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【発明の名称】 平版印刷版用基板及び平版印刷版
【発明者】 【氏名】堀田 吉則

【要約】 【課題】アルミニウム支持体への熱の拡散が抑制でき、より低エネルギーのレーザー照射によって画像形成が可能な(感熱性)平版印刷版用基板及び(感熱性)平版印刷版を提供する。

【解決手段】支持体1上に、金属酸化物と有機ポリマーとを含有しかつ該金属酸化物と有機ポリマーの含有量の比が傾斜的に連続に変化する層3を有することを特徴とする平版印刷版用基板。更に前記平版印刷版用基板上に、該基板の最表面とインキに対する親和性が異なる表面性を保持する画像形成層2を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に、金属酸化物と有機ポリマーとを含有しかつ該金属酸化物と有機ポリマーの含有量の比が傾斜的に連続に変化する層を有することを特徴とする平版印刷版用基板。
【請求項2】 前記請求項1〜6のいずれかに記載の平版印刷版用基板上に、該基板の最表面とインキに対する親和性が異なる表面性を保持する画像形成層を有することを特徴とする平版印刷版。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は平版印刷版、特に加熱により画像形成を行う感熱性平版印刷版及びその支持体に関する。具体的にはより低エネルギーあるいは短時間のレーザー照射により画像形成が可能な感熱性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の平版印刷版用支持体としてはアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。アルミニウムは電気化学的に陽極酸化処理を行うことが可能でその表面にポーラスなAl23の層を形成することが可能である。この層は非常に高い親水性を有し、印刷版の非画像部として非常に高い機能を有する。このような親水性の層が有機ポリマーフィルム上に形成できれば軽量化を図ることができ有用と考えられるが親水性層を有機ポリマー層状に設けると界面ができることが避けられず、実際の印刷の際にはその界面での密着が不足して耐刷性を要求する印刷には用いることができなかった。これに比較するとアルミニウムは電気化学的粗面化により形成した形状により密着性を付与し、陽極酸化皮膜が親水性を付与するという非常に高機能な材料であることが判る。
【0003】しかしながら感熱性平版印刷版においてはアルミニウム自身の熱伝導性の高さが問題となった。感熱性平版印刷版はその感熱層中に近赤外のレーザー光を吸収し熱に変換する光熱変換材料を含有し、レーザー照射部分が加熱されることによってアルカリに対する溶解性を高めたり、あるいは熱硬化させて画像を形成し、現像処理することによって非画像部部分を溶解除去することにより印刷画像を得るものである。このような系において感度とはレーザー照射エネルギーの絶対値というよりはいかに光エネルギーを効率よく熱に変換し、またその熱によりいかに効率よく感熱層の温度を上げるかという二つの点が問題となる。アルミニウム支持体の問題は感熱層で発生した熱が非常に拡散しやすい点で後者に関係する。
【0004】熱の拡散が効率を下げる要因との観点から断熱層の形成や支持体そのものの断熱性を規定して感度を向上させる方法も提案されている。特開平11−65105では陽極酸化皮膜上に皮膜として0.001〜10mg/m2のポリビニルホスホン酸からなる断熱層が提案されている。但し提案されている断熱層が本当に効果を上げるためには一定以上の厚みが必要となりその層と感熱層又は支持体の密着や膜の残存など新しい問題をはらんでいる。
【0005】また特開平10−39496では支持体の熱伝導度を規定し、より低い伝導性のポリエチレンテレフタレートや更に伝導性の低い発泡ポリエチレンテレフタレートなどを使う方法を提案している。ポリエチレンテレフタレートを支持体として用いた感熱性平版印刷版は既に市販されている。さらにアルミニウム支持体上に断熱性支持体層としてポリエチレンテレフタレートを貼り合わせた複合支持体も提案されやはり市販されている。しかしながらこの場合には従来のアルミニウム支持体を使ったPS版印刷工程で培われてきた密着技術や親水性表面、水の制御などによる印刷品質の向上などの技術が使えなくなるというのが、実情である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、前記従来における諸問題を解決することであり、すなわち、アルミニウム支持体への熱の拡散が抑制でき、より低エネルギーのレーザー照射によって画像形成が可能な(感熱性)平版印刷版用基板及び(感熱性)平版印刷版を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的を達成するために、熱の拡散をいかに効率よく抑制しでき、親水性表面を有する支持体を作るかが問題と考え、支持体を含む基板の構成について検討した結果、支持体表面上に、金属酸化物と有機ポリマーが傾斜的に連続に組成変化して含有されるオーバーコート層(以下、OC層または傾斜材料層ともいう)を設けることにより、熱の移動を抑制する事ができ、低いレーザー照射エネルギーで画像を形成できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)支持体上に、金属酸化物と有機ポリマーとを含有しかつ該金属酸化物と有機ポリマーの含有量の比が傾斜的に連続に変化する層を設けることを特徴とする平版印刷版用基板。
