トップ :: G 物理学 :: G03 写真;映画;光波以外の波を使用する類似技術;電子写真;ホログラフイ




【発明の名称】 電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置
【発明者】 【氏名】山口 康浩

【氏名】飯島 正和

【氏名】田甫 文明

【氏名】岩崎 真宏

【氏名】星崎 武敏

【氏名】坂口 泰生

【要約】 【課題】感光層の一層として、ホールおよびエレクトロン輸送性、機械的強度、放電生成物耐性、塗布分散液安定性、等に優れた両極性電荷輸送層を形成することで、感光体に要求される種々の性能を必要に応じて解決し得る、高性能且つ高寿命な電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を利用したプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供すること。

【解決手段】少なくとも、感光層の一層として、ホール輸送性とエレクトロン輸送性とを有する両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体において、前記両極性電荷輸送層がブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を利用したプロセスカートリッジ及び電子写真装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも、感光層の一層として、ホール輸送性とエレクトロン輸送性とを有する両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体において、前記両極性電荷輸送層がブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】 前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体が、電荷輸送性を有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】 請求項1または2に記載の電子写真感光体を含むことを特徴とする、電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジ。
【請求項4】 請求項1または2に記載の電子写真感光体、あるいは、請求項3に記載のプロセスカートリッジを含むことを特徴とする電子写真装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電荷輸送性ならびに機械的特性に優れた電子写真感光体、並びにそれを用いたプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真技術は、高速で、高印字品質が得られる等の利点を有するために、近年、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像出力分野において、中心的役割を果たしている。電子写真技術の心臓部である電子写真感光体の構成材料としては、当初からセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料が広く用いられてきたが、これらの無機系感光体に比べ、コスト、製造性、廃棄性等の点で優れた利点を有する有機光導電性材料を用いた電子写真感光体の研究開発が活発に行われ、現在では無機系感光体を凌駕するに至っている。特に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷輸送をそれぞれ別々の材料に担わせる機能分離設計の導入により材料選択の自由度が増し、有機材料の持つ多様性を背景に著しい性能の向上が達成され、現在では導電性基体上に電荷発生機能を担う薄膜の電荷発生層と電荷輸送機能、帯電性、機械的強度を担う厚膜の電荷輸送層を積層した機能分離積層型有機感光体が電子写真感光体の主流となっている。
【0003】ところで、有機電荷輸送性材料としては、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体等のホール輸送性材料がほとんどであり、実用レベルの性能を有するエレクトロン輸送性材料は稀有である。この材料上の制約と、上述の導電性支持体/電荷発生層/電荷輸送層からなる構成とから、有機感光体は、一般に負帯電でしか動作しないという動作極性上の制約を有する。
【0004】動作極性に関しては、利用するサブシステム、トータルシステムに応じ好ましい極性があり、有機感光体をより広くかつより効率的に活用するためには、負帯電型に加え、正帯電型、さらには両極性帯電型の感光体の開発が望まれるところである。
【0005】例えば、帯電サブシステムとして、安価なスコロトロンのようなワイヤー放電型の帯電器を用いると、放電時にオゾン、窒素酸化物等の有害ガスが発生するという問題がある。この有害ガスの発生量は、同じ帯電器でも負帯電時よりも正帯電時のほうが、オーダーが1桁ほど少ないことが知られており、有害ガスを除去するフィルタ等を設置できない、低コストおよび/または小型の電子写真装置においては、正帯電型の感光体が切望される。
【0006】一方、高画質の要求に対しては、現状の現像剤を用いる場合、負帯電型の感光体を用い、反転現像を行うことが望ましい。このとき、有毒ガスの除去に活性炭等のフィルタを用いるか、有害ガスの発生量の少ない接触帯電方式の帯電器を用いる等の対策が必要になる。
【0007】また、反転現像方式を採用し、転写を静電的に行う場合、転写時の帯電極性は、潜像形成時の帯電極性とは逆極性となる。転写時の帯電は、原理的には紙あるいは1次転写用フィルム等の被転写体を介して行うため、直接感光体を帯電するわけではないが、実際には被転写体と、その次の被転写体との間等において、感光体が潜像形成時とは逆極性に帯電されてしまうことになる。この場合、単極性でしか動作しない感光体では、転写時の逆極帯電を光消去することができないため、帯電器の能力によっては、その履歴が次のコピーあるいはプリントに現れてしまうという問題が生ずる場合がある。この問題は、ホール輸送性とエレクトロン輸送性とを有する両極性帯電型感光体を用いることにより、根本的に解消される。
【0008】一方、機能分離積層型有機感光体は、その積層構成に起因し以下に示すような欠点を有しており、それら欠点を克服し得る感光体の開発が切望されている。積層構成に起因する第1の欠点としては、単層の感光体に比べ2層以上の層を形成しなければならないため、生産性が低下しコストが高くなってしまうと云う問題が挙げられる。
【0009】積層構成に起因する第2の欠点としては、量産性が高く一般的に採用されている成膜法である浸漬塗布法を用いた場合、上層塗布時に下層が侵されないようにする必要があり、そのため下層材料に上層塗布溶剤に対する耐性が要求されることとなりそれに伴う問題が挙げられる。
【0010】即ち、一般的に下層となる電荷発生層は電荷発生材料としての顔料と成膜性を担う結着樹脂からなり、該結着樹脂として上層となる電荷輸送層の塗布溶剤に侵されない材料を選択しなければならない。一般的に電荷輸送材料は比較的極性が低く、トルエン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン等の比較的極性の低い溶剤がその塗布溶剤として用いられるため、電荷発生層の結着樹脂としては、該溶剤に対する溶解性の低いアセタール変性ビニルアルコール樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂等の高極性の熱可塑性樹脂が採用されている。
【0011】しかしながら、高極性樹脂中では電荷輸送性が低下することが知られており、また高極性樹脂は吸湿性が高く環境変化に伴う光電特性の変動を引き起こす場合があると云う問題がある。さらに、これら高極性の熱可塑性樹脂は、完全には不溶ではないため、上層塗布時の若干の荒れは避けがたく、光電特性、ひいては画像の面内ムラを生起する場合があり、特にフルカラーの高画質が要求される電子写真装置への利用においては改善が望まれている。
【0012】この問題を回避する方法として電荷発生層の結着樹脂に熱硬化性の樹脂を用いる提案もなされているが、塗布液中で経時により硬化反応が進行し増粘/ゲル化してしまうと云うポットライフの問題、成膜時に未硬化サイトが残存してしまい光電特性に悪影響を及ぼすと云う問題等があり、依然、本質的な問題解決には至っていない。さらにまた、顔料等の電荷発生材料も電荷輸送層塗布溶剤に対して完全に不溶と云うことはあり得ないため、感光体の塗布本数の増加に連れ電荷発生材料の溶出による電荷輸送層塗布槽の汚染が進み、塗布液のポットライフの制約を引き起こす。
【0013】積層構成に起因する第3の欠点としては、露光光源としてレーザー等の可干渉光を用いる場合、電荷発生層と電荷輸送層との界面での正反射により、一般に干渉縞と呼ばれる切り株模様の画像欠陥が発生してしまうと云う問題が挙げられる。
