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【発明の名称】 加熱定着装置
【発明者】 【氏名】月岡 誉唯

【要約】 【課題】クラウン形状のローラを用いてもシワが発生せず、かつ精度面からくる製作コストがアップしない加熱定着装置を提供する。

【解決手段】加熱定着ローラ2には、その径が長さ方向にわたって逆クラウン形状に変化しているローラを用い、加圧ローラ3には、その径が長さ方向にわたって正クラウン状に変化しているローラを用いる。中央部と端部、それぞれのニップ速度Vm、Veを0.995<Ve/Vm<1.01なる関係があり、またニップ部の線速の速度分布が中央部に関して概ね対称で、中央部から端部にかけて徐々に一定の割合で速くなるように設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に加熱部材を有する薄肉の加熱定着ローラと、該加熱定着ローラに圧接する加圧ローラを備える加熱定着装置において、上記加熱定着ローラの径が長さ方向にわたって逆クラウン形状で、かつ上記加圧ローラの径が長さ方向にわたって正クラウン形状に変化しており、上記加熱定着ローラと上記加圧ローラとの圧接部分であるニップ部の線速が中央部でVm、端部でVeの時、これら両線速Vm、Veの間に、0.995<Ve/Vm<1.01なる関係があり、また上記ニップ部の線速の速度分布が、上記中央部に関して概ね対称で、上記中央部から上記端部にかけて徐々に一定の割合で変化することを特徴とする加熱定着装置。
【請求項2】 内部に加熱部材を有する薄肉の加熱定着ローラと、該加熱定着ローラに圧接する加圧ローラを備える加熱定着装置において、上記加熱定着ローラの径が長さ方向にわたって逆クラウン形状で、かつ上記加圧ローラの径が長さ方向にわたって正クラウン形状に変化しており、上記加圧ローラの略中央部の径が上記加熱定着ローラの略中央部の径以下であることを特徴とする加熱定着装置。
【請求項3】 上記加熱定着ローラと上記加圧ローラとの圧接部分へ転写シートをガイドする入り口ガイド板が、上記加熱定着ローラの撓み形状に沿う弓形状を有することを特徴とする請求項1または2の加熱定着装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる熱ローラ方式を用いた加熱定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】一般にこの種の加熱定着装置は、ヒータを内蔵した加熱定着ローラと、この加熱定着ローラに圧接する加圧ローラとから構成されている。トナー像を転写された転写シートを加圧ローラによって加熱定着ローラに圧接させ、ヒータの熱と圧接時の圧力によってトナー像を転写シートに定着させている。
【0003】加熱定着ローラには、加圧ローラによって高い圧力が付与されるため、一般に加熱定着ローラは、その変形を防止するために厚肉の部材で形成されている。しかしながら、加熱定着ローラを厚肉の部材で形成すると、内部に設けるヒータの熱容量を大きくしなければならず、消費電力が増大する。また、内部に設けたヒータからの熱が加熱定着ローラ外周面に達するまでに時間が掛かり、定着装置の立ち上がりが遅れるという問題点もある。
【0004】そこで、加熱定着ローラを薄肉の円筒体で構成し、ヒータの熱容量を小さくすると共に定着装置の立ち上がりを早めることが考えられるが、加熱定着ローラが薄肉の円筒体で構成されると、加熱定着ローラが半径方向に潰れたり、弓状に撓んでしまい、加圧ローラとの間に隙間が発生することによって定着不良が生じるという問題点がある。
【0005】このような問題点を解決するため、特開平7−56456号公報に開示の技術では、加熱定着ローラの径を長さ方向にわたって一定となるように形成する一方で、加圧ローラを長さ方向両端よりも長さ方向中央の方が径が太くなるように正クラウン形状に形成し、それにより加熱定着ローラが荷重で半径方向に潰れたり、弓状に撓むことによって、加熱定着ローラへの加圧ローラの圧力が長さ方向にわたって一定となるようにしている。
【0006】ところで、加圧ローラを正クラウン形状にすることにより転写シートにシワが発生しやすくなることが一般に広く知られているが、特開平7−56456号公報に開示の技術では、加熱定着ローラの回転速度を長さ方向にわたって一定として用紙にシワが発生することは無いとしている。しかしながら、回転速度を一定にしてシワの発生を防止する技術は些細な要因によってシワの発生を招き、また製造上においても精度が求められるためコストアップの原因となり得るという問題がある。
【0007】この正クラウン形状にしたことによるシワの発生を防ぐ手段として、特開平8−63027号公報には、加熱定着ローラが正クラウン形状の場合に加熱定着ローラと加圧ローラとの間に形成されるニップ形状を一様にし、ニップ速度を一定にすることでシワの発生を防止する技術が開示されている。しかしながらこの特開平8−63027号公報に開示の技術も、特開平7−56456号公報の技術と同様に些細な要因によってシワの発生を招き、また製造上においても精度が求められるためコストアップの原因となり得るという問題は解決できていない。
