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【発明の名称】 ポリエステル系トナー
【発明者】 【氏名】伊藤 弘一

【氏名】清水 浩二

【氏名】岩崎 等

【氏名】杉浦 将

【要約】 【課題】静電荷像または磁気潜像の現像のための、両面印刷時に加熱定着部での非オフセット性が良好であるポリエステル系トナーを提供する。

【解決手段】メチルエチルケトン不溶分を1〜60%有し、軟化温度が195〜235℃であり、Tgが65〜72℃である架橋ポリエステル樹脂(1)を全バインダー樹脂の20〜60重量%、メチルエチルケトン不溶分を0.1〜40%有し、軟化温度が155〜190℃であり、Tgが60〜70℃である架橋ポリエステル樹脂(2)を全バインダー樹脂の10〜50重量%、および軟化温度が120℃以下であり、Tgが45〜55℃である非架橋ポリエステル樹脂(3)を全バインダー樹脂の10〜50重量%の量でブレンドして得られたバインダー樹脂を含む、軟化温度が130〜180℃であり、Tgが58〜68℃であるポリエステル系トナー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1)メチルエチルケトン不溶分を1〜60%有し、軟化温度Tend が195〜235℃であり、ガラス転移温度Tgが65〜72℃である架橋ポリエステル樹脂(1)を全バインダー樹脂の20〜60重量%、2)メチルエチルケトン不溶分を0.1〜40%有し、軟化温度Tend が155〜190℃であり、ガラス転移温度Tgが60〜70℃である架橋ポリエステル樹脂(2)を全バインダー樹脂の10〜50重量%、3)軟化温度Tend が120℃以下であり、ガラス転移温度Tgが45〜55℃である非架橋ポリエステル樹脂(3)を全バインダー樹脂の10〜50重量%の量でブレンドして得られたバインダー樹脂を含むトナーであって、軟化温度Tend が130〜180℃であり、ガラス転移温度Tgが58〜68℃であるポリエステル系トナー。
【請求項2】 メチルエチルケトン不溶分の量が、架橋ポリエステル樹脂(1)のメチルエチルケトン不溶分量≧架橋ポリエステル樹脂(2)のメチルエチルケトン不溶分量である、請求項1記載のトナー。
【請求項3】 架橋ポリエステル樹脂(1)のメチルエチルケトン不溶分の形状が多角形である、請求項1または2記載のトナー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステル系トナーに関する。本発明は、特に、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像のための乾式トナーとして有用であり、両面印刷時の2度目の印刷時に加熱定着部での非オフセット性が良好であるポリエステル系トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真印刷方法および静電荷現像方法により画像を得る方法においては、感光体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像したのち定着する。定着方式としては、現像によって得られたトナー像を、加圧および加熱されたローラーを用いるヒートローラー方式がある。これらのプロセスを問題なく通過するためには、トナーはまず安定した帯電量を保持することが必要であり、次に紙への定着性が良好である必要がある。また、装置は加熱体である定着部を有するため、装置内で温度が上昇したときにトナーがブロッキングしないことが必要である。
【0003】さらに、最近では、コピーの消費量も増し、長時間にわたり印刷を継続する傾向が強くなり、そのため帯電の安定化が必要となっており、さらに環境にも配慮して紙の消費を抑えるため両面印刷を長時間にわたり行うようになり、トナーは2度の熱履歴を受けても加熱ローラーに付着しないような性能(両面印刷時における非オフセット性)が求められるようになってきている。
【0004】トナーが加熱ローラーに付着しないようにするために、架橋したバインダー樹脂を使用する等の対策が採られているが、しかし両面印刷後の画像において強度と弾性が不十分であり、1回目に定着させた画像が加熱ローラーに付着するという問題は未解決のままである。また、定着性と環境性の観点からバインダー樹脂にはポリエステル系樹脂を使用することが望まれているが、これまでのポリエステル系樹脂を使用したトナーではこれらの問題点が解決されていないのが現状である。したがって、両面印刷時にも良好な非オフセット性を示すポリエステル系トナーが強く望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる乾式トナーとして有用であり、両面印刷時に加熱定着部での非オフセット性が良好であるポリエステル系トナーを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリエステル系トナーに関して鋭意研究し、高軟化温度の架橋バインダー樹脂および低軟化温度の非架橋バインダーを使用して検討した結果、軟化温度の異なる架橋樹脂の2種類と、軟化温度の比較的低い非架橋樹脂の1種類とをブレンドしてバインダー樹脂として用い、ある特定の熱特性を有するトナーを得ることにより、両面印刷を長時間行ってもオフセットが発生しないトナーを見出し、本発明に到達した。
