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【発明の名称】 電子写真平版印刷版
【発明者】 【氏名】松山 睦宏

【要約】 【課題】pHが12以下で且つシリケートを有しないアルカリ性溶出液に対して十分な溶出性を有し、且つ電子写真特性及び耐刷性の良好な、レーザー光による走査露光に適した高感度の電子写真平版印刷版を提供する。

【解決手段】導電体支持上に光導電層を有する有機感光体の表面に電子写真方式により形成される静電潜像を湿式現像し、非画像部の溶出処理を経て刷版とする電子写真平版印刷版において、a)少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含むラジカル重合可能なモノマー、b)炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するラジカル重合可能なモノマー、c)1.0≦pKa≦7.5の範囲でイオン解離しうる官能基を持つラジカル重合可能なモノマー、の各群からそれぞれ少なくとも一種類選択される、少なくとも三種類のモノマーを重合物の構成成分として含有する重合物の混成体を上記光導電層の樹脂材として用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電体支持上に少なくとも有機光導電性化合物を樹脂材で結着してなる光導電層を有する有機感光体の表面を一様に帯電させ、原画像をレーザー光または発光ダイオードにより露光して像対応の静電潜像を上記有機感光体の表面上に形成した後、電子写真用液体現像材を用いて上記静電潜像を湿式現像し、引き続き非画像部の溶出処理を経て刷版を製造することとした電子写真平版印刷版において、上記光導電層の樹脂材として用いる重合物の混成体が次の三つのモノマー群、すなわちa)少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含むラジカル重合可能なモノマー、b)炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するラジカル重合可能なモノマー、c)1.0≦pKa≦7.5の範囲でイオン解離しうる官能基を持つラジカル重合可能なモノマー、の各群からそれぞれ少なくとも一種類選択される、少なくとも三種類のモノマーを重合物の構成成分として含有することを特徴とする電子写真平版印刷版。
【請求項2】 上記電子写真平版印刷版において、光導電層の樹脂材がa)少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含むラジカル重合可能なモノマー、b)炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するラジカル重合可能なモノマー、c)1.0≦pKa≦7.5の範囲でイオン解離しうる官能基を持つラジカル重合可能なモノマー、のa)、b)、c)の各群から選ばれる各々少なくとも単一のモノマーを構成成分とするラジカル共重合体であることを特徴とする電子写真平版印刷版。
【請求項3】 上記重合物の混成体が、上記a)、b)、c)各群のうちいずれか2群を選択し、それらの中から選ばれる各々少なくとも単一のモノマーを構成成分とする共重合体を、少なくとも2種以上混合した混成体であることを特徴とする請求項1、2いずれか記載の電子写真平版印刷版。
【請求項4】 上記a)の少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含むラジカル重合可能なモノマー群が、少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含む下記一般式[I]で示されるアクリルエステル系モノマー及び、少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含む下記一般式[II]で示されるビニルもしくはスチレン系ビニル重合可能なモノマーであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の電子写真平版印刷版。
【化1】

〔一般式[I]において、R1、R2、R3は同一または異なっても良い水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、あるいはスルホアルキル基であり、R4としては同一または異なっても良い水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アリール基、芳香族複素環残基、アシル基、アシルオキシ基、アシルオキシカルボニル基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、あるいはスルホアルキル基である。Z1は−COO基、−CO基、−CONR’基、−COCR’2CO基(式中、R’は水素原子、アルキル基、アラルキル基、あるいはアリール基である)、−OCO基あるいは−O(R”O)k基(式中、R”は芳香環もしくは複素芳香環を含んでいても良い炭化水素鎖である。kは0以上の整数を示す)であり、もしくは無くても良い。n1,n2は0、1,2のいずれかを示す。但し、いずれの場合に於いてもR1、R2、R3、R4、Z1、R’、R”の中に少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環が含まれなくてはならない。〕
【化2】

〔一般式[II]において、R5、R6、R7は同一または異なっても良い水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、あるいはスルホアルキル基であり、R8としては同一または異なっても良い水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アリール基、芳香族複素環残基、アシル基、アシルオキシ基、アシルオキシカルボニル基、アシルオキシアルキル基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシアルキル基、あるいはスルホアルキル基である。Aはアリール基であり、フェニル基の場合にはモノマー側鎖骨格上のフェニル基と縮合してナフタレン環もしくは複素芳香環を形成しても良い。n3,n4は0、1,2のいずれかを示す。但し、いずれの場合に於いてもR5、R6、R7、R8、Aの中に少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環が含まれなくてはならない。〕
【請求項5】 上記b)の炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するラジカル重合可能なモノマー群が、一つ以上の芳香環もしくは複素芳香環を含有せず、且つ1.0≦pKa≦7.5の範囲の水溶液中でイオン解離可能な官能基を含まないビニル重合可能なモノマーであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の電子写真平版印刷版。
【請求項6】 上記c)のイオン解離しうる官能基がカルボキシル基、スルホキシル基、フェノール性水酸基もしくはそれらの金属塩もしくは塩基性有機化合物との塩もしくは分子内塩であるビニル重合可能なモノマーであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の電子写真平版印刷版。
【請求項7】 上記共重合体もしくは重合物の混成体に含まれる上記a)少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含むラジカル重合可能なモノマー、b)炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するラジカル重合可能なモノマー、c)1.0≦pKa≦7.5の範囲でイオン解離しうる官能基を持つラジカル重合可能なモノマー、の各モノマー群に包含されるモノマーの組成比が、a)群に含まれるモノマーが全モノマー重量中5〜90%、b)群に含まれるモノマーが全モノマー重量中5〜90%、c)群に含まれるモノマーが全モノマー重量中5〜35%であることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の電子写真平版印刷版。
