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【発明の名称】 有機酸銀塩の製造方法及びそれを用いた熱現像感光材料
【発明者】 【氏名】久野 恒一

【氏名】川西 直之

【要約】 【課題】熱現像感光材料に用いた際にカブリが低く、高感度で、かつ高い黒化濃度を得ることができる有機酸銀塩の製造方法を提供する。

【解決手段】非感光性有機酸銀粒子の調製方法であって、(1)水、又は有機溶剤と水との混合溶液中に銀イオンを含む溶液、及び(2)水、有機溶剤と水との混合溶液、又は有機溶剤中に有機酸のアルカリ金属塩を含む溶液又は懸濁液を反応させて有機酸銀塩を形成する方法において、該有機酸銀塩が全有機酸量に対して5mol%〜20mol%のアルカリ金属塩を含有し、限外濾過による副生成塩の除去を行うことを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 非感光性有機酸銀粒子の調製方法であって、(1)水、又は有機溶剤と水との混合溶液中に銀イオンを含む溶液、及び(2)水、有機溶剤と水との混合溶液、又は有機溶剤中に有機酸のアルカリ金属塩を含む溶液又は懸濁液を反応させて有機酸銀塩を形成する方法において、該有機酸銀塩が全有機酸量に対して5mol%〜20mol%のアルカリ金属塩を含有し、限外濾過による副生成塩の除去を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】 非イオン性であり分子量が限外濾過に使用する膜の分画分子量の5〜50倍以上を有する高分子分散剤を添加する請求項1に記載の方法。
【請求項3】 非イオン性高分子分散剤を添加するに先立って限外濾過操作を行い、非イオン性高分子分散剤を添加する際の電気電導度が2,000μS/cm未満である請求項2に記載の方法。
【請求項4】 非イオン性高分子分散剤添加後に2〜10倍の定容希釈を行う請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】 限外濾過中に導入する非イオン性高分子分散剤の濃度が有機酸銀固形分の0.1〜30質量%である請求項2ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】 限外濾過中に導入する非イオン性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる1又は2以上の非イオン性高分子分散剤である請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】 非イオン性高分子分散剤とともに銀イオンを含む溶液を添加し、限外濾過する工程を含む請求項3ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】 支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、有機酸銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含む熱現像感光材料の製造方法であって、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法により製造された有機酸銀塩を用いることを特徴とする方法。
【請求項9】 感光性ハロゲン化銀及び有機酸銀塩を含有する画像形成層のバインダーが25℃、相対湿度60%での平衡含水率が2質量%以下のポリマーであり、かつ該感光性層の溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布する工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】 請求項8又は9に記載の方法により製造された熱現像感光材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は有機酸銀の製造方法及びそれを用いた熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッター又はレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度及び鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することができる医療診断用及び写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら光感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】一般画像形成材料の分野でも同様の要求はあるが、医療用画像は微細な描写が要求されるため鮮鋭性、粒状性に優れる高画質が必要であるうえ、診断のし易さの観点から冷黒調の画像が好まれる特徴がある。現在、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像の出力システムとしては満足できるものがない。
【0004】一方、有機酸銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書及びD.クロスタボーア(Klosterboer)著「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、J.スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第9章、第279頁、1989年)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、触媒活性量の光触媒(例えばハロゲン化銀など)、還元剤、還元可能な銀塩(例えば有機酸銀塩など)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している。熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は露光領域に形成される。この方法は、米国特許2910377号明細書、特公昭43‐4924号明細書をはじめとする多くの文献に開示されている。これら有機酸銀塩を利用した熱画像形成システムは、医療用画像として満足される画質と色調を達成し得る。
【0005】このようなシステムに使用される銀源は一般的に有機酸の銀塩であり、種々の製造法が知られている。例えば、特開昭49‐93310号公報、特開昭49‐94619号公報、及び特開昭53‐68702号公報のような水と水難溶性溶媒の共存液中にて有機酸銀塩を調製する方法、特開昭53‐31611号公報、特開昭54‐4117号公報、及び特開昭54‐46709号公報のような水溶液中にて有機酸銀塩を調製する方法、特開昭57‐186745号公報、特開昭47‐9432号公報及び米国特許第3,700,458号明細書のような有機溶媒中で有機酸銀塩を調製する方法等がある。基本的には、有機酸を水中でその融点以上に加熱し溶融させ、激しく攪拌しながら水酸化ナトリウムもしくはアルカリ金属塩を加え、その後、アルカリセッケンを銀セッケンに換えるため、銀イオンを含む溶液を加えることにより調製する。
【0006】有機酸銀塩を含む塗布液で実用に耐える均一分散物を得るためには、溶媒中で有機酸銀塩を凝集なく微細に分散された状態にしておく必要がある。このため、有機酸銀塩を微粒子分散する方法の開発が必要である。通常は、例えばD.クロスターボア(Klosterboer)による記載(イメージング・プロセシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版,スタージ(Sturge),V.ウォールワーズ(Walworth),A.シェップ(Shepp)編集、第9章、第279頁、1989年)の様に、疎水的である有機酸銀分散物粒子を形成した後に濾過分離し、固形物として取り出してから、分散剤を混合して再分散する方法が取られる。
【0007】有機酸銀塩を微粒子分散する方法としては、分散助剤の存在下で公知の微細化手段(例えば、高速ミキサー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、バンバリーミキサー、ホモミキサー、ニーダー、ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、コロイドミル、ジェットミル、ローラーミル、トロンミル、高速ストーンミルなど)を用い、機械的に分散する方法が知られているが、これらの方法では、凝集粒子が多く、結果として塗布面質の劣悪な塗布液しか得られない。また、もともと水難溶性塩として晶析した有機酸銀の一次粒子を無差別に粉砕してしまう確率が高いため、結晶へき開面で銀核を形成してカブリ増大の原因ともなる。
【0008】そこで、有機酸銀を一度固形分として取り出して微分散するのではなく、アルカリ金属塩溶液と銀イオンとを含む溶液の反応時に得られた一次粒子をそのまま活用する方法がいくつか提案されている。例えば特開平8‐234358号公報においては、有機酸のアルカリ塩の微粒子が分散した水系分散液中に硝酸銀を添加して得られた有機酸銀分散物を限外濾過によって脱塩する方法が開示されている。さらにこの方法によれば、ポリビニールアルコールやゼラチンなどの水溶性保護コロイドを予め含有させてから限外濾過操作を行うことによって分散安定性を増大させる手段も含まれる。しかしながら、この方法によって得られる有機酸銀粒子の形状は針状に限定されるばかりでなく、粒子サイズを制御することも困難であるために、熱現像感光材料に望まれる低カブリで黒化濃度が高く、ヘイズの低い性能を安定的に得るには至っていない。
【0009】また、特開平9‐127643号公報には、アルカリ金属塩溶液と硝酸銀溶液の同時計量添加により得られた脂肪酸銀分散物を透析や限外濾過を用いて直接脱塩する方法が開示されている。この方法は、少なくとも有機酸銀塩の晶析時に得られた一次粒子を損なわずにそのまま感光層に導入することができるが、高塩濃度雰囲気下での粒子の凝集や分散液を濃縮する上での高粘化の問題などが解決されておらず、この点、実用的な均一分散液を得るための手段には至らない。
【0010】さらに特開平9‐127643号公報においては、特開平8‐234358号公報と同様に分散剤を併用する方法が開示されているが、好ましい分散剤の種類への言及はなく、有機酸銀粒子が生成する際の高塩濃度かつ、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒共存下で粒子形状や粒子サイズが制御され、分散安定性に優れる方法ではない。このように、単分散で、かつカブリが低い熱現像感光材料を製造できる有機酸銀塩を得るための安定した製造方法は未だ見い出されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題点を解決した有機酸銀塩の製造方法を提供することを課題としている。より具体的には、本発明は、熱現像感光材料に用いた際にカブリが低く、高感度で、かつ高い黒化濃度を得ることができる有機酸銀塩の製造方法を提供することを課題としている。また、本発明は、上記の特徴を有する熱現像感光材料を提供することを課題としており、かつヘイズが低く、熱現像処理後の画像劣化の少ない熱現像感光材料を提供することも課題としている。さらには、現像時に良好な銀色調と写真性を有し、露光及び現像前後での安定性に優れた熱現像感光材料を提供することも本発明の課題である。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記の手段により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、非感光性有機酸銀粒子の調製方法であって、(1)水、又は有機溶剤と水との混合溶液中に銀イオンを含む溶液、及び(2)水、有機溶剤と水との混合溶液、又は有機溶剤中に有機酸のアルカリ金属塩を含む溶液又は懸濁液を反応させて有機酸銀塩を形成する方法において、該有機酸銀塩が全有機酸量に対して5mol%〜20mol%のアルカリ金属塩を含有し、限外濾過による副生成塩の除去を行うことを特徴とする方法を提供するものである。
【0013】上記発明の好ましい態様によれば、非イオン性であり分子量が限外濾過に使用する膜の分画分子量の5〜50倍以上を有する高分子分散剤を添加する上記の方法、及び非イオン性高分子分散剤を添加するに先立って限外濾過操作を行い、非イオン性高分子分散剤を添加する際の電気電導度が2,000μS/cm未満である上記の方法が提供される。
【0014】さらに好ましい態様によれば、非イオン性高分子分散剤添加後に2〜10倍の定容希釈を行う上記の方法;限外濾過中に導入する非イオン性高分子分散剤の濃度が有機酸銀固形分の0.1〜30質量%である上記の方法;限外濾過中に導入する非イオン性高分子分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる1又は2以上の非イオン性高分子分散剤である上記の方法;非イオン性高分子分散剤とともに銀イオンを含む溶液を添加し、限外濾過する工程を含む上記の方法が提供される。
【0015】別の観点からは、支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、有機酸銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含む熱現像感光材料の製造方法であって、上記のいずれかの方法により製造された有機酸銀塩を用いることを特徴とする方法が本発明により提供される。この発明の好ましい態様によれば、感光性ハロゲン化銀及び有機酸銀塩を含有する画像形成層のバインダーが25℃、相対湿度60%での平衡含水率が2質量%以下のポリマーであり、かつ該感光性層の溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布する工程を含む上記の方法が提供される。さらに、これらの方法により製造された熱現像感光材料が本発明により提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】本明細書において、「〜」で示される範囲については、その前後に記載される数値を含む範囲である。本発明に用いることのできる有機酸銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機酸銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機酸銀塩については、特開平10‐62899号公報の段落番号0048〜0049、欧州特許公開EP0803763A1号公報の第18ページ第24行〜第19ページ第37行に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。有機酸銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。
【0017】本発明に用いることができる有機酸銀塩の形状としては特に制限はない。本明細書において、鱗片状の有機酸銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機酸銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短かい方からa、b、cとした(cはbと同じであってもよい。)とき、短い方の数値a、bで計算し、次のようにしてxを求める。
