肉厚の0.5〜3.0倍であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の定着ローラ。
【請求項5】前記周回凸部の軸線方向に沿う幅が前記ローラ芯金の肉厚の5.0〜7.5倍であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の定着ローラ。
【請求項6】前記周回凸部が軸線方向に沿う幅に対して3倍以上の間隔で配置されていることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラ。
【請求項7】前記ローラ芯金の中間領域には軸線方向に沿う中間領域の直径がその左右領域の直径よりも序々に小径となる括れ部が形成されていると共に、前記薄肉金属板の前記周回凸部を除いた全体の肉厚が均一であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の定着ローラ。
【請求項8】金属材料を基体とする円筒管の表面側を周方向に沿って凹陥させることによって前記円筒管の内表面に周回凸部を形成すると共に、該周回凸部を前記円筒管の軸線方向に沿って設定された通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分けた偶数個所若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分けた奇数個所形成した後、前記円筒管の表面側を切削して凹陥部分を除去して表面均一な薄肉金属管からなるローラ芯金を形成することを特徴とする定着ローラの成形方法。
【請求項9】金属材料を基体とする円筒管の軸線方向に沿う中間領域の直径がその左右領域の直径よりも序々に小径となって括れるように絞り加工を施した上で、前記円筒管の表面側を周方向に沿って凹陥させることによって前記円筒管の内表面に周回凸部を形成すると共に、該周回凸部を前記円筒管の軸線方向に沿って設定された通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分けた偶数個所若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分けた奇数個所形成した後、前記円筒管の表面側を切削して凹陥部分を除去して軸線方向に沿う中心が括れた薄肉金属菅からなるローラ芯金を形成することを特徴とする定着ローラの成形方法。
【請求項10】前記円筒管の表面側を凹陥させる工具の先端若しくは周端の幅が前記周回凸部の幅に対して1/3〜1/1倍であることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の定着ローラの成形方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、ファクシミリ、電子写真プリンタ等の電子写真記録装置において、紙、フィルム等の記録体面上に形成された加熱溶融性トナーからなる画像を加熱して永久固着画像として記録体面上に定着する加熱定着方式の定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、紙やフィルム等の記録体の一面に形成したトナー画像を定着する方法として、一般に熱によりトナーを溶融して一面上に定着させる加熱定着方式が用いられている。
【0003】また、このような加熱定着方式でも、図13(A),(B)に示すように、熱ローラ方式が熱効率が高く、しかも、安全である等の理由から最も広く使われている。
【0004】この熱ローラ方式に用いられる定着装置1は、2つのローラ2,3のうち、記録体Sの一面側(トナーsが付着する面)に位置する方を加熱用の定着ローラ2とし、記録体Sの他面側に位置する方を付勢手段4によって定着ローラ2に向けて付勢された加圧ローラ3とし、これら2つのローラ2,3の圧接部分で記録体Sをニップして搬送すると同時にこのニップ部分で記録体Sの一面側に形成された末定着トナー画像を加熱し、記録体Sの一面上にトナーを定着させる。
