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【発明の名称】 正帯電用電子写真感光体、その製造方法および画像形成装置
【発明者】 【氏名】宮川 修宏

【氏名】鴨志田 伸一

【要約】 【課題】本発明は、導電性弾性基体からなる正帯電用電子写真感光体にあって、帯電電位が大きく、かつ光減衰残留電位が低く光感度に優れる正帯電用電子写真感光体、その製造方法及び画像形成装置の提供を課題とする。

【解決手段】本発明の正帯電用電子写真感光体は、導電性弾性基体上に、導電性熱可塑性樹脂層、該導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を順次積層した電子写真感光体において、該導電性弾性基体が導電性熱可塑性樹脂層形成溶液に対する耐溶剤性を有すると共に、導電性熱可塑性樹脂層が有機感光層形成溶液に対する耐溶剤性を有するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性弾性基体上に、導電性熱可塑性樹脂層、該導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を順次積層した電子写真感光体において、該導電性弾性基体が導電性熱可塑性樹脂層形成溶液に対する耐溶剤性を有すると共に、導電性熱可塑性樹脂層が有機感光層形成溶液に対する耐溶剤性を有するものであることを特徴とする正帯電用電子写真感光体。
【請求項2】 導電性熱可塑性樹脂層がポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の正帯電用電子写真感光体。
【請求項3】 導電性弾性基体が、体積抵抗で107 Ω・cm以下のエチレン−プロピレン−ジエン系ゴムであることを特徴とする請求項1、または請求項2記載の正帯電用電子写真感光体。
【請求項4】 導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数をφUCL 、有機感光層の仕事関数φOpc とした時、φUCL >φOpc の関係を有するものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つ記載の正帯電用電子写真感光体。
【請求項5】 導電性弾性基体の仕事関数をφR とした時、φUCL >φR >φOpc 、φR >φUCL >φOpc 、φUCL >φOpc >φR のいずれか1つ記載の関係を有するものであることを特徴とする請求項4記載の正帯電用電子写真感光体。
【請求項6】 導電性弾性基体上に、該導電性弾性基体が耐溶剤性を示す導電性熱可塑性樹脂層形成溶液を使用して導電性熱可塑性樹脂層を形成すると共に、形成された導電性熱可塑性樹脂層が耐溶剤性を示す有機感光層形成溶液を使用して有機感光層を塗布形成することを特徴とする正帯電用電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】 導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数をφUCL 、有機感光層の仕事関数φOpc とした時、φUCL >φOpc の関係を有するものとすることを特徴とする請求項6記載の正帯電用電子写真感光体の製造方法。
【請求項8】 感光体上に形成したトナー像を中間転写体上に転写し、該中間転写体上のトナー像を被転写材上に転写、定着する画像形成装置において、前記感光体が、導電性弾性基体上に、導電性熱可塑性樹脂層、該導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を順次積層し、該導電性弾性基体が導電性熱可塑性樹脂層形成溶液に対する耐溶剤性を有すると共に、導電性熱可塑性樹脂層が有機感光層形成溶液に対する耐溶剤性を有するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】 導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数をφUCL 、有機感光層の仕事関数φOpc とした時、φUCL >φOpc の関係を有する正帯電用電子写真感光体であることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、正帯電用電子写真感光体、その製造方法および画像形成装置に関し、高い帯電電位が得られると共に、光減衰残留電位が低く光感度の向上を可能とする正帯電用電子写真感光体、その製造方法および画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、画像形成装置として、感光体ドラムを画像形成装置の本体に回転可能に支持し、画像形成動作時には感光体ドラムの感光層に静電潜像を形成した後、この潜像を現像装置の一成分系現像剤によって可視像化する方式がある。このような方式においては、感光体ドラムが剛体から成る場合、現像ローラ上に極く薄く、例えばトナー粒子1個の厚さのトナー層を設け、潜像を形成した感光体ドラム表面と接触させるか或いは微小な間隔をあけて対置させる必要がある。しかしながら、感光体ドラムを高精度に製作することは困難であり、感光体ドラムの周面に僅かな歪みがあったり、製造上のバラツキがあると、ドラムと現像ローラ間に大きな隙間ができることによる画質低下や、圧接する場合にはドラム表面を傷つける等の問題がある。そのため、感光体をベルト化したり、また、中間転写ベルトを採用する等の技術も開発されているが、ベルトを支持するために少なくとも2つのローラを必要とし、複写機を小型化するにあたり障害となる。そのため、弾性ローラ基体上に有機感光層を塗布形成して感光体ドラムとし、感光体ドラムの表面を弾性変形可能とする方式の開発が進められている。