【0014】この問題を回避する方法としては、界面を凹凸にし、光が散乱するようにすべく、基体表面を荒らしたり、基体と感光層との間に荒い表面性の膜を設けたりする方策が採られている。しかしながら、これらの方策はそれを施すこと自体、コストアップをもたらすし、また荒れた表面上に薄膜の電荷発生層を均一に成膜しなければならないと云う製造上の困難さが要求される。
【0015】ところで、上記のような積層構成に起因する問題点を払拭するものとしては、単層構成の電子写真感光体(単層型感光体)が古くから知られている。しかしながら、従来の単層型感光体は十分な機能分離設計がなされておらず、実用に耐える特性を有するものはなかった。即ち、従来の単層型感光体は絶縁性樹脂中に単純に電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有させたものであり、輸送電荷極性の制約から表面近傍のみで光吸収が起こるように電荷発生材料濃度を高くする必要があり、その結果、暗減衰が大きい、繰り返し使用による光電特性の変動が大きい等の問題があった(積層感光体では電荷発生層の膜厚を薄くすることでこの問題を抑えている)。
【0016】この問題に対し、最近、電荷発生材料とホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料と、の3者を絶縁性樹脂中に含有させた単層型感光体が提案され、著しい性能の改善が達成された(電子写真学会誌,Vol30,pp274−281,1991)。即ち、従来のようにホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料のどちらか一方だけではなく、ホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料の両方を添加することで輸送電荷極性の制約がなくなり、電子写真感光体の感光層内部で電荷発生しても、両電荷がそれぞれの電荷輸送材料によって、対極に輸送されるため、電荷発生材料の添加量を著しく減少させることが可能となり、上述の問題が解消された。
【0017】しかしながら、前記絶縁性樹脂としてはポリカーボネート等の一般的に電荷輸送層用に用いられている樹脂が使用されており、感光層形成用の塗布液中における電荷発生材料の分散性が悪いと云う問題があった。上述のように機能分離積層型感光体の電荷発生層は、電荷発生材料と、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の高極性基を有する高極性樹脂と、からなり、該電荷発生層を形成するための塗布液は、前記高極性樹脂がその高極性基にて電荷発生材料の微粒子に吸着することで微粒子同士の凝集を抑え、安定な分散状態を与えている。
【0018】この考えを踏襲し、前記機能分離型単層感光体の絶縁性樹脂として高極性樹脂を用いると、感光層形成用の塗布液の分散安定性は改善されるものの、感光体の帯電性、繰返し安定性、環境安定性等が顕著に悪化することになる。即ち、上述のように高極性樹脂は本質的に電荷輸送性、吸湿性、絶縁性等の点で問題を抱えており、機能分離積層型感光体では、当該高極性樹脂を含む電荷発生層を薄膜にすることにより、悪影響を最小限に抑えているに過ぎず、感光層にある程度の厚みを有する単層型感光体への適用は不可能である。
【0019】また、ホール輸送性材料およびエレクトロン輸送性材料を絶縁性樹脂中に分散させるこの系において、十分なホール輸送能とエレクトロン輸送能とを両立させるには、機械的強度を担う絶縁樹脂に対するこれら低分子量の電荷輸送材料の総濃度を高くする必要があり、膜全体としての機械的強度が低下してしまうという問題があった。
【0020】この問題の改善策としては、電荷輸送性材料の一方を高分子化合物とし成膜性を担わせ、絶縁性樹脂を不要とする方策があり、特開平3−256050号公報、特開平5−249706号公報、特開平5−150495号公報等において、特定のホール輸送性高分子化合物を用いる発明が開示されている。しかしながら、これらの発明において用いられているホール輸送性高分子化合物は、それ自体の機械的強度が十分ではなく、放電生成物耐性、エレクトロン輸送材料との相溶性、等の点でも、さらなる改善が必要とされている。また、上述の感光層形成用の塗布液中でも電荷発生材料の分散安定性の問題も抱えている。
【0021】その他、電子写真感光体においては、以下のような問題もある。電子写真感光体は、帯電器等から発生する酸化性ガスから感光体を保護するために、感光層に酸化防止剤を添加する場合がある。また、感光層の機械的強度を向上させるため、感光層形成用塗布液に架橋剤を添加する場合がある。しかし、これら酸化防止剤および架橋剤は、電荷輸送性に悪影響を与える場合があり、悪影響なく、十分な効果を与え得る量のこれら材料を添加することは困難であった。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明は、従来の技術における上記のような実情に鑑みてなされたものであって、上記のような問題点を克服し得る電子写真感光体を提供することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、感光層の一層として、ホールおよびエレクトロン輸送性、機械的強度、放電生成物耐性、塗布分散液安定性、等に優れた両極性電荷輸送層を形成することで、感光体に要求される種々の性能を必要に応じて解決し得る、高性能且つ高寿命な電子写真感光体を提供することにある。
【0023】さらに、本発明の他の目的は、上記優れた特性を有する電子写真感光体を利用した、高画質かつ高耐久なプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、両極性電荷輸送材料、顔料分散技術等に関し鋭意検討を重ねた結果、ブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いることによって、上記の課題が解決できることを見出した。さらにこの検討過程において、ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、一般にミクロ相分離構造を取るため、各構成ブロックに異なる機能を付与した場合、互いに異なる相に独立に存在させ得るため互いの機能に悪影響を及ぼすことなく個々の機能を最大限に引き出せることから、本発明が複数機能を要求される材料の設計に当たって広く展開できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】すなわち本発明の電子写真感光体は、少なくとも、感光層の一層として、ホール輸送性とエレクトロン輸送性とを有する両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体において、前記両極性電荷輸送層がブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有することを特徴とする。
【0026】前記両極性電荷輸送層に含有されるブロック共重合体またはグラフト共重合体(以下、単に「ブロック共重合体等」と略す場合がある。)の各構成ブロックに目的に応じた異なる機能を付与することで、感光体に要求される各種性能を高い次元で並立させることができる。すなわち、各構成ブロックに異なる機能を付与させ、当該構成ブロック同士をミクロ相分離させることで、各機能を有する材料・基が相内に集中し、混合による希釈化が避けられ、また、異なる機能を有する材料・基同士の効果の干渉は、各相がミクロ分離していることで抑制することができる。
【0027】例えば、ブロック共重合体等が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、またはアルコキシシリル基等の高極性基を有し顔料分散安定性を有するブロックと、それら高極性基を有さないブロックと、からなるものとすれば、電荷輸送性、吸湿性、帯電性への悪影響を最小限に抑え、高い顔料分散性を確保することができる。したがって、これを単層型に応用した場合、優れた諸特性を有する機能分離単層型感光体が具現される。
【0028】本発明においては、ブロック共重合体等が、電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとを有することが望ましく、前記電荷輸送活性ブロックが、少なくとも下記一般式(1)で表される構造の一つを繰返し単位として含有するホール輸送性ブロックであることがより望ましい。
【0029】
【化1】

【0030】一般式(1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示し、Lは2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、mは0または1から選ばれる整数を意味する。
【0031】本発明においては、前記両極性電荷輸送層が電荷発生材料を含有することが望ましく、該電荷発生材料としては、有機顔料であることが望ましく、その含有量としては、0.1〜10重量%の範囲内にあることが望ましい。
