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【発明の名称】 トナーおよびその製造方法並びに画像形成方法
【発明者】 【氏名】松本 好康

【氏名】石川 美知昭

【氏名】大村 健

【要約】 【課題】着色粒子中における樹脂の存在形態に特徴を有し、従来のものよりも転写特性および定着特性などに優れたトナーおよびその製造方法を提供すること。

【解決手段】本発明のトナーは、分子量の異なる2種以上のバインダー樹脂および着色剤を含有する着色粒子から構成され、当該着色粒子中において、前記2種以上のバインダー樹脂のそれぞれが相を形成し、当該バインダー樹脂による相分離係数が3〜20であり、前記着色剤が、前記2種以上のバインダー樹脂の何れかにより形成された相に偏在していることを特徴とする。本発明の製造方法は、乾式混合、溶融混練および粉砕分級の各工程を含み、前記溶融混練工程において、低分子量樹脂Bの粘性率に対する高分子量樹脂Aの粘性率の比(η’A/η’B)が5〜100となる温度条件下に溶融混練することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 分子量の異なる2種以上のバインダー樹脂および着色剤を含有する着色粒子から構成され、当該着色粒子中において、前記2種以上のバインダー樹脂のそれぞれが相を形成し、当該2種以上のバインダー樹脂による相分離係数が3〜20であり、前記着色剤が、前記2種以上のバインダー樹脂の何れかにより形成された相に偏在していることを特徴とするトナー。
【請求項2】 分子量の異なる2種以上のバインダー樹脂、着色剤および離型剤を含有する着色粒子から構成され、当該着色粒子中において、前記2種以上のバインダー樹脂のそれぞれが相を形成し、当該2種以上のバインダー樹脂による相分離係数が3〜20であり、前記着色剤が、前記2種以上のバインダー樹脂の何れかにより形成された相に偏在し、前記離型剤は、前記着色粒子中においてドメイン構造を有し、当該離型剤のドメインの10個数%以上は、バインダー樹脂により形成された相の界面に存在していることを特徴とするトナー。
【請求項3】 離型剤のドメインが球形状または回転楕円体状であることを特徴とする請求項2に記載のトナー。
【請求項4】 着色剤としてカーボンブラックが含有されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のトナー。
【請求項5】 カーボンブラックの含有割合がバインダー樹脂100質量部に対して5〜30質量部であることを特徴とする請求項4に記載のトナー。
【請求項6】 体積平均粒径が5〜20μmの着色粒子から構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のトナー。
【請求項7】 分子量の異なる樹脂Aおよび樹脂B(但し、樹脂Aの分子量>樹脂Bの分子量)および着色剤を含有する着色粒子から構成され、当該着色粒子中において、前記樹脂Aおよび前記樹脂Bが、それぞれ、相PAおよび相PBを形成し、前記樹脂Aおよび前記樹脂Bによる相分離係数が3〜20であり、前記着色剤が、前記相PAおよび前記相PBの何れかに偏在し、T(℃)における樹脂Aの弾性率および粘性率をそれぞれG’A(T)およびη’A(T)とし、T(℃)における樹脂Bの弾性率および粘性率をそれぞれG’B(T)およびη’B(T)とするとき、下記式〔1〕〜〔4〕に示す条件を満足することを特徴とするトナー。
〔1〕103 <G’A(120)/G’B(120)<106〔2〕 10<η’A(120)/η’B(120)<103〔3〕 5<G’A(200)/G’B(200)<105〔4〕 1<η’A(200)/η’B(200)<103【請求項8】 着色剤が相PA中に偏在していることを特徴とする請求項7に記載のトナー。
【請求項9】 樹脂Aおよび樹脂Bの少なくとも一方がポリエステルであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のトナー。
【請求項10】 樹脂Bの粘性率に対する樹脂Aの粘性率の比(η’A/η’B)が5〜100となる温度条件下に溶融混練されて得られることを特徴とする請求項7乃至請求項9の何れかに記載のトナー。
【請求項11】 非接触式定着装置による定着工程に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れかに記載のトナー。