【請求項8】 上記電子写真平版印刷版が、pHが12以下で且つシリケート化合物を実質上含有しないアルカリ性溶出液を、非画像部の光導電層の溶出に用いることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の電子写真平版印刷版。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機光導電性化合物を含有する光導電層を支持体上に有し、電子写真方式により露光部に反転現像にてトナー画像を形成後、トナー画像部以外の非画像部を除去することにより印刷版とする電子写真平版印刷版の製造方法に於いて、pHが12以下で且つシリケートを有しないアルカリ性溶出液に対して十分な溶出性を有し、且つ露光感度、帯電性等の電子写真特性を満足させ、高耐刷性を備えた電子写真平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】これまで平版印刷版としては、ナフトキノンジアジド化合物等とフェノール樹脂を主成分とするポジ型感光剤やアクリル系モノマーやプレポリマーを主成分とするネガ型感光剤を用いるPS版等が実用化されているが、これらは全て低感度のため、あらかじめ画像記録されたフィルム原版を紫外光により密着露光して製版を行っている。一方、最近のデジタル画像処理技術とデジタルデータの保存およびデータ電送技術の発展に伴い、省人化と工程の短縮を目的として、新聞印刷分野のみならず一般商業印刷の分野に於いても原稿入力から校正、編集、割り付けから頁組まで一貫してコンピューター処理を行う、いわゆるデスクトップ・パブリッシング(DTP)が広く行われるようになってきた。特に、他の商業印刷と比べて即時性が第一に要求される新聞製作分野おいて、高速通信網や衛星通信により即時遠隔地のプロッタに出力できる電子編集システムの要求度は高く、特に近年のデジタル高速通信のインフラの整備に呼応するように、オリジナルデータのデジタル化および遠隔地からのデジタル入稿なども広く行われるようになってきている。近年のこのようなデジタル技術発展の一方で、デジタルデータをレーザー光等で直接印刷版上に描画することを可能とする、いわゆるコンピューター・トゥ・プレート(CTP)システムは未だ開発途上であり、電子編集システムが導入されているところでもデータ出力は銀塩写真フィルムに行われ、これをPS版に密着露光することにより印刷版が作製されているのが現状である。一方、最近のレーザーの発展に伴い、特に波長760nmから1200nmの赤外線を放射する高出力かつ小型の半導体レーザーあるいは固体レーザーが容易に入手できるようになったことから、これらのレーザーを記録光源としコンピューター等のデジタルデータの高解像度直接製版を行うことを目的とした、レーザーによるヒートモード製版材料(サーマルプレート)の研究開発が活発に行われてきている。例えば、特許第2577718号公報には、フェノール樹脂、熱分解性のオニウム塩、および近赤外線吸収染料を組み合わせた技術が開示されており、また、特開平7−20629号、同9−138500号、同9−185160号、同9−211863号公報等には、フェノール樹脂、潜伏性ブレンステッド酸、および近赤外線吸収染料を組み合わせた技術が開示されている。しかし、我々の検討によれば、これらの方法により製造される印刷版は現像時の処理安定性及びロングラン印刷時の耐久性という点において、新聞印刷用印刷版として要求される品質を十分に満たしているとは言えないのが実状であった。
【0003】デジタルデータを直接描画可能な直接型印刷版を提供しうる高い光感度を備えた感光体として、銀塩写真方式の他に、電子写真方式が挙げられる。電子写真平版印刷版は、アルミニウム等の導電性支持体の上に光導電性化合物を含む光導電層が被着された電子写真感光体から製作される。この電子写真感光体の光導電層を構成する材料としては、例えば特公昭37−17162号、同38−6961号、同38−7758号、同41−2426号、同46−39405号、特開昭50−19509号、同50−19510号、同52−2437号、同54−19803号、同54−134632号、同55−105254号、同57−161863号、同58−2854号、同58−28760号、同58−118658号、同59−12452号、同59−49555号、同62−217256号、同63−226668号、特開平1−257971号、同1−261659号、同2−5065号、同2−161448号、同2−188758号、同2−188759号、同3−123357号、同4−51155号公報等に記載の有機光導電性化合物・結着樹脂系材料等が挙げられる。これらの有機光導電性化合物・結着樹脂等による光導電層を被着した電子写真平版印刷版の製版方法の一つとして、トナー画像形成後、非画像部の光導電層を溶出する方法が既に知られている。例えば、特公昭37−17162号、同38−6961号、同38−7758号、同41−2426号、同46−39405号、特開昭50−19509号、同50−19510号、同52−2437号、同54−145538号、同54−134632号、同55−105254号、同55−153948号、同55−161250号、同57−161863号公報に記載の電子写真平版印刷版の製版方法が挙げられる。上記方法では、光導電層上にまず所定の帯電工程により光導電層上に一様な電荷が載せられる。次にレーザー等所定の光学系による露光操作によってデジタル画像に対応する静電潜像が光導電層上に形成される。続いて電子写真用現像剤を用いて現像及び定着処理が行われ、上記静電潜像に対応したトナー画像が形成される。このトナー画像以外の非画像部は、アルカリ剤や有機アミン等を含有する溶液により溶解、除去され、続いて水洗またはリンス液によるによる版面処理の後、必要に応じて版面保護液(保護ガム液)等による版面処理が施されて最終的な印刷版が得られる。
【0004】電子写真平版印刷版は一般に上記の工程を経て製版されるが、現像工程により光導電層上の潜像上に形成されるトナー層をレジスト層とし、非画像部の感光層をアルカリ剤や有機アミン等を含有する溶液により溶出するため、画像辺縁部の水平方向への光導電層の溶出が進行しやすく(サイドエッチ)、これが画質低下の原因となっていた。画像低下を防ぐためにサイドエッチを抑えると、光導電層に対する溶出性が低下するため光導電層の溶出残滓が非画像部に残り、その結果非画像部にインク付着が発生し、印刷汚れとなる場合があった。この問題の解決方法として、溶出液のpHを高くして(pH13以上)光導電層に対する溶出性を向上させる一方で、同時に溶出液にシリケートを含有させて基板の親水性を向上させ印刷汚れを防止する方法がある。このシリケート含有高pH溶出液を用いる溶出方法が特開平1−257971号公報に報告されている。これによれば、耐刷性、電子写真特性の改良を目的として芳香環を有するアクリルエステル系バインダーを結着樹脂として用い、さらに上記のシリケート含有高pH溶出液を組み合わせることにより、サイドエッチの抑制と非画像部のインク汚れの防止を同時に実現可能であると報告している。しかしこのようなシリケート含有高pH溶出液を用いて上記のバインダーを使用した刷版を多数枚製版処理すると、処理液中に溶出した光導電層の結着樹脂が製版機の処理液層もしくは各配管内で析出もしくはヘドロ化し、装置の汚れもしくは装置の誤作動、故障の原因となるなどの問題があった。また、最近の環境保全の潮流から重要視されるようになってきたシステムの環境負荷の観点から鑑みた場合、高pH且つシリケート含有の溶出液は廃液処理上問題があることから、低pH且つシリケートフリーの溶出液への代替が昨今強く望まれている。しかしこのような条件を満たす溶出液に対してこれまで検討されてきた上記のバインダーをそのまま適用した場合は、溶出性が不十分であるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、有機光導電性化合物を含有する光導電層を支持体上に有し、電子写真方式により露光部に反転現像にてトナー画像を形成後、トナー画像部以外の非画像部を除去することにより印刷版とする電子写真平版印刷版の製造方法に於いて、pHが12以下で且つシリケートを有しないアルカリ性溶出液に対して十分な溶出性を有し、且つ露光感度、帯電性等の電子写真特性を満足させ、特に新聞印刷分野に於いて要求される高耐刷性を備えた安定供給可能な電子写真平版印刷版を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、レーザー光による走査露光による画像形成に適した高感度の電子写真平版印刷版を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、導電体支持上に少なくとも有機光導電性化合物を樹脂材で結着してなる光導電層を有する有機感光体の表面を一様に帯電させ、原画像をレーザー光または発光ダイオードにより露光して像対応の静電潜像を上記有機感光体の表面上に形成した後、電子写真用液体現像剤を用いて上記静電潜像を湿式現像し、引き続き非画像部の溶出処理を経て刷版を製造することとした電子写真平版印刷版において、上記光導電層の樹脂材として次の三つのモノマー群より成る重合物の混成体、すなわちa)少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含むラジカル重合可能なモノマー、b)炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するラジカル重合可能なモノマー、c)1.0≦pKa≦7.5の範囲でイオン解離しうる官能基を持つラジカル重合可能なモノマー、の各群からそれぞれ少なくとも一種類選択される、少なくとも三種類のモノマーを重合物の構成成分として含有する重合物の混成体を用いる事により達成された。