【0005】定着ローラ2の内部には八ロゲンランプやセラミックスヒータ等の熱源5が軸線方向に沿って設けられている。尚、定着ローラ2の内周面あるいは外周面に発熱抵抗層を形成したものも知られている。さらに、定着ローラ2そのものがセラミックスヒータ、導電性樹脂、導電性繊維等の発熱材料で形成したものもある。一方、定着ローラ2の表面には温度センサ6が当接しており、この温度センサ6の検知温度結果に基づいてニップ部分の温度が最適なトナー定着温度に維持されるように熱源5の電カ供給量が制御されている。
【0006】また、このような定着装置1においては、熱源5からの加熱効率の関係から、熱伝導性並びに剛性を確保するように、定着ローラ2にアルミニウム合金を基体としたものが用いられている。そして、このようなアルミニウム合金を基体とした定着ローラ2の一般的な構成としては、円筒状のローラ芯金2aをアルミニウム合金を基体として形成すると共に、その基体の外周面にフッ素樹脂等からなる離型層2bを被覆している。
【0007】尚、定着ローラ2には、トナー定着工程でのニップ部分に記録体Sを通紙する際に“シワ”や“ヨリ”が記録体に発生しないよう、中間領域をその左右領域よりも徐々に細くした括れ部を形成したものも知られている。
【0008】このような構成の定着ローラ2を成形する場合には、アルミニウム合金材から円筒状の長尺ローラを成形し、この長尺ローラを所定の長さに切断してローラ芯金2aとし、さらにそのローラ芯金2aの外周面を切削あるいは研削等により表面を均一化させた後、サンドプラスト処理などによって粗面化、離型層となるフッ素樹脂等からなる塗料を塗装した後に焼成させて離型層2bを成膜し、所定の仕上げ処理を行っていた。
【0009】この際、多くの成形方法では、ローラ芯金の外周面を加工する際には、ダイヤモンドバイトを使用した外径切肖加工によって行われる。また、この切削加工で同時にローラ芯金を所定の肉厚まで薄肉化している。
【0010】他方、近年における省エネルギー化や低コスト化の要望から、定着ローラ2には、熱伝導性を向上させるために更なる薄肉化が要求されている。すなわち、ローラ芯金の薄肉化によって定着可能な温度に達するまでの時間(定着ローラの立上り時間,ウォームアップ時間とも称される。)を短縮して、複写機等の省電カ化を進めることが望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ローラ芯金を薄肉化すると、ローラ芯金の剛性が低下するばかりでなく、この剛性低下に起因してニップ(特に、幅方向に対して)の確保が困難となるという問題が発生していた。
【0012】しかも、上述した中間領域を細くして括れを形成したものにあっては、外周面を切削加工して括れを形成するため、括れ部分の肉厚は左右領域よりもさらに薄肉となってしまい、立上り時間の短縮のためにローラ芯金を薄肉化した場合の剛性確保が困難となってしまう。
【0013】尚、ローラ芯金の肉厚を0.3〜0.8mmとした場合、機械強度の低下が著しく、加圧ローラ3からの荷重が加わった場合、定着ローラ2に、図14(A)に示すような反り、或いは、図14(B)に示すような潰れなどの変形が発生してしまい、この変形に起因して定着ローラ2と加圧ローラ3との間に隙間が発生して部分的な定着不良が起きることが判明した。
【0014】そこで、実開昭61−56666号公報、特開平10−39665号公報等に示すように、定着ローラ(ローラ芯金)の肉厚を部分的に厚く形成したり、屈曲させることによって強度を確保する技術が開示されている。
【0015】実開昭61−56666号公報では、定着ローラのローラ芯金を内外二層とすると同時にその両者間に跨るリブを放射状に形成したもので、押し出し成形によって一体成形したものである。
【0016】しかしながら、このような構成では、ローラ芯金の反り方向の合成は確保されるものの、断面方向のつぶれ変形には効果を発揮することができないばかりでなく、軸線方向に沿うリブで十分な補強効果を得るためにはローラ芯金全体の熱容量が大きくなるため、立ち上がり時間の短縮化には貢献することができないという問題が発生した。
【0017】特開平10−39665号公報では、ローラ芯金の一部を周回り方向で内側に折り曲げて重ね合わせることで内周面側に突出したリブを形成して剛性を確保すると同時に薄肉化に伴う立ち上がり時間の短縮化を実現するものである。
