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【発明の名称】 電子写真感光体
【発明者】 【氏名】長尾 由香

【氏名】牧野 要

【氏名】臨 護

【氏名】柳下 彰彦

【要約】 【課題】高感度、低残留電位、高移動度、高耐久等の電子写真感光体の基礎特性を高性能に維持しつつ、さらにフォトメモリー特性が改良された、実用上極めて高性能な電子写真感光体を提供する。

【解決手段】導電性持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が、電荷発生物質、PM3パラメータを使った半経験的分子軌道計算を用いた構造最適化計算(以下「半経験的分子軌道計算」と称する)による分極率αの計算値αcalが、次式【数1】αcal>70(Å)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が、電荷発生物質、PM3パラメータを使った半経験的分子軌道計算を用いた構造最適化計算(以下「半経験的分子軌道計算」と称する)による分極率αの計算値αcalが、次式【数1】αcal>70(Å)
を満たし、かつ半経験的分子軌道計算による双極子モーメントPの計算値Pcalが、次式【数2】Pcal<1.8(D)
を満たす電荷輸送物質、及び該電荷輸送物質の透過率50%となる波長よりも長波長側に透過率50%となる波長を有する化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】 電荷輸送物質の透過率50%となる波長よりも長波長側に透過率50%となる化合物が、電荷輸送性を有するものである請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】 電荷輸送物質の透過率50%となる波長よりも長波長側に透過率50%となる波長を有する化合物がヒドラゾン化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】 ヒドラゾン化合物が下記一般式(1)で表されるものである請求項3に記載の電子写真感光体。
【化1】

(一般式(1)中、R1、R2は置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基を表し、nは1又は2を表し、Aは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基を表す。)
【請求項5】 電荷輸送物質が、下記一般式(2)で表されるアリールアミン系化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
【化2】

(一般式(2)中、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換アミノ基を表し、これらはお互いに同一でも異なっていてもよい。k、l、m、n、o及びpは、それぞれ、0〜4の整数を表し、2以上の整数の場合に複数存在するR3〜R8のそれぞれは、同一でも異なっていてもよい。また、一般式(2)中、X1は、下記一般式(3)を、X2は、下記一般式(4)を表す。)
【化3】

