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【発明の名称】 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び、電子写真装置
【発明者】 【氏名】山口 康浩

【要約】 【課題】エレクトロン輸送性、樹脂との相溶性、化学的安定性等に優れた新規なエレクトロン輸送材料を活用することにより、高性能かつ高寿命な電子写真感光体を低コストで提供すること。

【解決手段】下記一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を含有する層を有することを特徴とする電子写真感光体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を含有する層を有することを特徴とする電子写真感光体。
RN(CO)2X(CO)2NR’・・・一般式(1)
一般式(1)中、Xは、置換又は未置換の芳香族環構造を有する4価基を表す。又、RとR’とは、互いに異なる炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表し、これらは、イミド基とπ電子共役によらない基である。
【請求項2】 請求項1に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジ。
【請求項3】 請求項1に記載の電子写真感光体、あるいは、請求項2に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする電子写真装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なエレクトロン輸送材料を活用した電子写真感光体、それを用いたプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真技術は、高速で、高印字品質が得られる等の利点を有するために、近年、複写機、プリンター、ファクシミリ等の各種の画像出力分野において、中心的役割を果たしている。電子写真技術の心臓部である電子写真感光体の構成材料としては、当初から、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金等の無機光導電性材料が広く用いられてきた。しかし、これらを用いた無機感光体に比べ、コスト、量産性、安全性等の点で、より優れる有機感光体(有機光導電性材料を用いた電子写真感光体)の研究開発が活発に行われ、現在では前記無機感光体を凌駕するに至っている。
【0003】特に、光電導の素過程である光電荷発生と電荷輸送とをそれぞれ別々の材料に担わせる機能分離設計の導入により、材料選択の自由度が増し、有機材料の持つ多様性を背景に著しい性能の向上が達成され、今日では導電性支持体上に電荷発生機能を担う薄膜の電荷発生層と電荷輸送機能、帯電性、機械的強度を担う厚膜の電荷輸送層とを積層した機能分離積層型有機感光体が電子写真感光体の主流となっている。
【0004】ところで、有機電荷輸送性材料としては、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体等のホール輸送性材料がほとんどであり、実用レベルの性能を有するエレクトロン輸送性材料は稀有である。この材料上の制約と、上述の導電性支持体/電荷発生層/電荷輸送層からなる構成とから、有機感光体は、一般に負帯電でしか動作しないという動作極性上の制約を有する。
【0005】動作極性に関しては、利用するサブシステム、トータルシステムに応じ好ましい極性があり、有機感光体をより広くかつより効率的に活用するためには、負帯電型に加え、正帯電型、さらには両極性帯電型の感光体の開発が望まれるところである。
【0006】例えば、帯電サブシステムとして、安価なスコロトロンのようなワイヤー放電型の帯電器を用いると、放電時にオゾン、窒素酸化物等の有害ガスが発生するという問題がある。この有害ガスの発生量は、同じ帯電器でも負帯電時よりも正帯電時のほうが、オーダーが1桁ほど少ないことが知られており、有害ガスを除去するフィルタ等を設置できない、低コストおよび/または小型の電子写真装置においては、正帯電型の感光体が切望される。
【0007】一方、高画質の要求に対しては、現状の現像剤を用いる場合、負帯電型の感光体を用い、反転現像を行うことが望ましい。このとき、有毒ガスの除去に活性炭等のフィルタを用いるか、有害ガスの発生量の少ない接触帯電方式の帯電器を用いる等の対策が必要になる。
【0008】また、反転現像方式を採用し、転写を静電的に行う場合、転写時の帯電極性は、潜像形成時の帯電極性とは逆極性となる。転写時の帯電は、原理的には紙あるいは1次転写用フィルム等の被転写体を介して行うため、直接感光体を帯電するわけではないが、実際には被転写体と、その次の被転写体との間等において、感光体が潜像形成時とは逆極性に帯電されてしまうことになる。この場合、単極性でしか動作しない感光体では、転写時の逆極帯電を光消去することができないため、帯電器の能力によっては、その履歴が次のコピーあるいはプリントに現れてしまうという問題が生ずる場合がある。この問題は、ホール輸送性とエレクトロン輸送性とを有する両極性帯電型感光体を用いることにより、根本的に解消される。
【0009】一方、機能分離積層型有機感光体は、その積層構成に起因し以下に示すような欠点を有しており、それらの欠点を克服し得る感光体の開発が切望されている。積層構成に起因する第1の欠点としては、単層の感光体に比べ2層以上の層を形成しなければならないため、生産性が低下しコストが高くなってしまうという問題が挙げられる。積層構成に起因する第2の欠点としては、量産性が高く一般的に広く採用されている成膜法である浸漬塗布法を用いた場合、上層塗布時に下層が侵されないようにする必要があり、そのため下層材料に上層塗布溶剤に対する耐性が要求されることとなり、それに伴う問題が挙げられる。即ち、一般的に下層となる電荷発生層は電荷発生材料としての顔料と成膜性を担う結着樹脂とからなり、該結着樹脂として上層となる電荷輸送層の塗布溶剤に侵されない材料を選択しなければならない。一般的に電荷輸送材料は比較的極性が低く、トルエン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン等の比較的極性の低い溶剤がその塗布溶剤として用いられるため、電荷発生層の結着樹脂としては、該溶剤に対する溶解性の低いアセタール変性ビニルアルコール樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂等の高極性の熱可塑性樹脂が採用されている。
【0010】しかしながら、高極性樹脂中では電荷輸送性が低下することが知られており、また高極性樹脂は吸湿性が高く環境変化に伴う光電特性の変動を引き起こす場合があるという問題がある。さらに、これら高極性の熱可塑性樹脂は、完全には不溶ではないため、上層塗布時の若干の荒れは避け難く、光電特性、ひいては画像の面内ムラを生起する場合がある。特に、フルカラーの高画質が要求される電子写真装置への利用において改善が望まれている。
【0011】これらの問題を回避する方法として電荷発生層の結着樹脂に熱硬化性樹脂を用いる提案もなされているが、塗布液中で経時により硬化反応が進行し増粘/ゲル化してしまうというポットライフの問題、成膜時に未硬化サイトが残存してしまい光電特性に悪影響を及ぼすという問題等があり、依然、本質的な問題解決には至っていない。また、顔料等の電荷発生材料も電荷輸送層塗布溶剤に対して完全に不溶ということはあり得ないため、塗布本数の増加に連れて電荷発生材料の溶出による電荷輸送層塗布槽の汚染が進み、ポットライフの制約の問題を引き起こす。
【0012】積層構成に起因する第3の欠点としては、露光光源としてレーザー等の可干渉光を用いる場合、電荷発生層と電荷輸送層との界面での正反射により、一般に干渉縞と呼ばれる切り株模様の画像欠陥が発生してしまうという問題が挙げられる。
【0013】この問題を回避する方法としては、界面を凹凸にし光が散乱するようにすべく、支持体表面を荒らしたり、支持体と感光層との間に荒い表面性の膜を設けたりする方策が取られている。しかしながら、これらの方策はそれを施すこと自体、コストアップをもたらすし、また荒れた表面上に薄膜の電荷発生層を均一に成膜しなければならないという製造上の困難さを要求される。
