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【発明の名称】 ハロゲン化銀写真感光材料
【発明者】 【氏名】佐藤 忠伸

【氏名】稲葉 正

【要約】 【課題】シアン化物イオンを用いずにより感度の高いハロゲン化銀写真感光材料を提供する。

【解決手段】支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、ジケトン化合物を配位子として少なくとも1つ有する錯体を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、ジケトン化合物を配位子として少なくとも1つ有する錯体を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項2】 乳剤中に含まれるハロゲン化銀粒子が、ジケトン化合物を配位子として少なくとも1つ有する錯体を含有することを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項3】 ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の配位子であるジケトン化合物が、ケトン部分の酸素原子で金属イオンに2座配位していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項4】 ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体が少なくとも2つ以上のジケトン化合物を配位子として有することを特徴とする請求項3に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項5】 ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の配位子であるジケトン化合物がβ−ジケトンまたはγ−ジケトンであることを特徴とする請求項4に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項6】 ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の配位子であるジケトン化合物がβ―ジケトンであることを特徴とする請求項5に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項7】 ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の中心金属がアルカリ土類、第一周期の遷移金属、第二周期の遷移金属、ランタノイド、イリジウム、白金、亜鉛、アルミニウム、または、スズから選ばれる金属または金属イオンであることを特徴とする請求項6に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項8】 ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体が3つのβジケトンを配位子とする錯体であることを特徴とする請求項7に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項9】 ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の配位子がアセチルアセトンであり、その中心金属がバナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、イットリウム、ルテニウム、ロジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、イッテルビウム、イリジウムまたはアルミニウムから選ばれる金属または金属イオンであることを特徴とする請求項8に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。特に、ドーパント技術を用いた高感度なハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ハロゲン化銀粒子を改質し、ハロゲン化銀写真感光材料全体の性能を期待するように改善する技術の一つとして、銀イオンとハライドイオン以外の物質(ドーパント)を組み込む技術(ドープ技術)がある。特に遷移金属イオンのドープ技術については多くの研究がなされてきた。遷移金属イオンはハロゲン化銀粒子中にドーパントして入り込んだ時はその添加量が極めて僅かであっても写真性能を効果的に変えることが一般に認められている。
【0003】ハロゲン化銀乳剤の感度を高めるためには、遷移金属イオンばかりではなく、シアン化物イオンを配位子とする遷移金属錯体をハロゲン化銀粒子中にドープする技術が知られてきた。特にシアン化物イオン6つを配位子とするVIII族金属錯体をドープすることによる高感度化乳剤の開示例が多い。特公昭48−35373号公報はシアン化物イオンを含むドーパントとしてヘキサシアノ鉄(II)錯体である黄血塩、及び、ヘキサシアノ鉄(III)錯体である赤血塩に関して開示している。しかしながら、この発明では、高感化の効果は配位子の種類には関係がなく、鉄イオンを含有する場合に限られるとしている。ヘキサシアノ鉄(II)錯体をドープすることで高感度な乳剤を得た例は他にも数多くあり、例えば、特開平5−66511号公報、米国特許第5,132,203号明細書等に開示されている。鉄錯体以外にもシアノ錯体をドープすることで得られる高感度な乳剤が知られており、特開平2−20853号公報にはレニウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムによる錯体が沃塩化銀にドープされると高感度であるハロゲン化銀乳剤が得られることが開示されている。この他の金属イオンによる錯体も多くドーパントに用いられており、ドープによりもたらされる写真的効果も高感化ばかりではなく、相反則不軌の改良や硬調化等、多岐に及んでいる。米国特許第2,448,060号にはハロゲンイオンを配位子とした白金(II)またはパラジウム(IV)の錯体をドープした乳剤が増感することが示されている。米国特許第3,790,390号には鉄(II)、鉄(III)の各シアノ錯体をドープした乳剤の他にもコバルト(III)のシアノ錯体をドープした乳剤について記載されており、分光増感色素を含むハロゲン化銀乳剤を開示している。米国特許4,847,191号明細書は3、4、5または6個のシアン化物イオンを配位子とするロジウム(III)錯体の存在下で形成したハロゲン化銀粒子を開示している。これらの特許ではドーパントにより高照度不軌が減少することを示している。欧州特許0336425号、同0336426号各明細書および特開平2−20854号各公報には、4個以上のシアノ配位子を有するレニウム、ルテニウム、オスミウム、またはイリジウムをドープしたハロゲン化銀乳剤が開示されている。これらでは感度及び階調の経時安定性の向上、ならびに低照度不軌が改良されることが記載されている。欧州特許0336427号明細書および特開平2−20852号公報にはニトロシルまたはチオニトロシル配位子を含む六配位のバナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、オスミウム、レニウムおよびイリジウム錯体を用いたハロゲン化銀乳剤が記載されており、中照度感度を低下させることのない低照度相反則不軌の改良がもたらされる。遷移金属イオン以外のドーパントとしては、ビスマス、鉛イオンをドープした乳剤が米国特許第3,690,888号に記されており、周期律表第13族および14族に属する金属イオンを含む乳剤が特開平7−128778号公報に記載されている。