【化4】

(一般式(3)、(4)中、iは1または2の整数を表し、hは0〜2の整数を表し、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換基を有してもよい複素環基を表し、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。さらにR12とR13からなる対、又はR17とR18からなる対は縮合して炭素環基または複素環基を形成してもよい。但しR12とR13からなる対、又はR17とR18からなる対は、どちらか一方が水素原子またはアルキル基の場合は、もう一方はアリール基、又は複素環基である。i=2の場合、それぞれのR9とR10は同一でも異なっていてもよく、またh=2の場合、それぞれのR17とR18は同一でも異なっていてもよい。X1及びX2は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項6】 電荷発生物質がオキシチタニウムフタロシアニンである請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体に500nm以上の光を用いて静電潜像を形成することを特徴とする電子写真方法。
【請求項8】 電子写真感光体に静電潜像を形成する光がレーザー光である請求項7に記載の電子写真方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真感光体に関するものである。さらに詳しくは有機系の光導電性物質を含有する感光層を有する高感度・高性能の電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電子写真用感光体の感光層にはセレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機系の光導電性物質が広く用いられてきた。しかしながら、セレン、硫化カドミウムは毒物として回収が必要であり、セレンは熱により結晶化するため耐熱性に劣り、硫化カドミウム、酸化亜鉛は耐湿性に劣り、また酸化亜鉛は耐刷性がないなどの欠点を有しており、新規な感光体の開発の努力が続けられている。最近は、有機系の光導電性物質を電子写真用感光体の感光層に用いる研究が進み、そのいくつかが実用化された。有機系の光導電性物質は無機系のものに比し、軽量である、成膜が容易である、感光体の製造が容易である、種類によっては透明な感光体を製造できる等の利点を有する。
【0003】これら有機光導電性化合物を用いた電子写真感光体は、電荷輸送層と電荷発生層を積層させた機能分離型の感光体として利用されることが多い。これは電気的、機械的双方の特性を満足させる電子写真感光体の設計が容易だからである。ここで電子写真感光体が満足すべき電気的、機械的双方の特性には、初期的に優れた性能を有するだけでなく、繰り返し使用される場合に十分な耐久性が必要なことも含まれる。
【0004】電子写真感光体の露光部にトナーを付着させる、いわゆる反転現像方式の電子写真プロセスにおいて、初期的に優れた性能とは、使用される電子写真プロセスにマッチする最適感度・電気特性を有することをいい、繰り返し使用される場合の十分な耐久性とは、繰り返し使用時に電子写真感光体表面に直接加えられる、コロナ又は直接帯電、画像露光、トナー現像、転写工程及び表面クリーニング等による、電気的、機械的外力による劣化に対する耐久性を有することをいう。
【0005】電子写真感光体が繰り返し使用される場合の発生する電気的劣化は、電子写真感光体特性に対し、繰り返し使用した場合の暗部電位(Vo)の低下や露光電位(VL)の上昇として現れる他、光が照射された部分にキャリアーが滞留し光が照射していない部分と電位差を生じる、いわゆるフォトメモリーの現象としても現れる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上の諸特性を満足させるための一つの手段として、優れた電気的特性、機械的特性を有する電荷輸送物質の開発が望まれる。このような電荷輸送物質として、例えば特開平10−312071号公報には特定のパラメータを満たす電荷輸送物質が高感度、低残留電位、高移動度で、高耐久性の電子写真感光体を提供する旨開示されている。
【0007】しかしながら、使用される電子写真プロセスの構成によっては、上記開示されている特定のパラメータを有する電荷輸送物質においても、未だフォトメモリー特性が不十分であった。さらに、このフォトメモリーの問題は、前記したように電子写真感光体が電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合に発生するだけでなく、コピー機、プリンターの製造時に電子写真感光体に照射される光、または、市場においてコピー機・プリンターのメンテナンス時に電子写真感光体を外部に取り出したときに照射される光によっても引き起こされる場合があり、電子写真感光体の特性上軽視できない技術的課題であった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記実情に鑑みて鋭意検討を行った結果、これら、高感度、低残留電位、高移動度で高耐久性の電子写真感光体を提供する特定のパラメータを有する電荷輸送物質を使用し、且つ特定の化合物を感光層に含有させることにより、前記電荷輸送物質により発現される高感度、低残留電位、高移動度、高耐久等の種々の長所を損なうことなく、さらにフォトメモリー特性を改善できることを見い出し本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明の第一の要旨は、導電性持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が、電荷発生物質、PM3パラメータを使った半経験的分子軌道計算を用いた構造最適化計算(以下「半経験的分子軌道計算」と称する)による分極率αの計算値αcalが、次式【0010】