【0014】ところで、上記のような積層構成に起因する問題を払拭するものとしては、単層構成の電子写真感光体(単層型感光体)が古くから知られている。しかしながら、従来の単層型感光体は十分な機能分離設計がなされておらず、実用に耐え得る特性を有するものはなかった。即ち、従来の単層型感光体は絶縁性樹脂中に単純に電荷発生材料と電荷輸送材料とを含有させたものであり、輸送電荷極性の制約から表面近傍のみで光吸収が起こるように電荷発生材料濃度を高くする必要があり、その結果、暗減衰が大きい、繰り返し使用による光電特性の変動が大きい等の問題があった(積層感光体では電荷発生層の膜厚を薄くすることでこの問題を抑えている)。
【0015】この問題に対し、最近、電荷発生材料、ホール輸送材料、エレクトロン輸送材料の3者を絶縁性樹脂中に含有させた単層型感光体が提案され、著しい性能の改善が達成された(電子写真学会誌, Vol.30, pp.274−281,1991)。即ち、電荷輸送材料として、従来のように一方だけではなく、ホール輸送材料とエレクトロン輸送材料の両方を添加することで輸送電荷極性の制約がなくなり、電子写真感光体の感光層内部で電荷発生しても、両電荷がそれぞれの輸送材料によって対極に輸送されるため、電荷発生材料の添加量を著しく減少させることが可能となり、上述の問題が解消された。
【0016】しかしながら、高い樹脂相溶性と高い電荷移動度を兼ね備えたホール輸送材料は多く知られているものの、高い樹脂相溶性と高い電荷移動度を兼ね備えたエレクトロン輸送材料は稀有であり、上述の電荷発生材料、ホール輸送材料、エレクトロン輸送材料からなる機能分離単層型感光体を実用に供するには、高い樹脂相溶性と高い電荷移動度を兼ね備えたエレクトロン輸送材料の開発が不可欠である。
【0017】エレクトロン輸送性を発揮するには、安定なアニオンラジカル状態を取り得ることが必須であり、エレクトロン輸送材料の殆どは電子吸引性基を有するπ共役系化合物である。
【0018】しかしながら電子吸引性基を有するπ共役系化合物とは、即ち高極性の平面構造化合物であり必然的に高い結晶性を示すことになり、樹脂との相溶性は悪いという宿命を持つことになる。この問題を改善する方法としては、電子吸引性基を対称的に導入することで分子全体の極性を低下させる、嵩高い非極性の置換基を導入することで凝集性を低下させる等の方策が有効であることが見出されている。
【0019】更に、嵩高い非極性の置換基を導入する方策に関しては、ジフェノキノン系エレクトロン輸送材料において、嵩高い非極性の置換基を非対称に導入することで特に効果が顕著であることが報告されている。しかしながら、ジフェノキノン系エレクトロン輸送材料は、化学的な安定性が低い、その合成に過マンガン酸カリウム等の有害な酸化剤を用いなければならない、等の問題があった。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、エレクトロン輸送性、樹脂との相溶性、化学的安定性等に優れた新規なエレクトロン輸送材料を活用することにより、高性能かつ高寿命な電子写真感光体を低コストで提供することを目的とする。具体的には、本発明の第1の目的は、正極性あるいは両極性に帯電可能な電子写感光体を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、上記優れた特性を有する電子写真感光体を利用した、高画質かつ、高耐久なプロセスカートリッジ、及び、電子写真装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、<1> 下記一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を含有する層を有することを特徴とする電子写真感光体である。
RN(CO)2X(CO)2NR’・・・一般式(1)
一般式(1)中、Xは、置換又は未置換の芳香族環構造を有する4価基を表す。又、RとR’とは、互いに異なる炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表し、これらは、イミド基とπ電子共役によらない基である。
【0022】一般式(1)において、Xが、ベンゼン構造又はナフタレン構造であるのが好ましく、また、R及びR’の少なくとも一方が、枝分れ構造又は環構造を有するのが好ましい。前記電子写真感光体が、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物(エレクトロン輸送材料)と同時に、ホール輸送材料を含有するのが好ましい。また、前記電子写真感光体が機能分離単層構成であるのが好ましい。
【0023】<2> 前記<1>に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする電子写真装置に着脱自在なプロセスカートリッジである。
<3> 前記<1>に記載の電子写真感光体、あるいは、前記<2>に記載のプロセスカートリッジを有することを特徴とする電子写真装置である。
前記電子写真装置においては、電子写真感光体が、機能分離単層構成の電子写真感光体の場合には、帯電手段が、電子写真感光体を負に帯電する帯電手段であり、現像手段が、反転現像方式の現像手段であるのが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
A:本発明の電子写真感光体の感光層の全体構成本発明の電子写真感光体における感光層としては、図1〜図3に示す層構成のものが挙げられる。ここで、図1〜図3は、本発明の電子写真感光体の断面を示す模式断面図である。
【0025】図1においては、導電性支持体1表面に、電荷発生層2が設けられ、その上に電荷輸送層3が設けられている。図2においては、導電性支持体1表面に、電荷輸送層3が設けられ、その上に電荷発生層2が設けられている。図3においては、導電性支持体1表面に、電荷輸送層3が設けられ、その中に電荷発生材料からなる微粒子4が分散されている。これらの電子写真感光体は、さらに所望により下引き層、中間層、保護層等を設けることができる。
【0026】本発明の電子写真感光体における感光層構成の中でも、特に、電荷輸送層中に電荷発生材料を含有させてなる図3に示す機能分離単層構成は、本発明の好ましい効果を顕著に発揮する。即ち、単層故の製造コストの低さ、生産性の高さと云う製造上の利点を有し、上述した積層型感光体における干渉縞の問題の回避に不可欠な導電性支持体表面の特殊な加工や、下引き層を設ける必要もなく、又、薄膜の電荷発生層に起因する問題もなく、この点でも製造コストの低減や面内ムラの低減が実現できる。
【0027】また、電荷発生材料にて発生したホール及びエレクトロンの両者が、それぞれ、ホール輸送材料及びエレクトロン輸送材料によって分離輸送されるため、高い電荷分離効率(すなわち電荷発生効率)が達成され、優れた繰り返し安定性が実現される。さらに、優れた両極性電荷輸送能を有するため、電荷発生材料の添加量も必要最少量で済み、電荷発生材料による輸送特性の劣化も抑えられ、併せて、機械的強度の低下も抑えられると云う卓越した効果を奏する。加えて、電荷発生材料及び両電荷輸送材料が共存しており、光励起状態が速やかに電荷移動失活されるため、通常の積層感光体で見られるような光暴露による電子写真感光体の光化学的な劣化が抑制されると云う利点をも有する。そして、単層構成の電子写真感光体であるため、使用済みの電子写真感光体から電子写真感光体材料を回収、再生することも容易であり、リサイクルによる資源の有効利用、廃棄物の低減、コスト削減を可能とする。
【0028】B:本発明の電子写真感光体本発明の電子写真感光体は、下記一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を含有し、必要に応じてその他の成分を含有する層を有する。
RN(CO)2X(CO)2NR’・・・一般式(1)
一般式(1)中、Xは、置換又は未置換の芳香族環構造を有する4価基を表す。又、RとR’とは、互いに異なる炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表し、これらは、イミド基とπ電子共役によらない基である。
