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【発明の名称】 電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置
【発明者】 【氏名】山口 康浩

【氏名】東 武敏

【要約】 【課題】■高性能且つ高寿命な単層型の電子写真感光体を安価に提供すること。■十分な機械的強度、および、適切な不均一電荷輸送特性を有し、耐久性の高いS字型の電子写真感光体を提供すること。■上記電子写真感光体を利用した、高画質かつ高耐久なプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供すること。

【解決手段】導電性支持体上に、少なくとも、電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重合体を含有する感光層が少なくとも一層形成されてなる電子写真感光体であって、前記電荷輸送活性ブロックが、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体であり、且つ、電荷輸送不活性ブロックが、重縮合系重合体または重付加系重合体であることを特徴とする電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を利用したプロセスカートリッジ及び電子写真装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性支持体上に、少なくとも一層の感光層が形成されてなり、該感光層の少なくとも一層が、電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重合体を含有する電子写真感光体であって、前記電荷輸送活性ブロックが、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体であり、且つ、電荷輸送不活性ブロックが、重縮合系重合体または重付加系重合体であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】 前記電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重合体を含有する感光層が、さらに電荷発生材料を含有する単層型感光層であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】 前記電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重合体を含有する感光層が電荷輸送層であり、さらに少なくとも一層の電荷発生層が形成され、全体として積層型感光層を構成していることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1に記載の電子写真感光体を含むことを特徴とする、電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジ。
【請求項5】 請求項1〜3のいずれか1に記載の電子写真感光体、あるいは、請求項4に記載のプロセスカートリッジを含むことを特徴とする電子写真装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真法に適用される電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関し、詳しくは、電荷輸送性ならびに機械的特性に優れた単層型の電子写真感光体、あるいは、デジタル式電子写真法に好適な積層型の電子写真感光体と、それを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真技術は、高速で、高印字品質が得られる等の利点を有するために、近年、複写機、プリンター、ファクシミリ等の分野において、中心的役割を果たしている。電子写真技術の心臓部である電子写真感光体(以下、単に「感光体」という場合がある。)の構成材料としては、当初からセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料が広く用いられてきたが、これらの無機系感光体に比べ、コスト、製造性、廃棄性等の点で優れた利点を有する有機光導電性材料を用いた電子写真感光体の研究開発が活発に行われ、現在では無機系感光体を凌駕するに至っている。特に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷輸送をそれぞれ別々の材料に担わせる機能分離設計の導入により材料選択の自由度が増し、有機材料の持つ多様性を背景に著しい性能の向上が達成され、現在では導電性支持体上に電荷発生機能を担う薄膜の電荷発生層と電荷輸送機能、帯電性、機械的強度を担う厚膜の電荷輸送層を積層した機能分離積層型有機感光体が電子写真感光体の主流となっている。
【0003】すなわち、電荷発生能と電荷輸送能の双方に優れた材料は希有であり、またその様な材料の設計開発も困難であったが、一方にのみ秀でた材料なら設計開発も容易であり、各機能に秀でた材料を組合せて用い、機能分離型積層構成を採用することで、高性能な電子写真感光体を得ることが可能となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】(1)本発明の第1の課題しかしながら、機能分離積層型有機感光体は、その積層構成に起因し以下に示すような欠点を有しており、それら欠点を克服し得る感光体の開発が切望されている。
【0005】積層構成に起因する第1の欠点としては、単層の感光体に比べ2層以上の層を形成しなければならないため、生産性が低下しコストが高くなってしまうと云う問題が挙げられる。
【0006】積層構成に起因する第2の欠点としては、量産性が高く一般的に採用されている成膜法である浸漬塗布法を用いた場合、上層塗布時に下層が侵されないようにする必要があり、そのため下層材料に上層塗布溶剤に対する耐性が要求されることとなりそれに伴う問題が挙げられる。
【0007】即ち、一般的に下層となる電荷発生層は電荷発生材料としての顔料と成膜性を担う結着樹脂からなり、該結着樹脂として上層となる電荷輸送層の塗布溶剤に侵されない材料を選択しなければならない。一般的に電荷輸送材料は比較的極性が低く、トルエン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン等の比較的極性の低い溶剤がその塗布溶剤として用いられるため、電荷発生層の結着樹脂としては、該溶剤に対する溶解性の低いアセタール変性ビニルアルコール樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂等の高極性の熱可塑性樹脂が採用されている。
【0008】しかしながら、高極性樹脂中では電荷輸送性が低下することが知られており、また高極性樹脂は吸湿性が高く環境変化に伴う光電特性の変動を引き起こす場合があると云う問題がある。さらに、これら高極性の熱可塑性樹脂は、完全には不溶ではないため、上層塗布時の若干の荒れは避けがたく、光電特性、ひいては画像の面内ムラを生起する場合があり、特にフルカラーの高画質が要求される電子写真装置への利用においては改善が望まれている。
【0009】この問題を回避する方法として電荷発生層の結着樹脂に熱硬化性の樹脂を用いる提案もなされているが、塗布液中で経時により硬化反応が進行し増粘/ゲル化してしまうと云うポットライフの問題、成膜時に未硬化サイトが残存してしまい光電特性に悪影響を及ぼすと云う問題等があり、依然、本質的な問題解決には至っていない。
【0010】積層構成に起因する第3の欠点としては、露光光源としてレーザー等の可干渉光を用いる場合、電荷発生層と電荷輸送層との界面での正反射により、一般に干渉縞と呼ばれる切り株模様の画像欠陥が発生してしまうと云う問題が挙げられる。
【0011】この問題を回避する方法としては、界面を凹凸にし、光が散乱するようにすべく、基体表面を荒らしたり、基体と感光層との間に荒い表面性の膜を設けたりする方策が採られている。しかしながら、これらの方策はそれを施すこと自体、コストアップをもたらすし、また荒れた表面上に薄膜の電荷発生層を均一に成膜しなければならないと云う製造上の困難さが要求される。
【0012】ところで、上記のような積層構成に起因する問題点を払拭するものとしては、単層構成の電子写真感光体(単層型感光体)が古くから知られている。しかしながら、従来の単層型感光体は十分な機能分離設計がなされておらず、実用に耐える特性を有するものはなかった。即ち、従来の単層型感光体は絶縁性樹脂中に単純に電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有させたものであり、輸送電荷極性の制約から表面近傍のみで光吸収が起こるように電荷発生材料濃度を高くする必要があり、その結果、暗減衰が大きい、繰り返し使用による光電特性の変動が大きい等の問題があった(積層感光体では電荷発生層の膜厚を薄くすることでこの問題を抑えている)。
【0013】この問題に対し、最近、電荷発生材料とホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料と、の3者を絶縁性樹脂中に含有させた単層型感光体が提案され、著しい性能の改善が達成された(電子写真学会誌,Vol30,p.274−281,1991)。即ち、従来のようにホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料のどちらか一方だけではなく、ホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料の両方を添加することで輸送電荷極性の制約がなくなり、電子写真感光体の感光層内部で電荷発生しても、両電荷がそれぞれの電荷輸送材料によって、対極に輸送されるため、電荷発生材料の添加量を著しく減少させることが可能となり、上述の問題が解消された。
【0014】しかしながら、ホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料とを絶縁性樹脂中に分散させるこの系では、十分なホール輸送能およびエレクトロン輸送能を両立させるには、機械的強度を担う絶縁樹脂に対するこれら低分子量の電荷輸送材料の総濃度を高くする必要があり、膜全体としての機械的強度が低下してしまうという問題があった。
【0015】この問題の改善策としては、特開平3−256050号公報、特開平5−249706号公報、特開平5−150495号公報等においては、ホール輸送性材料として、特定のホール輸送性高分子化合物を用いることにより、それに成膜性を担わせ絶縁性樹脂を不要とする発明が開示されている。しかしながら、一般的にエレクトロン輸送性材料は結晶性が高く、これらの発明において用いられているホール輸送性高分子化合物と高い相溶性を示すエレクトロン輸送性材料は少なく、特に、高エレクトロン移動度を達成するためエレクトロン輸送性材料を高濃度で含有させる場合においては、加熱や経時によるエレクトロン輸送性材料の結晶化による特性の劣化は避けられない。
【0016】また、前記文献における特定のホール輸送性高分子化合物は、その主鎖中に電荷輸送構造を有するものであり、放電ガス等のストレスに晒されると、反応性の高い電荷輸送構造部分が分解され、その部分で主鎖が切断されるため、著しい強度の低下を引き起こす場合があると云う欠点を有する。さらにまた、前記文献における特定のホール輸送性高分子化合物は、重縮合系または重付加系の重合体であり、モノマーの合成が困難である、重合度を上げることが困難である等の製造上の問題があった。
【0017】本発明は、電荷輸送性、機械的強度、製造性等に優れた電荷輸送性高分子化合物を活用した、高性能且つ高寿命な単層型の電子写真感光体を安価に提供することを第1の課題とする。
【0018】(2)本発明の第2の課題従来の光学的に原稿を電子写真感光体上に結像させて露光するアナログ方式の電子写真式複写機は、濃度階調による中間調の再現性を良好にするために、図1に示すような光誘起電位減衰特性を持つ感光体、即ち、露光量に対し比例的に電位減衰する感光体(以下、「J字型感光体」という。)を備えていることが要求される。
【0019】一方、近年の高画質化、高付加価値化、ネットワーク化等の要請に伴い、盛んに研究開発が行われているデジタル方式の電子写真装置では、一般にドット等の面積率で階調を出す面積階調方式を採用するため、むしろ図2に示すような、ある露光量に達するまでは光誘起電位減衰(以下、単に「電位減衰」という場合がある。)せず、その露光量を越えると急峻な電位減衰が起こる、いわゆるS字型の光誘起電位減衰特性を有する感光体(以下、「S字型感光体」という。また、かかる感光体の性質を「S字性」という。)を使用する方が、画素の鮮鋭度が高められる等の点から望ましい。