(2)前記支持体表面が予め粗面化されていることを特徴とする前記(1)に記載の平版印刷版用基板。
(3)前記金属酸化物がAl23又はSiO2であることを特徴とする前記(1)に記載の平版印刷版用基板。
(4)前記支持体がアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする前記(1)に記載の平版印刷版用基板。
(5)前記支持体が有機ポリマーを主成分とするフィルムであることを特徴とする前記(1)に記載の平版印刷版用基板。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の平版印刷版用基板上に、該基板の最表面とインキに対する親和性が異なる表面性を保持する画像形成層を設けてなる平版印刷版。
(7)前記画像形成層が光を吸収し熱に変える材料を含有することを特徴とする前記(1)に記載の平版印刷版。
【0008】本発明の平版印刷版用基板及び平版印刷版の特徴及びそれに基づく利点は次の通りである。従来の層構成を有する平版印刷版にレーザーにより画像描画を行うと照射された部分の感熱層(画像形成層)は光熱変換により熱を発生する。この熱により感熱層自体が加熱されると同時に支持体界面から拡散していく。ポリエチレンテレフタレートを用いた支持体の場合その低い熱伝導率のために支持体への熱の拡散は抑制され感熱層自体の到達温度は高くなる。しかしながらポリエチレンテレフタレートは親インク性であり画像層は親水性層であることが必要となる。印刷中にこの親水性層と支持体界面には湿し水が浸透しやすくなり結果として密着力が低下し耐刷力の低下を招く。
【0009】これに対して本発明の層構成を有する平版印刷版においては、支持体がポリエチレンテレフタレートの場合、ポリエチレンテレフタレート上に最表面が金属酸化物からなり界面層がポリエチレンテレフタレートからなり層の厚さとともに組成が傾斜的に変化する前記オーバーコート層(傾斜材料層)を設けることによりこの問題を解決できる。表層が親水性であるために従来PS版で培われた画像形成層の知見を生かせば高い密着力のある界面制御が可能となる。拡散していこうとする熱は傾斜的にポリエチレンテレフタレートになる層中でその拡散が抑制される。
【0010】ポリエチレンテレフタレートなどの高分子材料表面を親水化する技術はグラフト重合法、紫外線照射法、粗面化法、プラズマ処理法など多数報告されているがいずれもその経時安定性が不足し、印刷のような過酷な状況で満足できる親水性表面を作るのは困難と考えられる。またこのような高分子表面において希望する粗面を得る技術は更に手法、機能ともに困難である。そのなかではスパッタエッチングが有効な方法の一つである。
【0011】同じ感熱性平版印刷版においてアルミニウム支持体を用いた場合にはポリエチレンテレフタレートに比して2桁高い熱伝導率のために熱の拡散は顕著である。同じ感熱層を設けた場合でもポリエチレンテレフタレート支持体では画像が形成できてもアルミニウム支持体では画像ができず、より高いエネルギーの光を照射する必要がある。これに対しても本発明の傾斜材料層を設けた平版印刷版用基板を用いることにより熱拡散が抑制できる。すなわちアルミニウム支持体上に最表層から金属酸化物(Al23)/有機ポリマー/金属酸化物(Al23)の順に組成が傾斜的に変化する傾斜材料層を設ければ中間の有機ポリマー層が断熱層として機能するために熱の拡散が抑制できより低エネルギーのレーザー照射によって画像形成が可能となる。更に支持体が予め粗面化されておりその粗面にできるだけ忠実にこの傾斜材料層が設けられていれば上層に設ける感熱層(画像形成層)との密着も確保でき、従来の印刷技術をそのまま適用することができる。
【0012】このような傾斜材料層の形状制御は従来の印刷版の感光層を形成してきた技術の延長で実施可能である。このような傾斜材料層を有するために断熱効果があがり、その結果としてより低エネルギーのレーザー照射で画像形成が可能となる。また傾斜材料のために界面がなく層間にWBL(Weak BoundaryLayer)を形成することもない。つまりこの層が密着力を低下させることはなく、耐刷力を劣化させることもない。上記のように、支持体上に、金属酸化物と有機ポリマーが傾斜的に連続に組成変化する層を有する本発明のは従来の平版印刷版支持体の性能を維持しつつ、感熱性平版印刷版の感度を向上することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下本発明の感熱性平版印刷版について詳述する。はじめに本発明の平版印刷版の特徴である平版印刷版用基板について説明する。平版印刷版用基板は、前記のように、支持体と、該支持体上にオーバーコート層としてその層内において金属酸化物と有機ポリマーが傾斜的に連続に組成変化する傾斜材料層とを有する構成である。支持体が有機ポリマー主体の高分子である場合には、最表面がAl23あるいはSiO2のような親水性の高い金属酸化物とし、支持体との界面には支持体と同じか親和性の高い有機ポリマー成分となるように傾斜材料層を設ける。支持体がアルミニウム又はアルミニウム合金の場合には最表層から金属酸化物(Al23)/有機ポリマー/金属酸化物(Al23)の順に組成が変化する傾斜材料層を設けるのがのぞましい。もちろん前述の有機ポリマー支持体の場合と同じ様な構成の傾斜材料層を設けてもかまわない。