【0004】ドーパントとして用いられる錯体の配位子としては、シアン化物イオンを用いることが最も多いと思われるが、ハロゲン化物イオンもまた多く用いられる。例えば、Mを任意の金属とし、[MCl6]n-の構造を有する錯体がドープされる例として、特開昭63−184740号、特開平1−285941号、同2−20852号、同2−20855号各公報等に記載されているヘキサクロロルテニウム、ヘキサクロロイリジウム、ヘキサクロロロジウム、ヘキサクロロレニウムが挙げられる。また、欧州特許0336689号明細書および特開平2−20855号公報には六配位のレニウム錯体で、その配位子にハロゲン、ニトロシル、チオニトロシル、シアン、水、チオシアンが用いられている錯体がドーパントとして開示されており、特開平3−118535号公報には六配位金属錯体の一つの配位子がカルボニルである遷移金属錯体が、さらに同3−118536号公報には六配位金属錯体の2つの配位子が酸素である遷移金属錯体を内部に含有する乳剤が、それぞれ有用な写真性能を有する乳剤として開示されている。
【0005】この様に、ドーパントとして用いられる錯体の中心金属およびその配位子は多岐に渡っているが、さらに近年では有機化合物を配位子とした錯体をハロゲン化銀粒子にドープすることで、その乳剤の性質を変える技術も開示されている。米国特許5,360,712号、同5,457,021号、同5,462,849号各明細書、欧州特許0709724号明細書、特開平7−72569、同8−179452各公報には多くの有機化合物を配位子とする錯体が用いられた例が示されており、特に[(NC)5Fe(μ-4,4'-bipyridine)Fe(CN)5]6- をドープした時に高感化の効果が大きく、[IrCl5(thiazole)]2- 等のイリジウム錯体では高照度不軌が改善されることが記載されている。特開平11−24194号公報では[Fe(CO)4(P(Ph)3)]0、[Fe(CO)3(P(Ph)2)]0をドープすることで高感度で相反則不軌が改良された乳剤を得ている。また、特開平11−102042号公報では[M(CN)5L]3- (M = Fe2+ , Ru2+, Ir3+)、[Fe(CO)4L]0、[M'(CN)3L]- (M' = Pd2+, Pt2+)、[IrCl5L]2-型の錯体において、Lに2-mercaptobenzimidazole、5-methyl-s-triazolo(1.5-A)pyrimidine-7-ol、2-mercapto-1,3,4-oxadiazoleを用いた時に高感度な乳剤が得られている。さらに、特開平10−293377号公報では[RuCl5L']2- (L' = イミダゾール、ベンズイミダゾール及びその誘導体)をドープした乳剤では著しい硬調化が見られ、その時の感度は従来の減感硬調化ドーパントを用いた乳剤より大幅に高くなることが示されている。しかしながら、これらの発明で用いられている錯体中の配位子ではほとんど全てが窒素原子を配位原子とするものであり、酸素原子を配位子とするドーパントはほとんどなく、ケトンの酸素原子が配位した錯体をドーパントとして用いた例は知られていない。
【0006】6配位八面体構造を持った錯体がドーパントとしてハロゲン化銀粒子に組み込まれる際にはJ. Phys.: Condens. Matter9(1997)3227-3240をはじめとする文献や特許に記載される様に、ハロゲン化銀粒子中の[AgX6]5-ユニット(X =ハロゲンイオン)と錯体分子が置き換わり、中心金属がAg+イオンの格子位置を占め、それぞれの配位子がハロゲン化物イオンの格子位置を占めるとされている。このため、米国特許5,360,712号では、ドーパントとして用いる錯体は中心金属の配位サイトのうち半分以上がハロゲンもしくは擬ハロゲンイオンでなくてはならず、なおかつ、配位子として用いることが出来る有機化合物はホストとなる結晶格子中の空間の大きさに対して適切な分子サイズを持たなくてはならないと述べられている。
【0007】その一方で米国特許3,672,901号明細書、特開平2−259749、同4−336537各公報では、[Fe(ETDA)]2- (EDTA = ethylenediaminetetraacetic acid;エチレンジアミン四酢酸)、[Fe(C2O4)3]3- の様に金属イオンの配位サイトにハロゲンまたは擬ハロゲンイオンが結合していない錯体がドーパントとして用いられた例が示されている。先に挙げた米国特許5,360,712号明細書ではこれらのドーパントの効果は大きくないと記されており、これは、これらの錯体では有機化合物が全ての配位サイトを占めることによりハロゲン化銀粒子に取り込まれるために必要であるハロゲンもしくは擬ハロゲンイオンを持つことが出来ないため、ドーパントとしては適当ではないことによるものと記載している。また、特開平5−341426号公報には[Ru(bpy)2Cl2]0 (bpy = 2,2'-bipyridine)を始めとした錯体を添加した乳剤に関して記載されているが、これらの錯体も粒子形成中に添加した場合には効果は大きくなく、粒子形成後、色素と共に粒子表面に添加することで大きな効果が得られると記載されている。
【0008】上記の例の様にこれまでに知られる限りでは、ドーパントとしての錯体がハロゲン化銀粒子内に取り込まれることを考えた場合、有機化合物を配位子とした錯体をドーパントとして用いる時には配位子として用いる有機化合物は中心金属の6つの配位サイトのうち1つないしは2つを占めるのみであり、半分を超える配位サイトもしくは全ての配位サイトが有機化合物で占められた錯体により好ましく写真特性を変化させることが出来た例は知られていない。
【0009】一方、高い感度を持った乳剤を得るためにはドーパント以外にも、化学増感を施すことが必要となる。中でも金増感は代表的な化学増感であるが、シアノ錯体をドープした乳剤では、例えば特開平8−62761号公報に記載される様に、錯体から遊離したシアン化物イオンがハロゲン化銀粒子表面に吸着し、化学増感剤として添加した金イオンと金シアノ錯体を形成し、金増感剤による増感核の形成を阻害する。そのためシアノ錯体をドーパントとした乳剤で金増感するためには、米国特許5,132,203号や欧州特許0508910号明細書記載されている様にシアノ錯体を亜表面にドープしシアノ基をハロゲン化銀粒子表面から遠ざけねばならない。また、この金増感の阻害を防ぐためには特開平6−308653号公報に示されている様に亜鉛等のイオンを添加する方法も知られている。この様に現在までのシアノ錯体に頼ったドーパントによる高感化と、金増感を両立させるためには更なる他の手段を施さなければならない。
【0010】現在のところ、高感度化もたらすドーパントのほとんどがシアン化物イオンを配位子とした錯体であり、上記の金増感の阻害が克服出来た場合にもシアン化合物の強い毒性は残り、これらのことからシアン化物イオンを含まずに高感度化した乳剤を与えるドーパントが望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、シアン化物イオンを用いずにより感度の高いハロゲン化銀写真感光材料を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の課題は下記(1)から(9)のハロゲン化銀写真感光材料により達成された。
