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【発明の名称】 正帯電性トナー
【発明者】 【氏名】舘 秀典

【氏名】佐多 晋一

【氏名】森山 伸二

【氏名】秋山 孝治

【要約】 【課題】立ち上がり性、帯電安定性等の帯電特性に優れ、高速機に用いた場合であっても、感光体汚染や画質劣化を生じることなく、連続して優れた画像が得られる正帯電性トナーを提供すること。

【解決手段】酸価が10KOHmg/g以下のポリエステルを含有してなる結着樹脂、着色剤及びニグロシン染料を含有してなる正帯電性トナーであって、570nmと600nmにおけるトナーの紫外線吸収スペクトルの差が0.08〜0.18である正帯電性トナー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 酸価が10mgKOH/g以下のポリエステルを含有してなる結着樹脂、着色剤及びニグロシン染料を含有してなる正帯電性トナーであって、570nmと600nmにおけるトナーの紫外線吸収スペクトルの差が0.08〜0.18である正帯電性トナー。
【請求項2】 周速が400mm/sec以上の感光体を有する高速機に使用される請求項1記載の正帯電性トナー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される静電潜像の現像に用いられる正帯電性トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】周速が400mm/sec以上の感光体を有する高速機では、トナーの帯電量の立ち上がり性が重要になる。トナーの補給時に十分な立ち上がり性が得られないと、帯電量不良のトナーによる画像劣化を引き起こす。さらに、高速機では長時間の耐刷が要求されるため、トナーの帯電量をいかに安定に維持するかが重要な課題となる。
【0003】そこで、帯電量の立ち上がり性を向上させるために、トナー中に荷電制御剤を多量に添加する方法がとられるが、特に、ポリエステルを含有するトナーは、定着性、耐久性等に優れているものの、樹脂自体が有する負帯電性から正帯電性トナーに用いるためにはより多量の荷電制御剤を添加する必要がある。しかし、内添剤を多量に入れると、分散不良、コストアップ、感光体汚染、キャリア汚染等の様々な問題が生じ得る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、立ち上がり性、帯電安定性等の帯電特性に優れ、高速機に用いた場合であっても、感光体汚染や画質劣化を生じることなく、連続して優れた画像が得られる正帯電性トナーを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、酸価が10mgKOH/g以下のポリエステルを含有してなる結着樹脂、着色剤及びニグロシン染料を含有してなる正帯電性トナーであって、570nmと600nmにおけるトナーの紫外線吸収スペクトルの差が0.08〜0.18である正帯電性トナーに関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の正帯電性トナーは、結着樹脂として特定のポリエステルを用い、かつ荷電制御剤として含有するニグロシン染料のトナー表面における分散状態が特定の範囲に調整されている点に特徴を有する。すなわち、特定のポリエステルを結着樹脂として、これにニグロシン染料を適度に分散させることによってのみ、本願発明の課題が解決される。570nmの吸収がニグロシン染料のトナー表面量に、600nmの吸収がニグロシン染料の分散径に相関していると考えられ、570nmと600nmにおける本発明のトナーの紫外線吸収スペクトルの差(以下、Δ570-600 とする)を調整することにより、ニグロシン染料の分散状態を調整することができる。本発明では、Δ570-600 は、0.08〜0.18、好ましくは0.10〜0.16、より好ましくは0.12〜0.15である。Δ570-600 が0.08未満であると、ニグロシン染料が分散しすぎて、トナー表面のみならず、トナー内部にも多量に存在することになり、立ち上がり性、帯電安定性等の帯電特性に有効な表面のニグロシン染料の存在量が相対的に少なくなる。一方、Δ570-600 が0.18を超えると、ニグロシン染料の分散が不十分で、トナーの製造過程における粉砕、分級時にニグロシン染料がトナー表面から脱離したり、トナー表面の分布が不均一になり、感光体汚染や画像不良の原因になる。なお、特定のポリエステルとニグロシン染料の相互作用の詳細は不明であるが、両者の相溶性が適度な範囲にあるため、ニグロシン染料が最適の分散状態をとり得る結果と考えられる。
【0007】570nmと600nmにおけるトナーの紫外線吸収スペクトルは、実施例に記載の方法により測定することができる。また、Δ570-600 の調整は、トナーの製造設備、スケール等により変わるため、一概には決定できないが、たとえば、原料組成物の予備混合時間、押出機への原料組成物の供給量、溶融混練時のバレル温度等を調整する方法や、予め結着樹脂の一部とニグロシン染料を予備混練した後、残りの原料組成物と合わせて溶融混練する方法が挙げられる。具体的には、ニグロシン染料の分散を高めるためには、予備混合時間を長くする、押出機への供給量を少量にする、バレル温度を低くする等の方法が有効であり、これらの方法を適宜組み合わせて所望の分散状態を得ることが好ましい。
【0008】本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤及びニグロシン染料を含有し、該結着樹脂はポリエステルを含有する。ポリエステルの含有量は、着色剤の分散性、定着性及び帯電性の観点から、結着樹脂中、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは100重量%である。なお、ポリエステル以外に使用可能な樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0009】本発明におけるポリエステルの原料モノマーとしては、特に制限がなく、公知のアルコール成分と、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の公知のカルボン酸成分が用いられる。
【0010】アルコール成分としては、式(I):【0011】
【化1】