【0018】しかしながら、このような構成では、ローラ芯金の表面加工、リブ形成用の折り曲げ加工、芯金表面側の合わせ目の溶接などの、一連の作業工程での加工が困難で作業工程が煩雑化するばかりでなく、折り曲げの際に、その折り曲げ部分の両端筒部を同軸上に位置させることが困難であったり、スプリングバック現象によって折り曲げ部分同士を密着させることが困難であったり、複数のリブを形成する際に均一な突出量を確保することが困難であるなど、実現性に乏しいという問題が発生していた。
【0019】本発明は、上記問題を解決するため、剛性を確保すると同時に薄肉化に伴う立ち上がり時間の短縮化を実現することができ、しかも加工性並びに汎用性を向上することができる定着ローラを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】その目的を達成するため、請求項1に記載の定着ローラは、熱源によって加熱されると共に円筒形状の加圧ローラとの圧接により記録体を挟時搬送しつつ熱エネルギーを記録体に付与するように略円筒形状に形成されると共に、金属材料を基体とする薄肉円筒管からなるローラ芯金と、該ローラ芯金の外周面に被覆された離型層とを備えた定着ローラにおいて、前記ローラ芯金の内周面に、軸線方向に沿って設定された通紙領域に対して該通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分け配置された偶数若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分け配置された奇数の周回凸部が一体に形成されていることを要旨とする。
【0021】このような講求項1に記載の定着ローラによれば、加圧ローラからの付勢に伴うローラ芯金の反りや潰れを考慮した上で、熱容量を小さくして立ち上がり時間を短縮した剛性の高いローラ芯金を容易に加工することができる。
【0022】請求項2に記載の定着ローラは、前記ローラ芯金の基体となる金属材料がマンガン系アルミニウム合金であることを要旨とする。
【0023】請求項3に記載の定着ローラは、前記周回凸部が前記通紙領域の1/4〜1/1の範囲内で振り分けられていることを要旨とする。
【0024】請求項4に記載の定着ローラは、前記周回凸部の前記ローラ芯金の内周面からの突出量が前記ローラ芯金の肉厚の0.5〜3.0倍であることを要旨とする。
【0025】請求項5に記載の定着ローラは、前記周回凸部の軸線方向に沿う幅が前記ローラ芯金の肉厚の5.0〜7.5倍であることを要旨とする。
【0026】請求項6に記載の定着ローラは、前記周回凸部が軸線方向に沿う幅に対して3倍以上の間隔で配置されていることを要旨とする。
【0027】このような請求項2乃至請求項6に記載の定着ローラによれば、ローラ芯金の潰れや捩れ、熱容量、剛性の各種条件を厳密に設定することができる。
【0028】請求項7に記載の定着ローラは、前記ローラ芯金の中間領域には軸線方向に沿う中間領域の直径がその左右領域の直径よりも序々に小径となる括れ部が形成されていると共に、前記薄肉金属板の前記周回凸部を除いた全体の肉厚が均一であることを要旨とする。
【0029】このような請求項7に記載の構成によれば、トナー定着工程でのニップ部分に記録体を通紙する際に“シワ”や“ヨリ”が記録体に発生しないよう中間領域に括れを形成したローラ芯金への対応も可能となる。
【0030】請求項8に記載の定着ローラの成形方法は、金属材料を基体とする円筒管の表面側を周方向に沿って凹陥させることによって前記円筒管の内表面に周回凸部を形成すると共に、該周回凸部を前記円筒管の軸線方向に沿って設定された通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分けた偶数個所若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分けた奇数個所形成した後、前記円筒管の表面側を切削して凹陥部分を除去して表面均一な薄肉金属管からなるローラ芯金を形成することを要旨とする。