【0029】[電荷輸送層]
−機能分離単層構成における電荷輸送層−本発明の電子写真感光体が、図3に示すような機能分離単層構成の電子写真感光体の場合において、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を含有する理由は、以下の通りである。
【0030】一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物は、エレクトロン輸送材料として、従来にない、優れた電荷移動性及び樹脂相溶性を兼ね備えた材料である。又、従来より、高い樹脂相溶性及び電荷移動性を備えたホール輸送材料は多く知られている。よって、これらのエレクトロン輸送材料およびホール輸送材料を併用することにより、電荷発生材料の濃度が低濃度で足り、暗減衰、繰り返し使用による光電特性の変動等の問題が起こらないため、高性能かつ高寿命で、実用性の高い機能分離単層構成の電子写真感光体を容易に提供することが可能となる。
【0031】従って、本発明の電子写真感光体が、機能分離単層構成の場合、前記電荷輸送層は、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物(エレクトロン輸送材料)、ホール輸送材料、電荷発生材料を含有し、必要に応じ絶縁性樹脂等を含有するのが好ましい。
【0032】前記N,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物としては、一般式(1)で示される構造を有していれば特に制限はなく、例えば、一般式(1)で示される低分子化合物のほか、一般式(1)で示される構造を繰り返し単位の一部又は全部に含む高分子化合物が挙げられる。
【0033】一般式(1)において、RとR’とが、互いに異なることが必要とされるのは、以下の理由による。従来、RとR’とが同一であるN,N’同置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物は、例えば、特開昭56−95241号、特開平5−117274号、特開平5−125043号、特開平5−297614号の各公報、Phys.Stat.Sol.(b)Vol.190,pp.555−563,1995などにおいて開示され、古くからエレクトロン輸送性化合物の一群として知られている。しかし、RとR’とが同一である場合には、分子が対称構造であり、結晶性が高いため、特に、溶剤への溶解性、樹脂との相溶性等が低く、電子写真感光体の製造時に結晶が析出してしまう等の問題があった。また、たとえ結晶析出を抑え電子写真感光体を作製できても、繰り返し使用により結晶化が起こり光電特性の不均質性を生じ、画像ムラが発生するという問題があった。
【0034】一方、本発明の電子写真感光体に用いられる、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物においては、N,N’位置に導入される置換基である、RとR’とが互いに異なるため、非対称な分子構造を有する。このため、従来の対称構造を有するN,N’同置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物に比べ、特に、溶解性ならびに樹脂との相溶性の著しい向上が達成され、前述のような問題は起こらない。この結果、容易に、低いコストで長寿命な電子写真感光体を作製できる。
【0035】一般式(1)において、R及びR’は、イミド基とπ電子共役によらない基であることが必要であるのは、以下の理由による。近年、エレクトロン輸送材料として、下記構造式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物が報告されている(Jpn. J.Appl.Phys. Vol.35, pp.5384−5388, 1996)。
【0036】
【化1】

【0037】しかし、この化合物は、電子供与性のトリフェニルアミン構造と電子吸引性のイミド構造とが直接結合されπ電子共役系にあるため、可視域から近赤外域に亘って電荷移動吸収(電荷移動相互作用)を示すという問題を生ずる。又、かかる電荷移動相互作用は、一般に電荷輸送性を低下させることが知られており、電荷輸送性の低下も懸念される。
【0038】一方、一般式(1)で示される、本発明のN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物は、R及びR’が、イミド基とπ電子共役によらない基であるため上記の問題が発生しない。
【0039】一般式(1)において、R及びR’の炭素数としては、1〜20が好ましく、2〜10がより好ましく、更に、少なくとも一方の炭素数が3以上であるのが好ましい。前記炭素数が、20を超えると、分子中に占めるエレクトロン輸送活性サイトの比率が低くなり、エレクトロン輸送性が不十分となることがある一方、前記炭素数が小さいと、十分な溶解性、相溶性が発現されないことがある。
【0040】一般式(1)において、R及びR’で表される炭化水素基(ヘテロ原子を含有する炭化水素基を含む)としては、アルキル基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられるが、特にエレクトロン輸送性の点で、アルキル基が好ましく、更に、結晶性が低いという点で、少なくとも一方が枝分れ構造又は環構造を有するアルキル基がより好ましい。尚、前記炭化水素基が置換されている場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が好ましい。好ましいR及びR’の組み合わせの具体例を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】一般式(1)において、Xとしては、例えば下記の構造が挙げられる。これらのうち、エレクトロン輸送能及び電荷発生材料からのエレクトロン注入性等の点で、Y1のベンゼン構造、及び、Y2のナフタレン構造が特に好ましい。また、Xが置換されている場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等が好ましい。
【0043】
【化2】

【0044】通常、芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物の合成法としては、特に制限はなく、任意の公知の合成法を用いることができるが、簡便性の点で、対応する芳香族テトラカルボン酸二無水物とアミノ化合物とを脱水縮合させる合成法が好ましい。本発明において用いられる、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を得るには、先ず、対応する芳香族テトラカルボン酸二無水物と、RNH2を反応させ、続いて、R’NH2を反応させる方法や、芳香族テトラカルボン酸二無水物とRNH2ならびにR’NH2を同時に反応させ、目的のRR’体から副生するRR体、R’R’体を分別する方法等が挙げられる。
【0045】また、重合性基を両末端に有するN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を前もって合成し、それを単独重合又は共重合させることによって、N,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド構造を繰り返し単位に有する高分子化合物を得ることができる。更に、芳香族テトラカルボン酸と非対称構造を有するジアミンとを重縮合させることによって、ポリアミド酸を経由して、N,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド構造を繰り返し単位に有する高分子化合物を得ることができる。イミド化合物は一般的に非常に安定であり、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物も非常に高い安定性を有する。