【0007】すなわち、本発明は、1)メチルエチルケトン不溶分を1〜60%有し、軟化温度Tend が195〜235℃であり、ガラス転移温度Tgが65〜72℃である架橋ポリエステル樹脂(1)を全バインダー樹脂の20〜60重量%、2)メチルエチルケトン不溶分を0.1〜40%有し、軟化温度Tend が155〜190℃であり、ガラス転移温度Tgが60〜70℃である架橋ポリエステル樹脂(2)を全バインダー樹脂の10〜50重量%、3)軟化温度Tend が120℃以下であり、ガラス転移温度Tgが45〜55℃である非架橋ポリエステル樹脂(3)を全バインダー樹脂の10〜50重量%の量でブレンドして得られたバインダー樹脂を含むトナーであって、軟化温度Tend が130〜180℃であり、ガラス転移温度Tgが58〜68℃であるポリエステル系トナーを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のトナーに用いられる架橋ポリエステル樹脂(1)は、両面印刷時におけるトナーの非オフセット性を良好とするために必要な成分であり、そのメチルエチルケトン不溶分が1〜60%、軟化温度Tend が195〜235℃、ガラス転移温度Tgが65〜72 ℃である樹脂であり、その使用量は使用する全バインダー樹脂の20〜60重量%である。
【0009】架橋ポリエステル樹脂(1)がメチルエチルケトン不溶分を含まない場合には得られるトナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、逆にメチルエチルケトン不溶分が60%を超える場合にはトナーの定着性が不良となる傾向にある。特に好ましいメチルエチルケトン不溶分は5〜55%である。また、架橋ポリエステル樹脂(1)の軟化温度Tend が195℃より低い場合には得られるトナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、逆に軟化温度Tend が235℃より高い場合にはトナーの定着性が不良となる傾向にある。特に好ましい軟化温度Tend 200〜230℃である。また、ガラス転移温度Tgが65℃より低い場合にはトナーの耐久性が不良となる傾向にあり、ガラス転移温度Tgが72℃より高い場合にはトナーの定着性が不良となる傾向にある。特に好ましいガラス転移温度は66〜70℃である。さらに、架橋ポリエステル樹脂(1)の使用量が使用する全バインダー樹脂の20重量%未満である場合にはトナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、逆にこの使用量が60重量%を超える場合にはトナーの定着性が不良となる傾向にある。この樹脂の使用量は、特に好ましくは25〜55重量%である。
【0010】さらに、架橋ポリエステル樹脂(1)のメチルエチル不溶分に関しては、その量の如何によりトナーの非オフセット性をコントロールすることが可能となるが、さらに溶剤を吸収し、膨潤した形状が多角形であり、そのいずれか一辺が1mm以上となる架橋ポリエステル樹脂(1)を用いると、トナーの非オフセット性がさらに良好となる。
【0011】本発明のトナーに用いられる架橋ポリエステル樹脂(2)は、架橋ポリエステル樹脂(1)と非架橋ポリエステル樹脂(3)との混合性を良好とするために必要な成分であり、そのメチルエチルケトン不溶分が0.1〜40%、軟化温度Tend が155〜190℃、ガラス転移温度Tgが60〜70℃である樹脂であり、その使用量は使用する全バインダー樹脂の10〜50重量%である。
【0012】架橋ポリエステル樹脂(2)がメチルエチルケトン不溶分を含まない場合には架橋ポリエステル樹脂(1)との混和性が悪く、得られるトナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、逆にメチルエチルケトン不溶分が40%を超える場合には非架橋ポリエステル樹脂(3)との混和性が悪く、得られるトナーの定着性が不良となる傾向にある。特に好ましいメチルエチルケトン不溶分は0.5〜38重量%である。また、架橋ポリエステル樹脂(2)の軟化温度Tend が155℃より低い場合には架橋ポリエステル樹脂(1)との混和性が悪く、トナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、逆に軟化温度Tend が190℃より高い場合には非架橋ポリエステル樹脂(3)との混合性が悪く、得られるトナーの定着性が不良となる傾向にある。特に好ましい軟化温度Tend は160〜185℃である。また、架橋ポリエステル樹脂(2)のガラス転移温度Tgが60℃より低い場合には得られるトナーの耐久性が不良となる傾向にあり、ガラス転移温度Tgが70℃より高い場合には得られるトナーの定着性が不良となる傾向にある。特に好ましいガラス転移温度は62〜68℃である。さらに、架橋ポリエステル樹脂(2)の使用量が使用する全バインダー樹脂の10重量%未満である場合には架橋ポリエステル樹脂(1)との混和性が悪く、トナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、逆にこの使用量が50重量%を超える場合には非架橋ポリエステル樹脂(3)との混和性が悪く、定着性が不良となる傾向にある。この樹脂の使用量は、特に好ましくは20〜40重量%である。
【0013】さらに、架橋ポリエステル樹脂(1)と架橋ポリエステル樹脂(2)のメチルエチルケトン不溶分に関しては、メチルエチルケトン不溶分量の関係が、架橋ポリエステル樹脂(1)のメチルエチルケトン不溶分量≧架橋ポリエステル樹脂(2)のメチルエチルケトン不溶分量であるのが好ましく、架橋ポリエステル樹脂(1)と架橋ポリエステル樹脂(2)がかかる関係を満たす場合には、得られるトナーの非オフセット性がさらに良好となる。