【0007】上記a)、b)、c)モノマー群は主として次のような理由により大別される。すなわち、a)群モノマーは芳香環もしくは複素芳香環を含みそれらの疎水性相互作用及びπ−π電子相互作用により共重合体のガラス転移点を上昇させ、基板に被着して得られる皮膜を強靱なものにする性質があるため、電子写真平版印刷版の光導電層を構成する重合物混成体中のa)群モノマーの組成比が高い場合は耐刷性を良化し、所定の溶出液に対する溶出速度を減少させる方向に働くほか、π−π電子相互作用により光導電層内の電荷のホッピング伝導の電荷移動性を良化する。b)群モノマーはπ−π電子相互作用が無い炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するため、主としてa)群とは逆に共重合体のガラス転移点を降下させ皮膜を柔軟なものにする性質があり、これによりb)群モノマーの組成比が高い場合は電子写真平版印刷版の光導電層の可堯性を良化し、所定の溶出液に対する溶出速度を増大させる方向に働く。このa)及びb)群モノマーを同一系中に共存させることにより、電子写真平版印刷版の耐刷性、溶出速度及び電子写真特性をモノマーの組成比に応じて微調整することが可能となる。またc)群モノマーは1.0≦pKa≦7.5の範囲でイオン解離する官能基を備えるため、重合物混成体中のおけるc)群モノマーの組成比が所定の溶出液に対する溶出速度のオーダーを決定する主要因となる。以上の理由から、電子写真平版印刷版の光導電層構成材料として上記のa)、b)、c)モノマー群より成る重合物混成体を用いた場合は従来用いられていたバインダーと比較して、耐刷性、溶出速度及び電子写真特性を同時に且つより好適な条件に最適化可能であり、またモノマーをa)、b)、c)三群に分類することは電子写真平版印刷版の各種特性を最適化する際の強力な方法論となりうる。
【0008】このような重合物はa)、b)、c)の各群からそれぞれ少なくとも1種のモノマーを選択し、それらを混合したモノマー混合溶液にラジカル重合開始剤を添加し、必要に応じてメルカプト系連鎖移動剤等を添加して塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のこれまでに知られている方法で容易に合成できる。結着樹脂の分子量は1000〜500000の範囲で使用可能であるが、形成被膜の強度、光導電層の溶出速度等の上から6000〜150000の範囲であることが好ましい。この方法に於いても十分実用的な重合物は得られるが、但しこの場合、モノマー毎の重合速度の違い等の反応速度論的要因から重合初期と重合後期の重合生成物中のモノマー組成比にムラがあることが多く、重合条件によっては重合後期にいずれかのモノマーのホモポリマーが生成する、あるいは重合反応中に異種モノマー群同士で会合体を形成する結果、反応終了後の重合溶液が経時と共に不均一になるなどの不都合が生じることがある。これを解決するために、いずれかのモノマーもしくは開始剤の重合系中への注加方法もしくは注加時期を変更するなどの工夫が通常は必要となるが、その場合重合工程に於いて経験的要因が大きくなるが故に得られるポリマーのロット間のふれが時として発生する。これを回避すべく我々が鋭意検討した結果、上記a)、b)、c)の各群からあらかじめ例えばa)とb)、及びa)とc)といった2群を組み合わせ、次にそれぞれの組み合わせの中から選択されるモノマーを常法で重合し、得られる共重合体を混合して目的とする重合物混成体を得る方法を実施するに至った。我々の検討によれば、重合物の製造安定性及び経時安定性という点でこの方法は優れており、この方法による重合物の混成体を用いて目的とする電子写真平版印刷版を安定生産できる。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明の光導電層の樹脂材構成成分であるモノマーa)、b)、c)について説明する。a)少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環を含むラジカル重合可能なモノマーとしては、下記一般式[I]で示されるアクリルエステル系モノマー及び、芳香環もしくは複素芳香環を含む下記一般式[II]で示されるビニルもしくはスチレン系ビニル重合可能なモノマー等が挙げられ、またはそれらの混合物でも構わない。
【0010】
【化3】

一般式[I]において、R1、R2、R3は同一または異なっても良い水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、あるいはスルホアルキル基であり、R4としては同一または異なっても良い水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アリール基、芳香族複素環残基、アシル基、アシルオキシ基、アシルオキシカルボニル基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、あるいはスルホアルキル基である。Z1は−COO基、−CO基、−CONR’基、−COCR’2CO基(式中、R’は水素原子、アルキル基、アラルキル基、あるいはアリール基である)、−OCO基あるいは−O(R”O)k基(式中、R”は芳香環もしくは複素芳香環を含んでいても良い炭化水素鎖である。kは0以上の整数を示す)であり、もしくは無くても良い。n1,n2は0、1,2のいずれかを示す。但し、いずれの場合に於いてもR1、R2、R3、R4、Z1、R’、R”の中に少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環が含まれなくてはならない。
【0011】
【化4】

一般式[II]において、R5、R6、R7は同一または異なっても良い水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシアルキル基、あるいはスルホアルキル基であり、R8としては同一または異なっても良い水素原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アラルケニル基、アリール基、芳香族複素環残基、アシル基、アシルオキシ基、アシルオキシカルボニル基、アシルオキシアルキル基、シアノ基、ハロゲン、アルコキシアルキル基、あるいはスルホアルキル基である。Aはアリール基であり、フェニル基の場合にはモノマー側鎖骨格上のフェニル基と縮合してナフタレン環もしくは複素芳香環を形成しても良い。n3,n4は0、1,2のいずれかを示す。但し、いずれの場合に於いてもR5、R6、R7、R8、Aの中に少なくとも一つの芳香環もしくは複素芳香環が含まれなくてはならない。
【0012】上記一般式[I]で示されるアクリルエステル系モノマーもしくはメタクリルエステル系モノマーとしては、モノマーのエステル残基として、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、クロロフェニル基、ベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、p−エチルベンジル基、p−プロピルベンジル基、2−フェニルエチル基、2−(p−メチルフェニル)エチル基、2−(o−メチルフェニル)エチル基、3−フェニルプロピル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、等の芳香族炭化水素を有するもの、2−ピリジノメチル基、4−ピリジノメチル基、イミダゾリルメチル基、4−インドリルメチル基、ピリミジノメチル基、チアゾリルメチル基など、フラン、チオフェン、ピロール、ピラン、チオピラン、チアゾール、イミダゾール、ピリミジン、トリアジン、インドール、キノリン、プリン等の芳香族性複素環基を有するものが挙げられる。また芳香環もしくは複素芳香環を含む上記一般式[II]で示されるビニルもしくはスチレン系ビニル重合可能なモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブトキシスチレン、フェニチレン、ベンジリデン系化合物等が挙げられる。
【0013】本発明に使用されるb)炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するラジカル重合可能なモノマーとしては、アクリルエステル系モノマーであれば、アクリルエステル系モノマーのエステル残基に炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するアルキルオキシ基等が含まれていればよい。またビニルもしくはスチレン系モノマーであれば、例えばスチレンのフェニル基の水素原子の一つ以上が炭素数3以上のアルキル基もしくは連続した炭素数4以上のメチレン骨格を有するアルキルオキシ基等で置換されていればよい。また本発明に使用されるc)1.0≦pKa≦7.5の範囲でイオン解離しうる官能基を持つラジカル重合可能なモノマーとしては、従来公知のものが利用できる。すなわちアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはそのモノエステル体、ビニルスルホン酸等が挙げられる。