【0013】(1)支持体上に少なくとも一層のハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、ジケトン化合物を配位子として少なくとも1つ有する錯体を含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0014】(2)乳剤中に含まれるハロゲン化銀粒子が、ジケトン化合物を配位子として少なくとも1つ有する錯体を含有することを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0015】(3)ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の配位子であるジケトン化合物が、ケトン部分の酸素原子で金属イオンに2座配位していることを特徴とする(1)または(2)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0016】(4)ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体が少なくとも2つ以上のジケトン化合物を配位子として有することを特徴とする(3)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0017】(5)ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の配位子であるジケトン化合物がβ−ジケトンまたはγ−ジケトンであることを特徴とする(4)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0018】(6)ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の配位子であるジケトン化合物がβ―ジケトンであることを特徴とする(5)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0019】(7)ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の中心金属がアルカリ土類、第一周期の遷移金属、第二周期の遷移金属、ランタノイド、イリジウム、白金、亜鉛、アルミニウム、または、スズから選ばれる金属または金属イオンであることを特徴とする(6)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0020】(8)ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体が3つのβジケトンを配位子とする錯体であることを特徴とする(7)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0021】(9)ハロゲン化銀乳剤中に含まれる錯体の配位子がアセチルアセトンであり、その中心金属がバナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、イットリウム、ルテニウム、ロジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、イッテルビウム、イリジウムまたはアルミニウムから選ばれる金属または金属イオンであることを特徴とする(8)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
【0022】
【発明の実施の形態】これまで有機化合物を配位子とする錯体をドーパントとして用いる場合、ほとんどの錯体では配位子として5員環もしくは6員環の複素環化合物が用いられてきた。ハロゲン化銀粒子内への錯体の取り込みを考えると、J. Phys.: Condens.Matter9(1997)3227-3240をはじめとする多くの文献や特許に記載される様に、最も単純な置き換えは6配位八面体の錯体(例えば、6配位八面体のヘキサシアノ錯体、ヘキサクロロ錯体)とハロゲン化銀粒子中の[AgX6]5-(X- = ハロゲンイオン) が一つのユニットとして粒子の一部と置き換わる場合である。これに対して、複素環化合物が配位子となった場合には錯体分子の分子サイズが増大するため、[AgX6]5-ユニットだけと置き換えが立体的に難しくなることが推測される。この問題を解決するためには、特開平11−102042号公報に記載される様に配位子内に吸着基を導入し粒子形成中に成長する粒子表面への吸着を強める等、何らかの方策が必要と考えられる。5員環もしくは6員環の複素環化合物以外の有機化合物を配位子としたドーパントの例としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、シュウ酸を用いた例があるが、これまでに公開された特許からはこれらのドーパントによって得られる効果の有用性は明確ではない。また、配位子にDMSO (ジメチルスルホキシド)を用い高感化乳剤を得た例があるが、これは[Fe(CN)5(DMSO)]3- である様にヘキサシアノ錯体の性質を変化させない錯体を用いたに過ぎなかった。
【0023】高感化ドーパントとなるためにはBulgarian Chem. Commun.,20(1993) 350-368、Radiat. Eff. Defects Solids135(1995)101-104、J. Phys.: Condens Matter,9(1997)3227-3240等に示されている様な6シアノ錯体を用い、ハロゲン化銀粒子内にクーロン場による浅い電子トラップを導入することが必要である考えられる。これは、配位子として用いたシアン化物イオンが強い配位子場効果をもたらすものであり、即ち、金属から配位子へ電子を供与(逆供与)することによりπ結合を形成し、このπ結合が中心金属の最高被占準位であるt2g 軌道のさらなる安定化、金属−配位子距離の短縮、金属イオンの有効正電荷の増大をもたらし、これらの結果として金属のd軌道の大きな分裂を与え、この効果によってドープする錯体の eg軌道(錯体の最低空軌道となる)がハロゲン化銀の伝導帯の底より高いエネルギーを持ち、電子捕獲とは無関係な準位となることで初めてクーロン場による浅い電子トラップを導入することが出来る。特に、ICPS, 1998, Finalprogram and Proceedings, Vol. 1, p.89 、ICPS, 1998, Final program and Proceedings, Vol. 1, p.92 、特開平8−286306号公報に示される様に、Fe2+、Ru2+の様な2価の金属イオンを中心金属として用いた時には、Ag+とX - (X-= ハロゲンアニオン)とからなる粒子の環境に+1の過剰電荷を導入することにより、クーロン場による適切な深さを持った光電子トラップが導入され、これにより露光によって生じた光電子が失活するまでの時間が長くなり、写真感度は著しく上昇する。複素環化合物を配位子とする場合、シアン化物イオンに近い強い配位子場効果をもたらすことが一般に知られており、ヘキサシアノ錯体と同様に伝導帯の底より高いエネルギー準位に錯体の最低空軌道を置くことが出来ると考えられる。つまり、複素環化合物はこの配位子場分裂を大きくするために必要な配位子であったと言うことが出来、それに適した化合物は5員環、6員環の複素環化合物である様な大きな分子サイズを持った化合物であった。また、複素環構造を持たない有機化合物では明確な高感化を示すドーパントはこれまでにないことからもこの配位子場効果の重要性が認識される。
【0024】しかしながら、先にも述べた様に、これらの効果を与える複素環化合物は錯体のハロゲン化銀粒子内への取り込みを考えると決して有利には働かない。有機化合物を配位子とした錯体をドーパントとして用いる場合に、ハロゲン化銀粒子への取り込みについて有利であると考えられる配位子は、分子サイズが小さいか配位子自身が負電荷を持ち[AgX6]5-ユニットに出来るだけ似た状況の錯体であると考えられる。分子サイズの小さな化合物を配位子とする場合には、錯体の安定性を維持するために2座で配位する化合物を用いることがよいと考えられる。その例として、エチレンジアミンを始めとするジアミン系の配位子やアセチルアセトンを始めとするジケトン系の配位子が挙げられるが、配位原子が二重結合または共役系に含まれることから、小サイズのドーパントとしてはジケトン化合物を配位子とすることが好ましいといえる。中でもβ−ジケトンが最も好ましく、特にアセチルアセトン及びその誘導体(メチル基部分の置換体)は金属イオンに配位した際には負電荷を持った配位子となることで良く知られており、小サイズおよび負電荷を持つという条件を満たし、特に好ましい配位子であると言える。