【0008】そこで本発明は、クラウン形状のローラを用いてもシワが発生せず、かつ精度面からくる製作コストがアップしない加熱定着装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る加熱定着装置は、上記目的を達成するために、内部に加熱部材を有する薄肉の加熱定着ローラと、該加熱定着ローラに圧接する加圧ローラを備える加熱定着装置において、上記加熱定着ローラの径が長さ方向にわたって逆クラウン形状で、かつ上記加圧ローラの径が長さ方向にわたって正クラウン形状に変化しており、上記加熱定着ローラと上記加圧ローラとの圧接部分であるニップ部の線速が中央部でVm、端部でVeの時、これら両線速Vm、Veの間に、0.995<Ve/Vm<1.01なる関係があり、また上記ニップ部の線速の速度分布が、上記中央部に関して概ね対称で、上記中央部から上記端部にかけて徐々に一定の割合で変化することを特徴とする。
【0010】同請求項2に係るものは、上記目的を達成するために、内部に加熱部材を有する薄肉の加熱定着ローラと、該加熱定着ローラに圧接する加圧ローラを備える加熱定着装置において、上記加熱定着ローラの径が長さ方向にわたって逆クラウン形状で、かつ上記加圧ローラの径が長さ方向にわたって正クラウン形状に変化しており、上記加圧ローラの略中央部の径が上記加熱定着ローラの略中央部の径以下であることを特徴とする。
【0011】同請求項3に係るものは、上記目的を達成するために、上記加熱定着ローラと上記加圧ローラとの圧接部分へ転写シートをガイドする入り口ガイド板が、上記加熱定着ローラの撓み形状に沿う弓形状を有することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施対象となる加熱定着装置の一例を示す断面図、図2は本発明に係る加熱定着装置の拡大断面図(A)と加熱定着ローラ及び加圧ローラの平面図(B)である。図示の加熱定着装置1は、加熱定着ローラ2、加圧ローラ3から主に構成されていて、円筒体からなる加熱定着ローラ2の表面にはフッ素樹脂加工が施されており、トナーに対して離型性が保たれている。また加熱定着ローラ2の一端部にはギヤ7が固設されており、加熱定着ローラ2は図示せぬ駆動手段からの回転駆動力をギヤ7より伝達される。
【0013】加熱定着ローラ2の内部には、加熱部材としてヒータ5、6が配設されている。加熱定着ローラ2は側板8、9に固設された軸受4、4により加熱定着装置1に取り付けられる。ヒータ5、6は、内部に電熱線を有する棒状のヒータであり、それぞれの両端部を加熱定着装置1の側板8、9に固定されており、図示せぬ制御手段によって制御される。
【0014】また加熱定着ローラ2の外周面近傍には、加熱定着ローラ2の外周面の温度を検知するサーミスタ11と、剥離爪12とが配設されている。サーミスタ11は検知した温度信号を図示しない制御手段に向けて出力し、制御手段は、この温度信号を受けてヒータ5、6を制御する。支軸12aに揺動自在に支持された剥離爪12は、その先端部を加熱定着ローラ2の外周面に当接させており、図示せぬ印刷部から搬送されてくるトナー14が付着された転写シート15が加熱定着ローラ2の外周面に貼り付いた際に、その先端部によって加熱定着ローラ2と転写シート15とを分離させる。
【0015】加熱定着ローラ2の下方に配設された加圧ローラ3は、加熱定着装置1の側板8、9に両端部を固設された支軸3aによって回転自在に支持されており、図示せぬバネ等の付勢手段によって上方に付勢され、その外周面を加熱定着ローラ2の外周面に圧接されている。
【0016】また、加熱定着ローラ2と加圧ローラ3との圧接部の近傍には、転写シート15の搬送をガイドするガイド板16、17がそれぞれ配設されている。各ガイド板16、17は、加熱定着装置1の側板8、9に固設されており、図示せぬ印刷部から送られる転写シート15は、ガイド板16にガイドされて加熱定着ローラ2と加圧ローラ3との圧接部に導かれ、ヒータ5、6による加熱と加圧ローラ3の圧接力とによって、その表面にトナー14が定着される。
【0017】加熱定着ローラ2は、鉄芯肉厚t=0.35以下の薄肉のため加圧ローラ3からの加圧により撓み及びつぶれが生じやすいので、それによるニップ幅減少を補う手段として、加熱定着ローラ2には、その径が長さ方向にわたって逆クラウン形状に変化しているローラを用い、加圧ローラ3には、その径が長さ方向にわたって正クラウン状に変化しているローラを用いている。本明細書では、長さ方向にわたって正クラウン状に変化しているローラを正クラウン形状ローラ、また逆に長さ方向にわたって逆クラウン形状に変化しているローラを逆クラウン形状ローラという。また正クラウン形状ローラはその形状変化量を太鼓量、逆クラウン形状ローラは鼓量という。
【0018】このような逆クラウン状の加熱定着ローラ2の鼓量と、正クラウン状の加圧ローラ3の太鼓量の組み合わせは、図3に示す中央部と端部、それぞれのニップ速度Vm、Veを用いたニップ速度図において図中A2領域に入るように決定する。