【0032】上記両極性電荷輸送層は、本発明で提供する電子写真感光体の他、有機電界発光素子、有機フォトリフラクティブ素子、有機光センサー、有機太陽電池等の各種有機電子デバイスにも活用できる。
【0033】本発明の電子写真感光体は、少なくとも電子写真感光体を含む電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、前記電子写真感光体として、好ましく用いられる。また、本発明の電子写真感光体、あるいは、上記プロセスカートリッジは、一般の電子写真装置に好ましく用いられる。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施の形態によって、さらに詳しく説明する。
A:本発明の電子写真感光体の全体構成本発明の電子写真感光体における感光層としては、図1〜図3に示す構成のものが挙げられる。ここで図1〜図3は、本発明の電子写真感光体の模式断面図である。
【0035】図1においては、導電性支持体1表面に、電荷発生層2が設けられ、その上に両極性電荷輸送層3が設けられている。図2においては、導電性支持体1表面に、両極性電荷輸送層3が設けられ、その上に電荷発生層2が設けられている。図3においては、導電性支持体1表面に、両極性電荷輸送層3が設けられ、その中に電荷発生材料からなる微粒子4が分散されている。これらの電子写真感光体には、さらに所望により下引き層、中間層、ブロッキング層、保護層、単極性電荷輸送層等を設けることができる。
【0036】本発明の電子写真感光体における感光層構成の中でも、特に両極性電荷輸送層中に電荷発生材料を含有させてなる図3に示す単層構成は、本発明の好ましい効果を顕著に発揮する。即ち、単層故の製造コストの低さ、生産性の高さと云う製造上の利点を有し、上述した積層型感光体における干渉縞の問題の回避に不可欠な導電性支持体表面の特殊な加工や、薄膜の電荷発生層に起因する問題の回避に必要な下引き層を設ける必要もなく、この点でも製造コストの低減が実現できる。
【0037】また、電荷発生材料にて発生したホールとエレクトロンの両者がそれぞれホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料によって分離輸送されるため、高い電荷分離効率(すなわち電荷発生効率)が達成され、優れた繰り返し安定性が実現される。
【0038】さらに、優れた両極性電荷輸送能を有するため電荷発生材料の添加量も必要最少量で済み、電荷発生材料による輸送特性の劣化も抑えられ、併せて、機械的強度の低下も抑えられると云う卓越した効果を奏する。加えて、電荷発生材料と両電荷輸送材料が共存しており、光励起状態が速やかに電荷移動失活されるため、通常の積層型感光体で見られるような光暴露による電子写真感光体の光化学的な劣化が抑制されると云う利点をも有する。そして、単層構成の電子写真感光体であるため、廃棄された電子写真感光体から電子写真感光体材料を回収、再生することも容易であり、リサイクルによる資源の有効利用、廃棄物の低減、コスト削減を可能とする。
【0039】B:本発明における感光層以下、本発明における感光層について、詳細に説明する。
(1)電荷発生層本発明の電子写真感光体において、図1あるいは図2に示すような、電荷発生材料を含有する電荷発生層を設ける場合、該電荷発生材料としては、電荷発生能を有するものなら如何なるものでも利用可能であり、例えば、非晶質セレン、六方晶セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物およびセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−シリコン、a−シリコンカーバイド等の無機系光導電性材料;フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、多環キノン系、ピレン系、ピロロピロール系、ピリリウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔料および染料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独あるいは2種以上混合して用いることもできる。
【0040】これらの中でも有機顔料は安全性、堅牢性等の点で好ましく、特に、フタロシアニン系顔料は、デジタル式の電子写真装置に光源として現在広く使用されているLEDおよびレーザーダイオードの発信波長である600〜850nmに優れた光感度を有するため、本発明における電荷発生材料として特に好ましい。
【0041】フタロシアニン系顔料としては、無金属フタロシアニン類、金属フタロシアニン類、及びそれらの誘導体が利用できる。金属フタロシアニン類の中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li等が挙げられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物誘導体も有効である。具体的には、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、ジメトキシ珪素フタロシアニン等を挙げることができる。また、フタロシアニン環に任意の置換基が導入された置換フタロシアニンも使用することができる。さらにまた、フタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換されたアザフタロシアニン類も有効である。
【0042】これらフタロシアニン系顔料の形態としては、アルモルファスまたは全ての結晶形のものが使用可能である。これ等フタロシアニン系顔料の中でも、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた光感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料として特に好ましい。
【0043】また、アゾ系顔料、多環キノン系顔料およびペリレン系顔料も電荷発生効率に優れるため、電荷発生材料として好ましく使用できる。レーザー光のビーム径は発信波長が短くなるほど小径化できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レーザーの短波長化の検討がなされているが、これらの顔料は、紫外域から可視域に高い光感度を有するため、短波長レーザー用の電荷発生材料として特に好ましく用いることができる。
【0044】電荷発生層の形成方法としては、前記電荷発生材料を真空蒸着法等により直接成膜する乾式法、前記電荷発生材料と結着樹脂とを適当な溶剤に分散・溶解させた塗布液を用い、これを塗布しさらに乾燥させる湿式塗布法等が利用できる。湿式塗布法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等の通常の方法を用いることができる。
【0045】電荷発生層の形成に結着樹脂を用いる場合、その結着樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ビニルブチラール樹脂、ビニルホルマール樹脂、部分変性ビニルアセタール樹脂、カーボネート樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルアセテート樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ビニルカルバゾール樹脂等が用いられる。これらの結着樹脂は、ブロック、ランダムまたは交互共重合体であってもよく、また、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0046】電荷発生材料と結着樹脂との配合比(重量比)は、10/1〜1/10の範囲が好ましい。より好ましくは、5/1〜1/1の範囲に設定される。電荷発生材料の結着樹脂に対する配合比が前記範囲より多いと、暗減衰が増大し、また湿式塗布法では均質な膜を得ることが困難になる。また、前記範囲より少ないと光感度の低下、残留電位の増大等の障害が顕著となる。
【0047】塗布液調製時に用いる溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム等の通常の有機溶剤を、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。上記塗布液における溶剤の量としては、一概には言えないが、塗布適性より、塗布液中の全固形分が0.1〜20重量%の範囲になる量とすることが望ましい。また、本発明で用いる電荷発生層の膜厚は一般的には、0.05〜5μmが適当であり、より好ましくは0.1〜2.0μmの範囲に設定される。