【0014】以下に本発明における結着樹脂材の具体例を挙げるが、本発明がこれらに限定されるものではない。
(a)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(共重合組成比(以下k/m/n)=64:16:20)
(b)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=60:20:20)
(c)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=57:18:25)
(d)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=35:50:15)
(e)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=40:45:15)
(f)ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=64:16:20)
(g)ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=60:20:20)
(h)ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=57:18:25)
(i)ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=35:50:15)
(j)ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=40:45:15)
(k)スチレン−ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=46:24:30)/n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=85:15)二種重合物混成体(重量混練比50:50)
(l)スチレン−ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=46:24:30)/n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=85:15)二種重合物混成体(重量混練比60:40)
(m)スチレン−ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=46:24:30)/n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=85:15)二種重合物混成体(重量混練比70:30)
(n)スチレン−ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=46:24:30)/n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=85:15)二種重合物混成体(重量混練比40:60)
(o)スチレン−ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=46:24:30)/n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=85:15)二種重合物混成体(重量混練比30:70)
(p)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=60:25:15)/ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=75:25)二種重合物混成体(重量混練比50:50)
(q)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=60:25:15)/ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=75:25)二種重合物混成体(重量混練比60:40)
(r)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=60:25:15)/ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=75:25)二種重合物混成体(重量混練比70:30)
(s)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=60:25:15)/ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=75:25)二種重合物混成体(重量混練比40:60)
(t)スチレン−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/m/n=60:25:15)/ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(x/y=75:25)二種重合物混成体(重量混練比30:70)
(u)スチレン−ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/l/m/n=25:25:25:25)
(v)スチレン−ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/l/m/n=35:15:25:25)
(w)スチレン−ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/l/m/n=15:35:25:25)
(x)スチレン−ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/l/m/n=25:25:30:20)
(y)スチレン−ベンジルメタクリレート−n−ブチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(k/l/m/n=30:25:25:20)
【0015】これらの共重合体は過酸化物、アゾ化合物を重合開始剤として塊状重合、溶液重合、懸濁重合等の既知の重合方法で容易に合成できる。また重合物混成体は重合反応の完了した反応溶液を室温まで冷却した後、ステンレス容器内で室温に保温しながら1〜2時間撹拌するか、場合によっては重合反応完了直後の溶液を40〜60℃の条件で保温しながら1〜2時間撹拌することにより得られる。
【0016】なお、本文中における「重合物」は化合物に既知の重合反応及びそれを実施する方法により得られる化合物全般を示し、「共重合体」は既知のモノマーを同一反応系内に複数種含有する混合物に対し既知の重合反応及びそれを実施する方法により得られる高分子量化合物(分子量1000以上)を示し、また「重合物」の「混成体」若しくは「重合物混成体」は上記「共重合体」を含有する二種類以上の「重合物」を物理的に混合したものを示し、少なくとも24時間以上放置して系の混合状態が一定であれば均一溶液でなくとも懸濁液、乳濁液等でも構わない。
【0017】本発明に使用される導電性支持体としては、導電性表面を有するプラスティックシートまたは特に溶剤不透過性及び導電性にした紙、アルミニウム板、亜鉛板、または銅−アルミニウム板、銅−ステンレス板、クロム−銅板などのバイメタル板、またはクロム−銅−アルミニウム板、クロム−鉛−鉄板、クロム−銅−ステンレス板等のトライメタル板等の親水性表面を有する導電性支持体が用いられ、その厚さは0.07〜2mmが好ましく特に0.1〜0.5mmが好適である。これらの支持体の中でもアルミニウム板が最も好ましい。本発明に於いて使用されるアルミニウム板はアルミニウムを主成分とする純アルミニウムや微量の異原子を含むアルミニウム合金などの板状体であり、その組成が特定されるものでなく従来公知、公用の素材を適宜使用することが出来る。
【0018】このアルミニウム板は従来公知の方法で砂目立て及び陽極酸化して用いることが出来る。砂目立て処理に先立ってアルミニウム板表面の圧延脂を除去するために界面活性剤またはアルカリ性水溶液による脱脂処理が施され、砂目立て処理が行われる。砂目立て処理方法には機械的に表面を粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法がある。機械的に表面を粗面化する方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等と称せられる公知の方法を用いることが出来る。また電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また特開昭54−63902号公報に開示されている様に両者を組み合わせた方法も利用可能である。このように粗面化されたアルミニウム板は必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理される。
