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【発明の名称】 電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置
【発明者】 【氏名】山口 康浩

【氏名】飯島 正和

【氏名】田甫 文明

【氏名】岩崎 真宏

【要約】 【課題】電荷輸送性、機械的強度、放電生成物耐性等に優れた両極性電荷輸送層を形成することで、高性能且つ高寿命な電子写真感光体、並びに高画質かつ高耐久なプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供すること。

【解決手段】少なくとも感光層の一層として、ホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料とを含有する両極性電荷輸送層を備えた、下記■及び■何れか一方の電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を利用したプロセスカートリッジ及び電子写真装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも、感光層の一層として、ホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料とを含有する両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体であって、前記ホール輸送性材料が、下記一般式(1)で表される構造の少なくとも1種を繰り返し単位として有するホール輸送性ポリエステル化合物であることを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

{上記式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示し、LはL1−COO−L2−OCO−L3(L1〜L3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示す)で表される2価の基を示し、mは0または1を示す。}
【請求項2】 少なくとも、感光層の一層として、ホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料とを含有する両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体であって、前記エレクトロン輸送性材料が、エレクトロン輸送性高分子化合物であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項3】 請求項1または2に記載の電子写真感光体を含むことを特徴とする、電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジ。
【請求項4】 請求項1または2に記載の電子写真感光体、あるいは、請求項3に記載のプロセスカートリッジを含むことを特徴とする電子写真装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電荷輸送性ならびに機械的特性に優れた電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真技術は、高速で、高印字品質が得られる等の利点を有するために、近年、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像出力分野において、中心的役割を果たしている。電子写真技術の心臓部である電子写真感光体の構成材料としては、当初からセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料が広く用いられてきたが、これらの無機系感光体に比べ、コスト、製造性、廃棄性等の点で優れた利点を有する有機光導電性材料を用いた電子写真感光体の研究開発が活発に行われ、現在では無機系感光体を凌駕するに至っている。特に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷輸送をそれぞれ別々の材料に担わせる機能分離設計の導入により材料選択の自由度が増し、有機材料の持つ多様性を背景に著しい性能の向上が達成され、現在では導電性基体上に電荷発生機能を担う薄膜の電荷発生層と電荷輸送機能、帯電性、機械的強度を担う厚膜の電荷輸送層を積層した機能分離積層型有機感光体が電子写真感光体の主流となっている。
【0003】ところで、有機電荷輸送性材料としては、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体等のホール輸送性材料がほとんどであり、実用レベルの性能を有するエレクトロン輸送性材料は稀有である。この材料上の制約と、上述の導電性支持体/電荷発生層/電荷輸送層からなる構成とから、有機感光体は、一般に負帯電でしか動作しないという動作極性上の制約を有する。
【0004】動作極性に関しては、利用するサブシステム、トータルシステムに応じ好ましい極性があり、有機感光体をより広くかつより効率的に活用するためには、負帯電型に加え、正帯電型、さらには両極性帯電型の感光体の開発が望まれるところである。
【0005】例えば、帯電サブシステムとして、安価なスコロトロンのようなワイヤー放電型の帯電器を用いると、放電時にオゾン、窒素酸化物等の有害ガスが発生するという問題がある。この有害ガスの発生量は、同じ帯電器でも負帯電時よりも正帯電時のほうが、オーダーが1桁ほど少ないことが知られており、有害ガスを除去するフィルタ等を設置できない、低コストおよび/または小型の電子写真装置においては、正帯電型の感光体が切望される。
【0006】一方、高画質の要求に対しては、現状の現像剤を用いる場合、負帯電型の感光体を用い、反転現像を行うことが望ましい。このとき、有毒ガスの除去には活性炭等のフィルタを用いるか、有害ガスの発生量の少ない接触帯電方式の帯電器を用いる等の対策が必要になる。
【0007】また、反転現像方式を採用し、転写を静電的に行う場合、転写時の帯電極性は、潜像形成時の帯電極性とは逆極性となる。転写時の帯電は、原理的には紙あるいは1次転写用フィルム等の被転写体を介して行うため、直接感光体を帯電するわけではないが、実際には被転写体と、その次の被転写体との間等において、感光体が潜像形成時とは逆極性に帯電されてしまうことになる。この場合、単極性でしか動作しない感光体では、転写時の逆極帯電を光消去することができないため、帯電器の能力によっては、その履歴が次のコピーあるいはプリントに現れてしまうという問題が生ずる場合がある。この問題は、ホール輸送性とエレクトロン輸送性とを有する両極性帯電型感光体を用いることにより、根本的に解消される。
【0008】一方、機能分離積層型有機感光体は、その積層構成に起因し以下に示すような欠点を有しており、それら欠点を克服し得る感光体の開発が切望されている。積層構成に起因する第1の欠点としては、単層の感光体に比べ2層以上の層を形成しなければならないため、生産性が低下しコストが高くなってしまうと云う問題が挙げられる。
【0009】積層構成に起因する第2の欠点としては、量産性が高く一般的に採用されている成膜法である浸漬塗布法を用いた場合、上層塗布時に下層が侵されないようにする必要があり、そのため下層材料に上層塗布溶剤に対する耐性が要求されることとなりそれに伴う問題が挙げられる。
【0010】即ち、一般的に下層となる電荷発生層は電荷発生材料としての顔料と成膜性を担う結着樹脂からなり、該結着樹脂として上層となる電荷輸送層の塗布溶剤に侵されない材料を選択しなければならない。一般的に電荷輸送材料は比較的極性が低く、トルエン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン等の比較的極性の低い溶剤がその塗布溶剤として用いられるため、電荷発生層の結着樹脂としては、該溶剤に対する溶解性の低いブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の高極性の熱可塑性樹脂が採用されている。
【0011】しかしながら、高極性樹脂中では電荷輸送性が低下することが知られており、また高極性樹脂は吸湿性が高く環境変化に伴う光電特性の変動を引き起こす場合があると云う問題がある。さらに、これら高極性の熱可塑性樹脂は、完全には不溶ではないため、上層塗布時の若干の荒れは避けがたく、光電特性、ひいては画像の面内ムラを生起する場合がある。
【0012】この問題を回避する方法として電荷発生層の結着樹脂に熱硬化性の樹脂を用いる提案もなされているが、塗布液中で経時により硬化反応が進行し増粘/ゲル化してしまうと云うポットライフの問題、成膜時に未硬化サイトが残存してしまい光電特性に悪影響を及ぼすと云う問題等があり、依然、本質的な問題解決には至っていない。積層構成に起因する第3の欠点としては、露光光源としてレーザー等の可干渉光を用いる場合、電荷発生層と電荷輸送層との界面での正反射により、一般に干渉縞と呼ばれる切り株模様の画像欠陥が発生してしまうと云う問題が挙げられる。
【0013】この問題を回避する方法としては、界面を凹凸にし、光が散乱するようにすべく、基体表面を荒らしたり、基体と感光層との間に荒い表面性の膜を設けたりする方策が採られている。しかしながら、これらの方策はそれを施すこと自体、コストアップをもたらすし、また荒れた表面上に薄膜の電荷発生層を均一に成膜しなければならないと云う製造上の困難さを要求される。
【0014】ところで、上記のような積層構成に起因する問題点を払拭するものとしては、単層構成の電子写真感光体(単層型感光体)が古くから知られている。しかしながら、従来の単層型感光体は十分な機能分離設計がなされておらず、実用に耐える特性を有するものはなかった。即ち、従来の単層型感光体は絶縁性樹脂中に単純に電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有させたものであり、輸送電荷極性の制約から表面近傍のみで光吸収が起こるように電荷発生材料濃度を高くする必要があり、その結果、暗減衰が大きい、繰り返し使用による光電特性の変動が大きい等の問題があった(積層感光体では電荷発生層の膜厚を薄くすることでこの問題を抑えている)。
【0015】この問題に対し、最近、電荷発生材料とホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料と、を絶縁性樹脂中に含有させた単層型感光体が提案され、著しい性能の改善が達成された(電子写真学会誌,Vol30,pp274−281,1991)。即ち、ホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料の両方を添加することで輸送電荷極性の制約がなくなり、電子写真感光体の感光層内部で電荷発生しても、両電荷がそれぞれ対極に輸送されるため電荷発生材料の添加量を著しく減少させることが可能となり、上述の問題が解消された。
【0016】しかしながら、十分なホール輸送能とエレクトロン輸送能とを両立させるには、ホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料を絶縁性樹脂中に分散させるこの系では、機械的強度を担う絶縁樹脂に対するこれら低分子量の電荷輸送材料の総濃度を高くする必要があり、膜全体としての機械的強度が低下してしまうという問題があった。
【0017】この問題の改善策としては、電荷輸送性材料の一方を高分子化合物とし成膜性を担わせ、絶縁性樹脂を不要とする方策があり、特開平3−256050号公報、特開平5−249706号公報、特開平5−150495号公報等において、特定のホール輸送性高分子化合物を用いる発明が開示されている。しかしながら、これらの発明において用いられているホール輸送性高分子化合物は、それ自体の機械的強度が十分ではなく、放電生成物耐性等の点でも、さらなる改善が必要とされている。また、一般的にエレクトロン輸送性材料は結晶性が高く、これらの発明において用いられているホール輸送性高分子化合物と高い相溶性を示すエレクトロン輸送性材料は少なく、特に、高エレクトロン移動度を達成するためエレクトロン輸送性材料を高濃度で含有させる場合においては、加熱や経時によるエレクトロン輸送性材料の結晶化による特性の劣化は避けられない。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明は、従来の技術における上記のような実情に鑑みてなされたものであって、上記のような問題点を克服し得る電子写真感光体を提供することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、感光層の一層として、ホールおよびエレクトロン輸送性、機械的強度、放電生成物耐性等に優れた両極性電荷輸送層を形成することで、高性能且つ高寿命な電子写真感光体を提供することにある。具体的には、本発明の目的は、上記優れた特性を有する両極性電荷輸送層を形成することで、正極性あるいは両極性に帯電可能な電子写真感光体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、同様に上記優れた特性を有する両極性電荷輸送層を形成することで、実用性の高い単層型の電子写真感光体を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、上記優れた特性を有する電子写真感光体を利用した、高画質かつ高耐久なプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、両極性電荷輸送材料に関し鋭意検討を重ねた結果、下記第1および第2の本発明により、上記目的が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】すなわち、第1の本発明は、少なくとも、感光層の一層として、ホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料とを含有する両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体であって、前記ホール輸送性材料が、下記一般式(1)で表される構造の少なくとも1種を繰り返し単位として有するホール輸送性ポリエステル化合物であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0021】
【化2】