【0046】前記ホール輸送材料としては、ホール輸送性を有するものであれば特に制限はなく、ホール輸送能、化学的安定性、非晶性等の点で、置換あるいは未置換のトリアリールアミン構造を有する化合物(低分子化合物、高分子化合物)が好適である。トリアリールアミン構造を有する化合物としては、トリフェニルアミン、テトラフェニルフェニレンジアミン、テトラフェニルベンジジン、ビス(ジフェニルアミノ)ターフェニル等、及びこれらを繰り返し構造に含む高分子化合物等が挙げられる。トリアリールアミン構造を有する化合物が置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。これらのトリアリールアミン構造を有する化合物の中でも、前述のように、機能分離単層構成の電子写真感光体において、ホール輸送材料として用いる場合、別途、樹脂成分を用いなくてもよいという点で、高分子化合物であることが好ましく、特に、機械的強度、化学的安定性、ホール輸送性等の点で、下記一般式(2)で示されるトリアリールアミン構造を主鎖に有する高分子化合物が好ましい。
【0047】
【化3】

一般式(2)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換のアリール基を表す。X1は、芳香族環構造を有する、置換もしくは未置換の2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。X2及びX3は、それぞれ独立に、置換もしくは未置換のアリーレン基を表す。Lは、枝分れもしくは環構造を含んでもよい2価の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基を表す。mは、0又は1のいずれかである。
【0048】一般式(2)において、Ar1及びAr2で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げらる。又、Ar1及びAr2で表されるアリール基が置換基を有する場合、その置換基としては、メチル基、メトキシ基、フェニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0049】一般式(2)において、X1で表される炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、メチレンビスフェニル基、シクロヘキシリデンビスフェニル基、オキシビスフェニル基等が挙げられる。又、X1で表される炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基としては、メチル基、メトキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。X1としては、これらの中でも特に、ホール輸送性、化学的安定性等の点で、3−メチル−m−フェニレン基、3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニレン基、ターフェニレン基等が好ましい。一般式(2)において、X2及びX3で表されるアリーレン基としては、フェニレン基等が挙げられる。又、X2及びX3で表されるアリーレン基が置換基を有する場合、その置換基としては、メチル基、メトキシ基、フェニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0050】一般式(2)において、Lとしては、炭素数1〜25の炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基が好ましく、特に、機械的強度、可とう性等の点で、エステル結合、エーテル結合、又は、カーボネート結合を主鎖に有するヘテロ原子含有炭化水素基がより好ましい。一般式(2)で示されるホール輸送性高分子化合物の具体例としては、特開平5−249706号、特開平8−253568号、特開平9−59361号、特開平10−182760号の各公報等に開示されている化合物が挙げられる。
【0051】機能分離単層構成の電子写真感光体において、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物(エレクトロン輸送材料)及び前記ホール輸送材料の含有量としては、それぞれ、15〜85重量%が好ましく、20〜75重量%がより好ましい。前記含有量が、前記数値範囲に満たないと、電荷輸送性が不十分なことがある一方、両(エレクトロン及びホール)輸送材料が、低分子化合物である場合に、前記数値範囲を超えると、機械的強度が不十分となることがある。
【0052】一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物(エレクトロン輸送材料)とホール輸送材料との配合比(重量比)としては、必要とするエレクトロン輸送性とホール輸送性、及び、各輸送材料の輸送能によって設定されるため一概には言えないが、一般的には、重量比(N,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物(エレクトロン輸送材料)/ホール輸送材料)=2/8〜8/2が好ましく、3/7〜7/3がより好ましい。
【0053】前記電荷発生材料としては、電荷発生能を有する材料であれば特に制限はなく、例えば、非晶質セレン、六方晶セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、その他セレン化合物及びセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン、a−シリコン、a−シリコンカーバイド等の無機系光導電性材料;フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、多環キノン系、ピレン系、ピロロピロール系、ピリリウム塩系、チアピリリウム塩系等の有機顔料及び染料等が挙げられる。これらの電荷発生材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】これらの電荷発生材料のうち、安全性、堅牢性等の点で、有機顔料が好ましく、特に、フタロシアニン系顔料は、デジタル式の電子写真装置に光源として現在広く使用されているLED及びレーザーダイオードの発信波長である600〜850nmに優れた光感度を有するため、本発明における電荷発生材料として特に好ましい。
【0055】フタロシアニン系顔料としては、無金属フタロシアニン類、金属フタロシアニン類、及びそれらの誘導体が利用できる。金属フタロシアニン類の中心金属としては、Cu、Ni、Zn、Co、Fe、V、Si、Al、Sn、Ge、Ti、In、Ga、Mg、Pb、Li等が挙げられ、またこれら中心金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルキル化物、アルコキシ化物誘導体も有効である。具体的には、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロ錫フタロシアニン、ジメトキシ珪素フタロシアニン等が挙げられる。また、フタロシアニン環に任意の置換基が導入された置換フタロシアニンも挙げられる。さらにまた、フタロシアニン環中の任意の炭素原子が窒素原子で置換されたアザフタロシアニン類も有効である。
【0056】これらフタロシアニン系顔料の形態としては、電荷発生能を有するものであれば、アモルファス又は全ての結晶形のものが使用可能である。これ等フタロシアニン系顔料の中でも、無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、およびジクロロ錫フタロシアニンは、特に優れた光感度を有しており、本発明に用いる電荷発生材料として特に好ましい。
【0057】また、アゾ系顔料、多環キノン系顔料及びペリレン系顔料も電荷発生効率に優れるため、電荷発生材料として好適な例として挙げられる。レーザー光のビーム径は、発信波長が短くなる程小径化できるため、更なる高画質化を目指し、露光用レーザーの短波長化の検討がなされているが、これらの顔料は、紫外域から可視域に高い光感度を有するため、短波長レーザー用の電荷発生材料として特に好適である。