【数3】αcal>70(Å)
を満たし、かつ半経験的分子軌道計算による双極子モーメントPの計算値Pcalが、次式【0011】
【数4】Pcal<1.8(D)
を満たす電荷輸送物質、及び該電荷輸送物質の透過率50%となる波長よりも長波長側に透過率50%となる波長を有する化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体、に存する。
【0012】また本発明の第二の要旨は、上記電子写真感光体に500nm以上の光で静電潜像を形成することを特徴とする電子写真方法、に存する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明につき詳細に説明する。本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、電荷発生物質及び後述する特定の電荷輸送物質を含有する感光層を有し、さらに感光層中に該電荷輸送物質よりも吸収端が長波長側にある物質を含有させることにより、高感度、低残留電位、高移動度、高耐久、かつフォトメモリー特性に優れる電子写真感光体が得られる。
<導電性支持体>導電性支持体としては公知の電子写真感光体に採用されているものがいずれも使用できる。具体的には例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料からなるドラム、シートあるいはこれらの金属箔のラミネート物、蒸着物、あるいは表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化すず、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、紙等の絶縁性支持体が挙げられる。更に、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙、紙管等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスチックのシートやドラムが挙げられる。又、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物で導電処理したプラスチックフィルムやベルトが挙げられる。なかでもアルミニウム等の金属のエンドレスパイプが好ましい支持体である。
<バリアー層>本発明においては、導電性支持体と感光層との間には通常使用されるような公知のバリアー層が設けられていてもよい。
【0014】バリアー層としては、例えばアルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドなどの樹脂を用いる有機層が使用される。有機層をバリアー層として用いる場合には単独あるいはチタニア、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム等の金属酸化物あるいは銅、銀、アルミニウム等の金属微粉末を分散させて用いてもよい。有機層の場合は、前述の樹脂を単独或いは前述金属酸化物・金属微粉末とともに溶媒に溶解あるいは分散し、前述の導電性支持体の上にワイヤーバー、ドクターブレード、フィルムアプリケータ、浸積、スプレーなどの塗布方法により塗工し乾燥させることにより形成することができる。これらのバリアー層の膜厚は適宜設定できるが、0.05〜20μm、好ましくは0.1〜10μmの範囲で用いることが好ましい。
<感光層>前述したバリアー層の上には、電荷発生物質及び電荷輸送物質を含有する感光層が形成される。
(1)電荷輸送物質本発明における感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型であっても、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層に分離した積層型でもよいが、何れの場合にも以下に詳述する特定の電荷輸送性物質を用いることを必要とする。
【0015】本発明に用いられる電荷輸送物質は、半経験的分子軌道計算による、分極率αの計算値αcalが、次式【0016】
【数5】αcal>70(Å)
を満たし、かつ半経験的分子軌道計算による双極子モーメントPの計算値Pcalが、次式【0017】
【数6】Pcal<1.8(D)
を満たす必要がある。なお、本発明における上記計算値は、半経験的パラメータとしてPM3パラメータセットを用い半経験的分子軌道計算プログラムMOPACのバージョンMOPAC93を用いて計算したものである(PM3及びMOPACに関しては、J.J.P Stewart, Journal of Computer−Aided Molecular Design,4,1(1990)ならびにその中の引用文献を参照)。
【0018】分極率の計算値αcalは、好ましくは、【0019】
【数7】αcal>80(Å)であり、更に好ましくは、【0020】
【数8】αcal>85(Å)であり、最も好ましくは、【0021】
【数9】αcal>90(Å)
である。また、総極子モーメントの計算値Pcalは、好ましくは、【0022】
【数10】Pcal<1.7(D)であり、更に好ましくは、【0023】
【数11】Pcal<1.65(D)
である(特定の分極率及び総極子モーメントを示す電荷輸送物質が高性能な電子写真特性を示す考察については、特開平10−312071号公報参照)。
【0024】上記に該当する電荷輸送物質としては、下記一般式(2)で表されるアリールアミン系化合物が挙げられる。
【0025】
【化5】