【0022】{上記式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示し、LはL1−COO−L2−OCO−L3(L1〜L3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示す)で表される2価の基を示し、mは0または1を示す。}
【0023】第1の本発明の電子写真感光体は、上記一般式(1)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位として有するホール輸送性ポリエステル化合物中にエレクトロン輸送性材料を固溶させてなる両極性電荷輸送層を備えており、両極性電荷輸送能、機械的強度、放電生成物耐性等に優れる。また、前記両極性電荷輸送層はエレクトロン輸送能も有するため、電子写真感光体の表面を正極に帯電させることも可能である。
【0024】第1の本発明の電子写真感光体では、前記エレクトロン輸送性材料として枝分かれもしくは環構造を含む嵩高い炭化水素基を備えたエレクトロン輸送性低分子化合物を用いることが好ましく、この場合、高機械的強度、高両極性電荷輸送能等の好ましい特性が顕著に発揮される。かかるエレクトロン輸送性低分子化合物としては、具体的には、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、およびイミド誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】一方、第2の本発明は、少なくとも、感光層の一層として、ホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料とを含有する両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体であって、前記エレクトロン輸送性材料が、エレクトロン輸送性高分子化合物であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0026】第2の本発明の電子写真感光体においては、前記エレクトロン輸送性高分子化合物として、ポリエーテル化合物、ポリエステル化合物、ポリカーボネート化合物、ポリアミド化合物、ポリウレタン化合物、またはポリイミド化合物を用いることが好ましく、さらに、ホール輸送性材料としてトリアリールアミン構造を有する低分子化合物を組み合わせて用いることが好ましく、かかる態様において、高機械的強度、高両極性電荷移動度等の好ましい特性が顕著に発揮される。
【0027】上記第1の本発明あるいは第2の本発明の電子写真感光体では、各両極性電荷輸送層中にさらに電荷発生材料を含有することで、単層型の電子写真感光体を構成することが、単層型の電子写真感光体のメリットを活かせる点で好ましい。その場合、前記電荷発生材料が有機顔料であり、且つ前記各両極性電荷輸送層中に占める該有機顔料の割合が0.1〜10重量%の範囲内にあることがより好ましい。
【0028】上記両極性電荷輸送層は、第1の本発明および第2の本発明で提供する電子写真感光体の他、有機電界発光素子、有機フォトリフラクティブ素子、有機光センサー、有機太陽電池等の各種有機電子デバイスにも活用できる。
【0029】これら第1の本発明および第2の本発明の電子写真感光体は、少なくとも電子写真感光体を含む電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体として、好ましく用いられる。また、第1の本発明および第2の本発明の電子写真感光体、あるいは、上記プロセスカートリッジは、一般の電子写真装置に好ましく用いられる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態によって、さらに詳しく説明する。
A:本発明の電子写真感光体の全体構成本発明(第1の本発明および第2の本発明双方を意味する。以下、単に「本発明」という場合に、同様。)の電子写真感光体における感光層としては、図1〜図3に示す構成のものが挙げられる。ここで図1〜図3は、本発明の電子写真感光体の模式断面図である。
【0031】図1においては、導電性支持体1表面に、電荷発生層2が設けられ、その上に両極性電荷輸送層3が設けられている。図2においては、導電性支持体1表面に、両極性電荷輸送層3が設けられ、その上に電荷発生層2が設けられている。図3においては、導電性支持体1表面に、両極性電荷輸送層3が設けられ、その中に電荷発生材料からなる微粒子4が分散されている。これらの電子写真感光体には、さらに所望により下引き層、中間層、ブロッキング層、保護層、単極性電荷輸送層等を設けることができる。
【0032】本発明の電子写真感光体における感光層構成の中でも、特に両極性電荷輸送層中に電荷発生材料を含有させてなる図3に示す単層構成は、本発明の好ましい効果を顕著に発揮する。即ち、単層故の製造コストの低さ、生産性の高さと云う製造上の利点を有し、上述した積層型感光体における干渉縞の問題の回避に不可欠な導電性支持体表面の特殊な加工や、薄膜の電荷発生層に起因する問題の回避に必要な、下引き層を設ける必要もなく、この点でも製造コストの低減が実現できる。また、電荷発生材料にて発生したホールとエレクトロンの両者がそれぞれホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料によって分離輸送されるため、高い電荷分離効率(すなわち電荷発生効率)が達成され、優れた繰り返し安定性が実現される。さらに、優れた両極性電荷輸送能を有するため電荷発生材料の添加量も必要最少量で済み、電荷発生材料による輸送特性の劣化も抑えられ、併せて、機械的強度の低下も抑えられると云う卓越した効果を奏する。加えて、電荷発生材料と両電荷輸送材料が共存しており、光励起状態が速やかに電荷移動失活されるため、通常の積層型感光体で見られるような光暴露による電子写真感光体の光化学的な劣化が抑制されると云う利点をも有する。そして、単層構成の電子写真感光体であるため、廃棄された電子写真感光体から電子写真感光体材料を回収、再生することも容易であり、リサイクルによる資源の有効利用、廃棄物の低減、コスト削減を可能とする。
【0033】B:本発明における感光層以下、本発明における感光層について、詳細に説明する。
(1)電荷発生層本発明の電子写真感光体において、図1あるいは図2に示すような、電荷発生材料を含有する電荷発生層を設ける場合、該電荷発生材料としては、電荷発生能を有するものなら如何なるものでも利用可能であり、例えば、非晶質セレン、六方晶セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物およびセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−シリコン、a−シリコンカーバイド等の無機系光導電性材料;フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、多環キノン系、ピレン系、ピロロピロール系、ピリリウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔料および染料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独あるいは2種以上混合して用いることもできる。
【0034】これらの中でも有機顔料は安全性、堅牢性等の点で好ましく、特に、フタロシアニン系顔料は、デジタル式の電子写真装置に光源として現在広く使用されているLEDおよびレーザーダイオードの発信波長である600〜850nmに優れた光感度を有するため、本発明における電荷発生材料として特に好ましい。
【0035】フタロシアニン系顔料としては、無金属フタロシアニン類、金属フタロシアニン類、及びそれらの誘導体が利用できる。金属フタロシアニン類の中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li等が挙げられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物誘導体も有効である。具体的には、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、ジメトキシ珪素フタロシアニン等を挙げることができる。また、フタロシアニン環に任意の置換基が導入された置換フタロシアニンも使用することができる。さらにまた、フタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換されたアザフタロシアニン類も有効である。
【0036】これらフタロシアニン系顔料の形態としては、電荷発生能を有する限りアルモルファスまたは全ての結晶形のものが使用可能である。これ等フタロシアニン系顔料の中でも、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた光感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料として特に好ましい。
【0037】また、アゾ系顔料、多環キノン系顔料およびペリレン系顔料も電荷発生効率に優れるため、電荷発生材料として好ましく使用できる。レーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小径化できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レーザーの短波長化の検討がなされているが、これらの顔料は、紫外域から可視域に高い光感度を有するため、短波長レーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用いることができる。
【0038】電荷発生層の形成方法としては、前記電荷発生材料を真空蒸着法等により直接成膜する乾式法、前記電荷発生材料と結着樹脂とを適当な溶剤に分散・溶解させた塗布液を用い、これを塗布しさらに乾燥させる湿式塗布法等が利用できる。湿式塗布法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等の通常の方法を用いることができる。
【0039】電荷発生層の形成に結着樹脂を用いる場合、その結着樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ビニルブチラール樹脂、ビニルホルマール樹脂、部分変性ビニルアセタール樹脂、カーボネート樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルアセテート樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ビニルカルバゾール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂は、ブロック、ランダムまたは交互共重合体であってもよく、また、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0040】電荷発生材料と結着樹脂との配合比(重量比)は、10/1〜1/10の範囲が好ましい。より好ましくは、5/1〜1/1の範囲に設定される。電荷発生材料の結着樹脂に対する配合比が前記範囲より多いと、暗減衰が増大し、また湿式塗布法では均質な膜を得ることが困難になる。また、前記範囲より少ないと光感度の低下、残留電位の増大等の障害が顕著となる。
【0041】塗布液調製時に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム等の通常の有機溶剤を、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。上記塗布液における溶剤の量としては、一概には言えないが、塗布適性より、塗布液中の全固形分が1〜20重量%の範囲になる量とすることが望ましい。また、本発明で用いる電荷発生層の膜厚は一般的には、0.05〜5μmが適当であり、より好ましくは0.1〜2.0μmの範囲に設定される。
【0042】(2)両極性電荷輸送層本発明に特有の構成である両極性電荷輸送層は、ホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料とを含有するものであり、第1の本発明ではホール輸送性材料が、第2の本発明ではエレクトロン輸送性材料が、それぞれ特定の材料を用いることを特徴としている。また、かかる各両極性電荷輸送層中にさらに電荷発生材料を含有することで、単層型の電子写真感光体を構成することも可能である。
【0043】以下、本発明における両極性電荷輸送層について、第1の本発明と第2の本発明とに分け、最後に両発明における各両極性電荷輸送層中にさらに電荷発生材料を含有させる構成についてまとめて説明する。
【0044】a)第1の本発明第1の本発明における両極性電荷輸送層は、前記ホール輸送性材料が、下記一般式(1)で表される構造の少なくとも1種を繰り返し単位として有するホール輸送性ポリエステル化合物(以下、「特定のホール輸送性ポリエステル化合物」と称する場合がある。)であることを特徴とするものである。
【0045】
【化3】