【0012】(式中、Rは炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyは正の数を示し、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5.0である)で表される化合物が含有されていることが好ましい。
【0013】式(I)で表される化合物としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられる。また、他のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられ、これらの1種以上を含有することが好ましい。
【0014】式(I)で表される化合物のアルコール成分中の含有量は、5モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは100モル%が望ましい。
【0015】また、カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜8)エステル等が挙げられ、これらの1種以上を含有するものが好ましい。
【0016】ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。
【0017】ポリエステルの酸価は、正帯電性トナーとして十分な帯電量を得るために、10mgKOH/g以下、好ましくは7mgKOH/g以下である。また、ポリエステルの水酸基価は20〜40mgKOH/g、軟化点は110〜160℃、ガラス転移点は50〜70℃であることが、それぞれ好ましい。
【0018】着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146 、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
【0019】ニグロシン染料としては、「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN−01」、「ボントロンN−04」、「ボントロンN−07」、「ボントロンN−09」、「ボントロンN−11」(以上、オリエント化学工業社製)等が挙げられる。ニグロシン染料の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1.5〜3.5重量部が好ましく、2.0〜3.0重量部がより好ましい。
【0020】なお、本発明では、必要に応じてニグロシン染料以外の他の荷電制御剤が適量配合されていてもよい。
【0021】本発明においては、離型剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が、トナー中に適宜添加されていてもよい。
【0022】本発明のトナーは、混練粉砕法等により得られる粉砕トナーが好ましく、例えば、結着樹脂、着色剤、ニグロシン染料等をボールミル等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。さらに、トナーの表面には、必要に応じて流動性向上剤等を添加してもよい。このようにして得られるトナーの重量平均粒子径は3〜15μmが好ましい。
【0023】本発明の正帯電性トナーは、帯電量の立ち上がり性等の帯電特性や、耐久性に優れるため、周速が400mm/sec以上、特には500mm/sec以上の感光体を有する高速機にも好適に用いることができる。
【0024】本発明のトナーは、磁性体微粉末を含有するときは単独で現像剤として、また磁性体微粉末を含有しないときは非磁性一成分系現像剤として、もしくはキャリアと混合して二成分系現像剤として使用される。前記高速機対応の点からは二成分系現像剤としての使用が好ましい。
【0025】
【実施例】〔酸価及び水酸基価〕JIS K0070の方法により測定する。
【0026】〔軟化点〕高化式フローテスター(島津製作所製、CFT−500D)を用い、樹脂の半分が流出する温度を軟化点とする(試料:1g、昇温速度:6℃/分、荷重:1.96MPa、ノズル:1mmφ×1mm)。
【0027】〔ガラス転移点〕示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業(株)製)を用いて昇温速度10℃/分で測定する。
【0028】〔紫外線吸収スペクトル〕トナー0.50gを500ml容のガラス瓶に計量し、エタノール20mlを注ぎ、ボールミル攪拌機により250r/minで20分間攪拌する。攪拌後、さらにエタノール20mlを注ぎ、一時間放置した後、上澄み液を用いて以下の測定装置により570nmと600nmでの紫外線吸収スペクトルを測定する。本発明で溶媒として用いるエタノールは、トナー自身を溶解せず、トナー表面に存在するニグロシン染料のみが溶解するため、そのUVスペクトルを検討することで、トナー表面に存在するニグロシン染料の状態を推定することができるものと考えられる。
【0029】<測定装置>測定器:島津紫外可視分光光度計UV−160A(島津製作所製)(ベースとしてエタノールを使用)
