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【発明の名称】 回路形成用湿式現像剤およびこの現像剤を用いた回路形成方法
【発明者】 【氏名】鎌田 明彦

【要約】 【課題】電子写真法による回路形成用現像剤として、ライン幅精度が高く、緻密な回路パターンを形成できる回路形成用湿式現像剤を提供する。

【解決手段】金属あるいは金属酸化物の粒子をコアCとし、このコアCの表面に熱可塑性樹脂Rを重合法で被覆してカプセル化したコア/シェル型複合粒子Aを、溶媒S中に分散させた回路形成用の湿式現像剤である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】金属あるいは金属酸化物の粒子をコアとし、このコアの表面に熱可塑性樹脂を重合法で被覆してカプセル化したコア/シェル型複合粒子を、溶媒中に分散させたことを特徴とする回路形成用湿式現像剤。
【請求項2】前記コア/シェル型複合粒子の金属あるいは金属酸化物と樹脂との含有比率は80:20〜95:5wt%であることを特徴とする請求項1に記載の回路形成用湿式現像剤。
【請求項3】前記コア/シェル型複合粒子の平均粒径は、0.5〜1.5μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の回路形成用湿式現像剤。
【請求項4】前記湿式現像剤に含まれる溶媒の粘度は、15〜20cStであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回路形成用湿式現像剤。
【請求項5】感光体の表面に回路パターン状の静電潜像を形成する工程と、感光体上の静電潜像に対し請求項1ないし4のいずれかに記載の回路形成用湿式現像剤を現像する工程と、感光体上の前記湿式現像剤による回路パターン像を被転写体上に転写する工程と、被転写体上に転写された回路パターン像を定着させる工程と、を備えたことを特徴とする回路形成方法。
【請求項6】前記被転写体はセラミックグリーンシートであり、被転写体上に回路パターン像を定着させた後、セラミックグリーンシートを焼成する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の回路形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は回路形成用湿式現像剤およびこの現像剤を用いた回路形成方法、特に湿式電子写真法によって被転写体上に回路パターンを形成する際に使用される回路形成用湿式現像剤およびこの現像剤を用いた回路形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、スクリーンマスクを用いた配線印刷法に代わる新規な回路形成法として電子写真法が提案されている。この方式は、感光体の表面に回路パターン状の電荷の像(静電潜像)を形成し、その静電潜像に回路形成用荷電性粉末(以後、回路形成用トナーと呼ぶ)を静電的に付着させ、回路パターン状の回路形成用トナーによる像をセラミックグリーンシートなどの被転写体上に転写させた後、定着させるものである。
【0003】回路形成用電子写真法の現像方法には、回路形成用トナーの他に磁性キャリアを用いた乾式二成分磁気ブラシ現像方式と、キャリアを用いない乾式一成分非磁性現像方式とが知られている。前者の例としては、特開昭56−167388号公報,特開昭59−40597号公報,特開平2−257696号公報などがあり、後者の例としては特開平11−177213号公報などがある。
【0004】従来の電子写真法を用いた回路形成方法では、いずれも乾式現像剤が用いられているので、現像剤中に含まれる回路形成用荷電性粉末の粒径が3〜20μm程度と大きく、得られた導体膜厚が厚くなり、電気抵抗を低減できる反面、回路のライン幅の精度がねらいの幅に対して±20μm程度と悪いものであった。
【0005】このような乾式現像剤を用いた回路形成方法に対し、特開平7−86720号公報,特開平7−92718号公報には、湿式現像剤を用いた回路形成方法が提案されている。この湿式現像剤は金属あるいはその酸化物と樹脂とを主成分とし、これに荷電制御剤、分散媒を加えて混練し、トナー粒径を0.01〜10μm、好ましくは0.1〜5μmとしたものであり、この現像剤をタルク及び珪フッ化金属を主成分とする被転写体に転写している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このように金属粉と樹脂粉とを混練した後、粉砕して形成した回路形成用トナーの場合には、金属粉に対する樹脂被膜が均一でなく、金属粉が樹脂被膜から露出したりして、トナー帯電量分布の均一化を図ることができない。そのため、現像のばらつきが大きく、緻密な回路パターンを得ることができない。