【0058】前記機能分離単層構成の電子写真感光体において、前記電荷発生材料の含有量としては、0.05〜30重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.3〜5重量%が更に好ましい。前記含有量が、前記数値範囲に満たないと、感光層による吸光度が不足し、光感度が不足したり、露光光源としてレーザー等の可干渉光を用い且つ散乱化処理を施していない支持体を使用した場合には、干渉縞の問題が発生することがある。一方、前記含有量が、前記数値範囲を超えると、暗電荷の増加、繰り返し安定性の低下、機械的強度の低下等の弊害が顕著となることがある。
【0059】また、電荷輸送材料(エレクトロン輸送材料、ホール輸送材料のいずれの材料であっても構わない)として、低分子化合物を用いる場合、成膜性、機械的強度を向上させるために、絶縁性樹脂を併用することが必要となる。前記絶縁性樹脂としては、カーボネート樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、環状オレフィン樹脂、等の公知の樹脂が用いられる。また、電荷輸送層中にホール輸送材料を含有させることも可能であり、絶縁性樹脂の代わりにホール輸送性樹脂を用いても構わない。前記絶縁性樹脂を用いる場合、その含有量としては、機械的強度の点で、15〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。一方、電荷輸送材料として高分子化合物を用いれば、前記絶縁性樹脂を用いなくともよく、相対的に、電荷輸送材料(エレクトロン輸送材料、ホール輸送材料)の含有量を増やすことができることから、電荷輸送性の点で有利である。
【0060】前記電荷輸送層の形成方法としては、特に制限はないが、コスト、設備の簡便性、量産性等の点で、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等の湿式塗布法が好適に挙げられる。
【0061】また、前記電荷発生材料として、顔料等の不溶物を用いる場合、均一且つ安定な塗布液を得るには、ボールミル法、ペイントシェーク法、アトライター法、サンドミル法、超音波法等の粉砕・分散法にて処理することによって塗布液を調製することが好ましい。
【0062】塗布液調製時に用いる溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クレゾール等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル系溶剤、シクロヘキサノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】前記塗布液における溶剤の量としては、一概には言えないが、塗布適性により、塗布液中の全固形成分が5〜50重量%の範囲になる量とすることが望ましい。
【0064】前記電荷輸送層の厚みとしては、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましく、15〜35μmが更に好ましい。
【0065】−機能分離積層構成の場合の電荷輸送層−本発明の電子写真感光体が、図1あるいは図2に示すような機能分離積層構成の電子写真感光体の場合において、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を含有する理由は、以下の通りである。
【0066】一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物は、エレクトロン輸送性及び安定性の十分なエレクトロン輸送層を与える。従って、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を電荷輸送層に含有させることにより、容易に、安価なコロトロン式帯電器をオゾン発生量の著しく少ない正帯電で使用できる機能分離積層構成の電子写真感光体とすることが可能となる。
【0067】本発明の電子写真感光体が、前記機能分離積層構成の電子写真感光体の場合においても、前記機能分離単層構成の電子写真感光体の場合と同様に、電荷輸送層に、ホール輸送材料が含有され、必要に応じてその他の成分が含有されるのが好ましい。一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物、ホール輸送材料としては、「機能分離単層構成における電荷輸送層」の項で既に述べたのと同様のものが好適に利用できる。
【0068】前記電荷輸送層は、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を適当な絶縁性樹脂に固溶させることによって形成してもよいし、あるいは、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物が高分子化合物の場合には、絶縁性樹脂を用いずに単独で形成してもよい。前記絶縁性樹脂としては、「機能分離単層構成における電荷輸送層」の項で既に述べた絶縁性樹脂が好適に挙げられる。
【0069】前記電荷輸送層において、前記絶縁性樹脂が含有される場合、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物と前記絶縁性樹脂との配合比(重量比)としては、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物/絶縁性樹脂=7/3〜2/8が好ましく、5/5〜3/7がより好ましい。一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物の前記絶縁性樹脂に対する配合比が、前記数値範囲を超えると、電荷輸送層の強度が著しく低下することがある一方、前記数値範囲に満たないと、光感度の低下、残留電位の増大等の障害が顕著となることがある。前記電荷輸送層の厚みとしては、一般的には、5〜50μm程度が適当であり、10〜35μmが好ましい。
【0070】前記電荷輸送層の形成方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布等の通常の湿式塗布法等が挙げられる。
【0071】[電荷発生層]本発明の電子写真感光体が、図1あるいは図2に示すような機能分離積層構成である場合、電子写真感光体は、電荷発生層を必要とする。電荷発生層は、電荷発生材料を含有し、必要に応じて結着樹脂等のその他の成分を含有する。前記電荷発生材料としては、「機能分離単層構成における電荷輸送層」の項で既に述べた電荷発生材料が好適に挙げられる。
【0072】電荷発生層の形成方法としては、電荷発生材料を真空蒸着法等により直接成膜する乾式法、前記電荷発生材料と結着樹脂とを適当な溶剤に分散・溶解させた塗布液を用い、これを塗布しさらに乾燥させる湿式塗布法等が利用できる。これらのうち、コスト、設備の簡便性、量産性等の点で、湿式塗布法が好適であり、例えば、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等の湿式塗布法が好適に挙げられる。又、前記電荷発生層の厚みとしては、通常、0.05〜5μmが適当であり、0.1〜2.0μmが好ましい。
【0073】電荷発生層の形成に結着樹脂を用いる場合、その結着樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ビニルブチラール樹脂、ビニルホルマール樹脂、部分変性ビニルアセタール樹脂、カーボネート樹脂、エステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルアセテート樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、ブロック、ランダムまたは交互共重合体であってもよい。また、これらの結着樹脂は、1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0074】電荷発生層の形成に結着樹脂を用いる場合、前記電荷発生材料と前記結着樹脂との配合比(重量比)としては、10/1〜1/10が好ましく、5/1〜1/1がより好ましい。前記電荷発生材料の結着樹脂に対する配合比が、前記数値範囲を超えると、暗減衰が増大し、湿式塗布法で層を形成した際に、均質な膜を得ることが困難になることがある一方、前記数値範囲に満たないと、光感度の低下、残留電位の増大等の障害が顕著となることがある。また、電荷発生層が一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物を含有することで、電荷発生効率の向上等の好ましい効果がもたらされる。