x=b/aこのようにして200個程度の粒子についてxを求め、その平均値x(平均)としたとき、x(平均)≧1.5の関係を満たすものを鱗片状とする。好ましくは30≧x(平均)≧1.5、より好ましくは20≧x(平均)≧2.0である。因みに針状とは1≦x(平均)<1.5である。
【0018】鱗片状粒子において、aはbとcを辺とする面を主平面とした平板状粒子の厚さとみることができる。aの平均は0.01μm〜0.23μmが好ましく0.1μm〜0.20μmがより好ましい。c/bの平均は好ましくは1〜6、より好ましくは1.05〜4、さらに好ましくは1.1〜3、特に好ましくは1.1〜2である。
【0019】有機酸銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは、短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下であることを意味する。有機酸銀塩の形状の測定方法としては有機酸銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機酸銀塩の体積加重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積加重平均直径で割った値の百分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては、例えば液中に分散した有機酸銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求める方法を挙げることができる。
【0020】本発明に用いられる有機酸銀は、上記に示した有機酸のアルカリ金属塩(Na塩,K塩,Li塩等が挙げられる)溶液又は懸濁液と銀イオンを含む溶液を反応させることで調製される。有機酸アルカリ金属塩は、上記有機酸をアルカリ処理することによって得られる。有機酸銀は任意の好適な容器中で回分式又は連続式で行うことができる。反応容器中の攪拌は粒子の要求される特性によって任意の攪拌方法で攪拌することができる。有機酸銀の調製法としては、有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液の入った反応容器に銀イオンを含む溶液を徐々にあるいは急激に添加する方法、銀イオンを含む溶液の入った反応容器に予め調製した有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液を徐々にあるいは急激に添加する方法、予め調製した銀イオンを含む溶液と有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液とを反応容器中に同時に添加する方法のいずれもが好ましく用いることができる。
【0021】銀イオンを含む溶液、及び有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液としては、調製する有機酸銀の粒子サイズ制御のために任意の濃度のものを用いることができ、また任意の添加速度で添加することができる。銀イオンを含む溶液、及び有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液の添加方法としては、添加速度一定で添加する方法、任意の時間関数による加速添加法あるいは減速添加法にて添加する方法などを採用することができる。また反応液に対して液面に添加してもよく、また液中に添加してもよい。予め調製した銀イオンを含む溶液、及び有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液を反応容器中に同時に添加する方法の場合には、銀イオンを含む溶液あるいは有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液のいずれかを先行させて添加することもできるが、銀イオンを含む溶液を先行させて添加することが好ましい。先行度としては総添加量の0〜50体積%が好ましく、0〜25体積%が特に好ましい。また特開平9‐127643号公報公報等に記載のように反応中の反応液のpHないしは銀電位を制御しながら添加する方法も好ましく用いることができる。
【0022】添加される銀イオンを含む溶液や有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液は粒子の要求される特性によりpHを調整することができる。pH調整のために任意の酸やアルカリを添加することができる。また、粒子の要求される特性により、例えば調製する有機酸銀の粒子サイズの制御のため反応容器中の温度を任意に設定することができるが、添加される銀イオンを含む溶液や有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液も任意の温度に調整することができる。有機酸アルカリ金属塩溶液又は懸濁液は、液の流動性を確保するために、50℃以上に加熱保温することが好ましい。
【0023】本発明に用いる有機酸銀は第3アルコールの存在下で調製されることが好ましい。第3アルコールは総炭素数15以下の物が好ましく、10以下が特に好ましい。好ましい第3アルコールの例としては、tert-ブチルアルコール等が挙げられる。第3アルコールの添加時期は有機酸銀調製時のいずれのタイミングでもよいが、有機酸アルカリ金属塩の調製時に添加して、有機酸アルカリ金属塩を溶解して用いることが好ましい。また、第3アルコールの使用量は有機酸銀調製時の溶媒としての水に対して質量比で0.01〜10の範囲で任意に使用することができるが、0.03〜1の範囲が好ましい。以下、第3アルコールの使用に言及しつつ有機酸銀塩の調製方法を説明する場合があるが、本発明の範囲は第3アルコールを使用する場合に限定されることはない。
【0024】銀イオン源としては水溶性銀塩を用いることができ、水溶性銀塩としては硝酸銀が好ましい。溶液における銀イオン濃度としては、0.03mol/l〜6.5mol/lが好ましく、より好ましくは、0.1mol/l〜5mol/lであり、この水溶液のpHとしては2〜6が好ましく、より好ましくはpH3.5〜6である。
【0025】また、銀イオンを含む溶液には、炭素数4〜6の第3アルコールが含まれていてもよく、その場合は銀イオンを含む溶液の全体積に対し、体積として70%以下であり、好ましくは50%以下である。また、溶液の温度としては0℃〜50℃が好ましく、5〜30℃がより好ましく、後述のように、銀イオンを含む溶液と有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液とを同時添加する場合は、5〜15℃が最も好ましい。
【0026】有機酸アルカリ金属塩のアルカリ金属としては、具体的にはナトリウム塩又はカリウム塩などが挙げられ、有機酸アルカリ金属塩は、例えば、有機酸に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを添加することにより調製される。このとき、アルカリの量を有機酸の当量以下にして、未反応の有機酸を残存させることが好ましい。この場合の残存有機酸量は、全有機酸1molに対して3mol%〜50mol%であり、好ましくは3mol%〜30mol%である。また、アルカリを所望の量以上に添加した後に、硝酸、硫酸等の酸を添加して余剰のアルカリ分を中和させることで調製してもよい。
【0027】本発明において、単分散でカブリが低く分散安定性に優れる有機酸銀塩を得るためには、有機酸銀塩に含まれるアルカリ金属塩の含有量が重要である。有機酸銀粒子形成後に限外濾過処理をおこなうため、粒子形成終了時点で凝集のない分散状態である必要がある。本発明における有機酸銀の製法ではいわゆる複塩法が好ましく用いられる。塩濃度が高く、またアルコールを添加するため、このような条件下においては一般に低分子量の界面活性剤が用いられる。界面活性剤は溶解性や有機酸銀塩に対する吸着性よりアニオン界面活性剤が好ましいが、最終的に熱現像感光材料に含有させると、熱現像感光材料の吸湿性が高くなり、感度や階調、さらには色調や画像保存性等の写真性に悪影響を与える場合がある。これらの問題は、有機酸銀調製時にアルカリ金属塩の含有量を調整することにより解決できることが見出された。すなわち、有機酸銀調製時にアルカリ金属塩の含有量を調整することにより、有機酸銀粒子自身に負の電荷をもたらし、良好な分散性を達成できる。
【0028】アルカリ金属塩の含有量が少ないと有機酸銀塩粒子の分散性が損なわれてしまい、粒子凝集や高粘化がおこり、実用的な均一分散液を得ることができない場合がある。またアルカリ金属塩の含有量が多すぎると、分散性の問題は解決できるが、過剰アルカリ塩の存在が銀に対して還元的に作用し、意図しない銀核の生成によりカブリの悪化等の写真性の劣化を生じる場合がある。このような理由から、アルカリ金属塩の含有量は、全有機酸量に対して5〜20モルの範囲が好ましく、より好ましくは7〜15モルである。
【0029】銀イオンを含む水溶液、有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液、あるいは反応容器の液には、例えば特開昭62‐65035号公報の一般式(1)で示されるような化合物、また、特開昭62‐150240号公報に記載のような、水溶性基含有Nヘテロ環化合物、特開昭50‐101019号公報記載のような無機過酸化物、特開昭51‐78319号公報記載のようなイオウ化合物、特開昭57‐643号公報記載のジスルフィド化合物、また過酸化水素等を添加することができる。
【0030】有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液は、液の均一性を得るために炭素数4〜6の第3アルコールと水との混合溶媒であることが好ましい。炭素数がこの範囲を超えると水との相溶性が低下して好ましくない場合がある。炭素数4〜6の第3アルコールの中でも、最も水との相溶性のあるtert‐ブチルアルコールが最も好ましい。第3アルコール以外の他のアルコールは還元性を有し、有機酸銀塩形成時に弊害を生じるために好ましくない場合がある。有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液に併用される第3アルコールの量は、この第3アルコール水溶液の水分の体積に対し、溶媒体積として3%〜70%であり、好ましくは5%〜50%である。有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液における有機酸アルカリ金属塩の濃度は、質量比として、7質量%〜50質量%であり、好ましくは、7質量%〜45質量%であり、さらに好ましくは、10質量%〜40質量%である。
【0031】反応容器中に添加する有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液の温度としては、有機酸アルカリ金属塩の結晶化、固化の現象を避けるために必要な温度に保っておく目的で50℃〜90℃が好ましく、より好ましくは60℃〜85℃がより好ましく、65℃〜85℃が最も好ましい。また、反応の温度を一定にコントロールするために上記範囲から選ばれるある温度で一定にコントロールされることが好ましい。
【0032】本発明において好ましく用いられる有機酸銀塩は、i)銀イオンを含む溶液を先に反応容器内に全量存在させておき、その溶液中に有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液をシングル添加する方法か;又はii)銀イオンを含む溶液と有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液とを反応容器内に同時に添加する時期が工程中に存在する方法(同時添加法)によって製造される。本発明においては、有機酸銀塩の平均粒子サイズをコントロールし、分布を狭くする点で後者の同時添加法が好ましい。その場合、総添加量の30容量%以上が同時に添加されることが好ましく、50〜75容量%を同時に添加することがより好ましい。いずれかを先行して添加する場合は銀イオンを含む溶液を先行させる方が好ましい。
【0033】いずれの場合においても、反応容器中の液(前述のように先行して添加された銀イオンを含む溶液、又は先行して銀イオンを含む溶液を添加しない場合には、あらかじめ反応容器中に入れられている溶媒)の温度は、好ましくは5℃〜75℃、より好ましくは5℃〜60℃、最も好ましくは10℃〜50℃である。反応の全行程にわたって前記温度から選ばれるある一定の温度にコントロールされることが好ましいが、前記温度範囲内でいくつかの温度パターンでコントロールすることも好ましい。
【0034】有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液と反応容器中の液との温度差は、20℃〜85℃が好ましく、より好ましくは30℃〜80℃である。この場合、有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液の温度の方が高いことが好ましい。これにより、高温の有機酸アルカリ金属塩の第3アルコール水溶液が反応容器で急冷されて微結晶状に析出する速度と、水溶性銀塩との反応で有機酸銀塩化する速度が好ましく制御され、有機酸銀塩の結晶形態、結晶サイズ、結晶サイズ分布を好ましく制御することができる。また同時に熱現像材料、特に熱現像感光材料としての性能をより向上させることができる。
【0035】例えば、鱗片状の有機酸銀塩は、銀イオンを含む溶液と有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液とを反応容器内で反応させる(反応容器内の液に有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液を添加する工程を含む。)際に、反応容器内の液(先行して容器内に入れた銀イオンを含む溶液であるか、又は銀イオンを含む溶液を先行することなく有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液をはじめから同時に添加する場合は、水、又は水と第3アルコールとの混合溶媒であり、銀イオンを含む溶液を先行して入れる場合においても水、又は水と第3アルコールとの混合溶媒をあらかじめ入れておいてもよい。)と添加する有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液との温度差を20℃〜85℃とする方法で製造されることが好ましい。このような温度差を有機酸アルカリ金属塩を含む第3アルコール水溶液の添加中にて維持することによって、有機酸銀塩の結晶形態等が好ましく制御される。反応容器中には、あらかじめ溶媒を含有させておいてもよく、あらかじめ入れられる溶媒には水が好ましく用いられるが、前記第3アルコールとの混合溶媒も好ましく用いられる。
【0036】本発明においては、非イオン性高分子分散剤を使用することができる。非イオン性高分子分散剤としては、有機酸銀塩を分散可能であり、かつ分子量が銀イオンを含む溶液と有機酸のアルカリ金属塩の溶液との反応から生ずる副生成塩の脱塩に使用する限外濾過膜の分画分子量の5倍〜10倍を有するものであれば特に制限はなく、反応水性溶媒に可溶な分散剤を用いることができる。このような分散剤としては、ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましく使用される。