【0019】このように処理されたアルミニウム板は陽極酸化処理される。陽極酸化処理に用いられる電解質としては硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、あるいはそれらの混酸が用いられ、それらの電解質やその濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化処理の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜50分の範囲にあれば好適である。陽極酸化皮膜量は0.1〜10g/m2が好適であるが、より好ましくは1〜6g/m2の範囲である。
【0020】さらに特公昭47−5125号公報に記載されているように、アルミニウム板を陽極酸化処理した後にアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸漬処理したものも好適に使用される。また米国特許第3658622号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。西独公開特許第1621478号公報に記載のポリビニルスルホン酸による処理も適当である。
【0021】本発明に於いて導電性支持体と光導電層の間に、密着性や電子写真平版印刷版の電子写真特性向上のため、必要によりポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸−メタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル安息香酸、ポリ無水マレイン酸及びその部分ハーフエステル体、ポリイタコン酸、ポリビニルフェノール等イオン解離するとアニオン性官能基に変換しうる官能基を側鎖に持つポリマー及び他の水溶性若しくは非水溶性モノマーとのランダムもしくはブロックもしくはグラフト共重合体や、これら高分子電解質のアルカリ金属塩及び/またはアンモニウム、エタノールアミン等のアミノアルコール及びエチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン類との塩もしくは酸塩基部分会合体の他、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂の他、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン、n−アルキルアクリルアミド及びそれらと他の水溶性若しくは非水溶性モノマーとの共重合体、完全鹸化もしくは部分鹸化されたポリビニルアルコールもしくはポリビニルアセタール(アセタール化率:10〜90%)若しくは水酸基に対して化学量論量以下の金属塩を坦持したポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド及びポリエチレンオキシド鎖を主鎖もしくは側鎖に持つ水溶性ポリマー、またはそれらの混合物、アンモニウム、エタノールアミン等のアミンもしくはアミノアルコール及びエチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン等のアミン類及びそれらの塩酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩等の有機アンモニウム塩、イノシットヘキサリン酸エステル等のリン酸エステル及びその塩、リンゴ酸、クエン酸、及び酒石酸等のヒドロキシカルボン酸、及びそれらの塩、あるいはグリシン、アラニン等のモノアミノカルボン酸、セリン、スレオニン、ジヒドロキシエチルグリシン等のオキシアミノ酸、システイン、シスチン等の含硫黄アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノジカルボン酸、リシン等のジアミノモノカルボン酸、p−ヒドロキシフェニルグリシン、フェニルアラニン、アントラニル等酸等の芳香族アミノ酸、トリプトファン、プロリン等の複素環を有するアミノ酸、スルファミン酸、シクロヘキシルスルファミン酸等の脂肪族アミノスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸等の(ポリ)アミノポリ酢酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)等の(ポリ)アミノポリ(メチレンホスホン酸)及びその類似物、及びこれら化合物の酸基の少なくとも一部がアルカリ金属塩或いはアンモニウム塩等の他、カゼイン、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルセルロース等の糖鎖化合物もしくはゼラチン、ペクチンから成る中間層を設けても良い。
【0022】本発明の電子写真平版印刷版は前述の導電性支持体上に常法に従って光導電層を形成する光導電性塗液を塗布して得られる。この光導電性塗液は少なくとも有機光導電性化合物、結着樹脂及び塗工溶媒から構成されている。
【0023】本発明における有機光導電性化合物としては、(a)米国特許第3,112,197号明細書などに記載されているトリアゾール誘導体、(b)米国特許第3,189,447号明細書などに記載されているオキサジアゾール誘導体、(c)特公昭37-16096号公報などに記載されているイミダゾール誘導体、(d)米国特許第3,615,402号、同3,820,989号、同3,542,544号明細書、特公昭45-555号、同51-10983号、特開昭51-93224号、同55-108667号、同55-156953号、同56-36656号公報などに記載のポリアリールアルカン誘導体、(e)米国特許第3,180,729号、同4,278,746号明細書、特開昭55-88064号、同55-88065号、同49-105537号、同55-51086号、同56-80051号、同56-88141号、同57-45545号、同54-112637号、同55-74546号公報などに記載されているピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、(f)米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51-10105号、同46-3712号、同47-28336号、特開昭54-83435号、同54-110836号、同54-119925号公報などに記載されているフェニレンジアミン誘導体、(g)米国特許第3,567,450号、同3,180,703号、同3,240,597号、同3,658,520号、同4,232,103号、同4,175,961号、同4,012,376号明細書、西独国特許(DAS)1,110,518号、特公昭49-35702号、同39-27577号、特開昭55-144250号、同56-119132号、同56-22437号公報などに記載されているアリールアミン誘導体、(h)米国特許第3,526,501号明細書記載のアミノ置換カルコン誘導体、(i)米国特許第3,542,546号明細書などに記載のN,N-ビカルバジル誘導体、(j)米国特許第3,257,203号明細書などに記載のオキサゾール誘導体、(k)特開昭56-46234号公報などに記載のスチリルアントラセン誘導体、(l)特開昭54-110837号公報などに記載されているフルオレノン誘導体、(m)米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54-59143号(米国特許第4,150,987号明細書に対応)、同55-52063号、同55-52064号、同55-46760号、同55-85495号、同57-11350号、同57-148749号、同57-104144号公報などに記載されているヒドラゾン誘導体、(n)米国特許第4,047,948号、同4,047,949号、同4,265,990号、同4,273,846号、同4,299,897号、同4,306,008号明細書などに記載のベンジジン誘導体、(o)特開昭58-190953号、同59-95540号、同59-97148号、同59-195658号、同62-36674号公報などに記載されているスチルベン誘導体、(p)特公昭34-10966号公報記載のポリビニルカルバゾール及びその誘導体、(q)特公昭43-18674号、同43-19192号公報記載のポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリ-2-ビニル-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)-5-フェニルオキサゾール、ポリ-3-ビニル-N-エチルカルバゾール等のビニル重合物、(s)特公昭43-19193号公報記載のポリアセナフチレン、ポリインデン、アセナフチレンとスチレンの共重合体等の重合物、(t)特公昭56-13940号公報などに記載のピレン-ホルムアルデヒド樹脂、ブロムピレン-ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾール-ホルムアルデヒド樹脂等の縮合樹脂、(u)特開昭56-90883号、同56-161550号公報に記載された各種のトリフェニルメタンポリマーなどがある。