【請求項12】 請求項7乃至請求項11の何れかに記載のトナーを製造するための方法において、乾式混合、溶融混練および粉砕分級の各工程を含み、前記溶融混練工程において、樹脂Bの粘性率に対する樹脂Aの粘性率の比(η’A/η’B)が5〜100となる温度条件下に溶融混練することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項13】 請求項1乃至請求項10の何れかに記載のトナーを非接触式定着装置により定着させる工程を含むことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトナーおよびその製造方法並びに画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真法に用いられるトナーとして、バインダー樹脂、着色剤および離型剤並びに各種添加剤を溶融混練、粉砕分級してなる着色粒子から構成されるものが知られている。ここに、バインダー樹脂としては、トナーに対する要求性能、特に定着特性を向上させる観点から分子量の異なる2種類以上の樹脂が併用され、これらの樹脂を混合する方法としては、重合段階で混合する方法、単独の重合で得られた樹脂を乾式混合する方法などが挙げられる。
【0003】最近において、かかるトナーに対して定着特性の更なる向上が望まれている。具体的には、熱ローラ定着装置などの接触式定着装置による定着工程に供されるトナーにあっては、最低定着温度を上昇させることなく、ホットオフセットを発生させないことが望まれている。また、フラッシュ定着装置などの非接触式定着装置による定着工程に供されるトナーにあっては、画像濃度の低下などの原因となるボイドを発生させないことが望まれている。さらに、トナーには、転写特性の更なる向上(高い転写率)も望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。本発明の第1の目的は、着色粒子中における樹脂の存在形態に特徴を有し、従来のものよりも転写特性および定着特性に優れたトナーを提供することにある。本発明の第2の目的は、着色粒子中における樹脂の存在形態に特徴を有し、転写特性および定着特性に優れたトナーを確実に製造することができる方法を提供することにある。本発明の第3の目的は、転写率が高くて画像欠陥のない良好な定着画像を形成することができる画像形成方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、着色粒子中におけるバインダー樹脂の存在形態として、分子量の異なる樹脂を相分離させることによって優れた特性が発現されることを見出し、さらに、かかる相分離構造を形成するための制御方法(トナーの製造方法)を見出し、かかる知見に基いて本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明のトナーは、分子量の異なる2種以上のバインダー樹脂および着色剤を含有する着色粒子から構成され、当該着色粒子中において、前記2種以上のバインダー樹脂のそれぞれが相を形成し、当該2種以上のバインダー樹脂による相分離係数が3〜20であり、前記着色剤が、前記2種以上のバインダー樹脂の何れかにより形成された相に偏在していることを特徴とする。
【0007】本発明のトナーは、分子量の異なる2種以上のバインダー樹脂、着色剤および離型剤を含有する着色粒子から構成され、当該着色粒子中において、前記2種以上のバインダー樹脂のそれぞれが相を形成し、当該2種以上のバインダー樹脂による相分離係数が3〜20であり、前記着色剤が、前記2種以上のバインダー樹脂の何れかにより形成された相に偏在し、前記離型剤は、前記着色粒子中においてドメイン構造を有し、当該離型剤のドメインの10個数%以上は、バインダー樹脂により形成された相の界面に存在していることを特徴とする。
【0008】本発明のトナーにあっては、前記離型剤のドメインが球形状または回転楕円体状であることが好ましい。また、前記着色剤としてカーボンブラックが含有されていることが好ましく、当該カーボンブラックの含有割合がバインダー樹脂100質量部に対して5〜30質量部であることが好ましい。また、体積平均粒径が5〜20μmの着色粒子から構成されているが好ましい。
【0009】本発明のトナーは、分子量の異なる樹脂Aおよび樹脂B(但し、樹脂Aの分子量>樹脂Bの分子量)および着色剤を含有する着色粒子から構成され、当該着色粒子中において、前記樹脂Aおよび前記樹脂Bが、それぞれ、相PAおよび相PBを形成し、前記樹脂Aおよび前記樹脂Bによる相分離係数が3〜20であり、前記着色剤が、前記相PAおよび前記相PBの何れかに偏在し、T(℃)における樹脂Aの弾性率および粘性率をそれぞれG’A(T)およびη’A(T)とし、T(℃)における樹脂Bの弾性率および粘性率をそれぞれG’B(T)およびη’B(T)とするとき、下記式〔1〕〜〔4〕に示す条件を満足することを特徴とする。
【0010】
【数1】