【0037】非イオン性高分子分散剤の濃度は、有機酸銀塩に対して、0.1〜30質量%、特に0.5〜30質量%の範囲が好ましい。上記非イオン性高分子分散剤の添加時期は特に限定されないが、有機酸銀塩反応の阻害を防止するために、有機酸銀塩の反応終了後であって、かつ脱塩操作完了前であることが好ましい。さらに好ましい本発明の実施形態としては、限外濾過によって脱塩を行い、有機酸銀分散液の電気伝導度を低下させた後、脱塩操作完了前に非イオン性高分子分散剤を添加する。この時の電気伝導度は、2,000μS/cm以下が好ましい。さらに非イオン性高分子分散剤の添加後に、2〜10倍の定容希釈を行うことがさらに好ましい。
【0038】限外濾過法は、例えばハロゲン化銀乳剤の脱塩/濃縮に用いられる方法を適用することができ、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)No.10 208(1972)、No.13 122(1975)及びNo.16 351(1977)などを参照することができる。操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に選定することができるが、一般的には、目的の有機酸銀分散物を処理する上では、粒子の凝集やカブリを抑えるために最適条件を見いだす必要がある。また、膜透過より損失する溶媒を補充する方法においては、連続して溶媒を添加する定容式と断続的に分けて添加する回分式とがあるが、脱塩処理時間が相対的に短い定容式が好ましい。
【0039】こうして補充する溶媒には、イオン交換又は蒸留して得られた純水を用いるが、pHを目的の値に保つために、純水の中にpH調整剤等を混合してもよいし、有機酸銀分散物に直接添加してもよい。
【0040】限外濾過膜は、すでにモジュールとして組み込まれた平板型、スパイラル型、円筒型、中空糸型、ホローファイバー型などが旭化成(株)、ダイセル化学(株)、(株)東レ、(株)日東電工などから市販されているが、総膜面積や洗浄性の観点から、スパイラル型又は中空糸型が好ましい。また、膜を透過することができる成分のしきい値の指標となる分画分子量は、使用する非イオン性高分子分散剤の分子量の1/5以下であることが好ましい。
【0041】粒子形成後から脱塩操作が進むまでの液温は低く保つことが好ましい。これは、有機酸のアルカリ金属塩を溶解する際に用いる有機溶剤が、生成した有機酸銀粒子内に浸透している状態では、送液操作や限外濾過膜を通過する際の剪断場や圧力場によって銀核が生成しやすいからである。このため、本発明では有機酸銀粒子分散物の温度を1〜30℃、好ましくは5〜25℃に保ちながら限外濾過操作を行う。
【0042】調製された分散物は、保存時の微粒子の沈降を抑える目的で撹拌しながら保存したり、親水性コロイドにより粘性の高い状態(例えば、ゼラチンを使用しゼリー状にした状態)で保存したりすることもできる。また、保存時の雑菌などの繁殖を防止する目的で防腐剤を添加することもできる。
【0043】本発明における有機酸銀塩分散物は、少なくとも有機酸銀塩と水とを含む。有機酸銀塩と水との割合は特に限定されるものではないが、効率的な塗膜の形成を考えた場合に、安定な塗布を行うためのレオロジー特性、ならびに乾燥水分量より決まる生産スピードなどを考慮して適宜決定することができる。本発明の方法では、限外濾過法による脱塩操作によって、電気電導度が20μS/cm以上300μS/cm未満に達した後に、分散物濃度を10〜50質量%、好ましくは10〜30質量%に濃縮することができる。
【0044】本発明においては、Ca、Mg、Ce、Al、Zn、Baから選ばれる金属イオンをハロゲン化物でない水溶性塩の形で添加することが好ましい。具体的には、硝酸塩や硫酸塩の形で添加することが好ましい。Ca、Mg、Ce、Al、Zn、Baから選ばれる金属イオンの添加時期は特に限定されず、有機酸銀塩調製物の液中への添加、反応液中への事前添加、有機酸銀塩の形成中又は形成直後、あるいは塗布液調製の前後など塗布直前であればいずれの時期でもよい。添加量としては、有機酸銀塩1mol当たり10-3〜10-1molが好ましく、特に5×10-3〜5×10-2molが好ましい。
【0045】有機酸銀塩分散液は写真性の悪化を伴わない範囲で、分散機による機械的な分散を行なってもよい。分散方法としては、有機酸銀塩の水分散物を得、これを高圧で高速流に変換し、その後圧力降下させることによって再分散し、微細水分散物とすることが好ましい。この場合の分散媒は水のみであることが好ましいが、20質量%以下であれば有機溶媒を含んでいてもよい。
【0046】上記のような再分散法を実施するのに用いられる分散装置及びその技術については、例えば「分散系レオロジーと分散化技術」(梶内俊夫、薄井洋基 著、1991、信山社出版(株)、p357〜403)、「化学工学の進歩 第24集」(社団法人 化学工学会東海支部 編、1990、槙書店、p184〜185)、特開昭59‐49832号公報、米国特許第4533254号公報明細書、特開平8‐137044号公報、特開平8‐238848号公報、特開平2‐261525号公報、特開平1‐94933号公報等に詳しいが、本発明で用いる再分散法は、少なくとも有機酸銀塩を含む水分散液を高圧ポンプ等で加圧して配管内に送入した後、配管内に設けられた細いスリットを通過させ、この後に分散液に急激な圧力低下を生じさせることにより微細な分散を行う方法であることが好ましい。
【0047】有機酸銀塩の分散時に感光性ハロゲン化銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下する場合があるため、分散時には感光性ハロゲン化銀塩を実質的に含まないことがより好ましい。分散される水分散液中での感光性ハロゲン化銀塩は、その液中の有機酸銀塩1molに対し0.1mol%以下であり、積極的な感光性ハロゲン化銀塩の添加は行わないことが望ましい。機械的に分散する以外にも、pHコントロールすることで溶媒中に粗分散し、その後、分散助剤の存在下でpHを変化させて微粒子化させてもよい。このとき、粗分散に用いる溶媒として有機溶媒を使用してもよく、通常、有機溶媒は微粒子化終了後除去される。
【0048】有機酸銀塩の調製法にて調製された有機酸銀塩は、水溶媒中で微細分散された後、感光性ハロゲン化銀塩水溶液と混合して感光性画像形成層の塗布液として供給されることが好ましい。このような塗布液を用いて熱現像感光材料を作製するとヘイズが低く、低カブリで高感度の熱現像感光材料が得られる。これに対し、高圧下で高速流に変換して有機酸銀塩を微細分散する時に感光性ハロゲン化銀塩を共存させると、カブリが上昇し、感度が著しく低下する場合があるので、高圧、高速化に変換して分散される水分散液は、実質的に感光性ハロゲン化銀塩を含まないことが望ましい。また、分散媒として水ではなく、有機溶剤を用いると、ヘイズが高くなり、カブリが上昇し、感度が低下しやすくなる場合がある。一方、感光性ハロゲン化銀塩水溶液を混合する方法にかえて、分散液中の有機酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀塩に変換するコンバージョン法を用いると感度が低下する場合がある。
【0049】別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機酸銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機酸銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機酸銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機酸銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。もっとも、後述するように、調製した有機酸銀塩を水中に微分散し、そこにハロゲン化銀粒子を添加することが望ましい。
【0050】有機酸銀塩固体微粒子分散物の粒子サイズ(体積加重平均直径)は、例えば液中に分散した固体微粒子分散物にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積加重平均直径)から求めることができる。平均粒子サイズ0.05μm〜10.0μmの固体微粒子分散物が好ましい。より好ましくは平均粒子サイズ0.1μm〜5.0μm、さらに好ましくは平均粒子サイズ0.1μm〜2.0μmである。
【0051】有機酸銀塩と感光性ハロゲン化銀塩との混合比率は目的に応じて選択できるが、有機酸銀塩に対する感光性ハロゲン化銀塩の割合は1〜30mol%の範囲が好ましく、さらに3〜20mol%、特に5〜15mol%の範囲が好ましい。混合する際に2種以上の有機酸銀塩水分散液と2種以上の感光性ハロゲン化銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましく用いられる方法である。有機酸銀塩は熱現像感光材料において所望の量で使用できるが、銀量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0052】本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができる。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、あるいは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。構造として好ましくいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。また塩化銀又は塩臭化銀粒子の表面に臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0053】感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、及び米国特許第3,700,458号明細書に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機酸銀塩と混合する方法を用いることができる。
【0054】感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく、具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.15μm、さらに好ましくは0.02μm〜0.12μmがよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子の投影面積(平板状粒子である場合には主表面の投影面積)と同面積の円像に換算したときの直径をいう。
【0055】ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子が好ましい。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い{100}面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。ミラー指数{100}面の比率は増感色素の吸着における{111}面と{100}面との吸着依存性を利用したT. Tani, J. Imaging Sci., 29, 165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0056】本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属又は金属錯体を含有することが望ましい。周期律表の第8族〜第10族の金属又は金属錯体の中心金属として、好ましくは、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムを挙げることができる。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10-9モル〜1×10-3モルの範囲が好ましい。これらの金属錯体については特開平11‐65021号公報の段落番号0018〜0024に記載されている。
【0057】その中でもハロゲン化銀粒子中にイリジウム化合物を含有させることが好ましい。イリジウム化合物としては、例えば、ヘキサクロロイリジウム、ヘキサアンミンイリジウム、トリオキザラトイリジウム、ヘキサシアノイリジウム、ペンタクロロニトロシルイリジウム等が挙げられる。これらのイリジウム化合物は、水あるいは適当な溶媒に溶解して用いられるが、イリジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸等)、あるいはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性イリジウムを用いる代わりに、ハロゲン化銀調製時にあらかじめイリジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。これらイリジウム化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当たり1×10-8モル〜1×10-3モルの範囲が好ましく、1×10-7モル〜5×10-4モルの範囲がより好ましい。
【0058】さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)6]4-)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11-84574号公報段落番号0046〜0050、特開平11-65021号公報段落番号0025〜0031、特開平11-119374号公報段落番号0242〜0250に記載されている。
【0059】本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンを使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機酸銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量が500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0060】本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。増感色素及び添加法については、特開平11-65021号公報の段落番号0103〜0109、特開平10-186572号公報一般式(II)で表される化合物、特開平11-119374号公報一般式(I)で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号明細書、同第3,871,887号明細書実施例5に記載の色素、特開平2-96131号公報、特開昭59-48753号公報に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号公報の第19ページ第38行〜第20ページ第35行に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。本発明の方法において増感色素をハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、脱塩工程後、塗布までの時期が好ましく、より好ましくは脱塩後から化学熟成の開始前までの時期である。増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10-6〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10-4〜10-1モルである。