【0003】このような方式に関して、特公平4−69383号公報には、弾性ローラ基体として、ゴム等の弾性ローラ基体上に感光体支持層をアルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の薄膜のスリーブを嵌合して形成したり、また、導電性ゴムを弾性ローラ基体や感光体支持層として形成して、ドラムに外圧が作用した部分のみは変形するが他の部分は変形しないように構成し、また、外力が取り除かれたときには完全に元のスリーブ状態に復帰することを可能とすることにより、感光体ドラムが剛体から成る場合における問題を解決できるとする。
【0004】また、電子写真感光体として、感光体表面を負極性に帯電させることにより画像出力を得る負帯電用電子写真感光体があるが、感光体表面の帯電にむらが生じやすく画像のむらとなったり、また、帯電を与えるコロトロンに負極性の高電圧を印加するために多量のオゾンが発生し、環境問題や電子写真装置内の周辺部品への悪影響を来す等の問題を引き起こすという問題がある。
【0005】そのため、正帯電用電子写真感光体の開発が進められているが、導電性基板材料にアルニウムを使用すると帯電特性が劣り、実用化に不向きであるという問題があり、特許第2855448号には、導電性基材材料が仕事関数4.2eV以上のカーボン系導電性熱可塑性樹脂組成物からなり、電荷発生材が有機顔料とした構成とすることにより、仕事関数の小さいアルミニウムの場合と比較して感光体表面の正電荷が導電性基板に注入されやすく、帯電特性に優れる感光体とできることを開示する。また、特開昭63−70258号公報には、正帯電用電子写真感光体において、導電性基板からの電荷注入による帯電電位低下を解決するために、導電性基板と有機感光層との間に障壁を形成するように仕事関数の大きい例えばパラジウム、金等の金属層を設けることにより、感光層への電荷注入を阻止し、帯電電位を大きく、暗減衰を小さくできることを開示している。
【0006】本発明者等は、これらの正帯電用電子写真感光体を検討した結果、後者のごとく層構成部材としてパラジウム、金等の金属層を設けることは実用的ではなく、また、前者にあっては、有機感光層を直接導電性熱可塑性樹脂基体上に塗布するため、有機感光層形成用塗布液における溶媒により導電性基材表面層が溶かし出され、均一な接触表面を得ることが困難で帯電電位や光感度に影響を与えることが判明した。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、正帯電用電子写真感光体にあって、帯電電位が大きく、かつ光減衰残留電位が低く光感度に優れる正帯電用電子写真感光体、その製造方法及び画像形成装置の提供を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の正帯電用電子写真感光体は、導電性弾性基体上に、導電性熱可塑性樹脂層、該導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を順次積層した電子写真感光体において、該導電性弾性基体が導電性熱可塑性樹脂層形成溶液に対する耐溶剤性を有すると共に、導電性熱可塑性樹脂層が有機感光層形成溶液に対する耐溶剤性を有するものであることを特徴とする。
【0009】導電性熱可塑性樹脂層がポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。
【0010】導電性弾性基体が、体積抵抗で107 Ω・cm以下のエチレン−プロピレン−ジエン系ゴムであることを特徴とする。
【0011】導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数をφUCL 、有機感光層の仕事関数φOpc とした時、φUCL >φOpc の関係を有するものであることを特徴とする。
【0012】導電性弾性基体の仕事関数をφR とした時、φUCL >φR >φOpc 、φR >φUCL >φOpc 、φUCL >φOpc >φR のいずれか1つ記載の関係を有するものであることを特徴とする。
【0013】本発明の正帯電用電子写真感光体の製造方法は、導電性弾性基体上に、該導電性弾性基体が耐溶剤性を示す導電性熱可塑性樹脂層形成溶液を使用して導電性熱可塑性樹脂層を形成すると共に、形成された導電性熱可塑性樹脂層が耐溶剤性を示す有機感光層形成溶液を使用して有機感光層を塗布形成することを特徴とする。
【0014】本発明の画像形成装置は、感光体上に形成したトナー像を中間転写体上に転写し、該中間転写体上のトナー像を被転写材上に転写、定着する画像形成装置において、前記感光体が、導電性弾性基体上に、導電性熱可塑性樹脂層、該導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を順次積層し、該導電性弾性基体が導電性熱可塑性樹脂層形成溶液に対する耐溶剤性を有すると共に、導電性熱可塑性樹脂層が有機感光層形成溶液に対する耐溶剤性を有するものであることを特徴とする。
【0015】上記の導電性熱可塑性樹脂層がポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。
【0016】上記の導電性弾性基体が、体積抵抗で107 Ω・cm以下のエチレン−プロピレン−ジエン系ゴムであることを特徴とする。
【0017】上記の導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数をφUCL 、有機感光層の仕事関数φOpc とした時、φUCL >φOpc の関係を有するものであることを特徴とする。
【0018】上記の導電性弾性基体の仕事関数をφR とした時、φUCL >φR >φOpc 、φR >φUCL >φOpc 、φUCL >φOpc >φR のいずれか1つ記載の関係を有するものであることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の正帯電用電子写真感光体の断面を説明するための図であり、図中1はパイプ、2はブッシュ、3は導電性弾性体層、4は導電性熱可塑性樹脂層、5は有機感光層である。