【0031】請求項9に記載の定着ローラの成形方法は、金属材料を基体とする円筒管の軸線方向に沿う中間領域の直径がその左右領域の直径よりも序々に小径となって括れるように絞り加工を施した上で、前記円筒管の表面側を周方向に沿って凹陥させることによって前記円筒管の内表面に周回凸部を形成すると共に、該周回凸部を前記円筒管の軸線方向に沿って設定された通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分けた偶数個所若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分けた奇数個所形成した後、前記円筒管の表面側を切削して凹陥部分を除去して軸線方向に沿う中心が括れた薄肉金属管からなるローラ芯金を形成することを要旨とする。
【0032】請求項10に記載の定着ローラの成形方法は、前記円筒管の表面側を凹陥させる工具の先端若しくは周端の幅が前記周回凸部の幅に対して1/3〜1/1倍であることを要旨とする。
【0033】このような請求項8乃至請求項10に記載の発明によれば、成形工程を煩雑にすることなく容易にローラ芯金の加工を行うことができる。
【0034】
【発明の実施の形態】次に、本発明の定着ローラの実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0035】(実施の形態1)図1乃至図10は、本発明の定着ローラの実施の形態1を示す。
【0036】図1において、10は加熱定着方式の定着装置、11は定着ローラ、12は加圧ローラ、13は図示を略す支持枠体等に定着ローラ11を回転可能に支持する軸受、14は図示を略す駆動源からの回転駆動を受けて定着ローラ11を回転させる従動ギヤ、15は定着ローラ11の軸線上に設けられた加熱源、16は定着ローラ11の外表面温度を検出する温度センサー、17は加圧ローラ12を定着ローラ11に向けて付勢する付勢手段である。
【0037】定着ローラ11は、金属材料を基体とするローラ芯金18と、ローラ芯金18の外表面に設けられた離型層19とを備えている。
【0038】ローラ芯金18の内周面には、記録体Sの通紙領域Lに対して定着ローラ11の軸線方向に通紙領域L以下の範囲で左右に均等振り分けられた周回凸部18aが一体に形成されている。
【0039】具体的には、ローラ芯金18の概略形状は、マンガン系アルミニウム合金を基体として形成されており、外径40mm、長さ380mm、肉厚0.4mmである。
【0040】この実施の形態においては、マンガン系アルミニウム合金を住友軽金属株式会社製の商品名“CM10”材を用いている。このマンガン系アルミニウム合金は、高温域での耐クリープ特性に富んだ材料であり、ローラ芯金18の強度を向上することが可能となっている。
【0041】周回凸部18aは、定着ローラ11に対する通紙領域Lが320mm程度である場合(一般的な領域)、図示例では、このローラ芯金18の中央(通紙領域L=200mmの中央)と、その中央から図示左右に均等に振り分けて9本形成している。
【0042】この周回凸部18aの断面形状は、図2(B)に示すように、半円形状を呈しており、ローラ芯金18の内周面からの突出量Hが0.6mm、幅Wが2mm〜3mmに設定されている。なお、周回凸部18aの断面形状は、図2(C)に示す矩形状のもの、図2(D)に示す山型(台形)状のものなど、半円形状に限定されるものではない。
【0043】ところで、この周回凸部18aを形成するにあたって、従来ではその断面形状及び配置等には有効な設定手法が無く、断片的な比較実験により行うしかなく現実的でないという問題があった。
【0044】これに対して、本実施の形態では実際の複写機等の仕様に合致した断面形状および配置を容易に設定することが可能となっている。具体的には、実際の複写機等の仕様である複写速度(1分間当たりの複写、印刷枚数)および使用するトナ−sの溶融温度、熱源15として使用されるハロゲンヒータ等の発熱性能等によって必要ニップ幅、ローラ芯金18の仕様を設定している。
【0045】より具体的には、トナー定着に必要な温度まで定着ローラ11を昇温させる際に要する時間(立上り時間)に対応する昇温速度Vを導き、この昇温速度Vからローラ芯金18の熱容量(=体積x比熱)から立上り時間を満足するローラ芯金18の肉厚tを計算する。