〔1〕103 <G’A(120)/G’B(120)<106〔2〕 10<η’A(120)/η’B(120)<103〔3〕 5<G’A(200)/G’B(200)<105〔4〕 1<η’A(200)/η’B(200)<103【0011】本発明のトナーにあっては、前記着色剤が相PA中に偏在していることが好ましい。また、前記樹脂Aおよび前記樹脂Bの少なくとも一方がポリエステルであることが好ましい。また、前記樹脂Bの粘性率に対する前記樹脂Aの粘性率の比(η’A/η’B)が5〜100となる温度条件下に溶融混練されて得られることが好ましい。さらに、非接触式定着装置による定着工程に用いられることが好ましい。
【0012】本発明の製造方法は、乾式混合、溶融混練および粉砕分級の各工程を含み、前記溶融混練工程において、前記樹脂Bの粘性率に対する前記樹脂Aの粘性率の比(η’A/η’B)が5〜100となる温度条件下に溶融混練することを特徴とする。
【0013】本発明の画像形成方法は、本発明のトナーを非接触式定着装置により定着させる工程を含むことを特徴とする。
【0014】
【作用】分子量の異なる2種以上のバインダー樹脂のそれぞれが相を形成して存在する相分離構造の着色粒子から構成されるトナーによれば、高分子量の樹脂(樹脂A)による好的な特性と、低分子量の樹脂(樹脂B)による好的な特性とが、互いに影響を受けることなく確実に発現される。これにより、トナーの特性を向上させるための配合設計なども容易に行うことができる。そして、相分離構造の着色粒子によれば、高分子量樹脂と低分子量樹脂とが相溶している構造の着色粒子よりも、優れた定着特性および転写特性(高い転写率)を発現することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
<トナー>本発明のトナーは、これを構成する着色粒子中において、分子量の異なる2種以上のバインダー樹脂のそれぞれが相を形成して存在している。以下、代表的な態様として、高分子量の樹脂Aと、低分子量の樹脂Bとが相を形成している場合について説明する。
【0016】〔1〕バインダー樹脂の存在形態(相分離構造):本発明のトナーを構成する着色粒子中において、前記樹脂Aおよび前記樹脂Bが、それぞれ、相PAおよび相PBを形成している。このような相分離構造の着色粒子から構成されるトナーによれば、高分子量の樹脂Aによる好的な特性(例えば、耐オフセット性・耐ボイド性)と、低分子量の樹脂Bによる好的な特性(例えば低温定着性)とを確実に発現することができる。
【0017】〔2〕相分離係数:トナーを構成する着色粒子において、バインダー樹脂(樹脂Aおよび樹脂B)による相分離係数は、通常3〜20とされ、好ましくは5〜20とされる。ここに、「バインダー樹脂による相分離係数」とは、下記■〜■のようにして測定される係数をいう。
【0018】■ 着色粒子を、ミクロトームで約0.2μmの厚さにスライスカットする。ここに、着色粒子が微小でカットすることが困難な場合には、当該着色粒子をこれと相溶性のない接着剤に分散させた後、この接着剤を硬化させて得られる硬化物をスライスカットすればよい。
■ 着色粒子のカット面をTEMにより拡大して写真撮影する。ここに、図1は、着色粒子のカット面を模式的に示し、Tは着色粒子、PAは高分子量の樹脂Aによる相、PBは低分子量の樹脂Bによる相を示している。
■ 着色粒子のカット面を通過する任意の直線を写真上に引き、当該直線と交わる同種の樹脂からなる相(相PAおよび相PBの一方)の数を数える。図1に示す着色粒子Tにあっては、直線Lと交わる相PAの数を数えると4となる。この操作を500個の着色粒子について実施し、その算術平均値を求めてこれを相分離係数とする。なお、バインダー樹脂以外の物質(例えば離型剤、荷電制御剤などの内添剤)による相はカウントしない。このような物質の相は、その形状によってバインダー樹脂の相と容易に区別することができるが、バインダー樹脂の相と判別しにくい場合には、当該内添剤などを含有させないで作製した試料と対比させることにより判別することができる。
【0019】バインダー樹脂(樹脂Aおよび樹脂B)による相分離係数が3〜20であることにより、高分子量の樹脂(樹脂A)による耐オフセット性および耐ボイド性と、低分子量の樹脂(樹脂B)による転写材との親和性(溶融接着性)とがバランスよく発揮される。相分離係数が3未満である場合には、分散径(相の幅)が過大(例えば10μmを超える)となり、着色粒子間において定着特性および電気的特性(転写特性)にバラツキを生じる。他方、相分離係数が20を超える場合には、分散径(相の幅)が過小(例えば0.5μm未満)となり、低分子量の樹脂Bの物理的な動きが抑制されて、転写材との接着性が低下し、十分な定着特性を発揮することができない。