【0019】このニップ速度の測定方法を説明する。まず図4に示すようなh=20mm、w=297mm(A4横サイズ)の短冊紙20を用意し、その上に短手方向に2本の基準線21、21を引き、これら基準線21、21の間隔waを正確に測定する。測定に際しては速度換算する際に小数点以下2桁まで有効にする必要があるため、小数点以下3桁まで測定する。その短冊紙を図5に示すように加熱定着ローラ2と加圧ローラ3の間に通し、その様子を通紙方向に対し垂直上方に設置した高速度カメラを用いて撮影する。この際、高速度カメラのフレーム速度としては先程と同様の理由により高フレーム速度にて撮影するとよい。そして撮影した映像から一本目の基準線21が通過した後、2本目の基準線21が通過するまでに要する時間を読み取り、その値を用いて速度を求める。
【0020】この測定方法を用いて求めた測定結果の一例を図6に示す。これは加熱定着ローラ2及び加圧ローラ3の直径最大値をそれぞれφ30mmとし、ローラ長はA4横通紙を想定して加熱定着ローラ2、及び加圧ローラ3ともにそれぞれ320mm、316mmとして行った結果である。加圧力は片側95Nとし、鼓量は加熱定着ローラ2では鼓量0.08mm、加圧ローラ3では太鼓量0.15mm、0.20mmの2種類とした。またこの測定は、A4横サイズの通紙を想定しているため、測定位置は端部で中心位置から297/2mmの距離の部位とした。
【0021】次に4種類の速度比の組み合わせによるシワ確認試験結果を図7に示す。この4種類の速度比の組み合わせは、加熱定着ローラ2と加圧ローラ3の形状により決まり、加熱定着ローラ2の鼓量、加圧ローラ3の太鼓量を変えることで目的の速度比を得ることができる。この結果よりシワの発生する範囲を特定することができ、それは図3に従う。
【0022】この図3のA2領域内にあるように加熱定着ローラ2と加圧ローラ3を設定することにより、転写シート15にシワが発生しない定着装置を得ることができる。またこのことは加熱定着ローラ2が正クラウン形状で加圧ローラ3が逆クラウン形状のように、形状の組み合わせが全く逆構成の場合も同じである。
【0023】図8は本発明の第2実施形態の概略図である。上述のような測定の結果、転写シートの局所でのニップ速度は加熱定着ローラ2あるいは加圧ローラ3のどちらか速い方のニップ速度に従うことがわかったため、加圧ローラ3のニップ速度をその軸方向の略中央部で、加熱定着ローラ2の略中央部と同値またはそれ以下とする(B1≧B2)ことで、転写シートの局所でのニップ速度は長さ方向にわたって加熱定着ローラ2の速度となり、必ず中央部が端部に比べ遅くなる。そのため、転写シートにシワが発生しなくなる。なお図8の加熱定着ローラ2は加圧ローラ3の加圧力により撓んでいる状態で示してある。
【0024】図9は本発明の第3実施形態の概略図である。薄肉の加熱定着ローラ2は荷重を掛けられると撓み、歪を生じるため、転写シート15がニップ部に進入する際、ニップ部が加圧ローラ3の加圧方向に湾曲しており、図10に示すように長さ方向にわたって均一に進入できず、搬送性の低下及びシワの発生が起きるので、本実施形態は転写シートがニップ部に進入する際にガイドするための入り口ガイド板16を加熱定着ローラ2の撓み形状に沿うように弓状に形成してある。なお図9、図10においても加熱定着ローラ2は加圧ローラ3の加圧力により撓んでいる状態で示してある。
【0025】
【発明の効果】請求項1の加熱定着装置は、以上説明してきたように、加熱定着ローラの径が長さ方向にわたって逆クラウン形状で、加圧ローラの径が長さ方向にわたって正クラウン形状に変化し、これらローラの中央部と端部のニップ速度Vm、Veの間に、0.995<Ve/Vm<1.01という関係を設け、その速度分布を中央に対して概ね対称とし、中央部から短部にかけて徐々に一定の割合で変化するようにしたため、加熱定着ローラと加圧ローラとの間を通過する転写シートにシワが発生することをなくすことができるという効果がある。
【0026】請求項2の加熱定着装置は、以上説明してきたように、加熱定着ローラの径が長さ方向にわたって逆クラウン形状で、加圧ローラの径が長さ方向にわたって正クラウン形状に変化し、加圧ローラの略中央部の径が加熱定着ローラの略中央部の径以下としたので、必ず中央部に対し端部のニップ速度が速くなるため、加熱定着ローラと加圧ローラとの間を通過する転写シートにシワが発生することをなくすことができるという効果がある。
【0027】請求項3の加熱定着装置は、以上説明してきたように、加熱定着ローラと加圧ローラとの圧接部分へ転写シートをガイドする入り口ガイド板が加熱定着ローラの撓み形状に沿う弓形状を有するので、上記共通の効果に加え、加熱定着ローラの撓みや歪に沿って転写シートがニップ部に進入するようになり、確実に転写シートをニップ部へ搬送することができ、紙詰まりやシワの発生をさらに低減することができるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
【出願日】 平成12年3月22日(2000.3.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−265146(P2001−265146A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−79474(P2000−79474)