【0046】図3は、ローラ芯金18の相当肉厚tの検討結果を示す。ここで、トナーsの溶融温度(すなわち定着温度)は180℃、室温(24℃)から昇温完了迄の時間(立上り時間)を10秒とした。また、熱源15としてのハロゲンヒータの熱量Qは1200W、ヒータ効率を61%とした(縦軸を温度Tm[℃]、横軸を時間T[sec]とした)。
【0047】尚、ヒータ効率を61%とした根拠は、ローラ芯金18の発熱効率を85%、熱吸収効率を80%、熱放射損失を10%(効率90%)とした場合、0.85x0.80x0.90=0.612となることに基づく。
【0048】この昇温速度V(=15.60[℃/sec])をもとにローラ芯金18の材質のもつ材料特性値から相当肉厚tを導いた結果を図4に示す。この図4のグラフ図では、縦軸を昇温速度[℃/sec]、横軸を肉厚[mm]とし、一般的に用いられている鉄系材料(図面上の測定点を黒塗りの□で示した線分)およびアルミニウム合金(図面上の測定点を◆で示した線分)の材料特性を比較したものであり、その各材料特性値を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】この結果、鉄系材料の場合では相当肉厚t=0.29mm、アルミニウム合金の場合では相当肉厚t=0.43mmとなる。しかしながら、この相当肉厚tでは定着プロセスに必要なニップ幅を確保することができない。これはローラ芯金18の相当肉厚tが薄肉となったために剛性が低下し、上述した反りや潰れ等のローラ芯金18の変形によって、加圧ローラ12との接触面であるニップ幅が小さくなるためである。なお、実際には、ローラ芯金18の変形は、その回転中心軸の中心線のたわみ(反り)と断面方向のつぶれの合成からなる。
【0051】従って、これらの変形量を2つの成分に分けて(変形=たわみ十つぶれ)としてそれぞれの変形量を材料カ学的な見地から考えると表2のようになる。この表2では、前述の相当肉厚tの時と同様に、材料特性値を示したものである。
【0052】
【表2】

【0053】これらの各変形の計算モデルを図5に示す。尚、図5(A)はたわみに関する計算モデル、図5(B)は潰れに関する計算モデルである。また、図6はアルミ二ウム合金におけるローラ芯金18の変形の分解(図面上の測定点を黒塗りの□で示した線分をたわみ成分、図面上の測定点を▲で示した線分をつぶれ成分とした。)モデル(縦軸を変軽量[mm]、横軸を相当肉厚t[mm]とした。)である。
【0054】この図6に示すように、ローラ芯金18の相当肉厚t=1.00mm付近を境界として2つの成分が変化していることが判る。
【0055】そこで、本発明における課題を達成するには、上述した薄肉領域での成分比率が問題となる。ローラ芯金18の変形は、薄肉芯金とした(相当肉厚t=1.0mm以下)の場合、“断面方向のつぶれ”が大半を占める。そこで、この“断面方向つぶれ”変形に対して、ローラ芯金18の内周面に周回凸部18aを設けることとなる。
【0056】この“断面方向のつぶれ”について、周回凸部18aを設けることによる補強効果を図7に示す。なお、周回凸部18aの間隔を10mmとして、この領域について、相当肉厚t=0.30mm(図面上の測定点を◆で示した線分)、相当肉厚t=0.35mm(図面上の測定点を黒塗りの□で示した線分)、相当肉厚t=0.40mm(図面上の測定点を▲で示した線分)、相当肉厚t=o.45mm(図面上の測定点をxで示した線分)で検討(縦軸をつぶれ量[mm]、横軸を周回凸部18aの突出量H[mm])した。
【0057】この結果、周回凸部18aを設けることで補強効果が得られる。尚、周回凸部18aの突出量Hが大きいほど補強効果を得ることができるが、周回凸部18aを設けること自体でローラ芯金18の全体の熱容量が増加してしまうため、定着ローラ11の立上り時間は遅くなる。
【0058】そこで、周回凸部18aの突出量H、ローラ芯金18の軸線方向に沿って配置する本数の合計から熱容量を再検討することで、所望の仕様を設定することができる。