【0020】このS字型光誘起電位減衰特性は、ZnO等の無機顔料あるいはフタロシアニン等の有機顔料を樹脂中に粒子分散した単層型感光体において公知の現象である〔例えば、R.M.Schaffert:「Electrophotography」、Focal Press,p.344(1975)、J.W.Weigl,J.Mammino,G.L.Whittaker,R.W.Radler,J.F.Byrne;「Current Problems in Electrophotography」,Walter de Gruyter,p.287(1972)〕。特に、現在多用されている半導体レーザーの発信波長である近赤外域に光感度を有するフタロシアニン系顔料を、樹脂中に分散したレーザー露光用単層型感光体が多数提案されている〔例えば、グエン・チャン・ケー,相沢:日本化学会誌,P.393(1986)、特開平1−169454号公報、同2−207258号公報、同3−31847号公報、同5−313387号公報〕。
【0021】しかしながら、これらの単層型感光体では、単一材料で電荷発生と電荷輸送の両機能を担う必要があるが、両機能共に優れた性能を有する材料は稀有であり、実用に耐え得るものは未だ得られていない。特に顔料粒子は、一般的に多くのトラップレベルや暗電荷を有するため、電荷輸送能が低くなり、電荷が残留し、繰り返し安定性および帯電性が低下する等の欠点があり、電荷輸送を担わせるには不適当である。
【0022】この問題を根本的に解決し、材料選択の自由度を上げ、ひいては総合的な感光体特性を向上させるためには、S字型電子写真感光体の設計において、光電導の素過程である光電荷発生と電荷輸送との両機能をそれぞれ別の層に担わせる機能分離構成の導入が不可欠である。
【0023】この問題に対し、D.M.Paiらは、電荷発生層と電荷輸送層からなる積層型感光体において、電荷輸送層として、少なくとも2つの電荷輸送領域および1つの電気的不活性領域を含み、該電荷輸送領域が互いに接触して回旋状電荷輸送路を形成してなる不均一電荷輸送層を用いることにより、任意の電荷発生層との組合せでS字型光誘起電位減衰特性が実現できることを報告している〔特開平6−83077号公報(米国特許第5306586号明細書)〕。
【0024】また本発明者らは、電荷発生層、不均一電荷輸送層、及び均一電荷輸送層からなる3層構成の感光体がS字型光誘起電位減衰特性を示すことを見出し(特開平9−96914号公報)、上記D.M.Paiらの発明からさらに機能分離度を高めることに成功した。
【0025】しかしながら、これらの発明において鍵となる光誘起電位減衰特性をS字型にする機能(以下、「S字化」という)を担う不均一電荷輸送層の具体例としては、フタロシアニン顔料の樹脂分散膜、六方晶セレンの樹脂分散膜、ポリビニルカルバゾール−ドデシルメタクリレート相分離系ブロック共重合体が開示されているのみであり、しかもこれ等の材料には以下に示すような問題点があり、上記発明を実用化するには、不均一電荷輸送層材料の新たな開発が不可欠な課題であった。
【0026】すなわち、フタロシアニン顔料、六方晶セレン等の電荷発生能を有する着色顔料を不均一電荷輸送層用電荷輸送材料として用いると、特に電荷輸送層側から電荷発生層を露光する構成を採った場合、不均一電荷輸送層での光吸収およびそれに伴う電荷発生により、光感度や帯電性に悪影響がでたり、繰り返し安定性が低下する等の問題が生じる場合がある。
【0027】この問題は、不均一電荷輸送層に吸収のない波長域に光感度を有する電荷発生層を用い、且つ該波長域内のみの露光を行う露光装置を用いることにより回避することができるが、材料や装置に制約が課されることとなり、根本的な改善策が望まれる。さらに、フタロシアニン顔料の樹脂分散膜や六方晶セレンの樹脂分散膜の製造に当たっては、これら顔料の粉砕および/または分散工程が必要であるが、粉砕には莫大なエネルギーを要し、且つ不純物混入の危険性を伴う。さらにまた、安定な分散液を得ることは一般的に困難であり、分散溶剤やバインダー樹脂の探索に多大な労力を要すると共に、材料選択に著しい制約を受ける。また、分散液中での結晶成長や凝集化による分散液の変性は一般的に避けられず、長期に亘る使用は不可能であり、コストアップをもたらす。
【0028】一方、ポリビニルカルバゾール−ドデシルメタクリレート相分離系ブロック共重合体には、機械的強度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が低い等の問題がある。しかしながら、相分離系ブロック共重合体にあっては、塗布液は均一溶液であり、乾燥時に相分離し所望とする不均一電荷輸送層を与えるため、上記のような粉砕/分散に係わる問題は根本的に解消されると云う利点を有する。また、顔料ではないため本質的に、上記の光暴露に係わる問題も発生しない。
【0029】ところで、電荷輸送性高分子としては、ポリビニルカルバゾールが電子写真感光体用の電荷輸送材料として有効であることが古くから知られているが、機械的強度が弱い、電荷移動度が小さい、電荷注入性が低い等の実用上の本質的な問題があった。この問題を解決する手段として、電荷輸送層に要求される機能である電荷輸送能と、成膜性、可撓性、強度等の機械的特性を分離し、それぞれを別々の材料に担わせる機能分離の発想に基づく材料開発が為され、前述のように現在では、高い電荷輸送能を有する電荷輸送性低分子化合物と、成膜性、可撓性、強度に優れたポリカーボネート系樹脂からなる分子分散系複合材料が、電子写真用電荷輸送層材料の主流となっている。しかしながら、このような分子分散系複合材料では、分子分散された電荷輸送性低分子化合物が経時および/または加熱で結晶化してしまい、特性が劣化するという問題があり、特に高温下での使用やあるいは発熱を伴うデバイスへの適用には制限があった。また、高画質が得られる液体現像方式の電子写真装置用の電子写真用感光体に用いた場合、現像液に触れることで、電荷輸送性低分子化合物の溶解あるいは結晶化等が起こり、電荷輸送層が変性あるいはクラックが生じる等の問題があった。さらにまた、十分な電荷輸送性を確保するためには、電荷輸送性低分子化合物を樹脂中に35〜60wt%の高濃度で分散する必要があり、可撓性、強度等の機械的特性に優れた樹脂を用いても、複合膜としての機械的特性には限界があった。
【0030】さらなる高寿命化、高耐久化、低コスト化が要請される電子写真感光体をはじめ、有機電子デバイスに幅広く、有機電荷輸送材料を活用させるには、上記のような問題の克服が不可欠であり、その手段として、近年、ポリビニルカルバゾールに代わる高性能電荷輸送性高分子の研究開発が、再び活発化している。現在までに、高い電荷輸送性を有する電荷輸送性低分子化合物と同一の骨格を、主鎖あるいは側鎖に導入した電荷輸送性高分子化合物が多数、開発されている(例えば、特開昭63−187249号公報、特開昭64−13061号公報、特開平2−151605号公報、特開平2−304456号公報、特開平4−11627号公報、特開平4−225014号公報、特開平5−202135号公報、特開平5−331238号公報等)。
【0031】しかし、これらの電荷輸送性高分子は、単独重合体もしくは数種のモノマーを混合し共重合させたランダム共重合体であり、本質的に相分離性を示すことはなく、それら単独ではS字化のための不均一電荷輸送層を形成することはできない。この問題に対し、本発明者らは、それら電荷輸送性高分子に該電荷輸送性高分子と非相溶な絶縁性高分子を加えた相分離性ポリマーブレンドがS字化のための不均一電荷輸送層として有効に機能し得ることを発明した(特開平10-69109号公報等)。
【0032】しかしながら、ポリマーブレンドでは、一般に相分離スケールが数μm以上の大きさであり、画像の均質性が低下する場合があると云う問題があった。さらに、乾燥速度、乾燥温度等の成膜条件により、相分離スケールが大きく変化し、それに伴い電子写真特性が大きく変化してしまう場合があると云う製造再現性上の問題もあった。また、上記いずれの不均一電荷輸送層においても、十分な機械的強度、および、適切な不均一電荷特性を満たすものは無かった。
【0033】したがって、本発明は、相分離スケールの小さい電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重合体により不均一電荷輸送層が構成され、十分な機械的強度、および、適切な不均一電荷特性を有し、耐久性の高いS字型の電子写真感光体を提供することを第2の課題とする。
【0034】(3)本発明の第3の課題さらに、本発明は、上記優れた特性を有する電子写真感光体を利用した、高画質かつ高耐久なプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することを第3の課題とする。
【0035】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、電荷輸送性高分子化合物に関し鋭意検討を重ねた結果、特定の構造の電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体とすることで、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0036】すなわち、本発明は、導電性支持体上に、少なくとも一層の感光層が形成されてなり、該感光層の少なくとも一層が、電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重合体(以下、単に「ブロック共重合体等」と略す場合がある。)を含有する電子写真感光体であって、前記電荷輸送活性ブロックが、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体であり、且つ、電荷輸送不活性ブロックが、重縮合系重合体または重付加系重合体であることを特徴とする電子写真感光体である(以下、当該発明を「基準発明」という場合がある。)。
【0037】特に、上記基準発明であって、前記電荷輸送性ブロック共重合体等を含有する感光層が、さらに電荷発生材料を含有する単層型感光層であることを特徴とする第1の本発明の電子写真感光体は、前記本発明の第1の課題を高い次元で達成することができる。
【0038】また、上記基準発明であって、前記電荷輸送性ブロック共重合体等を含有する感光層が電荷輸送層であり、さらに少なくとも一層の電荷発生層が形成され、全体として積層型感光層を構成していることを特徴とする第2の本発明の電子写真感光体は、特に前記電荷輸送性ブロック共重合体等を含有する感光層を不均一電荷輸送層とすることで、前記本発明の第2の課題を高い次元で達成することができる。
【0039】これら第1の本発明および第2の本発明を含む、基準発明の電子写真感光体は、電子写真感光体を含む電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体として、好ましく用いられる。また、同様に基準発明の電子写真感光体、あるいは、上記プロセスカートリッジは、一般の電子写真装置に好ましく用いられる。これらプロセスカートリッジおよび電子写真装置により、上記第3の課題が達成される。
【0040】第1の本発明および第2の本発明を含む、基準発明の電子写真感光体(以下、単に「感光体」という場合がある。)において、特に、前記電荷輸送不活性ブロックがポリエステル重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアミド重合体、ポリエーテル重合体、ポリイミド重合体、ポリウレタン重合体、またはポリシロキサン重合体の構造を有するブロックである電荷輸送性ブロック共重合体等は、製造性、機械的特性等に優れ、それを活用した基準発明の感光体は、特に好ましい特性が発揮される。
【0041】第1の本発明の感光体において、単層型感光層としては、電荷発生材料に加えて、ホール輸送性材料、およびエレクトロン輸送性材料を含有する機能分離単層型感光層であることが、好ましい特性が顕著に発揮される。このとき、勿論、ホール輸送性材料および/またはエレクトロン輸送性材料は、前記電荷輸送性ブロック共重合体等として前記単層型感光層中に含有されるが、さらにこれらを単独で含有させてもよい。
【0042】第1の本発明の感光体において、前記単層型感光層に含有させる前記電荷発生材料としては、有機顔料であることが好ましく、また、前記単層型感光層中に占める該有機顔料の割合としては、0.1〜10重量%の範囲内にあることが好ましい。
【0043】一方、第2の本発明の感光体において、50%電位減衰に要する露光量が10%電位減衰に要する露光量の5倍未満であることが望ましい。上記基準発明における電荷輸送性ブロック共重合体等は、本発明で提供する電子写真感光体の他、有機電界発光素子、有機フォトリフラクティブ素子、有機光センサー、有機太陽電池等の各種有機電子デバイスにも活用できる。