【0046】{上記式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示し、LはL1−COO−L2−OCO−L3(L1〜L3はそれぞれ独立に2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示す)で表される2価の基を示し、mは0または1を示す。}
【0047】特定のホール輸送性ポリエステル化合物を用いることによって、高いホール輸送性、高い放電生成物耐性、優れた機械的強度、エレクトロン輸送性材料との高い相溶性が実現される。また、エレクトロン輸送性材料との高い相溶性の結果として、高いエレクトロン輸送性がもたらされ、複合膜として優れた機械的強度が達成される。
【0048】特定のホール輸送性ポリエステルの重量平均分子量としては、成膜性の観点から2000以上であることが好ましく、機械的強度の観点からは20000以上であることがより好ましい。重量平均分子量の上限に関しては、原理的な制約はないが、湿式塗布法にて成膜を行う場合、塗布液に適当な粘度を与える必要があり、一般に5000000以下であることが要求される。
【0049】前記一般式(1)におけるAr1及びAr2の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、メメトキシフェニル基等が挙げられる。
【0050】前記一般式(1)におけるX1の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、ピレニレン基、オキシビスフェニル基、メチレンビスフェニル基、シクロヘキシリデンビスフェニル基等、およびこれらのメチル基置換誘導体あるいはハロゲン原子置換誘導体等が挙げられ、ホール輸送能、放電生成物耐性等の点で、特に、ターフェニレン基、3,3’−ジメチルビフェニレン基が好ましい。
【0051】前記一般式(1)におけるX2及びX3の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基等、およびこれらのメチル基置換誘導体あるいはハロゲン原子置換誘導体等が挙げられる。
【0052】前記一般式(1)におけるL1〜L3としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、シクロヘキシリデン基、オキシビスメチル基、オキシビスエチル基、フェニレン基、フェニレンビスメチル基等の炭素数1〜12の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基が好ましい。
【0053】特定のホール輸送性ポリエステルの具体例としては、特開平8−253568号公報の段落番号0013〜段落番号0022(表1〜表10)に記載されているもの等が挙げられる。また、これらの合成方法については、同公報の段落番号0023〜段落番号0030に、これらの合成例については、同公報の段落番号0041〜段落番号0060に、それぞれ記載されている。ただし、本発明における特定のホール輸送性ポリエステルは、同公報に記載のものに限定されるものではない。
【0054】第1の本発明に用いられるエレクトロン輸送性材料としては、エレクトロン輸送能を有し且つ前記ホール輸送性ポリエステルと相溶性を有するものであれば如何なるものでも構わないが、電子吸引性骨格に枝分かれもしくは環構造を含む嵩高い炭化水素基を備えたエレクトロン輸送性低分子化合物であることが好ましい。枝分かれもしくは環構造を含む嵩高い炭化水素基によりホール輸送性ポリエステルとの高い相溶性と固溶状態の高い安定性が発揮され、また枝分かれもしくは環構造を含む嵩高い炭化水素基による立体障害により、一般的にホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料を混合したときに生起する電荷移動錯体の形成が抑制され、望ましくない着色が抑えられると共に高い両極性電荷輸送能が発揮される。
【0055】前記エレクトロン輸送性低分子化合物における電子吸引性骨格としては、具体的には、ジフェノキノン骨格、キノン骨格、フルオレノン骨格、アントラキノン骨格、イミド骨格等が挙げられる。
【0056】前記エレクトロン輸送性低分子化合物における炭化水素基に含まれる枝分かれ構造としては、具体的には、イソプロピル構造、tert−ブチル構造、ネオペンチル構造等が挙げられる。
【0057】前記エレクトロン輸送性低分子化合物における炭化水素基に含まれる環構造としては、具体的には、シクロヘキシル構造、ノルボルニル構造、アダマンチル構造等が挙げられる。
【0058】前記エレクトロン輸送性低分子化合物の中でも、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、およびイミド誘導体は、高いエレクトロン輸送能を有し、特に好ましい。本発明に用いる好ましいエレクトロン輸送性低分子化合物の具体例としては、3,5−ジメチル−3’,5’−ジイソプロピルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジtert−ブチルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジシクロヘキシルジフェノキノン、(4−tert−ブトキシカルボニル−9−フロオレニリデン)マロノニトリル、(4−ノルボルノキシカルボニル−9−フロオレニリデン)マロノニトリル、N−(m−メチルフェニル)トリニトロフルオレノイミン、N,N’−ジ−tert−ブチルベンゼンテトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ジ−tert−ブチルナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ジノルボルニルナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
【0059】第1の本発明における両極性電荷輸送層中、特定のホール輸送性ポリエステルと前記エレクトロン輸送性材料との配合比(重量比)は3:7〜8:2の範囲内にあることが好ましく、4:6〜7:3の範囲内がより好ましい。特定のホール輸送性ポリエステルの配合比が前記範囲未満であると膜強度が低下し、他方、前記範囲を超えるとエレクトロン輸送性材料の濃度が低くなりすぎる結果としてエレクトロン輸送性が低下する場合がある。
【0060】第1の本発明の両極性電荷輸送層の形成方法としては、如何なる方法でも構わないが、製造コスト、設備の簡便性、量産性等の点で、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これを乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が好ましい。
【0061】上記塗布液は、特定のホール輸送性ポリエステル化合物および前記エレクトロン輸送性材料の適量を、適当な溶剤中に溶解させることによって調製される。かかる溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、シクロヘキサノール、ブタノール等のアルコール系溶剤等を、単独または複数混合して用いることができる。上記塗布液における溶剤の量としては、一概には言えないが、塗布適性より、塗布液中の全固形分が5〜50重量%の範囲になる量とすることが望ましい。
【0062】第1の本発明において、両極性電荷輸送層の膜厚としては、5〜100μmの範囲とすることが一般的であり、10〜40μmの範囲とすることが好ましく、15〜35μmの範囲とすることがより好ましい。
【0063】b)第2の本発明第2の本発明における両極性電荷輸送層は、前記エレクトロン輸送性材料が、エレクトロン輸送性高分子化合物であることを特徴とするものである。第2の本発明においては、エレクトロン輸送性材料を高分子化合物とすることで、上述したエレクトロン輸送性材料の結晶化の問題が回避される。
【0064】エレクトロン輸送性高分子化合物としては、機械的強度、可とう性、溶解性等の点で、エレクトロン輸送活性基を側鎖および/または主鎖に有するポリエーテル化合物、ポリエステル化合物、ポリカーボネート化合物、ポリアミド化合物、ポリウレタン化合物、またはポリイミド化合物が好ましい。エレクトロン輸送活性基としては、ジフェノキノン構造、フルオレノン構造、フルオレニリデンマロノニトリル構造、フルオレノイミン構造、芳香族イミド構造を有するものが、高いエレクトロン輸送性を示し、好ましい。
【0065】エレクトロン輸送性高分子化合物の合成方法としては、まずエレクトロン輸送活性基を有するモノマーを合成し、それを「新高分子実験学3、高分子の合成・反応,高分子学会編,共立出版(1996)」等の文献に記載の一般的な重合法にて重合し高分子化する方法、あるいは、あらかじめ末端および/または側鎖に反応性基を有する高分子化合物と、該反応性基と反応結合し得る基を有するエレクトロン輸送性化合物と、を用意し、両者を反応結合させる方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】エレクトロン輸送性高分子化合物の重量平均分子量としては、成膜性の観点から2000以上であることが好ましく、機械的強度の観点からは、20000以上であることがより好ましい。重量平均分子量の上限に関しては、原理的な制約はないが、湿式塗布法にて成膜を行う場合、塗布液に適当な粘度を与える必要があり、一般に5000000以下であることが要求される。
【0067】エレクトロン輸送性高分子化合物の具体例としては、特開平11−228675号公報、特開平10−123739号公報、特開平10−10766号公報号公報、特開平9−194535号公報、特開平9−17932号公報7、特開平9−114120号公報、特開平8−134019号公報、特開平8−30007号公報、特開平4−353858号公報、特開平2−123370号公報、Jounal of Imaging Science and Technology Vol.40,164−167(1996)、米国特許第5,266,429号明細書等に記載の化合物が挙げられ、第2の本発明においては、それらのいずれをも用いることが可能であるが、特に米国特許第5,266,429号明細書に開示されている芳香族テトラカルボン酸ジイミド構造を主鎖に有するポリエステル化合物等が好ましい。
【0068】第2の本発明に用いるホール輸送性材料としては、ホール輸送性を有し、且つ前記第2の本発明におけるエレクトロン輸送性高分子化合物に固溶するものであれば如何なるものでも構わないが、トリアリールアミン構造を有する化合物を用いると、その両極性電荷輸送層の機械的強度、熱安定性は特に優れたものとなり、好ましい。これは、トリアリールアミン構造を有する化合物が、そのプロペラ状の構造により結晶性が低いため、エレクトロン輸送性高分子化合物中に安定に固溶され、均質な複合膜が形成されるためと推定される。また、トリアリールアミン構造を有する化合物は高いホール輸送能を有し、ホール輸送性の点でも、好ましい。
【0069】トリアリールアミン構造を有する低分子化合物としては、置換あるいは未置換のトリフェニルアミン、置換あるいは未置換のテトラフェニルフェニレンジアミン、置換あるいは未置換のテトラフェニルベンジジン、置換あるいは未置換のビス(ジフェニルアミノ)ターフェニル等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
【0070】第2の本発明における両極性電荷輸送層中、前記エレクトロン輸送性高分子化合物とホール輸送性材料の配合比(重量比)は3:7〜8:2の範囲内にあることが好ましく、5:5〜7:3の範囲内がより好ましい。エレクトロン輸送性高分子化合物の配合比が前記範囲未満であると膜強度が低下し、他方、前記範囲を超えるとホール輸送性材料の濃度が低くなりすぎる結果としてホール輸送性が低下する場合がある。
【0071】一般に電荷輸送性に関してはエレクトロン輸送性材料よりもホール輸送性材料の方が優れているため、両極性電荷輸送材料において、両電荷の移動度を最適に設定するには、輸送性の劣るエレクトロン輸送性材料をホール輸送性材料よりも高濃度に存在させる必要がある。ホール輸送性高分子化合物とエレクトロン輸送性低分子化合物を用いる従来の技術では、高いエレクトロン移動度を得るにはエレクトロン輸送性低分子化合物の濃度を50重量%以上にする必要があり、エレクトロン輸送性低分子化合物の結晶化の問題に加え、膜中に占める高分子成分の割合が少なくなり機械的強度が犠牲になる。これに対し、エレクトロン輸送性高分子化合物とホール輸送性低分子化合物を用いる第2の本発明では、ホール輸送性低分子化合物の高い輸送性のお陰でホール輸送性低分子化合物の割合をエレクトロン輸送性高分子化合物より少なく設定して、最適な両極性電荷移動度が得られるため、機械的強度的にも有利である。
【0072】第2の本発明の両極性電荷輸送層の形成方法としては、如何なる方法でも構わないが、製造コスト、設備の簡便性、量産性等の点で、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これを乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が好ましい。
【0073】上記塗布液は、エレクトロン輸送性高分子化合物および前記ホール輸送性材料の適量を、適当な溶剤中に溶解させることによって調製される。かかる溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クレゾール等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、シクロヘキサノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等を、単独または複数混合して用いることができる。上記塗布液における溶剤の量としては、一概には言えないが、塗布適性より、塗布液中の全固形分が5〜50重量%の範囲になる量とすることが望ましい。
【0074】第2の本発明において、両極性電荷輸送層の膜厚としては、5〜100μmの範囲とすることが一般的であり、10〜40μmの範囲とすることが好ましく、15〜35μmの範囲とすることがより好ましい。