【0059】図9は、周回凸部18aの仕様本数の検討結果示す。図9は、縦軸を昇温速度[℃/sec]、横軸を相当肉厚t[mm]とした補強効果と熱容量との関係を示すグラフ図で、周回凸部18aを無し(図面上の測定点を黒塗りの□で示した線分)、周回凸部18aを4本(図面上の測定点を◆で示した線分)、周回凸部18aを9本(図面上の測定点を▲で示した線分)、周回凸部18aを14本(図面上の測定点を●で示した線分)で検討した。
【0060】この結果、通紙領域L(=320mm)に対して、均等振り分けで配置する周回凸部18aの本数は、相当肉厚t=0.43と同等の昇温速度を得ることができる仕様としては、周回凸部18aが14本ならば相当肉厚t=0.38mm以下、周回凸部18aが4本ならば相当肉厚t=0.42mm以下となる。
【0061】そこで、肉厚公差を考慮した場合、これらの中央値を採用して、相当肉厚t=0.40mm、周回凸部18aの突出量H=0.6mm、配置本数9本とすることが好ましい。
【0062】また、この際の周回凸部18aの間隔は、各々の周回凸部18aが持つ熱容量と周回凸部18aの無い近傍部からの伝熱供給より適正化が図られるが、本実施の形態においては、周回凸部18aの幅Wが約2mm〜3mmに対して、隣接する周回凸部18aとの間隔を10mm以上とした。
【0063】隣接する周回凸部18aの間隔が狭い場合には近傍部からの伝熱供給が少なくなる結果、温度差が生じて立上り温度を低減してしまうことを考慮し、周回凸部18aと隣接する間隔との関係は周回凸部18aの幅Wの3倍以上とすることが好ましい。このような評価結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】次に、ローラ芯金18の形成方法を図9及び図10に基づいて説明する。
【0066】先ず、図9(A)に示すように、マンガン系アルミニウム合金を基体として両端に軸受13に支持される支持部18bを形成した筒体18’を形成する。
【0067】この際、筒体18’の肉厚は、形成後のローラ芯金18の相当肉厚t並びに周回凹部18aの突出量Hを考慮し、少なくとも、これら相当肉厚tと突出量Hとを加算した厚さ以上とされる。
【0068】次に、図9(B)に示すように、筒体18’をNC旋盤に固定した状態で、このNC旋盤の刃物台固定の絞り工具7(ローラエ具)を回転させつつ、絞り工具7を筒体18’の外周面に押接する。
【0069】この際の絞り工具7による筒体18’ヘの押接位置は周回凸部18aの位置と一致する外周面であり、これにより、筒体18’の外周面が凹陥されると同時に筒体18’の内周面に周回凸部18aが突出形成される。また、同様の絞り加工(スピニング加工)作業を筒体18’の軸線方向所定複数位置(周回凸部18aの配置本数分)繰り返して行う。
【0070】この絞り加工では、筒体18’の肉厚を1.5mmとし、押接による凹陥深さを0.8mmとすることで周回凸部18aの突出量Hが所定の0.6mmとなった。この時の絞り工具7の主軸回転数は500rpmで、押接時の押込み速度をφ0.2mm/revとし、絞り工具7にはローラ状の工具をシャンクに設けた軸受によって回転機構を有するものを用いた。
【0071】また、周回凸部18aを形成するための(筒体18’を凹陥させるための)ローラ工具7の先端7aの形状は、図10(A)に示すような形状とするのが望ましい。これは、所望の周回凸部18aの断面形状に形成するために必要で、先端7aの幅wは周回凹部18aの幅Wに対して1/3〜1/1倍である。
【0072】そして、この関係を満たすことで適正な断面形状を得ることが可能となる。また、図10(B)に示すように、突出量Hに対して突出量hが1.0〜1.5倍となるように段差部7bから突出させることによって筒体18’ヘの押込み量を抑制することができ、且つ、押込み時の“振れ”を防止することもできるので円周方向に均一な周回凸部18aを形成することができる。
【0073】この状態から、図9(C)に示すように、切削バイト(ダイヤモンドバイト)8を軸線方向に沿って移動させることによって筒体18’の外周面を数回切削して凹陥を除去し、図9(D)に示すように、所定の相当肉厚tのローラ芯金18に加工する。
【0074】このように、筒体18’からローラ芯金18を形成するにあたり、ローラエ具として汎用的な加工機であるNC旋盤を用いて加工することができるので、専用機を導入する必要が無く、また、繰り返し精度についても安定した製造が可能である。