【0014】本発明のトナーに用いられる非架橋ポリエステル樹脂(3)は、メチルエチルケトン不溶分を含まない樹脂であって、得られるトナーの定着性を良好とするために必要な成分であり、その軟化温度Tend は120℃以下であり、ガラス転移温度Tgは45〜55℃であり、またその使用量は使用する全バインダー樹脂の10〜50重量%である。
【0015】非架橋ポリエステル樹脂(3)の軟化温度Tend が120℃より高い場合にはトナーの定着性が不良となる傾向にあり、特に好ましい軟化温度Tend は110℃以下である。また、ガラス転移温度Tgが45℃より低い場合にはトナーの耐久性が不良となる傾向にあり、逆にガラス転移温度Tgが55℃より高い場合にはトナーの定着性が不良となる傾向にある。特に好ましいガラス転移温度Tgは48〜53℃である。また、非架橋ポリエステル樹脂(3)の使用量が使用する全バインダー樹脂の10重量%未満である場合にはトナーの定着性が不良となる傾向にあり、逆にこの使用量が50重量%を超える場合にはトナーの非オフセット性が不良となる傾向にある。この樹脂の使用量は、特に好ましくは15〜45重量%である。
【0016】本発明のトナーに使用される架橋ポリエステル樹脂(1)および(2)は架橋剤を用いて得られるものであり、3価以上の多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分を使用して得られる樹脂や、イソシアネート等の成分を使用して得られる樹脂がある。かかる架橋剤として有用な3価以上の多価カルボ酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボンン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸およびそれらの酸無水物などを挙げることができる。また、3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトラオール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタトリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4- ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いられてもよく、複数組み合わせて用いられてもよい。
【0017】本発明のトナーにおいて、ポリエステル樹脂(1)〜(3)に用いられる2価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、及びそれらのモノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステルなどやそれらの酸無水物が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いられてもよく、複数組み合わせて用いられてもよい。
【0018】本発明のトナーにおいて、ポリエステル樹脂(1)〜(3)のアルコール成分には芳香族ジオール成分が含まれているのが好ましく、ポリエステル樹脂(1)〜(3)の全てに芳香族ジオール成分が含まれているのが特に好ましい。かかる芳香族ジオール成分としては、例えば、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.4)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。芳香族ジオールは得られるポリエステル樹脂のガラス転移温度を上げる効果があるため、得られるトナーの耐ブロッキング性が良好となる。特に、2.1≦n≦8であるポリオキシプロピレン(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2.0≦n≦3.0であるポリオキシエチレン(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0019】本発明のトナーにおいて、ポリエステル樹脂(1)〜(3)に用いられる芳香族ジオール成分以外のジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0020】本発明におけるポリエステル樹脂(1)〜(3)は、通常のポリエステル樹脂の製造方法である、エステル化反応またはエステル交換反応および縮合反応を含む方法により得られるものであり、反応には通常ポリエステル重合触媒が用いられる。かかる重合触媒としては、例えば、三酸化アンチモン、ジブチル錫オキサイド、テトラブチルチタネート、酢酸亜鉛等の金属化合物が挙げられる。
【0021】特に架橋ポリエステル樹脂(1)を製造する方法として、使用するモノマーを重合触媒を用いてエステル化反応またはエステル交換反応させ、次いで縮重合反応後、反応温度とほぼ等しい樹脂温度である200〜300℃から100℃まで約10分以上かけて徐々に冷却し、かつ、冷却工程で圧力を樹脂に加えないよう大気圧で冷却する方法を用いるのが好ましい。かかる方法により、軟化温度Tend が高くなり、かつ、メチルエチルケトン不溶分の形状が多角形になり、そのいずれか一辺が1mm以上となるため、トナーの非オフセット性が良好となる。逆に急激に冷却すると、軟化温度Tend が低く、ゲル形状が小さくなるため、トナーの非オフセット性が不良となる。