【0026】(一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換アミノ基を表し、これらはお互いに同一でも異なっていてもよい。k、l、m、n、o及びpは、それぞれ、0〜4の整数を表し、2以上の整数の場合に複数存在するR1〜R6のそれぞれは、同一でも異なっていてもよい。また、一般式(2)中、X1は、下記一般式(3)を、X2は、下記一般式(4)を表す。)
【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】(一般式(3)、(4)中、iは1または2の整数を表し、hは0〜2の整数を表し、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、又は、置換基を有してもよい複素環基を表し、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。さらにR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は縮合して炭素環基または複素環基を形成してもよい。但しR10とR11からなる対、又はR15とR16からなる対は、どちらか一方が水素原子またはアルキル基の場合は、もう一方はアリール基、又は複素環基である。i=2の場合、それぞれのR7とR8は同一でも異なっていてもよく、またh=2の場合、それぞれのR15とR16は同一でも異なっていてもよい。X1及びX2は同一でも異なっていてもよい。)
電荷輸送物質の具体的な化合物の例としては例えば以下のNo.1〜3のような化合物が挙げられる。構造は、考え得る種々の初期構造から出発し、最安定構造を求めた。単一の構造にならない場合は、これらの平均値を求めた。
【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
【化10】

【0033】上記化合物No.1〜3の分極率αの計算値αcal、双極子モーメントPの計算値Pcalを表−1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】(2)電荷輸送物質の透過率50%となる波長よりも長波長側に透過率50%となる波長を有する化合物本発明においては感光層中に、前記電荷輸送物質の透過率50%となる波長よりも長波長側に透過率50%となる波長を有する化合物も添加される。ここで、「透過率50%となる波長」とは、該電荷輸送物質及び該化合物のそれぞれについて、トルエンを溶媒とする5重量%溶液を調整し、その溶液の透過率を分光光度計で測定した場合に、透過率が50%となるような波長をいう。
【0036】この化合物の添加量は、通常、前記電荷輸送質100重量部に対し、1〜80重量部、好ましくは2〜50重量部、より好ましくは、3〜30重量部である。この物質はフォトメモリーを改良するために添加されるものであるが、単なる添加剤としてだけでなく、電荷輸送物質として機能するものであっても良い。このような化合物としては、代表的にはヒドラゾン化合物が挙げられ、例えば下記一般式(1)で表されるものである。
【0037】
【化11】

【0038】(一般式(1)中、R1、R2は置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基を表し、nは1又は2を表し、Aは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は芳香族複素環基を表す。)
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下のヒドラゾン化合物(NO.4)が挙げられる。
【0039】
【化12】