【0014】本発明の実施例においては繰り返し塗布により組成比を変えた塗布液を同時に多層塗布し乾燥してこのような傾斜材料層を作製したが、その製造方法はこの方法に限定されるものではない。Lewisらが国際公開WO99/48689号公報で開示しているような、有機層を塗布した後その有機層を加熱し軟化させてその表面に無機酸化物フィラー(粉末)を埋め込む工程を繰り返すことにより、傾斜的に無機酸化物が分布するような層を設けてもかまわない。複数回の塗布を必要としないものとして日本セラミック協会第12回秋季シンポジウムで渡部らが報告した無機有機傾斜薄膜の作成に記載の方法を用いてもよい。また秋山らが特開平6−230563号公報で開示しているように金属アルコキシドを出発原料としてゾルゲル法を用いて無機ゲルを作成し、有機樹脂成分を含む液によって希釈した液を、塗布することにより有機と無機がハイブリッドされたような層を形成する方法を用いてもかまわない。
【0015】前記のように、本発明の平版印刷版用基板は支持体表面が予め粗面化されていることが好ましく、支持体表面の中心線平均粗さRa(S)とオーバーコート層表面の平均粗さRa(T)の比がRa(T)/Ra(S)>0.6であることが好ましい。より好ましくはRa(T)/Ra(S)が0.6〜2の範囲である。Ra(T)/Ra(S)が0.6以下であるということは傾斜機能層表面が支持体の表面形状をトレースしていないことを示す。このような場合、画像形成層との密着性あるいは非画像部の保水性のために設けられた粗面の特性が活かされないばかりか、例えば、密着特性を低下させることになり、結果として耐刷性能が劣化する。このため本発明の傾斜機能層を設けた場合のRa(T)/Ra(S)は0.6より大きいことが望ましい。また、Ra(T)/Ra(S)が2以上では、傾斜機能層の表面凹凸が大きすぎ、印刷時の汚れが劣化する可能性がある。
【0016】次に本発明の平版印刷版用基板上に形成される画像形成層(感光層、感熱層)について説明する。画像形成層は従来公知の組成物を適宜用いることができる。代表的な具体例としてポジ型の感熱性組成物としては、ノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂を用いることができる。例えば、特開平7−285275号公報において、ノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂に、光を吸収し熱を発生する物質と、種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物類等を添加した画像形成材料が提案されている。これらの画像形成材料では、画像部ではオニウム塩、キノンジアジド化合物類等が、アルカリ水溶液可溶性樹脂の溶解阻止剤として働き、非画像部では熱により分解して溶解阻止能を発現しなくなり、現像により除去され得るようになって、画像を形成する。また、特公昭46−27919号公報等のように、感光性の化合物を使用せず、ノボラック樹脂等だけで画像形成を行う例も提案されている。
【0017】本発明の平版印刷版においては、必要に応じて画像形成層の上に保護層を設けてもよい。保護層成分としては、ポリビニルアルコールや通常の感光性画像形成材料に用いられるマット材料等が挙げられる。その他光重合性感光層などを用いても問題ない。下記の表1〜表4には実際に評価して問題の無かった画像形成層の処方を示した。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】次に、本発明において用いられる支持体としては従来PS版用支持体として用いられているアルミニウム及びアルミニウム合金板を用いることができる。アルミニウムを用いた基板は画像形成装置や印刷機にセットする際にそれらの円筒面上に忠実にフィットするたわみ性を有し、且つ取扱時に折れや曲げが入りにくい程度の剛性を有している。また寸法安定性がよく、比較的安価である。このアルミニウム板は、純アルミニウム板およびアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10重量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0023】アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法および化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸または硝酸電解液中で交流または直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0024】この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理および中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不十分であったり、画像形成材料の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる傷汚れが生じ易くなる。