【0075】[導電性支持体]本発明の電子写真感光体に用いる導電性支持体の材料としては、特に制限はなく、当業界で電子写真感光体に用いる導電性支持体として利用され得る任意の種類から適宜選択可能である。また、前記導電性支持体は、透明でもよく、不透明でもよい。
【0076】前記導電性支持体の材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の金属類;アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、白金、ジルコニウム、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチック、ガラスおよびセラミックス等;導電性付与剤を塗布または含浸させた紙、プラスチック、ガラスおよびセラミックス等が挙げられる。これらの導電性支持体の形状としては、ドラム状、シート状、プレート状、ベルト状等の適宜の形状が挙げられる。導電性支持体の表面には、必要に応じて、各種の処理を施すことができる。例えば、電解酸化処理;薬品処理;砂目立て、荒切削、ホーニング等の機械的粗面化処理;切削、研磨等による機械的鏡面化処理等の処理が挙げられる。
【0077】[本発明の電子写真感光体におけるその他の構成]
−下引き層−また、本発明においては、導電性支持体から感光層への電荷の漏洩を阻止する目的および/または感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持させること等を目的として、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることもできる。
【0078】前記下引き層の材料としては、特に制限はなく、公知の材料から適宜選択可能であり、例えば、エチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、イミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ビニルアセタール樹脂、ビニルアルコール樹脂、水溶性エステル樹脂、アルコール可溶性ナイロン樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル酸樹脂、アクリルアミド樹脂等の樹脂およびこれらの共重合体、あるいは、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物、シランカップリング剤等の硬化性金属有機化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、帯電極性と同極性の電荷のみを輸送し得る材料も下引き層として有効である。
【0079】前記下引き層の形成方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布等により塗布液を塗布し、これを乾燥して形成する通常の湿式塗布法を用いることができる。かかる塗布液は、下引き層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。下引き層の厚みとしては、0.005〜10μmが好ましく、0.01〜5μmがより好ましい。
【0080】−表面電荷輸送層−本発明の電子写真感光体が、図3に示す機能分離単層構成の場合、表面磨耗耐性、クリーニング性等の更なる改善を目的として、所望により、表面に、単極性または両極性の表面電荷輸送層を設けることができる。前記単極性の表面電荷輸送層としては、特に限定されず、従来公知の電荷輸送層の構成をそのまま適用することができる。前記両極性の表面電荷輸送層としては、本発明における両極性電荷輸送層が特に好適に挙げられる。これらの表面電荷輸送層の形成方法としては、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により、塗布液を塗布し、これを乾燥して形成する通常の湿式塗布法を用いることができる。かかる塗布液は、表面電荷輸送層の各構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。前記表面電荷輸送層の厚みとしては、0.5〜10μmが好ましい。
【0081】−保護層−本発明の電子写真感光体においては、帯電部材から発生するオゾンや酸化性ガス等、および、紫外光等の化学的ストレス、あるいは、現像剤、紙、クリーニング部材等との接触に起因する機械的ストレスから感光層を保護し、感光層の実質的寿命を改善することを目的として、所望により、感光層の上に、保護層を設けることができる。
【0082】前記保護層は、導電性材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成する。前記導電性材料としては、ジメチルフェロセン等のメタロセン化合物、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン、酸化インジウム、ITO等の金属酸化物等の材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0083】前記保護層形成に用いることができる結着樹脂としては、アミド樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、カーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリルアミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。また、前記保護層には、残留電位の低減等を目的として、電荷輸送材料を添加することもできる。
【0084】前記保護層の形成方法としては、浸漬塗布法、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法、リング塗布法等により塗布液を塗布し、これを乾燥して形成する湿式塗布法が挙げられる。かかる塗布液は、保護層の構成成分を適当な溶剤に溶解・分散させて調製することができる。保護層の厚みとしては、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。該保護層はまた、電荷注入型の帯電器と併用することにより、電荷注入層としての機能も有するため、電荷注入型帯電器による安定な帯電が可能となる。
【0085】また、保護層を設けた場合、所望により、感光層と保護層との間に、保護層から感光層への電荷の漏洩を阻止するブロッキング層を設けることができる。ブロッキング層としては、保護層の場合と同様に公知のものを用いることができる。
【0086】以上説明した本発明の電子写真感光体は、オゾンや酸化性ガス、あるいは、光、熱による感光体の劣化を防止する目的で、所望により、任意の層に、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等を適宜添加することができる。
【0087】前記酸化防止剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノンおよびこれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等が挙げられる。前記光安定剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ジチオカルバメート、テトラメチルピペリジン等の誘導体、および、光励起状態をエネルギー移動あるいは電荷移動により失活し得る電子吸引性化合物または電子供与性化合物等が挙げられる。前記熱安定剤としては、同様に公知のものが挙げられる。また、表面磨耗の低減、転写性の向上、クリーニング性の向上等を目的として、表面の層(保護層、感光層、表面電荷輸送層のいずれの場合であっても構わない)に、フッ素樹脂やシリカ等の微粒子を分散させてもよい。