【0061】本発明の方法では、分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号公報、米国特許第3,877,943号明細書、同第4,873,184号明細書、特開平5-341432号公報、同11-109547号公報、同10-111543号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0062】感光性ハロゲン化銀粒子は、硫黄増感法、セレン増感法もしくはテルル増感法にて化学増感されていることが好ましい。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物、例えば、特開平7-128768号公報等に記載の化合物等を使用することができる。特に本発明においてはテルル増感が好ましく、特開平11-65021号公報段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5-313284号公報中の一般式(II)、(III)、(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0063】化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、例えば(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等のいずれの時期に行ってもよい。特に分光増感後に行われることが好ましい。硫黄、セレン及びテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いることができる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、温度としては40〜95℃程度である。本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。
【0064】本発明に用いられる感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)を併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては、例えば、特開昭57-119341号公報、同53-106125号公報、同47-3929号公報、同48-55730号公報、同46-5187号公報、同50-73627号公報、同57-150841号公報などに記載の方法が挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0065】感光性ハロゲン化銀の添加量は、感光材料1m2当たりの塗布銀量で示して、0.03〜0.6g/m2であることが好ましく、0.05〜0.4g/m2であることがさらに好ましく、0.1〜0.4g/m2であることが最も好ましい。有機酸銀塩1モルに対しては、感光性ハロゲン化銀は0.01モル〜0.5モルが好ましく、0.02モル〜0.3モルがより好ましい。
【0066】別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機酸銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機酸銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機酸銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機酸銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に達成できる限りにおいては特に制限はない。また、混合する際に2種以上の有機酸銀塩水分散液と2種以上の感光性銀塩水分散液を混合することは、写真特性の調節のために好ましい方法である。
【0067】本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前〜10秒前にであるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN. Harnby、M. F. Edwards、A. W. Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0068】本発明の有機酸銀塩含有層のバインダーはいかなるポリマーであってもよく、好適なバインダーは透明又は半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーは水又は有機溶媒又はエマルションから被覆形成してもよい。
【0069】本発明においては、有機酸銀塩含有層を溶媒の30質量%以上が水である塗布液を用いて塗布し、乾燥して形成する場合に、さらに有機酸銀塩含有層のバインダーが、水系溶媒(水溶媒)に可溶又は分散可能であり、特に25℃で相対湿度が60%での平衡含水率が2質量%以下のポリマーのラテックスを含むことが好ましい。有機酸銀塩含有層のバインダーが実質的に上記ラテックスからなる場合がより好ましく、最も好ましい形態は、イオン伝導度が2.5 mS/cm以下になるように調製されたものであり、このような調製法としてポリマー合成後分離機能膜を用いて精製処理する方法が挙げられる。
【0070】ここでいう前記ポリマーが可溶又は分散可能である水系溶媒とは、水又は水に70質量%以下の水混和性の有機溶媒を混合したものである。水混和性の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系、酢酸エチル、ジメチルホルミアミドなどを挙げることができる。なお、ポリマーが熱力学的に溶解しておらず、いわゆる分散状態で存在している系の場合にも、本明細書において「水系溶媒」という用語を使用する。
【0071】また「25℃相対湿度60%における平衡含水率」とは、25℃相対湿度60%の雰囲気下で調湿平衡にあるポリマーの質量W1と25℃で絶乾状態にあるポリマーの質量W0を用いて以下のように表すことができる。
25℃相対湿度60%における平衡含水率=[(W1-W0)/W0]×100(質量%)含水率の定義と測定法については、例えば高分子工学講座14、高分子材料試験法(高分子学会編、地人書館)を参考にすることができる。本発明のバインダーポリマーの25℃相対湿度60%における平衡含水率は2質量%以下であることが好ましいが、より好ましくは0.01質量%〜1.5質量%、さらに好ましくは0.02質量%〜1質量%である。
【0072】本発明においては水系溶媒に分散可能なポリマーが特に好ましい。分散状態の例としては、水不溶な疎水性ポリマーの微粒子が分散しているラテックスやポリマー分子が分子状態又はミセルを形成して分散しているものなどがあるが、いずれも好ましい。分散粒子の平均粒径は1〜50000 nm、より好ましくは5〜1000 nm程度の範囲が好ましい。分散粒子の粒径分布に関しては特に制限は無く、広い粒径分布を持つものでも単分散の粒径分布を持つものでもよい。
【0073】水系溶媒に分散可能なポリマーの好ましい態様としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂(例えばSBR樹脂)、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができる。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5000〜1000000、好ましくは10000〜200000がよい。分子量が小さすぎるものは乳剤層の力学強度が不十分である場合があり、大きすぎるものは成膜性が悪くなる場合がある。
【0074】好ましいポリマーラテックスの具体例としては以下のものを挙げることができる。以下では原料モノマーを用いて表し、括弧内の数値は質量%、分子量は数平均分子量である。
【0075】P-1;-MMA(70)-EA(27)-MAA(3)-のラテックス(分子量37000)P-2;-MMA(70)-2EHA(20)-St(5)-AA(5)-のラテックス(分子量40000)P-3;-St(50)-Bu(47)-MAA(3)-のラテックス(分子量45000)P-4;-St(68)-Bu(29)-AA(3)-のラテックス(分子量60000)P-5;-St(70)-Bu(27)-IA(3)-のラテックス(分子量120000)P-6;-St(75)-Bu(24)-AA(1)-のラテックス(分子量108000)P-7;-St(60)-Bu(35)-DVB(3)-MAA(2)-のラテックス(分子量150000)P-8;-St(70)-Bu(25)-DVB(2)-AA(3)-のラテックス(分子量280000)P-9;-VC(50)-MMA(20)-EA(20)-AN(5)-AA(5)-のラテックス(分子量80000)P-10;-VDC(85)-MMA(5)-EA(5)-MAA(5)-のラテックス(分子量67000)P-11;-Et(90)-MAA(10)-のラテックス(分子量12000)P-12;-St(70)-2EHA(27)-AA(3)のラテックス(分子量130000)P-13;-MMA(63)-EA(35)- AA(2)のラテックス(分子量33000)上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート,EA;エチルアクリレート、MAA;メタクリル酸,2EHA;2エチルヘキシルアクリレート,St;スチレン,Bu;ブタジエン,AA;アクリル酸,DVB;ジビニルベンゼン,VC;塩化ビニル,AN;アクリロニトリル,VDC;塩化ビニリデン,Et;エチレン,IA;イタコン酸。
【0076】以上に記載したポリマーラテックスは市販もされており、以下のようなポリマーが利用できる。アクリル樹脂の例としては、セビアンA-4635、46583、4601(以上ダイセル化学工業(株)製)、Nipol Lx811814、821、820、857(以上日本ゼオン(株)製)など、ポリエステル樹脂の例としては、FINETEX ES650、611、675、850(以上大日本インキ化学(株)製)、WD-size、WMS(以上イーストマンケミカル製)など、ポリウレタン樹脂の例としては、HYDRAN AP10、20、3040(以上大日本インキ化学(株)製)など、ゴム系樹脂の例としては、LACSTAR 7310K、3307B、4700H、7132C(以上大日本インキ化学(株)製)、Nipol Lx416、410438C2507(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニル樹脂の例としては、G351G576(以上日本ゼオン(株)製)など、塩化ビニリデン樹脂の例としては、L502L513(以上旭化成工業(株)製)など、オレフィン樹脂の例としては、ケミパールS120、SA100(以上三井石油化学(株)製)などを挙げることができる。
【0077】これらのポリマーラテックスは単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上ブレンドしてもよい。本発明に用いられるポリマーラテックスとしては特に、スチレン-ブタジエン共重合体のラテックスが好ましい。スチレン-ブタジエン共重合体におけるスチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との質量比は40:60〜95:5であることが好ましい。また、スチレンのモノマー単位とブタジエンのモノマー単位との共重合体に占める割合は60〜99質量%であることが好ましい。好ましい分子量の範囲は前記と同様である。本発明に用いることが好ましいスチレン-ブタジエン共重合体のラテックスとしては、前記のP-3〜P-8、市販品であるLACSTAR-3307B、7132C、Nipol Lx416等が挙げられる。
【0078】本発明の感光材料の有機酸銀塩含有層には必要に応じてゼラチン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの親水性ポリマーを添加してもよい。これらの親水性ポリマーの添加量は有機酸銀塩含有層の全バインダーの30質量%以下、より好ましくは20質量%以下が好ましい。
【0079】本発明の有機酸銀塩含有層(すなわち画像形成層)は、ポリマーラテックスとを用いて形成されたものが好ましい。有機酸銀塩含有層のバインダーの量は、全バインダー/有機酸銀塩の質量比が1/10〜10/1、更には1/5〜4/1の範囲が好ましい。
【0080】また、このような有機酸銀塩含有層は、通常、感光性銀塩である感光性ハロゲン化銀が含有された感光性層(乳剤層)でもあり、このような場合の、全バインダー/ハロゲン化銀の質量比は400〜5、より好ましくは200〜10の範囲が好ましい。本発明の画像形成層の全バインダー量は0.2〜30 g/m2、より好ましくは1〜15g/m2の範囲が好ましい。本発明の画像形成層には架橋のための架橋剤、塗布性改良のための界面活性剤などを添加してもよい。
【0081】本発明において感光材料の有機酸銀塩含有層塗布液の溶媒(ここでは簡単のため溶媒と分散媒をあわせて溶媒と表す)は、水を30質量%以上含む水系溶媒である。水以外の成分としてはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルなど任意の水混和性有機溶媒を用いてよい。塗布液の溶媒の水含有率は50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が好ましい。好ましい溶媒組成の例を挙げると、水の他、水/メチルアルコール=90/10、水/メチルアルコール=70/30、水/メチルアルコール/ジメチルホルムアミド=80/15/5、水/メチルアルコール/エチルセロソルブ=85/10/5、水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール=85/10/5などがある(数値は質量%)。
【0082】本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤、及び安定剤前駆体としては特開平10-62899号公報の段落番号0070、欧州特許公開第0803764A1号公報の第20ページ第57行〜第21ページ第7行に記載のものが挙げられる。また、本発明に好ましく用いられるカブリ防止剤は有機ハロゲン化物であり、これらについては、特開平11-65021号公報の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特願平11-87297号公報の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10-339934号公報の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物(具体的にはトリブロモメチルナフチルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン、トリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン等)が好ましい。カブリ防止剤を熱現像感光材料に添加する方法としては、前記還元剤の添加方法として記載された方法が挙げられ、有機ポリハロゲン化合物についても固体微粒子分散物で添加することが好ましい。
【0083】その他のカブリ防止剤としては特開平11-65021号公報段落番号0113の水銀(II)塩、同号公報段落番号0114の安息香酸類、特願平11-87297号公報の式(Z)で表されるサリチル酸誘導体、特願平11-23995号公報の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物が挙げられる。