【0025】陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、第3,280,734号および第3,902,734号に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるかまたは電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0026】上記のようにして作製された平版印刷版は、通常、像露光、現像処理を施される。特に本発明においてその特有の熱拡散抑制効果が影響する感熱性平版印刷版において、像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域において、700nm以上の発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0027】本発明の画像形成材料の現像液および補充液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンモノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0028】これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由はケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0029】更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量のPS版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。現像液および補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高め目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤があげられる。更に現像液および補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0030】上記現像液および補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の画像形成材料を印刷版として使用する場合の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0031】近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0032】本発明の画像形成材料を感光性平版印刷版として使用する場合、最初に画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができる。
【0033】
【実施例】以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
〔支持体の作製〕
(支持体A)厚み0.24mmのアルミニウム板(材質1050)の表面をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液を用いて砂目立てした後、よく水で洗浄した。10重量%水酸化ナトリウム溶液に70℃で60秒間浸漬してエッチングした後流水で水洗後、20重量%HNO3水溶液で中和洗浄し、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1重量%硝酸水溶液中で200C/dm2の陽極時電気量で電解粗面化を行った。その表面粗さを測定したところ0.55μm(Ra表示)であった。引き続いて30重量%H2SO4水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、20重量%H2SO4水溶液中で電流密度14A/dm2、陽極酸化皮膜量が2.5g/m2相当になるよう陽極酸化し水洗して支持体Aを作製した。この支持体の表面粗さはRa=0.52μmであった。
【0034】(支持体B)市販のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み0.5mm)を用意し支持体Bとした。
【0035】(支持体C)厚み0.24mmのアルミニウム板(材質1050)の表面をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに20%硝酸に20秒浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。次にこの板を7%硫酸を電解液として電流密度15A/dm2で3g/m2の直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗し、乾燥して支持体Cを作製した。