【0075】c)電荷発生材料を含有させる構成本発明において、両極性電荷輸送層中に電荷発生材料を含有させる場合には、第1の本発明および第2の本発明のいずれにおいても、前記各塗布液中に適量の電荷発生材料を含有させ、該塗布液を塗布し、これを乾燥することによって、電荷発生材料含有の両極性電荷輸送層を形成することができる。電荷発生材料含有の両極性電荷輸送層を形成し単層型の電子写真感光体を構成することは、単層型の電子写真感光体のメリットを活かせる点で好ましい。
【0076】前記電荷発生材料として顔料等の不溶物を用いる場合、均一且つ安定な塗布液を得るには、ボールミル法、ペイントシェーク法、アトライター法、サンドミル法、超音波法等の粉砕・分散法にて処理することによって塗布液を調製することが好ましい。使用し得る電荷発生材料としては、電荷発生層の項で説明したものと同一のものが挙げられ、その好ましいものも同様である。
【0077】本発明において、両極性電荷輸送層に電荷発生材料を含有させる場合、該電荷発生材料の含有量としては、0.05〜30重量%の範囲内にあることが好ましく、0.1〜10重量%の範囲内にあることがより好ましく、0.3〜5重量%の範囲内にあることがさらに好ましい。電荷発生材料の含有量が0.05重量%未満であると、感光層による吸光度が不足し、光感度が不足したり、露光光源としてレーザー等の可干渉光を用い、且つ鏡面の導電性支持体を使用した場合には干渉縞の問題が発生する場合がある。他方、電荷発生材料の含有量が30重量%を超えると、暗電荷の増加、繰り返し安定性の低下、機械的強度の低下等の弊害が顕著となる。
【0078】C:本発明の電子写真感光体におけるその他の構成a)導電性支持体本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の材料としては、当業界で電子写真感光体に用いる導電性支持体として利用され得る任意の種類から選択でき、不透明であっても透明であっても構わない。前記導電性支持体の材料の具体例としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、白金、ジルコニウム、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチック、ガラスおよびセラミックス等;導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、プラスチック、ガラスおよびセラミックス等;が挙げられる。
【0079】本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の形状としては、ベルト状、ドラム状、シート状、プレート状等、適宜の形状とすることができる。また、本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の表面には、必要に応じて、各種の処理を施すことができる。例えば、電解酸化処理;薬品処理;砂目立て、荒切削、ホーニング等の機械的粗面化処理;切削、研磨等による機械的鏡面化処理;等を施すことができる。
【0080】b)下引き層また、本発明においては、導電性支持体から感光層への電荷の漏洩を阻止する目的および/または感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめる目的等のために、導電性支持体と感光層との間に、下引き層を設けることもできる。
【0081】下引き層としては、公知のものを用いることができ、例えば、エチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ビニルアセタール樹脂、ビニルアルコール樹脂、水溶性エステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル酸樹脂、アクリルアミド樹脂等の樹脂およびこれらの共重合体、あるいは、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップリング剤等の硬化性金属有機化合物を、単独または2種以上混合して用い、形成することができる。また、帯電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も下引き層として有効である。
【0082】下引き層の形成方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これを乾燥して塗膜を形成する通常の湿式塗布法を用いることができる。かかる塗布液は、下引き層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。下引き層の膜厚は、0.005〜10μmが適当であり、より好ましくは0.01〜5μmの範囲である。
【0083】c)単極性電荷輸送層本発明の電子写真感光体においては、単極性電荷輸送層を併設しても構わない。特に、図3の構成において、導電性支持体1と両極性電荷輸送層3との間に帯電極性と同極性の電荷を輸送する適当な単極性電荷輸送層を設けると、帯電性や、導電性支持体1と両極性電荷輸送層3との間の接着性等において、改善効果がもたらされる場合がある。また、図3の構成において、その表面に帯電極性と逆極性の電荷を輸送する適当な単極性電荷輸送層を設けると、耐磨耗性、転写性、クリーニング性等において、改善効果がもたらされる場合がある。
【0084】単極性電荷輸送層としては、特に限定されず、公知の電荷輸送層の構成をそのまま適用することができる。単極性電荷輸送層の形成方法としては、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これを乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗布液は、単極性電荷輸送層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。単極性電荷輸送層の膜厚は、0.1〜40μmの範囲、好ましくは2〜10μmの範囲に設定される。
【0085】d)保護層本発明において、感光層の上に必要に応じて設けてもよい保護層としては、帯電部材から発生するオゾンや酸化性ガス等、および紫外光等の化学的・光学的ストレス、あるいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に起因する機械的ストレスから感光層を保護し、電子写真感光体の実質的な寿命を改善するために有効である。
【0086】前記保護層は、一般に導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成される。該導電性材料としては、ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金属酸化物等の材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0087】前記保護層形成に用いることができる結着樹脂としては、アミド樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、カーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。また、アモルファスカーボン等の半導電性無機膜も保護層として用いることができる。
【0088】前記保護層の形成方法としては、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これを乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗布液は、保護層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。保護層の膜厚は0.5〜20μmの範囲が適当であり、より好ましくは1〜10μmの範囲に設定される。
【0089】また、保護層を設けた場合、必要に応じて、感光層と保護層との間に、保護層から感光層への電荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることができる。このブロッキング層としては、保護層の場合と同様に公知のものを用いることができる。
【0090】e)その他の添加剤本発明の電子写真感光体においては、オゾンや酸化性ガス、あるいは、光、熱による電子写真感光体の劣化を防止する目的で、任意の層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0091】酸化防止剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0092】光安定剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体、および、光励起状態をエネルギー移動あるいは電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子供与性化合物等が挙げられる。
【0093】熱安定剤としては、公知のものを用いることができる。さらに、表面磨耗の低減、転写性の向上、クリーニング性の向上等を目的として、表面層(保護層、感光層のいずれの場合であっても構わない)にフッ素樹脂、シリカ等の微粒子を分散させてもよい。
【0094】D:本発明のプロセスカートリッジプロセスカートリッジとは、電子写真装置の消耗部品を適時交換する目的で、電子写真装置の構成部品のいくつかをカートリッジに組み込み、容易に交換作業を行えるようにしたものである。プロセスカートリッジは、電子写真装置の中に装着された状態で取引される他、交換部品あるいは補修部品として、単体でも取引されている。
【0095】プロセスカートリッジに組み込まれ得る構成部品としては、一般に、現像手段、帯電手段、露光手段、およびクリーニング手段が挙げられ、これらをその目的に応じて任意に組み合わせることができる。
【0096】本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも電子写真感光体と、必要に応じて上記構成部品の任意の組み合わせ、を含み、かつ、該電子写真感光体が前記本発明の電子写真感光体であることが特徴となる。プロセスカートリッジに組み込まれ得る電子写真感光体以外の構成部品については、特に制限は無く、従来公知の物が問題無く採用され得る。
【0097】E:本発明の電子写真装置本発明の電子写真感光体を搭載する電子写真装置としては、電子写真法によるものであれば如何なるものでも構わないが、特にデジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装置が好ましい。デジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装置とは、レーザーまたはLED等の光源を用い、2値化またはパルス幅変調や強度変調を行い多値化された信号に従い露光を行う電子写真装置であり、例としてLEDプリンター、レーザープリンター、レーザー露光式デジタル複写機などを挙げることができる。本発明の電子写真装置としては、単層型の電子写真感光体を用いた場合、電子写真感光体の表面を負に帯電させる帯電器と反転現像方式の現像器を備えたものが、画質等の点で、特に好ましい。
【0098】本発明の電子写真装置の一例を図4に模式的に示す。図4の電子写真装置はレーザープリンターであり、電子写真感光体である円筒形の感光体ドラム11の周りに、除電用光源である除電用LED12、帯電手段である帯電用スコロトロン13、像露光手段である露光用レーザー光学系14、現像器15、転写用接触帯電ロール16、および、クリーニング手段であるブレード式クリーニング器17が、この順序で配置されている。露光用レーザー光学系14は、例えば発信波長780nmの露光用レーザーダイオードを備えており、デジタル処理された画像信号に基づき発光する。発光したレーザー光14aはポリゴンミラーと複数のレンズ、ミラーにより走査されながら電子写真感光体表面を露光するように構成されている。尚、18は用紙を示す。
【0099】本発明の電子写真装置においては、感光体ドラム11が本発明の電子写真感光体である。勿論、感光体ドラム11と、任意の構成部品と、を含み、かつ、該電子写真感光体が前記本発明の電子写真感光体であるプロセスカートリッジを含む構成であっても構わない。
【0100】本発明の電子写真装置について、図面を以って説明したが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、電子写真感光体以外の構成部品については、特に制限は無く、従来公知の物が問題無く採用され得る。
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、当業者は電子写真技術の公知の知見から、以下の実施例に変更を加えることが可能である。
【0101】[第1の本発明の実施例および比較例]
(合成例1)N,N’−ビス(p,m−ジメチルフェニル)−N,N’−ビス[p−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]−[3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン3kg、エチレングリコール9kg、および、テトラブトキシチタン25gを混合し、窒素気流下で6時間加熱還流した。0.5mmHgに減圧しエチレングリコールを留去しながら225℃に加熱し、さらに6時間反応を続けた。その後、生成した樹脂を室温まで冷却し、トルエン30kgを加え前記樹脂を溶解させ、0.5μm孔径のPTFE製フィルターにて不溶分を除去した後、メチルエチルケトン150kgを加え、沈降した高分子成分を分別した。これをテトラヒドロフラン/イソプロパノールから再沈殿化処理し、下記構造式(1)で示されるホール輸送性ポリエステル化合物2.0kgを得た。得られたホール輸送性ポリエステル化合物の重量平均分子量をGPC分析にて確認したところ、71000(ポリスチレン換算)であった。
【0102】
【化4】