【0020】バインダー樹脂による相の分散径(相の幅)としては、0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは0.6〜5.0μmとされる。
【0021】樹脂Aの分子量としては、重量平均分子量で12万〜100万であることが好ましく、更に好ましくは15万〜65万とされる。樹脂Bの分子量としては、重量平均分子量で0.3万〜10万であることが好ましく、更に好ましくは0.5万〜8万とされる。樹脂Aの重量平均分子量が12万未満であると、相分離がしにくくなり、相分離が不十分となるため、本発明の効果を発揮しにくくなる。樹脂Aの重量平均分子量が100万を超える場合には、樹脂Aと樹脂Bの分子量差が大きくなるため相分離は良好になるものの、樹脂A自体の定着性付与能が大幅に低下するため、定着性が低下する問題を生じやすい。樹脂Bの重量平均分子量が0.3万未満であると、分子量が小さいため、保存性に問題を発生しやすくなる。樹脂Bの重量平均分子量が10万を超えると、樹脂Bの機能である低温定着性を発揮しにくくなり、定着性が低下しやすくなる。ここに、重量平均分子量はGPCにて測定されたスチレン換算分子量を示す。GPCによる樹脂の分子量測定方法は、THFを溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定である。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1cc加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて攪拌を行い、十分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1ccの流速で流し、1mg/ccの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H,G3000H,G4000H,G5000H,G6000H,G7000H,TSK guard columnの組合せなどを挙げることができる。また、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0022】〔3〕バインダー樹脂:本発明のトナーを構成するバインダー樹脂としては、2価以上の酸成分(カルボン酸)と、2価以上のアルコール成分を縮合重合させて得られるポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂を使用することで、樹脂自体が保有する極性の効果により、紙等の媒体への定着性を向上させることができるとともに、いわゆる結晶性成分的機能を付与することができ、オフセット抑制と定着性の向上を図ることができる。
【0023】かかるポリエステル樹脂を得るための酸成分としては、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セパシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、インドデシルコハク酸、インドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸およびn−オクナニルコハク酸などの2価のカルボン酸およびこれらの酸無水物;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ヒロメリット酸、エソポール三量体酸などの3価のカルボン酸およびこれらの酸無水物を例示することができる。
【0024】また、ポリエステル樹脂を得るためのアルコール成分としては、例えばポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のエーテル化ビスフェノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールAなどの2価のアルコール;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジベンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンダトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどの2価のアルコールを例示することができる。上記の酸成分およびアルコール成分の種類および配合割合を適宜調整することにより、バインダー樹脂の酸価および水酸基価を所望の範囲に制御することができる。