【0040】具体的に、前述した電荷輸送物質(No.1)と上記ヒドラゾン化合物(No.4)をそれぞれ、トルエン溶媒中に5重量%となるように溶解させた溶液についての透過率を図−1に示す。ここで、透過率の測定は、日立製作所製の分光光度計U−3210形を使用して行われた。図−1から、電荷輸送物質(No.1)の50%透過率の波長が、475nm付近にあるのに対し、ヒドラゾン化合物(No.4)の50%透過率の波長は520nm付近にあり、ヒドラゾン化合物(No.4)の50%透過率の波長がより長波長側にあることがわかる。
(3)積層型感光層■電荷発生層積層型の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を積層したものでも、電荷輸送層の上に電荷発生層を積層したものでもよい。
【0041】はじめに電荷発生層について説明する。前記下引き層の上には、好ましくは電荷発生層が形成される。電荷発生層は、電荷発生物質を蒸着することによっても形成することができるが、電荷発生物質および必要に応じ他の有機光導電性化合物、色素、電子吸引性化合物等をバインダー樹脂と共に溶剤に溶解あるいは分散し、得られた塗布液をワイヤーバー、ドクターブレード、フィルムアプリケータ、浸積、スプレーなどの公知の塗布方法により塗工し乾燥させることにより形成することができる。
【0042】電荷発生物質としては、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム,アモルファスシリコン等の無機光伝導性粒子、無金属フタロシアニン、金属含有フタロシアニン、ペリノン系顔料、チオインジゴ、キクリドン、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料、テトラキス系アゾ顔料、シアニン系顔料等の有機光伝導性粒子が挙げられる。更に、多環キノン、ピリリウム塩、チオピリリウム塩、インジゴ、アントアントロン、ピラントロン等の各種有機顔料、染料が使用できる。中でも無金属フタロシアニン、銅、塩化インジウム,塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又は、その酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料及びペリレン系顔料が好ましく、さらにオキシチタニウムフタロシアニンが好ましい。
【0043】バインダー樹脂としては、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ、エポキシ、ウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形の分散層で使用してもよい。更に、バインダー樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリアミド、けい素樹脂等が挙げられる。
【0044】この場合の電荷発生物質の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して通常20〜2000重量部、好ましくは30〜500重量部、より好ましくは33〜500重量部の範囲より使用され、電荷発生層の膜厚は通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、より好ましくは0.15〜0.8μmが好適である。また電荷発生層は塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
■電荷輸送層積層型の場合、電荷発生層の上に、主として本発明に用いられる上述した電荷輸送物質及びバインダー樹脂からなる電荷輸送層が形成される。
【0045】バインダー樹脂としては、例えばポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネイト、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂など重合体、及びその共重合体でもよく、又これらの部分的架橋硬化物も使用できる。さらに、前記バインダー樹脂の2種以上をブレンドして用いてもよい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して30〜90重量部、好ましくは40〜70重量部の範囲で使用される。また電荷輸送層には、必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。電荷輸送層の膜厚は10〜60μm、好ましくは10〜45μm、さらに好ましくは25〜40μmの厚みで使用されるのがよい。
【0046】電荷輸送層の成形方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液をワイヤーバー、ドクターブレード、フィルムアプリケータ、浸積、スプレーなどの公知の塗布方法により塗工し乾燥させることにより形成することができる。
(4)単層型感光層次に感光層が単層型の場合について説明する。キャスティング法で単層感光層を設ける場合、多くは電荷発生物質と電荷輸送物質よりなる機能分離型のものが挙げられる。即ち、電荷発生物質と電荷輸送物質には、前出の材料を用いることができる。特に本発明においては、電荷輸送物質は、前記材料が用いられる。単層感光層は、電荷発生物質及び前記電荷輸送物資及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤、電子輸送剤等を添加することもできる。バインダー樹脂としては、先に積層型の電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂をそのまま用いる他に、前出の積層型の電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
【0047】単層型感光層の場合、電荷発生物質、前記電荷輸送物質及びバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより形成できる。塗布は、ワイヤバー、ドクターブレード、フィルムアプリケータ、浸漬やスプレーなどの公知の塗布方法を用いて行うことができる。ビリリウム系染料、ビスフェノールA系ポリカーボネイトから形成される非晶錯体に、電荷輸送物質を添加した感光体も、適当な溶媒から同様な塗工法で形成できる。単層感光体の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
<電子写真感光体>本発明の電子写真感光体は、上述したように導電性支持体上に少なくとも感光層を設け、また必要に応じて前記導電性導電性支持体と前記感光層の間にバリアー層を設けてなるものであるが、必要に応じて、さらに、中間層、透明絶縁層、表面保護層等を有していてもよいことは言うまでもない。
【0048】例えば、本感光体に表面保護層を設ける場合、保護層の厚みは0.01〜20μmが可能であり、好ましくは0.1〜10μmである。保護層には前記のバインダーを用いることができるが、前記の電荷発生剤、電荷輸送剤、添加剤、金属、金属酸化物などの導電材料、滑剤等を含有しても良い。さらには、最表面層として従来公知の例えば熱可塑性或いは熱硬化性ポリマーを主体とするオーバーコート層を設けても良い。
【0049】このようにして得られる電子写真感光体は長期間にわたって優れた耐刷性を維持する感光体であり、複写機、プリンター、ファックス、製版機等の電子写真分野に好適である。
<電子写真装置及び電子写真方法>本発明の電子写真感光体を使用する複写機・プリンター等の電子写真装置は、少なくとも帯電、露光、現像、転写の各プロセスを含むが、どのプロセスも通常用いられる方法のいずれを用いても良い。
【0050】帯電方法(帯電器)としては、例えばコロナ放電を利用したコロトロンあるいはスコロトロン帯電、導電性ローラーあるいはブラシ、フィルムなどによる接触帯電などいずれを用いても良い。このうち、コロナ放電を利用した帯電方法では暗部電位を一定に保つためにスコロトロン帯電が用いられることが多い。本発明において、露光は、通常、波長500nm以上のものを用い、具体的には、He−Ne等のレーザー光、あるいは、ハロゲンランプ、蛍光灯等が用いられるが、レーザー光を用いることがより好ましい。
【0051】現像方法としては、磁性あるいは非磁性の一成分現像剤、二成分現像剤などを接触あるいは非接触させて現像する一般的な方法が用いられる。転写方法としては、コロナ放電によるもの、転写ローラーあるいは転写ベルトを用いた方法等いずれでもよい。転写は、紙やOHP用フィルム等に対して直接行っても良いし、一旦中間転写体(ベルト状あるいはドラム状)に転写したのちに、紙やOHP用フィルム上に転写しても良い。
【0052】通常、転写の後、現像剤を紙などに定着させる定着プロセスが用いられ、定着手段としては一般的に用いられる熱定着、圧力定着などを用いることができる。これらのプロセスのほかに、通常用いられるクリーニング、除電等のプロセスを有しても良い。
【0053】
【実施例】以下に実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中「重量部」とは「重量%」を示す。
実施例1実験は、導電性支持体と感光層の間に下引き層を設ける電子写真感光体を使用して検討した。下引き層は、表面を珪素化合物で被覆した酸化チタンとポリアミド樹脂を含有するものを用いたが、具体的な形成方法は以下の通りである。すなわち、実験に用いたメチル水素ポリシロキサン表面酸化処理酸化チタンは、まず、酸化チタンとして石原産業(株)製 製品名TTO−55N(結晶型 ルチル1次粒径0.03〜0.05um)を用い、この表面にメチル水素ポリシロキサンを3重量%均一に施して調製した。このようにして得たメチル水素ポリシロキサン処理酸化チタニアは、混合アルコール(メタノール/1−プロパノール=7/3)とともにボールミルで16時間分散された。次に、得られた酸化チタン分散液を特開平4−31870号公報の実施例で記載された製造法により製造された下記構造のランダム共重合体ポリアミドの混合アルコール(メタノール/1−プロパノール=70/30)溶液に加えた。最終的に酸化チタン/ナイロン比3/1(重量比)で固形分濃度16重量%の分散液を調整した。
【0054】
【化13】