【0022】本発明のトナーは、上述した樹脂に加えて、トナーの電荷を正または負極性に制御する荷電制御剤、オレフィン系樹脂等の離型剤、着色剤、シリカ等の流動改質剤等を用いて得られる。本発明のトナーには、帯電量の調整および帯電安定性の付与を目的として荷電制御剤が使用される。かかる荷電制御剤は、また、トナーを正極性または負極性に制御する。トナーを負極性にする荷電制御剤としては、例えば、含金属モノアゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、4級アンモニウム塩、ニトロイミダーゾール誘導体等を挙げることができ、これらのうちでは含金属モノアゾ染料が好ましい。これらは複数組み合わせて用いられてもよい。これらの負極性を示す荷電制御剤の使用量は、全トナー中に0. 1〜3重量%、特に0. 4〜2. 5重量%であるのが好ましい。トナーを正極性にする荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体を挙げることができ、これらのうちではニグロシン染料が好ましい。これらは複数組み合わせて用いられてもよい。これらの正の極性を示す荷電制御剤の使用量は、全トナー中に0. 1〜5. 0重量%、特に0. 4〜4. 5重量%であるのが好ましい。さらに、上述した正極性の荷電制御剤と負極性の荷電制御剤とを複数組み合わせて使用してもよい。
【0023】本発明のトナーには、ヒートローラーとの離型性を良好とし、非オフセット性を改善する目的で離型剤が使用される。かかる離型剤としては、例えば、ポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、部分ケン化脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、パラフィンワックス、アミドワックス、多価アルコールエステル、シリコーンワニス、脂肪族フロオロカーボン、シリコンオイル等が挙げられ、任意に1種以上で使用すればよい。これらの離型剤の使用量は、トナー中に8重量%以下、特に6重量%以下であるのが好ましい。
【0024】本発明のトナーには、また、着色剤が用いられる。着色剤としては、例えば、有彩色の染料またはカーボンブラック、カーボンブラックの表面を樹脂で被覆しているグラフト化カーボンブラックのような顔料がある。本発明においては、着色剤として公知のものが全て使用可能であり、特に限定されるものではない。着色剤の使用量は、トナー中に0. 1〜10重量%、特に0. 5〜8重量%であるのが好ましい。
【0025】本発明のトナーには、さらに、必要に応じて流動性向上剤等が用いられる。流動性向上剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素等を挙げることができ、なかでもシリカの微粉末が特に好ましい。これら流動性向上剤の使用量は、得られるトナー微粉末に対して0. 05〜0. 7重量%、特に0. 1〜0. 6重量%であるのが好ましい。
【0026】本発明のトナーを得るための混練工程においては、用いられる樹脂の軟化温度を基準にして混練を行うことが重要であり、それにより樹脂が溶融し、添加剤などの分散が安定して得られる。本発明のトナーは、前述した架橋ポリエステル樹脂(1)、架橋ポリエステル樹脂(2)および非架橋ポリエステル樹脂(3)を用い、これとその他の必要な成分とをブレンドすることによって得られるトナーであって、最終的に軟化温度Tend が130〜180℃であり、ガラス転移温度Tgが58〜68℃であるポリエステル系トナーである。軟化温度Tend が130℃より低いトナーは非オフセット性が不良となり、逆に軟化温度Tend が180℃より高いトナーは定着性が不良となる。特に好ましい軟化温度Tend は140〜170℃である。また、ガラス転移温度Tgが58℃より低いトナーは耐久性が不良となり、逆にガラス転移温度Tgが68℃より高いトナーは定着性が不良となる。特に好ましいガラス転移温度Tgは60〜66℃である。
【0027】また、本発明のトナーの平均粒径は、5〜15μmであるのが好ましく、特に好ましくは6〜13μmである。この範囲の粒径を有するトナーは、画像安定性に優れる。本発明において、樹脂およびトナーの軟化温度Tend は、島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用いて1mmφ×1mmのノズル、荷重98N(10kgf)、昇温速度6℃/分の等速昇温下で測定した時に、サンプル2.0gが全量流出したときの温度を言う。ガラス転移温度Tgは、示差走差熱量計を用いて、昇温速度5℃/分で測定した時のチャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を言う。また、酸価は、KOH溶液による滴定法により測定した値である。さらに、メチルエチルケトン不溶分の測定は、サンプル0.5gを50gのメチルエチルケトンに溶解し、室温で72時間溶解した後に、重量を測定したセライトを敷き詰めたろ過フィルターでろ過し、ろ過したフィルターごと不溶分を乾燥し、その重量を測定してろ過後のサンプルの重量を求め、全サンプルの重量との比から不溶分(%)を算出することにより行った。また、不溶分の形状は上記メチルエチルケトン不溶分の測定に際してろ過したときの不溶分を観察して確認し、それが多角形になっていればその1辺の長さを測定した。
【0028】