【0020】本発明の正帯電用電子写真感光体について説明する。図1におけるパイプ1は金属製スリーブで、アルミまたは鉄等の素材が使用され、例えば鉄パイプ(STKM、φ28.6mm、厚み1.2mm)が例示される。また、ブッシュ2は、電子写真感光体を画像形成装置の本体に回転可能に支持するための部材であり、快削鋼(SUM)等の素材が使用され、パイプ1内に圧入や摩擦溶接等により挿入され、固定される。
【0021】導電性弾性体層3は、体積抵抗で107 Ω・cm以下、好ましくは5×106Ω・cm以下の導電性弾性体であり、カーボンブラック、金属粉等を練り込んだシリコンゴム、EPDMゴム、CRゴム、NBRゴム、SBRゴム、IIRゴム等の非発泡素材や発泡素材が例示されるが、120℃以上の耐熱性があること、ゴム硬度がJIS K6301Aで10度〜70度、好ましくは30度〜70度の範囲であること、加工性に優れること、耐溶剤性に優れること等の観点からはシリコンゴム、EPDMゴム、CRゴムが好ましく、特にEPDMゴムが好ましい。
【0022】導電性EPDMゴムの仕事関数は、その共重合成分であるプロピレン量、ジエン量及び分子量を変化させ、他の配合剤(加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸化防止剤、フィラー、オイル、導電成分)の含有量を一定としても変化し、また、ゴムにおける共重合成分の組成比や分子量を一定とし、他の配合剤の添加量によっても変化するので、所望の仕事関数が得られるよう、適宜、EPDMゴム自体の組成、配合剤成分を変化させるとよい。
【0023】導電性弾性体層3は、押出成形で厚み3mm〜15mm、好ましくは4mm〜10mmの筒状に成形され、ブッシュ2を圧入したパイプ1上に圧入される。この場合、パイプ1の外径を導電性弾性体層3の内径より大きくすることにより導電性弾性体層3との密着性を上げることができ、接着剤を使用しなくとも固着を可能とできる。導電性弾性体層3の外表面は、切削や研磨加工等により表面粗さ(Ra)を0.2μm〜2μm程度、表面粗度(Rmax)を10μm以下とされる。
【0024】次に、導電性弾性体層3の外表面には、導電性熱可塑性樹脂層4が設けられる。導電性弾性体層は、導電性熱可塑性樹脂層を形成するに際して使用される溶媒に対して耐溶剤性とするものであり、また、形成された導電性熱可塑性樹脂層は、後述する有機感光層塗布液の溶媒に対して、通常の熱可塑性樹脂層に比して耐溶剤性とするものである。
【0025】導電性熱可塑性樹脂層を形成するには、熱可塑性樹脂、導電性物質および導電性弾性体層に対して溶解性を有しない溶媒等からなる導電性熱可塑性樹脂組成物を導電性弾性体層上に塗布形成して得られる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、アセチルセルローズ、メチル繊維素、エチル繊維素、ベンジル繊維素、ヒドロキシエチルセルローズ等が例示されるが、導電性熱可塑性樹脂層は、導電性弾性体層との接着性に優れると共に可撓性に優れるものが好ましく、導電性弾性体としてEPDMゴムを使用する場合、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。
【0026】ポリアミド樹脂としては、(株)鉛市製の「FR−101」、「FR−104」、「FR−105」、「FR−301」、東レ(株)製の「CM4000」、「CM8000」等が例示される。また、ポリビニルブチラール樹脂としては、積水化学工業(株)製の「エスレックB」の「BL−1」、「BL−2」、「BL−S」、「BM−1」等が挙げられる。また、ウレタン樹脂としては、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂等が例示される。
【0027】導電性物質としては、少量の添加量で組成物に必要な導電性を付与できるものが好ましく、導電性カーボン、導電性シリカ、導電性チタン等が例示される。導電性カーボンとしては、ファーネスブラックが不純物が少なく導電性に優れており好ましく、その中で特に XCF ( Extra Conductive Furnace Black ) 、SCF (Super Conductive Furnace Black )、CF ( Conductive Furnace Black ) 、SAF( Super Abrasion Furnace Black )が好ましく、中でも窒素ガス吸着によるBET式比表面積が800m2 /g以上のものが好ましい。XCFとしてはケッチェンブラックインターナショナル社の「ケッチェンブラックEC」、Cabot社の「バルカンXC−72」等、SCFとしてはCabot社の「バルカンSC」、「バルカンP」等、Degssa社の「コーラックスL」等、CFとしてはCabot社の「バルカンC」等、Coloumbian社の「コンダクテックスSC」等、SAFとしては旭カーボン社の「旭#9」、三菱化学社の「ダイアブラックA」、Cabot社の「バルカン9」等が例示され、また、その混合物でもよい。また、これらのカーボンブラックが50%以上でカーボンブラック全体として窒素ガス吸着によるBET式比表面積が750m2 /g以上、好ましくは800m2 /g以上、特に900m2 /g以上であれば、アセチレンブラック等の他のカーボンブラックを併用してもよい。
【0028】導電性物質は、熱可塑性樹脂100重量部に対して2重量部〜35重量部、好ましくは4重量部〜25重量部の割合で添加される。
【0029】導電性熱可塑性樹脂組成物には、他に、高分子系分散剤、酸化防止剤等が適宜含有される。
【0030】溶媒としては、導電性弾性体層に対して溶解性を有しないものが好ましく、導電性弾性体層がEPDMゴムからなる場合には、水、メタノール、エタノール、ブチルアルコール、メチルエチルケトン、プロピレングリコール等が例示され、また、CRゴムからなる場合には、水、メタノール、エタノール、ブチルアルコール、プロピレングリコール等が例示され、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル等を使用して上記各成分を混合・分散して導電性熱可塑性樹脂組成物とされる。