【0007】そこで、本発明の目的は、電子写真法による回路形成用現像剤として、ライン幅精度が高く、緻密な回路パターンを形成できる回路形成用湿式現像剤およびこの現像剤を用いた回路形成方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的は請求項1または5に記載の発明によって達成される。請求項1に記載の発明は、金属あるいは金属酸化物の粒子をコアとし、このコアの表面に熱可塑性樹脂を重合法で被覆してカプセル化したコア/シェル型複合粒子を、溶媒中に分散させたことを特徴とする回路形成用湿式現像剤である。また、請求項5に記載の発明は、感光体の表面に回路パターン状の静電潜像を形成する工程と、感光体上の静電潜像に対し請求項1ないし4のいずれかに記載の回路形成用湿式現像剤を現像する工程と、感光体上の前記湿式現像剤による回路パターン像を被転写体上に転写する工程と、被転写体上に転写された回路パターン像を定着させる工程と、を備えたことを特徴とする回路形成方法である。
【0009】請求項1に記載の湿式現像剤は、図1に示すように金属あるいは金属酸化物の粒子をコアCとし、その表面に熱可塑性樹脂Rを重合法で被覆してカプセル化したコア/シェル型複合粒子(以後、トナーと呼ぶ)Aを含む。重合法とは、原材料、モノマー、添加剤などを加えて分散、重合、洗浄、固液分離、乾燥、分級、表面処理などの工程を経てトナーAを得るものである。このトナーAは、従来のように単に金属粉と樹脂粉とを練ったものとは異なり、金属粉Cの周囲に樹脂被膜Rが均一に形成され、しかも粒子径がほぼ均等であるため、トナー帯電量分布を均一化することができる。このトナーAを溶媒S中に分散させることで、極めて解像度の高く、緻密な回路を形成できる湿式現像剤を得ることができる。
【0010】請求項2では、コア/シェル型トナーの金属あるいは金属酸化物と樹脂との含有比率を80:20〜95:5wt%としてある。そのため、金属含有率が大きく、低抵抗の高品質な回路を形成できる。請求項3のように、コア/シェル型トナーの平均粒径を0.5〜1.5μmとするのが望ましい。つまり、従来の乾式現像剤現像剤中に含まれる回路形成用荷電性粉末の粒径(3〜20μm程度)に比べてトナーの粒径が格段に小さいので、解像度が向上し、回路のライン幅の精度を±10μm以下にできる。このようにトナー粒径が1μm程度と小さい上に、トナー比電荷が乾式の10倍程度と大きいために、乾式現像法と比較すると、トナー層厚が薄くなり、導体膜厚も薄くなる。したがって、電極部分とその他の部分とで段差が生じず、積層セラミックコンデンサのように多数の薄いシートを積層して得られる電子部品に好適な回路パターンを形成できる。
【0011】請求項4では、湿式現像剤に含まれる溶媒の粘度を、15〜20cStとするのが望ましい。一般に、OA用湿式現像剤の溶媒の粘度(37.8℃)は、0.5〜15St程度であるが、本発明の湿式現像剤は金属あるいは金属酸化物の粒子を含有するので、通常の湿式現像剤に比べて、粒子1個当たりの質量が大きい。そこで、15〜20cStと高い粘度の溶媒を用いることでトナー粒子の沈降を防ぎ、良好な現像を行なうことができる。なお、溶媒の粘度を高くすると、溶媒中でのトナーの移動が妨げられるので、現像器に現像剤の攪拌機構を設けるのが望ましい。また、現像時間が不足するので、現像器を複数設けて、繰り返し現像してもよい。
【0012】請求項5では、請求項1〜4に記載の湿式現像剤を用いて電子写真法により回路を形成することで、ライン幅精度が高く、緻密な回路パターンを形成できる。湿式現像法としては、皿現像法、ローラ現像法、平面現像法など公知の現像法を用いればよい。また、直接現像法に限らず、間接現像法(LTT)を用いてもよい。請求項6では、請求項5における被転写体をセラミックグリーンシートとし、被転写体上に回路パターン像を定着させた後、セラミックグリーンシートを焼成する工程を含むものである。すなわち、被転写体上に回路パターン像を形成した段階では導電性を有しないので、これを焼成することで、溶媒および樹脂被膜が分解され、導体回路が形成される。なお、焼成雰囲気は、金属材料に応じて還元性雰囲気あるいは酸化性雰囲気で行なえばよい。
【0013】
【発明の実施の形態】〔実施例1〕平均粒径0.5μmのCu粒子の表面にポリエチレン樹脂を重合法にて被覆し、平均粒径0.7μmの樹脂被覆Cu粒子(コア/シェル型トナー)を得た。この粒子をイソパラフィン系溶剤(37.8℃粘度:15〜20cSt)中に、溶剤100mlに対して樹脂被覆Cu粒子を10gの割合で混合し、5時間かけて分散させて湿式現像剤を得た。得られた湿式現像剤を用いてBa−Si−Al−O系セラミックとバインダからなるセラミックグリーンシート上に湿式現像法(皿現像法)により回路パターンを形成し、960℃の還元雰囲気中で焼成した結果、ライン幅=50μm±3μmで、Cu膜厚=1.7μmの緻密な導体膜を得ることができた。シート抵抗を測定した結果、2.2mΩ/□であり、極めて高品質な回路を得ることができた。
【0014】〔実施例2〕平均粒径0.3μmのAg粒子の表面にポリエチレン樹脂を重合法にて被覆し、平均粒径0.5μmの樹脂被覆Ag粒子(コア/シェル型トナー)を得た。この粒子をイソパラフィン系溶剤中に、溶剤100mlに対して樹脂被覆Ag粒子を10gの割合で混合し、8時間かけて分散させて湿式現像剤を得た。得られた湿式現像剤を用いてセラミックグリーンシート上に湿式現像法により回路パターンを形成し、900℃の酸化雰囲気中で焼成した結果、ライン幅=75μm±7μmで、Ag膜厚=1.2μmの緻密な導体膜を得ることができた。