【0036】〔金属酸化物と有機ポリマーが傾斜的に連続に組成変化する傾斜材料層の作製方法(1)〕下記有機ポリマー成分中のフェノール/p−クレゾール−アルデヒド樹脂に対して重量比で下記になるように無機粒子成分を添加し、混合撹拌してP1〜P5の塗布液を作成した。このように作成した塗布液P1を最初に支持体表面にロールコーターを用いて塗布した後、100℃、60sec乾燥させ、続いてP2を同様に塗布し、乾燥する。という工程をP5まで繰り返し5回行い、傾斜材料層を形成した。その後、140℃、60sec乾燥させて各層間の界面を完全に消滅させ、本発明例の傾斜材料層(A)とした。
【0037】
(有機ポリマー成分)
重量平均分子量5000のフェノール/p−クレゾール・アルデヒド樹脂 (フェノール/p−クレゾールモル比:5/5、未反応のクレゾールを 0.7%含有) 下記表5参照 メガファックF−177(大日本インキ化学工業(株)製、 フッ素系界面活性剤) 0.01g メチルエチルケトン 30g メタノール 1g【0038】(無機粒子成分)Nanotek粒子 SiO2(シーアイ化成(株)製)のメタノール分散液。
(平均粒子系(BET法):12nmの球形粒子、固形分濃度20%)
下記表5参照【0039】
【表5】

【0040】上記と同一の塗布液を用い塗布する順を支持体に近い順からP5からP1まで5回塗布し、その上層に更にP2からP5をこの順に4回塗布することにより得られる傾斜層をその後、140℃、60sec乾燥させて各層間の界面を完全に消滅させ、本発明例の傾斜材料層(B)とした。
【0041】〔金属酸化物と有機ポリマーが傾斜的に連続に組成変化する傾斜材料層の作製方法(2)〕下記のA液、B液を、下記表6に示すように有機ポリマー成分、無機粒子成分の組成比を変えた塗布液とした。調液後すぐ1,2,3…の順に繰り返し塗布した。塗布はバーコーターを用いて行い、各層を塗布した後100℃で30sec乾燥させた後、次の層を塗布するという方法で5回塗布して傾斜機能層(C)を作製した。
【0042】(A液)ベンジルメタクリレートとシランカップリング剤を共重合させたもの【0043】
【化1】

【0044】(B液)メタノールに分散したSiO2粒子(Nanotek粒子、シーアイ化成(株)製)に硝酸(1N)を0.1%の割合で添加した溶液【0045】
【表6】

【0046】得られた膜厚を調べたところ0.8μmであった。表面の親水性の目安として空中接触角を測定したところ46°であり、従来印刷版に比較して親水性が不足することが予想された。そこで表面をKHCO3を用いてアルカリ洗浄した。アルカリ洗浄後の接触角は0°となり従来印刷版表面同等の親水性を示した。
【0047】〔感熱性画像形成層の作成〕
(共重合体1)撹拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三ツ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を撹拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴をとり去り、室温下で30分間混合物を撹拌した。
【0048】この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間撹拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を撹拌しながら投入し、30分間得られた混合物を撹拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。次に攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた100ml三ツ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g(0.0210モル)、メタクリル酸エチル2.05g(0.0180モル)、アクリロニトリル1.11g(0.021モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を撹拌した。この混合物に「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を撹拌した。この反応混合物にさらにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g、メタクリル酸エチル2.05g、アクリロニトリル1.11g、N,N−ジメチルアセトアミド20g及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後さらに65℃で2時間得られた混合物を撹拌した。反応終了後メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を撹拌しながら投入し、30分混合物を撹拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりこの共重合体1の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ53,000であった。