【実施例】以下に実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の実施の態様がこれらに限定されるものではない。また、実施例に示した樹脂の評価基準は以下によった。
評価基準1)非オフセット性の評価法ローラー速度100mm/sに設定した温度可変のプリンターを用い、両面印刷をして非オフセット性の評価を行った。また、2回目の定着時に定着ローラーにトナーが移行するときの温度をオフセット発生温度と定め、以下の基準により非オフセット性を判定した。
【0029】
オフセット発生温度230℃以上の優れたトナー: ◎ オフセット発生温度220℃の良好なトナー: ○ オフセット発生温度200℃の使用可能なトナー: △ オフセット発生温度200℃未満の使用不可のトナー: ×2)定着性の評価非オフセット性の評価と同じ条件で1回目の印刷での定着性の評価を行い、反射濃度系で測定した定着率が80%を超える温度を最低定着温度として、以下の基準により定着性を判定した。
【0030】
最低定着温度130℃の優れたトナー: ◎ 最低定着温度140℃の良好なトナー: ○ 最低定着温度150℃の使用可能なトナー: △ 最低定着温度160℃の使用不可のトナー: ×3)耐久性上記の評価方法で用いたプリンターを用い、定着温度180℃で印刷して、耐久性試験を行った。なお、試験では、トナーがカートリッジ内に滞在するようにしながらトナーの固着の程度を観察し、トナーが固着する印刷枚数を基準にして耐久性を評価した。
【0031】
印刷枚数10000枚以上でも固着しない優れたトナー: ◎ 印刷枚数8000枚以上10000枚未満で固着する良好なトナー: ○ 印刷枚数5000枚以上8000枚未満で固着する実用可能なトナー:△ 印刷枚数が5000枚未満で固着する使用不可のトナー: ×架橋ポリエステル樹脂(1)
表1に示す仕込み組成に従って、エチレングリコール成分、ポリオキシプロピレン(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル) プロパン成分(表中ではジオールAと記載)、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、トリメリット酸成分を、および全酸成分に対して500ppmの三酸化アンチモンを、蒸留塔を備えた反応容器に投入した。次いで、撹拌回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が260℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出し、エステル化反応が開始してから約8時間後、水の留出がなくなり、反応を終えた。そして、反応容器内の真空度が1. 0mmHgまで約40分かけて減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った後、反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、所望の軟化温度を示すトルクになるまで実施した。そして、所定のトルクを示した時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止し、反応物を取り出し、表1に示す冷却時間で大気圧下で徐々に冷却した。このようにして樹脂A1〜F1を得た。また、樹脂G1に関しては、表1に示す冷却時間で圧縮急冷してこれを得た。
【0032】このようにして得られた樹脂A1〜G1を液体ガスクロマトグラフィーにより組成分析した結果、表2に示す樹脂組成となっていた。また、これらの樹脂の特性値を表2に併せて示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】架橋ポリエステル樹脂(2)
表3に示す仕込み組成に従って、エチレングリコール成分、ポリオキシプロピレン(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル) プロパン成分(表中ではジオールAと記載)、ポリオキシエチレン(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル) プロパン成分(表中ではジオールBと記載)、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、トリメリット酸成分を、および全酸成分に対して500ppmの三酸化アンチモンを、蒸留塔を備えた反応容器に投入した。次いで、撹拌回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が260℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出し、エステル化反応が開始してから約8時間後、水の留出がなくなり、反応を終えた。そして、反応容器内の真空度が1. 0mmHgまで約40分かけて減圧し、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った後、反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度を上昇させ、所望の軟化温度を示すトルクになるまで実施した。そして、所定のトルクを示した時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止し、反応物を取り出し、表3に示す冷却時間で圧縮急冷して樹脂A2〜G2を得た。