【0044】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、基準発明、第1の本発明、第2の本発明の順に説明し、さらに最後にこれら本発明を用いた本発明のプロセスカートリッジおよび電子写真装置について説明する。
【0045】A:基準発明の構成基準発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、特定の感光層が少なくとも一層形成されてなることを特徴とするものである。前記特定の感光層とは、電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む電荷輸送性ブロック共重合体または電荷輸送性グラフト共重合体を含有する感光層であって、前記電荷輸送活性ブロックが、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体であり、且つ、電荷輸送不活性ブロックが、重縮合系重合体または重付加系重合体であることを特徴とするものである。
【0046】すなわち、本発明に不可欠な要素である電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体である電荷輸送活性ブロックと、重縮合系重合体または重付加系重合体である電荷輸送不活性ブロックと、を含むことを特徴とする。
【0047】一般の電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体としては、特開平10−182760号公報等に、主鎖中に電荷輸送活性基を有する重縮合系重合体または重付加系重合体が開示されているが、これらは主鎖中に電荷輸送活性基を有する電荷輸送性高分子と同様の問題が生起する。ところで、電荷輸送性高分子としては、主鎖中に電荷輸送活性基を有するもの(主鎖型)以外にも、側鎖に電荷輸送活性基を有するもの(側鎖型)が知られ(例えば、ポリビニルカルバゾール)、反応性の高い電荷輸送活性基を主鎖中に含まないため、たとえそれが化学分解しても、分子鎖が切断されることがなく、主鎖中に電荷輸送活性基を有する場合に見られる問題が発生しないと言う利点を有する。
【0048】また、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーは、比較的合成が容易であり、さらにラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等の重合法によって容易に高重合物が得られると云う製造上の利点を有する。しかしながら、側鎖に電荷輸送活性基を有するものは、一般的に機械的強度がもともと低い、可とう性が低く脆い等、機械的特性等に重大な問題があった。
【0049】本発明は、側鎖型の電荷輸送性高分子の利点を活かし、且つその欠点を解消するものであり、また多方面で注目されている機械的強度の高い絶縁性エンジニアリングプラスチックの構成を活用し得るものである。
【0050】即ち、側鎖型の電荷輸送性高分子(電荷輸送活性基を有するビニルモノマーの重合体)と、絶縁性エンジニアリングプラスチック等の重縮合系重合体または重付加系重合体と、をブロック化またはグラフト化することで共重合化させることによって、側鎖型の電荷輸送性高分子の持つ上述の利点を保持したまま、その欠点である機械的特性に関しては、重縮合系重合体または重付加系重合体に担わせるものである。
【0051】尚、側鎖型の電荷輸送性高分子と、重縮合系重合体または重付加系重合体とを単に混合しただけでは、一般にマクロ相分離を起こしてしまい、均一な複合膜を得ることが出来ない。これらをブロック共重合またはグラフト共重合することで、相分離構造がサブミクロンサイズ以下に規制され、実効的に均一な膜を得ることが可能となる。
【0052】また、機械的強度は非常に高いものの、結晶性であり、溶解性、透明性、相溶性の点で電子写真用途には適さなかった、芳香族ポリイミド等のエンジニアリングプラスチックも、溶解性、非晶性の高い電荷輸送活性ブロックと共重合化することで、溶解性(ミセル化)を付与でき、且つミクロ相分離により透明性と電荷輸送性が確保されることとなり、利用が可能となる。逆に、溶解性等に劣る電荷輸送性高分子も、溶解性に優れた電荷輸送不活性ブロックと共重合化することで、溶解性(ミセル化)を改善することが可能となる。
【0053】電荷輸送不活性な重縮合系重合体または重付加系重合体は、既述の如く、所謂絶縁性エンジニアリングプラスチックとして、機械的強度、化学的安定性、等に優れた多くの材料が開発されている。本発明における電荷輸送不活性ブロックとしては、それら重合体の構成を利用することが可能であり、その中でもポリエステル重合体、ポリカーボネート重合体、ポリアミド重合体、ポリエーテル重合体、ポリイミド重合体、ポリウレタン重合体、またはポリシロキサン重合体等が、製造性、等の点で特に好ましい。また、電荷輸送不活性な重縮合系重合体または重付加系重合体は、その重合機構から本質的にその末端は反応性基であり、該反応性基を活用し、容易にブロック共重合に誘導することが可能である。
【0054】本発明における電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体の合成方法としては、任意の方法が適用可能であるが、まず電荷輸送不活性重縮合体または重付加体を合成し、その末端および/または側鎖にビニル重合開始基を導入し、該開始基から電荷輸送活性基を有するビニルモノマーを重合させることによる方法が、好ましい。
【0055】前記ビニル重合開始基としては、ATRPラジカルリビング重合を開始し得るハロゲン化アルキル基等;SFRPラジカルリビング重合および通常のラジカル重合を開始し得るアゾ基、過酸化物基、パーオキシ基等;アニオン重合を開始し得る金属アルキル基、金属オキシアルキル基等;カチオン重合を開始し得るハロゲン化アルキル基等;を挙げることができる。
【0056】本発明における電荷輸送性ブロックは、電荷輸送活性基を有するビニルモノマーを重合させることで形成される。また、可とう性の向上、重合度の向上等の目的で、電荷輸送活性基を有さないビニルモノマーを共重合してもよい。その場合、共重合の形式はランダム、交互、ブロック、グラフト等如何なるものも可能である。また、まず反応性基を側鎖に有するビニルモノマーを重合させ、該反応性基の全てまたは一部に電荷輸送活性基を有する化合物を結合させることによっても形成可能である。
【0057】電荷輸送活性基を有するビニルモノマーおよびその重合物の具体例としては、特開平4−336539号公報;特開平8−134019号公報;特開平9−194535号公報;特開平10−10766号公報;J.Imaging Sci.Technol.Vol.40,p.164〜167,1996;有機非線形光学材料による光波マニピュレーション第5回研究会全体会議講演資料,p.156〜159,1996;有機非線形光学材料による光波マニピュレーション第1回研究会全体会議講演資料,p.17〜20,1996;に記載のもの等のほか、ビニルカルバゾールおよびポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0058】本発明における電荷輸送性ブロック共重合体等は、ブロック共重合体またはグラフト共重合体であれば、その構成ブロックの連結形式は如何なるものでも構わない。すなわち、電荷輸送活性ブロックをA、電荷輸送不活性ブロックをBとした場合、AB型、ABA型、BAB型、(AB)n型、(AB)nA型、およびB(AB)n型のブロック共重合体、電荷輸送活性ブロックを主鎖、電荷輸送不活性ブロックを側鎖とするグラフト共重合体、電荷輸送不活性ブロックを主鎖、電荷輸送活性ブロックを側鎖とするグラフト共重合体、もしくはABA型等のブロック共重合体の側鎖にAおよび/またはBをグラフト化したブロック−グラフト共重合体等が挙げられる。
【0059】本発明における電荷輸送性ブロック共重合体等中の、電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの割合は、特に制限は無く、その目的に応じて設定される。例えば、機械的強度をより一層高めたい場合には、電荷輸送不活性ブロックの割合を高めることで目的を達することができる。また、電荷輸送性をより一層高めたい場合には、電荷輸送活性ブロック中の電荷輸送活性基の割合を高めると共に、電荷輸送活性ブロックの割合をある程度高めることで目的を達することができる。さらに、当該感光層を不均一電荷輸送層とし、S字性を獲得するためには、両者のバランスを適切に取ることで目的を達することができる。
【0060】本発明における電荷輸送性ブロック共重合体等の重量平均分子量は、その目的に応じて、如何なる値をも取り得るが、成膜性、相分離性等の高分子特性を発揮するには、2000以上であることが望まれる。好ましくは、1万以上であり、より好ましくは、2万以上である。重量平均分子量の上限に関しては、電気的特性上の制限は特にないが、湿式塗布法によって成膜を行う場合には、適当な溶液粘度を与える範囲内にあることが必要となり、一般的には、5000000以下であることが好ましい。
【0061】ポリマーブレンド、ポリマーアロイの分野でよく知られているように、一般に、異なる高分子は互いに非相溶性であり、それらの混合物およびブロック共重合体またはグラフト共重合体は、相分離状態を取る。一般に、単なる混合物、すなわち、ポリマーブレンドでは、その相分離のスケールは数μm以上のマクロなものとなる(マクロ相分離)。これに対し、各成分が共有結合で連結されたブロック共重合体あるいはグラフト共重合体では、サブミクロン以下の微細なドメインからなる相分離状態を与える(ミクロ相分離)。ブロック共重合体およびグラフト共重合体における相分離のスケールは、一般的に各ブロックの平均長と同一次元であり、分子量にほぼ比例することが知られている。
【0062】本発明に用いるブロック共重合体またはグラフト共重合体も、一般的にミクロ相分離状態を取る。しかしながら、本発明のブロック共重合体またはグラフト共重合体は、必ずしもミクロ相分離状態を取るものばかりではなく、各ブロックの組合せによっては、相溶性を示し、相分離を起こさないものもあり得る。一般的に、相溶性は、分子量が小さくなる程、また、互いの溶解度パラメーター差が小さくなる程、高くなる。
【0063】基準発明における電荷輸送性ブロック共重合体等は、高い電荷輸送能と優れた機械的特性等を兼ね備えているため、種々の有機電子デバイスに好適に用いられ、特に、機能分離型電子写真感光体(単層型、積層型共)に好適に用いられる。例えば、高い電荷輸送性と成膜性、顔料への吸着性および接着性を兼ね備えたものは、電荷発生能を有する顔料と併用することで、優れた単層型感光体、および積層型感光体用の電荷発生層を与える。また、高い電荷輸送性と機械的強度、化学的強度および低表面エネルギーを兼ね備えたものは、電荷輸送層または表面保護層用材料として有効である。特に、絶縁性ブロックにヒドロキシル基、アルコキシシリル基等の架橋サイトを導入したものは、それらにより架橋硬化させることで、非常に強靭な電荷輸送性膜を与え、表面保護層として、特に好ましい。さらに、電荷輸送性ブロックがドメイン、絶縁性ブロックがマトリックスとなるミクロ相分離状態を与えるものは、機能分離S字型感光体用の不均一電荷輸送層として、好適に用いられる。
【0064】基準発明の電子写真感光体は、以上の如き特定の感光層が、導電性支持体上に、少なくとも一層形成されてなるものである。本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の材料としては、当業界で電子写真感光体に用いる導電性支持体として利用され得る任意の種類から選択でき、不透明であっても透明であっても構わない。前記導電性支持体の材料の具体例としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、白金、ジルコニウム、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチック、ガラスおよびセラミックス等;導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、プラスチック、ガラスおよびセラミックス等;が挙げられる。
【0065】本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の形状としては、ドラム状、シート状、プレート状、ベルト状等、適宜の形状とすることができる。また、本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の表面には、必要に応じて、各種の処理を施すことができる。例えば、電解酸化処理;薬品処理;砂目立て、荒切削、ホーニング等の機械的粗面化処理;切削、研磨等による機械的鏡面化処理;等を施すことができる。
【0066】また、本発明においては、導電性支持体から感光層への電荷の漏洩を阻止する目的および/または感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめる目的等のために、導電性支持体と感光層との間に、下引き層を設けることもできる。