【0075】(実施の形態2)図11及び図12は、本発明の定着ローラの実施の形態2を示す。なお、この実施の形態2において、図1で示した実施の形態1の定着ローラ11以外の構成は同一であるため、その図示(一部援用開示)及び説明は省略する。
【0076】図11において、定着ローラ21は、定着ローラ11と同様に、金属材料を基体とするローラ芯金28と、ローラ芯金28の外表面に設けられた離型層29とを備えている。
【0077】ローラ芯金28の内周面には、記録体Sの通紙領域Lに対して定着ローラ21の軸線方向に通紙領域L以下の範囲で左右に均等振り分けられた周回凸部28aが一体に形成されている。
【0078】具体的には、ローラ芯金28の概略形状は、アルミニウム合金からなる薄肉円筒管で、外径40mm、長さ370mm、肉厚t=0.4mmである。
【0079】また、定着ローラの通紙領域Lは、通常340mm程度であり、このローラ芯金28の内周面に左右に均等振り分けで中央部400mm範囲に9本(図面上では中央部mmの範囲に3本)の周回凸部28aを形成している。
【0080】この周回凸部28aの断面形状は、ローラ芯金28の内周面からの突出量Hが0.6mm、幅Wが2.0mmである。
【0081】尚、周回凸部28aを形成するにあたっての肉厚t、突出量H、幅W、間隔等の条件は実施の形態1と同様である。
【0082】その一方、この実施の形態2では、ローラ芯金28の変形が薄肉芯金(肉厚t=1.0mm以下)であることに起因する“断面方向のつぶれ”が大半を占めていることから、この“断面方向のつぶれ”変形に対する周回凸部28aの設置の他、“たわみ(反り)”変形についての対策も施している。
【0083】即ち、ローラ芯金28の形状を、その中間領域に括れ部28cを形成すると共に、肉厚tを均一としている。
【0084】次に、ローラ芯金28の形成方法を図12に基づいて説明する。
【0085】先ず、図12(A)に示すように、アルミニウム合金を基体とする筒体28’を形成する。この際、筒体28’の肉厚は、形成後のローラ芯金28の相当肉厚t並びに周回凹部28aの突出量Hを考慮し、少なくとも、これら相当肉厚tと突出量Hとを加算した厚さ以上とされる。
【0086】次に、図12(B)に示すように、筒体28’をNC旋盤に固定した状態で、このNC旋盤の刃物台固定の絞り工具7(ローラエ具)を回転させつつ、絞り工具7を筒体28’の外周面に押接して軸線方向中央に向う程小径となるように括れを形成する。
【0087】さらにこの状態から、図12(C)に示すように、絞り工具7を筒体28’の外周面に押接して外周面を凹陥する。
【0088】この際の絞り工具7による筒体28’ヘの押接位置は周回凸部28aの位置と一致する外周面であり、これにより、筒体28’の外周面が凹陥されると同時に筒体28’の内周面に周回凸部28aが突出形成される。また、同様の絞り加工(スピニング加工)作業を筒体28’の軸線方向所定複数位置(周回凸部28aの配置本数分)繰り返して行う。
【0089】この絞り加工では、筒体28’の肉厚を1.5mmとし、押接による凹陥深さを0.8mmとすることで周回凸部28aの突出量Hが所定の0.6mmとなった。この時の絞り工具7の主軸回転数は500rpmで、押接時の押込み速度をφ0.2mm/revとし、絞り工具7にはローラ状の工具をシャンクに設けた軸受によって回転機構を有するものを用いた。
【0090】次に、図12(D)に示すように、切削バイト(ダイヤモンドバイト)8を軸線方向に沿って移動させることによって筒体28’の外周面を数回切削して凹陥を除去し、図12(E)に示すように、所定の相当肉厚tのローラ芯金28に加工する。
【0091】このように、ローラ芯金18.28の周回凸部18a,28aの突出量Hと口ーラ芯金18の肉厚tとの関係が明白となったこと、並びに、周回凸部18a,28aの形状(突出量H及び幅W)とローラ芯金18,28全体の熱容量との関係が明白となったことから、多種多様な記録紙サイズやマシンスペックに対応することができる。