【0036】このようにして得られた樹脂A2〜G2を液体ガスクロマトグラフィーにより組成分析した結果、表4に示す樹脂組成となっていた。また、これらの樹脂の特性値を表4に併せて示す。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】非架橋ポリエステル樹脂(3 )
表5に示す仕込み組成に従って、ポリオキシプロピレン(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル) プロパン成分(表中ではジオールAと記載)、ポリオキシエチレン(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン成分(表中ではジオールBと記載)、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分を、および全酸成分に対して500ppmの三酸化アンチモンを、蒸留塔を備えた反応容器に投入した。次いで、撹拌回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が260℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出し、エステル化反応が開始してから約8時間後、水の留出がなくなり、反応を終えた。そして、反応容器内の真空度が1. 0mmHgまで約40分かけて減圧し、反応系からさらに水を留出させながら縮合反応を行った後、反応とともに反応系の粘度が上昇し、所望の軟化温度を示すまで実施した。そして、反応系を常圧に戻し、加熱を停止し、反応物を取り出し、冷却時間3分で圧縮急冷して樹脂A3〜G3を得た。
【0040】このようにして得られた樹脂A3〜G3を液体ガスクロマトグラフィーにより組成分析した結果、表6に示す樹脂組成となっていた。また、これらの樹脂の特性値を表6に併せて示す。
【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】実施例表1〜6に示したポリエステル樹脂を表7に示す組み合わせと量(重量%)で用いて、それぞれトナー化した。トナーの配合は、全樹脂量を92重量部とし、これにカーボンブラック(三菱化学社製#44)5重量部、ワックス(三洋化成社製660P)3重量部および負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製S−34)1重量部を加え、ヘンシェルミキサーで30分間混合して行った。次いで、得られた混合物を2軸混練機で溶融混練した。溶融混練は、内温を180℃に設定して行った。混練後冷却してトナー塊を得、ジェットミル微粉砕機で微粉砕し、分級機でトナーの粒径を整え、粒径を7μmとした。得られた微粉末に対して、0. 25重量%のシリカ(日本アエロジル社製R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合して付着させ、最終的にトナー1〜7を得た。得られたトナーの熱的特性を表4に示す。
【0044】次に、得られたトナーに対して前述の評価方法を用いてトナー評価を行った。これらのトナーの評価結果を表7に示す。
【0045】
【表7】

【0046】表7からわかるように、両面印刷時の非オフセット性に関しては、トナー3〜5は優れており、トナー2および6は良好であり、トナー1および7はやや劣っていたが実用可能なレベルであった。定着性に関しては、トナー1〜3およびトナー7は優れており、トナー4は良好であり、トナー5および6はやや劣っていたが実用可能なレベルであった。また、耐久性に関しては、トナー3〜6は優れており、トナー2は良好であり、トナー1および7はやや劣っていたが実用可能なレベルであった。
【0047】比較例表1〜6に示したポリエステル樹脂を表8に示す組み合わせと量(重量%)で用い、実施例と同一の条件下に処理してトナー8〜12を得た。得られたトナーの熱的特性を表8に示す。また、実施例と同一の条件で得られたトナーの特性評価を行った。その結果を表8に示す。
【0048】
【表8】

【0049】表8からわかるように、トナー8は、非オフセット性および耐久性に優れていたが、定着性が悪く、使用不可であった。トナー9は、定着性が優れていたが、非オフセット性と耐久性が悪く、使用不可であった。トナー10は、定着性と耐久性性に優れていたが、非オフセット性が悪く、使用不可であった。トナー11は、定着性に優れ、耐久性にはやや劣っているものの実用可能なレベルであったが、非オフセット性が悪く、使用不可であった。トナー12は、非オフセット性と耐久性が優れていたが、定着性が悪く、使用不可であった。
【0050】
【発明の効果】以上に述べてきたように、本発明に係るポリエステル系トナーは、定着性と耐久性が良好であり、かつ、両面印刷時の非オフセット性にも優れており、静電記録法や静電印刷法等における静電荷像や磁気潜像の現像のための乾式トナーとして極めて有用である。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成13年2月14日(2001.2.14)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外2名)
【公開番号】 特開2001−305787(P2001−305787A)
【公開日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願番号】 特願2001−37492(P2001−37492)