【0049】
(感熱性画像形成層塗布液)
共重合体1(上記記載の物) 0.75g シアニン染料A 0.04g p−トルエンスルホン酸 0.002g テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g ビクトリアピュアブルー(BOHの対アニオンを 1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料) 0.015g フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、 大日本インキ化学工業(株)製) 0.02g γ−ブチルラクトン 8g メチルエチルケトン 7g 1−メトキシ−2−プロパノール 7g【0050】〔実施例1〕上記で得られた支持体A、B、Cに、傾斜材料層(A)及び(C)を形成した後、上記の感熱性層塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥して、画像形成層を形成し、感熱性平版印刷版を得た。
【0051】〔比較例1〕上記で得られた支持体A、B、Cに、傾斜材料層を形成せずに、上記の感熱性画像形成層塗布液のみを塗布し、100℃で2分間乾燥して、画像形成層を形成し、感熱性平版印刷版を得た。
【0052】〔実施例2〕上記で得られた支持体Aに、傾斜材料層(B)を形成した後、上記の感熱性画像形成層塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥して、画像形成層を形成し、感熱性平版印刷版を得た。
【0053】〔実施例3、比較例2〕上記で得られた支持体Aに傾斜材料層(A)を塗布液の固形分比率を変えて形成し、下記表7に示す膜厚の異なる傾斜材料層を得た。断面観察から膜厚を見積もり、傾斜材料層表面の表面粗さを測定した。傾斜材料層表面の表面粗さおよび支持体表面の中心線平均粗さRa(S)と傾斜材料層表面の平均粗さRa(T)の比を下記表7に示す(実施例3は実質的に実施例1基板に同じ)。
【0054】
【表7】

【0055】〔平版印刷版の性能評価〕上記のようにして作製した実施例1、2、3及び比較例1、2の感熱性平版印刷版について、下記の基準により性能評価を行った。評価結果を表8に示す。
【0056】(感度及び現像ラチチュード)得られた平版印刷版を、出力500mW、波長830nm、ビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザを用いて主走査速度5m/秒にて露光した後、富士写真フイルム(株)製現像液、DP−4、リンス液FR−3(1:7)を仕込んだ自動現像機(富士写真フイルム(株)製:「PSプロセッサー900VR」)を用いて現像した。その際、DP−4は1:8で希釈したものを使用し、その際得られた非画像部の線幅を測定し、その線幅を感度の指標とした。
【0057】(耐刷性)DP−4(1:8)を用いて現像した平版印刷版を用いて、ハイデルベルク社製のハイデルKOR−D機で上質紙に印刷した。5000枚印刷毎にクリーナー液(富士写真フイルム(株)製:「プレートクリーナーCL2」)で版面を拭きながら印刷した。ここで、最終印刷枚数は、平版印刷版の感光層が膜減りを起こし部分的にインキがつかなくなる、いわゆる版飛びを起こすまでの枚数として評価した。
【0058】(水上がり)印刷機上で湿し水を供給した際に版面での水量の見やすさを感応評価した。
【0059】
【表8】

【0060】表8から明らかなように、実施例1、2の基板の支持体がアルミニウムのA、Cにおいては線幅は比較例1のAよりも広くなっておりプレートとしての感度向上を示した。実施例2において基板の支持体と傾斜材料層および基板と画像形成層との密着が更に向上し耐刷に寄与していることが判る。実施例3と比較例2から表面の形状が粗面化された支持体の形状を反映しなくなると密着が低下し、耐刷性が劣化することが判る。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の平版印刷版用基板は、支持体上に、金属酸化物と有機ポリマーが傾斜的に連続に組成変化する層を有し、この層が断熱層として働くことにより熱の拡散を抑制し、光熱変換により発生した熱が効率的に画像形成に利用される。これにより必要なレーザーエネルギーが小さくて済み、書き込み時間の短縮が可能となる。同時に低出力の安価なレーザーが使えるようになりシステムのコストを低減できる。また表面は親水性表面であり、粗面化した支持体と組み合わせることにより従来の技術を生かしつつ高感度な平版印刷版を提供することができるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成12年3月15日(2000.3.15)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平 (外4名)
【公開番号】 特開2001−264993(P2001−264993A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−72358(P2000−72358)