【0031】導電性熱可塑性樹脂組成物はディップコート、リングコート、スプレーコート等により、導電性弾性基体上に塗布され、乾燥後の膜厚が3μm〜20μm、好ましくは5μm〜15μmとされ、体積抵抗で107 Ω・cm以下、好ましくは5×106 Ω・cm以下、弾性率(20℃)が3×106 dyne/cm2 〜5×108 dyne/cm2 の可撓性を有する導電性熱可塑性樹脂層とされる。
【0032】後述するように、導電性熱可塑性樹脂層上には有機感光層が設けられるが、有機感光層を塗布形成する際に使用される有機溶剤は、導電性弾性基体に対しても溶解性を有する場合が多く、感光性能や導電性弾性ローラ基体を劣化させる原因ともなるが、導電性熱可塑性樹脂層を設けることにより有機感光層における有機溶剤に対してのバリヤー層として機能させることができる。
【0033】導電性熱可塑性樹脂層4上に設けられる有機感光層5は、導電性熱可塑性樹脂層上に電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層した所謂機能分離型の積層感光体としてもよいが、長寿命の観点から単層感光体とするとよい。単層有機感光体層は、電荷発生剤、電荷輸送剤、増感剤等とバインダー、溶媒等からなる。
【0034】電荷発生剤としてはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、キノン系顔料、ペリレン系顔料、キノシアトン系顔料、インジゴ系顔料、ビスベンゾイミダゾール系顔料、キナクリドン系顔料が挙げられ、好ましくはフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料である。電荷輸送剤としてはヒドラゾン系、スチルベン系、フェニルアミン系、アリールアミン系、ジフェニルブタジエン系、オキサゾール系等の有機正孔輸送化合物が例示され、また、増感剤としては各種の電子吸引性有機化合物であって電子輸送剤としても知られているパラジフェノキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、クロラニル等が例示される。バインダーとしてはポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂が例示される。
【0035】各成分の組成比は、バインダー40重量%〜75重量%、電荷発生剤0.5重量%〜20重量%、電荷輸送剤10重量%〜50重量%、増感剤0.5重量%〜30重量%であり、好ましくはバインダー45重量%〜65重量%、電荷発生剤1重量%〜20重量%、電荷輸送剤20重量%〜40重量%、増感剤2重量%〜25重量%である。
【0036】溶媒としては、導電性熱可塑性樹脂層に対して、溶解性を有しない溶媒が好ましく、導電性熱可塑性樹脂層が、上記したポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂からなる導電性熱可塑性樹脂層塗布液から形成される場合には、トルエン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が例示される。
【0037】各成分は、ホモミキサー、ボールミル、サンドミル、アトライター、ペイントコンディショナー等の攪拌装置で粉砕・分散混合され、塗布液とされる。塗布液は、導電性熱可塑性樹脂層上にディップコート、リングコート、スプレーコート等により乾燥後の膜厚15μm〜40μm、好ましくは20μm〜35μmで塗布・乾燥されて有機感光層とされる。
【0038】本発明の正帯電用電子写真感光体を規定する仕事関数(φ)は、表面分析装置(理研計器(株)製AC−1)により測定されるものであり、本発明にあっては、導電性弾性基体の仕事関数をφR 、導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数をφUCL、有機感光層の仕事関数φOpc とした時、φUCL >φOpc の関係を有するものであり、また、φUCL >φOpc の関係にあって、さらに、φUCL >φR >φOpc 、φR >φUCL >φOpc 、φUCL φOpc >φR のいずれか1つの関係のものとすることにより、帯電電位が高く、同時に光減衰残留電位の低く光感度に優れる正帯電用電子写真感光体が得られるものである。
【0039】また、本発明の正帯電用電子写真感光体の製造方法として、導電性弾性基体上に、有機感光層形成溶液に対する耐溶剤性を有する導電性熱可塑樹脂層を形成し、次いで、該導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を塗布形成することにより、導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数をφUCL 、有機感光層の仕事関数φOpc とした時、φUCL >φOpc の関係を有するものとされるもので、φUCL >φOpc の関係にあって、さらに、φUCL >φR >φOpc 、φR >φUCL >φOpc 、φUCL >φOpc >φR のいずれか1つの関係のものとされる。
【0040】導電性弾性基体の仕事関数(φR )は、ゴム等の種類、組成により変化させることができるが、4.2eV〜5.8eV、好ましくは4.3eV〜5.6eVとするとよい。EPDMゴム(エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム)にあっては、構成モノマー成分比や分子量を変化させることにより上述の範囲の仕事関数とできる。また、導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数(φUCL )は、4.4eV〜5.7eVとし、好ましくは4.5eV〜5.5eVのものとするとよい。また、有機感光層の仕事関数(φOpc )は、4.3eV〜5.6eVであり、好ましくは4.4eV〜5.3eVである。本発明にあっては、φR の値に係わらず、φUCL >φOpc の関係とされる。