【0055】この分散液をポリエステルフィルム上に蒸着したアルミニウム蒸着面上にバーコーターにより乾燥後の膜厚が1.3μmとなるように下引き層を設けた。粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラック角(2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークを示し、7.4°、9.7°及び24.2°に回折ピークを示す結晶系のオキシチタニウムフタロシアニン10重量部を200重量部の4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2に加え、サンドクラインドミルにて粉砕分散処理を行い、顔料分散予備液を調整した。これを、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)5重量部の10%メタノール溶液と混合し分散液を作成した。
【0056】そして、この分散液を前述の下引き層の上にバーコーターにより乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を設けた。この電荷発生層の上に、特開平9−244278号公報に開示された方法で製造された、前記電荷輸送物質(No.1)40重量部、および、前記ヒドラゾン化合物(No.4)3重量部、さらに、下記のシアン化合物0.3重量部【0057】
【化14】

【0058】及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)8重量部、特開平3−221962号公報の実施例中に記載された製造法により製造された、2つの繰り返し構造単位を有する下記ポリカーボネート樹脂(モノマーモル比1:1)100重量部【0059】
【化15】

【0060】をテトラヒドロフラン、トルエン混合溶液 1000重量部で溶解させた溶液をフィルムアプリケータにより塗布し、乾燥後の膜厚が30μmとなるように電荷輸送層を設けた。この様にして作成した感光体を感光体Aとする。
比較例1実施例1において、ヒドラゾン化合物(No.4)3重量部を除いた電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Bとする。
【0061】実施例2電荷輸送物質(No.1)を、特開平9−244278号公報に開示された方法で製造された、電荷輸送物質(No.2)に変更した以外は、実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Cとする。
比較例2実施例2において、前記ヒドラゾン化合物(No.4)3重量部を除いた電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は実施例2と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Dとする。
【0062】比較例3実施例1において、前記ヒドラゾン化合物(No.4)の代わりに、下記ヒドラゾン化合物3重量部を添加して作成した電荷輸送層塗布溶液を用いて電荷輸送層を設けた以外は実施例1と同様にして感光体を作成した。この様にして作成した感光体を感光体Eとする。
【0063】
【化16】

【0064】上記ヒドラゾン化合物5重量%をトルエン溶媒中に溶解したものの透過率を測定した結果を図−2に示す。図−2から、上記ヒドラゾン化合物の50%透過率は450nm付近にあり、電荷輸送物質(No.1)のそれよりも短波長側にあることがわかる。
<電子写真感光体の評価>上記のようにして得た感光層を有する電子写真感光体を感光体特性測定機に装着して、温度25℃/相対湿度50%(NN環境)及び、温度5℃/相対湿度10%(LL環境)の各環境における電気特性を測定した。測定項目は、表面電位が−700Vになるように帯電させた後、780nmの光を照射したときの半減露光量(E1/2)、更に−700Vに帯電して5秒放置後の電位保持率(DDR5)、660nmのLED光を照射した後のVr(残留電位)である。その結果を表―2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】この結果から、前記ヒドラゾン化合物(No.4)を添加しても、感光体の基本特性たる初期の電気特性はほとんど損なわれないことがわかる。さらに、感光体A及びBについては、帯電・露光・除電の電子写真プロセスを40000回繰り返し行うことにより、その耐久性を評価した。繰り返し使用の前後での暗部電位(Vo)と露光電位(VL)を表−3に示す。尚、VLは、波長780nm・強度2.9uJ/cm2の光を感光体に露光した場合の感光体の表面電位を測定することによって求めた。
【0067】
【表3】