【0024】なお本発明に於いて、有機光導電性化合物は、(a)〜(u)にあげられた化合物に限定されず、これまで公知の全ての有機光導電性化合物を用いることができ、また有機光導電性化合物は場合により2種類以上を併用することが可能であるが、本発明に於いてはフタロシアニンが好適に用いられる。具体的にはフタロシアニンとしては、α、β、γ、π、χ、τ、η、X、及びε型無金属フタロシアニンまたは銅、コバルト、鉛、亜鉛、インジウム、ガリウム、ゲルマニウム、バナジウムなどの金属フタロシアニン、或いはチタニルフタロシアニンが好適である。とりわけ、感度及び暗減衰等の電子写真特性から、電子写真平板印刷用光導電性化合物として最も好適なフタロシアニンはχ型無金属フタロシアニンである。
【0025】本発明の光導電層には、電子写真感光体に従来使用されてきた種々の公知の添加剤を含有させることができる。これらの添加剤としては、電子写真感度を改良するための化学増感剤、所定の波長域に感度を持たせるための各種染料及び顔料、皮膜性を改良するための各種の可塑剤、界面活性剤などが含まれる。化学増感剤としては、例えば、p-ベンゾキノン、クロラニル、フルオラニル、ブロマニル、ジニトロベンゼン、アントラキノン、2、5-ジクロルベンゾキノン、ニトロフェノール、無水テトラクロルフタル酸、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノベンゾキノン、ジニトロフルオレノン、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン等の電子吸引性化合物、特開昭58-65439号、同58-102239号、同58-129439号、同62-71965号公報等に記載の化合物等を挙げることができる。
【0026】本発明の光導電層に添加する染料及び顔料の例としては、(a)米国特許第4,436,800号、同4,439,506号明細書、特開昭47−37543号、同58−123541号、同58−192042号、同58−219263号、同59−78356号、同60−179746号、同61−148453号、同61−238063号、特公昭60−5941号、同60−45664号公報等に記載されたモノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ顔料などのアゾ顔料、(b)米国特許第3,397,086号、同4,666,802号明細書、特開昭51−90827号、同52−55643号公報等に記載の無金属あるいは金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、(c)米国特許第3,371,884号明細書、特開昭47−30330号公報等に記載のペリレン系顔料、(d)英国特許第2,237,680号明細書、特開昭47−30331号公報等に記載のインジゴ、チオインジゴ誘導体、(e)英国特許第2,237,679号明細書、特開昭49−30332号公報等に記載のキナクリドン系顔料、(f)英国特許第2,237,678号明細書、特開昭59−184348号、同62−28738号、同47−18544号公報等に記載の多環キノン系顔料、(g)特開昭47−30331号、特開昭47−18543号公報等に記載のビスベンズイミダゾール系顔料、(h)米国特許第4,396,610号、同4,644,082号明細書等に記載のスクアリウム塩系顔料、(i)特開昭第59−53850号、同61−212542号公報等に記載のアズレニウム塩系顔料などである。これらは単独もしくは2種以上を併用して用いることができる。増感色素としては、電子写真感光体に使用される従来公知の増感色素が使用可能である。これらは、「電子写真」12 9,(1973)、「有機合成化学」24(11),1010,(1966)等に詳細に記載されている。例えば、(j)米国特許第3,141,770号、同4,283,475号明細書、特公昭第48−25658号、特開昭62−71965号公報等に記載のピリリウム系染料、(k)Applied Optics Supplement 3 50(1969)、特開昭50−39548号公報等に記載のトリアリールメタン系染料、(l)米国特許第3,597,196号明細書等に記載のシアニン系染料、(m)特開昭60−163047号、同59−164588号、同60−252517号公報等に記載のスチリル系染料などが好適である。
【0027】本発明の光導電層に添加する可塑剤としては、たとえば、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニルフォスフェート、ジイソブチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ラウリン酸ブチル、メチルフタリールエチルグリコレート、ジメチルグリコールフタレートビフェニル、塩化ビフェニル、o−テルフェニル、p−テルフェニルトリフェニルリン酸などが光導電層の可撓性の向上及び塗布面の膜物性の改良の目的のために添加できる。これらの可塑剤は光導電層の静電特性、エッチング性を劣化させない範囲で含有させることができる。
【0028】また、電荷発生剤は電荷発生能のみならず電荷輸送能を持つ場合には、光導電層の構成材料として光導電性塗液に該電荷発生剤を分散して塗布することにより感光体を作製できる。すなわち、電荷輸送剤として機能する有機光導電性化合物の併用を必ずとも必要としなくても良い。また光導電層は必要に応じて単層または複層構成とすることも可能である。
【0029】本発明における、有機光導電性化合物と結合樹脂の混合比は、有機光導電性化合物と結合樹脂との相溶性によって有機光導電性化合物の含有率の上限が決まり、これを上回る量を添加すると有機光導電性化合物の結晶化が起こり好ましくない。有機光導電性化合物の含有量が少ないほど電子写真感度は低下するので、有機光導電性化合物の結晶化が起こらない範囲内でできるだけ多くの有機光導電性化合物を含有させるのが好ましい。有機光導電性化合物の混合比としては、結着樹脂材(B)に対して光導電性化合物(P)がP/B値(重量換算)で1/20以上、より好ましくは1/10以上を混合して使用することが好適である。しかし有機光導電性化合物の含有量が前述の含有率の上限以下であっても、含有率の増加に対する感度向上の割合が鈍くなる、あるいは他の電子写真特性とのバランスが悪化する領域が存在するため、前述のP/B値は1/10〜1/4の範囲が好ましい。またこのとき有機光導電性化合物は、単独であるいは2種以上混合して使用してもよい。
【0030】光導電性塗液の溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、2−メトキシエタノール、2−メトキシエチルアセテート等のグリコールエーテル類、オキソラン、オキサン、ジオキサン等の環状エーテル類、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられるが、本発明に係わる電子写真平版印刷版の光導電層用溶媒(分散媒)として特に好ましいものは、溶媒分子中に窒素及び酸素原子の少なくとも何れかを二原子以上有し、かつ比重(25℃)が0.95以上なる性状を有する溶媒である。この様な溶媒の例としては、2−メトキシエタノール、蟻酸メチル、2−エトキシエチルアセテート、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、アセトアミド、モルホリン、N−メチルホルムミド、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、1,3−ブタンジオール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、乳酸エチル、1−メチル−2−ピロリジノン、1,4−ジオキサン、1,2−プロパンジオール、2−オキソランメタノール、1,3−プロパンジオール、シアノ酢酸エチル、メチルアセトアセテート、エチレングリコールジアセテート、2−ピロリジノン、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、γ−ブチロラクトン、2−フランメタナール等が挙げられる。これらは含有される水分量を排除するために、使用前に蒸留処理あるいはぼう硝やモレキュラシーブスなど有機溶媒用の一般吸水材による処理を行うことが好ましい。