【0103】(実施例1)CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶2重量部、シクロヘキサノン40重量部、トルエン160重量部、およびテトラヒドロフラン200重量部を混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理した後、合成例1で得られたホール輸送性ポリエステル化合物60重量部と、エレクトロン輸送性材料である3,5−ジメチル−3’,5’−ジシクロヘキシルジフェノキノン38重量部と、を添加し、さらにボールミル法で2時間溶解分散処理して、両極性電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。
【0104】得られた塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)表面に浸漬塗布法にて塗布し、135℃において30分間加熱乾燥して両極性電荷輸送層(感光層)を形成し、図3に示す構成の単層型の電子写真感光体を作製した。尚、感光層の膜厚は20μmであった。
【0105】このようにして得られた電子写真感光体を市販のレーザープリンター(Laser Press4150、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温常湿環境(25℃、45%RH)下にて、A4横方向に1万枚連続で画出しし、プリント試験を行った。1枚目と1万枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った評価結果を下記表1にまとめて示す。尚、評価に供した上記レーザープリンターは、図4に示される構成であり、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器とを備えている。
【0106】(実施例2)アルミニウム製ドラムとして、アルミナ粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.20μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0107】(実施例3)エレクトロン輸送性材料を、(4−シクロヘキシロキシカルボニル−9−フルオレニリデン)マロノニトリルに変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0108】(比較例1)ホール輸送性ポリエステル化合物の代わりに、絶縁性樹脂であるビスフェノールZタイプポリカーボネート(PC−Z、三菱瓦斯化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0109】(比較例2)エレクトロン輸送性材料を添加せず、且つ、ホール輸送性ポリエステル化合物の添加量を98重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0110】(比較例3)CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶3重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体(VMCH、ユニオンカーバイド社製)3重量部、キシレン60重量部、および、酢酸ブチル40重量部と混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理して、電荷発生層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)表面に浸漬塗布法にて塗布し、135℃において5分間加熱乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0111】次に、合成例1で得られたホール輸送性ポリエステル化合物10重量部およびトルエン40重量部を混合して電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、浸漬塗布法で上記電荷発生層上に塗布し、135℃において30分間加熱乾燥し、膜厚20μmの単極性電荷輸送層を形成し、積層型の電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を実施例1と同様にして評価した。ただし、当初から画質が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0112】(比較例4)アルミニウム製ドラムとして、アルミナ粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.20μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、比較例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。ただし、当初から画質が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0113】
【表1】