【0025】〔4〕着色剤:本発明のトナーを構成する着色剤は、着色粒子中において、バインダー樹脂の何れか(樹脂Aまたは樹脂B)により形成された相(相PAまたは相PB)に偏在されており、特に、高分子量の樹脂(樹脂A)により形成された相(相PA)に偏在されていることが好ましい。ここに、ある相に着色剤が「偏在」されている状態とは、全着色剤の70〜100質量%が当該相に分散含有されていることをいうものとする。
【0026】本発明のトナーを構成する着色剤は、溶融時における良好な増粘性の付与効果(耐オフセット性および耐ボイド性の付与効果)および画像濃度の向上効果から、カーボンブラックであることが好ましい。ここに、カーボンブラックの含有量としては、バインダー樹脂100質量部にに対して5〜30質量部であることが好ましく、更に好ましくは6〜15質量部とされる。
【0027】バインダー樹脂の何れかにより形成された相に、カーボンブラックなどの着色剤が偏在されていることにより、着色剤が偏在された相を構成する樹脂の軟化点を上昇させることなく(定着性が損なわれることなく)、カーボンブラックによる増粘効果(耐オフセット性・耐ボイド性の向上効果)を発現させることができる。そして、一部の相のみに増粘効果が付与されることにより、トナー全体を増粘することなく、必要な部分にのみその機能を付与することができるため、良好な定着性を付与することができるとともに、オフセットやボイドの発生を抑制することができる。特に、樹脂Aに示される高分子量成分中に着色剤を添加することで、樹脂そのものの粘度を高めることなく、高分子量成分の相を増粘させることができ、定着性の低下を引き起こすことなく、耐ボイド性の向上を図ることができる。
【0028】また、カーボンブラックなどの着色剤が一定の相に偏在されていることにより、当該着色剤の偏在による低抵抗部分の間に高抵抗部分が介在される結果、着色剤の添加に伴う電気抵抗の低下の程度が緩慢となり、この結果、高濃度に着色剤を添加した場合において、これに伴う転写特性や現像特性の低下を抑制することができる。
【0029】さらに、高分子量の樹脂により形成された相に着色剤が偏在されていることにより、着色剤の再凝集が発生しにくくなり、良好な耐ボイド性を発揮することができる。
【0030】〔5〕離型剤の存在形態(ドメイン構造):本発明のトナーに含有される離型剤は、着色粒子中でドメイン構造を有し、当該離型剤のドメインの10個数%以上は、バインダー樹脂により形成された相(相PAおよび相PB)の界面に存在している。すなわち、離型剤のドメインの10個数%以上は、相PAおよび相PBの両方に接触しており、このような構造によれば、得られるトナーの転写特性を格段に向上させることができる。
【0031】離型剤のドメインの形状としては、球形状または回転楕円体状であることが好ましい。このようなドメイン形状によれば、離型剤自体の溶融析出性を均一化することができ、離型剤の効果をより発揮させることができる。
【0032】また、バインダー樹脂中に存在する離型剤の50質量%以上が低分子量の樹脂(樹脂B)中に存在することが好ましい。このような構成によれば、当該離型剤が溶融時にブリードアウトしやすくなり、定着特性の更なる向上を図ることができる。
【0033】〔6〕着色粒子の粒子径:本発明のトナーを構成する着色粒子の体積平均粒径としては5〜20μmであることが好ましく、更に好ましくは5〜15μmとされる。体積平均粒径が過小である場合には、粉体としての取扱い性が低下し、さらに相分離係数が20程度である場合などに、バインダー樹脂の相の分散径(相の幅)が過小となり、転写材との接着性が低下して十分な定着特性を発揮することができないことがある。他方、体積平均粒径が過大である場合には、良好な画質の画像を得ることが困難となり、さらに、相分離係数が3程度である場合などに、バインダー樹脂の相の分散径(相の幅)が過大となり、着色粒子間において定着特性および電気的特性(転写特性)にバラツキを生じることがある。
【0034】〔7〕バインダー樹脂の粘弾性:本発明のトナーを構成する樹脂Aおよび樹脂Bは、上記〔1〕〜〔4〕に示す粘弾性条件を満足することが好ましい。
【0035】120℃における弾性率の比〔G’A(120)/G’B(120)〕が103 以下である場合には、相分離性が悪くなり、ボイドが発生しやすくなる。他方、この比が106 以上である場合には、相分離性は良好となるが、過度な相分離構造となるため、いわゆる粉砕等の工程でトナー中の樹脂の存在が不均一になりやすく、定着性等の性能が不均一になりやすい。
【0036】120℃における粘性率の比〔η’A(120)/η’B(120)〕が10以下である場合には、相分離性が悪くなり、ボイドが発生しやすくなる。他方、この比が103 以上である場合には、相分離性は良好となるが、過度な相分離構造となるため、いわゆる粉砕等の工程でトナー中の樹脂の存在が不均一になりやすく、定着性等の性能が不均一になりやすい。