【0088】以上の本発明の電子写真感光体は、上述のようにエレクトロン輸送性、樹脂との相溶性、化学的安定性等に優れた新規なエレクトロン輸送材料を活用するため、高性能かつ高寿命な電子写真感光体であり、正極性あるいは両極性に帯電可能で、またこれを用いることにより、高画質かつ高耐久なプロセスカートリッジ、及び、電子写真装置を提供することが可能である。また、本発明で用いられる、一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物は、高いエレクトロン輸送性、高い非晶性、高い化学的安定性を兼ね備えているため、本発明で提供する電子写真感光体の他、有機電界発光素子、有機フォトリフラクティブ素子、有機光センサー、有機太陽電池等の各種有機電子デバイスにも活用できる。
【0089】C:本発明のプロセスカートリッジプロセスカートリッジとは、電子写真装置の消耗部品を適時交換する目的で、電子写真装置の構成部品のいくつかをカートリッジに組み込み、容易に交換作業を行えるようにしたものである。プロセスカートリッジは、電子写真装置の中に装着された状態で取引される他、交換部品あるいは補修部品として、単体でも取引されている。
【0090】プロセスカートリッジに組みこまれ得る構成部品としては、一般に、帯電手段、現像手段、露光手段、及び、クリーニング手段等が挙げられ、これらをその目的に応じて任意に組み合わせることができる。
【0091】本発明のプロセスカートリッジは、前記本発明の電子写真感光体を有する。本発明のプロセスカートリッジに組みこまれ得る電子写真感光体以外の構成部品については、特に制限はなく、既に述べたような、従来公知の手段が問題なく採用され得る。以上説明した本発明のプロセスカートリッジは、前記本発明の電子写真感光体が組み込まれているため、高画質の画像を形成可能であり、かつ、耐久性が高い。
【0092】D:本発明の電子写真装置本発明の電子写真感光体を搭載する電子写真装置としては、電子写真法を用いるものであれば、如何なるものでも構わないが、特にデジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装置が好ましい。デジタル処理された画像信号に基づき露光を行う電子写真装置とは、レーザーまたはLED等の光源を用い、2値化またはパルス幅変調や強度変調を行い多値化された信号に従い露光を行う電子写真装置であり、例としてLEDプリンター、レーザープリンター、レーザー露光式デジタル複写機などが挙げられる。本発明の電子写真装置としては、機能分離単層構成の電子写真感光体の場合、電子写真感光体の表面を負に帯電させる帯電器と反転現像方式の現像器を備えたものが、画質等の点で、特に好ましい。
【0093】本発明の電子写真装置の一例を図4に模式的に示す。図4の電子写真装置は、レーザープリンターであり、電子写真感光体である円筒形の感光体ドラム11の周りに、除電用光源である除電用LED12、帯電手段である帯電用スコロトロン13、像露光手段である露光用レーザー光学系14、現像器15、転写用接触帯電ロール16、およびクリーニング手段であるクリーニングブレード17がこの順序で配置されている。露光用レーザー光学系14は、例えば発信波長780nmの露光用レーザーダイオードを備えており、デジタル処理された画像信号に基づき発光する。発光したレーザー光14aはポリゴンミラーと複数のレンズ、ミラーにより走査されながら電子写真感光体表面を露光するように構成されている。尚、18は用紙を示す。
【0094】本発明の電子写真装置においては、感光体ドラム11が、本発明の電子写真感光体である。勿論、感光体ドラム11と、他の構成物品の任意の組み合わせと、を含み、かつ、該電子写真感光体が前記本発明の電子写真感光体であるプロセスカートリッジを含む構成であっても構わない。
【0095】以上、本発明の電子写真装置について、図面を以って説明したが、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、電子写真感光体以外の構成部品については、特に制限なく、従来公知のものが問題なく採用され得る。
【0096】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、当業者は化学技術ならびに電子写真技術の公知の知見から、以下の実施例に変更を加えることが可能である。
【0097】[第1の本発明の実施例および比較例]
<合成例1>1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物とヘキシルアミンとの等モル混合物を、4−ピコリン中で、攪拌下5時間還流させた。放冷後、反応混合物を希塩酸中に投入し、固形物を濾取し、加熱下減圧乾燥し固形物を得た。得られた固形物を、塩化メチレンで洗浄し、副生したN,N’−ジヘキシルナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを除去し、次に、沸騰アセトンにて抽出し残渣として未反応のナフタレンテトラカルボン酸二無水物を濾別し、該アセトン溶液からアセトンを留去、乾燥させることによって、下記構造式(2)のモノイミド体を得た。
【0098】
【化4】

【0099】得られたモノイミド体とその5倍モル量のシクロヘキシルアミンとの混合物を、4−ピコリン中で攪拌下5時間還流させた。放冷後、反応混合物を希塩酸中に投入し、固形物を濾取し、加熱下減圧乾燥し固形物を得た。得られた固形物を、シリカゲル/トルエンを用いたカラムクロマトグラフィー処理、続いてアセトニトリルからの再結晶化処理にて精製し、目的のN−ヘキシル−N’−シクロヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物)を得た。
【0100】<合成例2>1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物1モル、4−クロロブチルアミン5モル、および、(1,2−ジメチルプロピル)アミン5モルの混合物を、4−ピコリン中で攪拌下5時間還流させた。放冷後、希塩酸中に投入し、固形物を濾取し、これを加熱下減圧乾燥させ、固形物を得た。得られた固形物を、シリカゲル/クロロホルムを用いたカラムクロマトグラフィー処理、続いてアセトニトリルからの再結晶化処理にて精製し、目的のN−(4−クロロブチル)−N’−(1,2−ジメチルプロピル)−1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジイミド(一般式(1)で示されるN,N’異置換芳香族テトラカルボン酸ジイミド化合物)を得た。
【0101】(実施例1)
−電子写真感光体の作製−CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶3重量部、シクロヘキサノン80重量部、および1,2−ジクロロエタン320重量部を混合し、SUS製ビーズとともにペイントシェーク法で5時間分散処理した後、合成例1で得られたエレクトロン輸送性N−ヘキシル−N’−シクロヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド30重量部と、下記構造式(3)に示すホール輸送性低分子化合物20重量部と、ビスフェノールZタイプポリカーボネート(PC−Z、三菱瓦斯化学社製)47重量部とを添加し、さらにボールミル法で2時間溶解分散処理して、機能分離単層型感光体用塗布液を調製した。
【0102】
【化5】

【0103】得られた機能分離単層型感光体用塗布液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)表面に浸漬塗布法にて塗布し、115℃において60分間加熱乾燥して、図3に示す機能分離単層構成の電子写真感光体を作製した。尚、感光層の厚みは、15μmであった。
【0104】−評価(画質、耐久性の評価)−得られた電子写真感光体を、市販のレーザープリンター(Laser Press4150、富士ゼロックス社製)に搭載し、常温常湿環境(20℃50%RH)下にて、A4横方向に5000枚連続で印字し、プリント試験を行った。1枚目および5000枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視観察を行うことにより、画質および耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。尚、評価に供した上記レーザープリンターは、図4に示される構成であり、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器とを備えている。