【0067】下引き層としては、公知のものを用いることができ、例えば、エチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ビニルアセタール樹脂、ビニルアルコール樹脂、水溶性エステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル酸樹脂、アクリルアミド樹脂等の樹脂およびこれらの共重合体、あるいは、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップリング剤等の硬化性金属有機化合物を、単独または2種以上混合して用い、形成することができる。また、帯電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も下引き層として有効である。
【0068】下引き層の形成方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布および乾燥して塗膜を形成する通常の湿式塗布法を用いることができる。かかる塗布液は、下引き層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。下引き層の膜厚は、0.005〜10μmが適当であり、より好ましくは0.01〜5μmの範囲である。
【0069】基準発明の電子写真感光の層構成としては、図3に示す単層構成のほか、図4〜図7に示す積層構成のものが挙げられる。図3に示す単層構成は、下記第1の本発明における構成であり、図4〜図7に示す積層構成は、後述の第2の本発明における構成でである。
【0070】B:第1の本発明の構成第1の本発明は、前記基準発明における前記電荷輸送性ブロック共重合体等を含有する感光層が、電荷発生材料を含有する単層型感光層であることを特徴とするものであり、上述の如く図3に示す構成のものである。図3においては、導電性支持体1表面に、単層型感光層3が設けられ、その中に電荷発生材料からなる微粒子4が分散されている。当該電子写真感光体には、さらに所望により下引き層、ブロッキング層、保護層、単極性電荷輸送層等を設けることができる。
【0071】第1の本発明の電子写真感光体における単層構成は、単層故の製造コストの低さ、生産性の高さと云う製造上の利点を有し、上述した積層型感光体における干渉縞の問題の回避に不可欠な導電性支持体表面の特殊な加工や、下引き層を設ける必要もなく、この点でも製造コストの低減が実現できる。
【0072】また、単層型感光層にホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料を含有する構成は、電荷発生材料にて発生したホールとエレクトロンの両者がそれぞれホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料によって分離輸送されるため、高い電荷分離効率(すなわち電荷発生効率)が達成され、優れた繰り返し安定性が実現されるため、特に好ましい。さらに、優れた両極性電荷輸送能を有するため、電荷発生材料の添加量も必要最少量で済み、電荷発生材料による輸送特性の劣化も抑えられ、併せて、機械的強度の低下も抑えられると云う卓越した効果を奏する。加えて、電荷発生材料と両電荷輸送材料が共存しており、光励起状態が速やかに電荷移動失活されるため、通常の積層型感光体で見られるような光暴露による電子写真感光体の光化学的な劣化が抑制されると云う利点をも有する。そして、単層構成の電子写真感光体であるため、廃棄された電子写真感光体から電子写真感光体材料を回収、再生することも容易であり、リサイクルによる資源の有効利用、廃棄物の低減、コスト削減を可能とする。
【0073】第1の本発明において用いられる電荷発生材料としては、電荷発生能を有するものなら如何なるものでも利用可能であり、例えば、非晶質セレン、六方晶セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物およびセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−シリコン、a−シリコンカーバイド等の無機系光導電性材料;フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、多環キノン系、ピレン系、ピロロピロール系、ピリリウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔料および染料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独あるいは2種以上混合して用いることもできる。
【0074】これらの中でも有機顔料は安全性、堅牢性等の点で好ましく、特に、フタロシアニン系顔料は、デジタル式の電子写真装置に光源として現在広く使用されているLEDおよびレーザーダイオードの発信波長である600〜850nmに優れた光感度を有するため、本発明における電荷発生材料として特に好ましい。
【0075】フタロシアニン系顔料としては、無金属フタロシアニン類、金属フタロシアニン類、及びそれらの誘導体が利用できる。金属フタロシアニン類の中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li等が挙げられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物誘導体も有効である。具体的には、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、ジメトキシ珪素フタロシアニン等を挙げることができる。また、フタロシアニン環に任意の置換基が導入された置換フタロシアニンも使用することができる。さらにまた、フタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換されたアザフタロシアニン類も有効である。
【0076】これらフタロシアニン系顔料の形態としては、アモルファスまたは全ての結晶形のものが使用可能である。これ等フタロシアニン系顔料の中でも、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた光感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料として特に好ましい。
【0077】また、アゾ系顔料、多環キノン系顔料およびペリレン系顔料も電荷発生効率に優れるため、電荷発生材料として好ましく使用できる。レーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小径化できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レーザーの短波長化の検討がなされているが、これらの顔料は、紫外域から可視域に高い光感度を有するため、短波長レーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用いることができる。
【0078】第1の本発明において、単層型感光層中の前記電荷発生材料の含有量としては、0.05〜30重量%の範囲内にあることが好ましく、0.1〜10重量%の範囲内がより好ましく、さらに好ましくは0.3〜5重量%の範囲内である。電荷発生材料の含有量が前記範囲未満であると、感光層による吸光度が不足し、光感度が不足したり、露光光源としてレーザー等の可干渉光を用い、且つ散乱化処理を施していない導電性支持体を使用した場合には干渉縞の問題が発生する。他方、電荷発生材料の含有量が前記範囲を超えると、暗電荷の増加、繰り返し安定性の低下、機械的強度の低下等の弊害が顕著となる。
【0079】第1の本発明においては、単層型感光層に、少なくとも上記電荷発生材料のほか、基準発明において不可欠な要素である既述の電荷輸送性ブロック共重合体等を含有することが必須であり、さらにホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料の両者を存在させることが好ましい。この場合、電荷輸送性ブロック共重合体等をホール輸送性材料とし、別途任意のエレクトロン輸送性材料を添加することも可能であり、電荷輸送性ブロック共重合体等をエレクトロン輸送性材料とし、別途任意のホール輸送性材料を添加することも可能であり、また、エレクトロン輸送性ブロック共重合体等とホール輸送性ブロック共重合体等とを共用することも可能である。また、電荷輸送性ブロック共重合体等とは別にホール輸送性材料および/またはエレクトロン輸送性材料を併用することも可能である。また、絶縁性樹脂を添加することも可能である。
【0080】これらの構成において、複数の高分子化合物を用いる場合、それらはマクロ相分離しないことが望まれ、電荷輸送性高分子を併用する場合には、電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体の電荷輸送活性ブロックと同一構造のものが好ましく、また、絶縁性樹脂を併用する場合には、電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体の電荷輸送不活性ブロックと同一構造のものが好ましい。エレクトロン輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体とホール輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体を共用する場合には、両者の電荷輸送不活性ブロックが同一構造であることが好ましい。
【0081】第1の本発明において、電荷輸送性ブロック共重合体等とは別に電荷輸送材料を用いる場合、その電荷輸送材料としては、特に制約はないが、電荷輸送性ブロック共重合体等の少なくとも一つのブロックと相溶性を有するものであることが望ましい。
【0082】電荷輸送材料の内、ホール輸送性材料としては、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、アントラセン系化合物、ブタジエン系化合物、スチルベン系化合物等およびそれらの重合体等の公知の化合物を用いることができる。一方、エレクトロン輸送性材料としては、ジフェノキノン系化合物、フルオレノン系化合物、フルオレニリデンマロノニトリル系化合物、フルオレノイミン系化合物、芳香族イミド系化合物等およびそれらの重合物等の公知の化合物を用いることができる。
【0083】第1の本発明における単層型感光層の形成方法としては、如何なる方法でも構わないが、コスト、設備の簡便性、量産性等の点で、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等の湿式塗布法により、単層型感光層形成用の塗布液を塗布・乾燥させることにより形成する方法が好ましい。
【0084】前記塗布液は、構成材料の適量を適当な溶剤中に溶解/分散させることによって調製される。前記溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クレゾール等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、シクロヘキサノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等を単独または複数混合して用いることができる。
【0085】前記単層型感光層において、電荷発生材料等として顔料等の不溶物を用いる場合、均一且つ安定な前記単層型感光層形成用の塗布液を得るには、ボールミル法、ペイントシェーク法、アトライター法、サンドミル法、超音波法等の粉砕・分散法にて処理することによって調製することが好ましい。上記塗布液における溶剤の量としては、一概には言えないが、塗布適性より、塗布液中の全固形分が0.5〜50重量%の範囲になる量とすることが望ましく、5〜30重量%の範囲になる量とすることが望ましい。前記単層型感光層の膜厚としては、5〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは10〜40μmの範囲であり、さらに好ましくは15〜35μmの範囲である。
【0086】第1の本発明の電子写真感光体においては、単極性電荷輸送層を併設しても構わない。特に、図3の構成において、導電性支持体1と両極性電荷輸送層3との間に帯電極性と同極性の電荷を輸送する適当な単極性電荷輸送層を設けると、帯電性や、導電性支持体1と両極性電荷輸送層3との間の接着性等において、改善効果がもたらされる場合がある。また、図3の構成において、その表面に帯電極性と逆極性の電荷を輸送する適当な単極性電荷輸送層を設けると、耐磨耗性、転写性、クリーニング性等において、改善効果がもたらされる場合がある。