【0084】本発明の方法により製造される熱現像感光材料には、カブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有させてもよい。アゾリウム塩としては、特開昭59-193447号公報記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55-12581号公報記載の化合物、特開昭60-153039号公報記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は熱現像感光材料のいかなる部位に添加してもよいが、感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機酸銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。アゾリウム塩の添加は塗布液調製のいかなる工程で行ってもよく、有機酸銀塩含有層に添加する場合には有機酸銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程で添加してもよい。有機酸銀塩調製後から塗布直前に添加することが好ましい。アゾリウム塩の添加は、粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行ってもよい。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加してもよい。アゾリウム塩の添加量はいかなる量でもよいが、銀1モル当たり1×10-6モル〜2モルが好ましく、1×10-3モル〜0.5モルがさらに好ましい。
【0085】本発明の方法により製造される熱現像感光材料には、現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどの目的でメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、及び/又はチオン化合物を含有させることができる。これらは、特開平10-62899号公報の段落番号0067〜0069、特開平10-186572号公報の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号公報の第20ページ第36〜56行、特願平11-273670号公報等に記載されている。これらのうち、メルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0086】本発明の方法では、ホスホリル基を有する化合物を用いることが好ましく、ホスフィンオキシド類が特に好ましい。具体的には、トリフェニルホスフィンオキシド、トリ−(4−メチルフェニル)ホスフィンオキシド、トリ−(4−メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、トリ−(t−ブチル−フェニル)ホスフィンオキシド、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。ホスホリル基を有する化合物は、還元剤、ポリハロゲン化合物と同様な方法で熱現像感光材料中に導入することができる。ホスホリル基を有する化合物は還元剤の添加量比(モル比)に対して0.1〜10の範囲が好ましく、0.1〜2.0の範囲がより好ましい。さらに好ましくは0.2〜1.0の範囲である。
【0087】本発明の方法により製造される熱現像感光材料には色調剤を添加することが好ましい。色調剤については、特開平10-62899号公報の段落番号0054〜0055、欧州特許公開第0803764A1号公報の第21ページ第23〜48行、特願平10-213487号公報に記載されており、特に、フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、又は4-(1-ナフチル)フタラジノン、6-クロロフタラジノン、5,7-ジメトキシフタラジノン及び2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸及びテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩、又は4-(1-ナフチル)フタラジン、6-イソプロピルフタラジン、6-t-ブチルフラタジン、6-クロロフタラジン、5,7-ジメトキシフタラジン及び2,3-ジヒドロフタラジンなどの誘導体);フタラジン類とフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸及びテトラクロロ無水フタル酸など)との組合せが好ましく、特にフタラジン類とフタル酸誘導体の組合せが好ましい。
【0088】感光性層に用いることのできる可塑剤及び潤滑剤については特開平11-65021号公報段落番号0117、超硬調画像形成のための超硬調化剤については、同号公報段落番号0118、特開平11-223898号公報段落番号0136〜0193、特願平11-87297号公報の式(H)、式(1)〜(3)、式(A)、(B)の化合物、特願平11-91652号公報記載の一般式(III)〜(V)の化合物(具体的化合物:化21〜化24)、硬調化促進剤については特開平11-65021号公報段落番号0102、特開平11-223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。造核剤の添加方法や量については特開平11-223898号公報段落番号0182〜0183に記載されている。蟻酸や蟻酸塩を強いかぶらせ物質として用いるには、感光性ハロゲン化銀を含有する画像形成層を有する側に銀1モル当たり5ミリモル以下、さらには1ミリモル以下で含有させることが好ましい。
【0089】本発明の熱現像感光材料で造核剤を用いる場合には五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩を併用して用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどがある。五酸化二リンが水和してできる酸又はその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100 mg/m2がより好ましい。
【0090】本発明の方法で製造される熱現像感光材料には、画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層については、特開平11-65021号公報段落番号0119〜0120に記載されている。本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いることも好ましい。PVAとしては、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが挙げられる。保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜4.0 g/m2が好ましく、0.3〜2.0 g/m2がより好ましい。
【0091】特に寸法変化が問題となる印刷用途に本発明の熱現像感光材料を用いる場合には、保護層やバック層にもポリマーラテックスを用いることが好ましい。このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。さらに、保護層用のバインダーとして、特願平11-6872号明細書のポリマーラテックスの組み合わせ、特願平11-143058号明細書の段落番号0021〜0025に記載の技術、特願平11-6872号明細書の段落番号0027〜0028に記載の技術、特願平10-199626号明細書の段落番号0023〜0041に記載の技術を適用してもよい。保護層のポリマーラテックスの比率は全バインダーの10質量%〜90質量%が好ましく、特に20質量%〜80質量%が好ましい。保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3〜5.0 g/m2が好ましく、0.3〜2.0 g/m2がより好ましい。
【0092】本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃〜65℃がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃〜55℃である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃〜65℃で維持されることが好ましい。また、ポリマーラテックス添加前に還元剤と有機酸銀塩が混合されていることが好ましい。
【0093】本発明における有機酸銀塩含有流体又は熱画像形成層塗布液は、いわゆるチキソトロピー流体であることが好ましい。チキソトロピー性とは剪断速度の増加に伴い、粘度が低下する性質を言う。本発明の粘度測定にはいかなる装置を使用してもよいが、レオメトリックスファーイースト株式会社製RFSフルードスペク トロメーターが好ましく用いられ25℃で測定される。有機酸銀塩含有流体又は熱画像形成層塗布液は、剪断速度0.1 S-1における粘度が400 mPa・s〜100,000 mPa・sであることが好ましく、さらに好ましくは500 mPa・s〜20,000 mPa・sである。また、剪断速度1000 S-1においては1 mPa・s〜200 mPa・sが好ましく、さらに好ましくは5 mPa・s〜80 mPa・sである。
【0094】チキソトロピー性を発現する系は各種知られており高分子刊行会編「講座・レオロジー」、室井、森野共著「高分子ラテックス」(高分子刊行会発行)などに記載されている。流体がチキソトロピー性を発現させるには固体微粒子を多く含有することが必要である。また、チキソトロピー性を強くするには増粘線形高分子を含有させること、含有する固体微粒子の異方形でアスペクト比を大きくすること、アルカリ増粘、界面活性剤の使用などが有効である。
【0095】本発明の熱現像写真用乳剤は、支持体上に一又はそれ以上の層で構成される。一層として構成する場合には、層中に有機酸銀塩、ハロゲン化銀、現像剤、及びバインダーを含み、色調剤、被覆助剤及び他の補助剤などの所望による追加の材料を含んでいてもよい。二層の構成にする場合には、第1乳剤層(通常は支持体に隣接した層)中に有機酸銀塩及びハロゲン化銀を配合し、第2層又は両層中に他の成分を配合することができる。全ての成分を含む単一乳剤層及び保護トップコートを含んでなる二層の構成であってもよい。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号明細書に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681号明細書に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0096】感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらの技術については国際公開WO98/36322号公報、特開平10-268465号公報、同11-338098号公報等に詳細に記載されている。
【0097】本発明の方法により製造される熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して光源から遠い側に設けることができる。熱現像感光材料は、一般に、感光性層に加えて非感光性層を有する。非感光性層は、その配置から(1)感光性層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる保護層、(2)複数の感光性層の間や感光性層と保護層との間に設けられる中間層、(3)感光性層と支持体との間に設けられる下塗り層、(4)感光性層の反対側に設けられるバック層に分類できる。フィルター層は、(1)又は(2)の層として感光材料に設けられる。アンチハレーション層は、(3)又は(4)の層として感光材料に設けられる。
【0098】アンチハレーション層については特開平11-65021号公報段落番号0123〜0124、特開平11-223898号公報、同9-230531号公報、同10-36695号公報、同10-104779号公報、同11-231457号公報、同11-352625号公報、同11-352626号公報等に記載されている。アンチハレーション層は、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有することができる。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後に染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましい。特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11-231457号公報等に記載されている。
【0099】消色染料の添加量は、染料の用途により決定することができる。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用することができる。光学濃度は、0.2〜2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001〜1g/m2程度である。
【0100】なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11-352626号公報に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃(deg)以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルフォン、4-クロロフェニル(フェニル)スルフォン)を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0101】銀色調、画像の経時変化を改良する目的で、熱現像感光材料には300〜450 nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62-210458号公報、同63-104046号公報、同63-103235号公報、同63-208846号公報、同63-306436号公報、同63-314535号公報、特開平01-61745号公報、特願平11-276751号明細書などに記載されている。このような着色剤は、通常、0.1 mg/m2〜1 g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0102】本発明の方法により製造される熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光性層を有し、他方の側にバック層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0103】本発明の方法により製造される熱現像感光材料には、搬送性改良のためにマット剤を添加することが好ましい。マット剤については、特開平11-65021号公報段落番号0126〜0127に記載されている。マット剤は、熱現像感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1〜400 mg/m2、より好ましくは5〜300 mg/m2である。また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければ特に限定されないが、ベック平滑度が30秒〜2000秒が好ましく、特に40秒〜1500秒が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙及び板紙のベック試験器による平滑度試験方法」及びTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0104】バック層のマット度としてはベック平滑度が10秒〜1200秒が好ましく、20秒〜800秒が好ましく、さらに好ましくは40秒〜500秒である。マット剤は熱現像感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。本発明の方法により製造される熱現像感光材料に適用可能なバック層の例は、特開平11-65021号公報段落番号0128〜0130に記載されている。