【0015】〔実施例3〕この実施例は、実施例1または2で回路パターンが形成されたセラミックグリーンシート(未焼成)の回路パターン以外の部分(ネガ部分)に絶縁層(セラミック層)を転写する方法である。平均粒径0.8μmのセラミック粉末の表面にポリエチレン樹脂を重合法にて被覆し、平均粒径1.2μmの樹脂被覆セラミック粒子(コア/シェル型トナー)を得た。この粒子をイソパラフィン系溶剤中に、溶剤100mlに対して樹脂被覆セラミック粒子を10gの割合で混合し、3時間かけて分散させて湿式現像剤を得た。得られた湿式現像剤を用いて、既に樹脂被覆Ni粒子からなる湿式現像剤によって電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートの電極パターン以外の部分に電子写真法によりパターンを形成した。こうして得られたセラミックグリーンシートを所定枚数積層した後、1200℃の酸化雰囲気で焼成し、積層セラミックコンデンサを作製した。この積層セラミックコンデンサは、電極の厚みと同等厚みでセラミック膜が形成されているので、電極部分とセラミック部分の段差が生じず、良好に実装できる積層セラミックコンデンサが得られた。
【0016】〔実施例4〕この実施例は、回路形成用の金属酸化物粒子をコアとし、このコアの表面に熱可塑性樹脂を重合法で被覆してカプセル化したコア/シェル型トナーを用いたものである。平均粒径0.7μmのCuO粒子の表面にポリエチレン樹脂を重合法にて被覆し、平均粒径0.9μmの樹脂被覆CuO粒子(コア/シェル型トナー)を得た。金属酸化物と樹脂との含有比率は90:10(wt%)である。この粒子をイソパラフィン系溶剤中に、溶剤100mlに対して樹脂被覆CuO粒子を10gの割合で混合し、5時間かけて分散させて湿式現像剤を得た。得られた湿式現像剤を用いてBa−Si−Al−O系セラミックとバインダからなるセラミックグリーンシート上に湿式現像法により回路パターンを形成し、960℃の還元雰囲気中で焼成した結果、金属酸化物であるCuOが還元され、ライン幅=75μm±8μmで、Cu膜厚=1.5μmの緻密な導体膜を得ることができた。
【0017】〔実施例5〕この実施例も、実施例4と同じく回路形成用の金属酸化物粒子をコアとして用いた例である。平均粒径0.8μmのCu2 O粒子の表面にポリエチレン樹脂を重合法にて被覆し、平均粒径1.2μmの樹脂被覆Cu2 O粒子(コア/シェル型トナー)を得た。金属酸化物と樹脂との含有比率は80:20(wt%)である。この粒子をイソパラフィン系溶剤中に、溶剤100mlに対して樹脂被覆Cu2 O粒子を10gの割合で混合し、5時間かけて分散させて湿式現像剤を得た。得られた湿式現像剤を用いてBa−Si−Al−O系セラミックとバインダからなるセラミックグリーンシート上に湿式現像法により回路パターンを形成し、960℃の還元雰囲気中で焼成した結果、金属酸化物であるCu2 Oが還元され、ライン幅=75μm±10μmで、Cu膜厚=1.3μmの緻密な導体膜を得ることができた。
【0018】本発明のような湿式現像方式では、トナー粒径が小さい上に、トナー比電荷が大きいために、乾式現像法と比較すると、トナー層厚が薄くなり、導体膜厚も薄くなる。高膜厚の導体が必要な場合は、複数回の重ね印刷を行なえばよい。このためには、感光体を複数設けてもよく、また、被転写体を複数回往復させて繰り返し印刷してもよい。ここで、複数の感光体を設けて繰り返し印刷する場合は、予め供給される被転写体の位置を検出して供給位置を制御する機構があれば、より望ましい。
【0019】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明によれば、金属あるいは金属酸化物の粒子をコアとし、このコアの表面に熱可塑性樹脂を重合法で被覆してカプセル化したコア/シェル型トナーを溶媒中に分散させた湿式現像剤であるため、従来の乾式現像剤に比べてトナー粒径が小さく、得られた回路のライン幅精度を向上させ、緻密な回路を形成できる。また、トナー粒子を金属よりなるコアの表面に熱可塑性樹脂を重合法で被覆してカプセル化したので、従来の湿式現像剤のように金属粉と樹脂粉とを練って作ったトナーと比較して、金属粉の周囲に樹脂被膜を均一に形成でき、トナー帯電量分布の均一化することができる。そのため、高い解像力を得ることができるという利点がある。
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【出願日】 平成12年3月17日(2000.3.17)
【代理人】 【識別番号】100085497
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 秀隆
【公開番号】 特開2001−265066(P2001−265066A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−75286(P2000−75286)