【0048】(2)両極性電荷輸送層本発明に特有の構成である両極性電荷輸送層は、ホール輸送性とエレクトロン輸送性とを有し、ブロック共重合体またはグラフト共重合体を含有することを特徴としている。また、かかる両極性電荷輸送層中にさらに電荷発生材料を含有することで、単層型の電子写真感光体を構成することも可能である。両極性電荷輸送層のホール輸送性およびエレクトロン輸送性は、両極性電荷輸送層中に、ホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料とを含有させることで得られるが、ブロック共重合体等が、ホール輸送性材料および/またはエレクトロン輸送性材料となりうるブロック単位を有していてもよい。ブロック共重合体またはグラフト共重合体の構成ブロックの構造は特に限定されず、目的に応じた異なる機能を付与することができる。
【0049】前記構成ブロックの構造としては、例えば、以下a)〜d)に示すものが挙げられる。さらに、e)に示す態様を後述する。
a)ヒドロキシル基、カルボキシル基、またはアルコキシシリル基等の高極性基を有するブロックと、それら高極性基を有さないブロックとからなるブロック共重合体等かかるブロック共重合体等を含有させると、顔料分散性の点で特に好ましく、且つそれを用いた機能分離単層型感光体は優れた光電特性を示す。これは、感光層の結着樹脂を、高極性基を有するブロックと、高極性基を有さないブロックとからなるブロック共重合体等にすることで、高極性基による顔料分散性を確保したまま、上述の高極性基がもたらす問題が解消されたことを意味する。高極性基がもたらす問題が解消された理由は必ずしも明らかではないが、ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、一般に各ブロックが分離したミクロ相分離構造を取るため、一般的に低極性である電荷輸送材料が親和性の高い非高極性ブロックからなる相に優先的に相溶し、高極性基による悪影響を受け難いためと推定される。
【0050】前記ブロック共重合体等の非高極性ブロックとしては、ポリオレフィンブロック、ポリアルキルアクリレートブロック、ポリカーボネートブロック、ポリエステルブロック、ポリエーテルブロック、ポリイミドブロック等が挙げられる。また、非高極性ブロックとしては、電荷輸送性のブロックを用いることもできる。電荷輸送性のブロックを有する電荷輸送性ブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いた場合、それ自身で成膜性を有するため絶縁性樹脂を併用する必要が無く、相対的に電荷輸送材料の添加量を多く設定することができるため、電荷輸送性の点で、特に有利である。
【0051】電荷輸送活性ブロックとしては、電荷輸送能、化学的安定性、機械的強度、エレクトロン輸送材料との相溶性等の点で、上記一般式(1)で示される構造の少なくとも1種を繰り返し単位として有する重合体が好ましい。
【0052】
【化2】

【0053】一般式(1)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリール基を示し、X1は芳香族環構造を有する2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、X2及びX3はそれぞれ独立に置換もしくは未置換のアリーレン基を示し、Lは2価の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を示し、mは0または1から選ばれる整数を意味する。
【0054】Ar1及びAr2の具体例としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0055】X1の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、ピレニレン基、オキシビスフェニル基、メチレンビスフェニル基、シクロヘキシリデンビスフェニル基等、フルオレニリデンビスフェニル基等、およびこれらのメチル基置換誘導体あるいはハロゲン原子置換誘導体等が挙げられるが、ホール輸送能、放電生成物耐性等の点で、特に、ターフェニレン基、3,3’−ジメチルビフェニレン基が好ましい。
【0056】X2及びX3の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基等、およびこれらのメチル基置換誘導体あるいはハロゲン原子置換誘導体等が挙げられる。Lとしては、炭素数1〜20の炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基が好ましく、さらに機械的強度、可とう性等の点で、主鎖にエステル基、エーテル基、カーボネート基、イミド基を有するヘテロ原子含有炭化水素基が特に好ましい。
【0057】前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体の高極性ブロックとしては、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、メタクリルアミド、無水マレイン酸、ビニルアルコール、ヒドロキシメチルメタクリレート、γ−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート等の内の少なくとも1種を含むポリビニルブロック等、ポリアルキレングリコールブロック、ポリアミドブロック等が挙げられる。
【0058】ブロック共重合体またはグラフト共重合体の具体例としては、ポリスチレン−block−ポリメタクリル酸、ポリカーボネート−block−ポリ(スチレン−co−メタクリル酸)、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)−graft−ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、ホール輸送性のブロック共重合体またはグラフト共重合体の具体例としては、特開平10−182760号公報に記載されているもの等が挙げられる。
【0059】前記両極性電荷輸送層には、ブロック共重合体またはグラフト共重合体以外に、その構成ブロックの少なくとも1つと相溶する重合物を添加することが可能である。例えば、ポリカーボネートブロックを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体と該ポリカーボネートと同一構造のポリカーボネートを共含することができる。また、特定の電荷輸送活性ブロックを有するブロック共重合体またはグラフト共重合体と該電荷輸送活性ブロックと同一構造の電荷輸送性高分子を共含することができる。これによって、顔料分散性を確保したまま、高極性基の濃度を低減させることができ、感光体特性をさらに向上させることが可能となる。尚、単純に高極性高分子と非高極性高分子を混合させると、マクロ相分離を起こしてしまい、均一な膜を得ることはできない。
【0060】b)電荷輸送活性ブロックと、電荷輸送不活性ブロックと、からなるブロック共重合体等この場合、電荷輸送活性ブロックが非高極性であり、電荷輸送不活性ブロックが高極性である構成については、前記a)の項で述べた通りである(すなわち、前記a)の構成と、当該b)の構成とは両立し得るものであり、その効果も前記a)の項で述べた通りである)。
【0061】その他、例えば、電荷輸送不活性ブロックとして、非極性の構成を採用し、それよりは多少極性を有する(以降、中極性と称する)ホール輸送性のブロックを電荷輸送活性ブロックとして採用すると、非極性の電荷輸送不活性ブロックからなる相と、中極性の電荷輸送活性ブロックからなる相と、にミクロ相分離する。そして、別途感光層形成用の塗布液に添加するエレクトロン輸送材料としては、前記非極性の電荷輸送不活性ブロックからなる相に優先的に分散し得るものを用いれば、エレクトロン輸送性とホール輸送性とがそれぞれ別々に、局所的に、かつ有効的に作用し、全体として両極性電荷輸送性の向上が図れる。
【0062】c)電荷輸送活性ブロックと、水素結合が可能な基を含むブロックと、からなるブロック共重合体等であって、さらに当該両極性電荷輸送層に酸化防止剤が含まれるかかる構成において、水素結合が可能な基を含むブロックからなる相と、電荷輸送活性ブロックからなる相と、にミクロ相分離する。そして、別途感光層形成用の塗布液に添加する酸化防止剤として水素結合性を有するものを用いれば、水素結合が可能な基を含むブロックからなる相に優先的に分散し、電荷輸送活性ブロックとミクロ的に隔絶される。酸化防止剤は、電荷輸送性に悪影響を及ぼすが、上記構成とすれば、酸化防止剤と電荷輸送活性ブロックとがミクロ的に隔絶され、電荷輸送性に影響を及ぼすことなく、十分な酸化防止効果をも確保することができる。
【0063】前記水素結合が可能な基としては、ヒドロキシル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基、カルボキシル基、ピリジル基等が挙げられる。使用することが可能な酸化防止剤としては、公知のものを挙げることができ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。