【0087】単極性電荷輸送層としては、特に限定されず、公知の電荷輸送層の構成をそのまま適用することができる。単極性電荷輸送層の形成方法としては、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布および乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗布液は、単極性電荷輸送層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。単極性電荷輸送層の膜厚は、0.1〜40μmの範囲、好ましくは2〜10μmの範囲に設定される。
【0088】本発明において、感光層の上に必要に応じて設けてもよい保護層としては、帯電部材から発生するオゾンや酸化性ガス等、および紫外光等の化学的・光化学的ストレス、あるいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に起因する機械的ストレスから感光層を保護し、電子写真感光体の実質的な寿命を改善するために有効である。
【0089】前記保護層は、一般に導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成される。該導電性材料としては、ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金属酸化物等の材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0090】前記保護層形成に用いることができる結着樹脂としては、アミド樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、カーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。また、アモルファスカーボン等の半導電性無機膜も保護層として用いることができる。
【0091】前記保護層の形成方法としては、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布および乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗布液は、保護層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。保護層の膜厚は0.5〜20μmの範囲が適当であり、より好ましくは1〜10μmの範囲に設定される。
【0092】また、保護層を設けた場合、必要に応じて、感光層と保護層との間に、保護層から感光層への電荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることができる。このブロッキング層としては、保護層の場合と同様に公知のものを用いることができる。
【0093】本発明の電子写真感光体においては、オゾンや酸化性ガス、あるいは、光、熱による電子写真感光体の劣化を防止する目的で、任意の層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0094】酸化防止剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0095】光安定剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体、および、光励起状態をエネルギー移動あるいは電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子供与性化合物等が挙げられる。
【0096】熱安定剤としては、公知のものを用いることができる。さらに、表面磨耗の低減、転写性の向上、クリーニング性の向上等を目的として、表面層(保護層、感光層のいずれの場合であっても構わない)にフッ素樹脂等の微粒子を分散させてもよい。
【0097】C:第2の本発明の構成第2の本発明は、前記基準発明における前記電荷輸送性ブロック共重合体等を含有する感光層が電荷輸送層であり、さらに少なくとも一層の電荷発生層が形成され、全体として積層型感光層を構成していることを特徴とする。第2の本発明における電荷輸送層としては、前記電荷輸送性ブロック共重合体等を含有する感光層である電荷輸送層(以下、単に「特定の電荷輸送層」という場合がある。)のほか、一般の電荷輸送層をも積層させることができる。
【0098】特定の電荷輸送層としては、構成上特に制限は無いが、不均一電荷輸送層を為し、感光層全体として、S字型の特性を持たせることができる。すなわち、特定の電荷輸送層を不均一電荷輸送層とすることで、十分な機械的強度、および、適切な不均一電荷輸送特性を有し、耐久性の高いS字型の電子写真感光体を提供することができる。具体的には、電荷輸送性ブロック共重合体における電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの割合を適切に調整することにより、不均一電荷輸送特性を発現させることができる。
【0099】ここで、S字型光誘起電位減衰特性発現の機構について説明する。S字型光誘起電位減衰特性発現の機構に関しては、トラップ説〔例えば、北村,小門:電子写真学会誌,Vol.20,p.60(1982)〕、D.M.Pai等が前記の文献で唱えている回旋状電導説等幾つかの提案はあるものの、未だ確立された説はない。しかしながら、これまでにS字型感光体として報告されている上記の顔料樹脂分散型単層感光体、D.M.Paiらの電荷発生層および不均一電荷輸送層からなる積層感光体、および本発明者等の電荷発生層、不均一電荷輸送層および均一電荷輸送層からなる積層感光体においては、少なくとも電荷発生領域に隣接する電荷輸送領域の電荷輸送路が電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一な構造を有するものであるという共通点を認めることができる。尚、ここでいう電気的不活性とは、その輸送エネルギーレベルが、電荷輸送ドメインの輸送エネルギーレベルから大きくかけ離れており、通常の電界強度では、実質的に輸送電荷が注入されることがなく、輸送電荷にとって事実上の電気的絶縁状態にあることを意味する。
【0100】第2の本発明における電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む共重合体を含有する相分離系不均一電荷輸送層を用いた積層型感光体が、なぜS字型光誘起電位減衰特性を発揮し得るかは必ずしも明らかではないが、Pai等の回旋状電導説によれば、S字型光誘起電位減衰が起こる過程は、以下のようなものであると推定される。
【0101】まず、不均一電荷輸送層では、電気的不活性マトリックス中に分散された電荷輸送性ドメインが互いに接触し、回旋状の電荷輸送路を形成しているものと考える。この場合、電子写真感光体が帯電され感光層に高電界が印加されると、露光により電荷発生層で発生した電荷は電界によるクーロン力により電界に沿って、電荷発生層から不均一電荷輸送層に注入され、電荷輸送性ドメイン中を電界方向に移動する。しかし、電荷輸送性ドメインの末端凸部に到達した所で、電気的不活性マトリックスの障壁に出会い、電界により移動方向が規制されているため、ここで該電荷の移動は一旦停止することになる。
【0102】この間の移動距離が感光層の全膜厚に対して充分小さければ、このときの電位減衰は無視できるものとなる。殆ど全ての表面電荷に相当する電荷が注入された後は、該注入電荷近傍での表面に垂直な局部的電界は無視できるほど小さくなり、停止していた電荷は、電界による束縛を逃れ表面に垂直な方向以外の方向に拡散することが可能となり、回旋状に連なる連結路を辿って最初に停止した所よりも深部に達する。この深部において、先程と同様に電荷は再び十分な高電界に晒され電荷輸送性ドメイン内を電界方向に沿って移動し、再び電気的不活性マトリックスの障壁に出会い、移動を停止する。しかし、同様な他の電荷の移動で電界強度は低下しているので、より多くの電荷が回旋状電荷輸送路を通り次の絶縁性障壁にまで達する。かくして、電荷の移動はカスケード的に起こり、S字型の光誘起電位減衰となる。
【0103】尚、顔料樹脂分散型の単層S字感光体においては、露光光は表面近傍で吸収されそこで電荷が発生されるため、該光吸収/電荷発生の領域を電荷発生層、それに続く残りの領域を電荷輸送層と見なすことができ、同様に上記説明が当てはまる。
【0104】本第2の本発明における電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含む共重合体を含有する相分離系不均一電荷輸送層を用いた積層型感光体が、S字型の光誘起電位減衰挙動を呈するのも、電荷輸送活性ブロックからなる相が電荷輸送性ドメインを、電荷輸送不活性ブロックからなる相が電気的不活性マトリックスをそれぞれ形成し、上記のような現象が起きているためと推定されるが、本発明は、これら理論により拘束されるものではない。
【0105】尚、光誘起電位減衰特性のS字性の尺度には、例えば、帯電電位を50%減衰させるのに要する露光量E50%と10%減衰させるのに要する露光量E10%との比(E50%/E10%値)を用いることができる。理想的なJ字型感光体は、電位減衰が露光量に比例していて、E50%/E10%値は5となる。一般的なJ字型感光体では、電界強度の低下に伴い、電荷発生効率および/または電荷輸送能が低下するため、E50%/E10%値は5を越える値を示す。一方、理想的なS字型感光体は、ある露光量までは全く電位減衰せず、その露光量で一気に残留電位レベルまで電位減衰する階段状の電位減衰曲線を示すので、E50%/E10%値は1となる。したがって、S字型感光体とはE50%/E10%値が1以上5未満の値を示すものとして規定され、E50%/E10%値が1に近づく程、S字性が高いことを意味する。
【0106】好ましいデジタル特性を発揮するには、E50%/E10%値は3未満の値であることが好ましく、より好ましくは2未満の値である。但し、階調性を高める等の理由で、アナログ特性を併用する場合には、E50%/E10%値は、およそ1.5〜4の範囲内で好適な結果を与える。第2の本発明のS字型電子写真感光体は、このような好ましいE50%/E10%値を与え得る。
【0107】図4ないし図7に、第2の本発明に好適に適用される、電子写真用感光体の模式拡大断面図を示す。図4においては、導電性支持体1上に、電荷発生層2が設けられ、その上にS字化と電荷輸送を担う不均一電荷輸送層5が設けられている。図5においては、導電性支持体1上に電荷発生層2が設けられ、その上にS字化を担う不均一電荷輸送層5が設けられ、さらにその上に主な電荷輸送を担う均一電荷輸送層6が設けられている。図6においては、導電性支持体1上に不均一電荷輸送層3が設けられ、その上に電荷発生層2が設けられている。図7においては、導電性支持体1上に均一電荷輸送層6が設けられ、その上に不均一電荷輸送層5が設けられ、さらにその上に電荷発生層2が設けられている。これらの電子写真感光体は、さらに所望により下引き層、ブロッキング層、保護層、中間層、および/または乱反射層等を含むことができる。
【0108】前記のように、電荷発生層で発生した電荷が不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの障害に出会い最初に一時停止するまでの間の移動距離が感光層の全膜厚に対して充分小さければ、その間の電位減衰は無視できるものとなり、より理想的なS字性を示す。つまり、電荷発生層とS字化のための不均一電荷輸送層は近接している方がより高いS字性を与える。ただし、電荷の注入や電荷の発生を助ける等の目的のために電荷発生層と不均一電荷輸送層との間に適当な中間層を設けることもできる。また、電荷発生層と不均一電荷輸送層との間に均一電荷輸送層を挿入し、該均一電荷輸送層の膜厚を変えることにより、E50%/E10%値を1以上5未満の範囲内の任意の値に設定することも可能である。
【0109】S字化を担う不均一電荷輸送層は、電気的不活性マトリックス中に電荷輸送性ドメインが分散されてなる不均一構造を特徴とする電荷輸送路を形成する層であって、第2の本発明では、上述のように絶縁性ブロックである電荷輸送不活性ブロックと、電荷輸送活性ブロックとからなるブロック共重合体またはグラフト共重合体において、電荷輸送不活性ブロックがマトリックス、電荷輸送活性ブロックがドメインとなるミクロ相分離状態を為すものである。
【0110】相分離性共重合体からなる不均一電荷輸送層において、回旋状電荷輸送経路の形成は、電荷輸送活性ドメイン同士の確率的な接触に依存する。その接触の確率が大きすぎると、電荷輸送経路は回旋状とならずS字性が低下し、またその接触の確率が小さすぎると、電荷輸送層全体を貫き連続した電荷輸送経路が形成できなくなり、残留電位の増大を招く。電荷輸送性ドメインの互いの接触は必ずしも直接接触している必要はなく、電荷輸送活性ドメイン間の非常に薄い絶縁層は、電荷がそのギャップを飛び越えることができ、且つそこでの捕獲が無視できるならば、その存在は許容される。ここでいう回旋状電荷輸送路とは、電荷の移動が膜厚方向に対して1回以上逆行するように形成されている電荷輸送路のことである。