【0105】本発明の方法により製造される熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが6.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは5.5以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11-87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0106】感光性層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いてもよい。硬膜剤の例としてはT.H.James著“THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許第4,281,060号明細書、特開平6-208193号公報などのポリイソシアネート類、米国特許第4,791,042号明細書などのエポキシ化合物類、特開昭62-89048号公報などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0107】硬膜剤は通常は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前〜10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN. Harnby、M. F. Edwards、A. W. Nienow著、高橋幸司訳“液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0108】本発明の方法に適用できる界面活性剤の例は特開平11-65021号公報段落番号0132に記載されており、溶剤の例は同号公報段落番号0133、支持体の例は同号公報段落番号0134、帯電防止又は導電層の例は同号公報段落番号0135、カラー画像を得る方法の例は同号公報段落番号0136にそれぞれ記載されており、滑り剤の例は特開平11-84573号公報段落番号0061〜0064や特願平11-106881号明細書段落番号0049〜0062記載されている。
【0109】透明支持体はとしては、二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8-240877号実施例記載の染料-1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。支持体には、特開平11-84574号公報の水溶性ポリエステル、同10-186565号公報のスチレンブタジエン共重合体、特願平11-106881号明細書段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。また、帯電防止層又は下塗りについては、特開昭56-143430号公報、同56-143431号公報、同58-62646号公報、同56-120519号公報、特開平11-84573号公報の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号明細書、特開平11-223898号公報の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
【0110】熱現像感光材料は、モノシート型(受像材料のような他のシートを使用せずに、熱現像感光材料上に画像を形成できる型)であることが好ましい。熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについて国際公開WO98/36322号公報、欧州特許公開EP803764A1号公報、特開平10-186567号公報、同10-18568号公報等を参考にすることができる。
【0111】熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されてもよい。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、又は米国特許第2,681,294号明細書に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作が用いられる。例えば、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著“LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁〜536頁記載のエクストルージョンコーティング、又はスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはスライドコーティングが用いられる。スライドコーティングに使用されるスライドコーターの形状の例は同書427頁のFigure 11b.1に記載されている。また、所望により同書399頁〜536頁記載の方法、米国特許第2,761,791 号明細書及び英国特許第837,095号明細書に記載の方法により2層又はそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0112】本発明の方法による熱現像感光材料の製造に用いることのできる技術としては、欧州特許公開EP803764A1号公報、欧州特許公開EP883022A1号公報、国際公開WO98/36322号公報、特開昭56-62648号公報、同58-62644号公報、特開平9-281637公報、同9-297367号公報、同9-304869号公報、同9-311405号公報、同9-329865号公報、同10-10669号公報、同10-62899号公報、同10-69023号公報、同10-186568号公報、同10-90823号公報、同10-171063号公報、同10-186565号公報、同10-186567号公報、同10-186569号〜同10-186572号公報、同10-197974号公報、同10-197982号公報、同10-197983号公報、同10-197985号〜同10-197987号公報、同10-207001号公報、同10-207004号公報、同10-221807号公報、同10-282601号公報、同10-288823号公報、同10-288824号公報、同10-307365号公報、同10-312038号公報、同10-339934号公報、同11-7100号公報、同11-15105号公報、同11-24200号公報、同11-24201号公報、同11-30832号公報、同11-84574号公報、同11-65021号公報、同11-109547号公報、同11-125880号公報、同11-129629号公報、同11-133536号〜同11-133539号公報、同11-133542号公報、同11-133543号公報、同11-223898号公報に記載の方法も挙げられる。
【0113】本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されてもよいが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250 ℃であり、さらに好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、10〜90秒がさらに好ましく、10〜40秒が特に好ましい。
【0114】熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式としては特開平11-133572号公報に記載の方法が好ましい。例えば、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置を好ましく用いることができる。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1〜10℃程度温度を下げることが好ましい。このような方法は特開昭54-30032号公報にも記載されており、熱現像感光材料に含有されている水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0115】本発明の感光材料はいかなる方法で露光されてもよいが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+、He-Ne)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましくは赤〜赤外発光のガス若しくは半導体レーザーである。
【0116】露光部及び熱現像部を備えた医療用のレーザーイメージャーとしては富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lを挙げることができる。FM−DP Lに関しては、Fuji Medical Review No.8,page 39〜55に記載されており、それらの技術は熱現像感光材料のレーザーイメージャーとして適用することは言うまでもない。また、DICOM規格に適応したネットワークシステムとして富士メディカルシステムが提案した「AD network」の中でのレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0117】本発明の方法により製造された熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0118】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
実施例1【0119】(PET支持体の作成)テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、熱固定後の膜厚が175μmになるような厚みの未延伸フィルムを作成した。
【0120】これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0121】(表面コロナ処理)ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6 mmであった。
【0122】
(下塗り支持体の作成)
(1)下塗層塗布液の作成処方■(感光層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA-515GB(30質量%溶液) 234 g ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル (平均エチレンオキシド数=8.5) 10質量%溶液 21.5 g 綜研化学(株)製 MP-1000(ポリマー微粒子、平均粒径0.4μm) 0.91 g 蒸留水 744 ml【0123】
処方■(バック面第1層用)
ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス 158 g (固形分40質量% 、ブタジエン/スチレン質量比=32/68)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S− トリアジンナトリウム塩 8質量%水溶液 20 g ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量% 水溶液 10 ml 蒸留水 854 ml【0124】
処方■(バック面側第2層用)
SnO2/SbO (9/1質量比、平均粒径0.038μm、17質量%分散物) 84 g ゼラチン(10質量%水溶液) 89.2 g 信越化学(株)製 メトローズTC-5(2質量%水溶液) 8.6 g 綜研化学(株)製 MP-1000(ポリマー微粒子) 0.01 g ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量% 水溶液 10 ml NaOH(1質量%) 6 ml プロキセル(ICI社製) 1 ml 蒸留水 805 ml【0125】(下塗り支持体の作成)上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(感光性層面)に下塗り塗布液処方■をワイヤーバーでウエット塗布量が6.6ml/m2(片面当たり)になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に下塗り塗布液処方■をワイヤーバーでウエット塗布量が5.7ml/m2になるように塗布して180 ℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に下塗り塗布液処方■をワイヤーバーでウエット塗布量が7.7ml/m2になるように塗布して180 ℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作成した。
【0126】(バック面塗布液の調製)
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製)塩基プレカーサー化合物11を64 g、ジフェニルスルフォンを28 g及び花王(株)製界面活性剤デモールN 10 gを蒸留水220 mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4 Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散し、平均粒子径0.2μmの、塩基プレカーサー化合物の固体微粒子分散液(a)を得た。
【0127】(染料固体微粒子分散液の調製)シアニン染料化合物13を9.6 g及びP-ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム5.8 gを蒸留水305 mlと混合し、混合液をサンドミル(1/4 Gallonサンドグラインダーミル、アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散して平均粒子径0.2μmの染料固体微粒子分散液を得た。
【0128】(ハレーション防止層塗布液の調製)ゼラチン17 g、ポリアクリルアミド9.6 g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70 g、上記染料固体微粒子分散液56 g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ6.5μm)1.5 g、ベンゾイソチアゾリノン0.03 g、ポリエチレンスルフォン酸ナトリウム2.2 g、青色染料化合物14を0.2 g、黄色染料化合物15を3.9 g、水を844 ml混合し、ハレーション防止層塗布液を調製した。