【0041】一般に、仕事関数の相違する層を積層した構造にあっては、仕事関数の小さい層から仕事関数の大きい層へと電子注入性を有する。本発明の正帯電用電子写真感光体にあっては、有機感光層表面を正帯電したとき、暗中にあっては、φUCL>φOpc とすることにより、導電性弾性基体に誘起される負電荷の注入性が抑制されて有機感光層表面の正電荷の帯電性が高められるものと考えられる。
【0042】また、露光時にあっては、基板背面側に誘起される負電荷とにより形成される電界の作用により、その詳細な理由は不明であるが、φUCL >φR >φOpc 、φR >φUCL >φOpc 、φUCL >φOpc >φR のいずれか1つの関係、すなわち、導電性弾性体層の仕事関数如何に係わらず、有機感光層内における発生キャリヤである正孔と基板背面側に誘起される負電荷の再結合が容易になり、光減衰残留電位が低く光感度の向上した電子写真感光体が得られる。
【0043】次に、本発明の画像形成装置について説明する。
【0044】図2は、現像ユニットとしてロータリー多色現像ユニットを備えた画像形成装置を示す図であり、11はロータリー多色現像ユニット、12は本発明に係る正帯電用電子写真感光体、13は中間転写媒体、14は2次転写装置、15は定着装置、16は給紙トレイ、17は排紙トレイを示す。
【0045】本発明の画像形成装置は、図2に示すように、本発明に係る正帯電用電子写真感光体12の外周に、その回転方向に沿って感光体12を一様に帯電するための帯電装置(図示せず)、感光体12上に静電潜像を形成するための露光装置(図示せず)、静電潜像を現像するためのロータリー多色現像ユニット11、感光体12上に形成された単色のトナー像を転写するための中間転写媒体13、及び1次転写装置(図示せず)などが配設される。また、中間転写媒体13の外周には、中間転写媒体13に形成された4色のフルカラー像を紙等の記録媒体上に転写するための2次転写装置14が配設される。そして、給紙トレイ16から記録媒体を2次転写装置14に搬送し、4色のフルカラー像が転写された記録媒体を排紙トレイ17へ搬送する経路にトナー像を定着するための定着装置15が配設される。ロータリー多色現像ユニット11には、Y、C、M、Kの4つの現像器が回転可能に配設され、感光体12の1回転毎に選択的に1つの現像器の現像ローラが感光体12に当接可能になっている。
【0046】そして、図示しないコンピュータからの画像形成信号が入力されると、感光体12、ロータリー多色現像ユニット11の現像ローラ、中間転写媒体13が回転駆動され、まず、感光体12の外周面が帯電装置によって一様に帯電された後、露光装置によって第1色、例えばYの画像情報に応じた選択的な露光がなされ、イエローの静電潜像が感光体12の表面に形成される。このとき、ロータリー多色現像ユニット11は、イエロー用現像器の現像ローラが感光体12に当接するように回動されて接触する。このことにより、イエローの静電潜像のトナー像が感光体12上に形成される。その後、1次転写装置には、トナーの帯電極性と逆極性の1次転写電圧が印加され、感光体12上に形成されたトナー像が中間転写媒体13上に転写される。この間、2次転写装置14は、中間転写媒体13から離間されている。上記の処理が画像形成信号の第2色目、第3色目、第4色目に対応して繰り返して実行されることにより、各画像形成信号の内容に応じた4色のトナー像が中間転写媒体13上において重ね合わされて転写される。そして、このフルカラー画像が2次転写装置14に達するタイミングで、搬送通路から2次転写装置14に記録媒体が搬送され、2次転写装置14が中間転写媒体13に押圧されるとともに2次転写電圧が印加され、中間転写媒体13上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写される。このようにして記録媒体上に転写されたフルカラートナー像は、定着装置15により加熱加圧されて定着される。
【0047】本発明に係る画像形成装置では、感光体12には、現像ローラ11、中間転写媒体13が当接状態とされる。本発明の感光体は、感光体ドラムを導電性弾性ローラ基体上に該導電性弾性ローラ基体に追随して変形可能な導電性熱可塑性樹脂層(導電性下引き層)、有機感光層を順次積層した構成とすることにより、現像ローラ11、中間転写媒体13により外圧が作用した部分のみは変形するが他の部分は変形しないように構成することができ、外力が取り除かれたときには完全に元のスリーブ状態に復帰することを可能とするものである。また、感光体ドラムと現像ローラ間に大きな隙間ができても画質低下がなく、また、圧接してもドラム表面を傷つける等の問題がない。中間転写媒体13は剛体でもまた弾性体で形成されていてもよい。
【0048】また、本発明の画像形成装置は、感光体として、導電性弾性基体上に導電性熱可塑性樹脂層、該導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を順次積層し、該導電性弾性基体の仕事関数をφR 、導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数をφUCL 、有機感光層の仕事関数φOpc とした時、φUCL >φOpc の関係を有するものであり、また、φUCL >φOpc の関係にあって、さらに、φUCL >φR >φOpc 、φR >φUCL >φOpc 、φUCL >φOpc >φR のいずれか1つの関係の正帯電用電子写真感光体とすることにより、高い帯電電位が得られると共に、光減衰残留電位が低く光感度の向上を可能とする画像形成装置とできるものである。
【0049】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0050】(実施例1)厚み2mmの導電性EPDMゴムシート{東新化学工業(株)製、体積抵抗1.3×105 Ω・cm、ゴム硬度40度}を用意した。導電性弾性体表面の仕事関数を表面分析装置(理研計器(株)製AC−1)を用い、照射光量500nWの条件下で測定したところ4.52eVであった。
【0051】次に、下記組成・ポリエーテルウレタン樹脂(旭電化工業(株)製「アデカボンタイターAM35、35%水溶液) ・・・ 100重量部・導電性カーボンブラック(Cabot社製「バルカンXC72R」)