【0111】第2の本発明に用いる電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを含むブロック共重合体等は、両ブロックが非相溶性の時、S字化電荷輸送層として、有効に機能する。第2の本発明のS字型電子写真感光体は、少なくとも電荷発生材料を有する電荷発生層と、不均一電荷輸送層とを有する機能分離タイプのものであり、該不均一電荷輸送層の主要構成成分として、上述の電荷輸送性ブロック共重合体等を含むことを特徴とする。
【0112】電気的不活性マトリックスを形成する電荷輸送不活性ブロックとしては、主輸送電荷に対し、電気的に不活性であれば如何なるものでも構わないが、1013Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものが好ましく、より好ましくは1014Ω・cm以上の体積抵抗率を有するものである。体積抵抗率が1013Ω・cmより低いと、電気的不活性マトリックスの電気的絶縁性が損なわれ、S字性が失われたり、暗減衰が増加する傾向にある。
【0113】前記電荷輸送性ブロック共重合体等における電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの組成比は、それらの相分離の結果として得られる電荷輸送活性ドメインと電気的不活性マトリックスの体積比(電荷輸送活性ドメイン/電気的不活性マトリックス)が10/1〜1/10となる範囲内で任意に設定され、より好ましくは2/1〜1/4の範囲である。
【0114】電荷輸送活性ドメインの体積比率が上記範囲より大きいと、電荷輸送活性ドメインが密に接触、あるいは電荷輸送活性ブロックがマトリックスとなってしまい、実質的に均一な構造の電荷輸送路を形成し、上記のS字型光誘起電位減衰特性の発現に不可欠な電荷輸送路の不均一構造が消失し、S字性が失われる傾向にある。他方、電荷輸送活性ドメインの体積比率が上記範囲より小さいと、電荷輸送路が分断され、残留電位の増大、応答速度の低下等の障害を招く傾向にある。
【0115】不均一電荷輸送層の相分離構造としては、上述の回旋状電荷輸送路が形成されるものであれば如何なる構造を取っても構わないが、電荷輸送活性ブロックからなる相が球状もしくは棒状等の島、電荷輸送不活性ブロックからなる相が海となる相分離構造(海島構造)を取る場合に、より良いS字性が得られる。また、スピノーダル分解により得られる変調構造を取る場合にも、好ましいS字性が得られる。また、入り組んだラメラ構造を取る場合にも、好ましいS字性が得られる。
【0116】ここで、相分離状態を如何に制御するかが課題となるが、相分離状態は構成ブロックの種類および分子量により、熱力学的に最も安定な構造が存在し、一般的には、Aブロック、Bブロックからなる共重合体では、連結形式には依らず、A/B組成比にのみ依存し、A/B比の増加に伴い、Aが球状ドメインでBがマトリックス、Aが棒状ドメインでBがマトリックス、A/B交互層、Bが棒状ドメインでAがマトリックス、Bが球状ドメインでAがマトリックスへと系統的に変化する。
【0117】しかしながら、湿式塗布法により、成膜する場合には、用いる溶媒および乾燥速度等により、相分離状態を任意に制御することができる。例えば、A/B比が大きく熱力学的にはB球Aマトリックスを取る場合でも、塗布溶媒として、Bの良溶媒であり且つAの貧溶媒である溶媒を選択すれば、A球Bマトリックス構造を得ることができる。また、A、B両者の良溶媒を用い、急速に溶媒を除去すると、スピノーダル分解状態で凍結した相分離構造(変調構造)を得ることができる。また、A/B比が大きく、熱力学的にはB球Aマトリックスを取る共重合体に、Bのみと相溶性のある重合体を添加すると、Aが球、BおよびBのみと相溶性のある重合体がマトリックスとなる相分離構造を得ることもできる。
【0118】第2の本発明に用いる不均一電荷輸送層の膜厚は0.1〜50μmが適当であるが、応答速度を高速化するという観点から、0.2〜15μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5μmの範囲に設定される。上記範囲より薄いとS字性が低下する傾向にある。膜厚の上限に関しては、用いるS字化電荷輸送層の電荷輸送能により制限され、応答速度、残留電位等が許容される範囲内で設定される。
【0119】さらに、電荷輸送活性ドメインの平均径は0.005〜3μmが好ましく、より好ましくは0.01〜1μm、特に好ましくは0.02〜0.5μmの範囲である。電荷輸送活性ドメインの平均径が上記範囲より大きいと、好ましい膜厚の範囲内でのS字化に必要な電荷輸送路の不均一構造の形成が確率的に低くなり、S字性が低下することになる。他方、電荷輸送活性ドメインの平均径が上記範囲より小さい場合には、電荷輸送路が均一な構造に近付き、この場合もS字性が低下することになる。
【0120】電荷輸送活性ドメインの電荷移動度は、電子写真感光体の応答速度を支配する一因子であり、移動度が高いものほど、高速の電子写真装置に好適に用いられる。本発明の電子写真装置においては、少なくとも現像に用いる電界強度域において、10-6cm2/Vs以上であることが好ましい。より好ましくは5×10-6cm2/Vs以上である。尚、電荷輸送活性ドメインの電荷移動度を、直接測定することは困難であり、電荷輸送活性ブロックと同一構造の電荷輸送性高分子の電荷移動度で代用することができる。移動度の測定は、当業界における常法である、Time−of−Flight法により行うことができる。
【0121】不均一電荷輸送層中には、主たる輸送電荷と逆極性の電荷のみを輸送し得る化合物を添加することもできる。かかる化合物を添加することにより、残留電位の低下、繰り返し安定性の向上等の効果を得ることができる。
【0122】不均一電荷輸送層の形成方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により、不均一電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し乾燥する、通常の方法を適用することができる。当該塗布液としては、高分子が均一に溶解している溶液またはミセルを形成している溶液等を用いることができる。かかる溶液を調製するための溶媒としては、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、トルエン、シクロヘキサノン等がある。
【0123】第2の本発明における電荷発生層に用いられる電荷発生材料は、J字型、S字型を問わず積層型電子写真用感光体に電荷発生層として用いられ得る任意のものから選択することができる。例えば、非晶質セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物およびセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−Si、a−SiC等の無機系光導電性材料;フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔料および染料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0124】特に、フタロシアニン系化合物は、デジタル式の電子写真装置に光源として現在広く使用されているLEDおよびレーザーダイオードの発信波長である、600〜850mmに優れた光感度を有するので、第2の本発明における電荷発生材料として特に好ましい。
【0125】フタロシアニン系化合物としては、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、およびそれらの誘導体が利用できる。金属フタロシアニンの中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li等が挙げられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物等も使用できる。具体的には、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、ジメトキシケイ素フタロシアニン等を挙げることができる。
【0126】また、上記化合物のフタロシアニン環に任意の置換基が導入された置換フタロシアニン類も使用することができる。さらにまた、上記化合物のフタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換されたアザフタロシアニン類も有効である。これらフタロシアニン系化合物の形態としては、アモルファスまたはすべての結晶形のものが使用可能である。
【0127】これらフタロシアニン系化合物の中でも、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた光感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料として特に好ましい。
【0128】また、殆どのフタロシアニン系化合物が正孔を主たる輸送電荷とするp型半導体の性質を有しているのに対し、ジクロロ錫フタロシアニン、電子吸引性基を有するフタロシアニン類およびアザフタロシアニン類は、電子を主たる輸送電荷とするn型半導体であるので、電荷発生材料としてこれらのフタロシアニン系化合物を含む電荷発生層と、不均一電荷輸送層とを導電性支持体上に順次積層してなるS字型感光体は、それを負帯電で使用した場合、導電性支持体からのホールの注入が抑えられ、暗減衰が小さく帯電性が高いと云う良好な電子写真特性を示す。
【0129】また、六方晶セレン顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料およびペリレン系顔料も電荷発生効率に優れるため、電荷発生材料として好ましく使用できる。レーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小径化できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レーザーの短波長化の検討がなされているが、これらの顔料は、紫外域から可視域に光感度を有するため、短波長レーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用いることができる。
【0130】電荷発生層は、前記電荷発生材料を真空蒸着法により直接成膜する、または、前記電荷発生材料を結着樹脂中に分散または溶解し、これを湿式塗布法にて製膜することにより作製できる。電荷発生層に結着樹脂を用いる場合、その結着樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂はブロック、ランダムまたは交互共重合体いずれでもよく、また、これらの結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。また、既述の通り本発明における電荷輸送性ブロック共重合体等も、電荷発生層用の結着樹脂として有効である。
【0131】電荷発生材料と結着樹脂との配合比(体積比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。より好ましくは、3:1〜1:1の範囲に設定される。電荷発生材料の結着樹脂に対する配合比が前記範囲より大きいと、暗減衰が増大し、また湿式塗布法では均質な膜を得ることが困難になる。一方、前記範囲より小さいと光感度の低下、残留電位の増大等の障害が起きる。
【0132】第2の本発明で用いる電荷発生層の膜厚は、一般的には0.05〜5μmが適当であり、好ましくは0.1〜2μmの範囲であり、さらに好ましくは0.1〜〜1μmの範囲に設定される。膜厚が厚いと、一般的に暗電荷量が増加する傾向にあり、暗電荷密度の高い電荷発生材料を用いる場合、0.3μm以下に設定されることが好ましい。
【0133】電荷発生層の形成方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により、電荷発生層形成用の塗布液を塗布し乾燥する、通常の方法を適用することができる。
【0134】第2の本発明に用いられる電子写真感光体には、さらに均一電荷輸送層を設けることもできる。均一電荷輸送層を設けることにより、電荷輸送層全体としては性能上十分な膜厚を維持しつつ、感光体の応答速度を律する不均一電荷輸送層の膜厚を薄くすることができるので、装置の高速化の点でより好ましい。