【0025】本発明において有機化合物とは、鎖式または環式の炭化水素を母体構造とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団によって置き換えられた化合物を指す。本発明で好ましく用いられるジケトン化合物中の置換基としては任意の置換基を用いることが出来るが、具体的に好ましくは、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基(メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、t-オクチル基、イソデシル基、イソステアリル基、ドデシルオキシプロピル基、トリフルオロメチル基等)、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基等)、置換もしくは非置換アリール基(フェニル基、p-トリル基、p-アニシル基、p-クロロフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、2, 4-ジ-t-アミノフェニル基等)、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、メルカプト基、ヒドキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、ドデシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、p-トリルオキシ基、4-t-ブチルフェノキシ基等、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、置換もしくは非置換アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチルアニリノ基等)、アシル基(ホルミル基、アセチル基等)である。また、ここで、これらの分子中で隣接する置換基は、閉環して飽和炭素環、芳香族炭素環またはヘテロ芳香環を形成してもよい。
【0026】以下に本発明で好ましい配位子の具体例を示すが、発明で用いる配位子はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0027】
【化1】

【0028】本発明の中心金属としては特に制限はないが、J. Phys.: Condens. Matter9(1997) 3227-3240 をはじめとする多くの文献や特許に記載される様に、6配位八面体錯体がドーパントとしてハロゲン化銀粒子に組み込まれる時には、ハロゲン化銀粒子中の[AgX6]5-(X- = ハロゲンイオン) を一つのユニットとして粒子の一部とドーパントが置き換わると考えると、金属周りの配位構造が4配位構造をとるもの、または、6配位構造をとるものが好ましい。より好ましくは、配位子置換が不活性な金属イオンであり、Chem. Eng. News, April 1, p.68 (1968) の分類に従えば、水溶液中で金属イオン周りの配位水との交換速度定数が108s-1より小さいもの、さらに好ましくは交換速度定数が104s-1より小さいもの、特に好ましくは10-3 s-1より小さいものである。具体的に好ましくは、鉄、ルテニウム、マンガン、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、金、亜鉛、チタン、クロム (II価を除く)、オスミウム、カドミウム、水銀の各金属イオンであり、中でも特に好ましくは、鉄、ルテニウム、マンガン、コバルト、ロジウム、イリジウム、チタン、クロム、オスミウムであり、最も好ましくは鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウムの各イオンである。
【0029】以下に本発明の錯体の具体例を示すが、発明の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】本発明でドープする錯体分子の多くは無電荷であるが、水またはアルコールに全く不溶なものは少ない。錯体分子が陰イオンとなり陽イオンと塩を成した時、その対陽イオンとしては、水に溶解しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。アルキルアンモニウムイオン中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基から選ばれる基であることが好ましく、中でも4つのアルキル基が全て同一の基である化合物が最も好ましい。
【0033】本発明の錯体は、ハロゲン化銀粒子形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加し、粒子形成反応溶液に添加することにより、ハロゲン化銀粒子内に含有させるのが好ましい。さらにこれらの方法を組み合わせてハロゲン化銀粒子内へのドープを行ってもよい。
【0034】本発明の錯体をハロゲン化銀粒子にドープする場合、粒子内部に均一に存在させてもよいし、特開平4−208936号、特開平2−125245号、特開平3−188437号各公報に開示されている様に、粒子表面層にドープしてもよく、粒子内部のみに錯体をドープし粒子表面にはドープなしの層を付加してもよい。本発明では粒子表面層にドープすることが好ましい。また、米国特許第5,252,451号および5,256,530号明細書に開示されているように、ドープさせた微粒子で物理熟成して粒子表面相を改質してもよい。また、錯体をドープした微粒子を調製し、その微粒子を添加し物理熟成することにより、ハロゲン化銀粒子に錯体をドープさせる方法も好ましい。さらに、上記ドープ方法を組み合わせて用いてもよい。
【0035】錯体のドープ量は、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-9モル以上1×10-2モル以下が適当であり、好ましくは1×10-7以上1×10-3モル以下である。
【0036】本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いるハロゲン化銀乳剤はハロゲン化銀として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、沃塩化銀、沃臭化銀を用いることができるが、純塩化銀乳剤を用いるよりも臭化物イオンまたは沃化物イオンを含む乳剤であることがより好ましい。ハロゲン化銀粒子のサイズに制限はないが、球相当径で0.01〜3μm の粒子であれば好ましい。ハロゲン化銀粒子の形状は、規則的な結晶系(正常晶粒子)でも、不規則な結晶系でもよいが、正常晶粒子であることがより好ましい。正常晶粒子には立方体、八面体、十二面体、十四面体、二十面体及び四十八面体が含まれる。不規則な結晶形には、球状およびじゃがいも状が含まれる。また、本発明の錯体をドープするには双晶面を一枚以上有する形状の粒子を用いてもよく、平行な双晶面を二枚あるいは三枚有する角形平板粒子及び三角形平板状粒子が好ましく用いられる。さらに平板状粒子においては、その粒子サイズ分布が単分散であればより好ましい。単分散平板状粒子の調製については特開昭63−11928号公報に記載がある。単分散六角形平板状粒子については、特開昭63−151618号公報に記載がある。円形単分散平板状粒子乳剤については、特開平1−131541号公報に記載がある。また、特開平2−838号公報には、全投影面積の95%以上が主平面に平行な二枚の双晶面を持つ平板粒子で占められており、かつ該平板状粒子のサイズ分布が単分散である乳剤が開示されている。欧州特許514742A号明細書には、ポリアルキレンオキサイドブロックポリマーを用いて調製された粒子サイズの変動係数が10%以下の平板状粒子乳剤が開示されている。これらの技術を用いることで本発明で好ましい単分散粒子を調製することが出来る。
【0037】また、平板状粒子はその主平面が(100)と(111)のものが知られており、前者については、臭化銀に関して米国特許4,063,951号明細書および特開平5−281640号公報に記載があり、塩化銀に関して欧州特許0534395A1号および米国特許5,264,337号各明細書に記載がある。後者の平板状粒子は上記の双晶面を一枚以上有する種々の形状を有する粒子であり、塩化銀に関しては米国特許4,399,215号、同4,983,508号、同5,183,732号各明細書、特開平3−137632号および同3−116113号各公報に記載がある。本発明のドーパントは主平面が(100)の平板粒子に対しても(111)の平板粒子に対しても好ましく適応することが出来る。