【0031】光導電性塗液は、光導電層を構成する各成分を前述の溶媒に溶解して作製するが、顔料等の溶媒に不溶な成分を用いる時は、ボールミル、ペイントシェィカー、ダイノミル、アトライター等の分散機を用いて平均粒径0.01〜5μm、より好ましくは0.05〜0.2μmに分散して用いる。光導電層に使用する結着樹脂材、その他の添加剤は顔料等の分散時或は分散後に添加することが出来る。
【0032】本発明の電子写真平版印刷版は、常法に従って光導電層を導電性支持体上に塗布して得られる。光導電層の作製に当たっては、光導電層を構成する成分を同一層中に含有させる方法、あるいは二層以上の層に分離して含有させる方法、例えば電荷担体発生物質と電荷担体輸送物質を異なる層に分離して用いる方法等が知られており、何れの方法にても作製することが出来る。光導電層に使用する結着樹脂材、その他の添加剤は顔料等の分散時或は分散後に添加することが出来る。この様にして作製した塗布液を回転塗布、ブレード塗布、ナイフ塗布、リバースロール塗布、ディップ塗布、ロッドバー塗布、スプレー塗布、エクストルージョン塗布の様な公知の方法で支持体上に塗布乾燥して電子写真平版印刷版を得ることが出来る。このような方法により形成される光導電層の塗布膜厚は、薄すぎるとトナー現像に必要な電荷が帯電出来ず、逆に厚すぎると溶出液の劣化を促進するばかりか溶出の際にサイドエッチを誘引して良好な画像が得られないため、0.10〜30μmが、より好ましくは0.50〜10μmが良い。
【0033】本発明においては、光導電層上に必要により、静電特性、トナー現像時の現像特性、あるいは画像特性、印刷特性などを改良する目的で光導電層除去時に、同時に除去することが可能なオーバーコート層を設けることができる。このオーバーコート層は、機械的にマット化されたもの、あるいは、マット剤が含有される樹脂層であってもよい。この場合、マット剤としては二酸化珪素、ガラス粒子、アルミナ、デンプン、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、フェノール樹脂などの重合物の粒子、および米国特許第2701245号、同第2992101号明細書に記されているマット剤が含まれる。これらは、2種以上併用することができる。オーバーコート層に使用される樹脂としては、光導電層を除去する溶出液との組合せにより適宜選択される。具体的には、例えば、アラビアゴム、ニカワ、セルロース類、でん粉類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリアミン、ポリアルデヒド、ポリビニルブチラールなどがあり、またはそれらの混合物でも良い。
【0034】本発明の電子写真平版印刷版は、公知の操作によって製版することが出来る。すなわち暗所で印刷版原版上を一様に帯電し、露光により静電潜像を形成する。露光方法としては、キセノンランプ、タングステンランプ、蛍光灯等を光源として反射画像露光、透明陽画フィルムを通した密着露光や、レーザー光、発光ダイオード等による走査露光が挙げられる。走査露光を行なう場合は、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、アルゴンイオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、エキサイマーレーザー、GaAs/GaAlAs、InGaAsPの様な半導体レーザー、アレキサンドライトレーザー、銅蒸気レーザー等のレーザー光源による走査露光、或は発光ダイオード、液晶シャッタを利用した走査露光(発光ダイオードアレイ、液晶シャッタアレイ等を用いたラインプリンタ型の光源も含む)によって露光することが出来る。
【0035】上記の製版方法により光導電層上に形成された静電潜像は電子写真方式現像剤によって現像する。現像方法としては乾式現像法(カスケード現像、磁気ブラシ現像、パウダークラウド現像)、液体現像法のいずれも使用できる。なかでも液体現像法は微細な画像を形成することができ印刷版を作成するために好適である。正現像によるポジ−ポジ現像や、適当なバイアス電圧の印加による反転現像によるネガ−ポジ現像も可能であるが、本発明の電子写真平版印刷版には反転現像法が好適に用いられる。形成されたトナー現像は公知の定着法、例えば、加熱定着、圧力定着、溶剤定着などにより定着することができる。このように形成したトナー画像をレジストとして作用させ、非画像部の光導電層を溶出液により除去することにより印刷版が作成できる。
【0036】本発明に係わるトナーは、非画像部の光導電層を除去する溶出液に対する耐性を有し、この溶出液からトナー画像部の光導電層の溶出を防ぐ機能を有するものなら乾式現像剤、液体現像剤など電子写真のトナーとして使用されるものであればいずれも使用可能であるが、高解像度の画像を得るためには液体現像剤を使用するのが好ましい。さらには、疎水性でインク受容性のトナー画像を与えるものが望ましい。トナーに含有される樹脂成分としては、例えばメタクリル酸、アクリル酸及びこれらのエステル等から成るアクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとエチレンまたは塩化ビニル等との共重合体、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、スチレンとブタジエン、メタクリル酸エステル等との共重合物、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、及びビスフェノールAのポリカーボナート等のポリエステル樹脂、ポリカプラミドやポリヘキサメチレンアジポアミド等のポリアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体、その他ワックス、蝋等が挙げられるが、それらの子混合物であっても良い。また含有される高分子量化合物の構造及び、共重合体の場合その単量体成分の配列等は特に限定されない。またトナーの定着性や分散性および耐エッチング性に悪影響を及ぼさない範囲内で着色剤、たとえば、カーボンブラック、ニグロシン系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ベンジジンイエロー、アルカリブルー、カーミン6Bなどのような顔料および染料を含有することもできる。さらに、各種の荷電調節剤、その他の添加剤を含有していてもよい。
【0037】非画像部の光導電層を除去する溶出液としては、光導電性絶縁層を除去できるものなら任意の溶剤が使用可能であり、特に限定されるものではないが、好ましくは、アルカリ性溶剤が使用される。ここで言う、アルカリ性溶剤とは、アルカリ性化合物を含有する水溶液もしくは、アルカリ性化合物を含有する有機溶剤もしくは、アルカリ性化合物を含有する水溶液と有機溶剤との混合物である。アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アンモニア、およびモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類等などの有機および無機の任意のアルカリ性の化合物を挙げることが出来る。溶出液の溶媒としては前述のように、水もしくは多くの有機溶剤を使用することが出来るが、臭気、公害性の点から水を主体とした溶出液が好ましく使用される。水を主体とした溶出液には、必要に応じて、各種の有機溶剤を添加することも出来る。好ましい有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の低級アルコールや芳香族アルコールおよびエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、セルソルブ類、およびモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類等を挙げることが出来る。但し、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等のシリケート化合物は用いない。
【0038】本発明の溶出液に用いられるアルコール類としては特開平4−305656号、同5−89665号公報に記載されている一連の化合物が利用できる。例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の脂肪族アルコールや芳香族アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール類等の各種多価アルコール類等を挙げることができる。この中でも特に、ベンジルアルコール、フェネチルアルコールは光導電層への浸透性、溶出性の点から好ましく使用できる。アミノアルコール類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール等を使用することができるが、この中でも特に、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびジエチルアミノエタノールが好適である。溶出液中のアルコール類とアミノアルコール類の比は60:40から2:98の範囲が好ましく、更に好ましくは50:50から5:95の範囲で使用するのが好ましい。アルコール類の比率が大きいとトナーに対する浸透性が強くなり、トナーと光導電層との剥離が発生し、良好な画像が得られず、比率が小さすぎると光導電層の溶出性が低下し、溶出時間が長くなるばかりか、印刷汚れの原因となる。また、両者の溶出液に占める割合は0.5から40重量%、更に1から30重量%の範囲で使用するのが好ましい。