【0105】(実施例2)実施例1において、N−ヘキシル−N’−シクロヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドの代わりに、「合成例2」で得られた、N−(4−クロロブチル)−N’−(1,2−ジメチルプロピル)−1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ジイミドを用いたほかは、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0106】(実施例3)実施例1において、アルミニウム製ドラム(導電性支持体)として、アルミナ粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さ:Ra=0.20μm)したアルミニウム製ドラムを用いたほかは、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0107】(実施例4)実施例1において、上記構造式(3)に示すホール輸送性低分子化合物20重量部を、下記構造式(4)に示すホール輸送性高分子化合物55重量部に代え、エレクトロン輸送性N−ヘキシル−N’−シクロヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド30重量部の添加量を42重量部に変え、且つ、ビスフェノールZタイプポリカーボネート(PC−Z、三菱瓦斯化学社製)を添加しなかったほかは、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0108】
【化6】

尚、用いたホール輸送性高分子化合物の重量平均分子量は、6万であった。
【0109】(実施例5)
−電子写真感光体の作製−実施例4において、アルミニウム製ドラム(導電性支持体)の径を84mm径に変えたほかは、実施例4と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0110】−評価(画質、耐久性の評価)−得られた感光体を市販のフルカラーレーザー複写機(A−Color935、富士ゼロックス(株)製)に搭載し、常温常湿環境(20℃50%RH)下にて、A4横方向に1000枚連続で印字し、複写試験を行った。1枚目および1000枚連続印字後の印字サンプルに対して、目視観察を行うことにより、画質および耐久性の評価を行った。結果を表2に示す。尚、評価に供した上記レーザー複写機は、負帯電用の帯電器と反転現像方式の現像器とを備えている。
【0111】(比較例1)実施例1において、エレクトロン輸送性N−ヘキシル−N’−シクロヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを用いず、上記構造式(3)に示すホール輸送性低分子化合物の添加量を、50重量部に変えたほかは、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0112】(比較例2)
−電子写真感光体の作製−CuKαを線源とするX線回折スペクトルにおいて、少なくともブラッグ角度(2θ±0.2°)が、7.4°、16.6°、25.5°、および28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン微結晶3重量部を、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体(VMCH、ユニオンカーバイド社製)3重量部、キシレン60重量部、および、酢酸ブチル40重量部と混合し、SUS製ビーズと共にペイントシェーク法で5時間分散処理した後、得られた分散液を、表面を鏡面処理した30mm径のアルミニウム製ドラム(導電性支持体)表面に浸漬塗布法にて塗布し、115℃において5分間加熱乾燥し、厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0113】次に、前記構造式(3)で示されるホール輸送性低分子化合物50重量部、ビスフェノールZタイプポリカーボネート(PC−Z、三菱瓦斯化学社製)50重量部、シクロヘキサノン40重量部、および1,2−ジクロロエタン360重量部を混合して電荷輸送層形成用の塗布液を調製した。得られた塗布液を、浸漬塗布法で上記電荷発生層上に塗布し、115℃において60分間加熱乾燥し、厚み15μmの単極性電荷輸送層を形成し、機能分離積層構成の電子写真感光体を作製した。
【0114】−評価(画質、耐久性の評価)−得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】(比較例3)比較例2において、アルミニウム製ドラム(導電性支持体)として、アルミナ粒子による湿式ホーニング処理にて表面を粗面化(算術平均粗さ:Ra=0.20μm)した30mm径のアルミニウム製ドラムを用いたほかは、比較例2と同様にして電子写真感光体を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0116】(比較例4)実施例1において、N−ヘキシル−N’−シクロヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドの代わりに、N、N’−ジヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを用いたほかは、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し評価したところ、加熱乾燥時に著しく結晶が析出してしまい、評価を行うことができなかった。表2に示す。
【0117】(比較例5)実施例1において、N−ヘキシル−N’−シクロヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドの代わりに、N、N’−ジシクロヘキシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを用いたほかは、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し評価したところ、加熱乾燥時に著しく結晶が析出してしまい、評価を行うことができなかった。表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】以上のように、本発明の電子写真感光体は、高性能で、且つ、寿命が長いという優れた効果を有する。その結果、本発明の電子写真感光体を備えた電子写真装置は、高い繰り返し安定性を有し、長期に亘って安定した高画質を提供していることが判る。また、導電性支持体の表面性にかかわらず、干渉縞の発生が無く、更に荒れた導電性支持体を用い、且つ、下引き層を用いなくとも、濃度ムラ等の画質欠陥が生じないという優れた特質を有するため、従来の機能分離積層構成の電子写真感光体における問題が払拭されていることが判る。加えて、本発明における非対称置換ジイミド系エレクトロン輸送性化合物は、その非対称構造に起因し、従来の対称構造のものに比べ、著しく高い非晶性を有することが判る。
【0120】
【発明の効果】本発明によれば、エレクトロン輸送性、樹脂との相溶性、化学的安定性等に優れた新規なエレクトロン輸送材料を活用することにより、高性能かつ高寿命な電子写真感光体を低コストで提供することができる。具体的には、正極性ならびに両極性に帯電可能な電子写真感光体を提供でき、また、上記優れた特性を有する電子写真感光体を利用した、高画質かつ、高耐久なプロセスカートリッジ、及び、電子写真装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【出願日】 平成12年3月15日(2000.3.15)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2001−265031(P2001−265031A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−71460(P2000−71460)