【0038】ハロゲン化銀粒子は、転位線を粒子内に有してもよい。ハロゲン化銀粒子中に転位をコントロールして導入する技術に関しては、特開昭63−220238号公報に記載がある。この公報によれば、平均粒子径/粒子厚み比が2以上の平板状ハロゲン化銀粒子内部に特定の高ヨード相を設け、その外側を該高ヨード相よりもヨード含有率が低い相で覆うことによって転位を導入することが出来る。この転位の導入により、感度の上昇、保存性の改善、潜像安定性の向上、圧力カブリの減少等の効果が得られる。この公報記載の発明によれば、転位は主に平板粒子のエッジ部分に導入される。また、中心部に転位が導入された平板粒子については、米国特許5,238,796号明細書に記載がある。さらに、特開平4−348337号公報には、内部に転位を有する正常晶粒子が開示されている同公報には正常晶粒子に塩化銀または塩臭化銀のエピタキシーを生成し、そのエピタキシーを物理熟成および/またはハロゲンによるコンバージョンによって転位を導入出来ることが開示されている。本発明におけるハロゲン化銀粒子には高ヨード相を設ける方法でも塩臭化銀エピタキシーを生成する方法でも転位を導入することが出来、これらの様な転位の導入によって、感度の上昇および圧力カブリの減少という効果が得られた。ハロゲン化銀粒子中の転位線は、例えば、J. F. Hamilton, Photo. Sci. Eng. 1967, 11, 57 や、T. Shiozawa, J. Soc. Photo Sci. JAPAN, 1972, 35, 213によって記載の低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接法により観察することが出来る。すなわち、乳剤から転位が発生するほどの圧力をかけないように注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時、粒子の厚みが厚いほど電子線が透過しにくくなるので、高圧型(0.25μmの厚さに対し200 kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。この様な方法により得られた粒子の写真により、主平面に対し垂直な面から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることが出来る。本発明は、ハロゲン化銀粒子のうち、50%以上の個数の粒子が一粒子当たり10本以上の転位線を含む場合に効果がある。
【0039】ハロゲン化銀乳剤の調製において、粒子形成時から塗布時までに添加することの出来る添加剤について特に制限はない。結晶形成課程で成長を促進するために、また、粒子形成時および/または化学増感時に化学増感を効果的にならしめるためにハロゲン化銀溶剤を用いることができる。好ましいハロゲン化銀溶剤としては、水溶性チオシアン酸塩、アンモニア、チオエーテルやチオ尿素類が利用可能である。ハロゲン化銀溶剤の例としては、チオシアン酸塩(米国特許2222264号、同2448534号、同3320069号各明細書記載)、アンモニア、チオエーテル化合物(米国特許3271157号、同3574628号、同3704130号、同4297439号、同4276347号明細書記載)、チオン化合物(特開昭53−144319号、同53−82408号、同55−77737号各公報記載)、アミン化合物(特開昭54−100717号公報記載)、チオ尿素誘導体(特開昭55−2982号記載)、イミダゾール類(特開昭54−100717公報記載)および置換メルカプトテトラゾール(特開昭57−202531号公報記載)を挙げることができる。
【0040】ハロゲン化銀乳剤の製造方法については特に制限はない。一般に、ゼラチン水溶液を有する反応溶液に、効率のよい撹拌のもとに銀塩水溶液およびハロゲン塩水溶液を添加する。具体的方法としては、P. Glafkides著 Chimie et PhysiquePhtographique (Paul Montel 社刊、1967年)、G. F. Dufin 著 PhotographicEmulsion Chemistry (The Forcal Press 刊、1966年)、V. L. Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion (The Forcal Press 刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することが出来る。すなわち酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては、片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせ等のいずれを用いても良い。本発明では同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、即ち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を好ましく用いる。また硝酸銀やハロゲン化アルカリ水溶液の添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方法(英国特許1535016号明細書、特公昭48−36890号および同52−16364号各公報に記載)や水溶液濃度を変化させる方法(米国特許4242445号明細書および特開昭55−158124号に記載)を用いて臨界過飽和度を超えない範囲において早く成長させることが好ましい。これらの方法は、再核発生を起こさず、ハロゲン化銀粒子が均一に成長するため、好ましく用いることが出来る。
【0041】反応容器に銀塩溶液とハロゲン溶液を添加する代わりに、あらかじめ調製された微粒子を反応容器に添加して、核形成および/または粒子成長を起こさせて、ハロゲン化銀粒子を得る方法を使うこともまた好ましい。この技術に関しては、特開平1−183644号、同1−183645号、同2−44335号、同2−43534号、同2−43535号各公報および米国特許4879208号明細書に記載されている。この方法によれば、乳剤粒子結晶内のハロゲンイオンの分布を完全に均一にすることが出来、好ましい写真特性を得ることが出来る。さらに本発明においては、種々の構造を持った乳剤粒子を用いることができる。粒子内部(コア部)と外側(シェル部)から成る、いわゆるコア/シェル二重構造粒子、さらに三重構造粒子(特開昭60−222844号公報に記載)や、それ以上の多層構造粒子が用いられる。乳剤粒子の内部に構造を持たせる場合、上述のような包み込む構造だけでなく、いわゆる接合構造を有する粒子を作ることも出来る。これらの例は、特開昭58−108526号、同59−16254号、同59−133540号、特公昭58−24772号各公報および欧州特許199290A2号明細書に記載されている。接合する結晶は、ホストとなる結晶と異なる組成をもってホスト結晶のエッジやコーナー部、あるいは面部に接合して成長させることが出来る。この様な接合結晶は、ホスト結晶がハロゲン組成に関して均一であっても、あるいはコア−シェル型の構造を有するものであっても形成させることができる。接合構造の場合には、ハロゲン化銀同士の組み合わせは当然可能であるが、ロダン銀、炭酸銀などの岩塩構造でない銀塩化合物をハロゲン化銀と組み合わせて接合粒子をとることが可能あれば用いてもよい。
【0042】これらの構造を有するヨウ臭化銀粒子の場合、例えばコア−シェル型の粒子において、コア部のヨウ化銀含有量が高く、シェル部のヨウ化銀含有率が低くても、また逆にコア部のヨウ化銀含有率が低く、シェル部のヨウ化銀含有率が高い粒子でもよい。同様に接合構造を有する粒子についても、ホスト結晶のヨウ化銀含有率が高く、接合結晶のヨウ化銀含有率が相対的に低い粒子であっても、その逆の粒子であってもよい。また、これらの構造を有する粒子の、ハロゲン組成の異なる境界部分は明確な境界であっても、組成差により混晶を形成して不明確な境界であってもよく、また積極的に連続的な構造変化を付けたものでもよい。本発明に用いるハロゲン化銀乳剤は、粒子に丸みをもたらす処理(欧州特許0096727B1号および同0064412B1号各明細書に記載)、あるいは表面の改質処理(独国特許2306447C2号明細書および特開昭60−221320号公報に記載)を行ってもよい。ハロゲン化銀乳剤は表面潜像型が好ましい。ただし、特開昭59−133542号公報に開示されている様に、現像液あるいは現像の条件を選ぶことにより内部潜像型の乳剤も用いることが出来る。また、うすいシェルをかぶせる浅内部潜像型乳剤も目的に応じて用いることが出来る。