・・・ 1.5重量部・水 ・・・ 20重量部を、ペイントコンディショナーにて3時間分散し、導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液を調製した。
【0052】この塗液に、上記の導電性EPDMゴムシートの片面をディップし塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚12μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.65eVである。
【0053】次いで、有機感光層用組成・ ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製) 21重量部・ 無金属フタロシアニン(大日本インキ化学工業(株)製) 2重量部・ ヒドラゾン化合物(アナン(株)製) 10重量部・ トルエン 180重量部をペイントコンデョショナー中で10分間分散混合し、塗布液を調製し、この塗布液を導電性熱可塑性樹脂層上にワイヤーバーにて塗布し、70℃、2時間で乾燥させ、乾燥膜厚21μmの有機感光層を積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVであった。
【0054】(実施例2)実施例1で用いた導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液に代えて、下記組成・ブチラール樹脂(積水化学工業(株)製「エスレックBL−1」)
・・・・ 12重量部・導電性カーボンブラック(Cabot社製「バルカンXC72R」)
・・・ 1重量部・エタノール ・・・ 108重量部を、ペイントコンディショナーにて3時間分散し、導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液を調製した。
【0055】この塗液に、実施例1の導電性EPDMゴムシートの片面をディップし塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚11μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は、4.89eVであった。
【0056】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVであった。
【0057】(実施例3)実施例1で用いた導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液に代えて、下記組成・ポリアミド樹脂((株)鉛市製「FR−101」)
・・・・ 20重量部・導電性カーボンブラック(Cabot社製「バルカンXC72R」)
・・・ 1重量部・エタノール ・・・ 180重量部を、ペイントコンディショナーにて3時間分散し、導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液を調製した。
【0058】この塗液に、実施例1の導電性EPDMゴムシートの片面をディップし塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚10μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.91eVであった。
【0059】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVであった。
【0060】(比較例1)実施例1における正帯電用電子写真感光体において、導電性熱可塑性樹脂層を設けないで導電性弾性体層上に有機感光層を直接設けた。導電性弾性体表面の仕事関数は4.52eV、有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0061】(比較例2)有機感光層用組成として、実施例1のヒドラゾン化合物に代えて、トリフェニルアミン化合物(旭電化工業(株)製「アクルーズTEL−8」を用いて同様に塗布液を調製し、実施例3の導電性熱可塑性樹脂層上に乾燥膜厚22μmの有機感光層を同様に積層した。有機感光層表面の仕事関数は5.14eVであった。
(帯電特性、光感度、光減衰残留電位についての評価)得られた実施例1〜3、比較例1、2の電子写真感光体について、帯電電位、光半減露光量E1/2( Lux・sec ) の測定を、川口電機製作所製の帯電特性測定装置(SP8200)を使用し、印加電圧+5.5kV、帯電時間10秒、暗減衰時間10秒、露光時間20秒の条件で、光源は白色光10 Luxの照度で測定した。なお、光半減露光量E1/2( Lux・sec ) は表面電位600Vから300Vにまで減衰させるのに必要な露光量である。なお、帯電測定試料は常温、常湿の暗中に24時間放置した後測定に供した。
【0062】得られた各電子写真感光体における導電性弾性基体(φR )、導電性熱可塑性樹脂層(φUCL )、有機感光層(φOpc )の相互の関係を、下記表1に示す。
【0063】
【表1】

また、帯電電位と光半減露光量、光減衰残留電位の測定結果を下記表2に示す。
【0064】
【表2】

表から、実施例の感光体は、φUCL >φOpc >φR の関係とすることにより、暗中にあっては高い帯電電位が得られ、また、露光時にあっては、光減衰残留電位が低く光感度の向上した電子写真感光体であることがわかる。
【0065】また、比較例1は導電性熱可塑性樹脂層を有しなく、導電性弾性体層上に有機感光層を塗布形成するものであり、帯電電位が低く、また、光感度も低く、界面が不安定であることがわかる。また、比較例2は帯電電位は高いが、光感度も悪く、光減衰残留電位も高いものであった。
【0066】(実施例4)厚み2mmの導電性EPDMゴムシート{東新化学工業(株)製、体積抵抗1.7×105 Ω・cm、ゴム硬度42度、プロピレン量42.5%、ジエン量1.5%、ムーニー粘度47}を用意した。導電性弾性体表面の仕事関数を表面分析装置(理研計器(株)製AC−1)を用い、照射光量500nWの条件下で測定したところ4.90eVであった。