【0064】d)電荷輸送活性ブロックと、架橋性を有する基を含むブロックと、からなるブロック共重合体等かかる構成において、架橋性を有する基を含むブロックからなる相と、電荷輸送活性ブロックからなる相と、にミクロ相分離し、両極性電荷輸送層形成時に架橋性を有する基を含むブロックからなる相の架橋部位で架橋硬化する。架橋性を有する基には通常極性があるため、電荷輸送性に悪影響を及ぼすが、上記構成とすれば、架橋性を有する基を含むブロックからなる相と、電荷輸送活性ブロックからなる相と、がミクロ相分離しているため、電荷輸送性に影響を及ぼすことなく、機械的強度の高い架橋硬化膜からなる両極性電荷輸送層が形成される。
【0065】架橋性を有する基としては、自己架橋性のものとして、アルコキシシリル基、ヒドロキシシリル基等が挙げられ、架橋助剤を併用することで架橋性を発揮するものとして、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基、イソシアネート基等が挙げられる。また、架橋助剤としては、多イソシアネート化合物、多アミノ化合物、チタンアルコキシド化合物、酢酸亜鉛、多アルコキシシリル化合物等が挙げられる。
【0066】前記ブロック共重合体またはグラフト共重合体の分子量は、目的に応じて適宜設定すればよい。他に成膜性を担う樹脂を併用しない場合には、10000以上であることが好ましく、さらに30000以上であることがより好ましい。このとき分子量の上限に関しては、原理的な制約はないが、湿式塗布法にて成膜を行う場合、適当な溶液粘度を与える必要があり、一般に5000000以下であることが要求される。前記のように他の重合物を併用し、それに成膜性を担わせる場合には、ブロック共重合体またはグラフト共重合体の分子量は、より低く設定することが可能であるが、少なくとも2000以上であることが好ましい。
【0067】本発明に用いられるエレクトロン輸送性材料としては、エレクトロン輸送能を有するものであれば如何なるものでも構わないが、電子吸引性骨格に枝分かれもしくは環構造を含む嵩高い炭化水素基を備えたエレクトロン輸送性低分子化合物であることが好ましい。枝分かれもしくは環構造を含む嵩高い炭化水素基により高分子成分との高い相溶性と固溶状態の高い安定性が発揮され、また枝分かれもしくは環構造を含む嵩高い炭化水素基による立体障害により、一般的にホール輸送性材料とエレクトロン輸送性材料を混合したときに生起する電荷移動錯体の形成が抑制され、望ましくない着色が抑えられると共に高い両極性電荷輸送能が発揮される。
【0068】前記エレクトロン輸送性低分子化合物における電子吸引性骨格としては、具体的には、キノン骨格、ジフェノキノン骨格、フルオレノン骨格、フルオレニリデン骨格、マロノニトリル骨格、フルオレノイミン骨格、アントラキノン骨格、芳香族ジイミド骨格等が挙げられる。
【0069】前記エレクトロン輸送性低分子化合物における炭化水素基に含まれる枝分かれ構造としては、具体的には、イソプロピル構造、tert−ブチル構造、ネオペンチル構造等が挙げられる。
【0070】前記エレクトロン輸送性低分子化合物における炭化水素基に含まれる環構造としては、具体的には、シクロヘキシル構造、ノルボルニル構造、アダマンチル構造等が挙げられる。
【0071】前記エレクトロン輸送性低分子化合物の中でも、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、およびイミド誘導体は、高いエレクトロン輸送能を有し、特に好ましい。本発明に用いる好ましいエレクトロン輸送性低分子化合物の具体例としては、3,5−ジメチル−3’,5’−ジイソプロピルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジtert−ブチルジフェノキノン、3,5−ジメチル−3’,5’−ジシクロヘキシルジフェノキノン、(4−tert−ブトキシカルボニル−9−フロオレニリデン)マロノニトリル、(4−ノルボルノキシカルボニル−9−フロオレニリデン)マロノニトリル、N−(m−メチルフェニル)トリニトロフルオレノイミン、N,N’−ジ−tert−ブチルベンゼンテトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ジノルボルニルベンゼンテトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ジ−tert−ブチルナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ジノルボルニルナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
【0072】本発明に用いるホール輸送性材料としては、ホール輸送性を有するものであれば如何なるものでも構わないが、ホール輸送性、化学的安定性等の点で、トリアリールアミン構造を有する低分子化合物または高分子化合物が好ましい。上述の様に、ホール輸送材料としては特にホール輸送性のブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いることが望ましい。
【0073】ホール輸送材料とエレクトロン輸送材料の両方が高分子化合物の場合、一般的にはマクロ相分離を起こし均質な膜が得られないため、どちらか一方は低分子化合物であることが望ましい。但し、両者共、ブロック共重合体またはグラフト共重合体にし、且つ両者に同一構造のブロックを含ませることによって、該ブロック同士が相溶することで、前記マクロ相分離を抑えることが可能である。さらに、ブロック共重合体またはグラフト共重合体として、混合するホール輸送性高分子とエレクトロン輸送性高分子とそれぞれ同じ構造を有するブロックから成るブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いることで、該共重合体が相溶化剤として機能することによって、前記のマクロ相分離を抑えることも可能である(当該態様を、前記a)〜d)に引き続き、e)と称する。)。
【0074】なお、トリアリールアミン構造を有する低分子化合物としては、置換あるいは未置換のトリフェニルアミン、置換あるいは未置換のテトラフェニルフェニレンジアミン、置換あるいは未置換のテトラフェニルベンジジン、置換あるいは未置換のビス(ジフェニルアミノ)ターフェニル等が挙げられる。置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
【0075】本発明における両極性電荷輸送層中の前記ホール輸送材料と前記エレクトロン輸送材料の配合比(重量比)は1:9〜9:1の範囲内にあることが好ましく、3:7〜7:3の範囲内がより好ましい。なお、ブロック共重合体等の構成ブロックとして、前記ホール輸送性および/または前記エレクトロン輸送性のブロックが用いられる場合には、上記配合比(重量比)は、構成ブロックの重量にて判断される。本発明における両極性電荷輸送層中のブロック共重合体またはグラフト共重合体の添加量は、目的とする効果によって異なるが、一般的には0.05〜90重量%に設定される。
【0076】本発明における両極性電荷輸送層の形成方法としては、如何なる方法でも構わないが、製造コスト、設備の簡便性、量産性等の点で、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これ乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が好ましい。
【0077】上記塗布液は、構成材料を適当な溶剤中に溶解、分散させることによって調製される。かかる溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クレゾール等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、シクロヘキサノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等を、単独または複数混合して用いることができる。上記塗布液における溶剤の量としては、一概には言えないが、塗布適性より、塗布液中の全固形分が0.1〜50重量%の範囲になる量とすることが望ましく、1〜30重量%の範囲になる量とすることがより望ましい。
【0078】本発明において、両極性電荷輸送層中に電荷発生材料を含有させる場合には、前記塗布液中に適量の電荷発生材料を含有させ、該塗布液を塗布することによって、電荷発生材料含有の両極性電荷輸送層を形成することができる。電荷発生材料含有の両極性電荷輸送層を形成し単層型の電子写真感光体を構成することは、単層型の電子写真感光体のメリットを活かせる点で好ましい。
【0079】前記電荷発生材料として顔料等の不溶物を用いる場合、均一且つ安定な塗布液を得るには、ボールミル法、ペイントシェーク法、アトライター法、サンドミル法、超音波法等の粉砕・分散法にて処理することによって塗布液を調製することが好ましい。使用し得る電荷発生材料としては、電荷発生層の項で説明したものと同一のものが挙げられ、その好ましいものも同様である。