【0043】ハロゲン化銀乳剤は、通常分光増感される。分光増感色素としては、通常メチン色素を用いることが好ましい。メチン色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。これらの色素類には、塩基性ヘテロ環としてシアニン色素類に通常利用される環のいずれをも適用できる。塩基性ヘテロ環の例としては、ピロリン環、オキサゾリン環、チアゾリン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、イミダゾール環、テトラゾール環およびピリジン環を挙げることができる。また、ヘテロ環に環式炭化水素環や芳香族炭化水素環が縮合した環も利用出来る。縮合環の例としては、インドレニン環、ベンズインドレニン環、インドール環、ベンズオキサドール環、ナフトオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ベンズイミダゾール環およびキノリン環を挙げることが出来る。これらの環の炭素原子上に置換基が結合していてもよい。メロシアニン色素または複合メロシアニン色素には、ケトメチレン構造を有する5員または6員のヘテロ環を適用することが出来る。その様なヘテロ環の例としてしては、ピラゾリン−5−オン環、チオヒダントイン環、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン環、チアゾリジン−2,4−ジオン環、ローダニン環及びチオバルビツール酸環を挙げることが出来る。
【0044】増感色素の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり 0.001〜100 ミリモルであることが好ましく、0.01〜10ミリモルであることがさらに好ましい。増感色素は好ましくは化学増感中または化学増感前(例えば、粒子形成時や物理熟成時)に添加される。
【0045】本発明においては、ハロゲン化銀粒子の化学増感後の固有吸収の波長を持った光での感度(固有感度)が改良される。すなわち、約 450nmより長波の光に対する分光増感色素がハロゲン化銀粒子表面に吸着することに起因する減感(増感色素による固有減感)を、本発明の各錯体をドープすることによって減少させることが出来る。本発明はハロゲン化銀の固有感度が増加する効果に加えて、増感色素による固有減感をより有効に防止出来るという効果も有する。
【0046】増感色素と共に、それ自身分光増感作用を示さない色素、あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質をハロゲン化銀乳剤に添加してもよい。この様な色素または物質の例には、含窒素複素環基で置換されたアミノスチル化合物(米国特許第2,933,390号および同3,635,721号各明細書に記載)、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮合物(米国特許第3,743,510号明細書に記載)、カドミウム塩およびアザインデン化合物が含まれる。増感色素と上記色素または物質との組み合わせについては、米国特許第3,615,613号、同3,615,641号、同3,617,295号および同3,635,721号各明細書に記載がある。
【0047】ハロゲン化銀乳剤は、一般に化学増感を行って使用する。化学増感としてはカルコゲン増感(硫黄増感、セレン増感、テルル増感)、貴金属増感(例、金増感)及び還元増感をそれぞれ単独あるいは組み合わせて実施する。本発明では硫黄増感と金硫黄増感を組み合わせた化学増感を好ましく用いたが、セレン増感、テルル増感を用いることも好ましい。硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を増感剤として用いる。不安定硫黄化合物については、P.Glafkides著、Chimie et Physique Photographeque (Paul Montel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌307巻307105号、T.H.James編集、The Theory of the Photographic Process(Macmillan社刊、1977年、第4版)、H.Frieser著、Die Grundlagender Photographischen Prozess mit Silver-halogeniden (Akademische Verlags-geselbshaft、1968年)に記載がある。硫黄増感剤の例には、チオ硫酸塩(例、チオ硫酸ナトリウム、p−トルエンチオスルフォネート)、チオ尿素類(例、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、N−エチル−N'−(4−メチル−2−チアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例、チオアセトアミド、N−フェニルチオアセトアミド)、ローダニン類(例、ローダニン、N−エチルローダニン、5−ベンジリデンローダニン、5−ベンジリデン−N−エチル−ローダニン、ジエチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4−オキソ−オキサゾリジン−2−チオン類、ジポリスルフィド類(例、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、ヘキサチオカン−チオン)、メルカプト化合物(例、システイン)、ポリチオン酸塩および元素状硫黄が含まれる。活性ゼラチンも硫黄増感剤として利用出来る。
【0048】セレン増感においては、不安定セレン化合物を増感剤として用いる。不安定セレン化合物については、特公昭43−13489号、同44−15748号、特開平4−25832号、同4−109240号、同4−271341号および同5−40324号各公報に記載がある。セレン増感剤の例には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例、N,N−ジメチルセレノ尿素、トリフルオロメチルカルボニル−トリメチルセレノ尿素、アセチル−トリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例、セレノアセトアミド、N,N−ジエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニル−トリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例、トリ−p−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例、セレノベンゾフェノン)イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類およびジアシルセレニド類が含まれる。なお、亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類やセレニド類のような比較的安定なセレン化合物(特公昭46−4553号および同52−34492号各公報記載)も、セレン増感剤として利用出来る。