【0039】また溶出液には、溶出液の光導電層表面への湿潤性の向上と、それに伴う溶出能の向上、溶出処理条件の拡大化のため、界面活性剤を含有するのが好ましい。好ましい界面活性剤の例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩類(該アルキル基の炭素数は8〜18、より好ましくは12〜16)、アルキルナフタレンスルホン酸塩類(該アルキル基の炭素数は3〜10)、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ジアルキルスルホこはく酸塩類(該アルキル基の炭素数は2〜18)、ジアルキルアミドスルホン酸塩類(該アルキル基の炭素数は11〜17)等のアニオン系界面活性剤、イミダゾリン誘導体、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等の両性界面活性剤が挙げられる。溶出液には更に特開昭55−25100号公報記載のイオン性化合物、特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオニックポリマ、特開昭56−142528号公報記載の水溶性両性高分子電解質、特開昭58−75152号公報記載の中性塩、特開昭58−190952号公報記載のキレート剤、特開平1−177541号公報記載の液粘度調整剤、特開昭63−226657号公報記載の防腐剤や殺菌剤、米国特許第3250727号、同3545970号、英国特許第1387901号、同1387713号明細書等に記載の消泡剤、及び天然及び合成水溶性ポリマ等の公知の成分を必要に応じ含有させることが出来る。
【0040】本発明の電子写真平板印刷版は上記トナー現像及び非画像部の溶出工程を経た後、特開平10−254187号公報記載の水洗工程及び保護ガム処理工程を経ることにより印刷版が完成する。
【0041】
【実施例】本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の「部」および「%」はそれぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
【0042】実施例1(導電性支持体の作製)JIS1050アルミニウムシートを60℃、10%NaOH水溶液に浸漬し、アルミニウム溶解量が6g/m2になる様にエッチングした。水洗後、30%硝酸水溶液に1分間浸漬して中和し、充分水洗した。その後、ホウ酸を含む2.0%硝酸水溶液中で、電解時間、電圧を変化させて、電解粗面化を行ない、50℃、20%硫酸水溶液中に浸漬して表面を洗浄した後、水洗した。更に、20%硫酸水溶液中で陽極酸化処理を施して、水洗、乾燥することにより所望の導電性支持体を作製した。
【0043】(光導電層塗液の調製及び塗布)光導電層塗液組成を下表に示す。これらの混合液から成る光導電層塗液をペイントシェィカーにて1時間分散させ所望の塗液を作製した。この光導電層塗液を前述の導電性支持体上にワイヤーバーで塗布後、90℃5分間乾燥して電子写真平版印刷版を作製した。この時、光導電層の塗布量(乾燥時)は4.0g/m2とした。
【0044】
光導電層塗液組成 例示重合物(a) 100 重量部 (35% 1−メトキシ−2−プロパノール溶液)
χ型無金属フタロシアニン 4 重量部 1,4−ジオキサン 200 重量部 シクロヘキサノン 100 重量部【0045】(電子写真特性)上記の方法により得られた電子写真平版印刷版を静電複写紙試験装置EPA−8100(川口電気(株)製)を用いて、スタチック方式により+5.0kVでコロナ帯電し、白色光で版面での露光量が2luxになるように露光し、電子写真特性を調べた。この電子写真特性は帯電直後の表面電位(V0 )、暗減衰度(%)、及び露光前の表面電位が光減衰して1/2及び1/5になる露光量(En;n=1/2、1/5)の3つのパラメータを用いて評価した。評価結果を下表1に示す。
【0046】(光導電層の溶出試験)一方、前述の方法により作製された電子写真平板印刷版を、下表に示す溶出液(YS−26j)を用い、溶出時間5〜200秒の範囲で光導電層の溶出性を調べた。目視及び光学顕微鏡観察により導電性支持体上に光導電層の溶出残滓が認められなくなった時間の平均値を溶出時間(秒)とし、これを光導電層の溶解性の指標とした。評価結果を下表1に併せて示す。
【0047】
光導電層溶出液(YS−26j)組成 2−アミノエタノール 210 重量部 ベンジルアルコール 40 重量部 ペレックス−NBL (花王(株)製) 60 重量部 フェリオックス−115 (ライオン(株)製) 10 重量部 蒸留水 1670 重量部【0048】実施例2〜5実施例1の樹脂材に替えて下表1に記載の樹脂材を用いる他は全く同様の操作により電子写真平板印刷版を作製した。実施例1と同様にして電子写真特性及び光導電層の溶解性の評価を実施した。評価結果を下表1に併せて示す。
【0049】
【表1】

【0050】(印刷適性評価)実施例1の方法により作製された電子写真平板印刷版の印刷適性評価を行った。まず実施例1の電子写真平板印刷版を暗所にてコロナ放電を与えて表面電位(V0)が約+230Vとなる様に帯電させた後、原画像を版面に密着露光して潜像を形成させ、直ちに正電荷トナー(三菱製紙(株)製、ODP−TW)で液体反転現像を行ないトナーを熱定着し、版面上に原画像対応のトナー画像を形成した。次に、前述の溶出液YS−26j及び比較用溶出液(三菱製紙(株)製、ODP−DF)を用いて光導電層を溶出し、水道水で水洗し、二種の印刷版を作製した。保護ガム処理工程を経た後、オフセット印刷機(リョウビ(株)製、3200MCD)に装着し、15万枚まで印刷を行った。光導電層の非画像部の溶出に比較用溶出液を用いた場合は15万枚付近まで印刷は可能であったが、非画像部に対応する版面全体に薄く地汚れが発生し、それに対応して印刷物にも非画像部汚れが発生した。一方、溶出液YS−26jを用いた印刷版は15万枚付近まで非画像部汚れのない印刷画質に優れた良好な印刷物が得られた。
【0051】比較例1〜5実施例1の樹脂材に替えて下記の結着樹脂(H−1)〜(H−5)を用いる他は全く同様の操作により電子写真平板印刷版を作製した。実施例1と同様にして電子写真特性及び光導電層の溶解性の評価を実施した。評価結果を下表2に示す。
(H−1)ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(共重合組成比(以下m/n)=80:20)
(H−2)ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(m/n=75:25)
(H−3)スチレン−メタクリル酸共重合体(m/n=80:20)
(H−4)ポリスチレン/ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体(m/n=75:25)二種重合物混成体(重量混練比10:90)
(H−5)ベンジルメタクリレート−n−ヘキシルメタクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(k/m/n=20:40:40)
【0052】
【表2】

【0053】
【発明の効果】電子写真平版印刷版において、導電性支持体上に形成される光導電層を構成する樹脂材としてa)芳香環もしくは複素芳香環を含むラジカル重合可能なモノマー、b)炭素数3以上の直鎖状アルキル基を有し、且つ環状構造を有しないラジカル重合可能なモノマー、c)1.0≦pKa≦7.5の範囲でイオン解離しうる官能基を持つラジカル重合可能なモノマー、のa)、b)、c)の各群から選ばれる各々少なくとも一つのモノマーをラジカル重合して成る重合物混成体を用いる事により、pHが12以下で且つシリケートを有しないアルカリ性溶出液に対して十分な溶出性を有し、且つ露光感度、帯電性等の電子写真特性を満足させ、特に新聞印刷分野に於いて要求される高耐刷性を具備するとともに、レーザー光による走査露光による画像形成に適した高感度の電子写真平版印刷版を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
【出願日】 平成12年3月17日(2000.3.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−265020(P2001−265020A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−76813(P2000−76813)