【0092】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載の定着ローラにあっては、ローラ芯金の内周面に、軸線方向に沿って設定された通紙領域に対して該通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分け配置された偶数若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分け配置された奇数の周回凸部が一体に形成されていることにより、加圧ローラからの付勢に伴うローラ芯金の反りや潰れを考慮した上で、熱容量を小さくして立ち上がり時間を短縮した剛性の高いローラ芯金を容易に加工することができる。
【0093】請求項2に記載の定着ローラは、前記ローラ芯金の基体となる金属材料がマンガン系アルミニウム合金である。
【0094】請求項3に記載の定着ローラは、前記周回凸部が前記通紙領域の1/4〜1/1の範囲内で振り分けられている。
【0095】請求項4に記載の定着ローラは、前記周回凸部の前記ローラ芯金の内周面からの突出量が前記ローラ芯金の肉厚の0.5〜3.0倍である。
【0096】請求項5に記載の定着ローラは、前記周回凸部の軸線方向に沿う幅が前記ローラ芯金の肉厚の5.0〜7.5倍である。
【0097】請求項6に記載の定着ローラは、前記周回凸部が軸線方向に沿う幅に対して3倍以上の間隔で配置されている。
【0098】このような請求項2乃至請求項6に記載の定着ローラによれば、ローラ芯金の潰れや捩れ、熱容量、剛性の各種条件を厳密に設定することができる。
【0099】請求項7に記載の定着ローラは、前記ローラ芯金の中間領域には軸線方向に沿う中間領域の直径がその左右領域の直径よりも序々に小径となる括れ部が形成されていると共に、前記薄肉金属板の前記周回凸部を除いた全体の肉厚が均一であることにより、トナー定着工程でのニップ部分に記録体を通紙する際に“シワ”や“ヨリ”が記録体に発生しないよう中間領域に括れを形成したローラ芯金への対応も可能となる。
【0100】請求項8に記載の定着ローラの成形方法は、金属材料を基体とする円筒管の表面側を周方向に沿って凹陥させることによって前記円筒管の内表面に周回凸部を形成すると共に、該周回凸部を前記円筒管の軸線方向に沿って設定された通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分けた偶数個所若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分けた奇数個所形成した後、前記円筒管の表面側を切削して凹陥部分を除去して表面均一な薄肉金属管からなるローラ芯金を形成する。
【0101】請求項9に記載の定着ローラの成形方法は、金属材料を基体とする円筒管の軸線方向に沿う中間領域の直径がその左右領域の直径よりも序々に小径となって括れるように絞り加工を施した上で、前記円筒管の表面側を周方向に沿って凹陥させることによって前記円筒管の内表面に周回凸部を形成すると共に、該周回凸部を前記円筒管の軸線方向に沿って設定された通紙領域以下の領域内で前記通紙領域の中心から左右均等に振り分けた偶数個所若しくは前記通紙領域の中心とその左右均等に振り分けた奇数個所形成した後、前記円筒管の表面側を切削して凹陥部分を除去して軸線方向に沿う中心が括れた薄肉金属管からなるローラ芯金を形成する。
【0102】請求項10に記載の定着ローラの成形方法は、前記円筒管の表面側を凹陥させる工具の先端若しくは周端の幅が前記周回凸部の幅に対して1/3〜1/1倍である。
【0103】このような請求項8乃至請求項10に記載の発明によれば、成形工程を煩雑にすることなく容易にローラ芯金の加工を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
【出願日】 平成12年4月25日(2000.4.25)
【代理人】 【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
【公開番号】 特開2001−305897(P2001−305897A)
【公開日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願番号】 特願2000−124402(P2000−124402)