【0114】表1に示すように、第1の本発明の電子写真感光体は、優れた電子写真特性を有し、長期に亘って安定な高画質を提供することができることがわかる。
【0115】[第2の本発明の実施例および比較例]
(合成例2)ナフタレンテトラカルボン酸二無水物4重量部、11−アミノウンデカン酸16重量部、およびN,N−ジメチルアセトアミド300重量部からなる混合溶液を、攪拌下20時間還流させた。1日放冷後、沈降した結晶を濾取し、水およびイソプロパノールにて良く洗浄した後、減圧乾燥を行い、両末端がカルボン酸のジイミド化合物を得た。
【0116】該ジイミド化合物10重量部、エチレングリコール100重量部、およびテトラブトキシチタン0.002重量部を、攪拌下6時間還流させた。その後、減圧下エチレングリコールを留去し、さらに270℃に昇温し、該温度に6時間保持した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタンに溶解させ、該溶液を大過剰のメタノール中に投入することにより、高分子化合物を析出させた。該高分子化合物を濾取し、減圧下100℃にて乾燥させ、下記構造式(2)で示される、エレクトロン輸送活性基としてナフタレンビスイミド構造を主鎖に有する、エレクトロン輸送性ポリエステル化合物7重量部を得た。得られたエレクトロン輸送性ポリエステル化合物の重量平均分子量をGPC分析にて確認したところ、36000(ポリスチレン換算)であった。
【0117】
【化5】