セル:石英性光路1cmセル【0030】樹脂製造例1ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル)プロパン735g、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス (4−ヒドロキシフェニル) プロパン293g、イソフタル酸280g、イソオクテニルコハク酸60g、トリメリット酸72g及び酸化ジブチル錫(エステル化触媒)2gを、窒素雰囲気下、真空下で230℃で攪拌しつつ、ASTM E28−51Tにより測定した軟化点が136℃に達するまで反応させて、樹脂Aを得た。樹脂Aは淡黄色の固体であり、酸価は3.1mgKOH/g、水酸基価は35.2mgKOH/g、ガラス転移点は63℃であった。
【0031】樹脂製造例2イソオクテニルコハク酸の使用量を72g、トリメリット酸の使用量を66gに、それぞれ変更した以外は、樹脂製造例1と同様にして、樹脂Bを得た。樹脂Bの酸価は6.2mgKOH/g、水酸基価は30.9mgKOH/g、ガラス転移点は63℃であった。
【0032】樹脂製造例3イソオクテニルコハク酸の使用量を72g、トリメリット酸の使用量を70gに、それぞれ変更し、反応終了の目安を、軟化点の追跡ではなく、酸価が12.5mgKOH/gに達した時点とした以外は、樹脂製造例1と同様にして、樹脂Cを得た。樹脂Cの酸価は12.5mgKOH/g、水酸基価は31.2mgKOH/g、軟化点は145℃、ガラス転移点は64℃であった。
【0033】樹脂製造例4イソフタル酸の使用量を199g、イソオクテニルコハク酸の使用量を214g、トリメリット酸の使用量を128gに、それぞれ変更し、反応終了の目安を、軟化点の追跡ではなく、酸価が23.0mgKOH/gに達した時点とした以外は、樹脂製造例1と同様にして、樹脂Dを得た。樹脂Dの酸価は23.0mgKOH/g、水酸基価は31.2mgKOH/g、軟化点は145℃、ガラス転移点は64℃であった。
【0034】実施例1〜4、比較例1〜5表1に示す結着樹脂100重量部、カーボンブラック「R330R」(キャボット社製)5重量部、ニグロシン染料「ボントロンN−01」(オリエント化学工業社製)2重量部及び離型剤「NP−055」2重量部を、押出機「PCM−30」(池貝社製)により表1に示す混練条件で予備混合及び溶融混練し、ジェットミルで微粉砕し、気流分級機で分級して、重量平均粒子径10μmの粉体を得た。得られた粉体100重量部に対して、疎水性シリカ「HVK−2150」(ワッカーケミカルズ社製)0.3重量部をヘンシェルミキサーを用いて混合付着させ、トナーを得た。
【0035】実施例5樹脂B20重量部とニグロシン染料「ボントロンN−01」(オリエント化学工業社製)2重量部とを予め混合、混練し、ロートプレックスで粗粉砕した。得られた粗粉砕物と、樹脂B80重量部、カーボンブラック「R330R」(キャボット社製)5重量部及び離型剤「NP−055」2重量部とを表1に示す混練条件で予備混合及び溶融混練した後、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0036】比較例6、7「ボントロンN−01」の使用量を、比較例6では1重量部に、比較例7では4重量部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーを得た。
【0037】実施例1〜5及び比較例1〜7で得られたトナーの重量平均粒子径、570nmと600nmにおけるトナーの紫外線吸収スペクトル及びその差を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】試験例1トナー4重量部と平均粒子径100μmのシリコンフェライトキャリア96重量部をVブレンダーで15分間攪拌して、現像剤を調製した。得られた現像剤を正帯電性の静電荷像を形成するセレン感光体(周速:600mm/sec)を具備するプリンタに実装し、500,000枚の画像を連続して印字した。連続印刷の際、2000枚印刷後(印刷初期)と印刷終了後(耐刷後)に少量の現像剤をサンプリングし、「q/mメーター」(エッピング社製)にてトナーの帯電量を測定するとともに、画質、感光体汚染の程度を評価した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】以上の結果から、実施例1〜5のトナーはニグロシン染料が適度に分散しているため、耐刷後も安定した帯電特性を有し、感光体汚染もなく優れた画像が得られることが分かる。これに対し、比較例1〜6のトナーはニグロシン染料が分散しすぎてトナー表面量が少ないため、帯電量の立ち上がりが遅く、帯電安定性にも欠けており、比較例7のトナーはニグロシン染料の分散径が大きく、帯電特性は良好であるものの、ニグロシン染料が脱離したり、トナーの帯電分布が不均一となるため、ベタ部の画像に白抜けが生じ、感光体汚染が生じる。
【0042】
【発明の効果】本発明により、荷電制御剤がポリエステル中に適度に分散しているため、立ち上がり性、帯電安定性等の帯電特性に優れ、高速機に用いた場合であっても、感光体汚染や画質劣化を生じることなく、連続して優れた画像が得られる正帯電性トナーを提供することが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【代理人】 【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
【公開番号】 特開2001−265061(P2001−265061A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−77971(P2000−77971)