【0080】本発明において、両極性電荷輸送層に電荷発生材料を含有させる場合、該電荷発生材料の含有量としては、0.05〜30重量%の範囲内にあることが好ましく、0.1〜10重量%の範囲内にあることがより好ましく、0.3〜5重量%の範囲内にあることがさらに好ましい。電荷発生材料の含有量が0.05重量%未満であると、感光層による吸光度が不足し、光感度が不足したり、露光光源としてレーザー等の可干渉光を用い、且つ鏡面の導電性支持体を使用した場合には干渉縞の問題が発生する場合がある。他方、電荷発生材料の含有量が30重量%を超えると、暗電荷の増加、繰り返し安定性の低下、機械的強度の低下等の弊害が顕著となる。
【0081】本発明において、両極性電荷輸送層の膜厚としては、5〜100μmの範囲とすることが一般的であり、10〜40μmの範囲とすることが好ましく、15〜35μmの範囲とすることがより好ましい。
【0082】C:本発明の電子写真感光体におけるその他の構成a)導電性支持体本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の材料としては、当業界で電子写真感光体に用いる導電性支持体として利用され得る任意の種類から選択でき、不透明であっても透明であっても構わない。前記導電性支持体の材料の具体例としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、白金、ジルコニウム、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチック、ガラスおよびセラミックス等;導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、プラスチック、ガラスおよびセラミックス等;が挙げられる。
【0083】本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の形状としては、ベルト状、ドラム状、シート状、プレート状等、適宜の形状とすることができる。また、本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の表面には、必要に応じて、各種の処理を施すことができる。例えば、電解酸化処理;薬品処理;砂目立て、荒切削、ホーニング等の機械的粗面化処理;切削、研磨等による機械的鏡面化処理;等を施すことができる。
【0084】b)下引き層また、本発明においては、導電性支持体から感光層への電荷の漏洩を阻止する目的および/または感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめる目的等のために、導電性支持体と感光層との間に、下引き層を設けることもできる。
【0085】下引き層としては、公知のものを用いることができ、例えば、エチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ビニルアセタール樹脂、ビニルアルコール樹脂、水溶性エステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル酸樹脂、アクリルアミド樹脂等の樹脂およびこれらの共重合体、あるいは、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップリング剤等の硬化性金属有機化合物を、単独または2種以上混合して用い、形成することができる。また、帯電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も下引き層として有効である。
【0086】下引き層の形成方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これ乾燥して塗膜を形成する通常の湿式塗布法を用いることができる。かかる塗布液は、下引き層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。下引き層の膜厚は、0.005〜10μmが適当であり、より好ましくは0.01〜5μmの範囲である。
【0087】c)単極性電荷輸送層本発明の電子写真感光体においては、単極性電荷輸送層を併設しても構わない。特に、図3の構成において、導電性支持体1と両極性電荷輸送層3との間に帯電極性と同極性の電荷を輸送する適当な単極性電荷輸送層を設けると、帯電性や、導電性支持体1と両極性電荷輸送層3との間の接着性等において、改善効果がもたらされる場合がある。また、図3の構成において、その表面に帯電極性と逆極性の電荷を輸送する適当な単極性電荷輸送層を設けると、耐磨耗性、転写性、クリーニング性等において、改善効果がもたらされる場合がある。
【0088】単極性電荷輸送層としては、特に限定されず、公知の電荷輸送層の構成をそのまま適用することができる。単極性電荷輸送層の形成方法としては、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これ乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗布液は、単極性電荷輸送層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。単極性電荷輸送層の膜厚は、1〜40μmの範囲、好ましくは2〜10μmの範囲に設定される。
【0089】d)保護層本発明において、感光層の上に必要に応じて設けてもよい保護層としては、帯電部材から発生するオゾンや酸化性ガス等、および紫外光等の化学的・光学的ストレス、あるいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に起因する機械的ストレスから感光層を保護し、電子写真感光体の実質的な寿命を改善するために有効である。また、電荷注入型の帯電器と併用することで、電荷注入層として働き、電荷注入型帯電器による安定な帯電を可能とする。
【0090】前記保護層は、一般に導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成される。該導電性材料としては、ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金属酸化物等の材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0091】前記保護層形成に用いることができる結着樹脂としては、アミド樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、カーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂を用いることができる。また、アモルファスカーボン等の半導電性無機膜も保護層として用いることができる。
【0092】前記保護層の形成方法としては、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これ乾燥して塗膜を形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗布液は、保護層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。保護層の膜厚は0.5〜20μmの範囲が適当であり、より好ましくは1〜10μmの範囲に設定される。
【0093】また、保護層を設けた場合、必要に応じて、感光層と保護層との間に、保護層から感光層への電荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることができる。このブロッキング層としては、保護層の場合と同様に公知のものを用いることができる。
【0094】e)その他の添加剤本発明の電子写真感光体においては、オゾンや酸化性ガス、あるいは、光、熱による電子写真感光体の劣化を防止する目的で、任意の層中に酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の添加剤を添加することができる。
【0095】酸化防止剤としては、公知のものを用いることができ、その具体例は、両極性電荷輸送層の項で述べたものと同様である。光安定剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等、およびそれらの誘導体、並びに、光励起状態をエネルギー移動あるいは電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子供与性化合物等が挙げられる。
【0096】熱安定剤としては、公知のものを用いることができる。さらに、表面磨耗の低減、転写性の向上、クリーニング性の向上等を目的として、表面層(保護層、感光層のいずれの場合であっても構わない)にフッ素樹脂等の微粒子を分散させてもよい。
【0097】D:本発明のプロセスカートリッジプロセスカートリッジとは、電子写真装置の消耗部品を適時交換する目的で、電子写真装置の構成部品のいくつかをカートリッジに組み込み、容易に交換作業を行えるようにしたものである。プロセスカートリッジは、電子写真装置の中に装着された状態で取引される他、交換部品あるいは補修部品として、単体でも取引されている。