【0135】均一電荷輸送層としては、当業界でJ字型積層感光体における電荷輸送層として知られている任意のものから選択できる。例えば、ベンジジン系化合物、トリアリールアミン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物、カルバゾール系化合物、ジフェノキノン系化合物等を、単独でまたは2種以上を混合して、絶縁性樹脂(例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート等)中に均一分子分散した固溶膜を用いることができる。あるいは、それ自身電荷輸送能を有する高分子化合物等を用いることもできる。また、セレン、a−Si、a−SiC等の電荷輸送能を有する無機物質を用いることもできる。
【0136】第2の本発明において形成可能な均一電荷輸送層としては、特に製造上、電荷輸送性高分子化合物を用いることが好ましい。上記電荷輸送性高分子化合物としては、特開平2−304456号公報等に開示されているような電荷輸送能を有する基を側鎖に含む高分子化合物等、また、特開平5−232727号公報等に開示されているような電荷輸送能を有する基を主鎖に含む高分子化合物、例えばトリアリールアミン骨格を有するポリカーボネート等を用いることができ、さらに、ポリシリレン等を用いることができる。
【0137】不均一電荷輸送層と均一電荷輸送層を積層成膜する場合、均一電荷輸送層に電荷輸送性低分子化合物を用いると、電荷輸送性低分子化合物が不均一電荷輸送層中に混入することがある。その結果、不均一電荷輸送層の電気的不活性マトリックスの主たる電荷に対する絶縁性が低下するために、S字性が損なわれたり、あるいは不均一電荷輸送層中に混入した電荷輸送性低分子が不均一電荷輸送層中で電荷トラップとなり、残留電位の増大、輸送能の低下および光感度の低下等の障害が発生する。この問題は、特に、湿式塗布法により各層を成膜する場合に顕著になる(もちろん、これらの問題は、上層の塗布溶剤として下層を溶解および膨潤し難いものを選択する、または、不均一電荷輸送層を架橋硬化性のものとし、上層塗布溶剤による溶解および膨潤が起こらないようにする等により、回避することが可能である)。
【0138】ところが、上述したように、高分子同士は相溶することなく相分離を起こすことが一般的に知られており、均一電荷輸送層として、電荷輸送性高分子化合物を用いた場合、不均一電荷輸送層樹脂と相溶することなく相分離するため、上記のような混入の問題は殆ど発生せず、材料および製造法の選択に当たっての制約が解消されるという利点を有する。
【0139】尚、均一電荷輸送層中には電荷輸送性マトリックスに囲まれるような電気的不活性な領域が存在してもよい。例えば表面摩擦力の低減、磨耗の低減、または表面への異物付着の低減等を目的に低表面エネルギーの絶縁性粒子等を含有させることができる。
【0140】均一電荷輸送層には電荷輸送能の向上等を目的に、電荷輸送性微粒子を添加することもできる。また、上述したように均一電荷輸送層中には電荷輸送性マトリックスに囲まれるような電気的不活性な領域が存在してもよいため、電荷輸送活性ブロックがマトリックス、電荷輸送不活性ブロックがドメインとなるミクロ相分離状態を取る共重合体も、均一電荷輸送層として用いることができる。
【0141】均一電荷輸送層は、上記材料を乾式または湿式塗布することにより得られる。塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等の通常の方法を用いることができる。また、セレン等の気相成膜可能なものは、真空蒸着法等により直接成膜することもできる。本発明で用いる均一電荷輸送層の膜厚は50μm以下、好ましくは30μm以下に設定される。
【0142】電荷輸送層(不均一・均一電荷輸送層の双方を含む)が最表層となる構成においては、機械的強度の観点から、架橋硬化性材料を用い形成される3次元架橋型電荷輸送層を用いることが好ましい。
【0143】第2の本発明において、不均一電荷輸送層および均一電荷輸送層を含む電荷輸送層全体の合計膜厚は、5〜100μmが適当であり、好ましくは10〜40μmの範囲に設定される。さらに好ましくは、15〜35μmの範囲である。
【0144】電荷輸送層が電荷発生層と露光光源の間に存在する場合、実効の光感度の低下を防ぐ上で、電荷輸送層は露光波長の光に対し事実上透明であることが望ましい。好ましくは、電荷輸送層における露光に用いる光の透過率は50%以上である。より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。しかしながら、低感度での使用が望まれる場合には、露光波長の光に対し吸収のある物質を添加し、実効的な光感度を調整することもできる。
【0145】第2の本発明においても、必要に応じて、感光層の上に保護層を設けてもよい。保護層を設けることにより、帯電部材から発生するオゾンや酸化性ガス等、および紫外光等の化学的または光化学的ストレス、あるいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に起因する機械的ストレスから感光層を保護し、感光層の実質の寿命を改善することができる。特に、薄層の電荷発生層を上層に用いる層構成において、効果が顕著である。当該保護層としては、第1の本発明において説明したものと同様である。また、第1の本発明において説明した、保護層と同様のブロッキング層を設けることもできる。さらに、第1の本発明において説明した酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等についても、各層または最上層中に添加することができる。
【0146】D:本発明のプロセスカートリッジプロセスカートリッジとは、電子写真装置の消耗部品を適時交換する目的で、電子写真装置の構成部品のいくつかをカートリッジに組み込み、容易に交換作業を行えるようにしたものである。プロセスカートリッジは、電子写真装置の中に装着された状態で取引される他、交換部品あるいは補修部品として、単体でも取引されている。
【0147】プロセスカートリッジに組み込まれ得る構成部品としては、一般に、帯電手段、像露光手段、およびクリーニング手段が挙げられ、これらをその目的に応じて任意に組み合わせることができる。
【0148】本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも電子写真感光体と、必要に応じて、帯電手段、像露光手段、およびクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段と、を含み、かつ、該電子写真感光体が前記本発明の電子写真感光体であることが特徴となる。プロセスカートリッジに組み込まれ得る電子写真感光体以外の構成部品については、特に制限は無く、従来公知の物が問題無く採用され得る。
【0149】E:本発明の電子写真装置本発明の電子写真感光体を搭載する電子写真装置としては、電子写真法によるものであれば如何なるものでも構わないが、特にデジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装置が好ましい。デジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装置とは、レーザーまたはLED等の光源を用い、2値化またはパルス幅変調や強度変調を行い多値化された信号に従い露光を行う電子写真装置であり、例としてLEDプリンター、レーザープリンター、レーザー露光式デジタル複写機などを挙げることができる。本発明の電子写真装置としては、電子写真感光体の表面を負に帯電させる帯電器と反転現像方式の現像器を備えたものが、画質等の点で、特に好ましい。
【0150】本発明の電子写真装置の一例を図8に模式的に示す。図8の電子写真装置はレーザープリンターであり、電子写真感光体である円筒形の感光体ドラム11の周りに、除電用光源である除電用LED12、帯電手段である帯電用スコロトロン13、像露光手段である露光用レーザー光学系14、現像器15、転写用接触帯電ロール16、および、クリーニング手段であるブレード式クリーニング器17が、この順序で配置されている。露光用レーザー光学系14は、例えば発信波長780nmの露光用レーザーダイオードを備えており、デジタル処理された画像信号に基づき発光する。発光したレーザー光14aはポリゴンミラーと複数のレンズ、ミラーにより走査されながら電子写真感光体表面を露光するように構成されている。尚、18は用紙を示す。
【0151】本発明の電子写真装置においては、感光体ドラム11が本発明の電子写真感光体である。勿論、感光体ドラム11と、必要に応じて、帯電用スコロトロン13、露光用レーザー光学系14、およびブレード式クリーニング器17からなる群より選ばれる少なくとも1つの手段と、を含み、かつ、該電子写真感光体が前記本発明の電子写真感光体であるプロセスカートリッジを含む構成であっても構わない。
【0152】本発明の電子写真装置について、図面を以って説明したが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、電子写真感光体以外の構成部品については、特に制限は無く、従来公知の物が問題無く採用され得る。
【0153】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、当業者は公知の知見から、以下の実施例に変更を加えることが可能である。
【0154】[合成例1]シクロヘキシリデンビスフェノールとホスゲンとから常法にて重縮合された、末端にフェノール由来のヒドロキシル基を有するポリカーボネート(重量平均分子量4万)500gと、p−ピコリン50gと、をテトラヒドロフラン2.0Lに溶解し、0℃に冷却した。ここに、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)100gを加え、35℃に昇温し6時間反応させた。これをメタノール10リットルに滴下し、1時間撹拌した後に沈降した固体を濾別した。さらにテトラヒドロフラン/メタノールによる再沈殿化処理を2回繰り返し、末端に重合開始基としてのアゾ基を有するポリカーボネートを得た。
【0155】得られた末端にアゾ基を有するポリカーボネート200gをテトラヒドロフラン4Lに溶解し、エレクトロン輸送活性基としてフルオレニリデンマロノニトリル構造を有する下記構造式(1)で示されるビニルモノマー400gと、メタクリル酸メチル200gと、を加え、脱気・窒素置換を充分に行った後に70℃で150時間加熱した。
【0156】
【化1】

【0157】これをメタノール20リットルに滴下し、沈降した固体を濾別した。さらにテトラヒドロフラン/メタノールによる再沈殿化処理を2回繰り返した。得られた固体は、1H−NMRスペクトルとGPC分析の結果、ポリカーボネート、上記構造式(1)で示されるビニルモノマーの単独重合物、および、ポリカーボネートブロック(電荷輸送不活性ブロック)と上記構造式(1)で示されるビニルモノマーの重合ブロック(電荷輸送活性ブロック)とからなるブロック共重合体の混合物(以下、「混合物A」と称する。)であることが判った。
【0158】また、1H−NMRスペクトルの解析から、混合物Aにおけるブロック共重合体の電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの重量組成比は、およそ2:3であった。
【0159】[合成例2]プロピリデンビスフェノールとイソフタル酸クロリドとから界面重縮合法にて重合された、末端にフェノール由来のヒドロキシル基を有するポリエステル(重量平均分子量3.5万)500gと、トリエチルアミン10gと、をテトラヒドロフラン2.0Lに溶解し、0℃に冷却した。ここに、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)200gを加え、35℃に昇温し6時間反応させた。これをメタノール10リットルに滴下し、1時間撹拌した後に沈降した固体を濾別した。さらにテトラヒドロフラン/メタノールによる再沈殿化処理を2回繰り返し、末端に重合開始基としてのアゾ基を有するポリエステルを得た。
【0160】得られた末端にアゾ基を有するポリエステル200gをテトラヒドロフラン4Lに溶解し、ホール輸送活性基としてテトラアリールベンジジン構造を有する下記構造式(2)で示されるビニルモノマー600gを加え、脱気・窒素置換を充分に行った後に70℃で150時間加熱した。
【0161】
【化2】

【0162】これをメタノール20リットルに滴下し、沈降した固体を濾別した。さらにテトラヒドロフラン/メタノールによる再沈殿化処理を2回繰り返した。得られた固体は、1H−NMRスペクトルとGPC分析の結果、ポリエステル、上記構造式(2)で示されるビニルモノマーの重合物、および、ポリエステルブロック(電荷輸送不活性ブロック)と、構造式(2)で示されるビニルモノマーの重合ブロック(電荷輸送活性ブロック)とからなるブロック共重合体の混合物(以下、「混合物B」と称する。)であることが判った。