【0118】(実施例4)CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶3重量部、N,N−ジメチルホルムアミド80重量部、およびテトラヒドロフラン320重量部を混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理した後、合成例2で得られたエレクトロン輸送性ポリエステル化合物67重量部と、下記構造式(3)で示されるトリフェニルアミン構造を有する、ホール輸送性低分子化合物30重量部を添加し、さらにボールミル法で2時間溶解分散処理して、両極性電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。
【0119】
【化6】

【0120】得られた塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)表面に浸漬塗布法にて塗布し、135℃において60分間加熱乾燥して両極性電荷輸送層(感光層)を形成し、図3に示す構成の単層型の電子写真感光体を作製した。尚、感光層の膜厚は15μmであった。
【0121】このようにして得られた電子写真感光体を市販のレーザープリンター(Laser Press4150、富士ゼロックス社製)に搭載し、高温常湿環境(35℃、50%RH)下にて、A4横方向に5000枚連続で画出しし、プリント試験を行った。1枚目と5000枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った評価結果を下記表2にまとめて示す。尚、評価に供した上記レーザープリンターは、図4に示される構成であり、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器とを備えている。
【0122】(実施例5)アルミニウム製ドラムとして、アルミナ粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.20μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例4と同様にして評価した。評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0123】(実施例6)ホール輸送性低分子化合物を、下記構造式(4)で示されるトリフェニルアミン構造を有する、ホール輸送性低分子化合物に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例4と同様にして評価した。評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0124】
【化7】