【0068】表−3の結果から、電子写真感光体の耐久性を図る指標となる、Voの低下、VLの上昇は、ヒドラゾン化合物(No.4)の添加の有無に関わらずほぼ同等であることがわかる。つまり、電子写真感光体としての耐久性も、前記ヒドラゾン化合物の添加により損なわれないことがわかる。次に、感光体A、感光体B、感光体C、感光体D、感光体Eについて、フォトメモリ性を測定した。フォトメモリ性は3000luxの蛍光灯を5分間照射する前後での暗部電位(Vo)及び、照射後190回帯電―露光を繰り返した後のVoを測定することによって評価した。尚、フォトメモリ性測定用の評価機として(株)川口電機製作所製、モデルEPA−8100を用いた。その結果を表−4に示す。表中、括弧内に示された数字は、照射前Voからの差である。
【0069】
【表4】

【0070】蛍光灯照射によっても、感光体の電位変動が小さい電子写真感光体の方がフォトメモリー性に優れるといえるが、この点において得られた結果を考察すると、前記No.4化合物を電荷輸送層中に添加することによって、感光体A及びCのいずれにおいても、3000luxの光を5分間照射した後のVoの低下量が大幅に軽減され、結果として帯電―露光を繰り返し行った際のVoの回復も早くなることがわかる。つまり本結果から、ヒドラゾン化合物(No.4)の添加によりフォトメモリ性が大幅に改良されることがわかる。
【0071】一方、ヒドラゾン化合物(NO.4)とは異なる構造のヒドラゾン化合物を含有した感光体Eでは、フォトメモリ性の改良はほとんど見られない。これは、図−2に示したように、50%透過率の波長が電荷輸送物質(No.1)よりも短波長側にあるためであると考えられる。すなわち、フォトメモリ発生の要因は、■電子写真感光体が電子写真プロセス中で繰り返し露光されること、又は■電子写真感光体が外部の光に露光されること、により必要以上に発生したキャリアが感光層中に滞留するためと考えられる。そして本発明においては、感光層中に電荷輸送物質よりも長波長側に吸収を有する化合物を含有させることにより、この物質が上記の必要以上にキャリアを発生される原因となる、いわゆる「余分に感光体に照射される光」を吸収するため、フォトメモリ性が改良されると考えられるのである。従って、感光体Eにおいて添加されたヒドラゾン化合物は、電荷輸送物質よりも短波長側に吸収を有するため(感光体に照射される余分な光を吸収しない)、フォトメモリ性は改良されない結果となったと考えられるのである。
【0072】但し、電荷輸送物質よりも長波長側に吸収を持つ化合物であれば、いずれのものでも添加してよいというわけではない。つまり前記化合物を添加しても、電子写真感光体の基礎特性である、初期電気特性及び耐久性を実使用に耐えうるだけの性能を維持させる必要があるからである。本発明により、これら電子写真感光体としての基礎特性を損なうことなく、さらにフォトメモリ性を改良する電子写真感光体を得ることができる。
【0073】
【発明の効果】本発明により、高感度、低残留電位、高移動度、高耐久等の電子写真感光体の基礎特性を高性能に維持しつつ、さらにフォトメモリー特性が改良された、実用上極めて高性能な電子写真感光体を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成12年4月19日(2000.4.19)
【代理人】 【識別番号】100103997
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 曉司
【公開番号】 特開2001−305762(P2001−305762A)
【公開日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願番号】 特願2000−117799(P2000−117799)