【0129】(バック面保護層塗布液の調製)容器を40℃に保温し、ゼラチン50 g、ポリスチレンスルフォン酸ナトリウム0.2 g、N,N-エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド) 2.4 g、t-オクチルフェノキシエトキシエタンスルフォン酸ナトリウム1 g、ベンゾイソチアゾリノン30 mg、N-パーフルオロオクチルスルフォニル-N-プロピルアラニンカリウム塩37mg、ポリエチレングリコールモノ(N-パーフルオロオクチルスルホニル-N-プロピル-2-アミノエチル)エーテル[エチレンオキサイド平均重合度15] 0.15 g、C8F17SO3K 32 mg、C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2O)4(CH2)4-SO3Na 64 mg、アクリル酸/エチルアクリレート共重合体(共重合質量比5/95)8.8 g、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)0.6 g、流動パラフィン乳化物を流動パラフィンとして1.8 g、水を950 ml混合してバック面保護層塗布液とした。
【0130】《ハロゲン化銀乳剤1の調製》蒸留水1421 mlに1質量%臭化カリウム溶液3.1 mlを加え、さらに0.5 mol/L濃度の硫酸を3.5 ml、フタル化ゼラチン31.7 gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、34℃に液温を保ち、硝酸銀22.22 gに蒸留水を加え95.4 mlに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.9 gを蒸留水にて容量97.4 mlに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後3.5質量%の過酸化水素水溶液を10 ml添加し、さらにベンツイミダゾールの10質量%水溶液を10.8 ml添加した。さらに、硝酸銀51.86 gに蒸留水を加え317.5 mlに希釈した溶液Cと臭化カリウム45.8 gを蒸留水にて容量400 mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で20分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液C及び溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5 mol/L 濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1 mol/L 濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0131】上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンのメタノール溶液を5 ml加え、40分後に分光増感色素Aのメタノール溶液を銀1モル当たり1×10-3モル加え、1分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10-5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1モル当たり1.9×10-4モル加えて91分間熟成した。N,N'-ジヒドロキシ-N"-ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3 mlを加え、さらに4分後に、5-メチル-2-メルカプトベンヅイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり3.7×10-3モル及び1-フェニル-2-ヘプチル-5-メルカプト-1,3,4-トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して4.9×10-3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作成した。
【0132】調製したハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均円相当径0.046μm、円相当径の変動係数20%の純臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の[100]面比率は、クベルカムンク法を用いて80%と求められた。
【0133】《ハロゲン化銀乳剤2の調製》ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温34℃を49℃に変更し、溶液Cの添加時間を30分にして、六シアノ鉄(II)カリウムを除去した以外はハロゲン化銀乳剤1の調製と同様にして、ハロゲン化銀乳剤2の調製を行った。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。さらに分光増感色素Aの添加量を銀1モル当たり7.5×10-4モル、テルル増感剤Bの添加量を銀1モル当たり1.1×10-4モル、1-フェニル-2-ヘプチル-5-メルカプト-1,3,4-トリアゾールを銀1モルに対して3.3×10-3モルに変えた以外はハロゲン化銀乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5-メチル-2-メルカプトベンヅイミダゾール、1-フェニル-2-ヘプチル-5-メルカプト-1,3,4-トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。ハロゲン化銀乳剤2の乳剤粒子は、平均円相当径0.080μm、円相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子であった。
【0134】《ハロゲン化銀乳剤3の調製》ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温34℃を27℃に変更する以外はハロゲン化銀乳剤の調製と同様にして、ハロゲン化銀乳剤3の調製を行った。また、ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。分光増感色素Aの固体分散物(ゼラチン水溶液)の添加量を銀1モル当たり6×10-3モル、テルル増感剤Bの添加量を銀1モル当たり5.2×10-4モルに変えた以外はハロゲン化銀乳剤1と同様にして、ハロゲン化銀乳剤3を得た。ハロゲン化銀乳剤3の乳剤粒子は、平均円相当径0.038μm、円相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子であった。
【0135】《塗布液用混合乳剤Aの調製》ハロゲン化銀乳剤1を70質量%、ハロゲン化銀乳剤2を15質量%、ハロゲン化銀乳剤3を15質量%溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10-3モル添加した。
【0136】(比較用有機酸銀塩Aの調製)ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22-85R)87.6g、蒸留水423ml、5 mol/L NaOH水溶液を48.8ml、tert-ブタノール120mlを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。別に、19.6容量%硝酸銀の水溶液(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635mlの蒸留水と30mlのtert-ブタノールを入れた反応容器を30℃に保温し、撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液を209.4mlを、流量一定でそれぞれ93分と90分かけて添加した。このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液の添加系の配管は、2重管保温とし、外側のジャケット部に80℃の温水を循環することによって添加ノズル先端出口の液温度が75℃に保たれた。さらに、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側のジャケット部に8℃の冷水を循環して、添加ノズル先端出口の液温度を10℃に維持した。ベヘン酸ナトリウム溶液の添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は、撹拌機を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに設置した。
【0137】ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、25℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が100μS/cmになるまで水洗した。こうして有機酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA-217)7.4g及び水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。
【0138】次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM110-S-EH、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、G10Zインタラクションチャンバー使用)の圧力を1,750kg/cm2に調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。得られたベヘン酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.14μm、b=0.4μm、c=0.6μm、平均アスペクト比5.2、平均球相当径0.52μm、球相当径の変動係数15%の鱗片状の結晶であった。(a,b,cは前記に規定されたとおりである)
【0139】(比較用有機酸銀分散物Bの調製)比較用有機酸銀分散物Aと同様の方法によりベヘン酸銀塩を反応させた。ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後20分間かけて25℃に降温し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA-217)の4質量%溶液を108ml添加した。
【0140】得られた混合物を図1に示す限外濾過装置に移液し脱塩処理を行った。限外濾過装置は、有機酸銀分散物をストックするタンク1、ストックされている分散物を限外濾過モジュール3に供給するための循環ポンプ2から基本的に構成され、補充純水計測用流量計4、透過水計測用流量計5、逆方向洗浄用ポンプ6等を有している。使用した膜モジュールは、中空糸タイプの旭化成(株)製ACP-1050で、送液流量は18リットル/分、モジュール前後の圧力差は1.0Kg/cm2とした。電気伝導度が100μS/cmに低下したところで、純水の補充を止め、26質量%まで濃縮した。固形分濃度の測定には京都電子社製デジタル比重計DA-300型を用い、最終的には絶乾質量より検定した。得られたベヘン酸銀の粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均球相当径0.52μmの鱗片状結晶であったが著しく凝集していた。
【0141】(比較用有機酸銀分散物Cの調製)19.6容量%硝酸銀水溶液の添加量を205mlに変更した以外は比較用分散物Bと同様の方法により有機酸銀分散物Cを調製した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.52μmの鱗片状結晶であったが著しく凝集していた。
【0142】(本発明の有機酸銀分散物Dの調製)19.6容量%硝酸銀水溶液の添加量を202.7mlに変更した以外は比較用分散物Bと同様の方法により有機酸銀分散物Dを調製した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.52μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。
【0143】(本発明の有機酸銀分散物Eの調製)19.6容量%硝酸銀水溶液の添加量を196mlに変更した以外は比較用分散物Bと同様の方法により有機酸銀分散物Eを調製した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.53μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。
【0144】(本発明の有機酸銀分散物Fの調製)有機酸銀分散物Eと同様の方法によりベヘン酸銀塩を反応させた。ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後20分間かけて25℃に降温し、ポリビニルアルコールを添加せずに限外濾過を開始した。電気伝導度が1000μS/cmに低下したところでポリビニルアルコール(商品名:PVA-217)の4質量%溶液を108ml添加し、電気電導度が100μS/cmに低下したところで、純水の補充を止め、26質量%まで濃縮した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.53μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。
【0145】(本発明の有機酸銀分散物Gの調製)有機酸銀分散物Eと同様の方法によりベヘン酸銀塩を反応させた。ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後20分間かけて25℃に降温し、ポリビニルアルコールを添加せずに限外濾過を開始した。電気伝導度が1000μS/cmに低下したところでポリビニルアルコール(商品名:PVA-217)の4質量%溶液を108mlと19.6容量%硝酸銀20.4mlを添加し、電気電導度が100μS/cmに低下したところで、純水の補充を止め、26質量%まで濃縮した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.52μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。
【0146】(本発明の有機酸銀分散物Hの調製)19.6容量%硝酸銀水溶液の添加量を189.4mlに変更した以外は比較用分散物Bと同様の方法により有機酸銀分散物Hを調製した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.53μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。
【0147】(本発明の有機酸銀塩Iの調製)19.6容量%硝酸銀水溶液の添加量を182.7mlに変更した以外は比較用分散物Bと同様の方法により有機酸銀分散物Iを調製した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.53μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。
【0148】(本発明の有機酸銀塩Jの調製)19.6容量%硝酸銀水溶液の添加量を178.2mlに変更した以外は比較用分散物Bと同様の方法により有機酸銀分散物Jを調製した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.54μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。