【0163】また、1H−NMRスペクトルの解析から、混合物Bにおけるブロック共重合体の電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの重量組成比は、およそ2:3であった。
【0164】I)第1の本発明の実施例および比較例(実施例1)CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶3重量部、キシレン100重量部、およびテトラヒドロフラン300重量部とを混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理した後、合成例1で得られた混合物A67重量部と、トリフェニルアミン構造を有する下記構造式(3)で示されるホール輸送性低分子化合物30重量部を添加し、さらにボールミル法で2時間溶解分散処理し、単層型感光体用の感光層形成塗布液を調製した。
【0165】
【化3】

【0166】得られた感光層形成塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)上に浸漬塗布法にて塗布し、135℃において60分間加熱乾燥し、図3に示す構成の単層型の電子写真感光体を作製した。尚、感光層の膜厚は15μmであった。
【0167】このようにして得られた電子写真感光体を市販のレーザープリンター(Laser Press4150、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温常湿環境(25℃、50%RH)下にて、A4横方向に1万枚連続で画出しし、プリント試験を行った。1枚目と1万枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った評価結果を下記表1にまとめて示す。尚、評価に供した上記レーザープリンターは、図8に示される構成であり、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器を備えている。
【0168】(実施例2)アルミニウム製ドラムとして、ポリメタクリル酸メチル粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.2μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0169】(実施例3)アルミニウム製ドラムとして、ポリメタクリル酸メチル粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.2μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用い、エレクトロン輸送性ブロック共重合体67重量部、および、上記構造式(3)で示されるホール輸送性低分子化合物30重量部の代わりに、合成例2で得られた混合物B57重量部、および、3,5−ジメチル−3',5'−ジ−tert−ブチルジフェノキノン40重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0170】(実施例4)導電性支持体として、84mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を市販のフルカラーレーザー複写機(A−Color935、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温常湿環境(25℃、50%RH)下にて、A4横方向に1万枚連続で画出しし、プリント試験を行った。1枚目と1万枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った評価結果を下記表1にまとめて示す。尚、評価に供した上記レーザープリンターは、図8に示される構成であり、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器を備えている。
【0171】(比較例1)実施例1において、合成例1で得られた混合物Aの代わりに、合成例1の中途で得られたポリカーボネートを用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0172】(比較例2)CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶3重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体(VMCH、ユニオンカーバイド社製)3重量部、キシレン60重量部、および、酢酸ブチル40重量部と混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理して、電荷発生層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)上に浸漬塗布法にて塗布し、135℃において5分間加熱乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0173】次に、前記構造式(2)で示されるビニルモノマーの単独重合物100重量部、キシレン100重量部、および、テトラヒドロフラン300重量部を混合して電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、浸漬塗布法で上記電荷発生層上に塗布し、135℃において60分間加熱乾燥し、膜厚15μmの電荷輸送層を形成し、積層型の電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0174】(比較例3)アルミニウム製ドラムとして、ポリメタクリル酸メチル粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.2μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、比較例2と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。ただし、当初から画質が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0175】
【表1】

【0176】表1に示すように、第1の本発明の電子写真感光体は、優れた繰り返し安定性並びに機械的強度を有し、長期に亘って安定な高画質を提供するものであることがわかる。さらに、導電性支持体の表面性状にかかわらず干渉縞の発生が無く、また荒れた導電性支持体を用い、且つ下引き層を形成しなくとも濃度ムラが生じないと云う優れた特質を有し、既述の如き積層型の電子写真感光体における問題点が払拭されていることがわかる。
【0177】II)第2の本発明の実施例および比較例(実施例5)ジルコニウムアルコキシド化合物(商品名:オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)10重量部、シラン化合物(商品名:A1110、日本ユニカー社製)1重量部、イソプロパノール40重量部、および、n−ブタノール20重量部を混合し、下引き層形成用塗布液を調製した。得られた下引き層形成用塗布液を、アルミニウム基板(25×80×2mm、導電性基板)上に浸漬塗布法で塗布し、150℃において10分間加熱乾燥し、膜厚0.1μmの下引き層を形成した。
【0178】次に、CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶4重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(商品名:UCARソリューションビニル樹脂VMCH、ユニオンカーバイド社製)2重量部、キシレン67重量部、および酢酸ブチル33重量部と混合し、ガラスビーズとともにペイントシェーク法で2時間処理して分散して、電荷発生層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を浸漬塗布法で前記下引き層上に塗布し、100℃において10分間加熱乾燥し、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0179】さらに、合成例2で得られた混合物B20重量部をトルエン80重量部に溶解させて電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布法にて塗布した後、115℃で10分間加熱乾燥させて、膜厚15μmの不均一電荷輸送層を形成し、図4に示す層構成の電子写真用感光体を作製した。
【0180】このようにして得られた電子写真用感光体に対し、静電複写紙試験装置(エレクトロスタティックアナライザーEPA−8100、川口電機製作所社製)を用いて、常温高湿(25℃、85%RH)の環境下、電子写真特性の評価を行った。コロナ放電電圧を調整し、感光体表面を−750Vに帯電させた後、干渉フィルターを通し750nmに単色化したハロゲンランプ光を感光体表面上で1μW/cm2の光強度になるように調整し、7秒間照射したところ、E50%/E10%値は2.2であり、図2のグラフに示す如きS字型の光誘起電位減衰を示した。
【0181】(比較例4)不均一電荷輸送層を形成しなかったこと以外は、実施例5と同様にして電子写真用感光体を作製した。得られた電子写真用感光体の電子写真特性を、実施例5と同様にして評価したところ、その光誘起電位減衰曲線は図1のようなE50%/E10%値は5.2であり、図1のグラフに示す如きJ字型の光誘起電位減衰を示した。
【0182】(比較例5)電荷発生層を形成しなかったこと以外は、実施例5と同様にして電子写真用感光体を作製した。得られた電子写真用感光体の電子写真特性を、実施例5と同様にして評価したところ、全く光感度を示さなかった。
【0183】(実施例6)導電性支持体として、アルミニウム基板の代わりに30mm径のアルミニウムドラムを用いた以外は、実施例5と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を市販のレーザープリンター(Laser Press 4105、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温高湿環境(25℃、85%RH)下にて、A4横方向に1万枚連続で画出しし、プリント試験を行った。この際、最適な露光量を得るため、レーザー光の光路にNDフィルターを入れた。
【0184】画質評価は、1枚目と1万枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った。その結果、1枚目においても、1万枚連続印字後においても、細線再現性、階調性等いずれも良好で、優れた印字品質であり、第2の本発明の電子写真感光体が耐久性にも優れたものであることがわかる。
【0185】(比較例6)導電性支持体として、アルミニウム基板の代わりに30mm径のアルミニムドラムを使用した以外は、比較例4と同様に電子写真用感光体を作製し、実施例6と同様に印字試験を行った。その結果、1枚目において細線再現性の点で実施例6に比べ劣っており、1万枚連続印字後においては、若干の黒点の発生が認められた。
【0186】
【発明の効果】基準発明の電子写真感光体は、優れた特性を有する電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体を備えているため、高性能で且つ耐久性に優れたものとなるという卓越した効果を奏する。その結果、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置は、優れた画質を長期に亘り実現することができる。また、第1の本発明の電子写真感光体は、従来の積層構成の電子写真感光体における問題を払拭するものであり、低コストで、高性能で、且つ耐久性に優れている。
【0187】一方、第2の本発明の電子写真感光体は、優れた特性を有する電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体を電荷輸送層に含むものであり、特に当該電荷輸送層を不均一電荷輸送層とすることで、得られる機能分離積層感光体は、優れたS字性を示し、それを使用したデジタル式電子写真装置は、優れた印字品質および耐久性を実現する。
【0188】そして、これら優れた性能を有する本発明の電子写真感光体を含むプロセスカートリッジおよび電子写真装置は、優れた画質を長期に亘り実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【出願日】 平成12年4月21日(2000.4.21)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2001−305767(P2001−305767A)
【公開日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願番号】 特願2000−121156(P2000−121156)