【0067】次に、下記組成・ポリアミド樹脂((株)鉛市製「FR−101」)
・・・・ 20重量部・導電性カーボンブラック(Cabot社製「バルカンXC72R」)
・・・ 1重量部・エタノール ・・・ 180重量部を、ペイントコンディショナーにて3時間分散し、導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液を調製した。
【0068】この塗液に、上記の導電性EPDMゴムシートの片面をディップし塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚10μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.91eVであった。
【0069】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVであった。
【0070】(実施例5)実施例4における導電性EPDMゴムシートに代えて、厚み2mmの導電性EPDMゴムシート{東新化学工業(株)製、体積抵抗2×105 Ω・cm、ゴム硬度45度、プロピレン量37.5%、ジエン量4.5%、ムーニー粘度105}を用意した。導電性弾性体表面の仕事関数は4.80eVであった。
【0071】実施例4で記載した導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液に、この導電性EPDMゴムシートの片面をディップし塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚10μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.91eVである。
【0072】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVであった。
【0073】(実施例6)実施例4における導電性EPDMゴムシートに代えて、厚み2mmの導電性EPDMゴムシート{東新化学工業(株)製、体積抵抗3×106 Ω・cm、ゴム硬度38度、プロピレン量29.5%、ジエン量4.5%、ムーニー粘度90}を用意した。導電性弾性体表面の仕事関数は4.86eVであった。
【0074】実施例4で記載した導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液に、この導電性EPDMゴムシートの片面をディップし塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚10μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.91eVである。
【0075】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVであった。
【0076】(比較例3)実施例4における正帯電用電子写真感光体において、導電性熱可塑性樹脂層を設けないで導電性弾性体層上に有機感光層を直接設けた。導電性弾性体表面の仕事関数は4.90eV、有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0077】(比較例4)実施例5における正帯電用電子写真感光体において、導電性熱可塑性樹脂層を設けないで導電性弾性体層上に有機感光層を直接設けた。導電性弾性体表面の仕事関数は4.80eV、有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0078】(比較例5)実施例6における正帯電用電子写真感光体において、導電性熱可塑性樹脂層を設けないで導電性弾性体層上に有機感光層を直接設けた。導電性弾性体表面の仕事関数は4.86eV、有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0079】得られた実施例4〜実施例6、比較例3〜5の電子写真感光体について、帯電特性、光感度、光減衰残留電位について、実施例1同様に評価した。その結果を、下記表3、4に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

表から、実施例の感光体は、比較例の感光体に比して、導電性熱可塑性樹脂層を設け、φUCL >φR >φOpc の関係とすることにより、暗中にあっては高い帯電電位が得られ、また、露光時にあっては、光減衰残留電位が低く光感度の向上した電子写真感光体であることがわかる。
【0082】また、比較例の電子写真感光体は、帯電電位が高いが、光減衰残留電位が高く、界面が不安定であることがわかる。
【0083】(実施例7)厚み2mmの導電性EPDMゴムシート{東新化学工業(株)製、体積抵抗4×104 Ω・cm、ゴム硬度48度、プロピレン量33%、ジエン量6%、ムーニー粘度38}を用意した。導電性弾性体表面の仕事関数を表面分析装置(理研計器(株)製AC−1)を用い、照射光量500nWの条件下で測定したところ5.23eVであった。
【0084】次に、実施例4で作製した導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液に、上記の導電性EPDMゴムシートの片面をディップし、塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚10μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.91eVである。
【0085】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0086】(実施例8)実施例7における導電性EPDMゴムシートに代えて、厚み2mmの導電性EPDMゴムシート{東新化学工業(株)製、体積抵抗2×105 Ω・cm、ゴム硬度41度、プロピレン量27%、ジエン量6%、ムーニー粘度38}を用意した。導電性弾性体表面の仕事関数は5.11eVであった。