【0149】(本発明の有機酸銀塩Kの調製)19.6容量%硝酸銀水溶液の添加量を167.1mlに変更した以外は比較用分散物Bと同様の方法により有機酸銀分散物Kを調製した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.54μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。
【0150】(比較用有機酸銀塩分散物Lの調製)19.6容量%硝酸銀水溶液の添加量を144.8mlに変更した以外は比較用分散物Bと同様の方法により有機酸銀分散物Lを調製した。得られたベヘン酸銀の粒子は、平均球相当径0.62μmの鱗片状結晶であり粒子凝集は認められなかった。上記ベヘン酸銀分散物のアリカリ金属塩含有量を表1にまとめた。
【0151】《還元剤の25質量%分散物の調製》1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgに水16kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調製し、還元剤分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.42μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0152】《メルカプト化合物の10質量%分散物の調製》1-フェニル-2-ヘプチル-5-メルカプト-1,3,4-トリアゾールを5kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液5kgに水8.3kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5 mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて6時間分散したのち、水を加えてメルカプト化合物の濃度が10質量%になるように調製し、メルカプト分散物を得た。こうして得たメルカプト化合物分散物に含まれるメルカプト化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られたメルカプト化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。また、使用直前に再度孔径10μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過した。
【0153】《有機ポリハロゲン化合物の20質量%分散物−1の調製》トリブロモメチルナフチルスルホン5 kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液2.5 kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液213 gと、水10 kgを添加して、よく混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5 mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2 gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が20質量%になるように調製し、有機ポリハロゲン化合物分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.36μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0154】《有機ポリハロゲン化合物の25質量%分散物−2の調製》有機ポリハロゲン化合物の20質量%分散物−1と同様にして、ただし、トリブロモメチルナフチルスルホン5kgの代わりにトリブロモメチル(4−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)フェニル)スルホン5 kgを用い、分散し、この有機ポリハロゲン化合物が25質量%となるように希釈してろ過を行った。こうして得た有機ポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.38μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0155】《有機ポリハロゲン化合物の30質量%分散物−3の調製》有機ポリハロゲン化合物の20質量%分散物−1と同様にして、ただし、トリブロモメチルナフチルスルホン5kgの代わりにトリブロモメチルフェニルスルホン5kgを用い、20質量%MP203水溶液を5kgとし、分散し、この有機ポリハロゲン化合物が30質量%となるように希釈してろ過を行った。こうして得た有機ポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。また、収納後、使用までは10℃以下で保管した。
【0156】《フタラジン化合物の5質量%溶液の調製》8 Kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57 Kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15 Kgと6-イソプロピルフタラジンの70質量%水溶液14.28 Kgを添加し、6-イソプロピルフタラジンの5質量%液を調製した。
【0157】《顔料の20質量%分散物の調製》C. I. Pigment Blue 60を64 gと花王(株)製デモールNを6.4 gに水250 gを添加し、よく混合してスラリーとした。平均直径0.5 mmのジルコニアビーズ800 gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し顔料分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0158】《SBRラテックス40質量%の調製》限外濾過(UF)精製したSBRラテックスは以下のように得た。下記のSBRラテックスを蒸留水で10倍に希釈したものをUF-精製用モジュールFS03-FC-FUY03A1(ダイセン・メンブレン・システム(株))を用いてイオン伝導度 が1.5 mS/cmになるまで希釈精製し、三洋化成(株)製サンデット-BLを0.22質量%になるよう添加した。さらにNaOHとNH4OHを用いてNa+イオン:NH4+イオン=1:2.3(モル比)になるように添加し、pH8.4に調整した。この時のラテックス濃度は40質量%であった。
(SBRラテックス:-St(68)-Bu(29)-AA(3)-のラテックス)平均粒径0.1μm、40質量%、25℃相対湿度60%における平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.2 mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM-30S使用しラテックス原液(40%)を25℃にて測定)、pH8.2【0159】《乳剤層(感光性層)塗布液の調製》上記で得た有機酸銀分散物A〜Kをそれぞれ103g、顔料の20質量%水分散物を1.1 g、ポリビニルアルコールPVA-205(クラレ(株)製)の20質量%水溶液5 g、上記25質量%還元剤分散物25 g、有機ポリハロゲン化合物分散物-1、-2、及び-3を5:1:3(質量比)で総量16.3 g、メルカプト化合物10%分散物6.2 g、限外濾過(UF)精製しpH調整したSBRラテックス40質量%を106 g、フタラジン化合物の5質量%溶液を18 mlを添加し、塗布前にハロゲン化銀混合乳剤Aを10 gを良く混合し、乳剤層塗布液A〜Kを調製し、これらの塗布液をそのままコーティングダイへ70 ml/m2となるように送液して塗布した。上記乳剤層塗布液の粘度はいずれも東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60 rpm)で85[mPa・s]であった。
【0160】レオメトリックスファーイースト株式会社製RFSフルードスペクトロメーターを使用した25℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000[1/秒]においてそれぞれ1500、220、70、40、20[mPa・s]であった。
【0161】《乳剤面中間層塗布液の調製》ポリビニルアルコールPVA-205(クラレ(株)製)の10質量%水溶液772 g、顔料の20質量%分散物5.3 g、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液226 gにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を2 ml、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を10.5 ml、総量880 gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とし、10 ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で21[mPa・s]であった。
【0162】《乳剤面保護層第1層塗布液の調製》イナートゼラチン64 gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液80 g、フタル酸の10質量%メタノール溶液を23 ml、4-メチルフタル酸の10質量%水溶液23 ml、0.5 mol/Lの硫酸を28 ml、エアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を5 ml、フェノキシエタノール0.5 g、ベンゾイソチアゾリノン0.1 gを加え、総量750 gになるように水を加えて塗布液とし、4質量%のクロムみょうばん26 mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを18.6 ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で17[mPa・s]であった。
【0163】《乳剤面保護層第2層塗布液の調製》イナートゼラチン80 gを水に溶解し、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比64/9/20/5/2)ラテックス27.5質量%液102 g、N-パーフルオロオクチルスルフォニル-N-プロピルアラニンカリウム塩の5質量%溶液を3.2 ml、ポリエチレングリコールモノ(N-パーフルオロオクチルスルホニル-N-プロピル-2-アミノエチル)エーテル[エチレンオキシド平均重合度=15]の2質量%水溶液を32 ml、エアロゾールOT(アメリカンサ イアナミド社製)の5質量%溶液を23 ml、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm)4 g、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径6.4μm)21 g、4-メチルフタル酸1.6 g、フタル酸4.8 g、0.5 mol/L濃度の硫酸を44 ml、ベンゾイソチアゾリノン10 mgに総量650 gとなるよう水を添加して、4質量%のクロムみょうばんと0.67質量%のフタル酸を含有する水溶液445 mlを塗布直前にスタチックミキサーで混合したものを表面保護層塗布液とし、8.3 ml/m2になるようにコーティングダイへ送液した。塗布液の粘度はB型粘度計40℃(No.1ローター、60rpm)で9[mPa・s]であった。
【0164】《熱現像感光材料の作成》上記下塗り支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液を固体微粒子染料の固形分塗布量が0.04 g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7 g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、ハレーション防止バック層を作成した。
【0165】バック面と反対の面に下塗り面から乳剤層(ハロゲン化銀の塗布銀量0.14 g/m2)、中間層、保護層第1層、保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料1〜11を作成した。
【0166】塗布はスピード160m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10〜0.30mmに、減圧室の圧力を大気圧に対して196〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にてイオン風にて除電した。引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。乾燥後、25℃で相対湿度40〜60%で調湿した後、膜面を70〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で感光性層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、感光層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0167】
【化1】

【0168】
【化2】

【0169】(有機酸銀分散物の濾過性の評価)得られた有機酸銀分散物A〜Lを各々500 ml計量し、孔径3.0μmのワットマン社製サイクロポアメンブレンフィルターを用いてアスピレーターで吸引濾過をおこない濾過時間を測定した。結果は分散物Aの濾過時間を100として相対時間で表1にまとめた。
(写真性能の評価)富士メディカルドライレーザーイメージャーFM‐DPL(最大60mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザー搭載)にて写真材料を露光・熱現像(約120℃)し、得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、Dmin、Dmax及び感度(Dminより2.5高い濃度を与える露光量の比の逆数)で評価し、試料Aの感度を100として相対感度で表1に示した。
【0170】
【表1】

【0171】表1より明らかなように、本発明の方法で製造した試料No4〜11は分散性が良好で、かつ低Dmin、高Dmaxであり、感度も高く写真性能が優れていた。また、これらのうち、試料No5〜10において特に上記写真性能の向上が顕著であった。
【0172】
【発明の効果】本発明の方法によれば、反応した有機酸銀塩を固体として取り出し再び分散する必要がなく、反応により生じる不要な副生成無機塩や反応に用いた有機溶媒が除去でき、生産性が大幅に向上される。また、本発明の方法により製造した有機酸銀塩を用いることによって、カブリが低く、高感度で高い黒化濃度を有する熱現像感光材料を製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成12年4月24日(2000.4.24)
【代理人】 【識別番号】100095843
【弁理士】
【氏名又は名称】釜田 淳爾 (外2名)
【公開番号】 特開2001−305691(P2001−305691A)
【公開日】 平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願番号】 特願2000−122767(P2000−122767)