【0049】テルル増感剤においては、不安定テルル化合物を増感剤として用いる。不安定テルル化合物についてはカナダ国特許第800,958号、英国特許第1,295,462号、同1,396,696号号各明細書、特開平4−204640号、同4−271341号、同4−333043号および同5−303157号各公報に記載がある。テルル増感の例には、テルロ尿素類(例、テトラメチルテルロ尿素、N,N’−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N’−ジフェニルエチレンテルロ尿素)、フォスフィンテルリド類(例、ブチル−ジイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシ−ジフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、イソテルロシアナート類(例、アリルイソテルロシアナート)、テルロケトン類(例、テルロアセトン、テルロアセトフェノン)、テルロアミド類(例、テルロアセトアミド、N,N−ジメチルテルロベンズアミド)、テルロヒドラジド類(例、N,N',N'−トリメチルテルロベンズヒドラジド)、テルロエステル類(例、t−ブチル−t−ヘキシルテルロエステル)、コロイド状テルル、(ジ)テルリド類及びその他のテルル化合物(例、ポタシウムテルリド、テルロペンタチオネートナトリウム塩)が含まれる。
【0050】貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属の塩を増感剤として用いる。貴金属塩については、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌 307巻307105号に記載がある。金増感が特に好ましい。金増感の例には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドが含まれる。また、米国特許第2,642,361号、同5,049,484号、同5,049,485号各明細書に記載の金化合物も用いることが出来る。
【0051】還元増感においては、還元性化合物を増感剤として用いる。還元性化合物については、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure 誌 307巻307105号に記載がある。還元増感剤の例には、アミノイミノメタンスルフィン酸(二酸化チオ尿素)、ボラン化合物(例、ジメチルアミンボラン)、ヒドラジン化合物(例、ヒドラジン、p−トリルヒドラジン)、ポリアミン化合物(例、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン)、塩化第1スズ、シラン化合物、レダクトン類(例、アスコルビン酸)、亜硫酸塩、アルデヒド化合物および水素が含まれる。また、高pHや銀イオン過剰(いわゆる銀熟成)の雰囲気によって、還元増感を実施することも出来る。
【0052】化学増感は二種以上を組み合わせて実施してもよい。組合せとしては、カルコゲン増感と金増感の組合せが特に好ましい。また、還元増感はハロゲン化銀粒子の形成時に施すのが好ましい。増感剤の使用量は、一般に使用するハロゲン化銀粒子の種類と化学増感の条件により決定する。カルコゲン増感剤の使用量は、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モルであり、10-7〜5×10-3モルであることが好ましい。貴金属増感剤の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モルであることが好ましい。化学増感の条件に特に制限はない。pAgとしては6〜11であり、好ましくは7〜10である。pHは4〜10であることが好ましい。温度は40〜95℃であることが好ましく、45〜85℃であることがさらに好ましい。
【0053】ハロゲン化銀乳剤は、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることが好ましい。この様な化合物の例には、アゾール類(例、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロインダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンズイミダゾール類(特にニトロ−またはハロゲン置換体))、ヘテロ環メルカプト化合物類イミダゾール類(例、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類、(特に、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)、メルカプトピリミジン類)、カルボキシル基やスルホン基などの水溶性基を有する上記のヘテロ環メルカプト化合物類、チオケト化合物(例、オキサゾリンチオン)、アザインデン類(例、テトラアザインデン類(特に、4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類))、ベンゼンチオスルホン酸類及びベンゼンスルフィン酸が含まれる。一般にこれらの化合物は、カブリ防止剤または安定剤として知られている。
【0054】カブリ防止剤または安定剤の添加時期は、通常、化学増感を施した後に行われる、しかし、化学増感の途中または化学増感の開始以前の時期の中から選ぶことも出来る。すなわち、ハロゲン化銀乳剤粒子形成過程において、銀塩溶液の添加中でも、添加後から化学増感開始までの間でも、化学増感の途中(化学増感時間中、好ましくは開始から50%までの時間内により好ましくは20%までの時間以内)でもよい。
【0055】ハロゲン化銀写真材料の層構成について特に制限はない。但し、カラー写真材料の場合は、青色、緑色および赤色光を別々に記録するために多層構造を有する。各ハロゲン化銀乳剤層は高感度層と低感度層に二層からなっていてもよい。実用的な層構成の例を下記(1)〜(6)に挙げる。
【0056】
(1)BH/BL/GH/GL/RH/RL/S(2)BH/BM/BL/GH/GM/GL/RH/RM/RL/S(3)BH/BL/GH/RH/GL/RL/S(4)BH/GH/RH/BL/GL/RL/S(5)BH/BL/CL/GH/GL/RH/RL/S(6)BH/BL/GH/GL/CL/RH/RL/S【0057】Bは青色感性層、Gは緑色感性層、Rは赤色感性層、Hは最高感度層、Mは中間感度層、Lは低感度層、Sは支持体、そしてCLは重層効果付与層である。保護層、フィルター層、中間層、ハレーション防止層や下引層のような非感光性層は省略してある。同一感色性の高感度層と低感度層を逆転して配置してもよい。(3)については、米国特許4,184,876号明細書に記載がある。(4)については、Research Disclosure 誌 225巻22534号、特開昭59−177551号および同59−177552号各公報に記載がある。また、(5)と(6)については、特開昭61−34541号公報に記載がある。好ましい層構成は(1)、(2)および(4)である。本発明のハロゲン化銀写真材料は、カラー写真材料以外にも、X線感光材料、黒白撮影感光材料、製版用感光材料や印画紙にも同様に適用することが出来る。
【0058】ハロゲン化銀乳剤の種々の添加剤(例、バインダー、化学増感剤、分光増感剤、安定剤、ゼラチン、硬化剤、界面活性剤、帯電防止剤、ポリマーラテックス、マット剤、カラーカプラー、紫外線吸収剤、退色防止剤、染料)、写真材料の支持体および写真材料の処理方法(例、塗布方法、露光方法、現像処理方法)については、Research Disclosure 誌 176巻17643号(RD-17643)、同 187巻18716号(RD-18716)、同 225巻22534号(RD-22534)の記載を参考にすることが出来る。これらのResearch Disclosure 誌に記載を以下の一覧表に示す。
【0059】