【0098】プロセスカートリッジに組み込まれ得る構成部品としては、一般に、現像手段、帯電手段、露光手段、およびクリーニング手段が挙げられ、これらをその目的に応じて任意に組み合わせることができる。
【0099】本発明のプロセスカートリッジは、少なくとも電子写真感光体と、必要に応じて上記構成部品の任意の組み合わせと、を含み、かつ、該電子写真感光体が前記本発明の電子写真感光体であることが特徴となる。プロセスカートリッジに組み込まれ得る電子写真感光体以外の構成部品については、特に制限は無く、従来公知の物が問題無く採用され得る。
【0100】E:本発明の電子写真装置本発明の電子写真感光体を搭載する電子写真装置としては、電子写真法によるものであれば如何なるものでも構わないが、特にデジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装置が好ましい。デジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装置とは、レーザーまたはLED等の光源を用い、2値化またはパルス幅変調や強度変調を行い多値化された信号に従い露光を行う電子写真装置であり、例としてLEDプリンター、レーザープリンター、レーザー露光式デジタル複写機などを挙げることができる。本発明の電子写真装置は、低コストおよび/または小型の電子写真装置とする場合に、電子写真感光体の表面を正に帯電させる構成を採ることが可能となる。特に本発明の電子写真感光体のうち、積層型感光体のものを用い、その表面を正帯電させることで、帯電器として安価なスコロトロンのようなワイヤー放電型の帯電器を用いても、有害ガスの発生量が少なく、有毒ガスの除去に特別な構成を設ける必要がなくなるため、電子写真装置の低コスト化および/または小型化を用意に図ることができる。また、本発明の電子写真感光体が両極性帯電型感光体であることから、転写時の逆極帯電の問題についても根本的に解消することができる。
【0101】本発明の電子写真装置としては、単層型の電子写真感光体とした場合、電子写真感光体の表面を負に帯電させる帯電器と反転現像方式の現像器を備えたものが、画質等の点で、特に好ましい。
【0102】本発明の電子写真装置の一例を図4に模式的に示す。図4の電子写真装置はレーザープリンターであり、電子写真感光体である円筒形の感光体ドラム11の周りに、除電用光源である除電用LED12、帯電手段である帯電用スコロトロン13、像露光手段である露光用レーザー光学系14、現像器15、転写用接触帯電ロール16、および、クリーニング手段であるブレード式クリーニング器17が、この順序で配置されている。露光用レーザー光学系14は、例えば発信波長780nmの露光用レーザーダイオードを備えており、デジタル処理された画像信号に基づき発光する。発光したレーザー光14aはポリゴンミラーと複数のレンズ、ミラーにより走査されながら電子写真感光体表面を露光するように構成されている。尚、18は用紙を示す。
【0103】本発明の電子写真装置においては、感光体ドラム11が本発明の電子写真感光体である。勿論、感光体ドラム11と、任意の構成部品と、を含み、かつ、該電子写真感光体が前記本発明の電子写真感光体であるプロセスカートリッジを含む構成であっても構わない。
【0104】本発明の電子写真装置について、図面を以って説明したが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、電子写真感光体以外の構成部品については、特に制限は無く、従来公知の物が問題無く採用され得る。
【0105】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、当業者は電子写真技術の公知の知見から、以下の実施例に変更を加えることが可能である。
【0106】[合成例1(ホール輸送性高分子化合物の合成)]N,N’−ビス(p,m−ジメチルフェニル)−N,N’−ビス[p−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル]−[3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン3kg、エチレングリコール9kg、および、テトラブトキシチタン25gを混合し、窒素気流下で6時間加熱還流した。次に0.5mmHgに減圧しエチレングリコールを留去しながら215℃に加熱し、5時間該温度に保持した。その後、室温まで冷却し、トルエン30kgを加え生成した樹脂を溶解させ、0.5μm孔径のPTFE製フィルターにて不溶分を除去した後、メチルエチルケトン150kgを加え、沈降した高分子成分を分別した。これをテトラヒドロフラン/イソプロパノールから再沈殿化処理し末端にヒドロキシル基を有する下記構造式(1)で示されるホール輸送性高分子化合物2.0kgを得た。得られたホール輸送性高分子化合物の重量平均分子量は、GPC分析にて、62000(ポリスチレン換算)であった。
【0107】
【化3】

【0108】[合成例2・・・一般式(1)の範疇に入るホール輸送性ブロックを有するブロック共重合体の合成]合成例1で得られた上記構造式(1)で示されるホール輸送性高分子化合物500gと、トリエチルアミン5gをトルエン1.7Lに溶解し、0℃に冷却した。ここに、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロリド)100gを加え、35℃に昇温し、6時間反応させた。これをメタノール17Lに滴下し、1時間撹拌した後に濾別した。さらにトルエン/メタノールによる再沈殿処理を2回繰り返し、末端にアゾ型重合開始基を有する電荷輸送性高分子450gを得た。
【0109】得られた末端にアゾ型重合開始基を有する電荷輸送性高分子450gをトルエン4Lに溶解し、スチレン350gとメタクリル酸10gを加え、窒素置換した後に75℃で100時間加熱した。これをメタノール20Lに滴下し、沈降した固体を濾別した。濾液を分析した所、スチレン、メタクリル酸、およびポリ(スチレン−co−メタクリル酸)ランダム共重合体が検出された。
【0110】次に、濾別した固体400gを細かく粉砕し、トルエン/メタノール混合溶剤(混合比1/4)にて洗浄した後、減圧乾燥させた。得られた個体は、1H−NMRスペクトルとGPC分析の結果、ラジカル重合に与らなかった電荷輸送性高分子と、目的とするブロック共重合体と、の混合物(重量組成比はおよそ2:3)であることが判明した。以降、これを混合物Aと称する。
【0111】また、1H−NMRスペクトルの解析から、ブロック共重合体の電荷輸送活性ブロックと電荷輸送不活性ブロックとの重量組成比は、およそ7:3であり、電荷輸送不活性ブロック中のスチレン単位とメタクリル酸単位との重量組成比はおよそ9:1であった。
【0112】[合成例3・・・ポリカーボネート−block−ポリ(スチレン−co−メタクリル酸)の合成]合成例2において、合成例1で得られた上記構造式(1)で示されるホール輸送性高分子化合物の代わりに、ホスゲン法にて合成された、末端がヒドロキシル基であるビスフェノールZタイプポリカーボネートを用いたこと以外は、合成例2と同様にして合成を行い、前記ラジカル重合によらなかったポリカーボネートと、目的とするブロック共重合体と、からなる混合物(重量組成比はおよそ2:3)を得た。以降、これを混合物Bと称する。
【0113】1H−NMRスペクトルの解析から、ブロック共重合体のポリカーボネート由来のブロックと、スチレンおよびメタクリル酸由来のブロックと、の重量組成比は、およそ7:3であり、スチレンおよびメタクリル酸由来のブロック中のスチレン単位とメタクリル酸単位との重量組成比はおよそ9:1であった【0114】(実施例1)CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶2重量部、シクロヘキサノン100重量部、トルエン300重量部、およびイソプロパノール30重量部を混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理した後、合成例2で得られた混合物A60重量部と、エレクトロン輸送性材料である3,5−ジメチル−3’,5’−ジ−tert−ブチルジフェノキノン38重量部と、を添加し、さらにボールミル法で2時間溶解分散処理し、単層型感光体用の感光層形成塗布液を調製した。
【0115】得られた感光層形成塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)上に浸漬塗布法にて塗布し、115℃において30分間加熱乾燥し、図3に示す構成の単層型の電子写真感光体を作製した。尚、感光層の膜厚は17μmであった。