【0125】(実施例7)ホール輸送性低分子化合物を、下記構造式(5)で示されるトリフェニルアミン構造を有する、ホール輸送性低分子化合物に変更し、エレクトロン輸送性ポリエステル化合物の添加量を62重量部に変更し、且つ、酸化防止剤である2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン5重量部を加えた以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例4と同様にして評価した。評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0126】
【化8】

【0127】(実施例8)ホール輸送性低分子化合物を、下記構造式(6)で示されるトリフェニルアミン構造を有する、ホール輸送性低分子化合物に変更した以外は、実施例7と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例4と同様にして評価した。評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0128】
【化9】

【0129】(実施例9)導電性支持体として、表面を鏡面処理した84mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を市販のフルカラーレーザー複写機(A−Color935、富士ゼロックス社製)に搭載し、高温常湿環境(35℃、50%RH)下にて、A4横方向に1000枚連続で画出しし、複写試験を行った。1枚目と1000枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った評価結果を下記表2にまとめて示す。尚、評価に供したフルカラーレーザー複写機は、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器とを備えている。
【0130】(比較例5)エレクトロン輸送性ポリエステル化合物の代わりに、絶縁性樹脂であるビスフェノールZタイプポリカーボネート(PC−Z、三菱瓦斯化学社製)を用いた以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例4と同様にして評価した。評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0131】(比較例6)ホール輸送性材料を添加せず、且つ、エレクトロン輸送性ポリエステル化合物の添加量を97重量部に変更した以外は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例4と同様にして評価した。評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0132】(比較例7)CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶3重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体(VMCH、ユニオンカーバイド社製)3重量部、キシレン60重量部、および、酢酸ブチル40重量部と混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理して、電荷発生層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)表面に浸漬塗布法にて塗布し、135℃において5分間加熱乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0133】次に、前記構造式(3)で示されるトリフェニルアミン構造を有する、ホール輸送性低分子化合物30重量部、ビスフェノールZタイプポリカーボネート70重量部、シクロヘキサノン40重量部、およびテトラヒドロフラン360重量部を混合して電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、浸漬塗布法で上記電荷発生層上に塗布し、135℃において60分間加熱乾燥し、膜厚15μmの単極性電荷輸送層を形成し、積層型の電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を実施例4と同様にして評価した。ただし、当初から画質が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断した。評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0134】(比較例8)アルミニウム製ドラムとして、アルミナ粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.20μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、比較例7と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例4と同様にして評価した。ただし、当初から画質が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断した。評価結果を下記表2にまとめて示す。
【0135】
【表2】

【0136】表2に示すように、第2の本発明の電子写真感光体は、優れた熱安定性並びに繰り返し安定性を有し、高温環境においても長期に亘って安定な高画質を提供することができることがわかる。さらに、導電性基体の表面性状にかかわらず干渉縞の発生が無く、また荒れた導電性基体を用い、且つ下引き層を形成しなくとも濃度ムラが生じないと云う優れた特質を有し、既述の如き積層型の電子写真感光体における問題点が払拭されていることがわかる。
【0137】
【発明の効果】以上のように、本発明特有の両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体は、高性能で且つ耐久性に優れたものとなるという卓越した効果を奏する。その結果、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置は、優れた画質を長期に亘り実現することができる。また、従来の積層型の電子写真感光体における問題を払拭し得る単層型の電子写真感光体を提供することができ、低コストでの電子写真感光体の提供を可能とする。
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【出願日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2001−265035(P2001−265035A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−78263(P2000−78263)