【0087】実施例4で記載した導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液に、この導電性EPDMゴムシートの片面を、ディップし、塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚10μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.91eVである。
【0088】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0089】(実施例9)実施例7における導電性EPDMゴムシートに代えて、厚み2mmの導電性EPDMゴムシート{東新化学工業(株)製、体積抵抗6×106 Ω・cm、ゴム硬度37度、プロピレン量37.5%、ジエン量4.5%、ムーニー粘度42}を用意した。導電性弾性体表面の仕事関数は4.97eVであった。
【0090】実施例4で記載した導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液に、この導電性EPDMゴムシートの片面を、ディップし、塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚10μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.91eVである。
【0091】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0092】(実施例10)実施例7における導電性EPDMゴムシートに代えて、厚み2mmの導電性EPDMゴムシート{東新化学工業(株)製、体積抵抗2.1×105 Ω・cm、ゴム硬度50度、プロピレン量38%、ジエン量9%、ムーニー粘度74}を用意した。導電性弾性体表面の仕事関数は4.97eVであった。
【0093】実施例4で記載した導電性熱可塑性樹脂層形成用塗液に、この導電性EPDMゴムシートの片面を、ディップし、塗布した後、90℃で2時間で乾燥させ、膜厚10μmの導電性熱可塑性樹脂層を形成した。導電性熱可塑性樹脂層の仕事関数は4.91eVである。
【0094】導電性熱可塑性樹脂層上に有機感光層を実施例1同様に積層し、正帯電用電子写真感光体を作製した。有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0095】(比較例6)実施例7における正帯電用電子写真感光体において、導電性熱可塑性樹脂層を設けないで導電性弾性体層上に有機感光層を直接設けた。導電性弾性体表面の仕事関数は4.90eV、有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0096】(比較例7)実施例8における正帯電用電子写真感光体において、導電性熱可塑性樹脂層を設けないで導電性弾性体層上に有機感光層を直接設けた。導電性弾性体表面の仕事関数は4.80eV、有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0097】(比較例8)実施例9における正帯電用電子写真感光体において、導電性熱可塑性樹脂層を設けないで導電性弾性体層上に有機感光層を直接設けた。導電性弾性体表面の仕事関数は4.86eV、有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0098】(比較例9)実施例10における正帯電用電子写真感光体において、導電性熱可塑性樹脂層を設けないで導電性弾性体層上に有機感光層を直接設けた。導電性弾性体表面の仕事関数は4.86eV、有機感光層表面の仕事関数は4.58eVである。
【0099】得られた実施例7〜実施例10、比較例6〜9の電子写真感光体について、帯電特性、光感度、光減衰残留電位について、実施例1同様に評価した。その結果を、下記表5、6に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
【表6】

表から、実施例の感光体は、比較例の感光体に比して、導電性熱可塑性樹脂層を設け、φR >φUCL >φOpc の関係とすることにより、暗中にあっては高い帯電電位が得られ、また、露光時にあっては、光減衰残留電位が低く光感度の向上した電子写真感光体であることがわかる。
【0102】また、比較例の電子写真感光体は、帯電電位が高いが、光減衰残留電位が高く、界面が不安定であることがわかる。
【0103】
【発明の効果】本発明の正帯電用電子写真感光体は、帯電電位が大きく、かつ光減衰残留電位が低く光感度に優れるものである。また、本発明の正帯電用電子写真感光体の製造方法は、導電性弾性基体が導電性熱可塑性樹脂層形成溶液に対する耐溶剤性を有すると共に、導電性熱可塑性樹脂層が有機感光層形成溶液に対する耐溶剤性を有するものであり、有機感光層における溶剤による導電性弾性基体に対する影響を無くすことができ、感光体としての感度の低下等がない。また、帯電電位が高く、かつ光減衰残留電位が低く光感度に優れる正帯電用電子写真感光体を製造することを可能とする。また、本発明の画像形成装置は、画質低下やドラム表面を傷つける等の問題がなく、帯電電位が高く、かつ光減衰残留電位が低く光感度に優れる画像形成装置とできる。
【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【出願日】 平成12年4月21日(2000.4.21)
【代理人】 【識別番号】100095120
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 亘彦 (外7名)
【公開番号】 特開2001−305768(P2001−305768A)
【公開日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願番号】 特願2000−120645(P2000−120645)