【0116】このようにして得られた電子写真感光体を市販のレーザープリンター(Laser Press4150、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温高湿環境(22℃、70%RH)下にて、A4横方向に1000枚連続で画出しし、プリント試験を行った。1枚目と1000枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った評価結果を下記表1にまとめて示す。尚、評価に供した上記レーザープリンターは、図4に示される構成であり、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器とを備えている。
【0117】(実施例2)アルミニウム製ドラムとして、アルミナ粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.20μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0118】(実施例3)導電性支持体として、表面を鏡面処理した84mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を市販のフルカラーレーザー複写機(A−Color935、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温高湿環境(22℃、70%RH)下にて、A4横方向に1000枚連続で画出しし、複写試験を行った。1枚目と1000枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視にて行った評価結果を下記表1にまとめて示す。尚、評価に供したフルカラーレーザー複写機は、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器を備えている。
【0119】(実施例4)エレクトロン輸送性材料を、4−(1,2−ジメチルプロポキシ)カルボニル−9−フルオレニリデンマロノニトリルに変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0120】(実施例5)エレクトロン輸送性化合物を、N−シクロヘキシル−N’−(1,2−ジメチルプロピル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドに変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0121】(実施例6)実施例3において、合成例2で得られた混合物A60重量部の代わりに、合成例3で得られた混合物B48重量部を用い、エレクトロン輸送性材料の添加量を30重量部とし、さらにトリアリールアミン構造を有するホール輸送性材料の1種であるビス(p,m−ジメチルフェニル)ビフェニルアミン20重量部を添加した以外は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例3と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0122】(実施例7)実施例1において、調製した単層型感光体用の感光層形成塗布液を、密閉室温下、1ヶ月静置させた後に塗布に供したこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0123】(比較例1)実施例3において、エレクトロン輸送性材料を添加せず、且つ、合成例2で得られた混合物Aの添加量を98重量部に変更した以外は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例3と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0124】(比較例2)実施例3において、合成例2で得られた混合物Aの代わりに、ビスフェノールZタイプポリカーボネートを用いたこと以外は、実施例3と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例3と同様にして評価した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0125】(比較例3)CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶3重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体(VMCH、ユニオンカーバイド社製)3重量部、キシレン60重量部、および、酢酸ブチル40重量部と混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理して、電荷発生層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)表面に浸漬塗布法にて塗布し、135℃において5分間加熱乾燥し、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0126】次に、合成例1で得られたホール輸送性高分子化合物10重量部およびトルエン40重量部を混合して電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、浸漬塗布法で上記電荷発生層上に塗布し、115℃において30分間加熱乾燥し、膜厚17μmの単極性電荷輸送層を形成し、積層型の電子写真感光体を作製した。得られた電子写真感光体を実施例1と同様にして評価した。ただし、当初から画質が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0127】(比較例4)アルミニウム製ドラムとして、アルミナ粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さRa=0.20μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いた以外は、比較例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価した。ただし、当初から画質が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0128】(比較例5)実施例6において、合成例3で得られた混合物Bの代わりに、ポリ(スチレン−co−メタクリル酸)を用いた以外は、実施例6と同様にして電子写真感光体を作製した。なお、感光層形成塗布液の塗布後、加熱乾燥時にエレクトロン輸送材料と思われる結晶の析出が認められた。得られた比較例5の電子写真感光体を用い、実施例1と同様にして評価した。ただし、当初から画質が著しく悪かったため、途中でプリント試験を中断した。評価結果を下記表1にまとめて示す。
【0129】(比較例6)合成例2で得られた混合物Aの代わりに、合成例1で得られた前記構造式(1)で示されるホール輸送性高分子化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして単層型感光体用の感光層形成塗布液を調製した。得られた感光層形成塗布液を、実施例7と同様に密閉室温下、1ヶ月間静置させた所、顔料粒子の凝集が進行し、塗布液が不均一になってしまい、浸漬塗布を行うことができなかった。
【0130】
【表1】

【0131】表1に示すように、本発明の電子写真感光体は、優れた繰り返し安定性を有し、長期に亘って安定な高画質を提供するものであることがわかる。さらに、導電性基体の表面性状にかかわらず干渉縞の発生が無く、また荒れた導電性基体を用い、且つ下引き層を形成しなくとも濃度ムラが生じないと云う優れた特質を有し、既述の如き積層型の電子写真感光体における問題点が払拭されていることがわかる。さらにまた、特定のブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いることで、高い顔料分散性が得られ、機能分離単層型感光体の製造に当って、その感光層形成用塗布液のポットライフが非常に長いと云う卓越した効果が発揮されることがわかる。
【0132】
【発明の効果】以上のように、本発明特有の両極性電荷輸送層を備えた電子写真感光体は、高性能で且つ耐久性に優れたものとなるという卓越した効果を奏する。その結果、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置は、優れた画質を長期に亘り実現することができる。また、従来の積層型の電子写真感光体における問題を払拭し得る単層型の電子写真感光体を提供することができ、低コストでの電子写真感光体の提供を可能とする。
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【出願日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2001−265033(P2001−265033A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−78278(P2000−78278)