【0037】200℃における弾性率の比〔G’A(200)/G’B(200)〕が5以下である場合には、相分離性が悪くなり、ボイドが発生しやすくなる。他方、この比が105 以上である場合には、相分離性は良好となるが、過度な相分離構造となるため、いわゆる粉砕等の工程でトナー中の樹脂の存在が不均一になりやすく、定着性等の性能が不均一になりやすい。
【0038】200℃における粘性率の比〔η’A(200)/η’B(200)〕が1以下である場合には、相分離性が悪くなり、ボイドが発生しやすくなる。他方、この比が103 以上である場合には、相分離性は良好となるが、過度な相分離構造となるため、いわゆる粉砕等の工程でトナー中の樹脂の存在が不均一になりやすく、定着性等の性能が不均一になりやすい。
【0039】本発明のトナーを構成する着色粒子には、従来公知の内添剤(例えば荷電制御剤)が含有されていてもよい。また、当該着色粒子を、本発明のトナーとしてそのまま使用することもできるが、従来公知の無機微粒子や有機微粒子を外添混合してトナーを構成してもよい。
【0040】本発明のトナーは、フラッシュ定着装置などの非接触式定着装置による定着工程に好適に用いることができる。すなわち、本発明のトナーは、これを構成する着色粒子の相分離構造により、カーボンブラックなどの着色剤を高濃度に含有することができ、これにより、従来のトナーよりも高い効率でフラッシュ閃光を熱に変換することができ、優れた定着特性を発揮することができる。
【0041】本発明のトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。本発明のトナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、従来公知のコーティングキャリアを使用することができる。
【0042】<トナーの製造方法>本発明の製造方法は、■ バインダー樹脂(樹脂Aおよび樹脂B)の乾式混合工程、■ 溶融混練工程、■ 粉砕分級工程を含む。本発明においては、上記溶融混練工程における温度条件を調整して、樹脂Bの粘性率に対する樹脂Aの粘性率の比(η’A/η’B)を5〜100の範囲内で制御する点に特徴を有する。このような溶融混練工程を含む製造方法によれば、樹脂Aおよび樹脂Bによる相分離係数が3〜20である相分離構造の着色粒子を確実に製造することができる。粘性率の比(η’A/η’B)が5未満であるような温度条件で溶融混練する場合には、粘度差が少ないため、混練時に相溶しやすくなり、ドメイン構造をとりにくくなる。他方、粘性率の比(η’A/η’B)が100を超えるような温度条件で溶融混練する場合には、粘度差が過度に大きくなるために、混練時の相分離が過度に起こりやすくなり、粉砕等の工程でトナー中の樹脂組成にバラツキが生じやすくなる。
【0043】本発明の製造方法に使用される樹脂Aおよび樹脂Bとしては、それぞれが保有する定着性能と耐オフセット性能の観点から、下記に示す弾性率G’(単位:dyn/cm2 )および粘性率η’(単位:poise)を有するものであることが好ましい。
【0044】〔樹脂A〕
・500≦G’A(200)≦100,000・100≦η’A(200)≦5,000・5×103 ≦G’A(120)≦1×108・5×103 ≦η’A(120)≦2×106【0045】〔樹脂B〕
・1≦G’B(200)≦20,000・1≦η’B(200)≦1,000・50≦G’B(120)≦1×105・20≦η’B(120)≦1×104【0046】ここに、粘弾性(粘性率および弾性率)は、例えば、測定装置として「MR−500」((株)レオロジ製)を使用し、下記の条件で測定することができる。
【0047】・パラレルプレート(φ10)
・サンプル形状:φ10の円筒状・周波数:1Hz・測定温度範囲:−50℃〜210℃・動的測定法使用(正弦波)
【0048】<画像形成方法>本発明の画像形成方法は、本発明のトナーを非接触式定着装置により定着させる工程を含むことを特徴とする。
【0049】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔樹脂の製造例〕温度計、攪拌器、還流器および窒素導入装置を備えた反応容器に、下記表1に示す単量体(3価のカルボン酸を除く単量体)を仕込み、この系にジブチル錫オキサイド20〜40mgを添加して200℃で反応させた後、3価のカルボン酸を添加し、表1に示す軟化点となるまで反応を継続することにより、樹脂A(樹脂A1〜A3)および樹脂B(樹脂B1〜B2)を得た。このようにして得られた樹脂の各々について、200℃における弾性率〔G’(200)〕および粘性率〔η’(200)〕、120℃における弾性率〔G’(120)〕および粘性率〔η’(120)〕を測定した。結果を併せて表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】〔着色粒子の製造例〕下記表2に示す処方に従って、樹脂A60質量部と、樹脂B40質量部とを混合(乾式混合)し、この混合物に、下記表2に示した量のカーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)と、離型剤として「550P」(三洋化成社製)4質量部とを添加した。次いで、下記表2に示す条件(温度条件)下にこの系を溶融混練した後、粉砕・分級工程を経て着色粒子1〜4および着色粒子C1〜C7を得た。以上のようにして得られた着色粒子の各々について、体積平均粒径、樹脂の存在形態、相分離係数、着色剤の存在形態、離型剤の存在形態(相の界面に存在しているドメインの個数割合)を測定した。結果を併せて下記表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】<実施例1〜4および比較例1〜7>下記表3に従って、上記のようにして得られた着色粒子1〜4および着色粒子C1〜C7の各々に対して、疎水性シリカ微粒子「R−805」(日本アエロジル(株)製)を1質量%となる割合で添加することにより、本発明のトナー1〜4および比較用トナーC1〜C7を得た。
【0054】<実写テスト>本発明のトナー1〜4および比較用トナーC1〜C7の各々と、シリコーンコーティングキャリアとを、トナー濃度が5質量%となる割合で混合することにより、二成分系の現像剤を調製した。上記のようにして得られた現像剤の各々について、常温常湿環境下(温度20℃,相対湿度50%)で複写画像を形成する実写テストを行うことにより、転写特性および定着特性を評価し、ボイド発生の有無を確認した。結果を併せて下記表3に示す。
【0055】ここに、画像形成装置としては、電子写真複写機「7050」改造機〔コニカ(株)製〕を使用した。ここに、電子写真複写機「7050」改造機は、定着装置として、フラッシュ閃光装置を搭載したものであり、フラッシュ閃光装置の設定条件としては、コンデンサ容量が160μF、充電電圧が2050V、発光時間が1000μsecである。さらに、転写特性を評価する観点から、トナーリサイクル機構を除去し、転写残トナーの回収が可能な構成とした。
【0056】〔評価方法〕
(1)転写特性:電子写真複写機「7050」改造機に現像剤を搭載し、印字率4%の画像を連続して10000枚複写し、これにより消費されたトナーの質量(W1 )および回収された転写残トナーの質量(W2 )を測定し、比(1−(W2 /W1 ))を求めて転写率とした。この転写率が80%以上であれば、良好な転写特性を有するものといえる。
【0057】(2)定着特性:画像濃度が1.3であるベタ画像の複写画像を形成し、当該複写画像上に粘着テープ「スコッチメンディングテープ」(住友3M社製)貼付し、さらに、円筒状のおもり(直径:5cm,質量:1200g)を載置して1分間放置した。次いで、前記粘着テープを一定の速度で剥離し(剥離角≒180°)、当該粘着テープへのトナーの付着状態を観察した。評価基準としては、下記のとおりであり、(A)および(B)であれば、良好な定着特性を有するものといえる。
【0058】
(A):トナーの付着が認められない(B):僅かな付着が認められる(C):トナーの付着による文字の形状が薄く認められるが、当該文字の判読はできない。
(D):トナーの付着により、判読ができる程度に文字の形状が認められる【0059】
【表3】

【0060】
【発明の効果】本発明のトナーは、従来のものよりも転写特性および定着特性に優れている。また、本発明のトナーは、非接触式定着装置による定着工程に用いられることにより、良好な耐ボイド性を発揮することができる。本発明の製造方法によれば、着色粒子中における樹脂の存在形態に特徴を有し、転写特性および定着特性に優れたトナーを確実に製造することができる。本発明の画像形成方法によれば、転写率が高くて画像欠陥のない良好な定着画像を形成することができる。
【出願人】 【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカ株式会社
【出願日】 平成12年4月18日(2000.4.18)
【代理人】 【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
【公開番号】 特開2001−305788(P2001−305788A)
【公開日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願番号】 特願2000−116175(P2000−116175)