────────────────────────────────── 添加剤種類 RD-17643 RD-18716 RD-22534──────────────────────────────────1 化学増感剤 23頁 648頁右欄 24頁2 感度上昇剤 同上3 分光増感剤、 23〜24頁 648頁右欄 24〜28頁 強色増感剤 〜649頁右欄4 増 白 剤 24頁5 被り防止剤、 24〜25頁 649頁右欄 24頁、31頁 安定化剤6 光吸収剤、 25〜26頁 649頁右欄 フィルター染料、 〜650 頁左欄 紫外線吸収剤7 ステイン防止剤 25頁右欄 650頁左欄〜右欄8 色素画像安定剤 25頁 32頁9 硬 膜 剤 26頁 651頁左欄 32頁10 バインダー 26頁 同上 28頁11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650頁右欄12 塗布助剤、 26〜27頁 同上 表面活性剤13 スタチック防止剤 27頁 同上14 カラーカプラー 25頁 649頁 31頁──────────────────────────────────【0060】ゼラチン硬化剤としては、例えば、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンおよびそのナトリウム塩など)および活性ビニル化合物(1,3−ビスビニルスルホニル−2−プロパノール、1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンあるいはビニルスルホニル基を鎖に有するビニル系ポリマーなど)は、ゼラチンなど親水性コロイドを早く硬化させ安定な写真特性を与えるので好ましい。N−カルバモイルピリジニウム塩類((1−モルホリノカルボニル−3−ピリジニオ)マタンスルホナートなど)やハロアミジニウム塩類(1−(1−クロロ−1−ピリジノメチレン)ピロリジニウム2−ナフタレンスルホナートなど)も硬化速度が早く好ましく用いることが出来る。
【0061】カラー写真材料は、Research Disclosure 誌 176巻17643号、同 187巻18716号、に記載された通常の方法によって現像処理することが出来る。カラー写真感光材料は、現像、漂白定着もしくは定着処理の後に通常、水洗処理または安定剤処理を施す。水洗工程は二槽以上の槽を向流水洗にし、節水するのが一般的である。安定化処理としては水洗工程のかわりに特開昭57−8543号公報記載の様な多段向流安定化処理が代表例として挙げられる。
【0062】
【実施例】以下に、本発明を具体例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】実施例1「乳剤1-1;臭化銀八面体乳剤の試料の調製(1)」870 mlの水に36 gの脱イオンゼラチンと0.25 gの臭化カリウムを加えて溶解した。75℃に保ったこのゼラチン水溶液中に撹拌しながら0.083M硝酸銀水溶液(溶液1)36mlと0.087M臭化カリウム水溶液(溶液2)36mlを10分間ダブルジェット法で定量添加し、続いて溶液1と溶液2の各々176 mlを7分間でダブルジェット法で添加した。その後、0.82 M硝酸銀水溶液(溶液3)675 mlを始め1.8 ml/minの流速から流量を加速して60分間添加を行い、同時に0.83M臭化カリウム水溶液(溶液4)をpBrを2.93に保つようにコントロールしながら添加した。続いて223mlの溶液3を25分間でさらに定量添加し、同時に溶液4と同じ濃度の臭化カリウム水溶液(溶液5)をpBrを2.93に保つようにコントロールしながら添加した。溶液添加終了5分後、35℃まで降温し、通常の沈降法により可溶性塩類を除去した後、再び40℃に昇温し、50 gゼラチンを追添して溶解し、さらに臭化カリウム、2−フェノキシエタノールを添加、pHは 6.5に調整した。得られた粒子は辺長0.7 μm の単分散臭化銀八面体であった。
【0064】「乳剤1-2:[Fe(CN)6]4をドープした臭化銀八面体乳剤」(比較例)
乳剤1-1の調製方法において、溶液5に[Fe(CN)6]4- をこの部分に添加される銀1モルに対して2.5×10-4モルの割合でそれぞれ添加することによって乳剤1-2を得た。(この部分に添加される銀量は全銀量の25%に相当し、これらのドーパントは粒子体積で75%〜100%の表面層に添加されたことになる)【0065】「乳剤1-3〜1-5:[Ru(bpy)2Cl2]0、[Pd(CN)3(py)] -、[Co(CN)4(en)] -をドープした臭化銀八面体乳剤」(比較例)
乳剤1-1の調製方法において、[Ru(bpy)2Cl2]0 (bpy = 2,2'-bipyridine)、[Pd(CN)3(py)] - (py = pyridine)、[Co(CN)4(en)] - (en = ethylenediamine)を0.21MのKBr水溶液に溶解し、溶液3及び溶液4、5を添加すると同時にトリプルジェットで添加した。この錯体溶液の添加は溶液5の添加が始まって15分後に終了した。[Ru(bpy)2Cl2]0、[Pd(CN)3(py)] -、[Co(CN)4(en)] -はそれぞれこの部分に添加される銀1モルに対して1×10-4モルの割合で添加する様に濃度を定めた。この方法により乳剤1-3〜1-5を得た。
【0066】「乳剤1-6〜1-9:本発明の各錯体をドープした臭化銀八面体乳剤」(本発明)
乳剤1-1の調製方法において、本発明の[Co(acac)3]0 (acac = acethylacetone)、[Ru(acac)3]0、[Ru(acac)2Cl2]-、または、[Ru(acac)Cl4]2- を0.21MのKBr水溶液に溶解し、溶液3及び溶液4、5を添加すると同時にトリプルジェットで添加した。この錯体溶液の添加は溶液5の添加が始まって15分後に終了した。各錯体はこの部分に添加される銀1モルに対して1×10-4モルの割合で添加する様に濃度を定めた。この方法により乳剤1-6〜1-9を得た。
【0067】上記の臭化銀乳剤1-1〜1-9に銀1モルあたり8.0×10-6モルのチオ硫酸ナトリウムと9.6×10-6モルの塩化金酸及び3.4×10-4モルのチオシアン酸カリウムを添加し60℃で最適に化学増感した。これら化学増感した乳剤1-1〜1-9に下記の増感色素■を4.9×10-4モル/モルAg加えて分光増感を施し、それぞれゼラチン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加えて、下塗層を有するトリアセチルセルロースフィルム支持体上に、ゼラチン、ポリメチルメタクリレート粒子、2, 4-ジクロロ-6-ヒドロキシ-s-トリアジンナトリウム塩を含む保護層と共に押し出し法によりそれぞれ銀量2g/m2で塗布し、塗布試料1-1〜1-9をそれぞれ得た。
【0068】
【化4】

【0069】これらの塗布試料に、センシトメトリー用露光(1秒)を光学楔を介して与えたあと、下記処方で得た現像液1で、20℃10分間現像したあと常法により停止、定着、水洗、乾燥し、光学濃度を測定した。カブリは、試料の最小光学濃度で求め、感度は、カブリ+0.1の光学濃度を得るのに必要な露光量の逆数で表し、それぞれドープなし試料での値を100とする相対値として表した。表1には塗布試料1-1〜1-9の各試料に分光増感色素が吸収を持つ波長で露光した時の相対感度をそれぞれ示した。
【0070】現像液1メトール 2.5gL−アスコルビン酸 10.0gナボックス 35.0gKBr 1.0g水を加えて1リットルとし、pHを9.6に合わせる。
【0071】
【表1】

【0072】表1には本発明の各錯体をハロゲン化銀粒子の体積で90%までの層にドープした乳剤の写真感度を示した。本発明のacacを配位子とした錯体をドープした乳剤は何れも高感度な乳剤となった。特に全て同一の配位子を用いたCo錯体での効果が大きく、これまでに用いられて来た高感化ドーパントである[Fe(CN)6]4- や、分子サイズの大きな配位子を持った特開平5−341426号公報に記載される[Ru(bpy)2Cl2]0、特開平11−109537号公報に記載される [Pd(CN)3(py)]-、US 5,360,712に記載される [Co(CN)4(en)]-の感度をそれぞれ上回った。
【0073】実施例2「乳剤2-1;主平面が(111)面のヨウ臭化銀平板状粒子乳剤の調製(1)」0.38g のKBr、低分子量ゼラチン(分子量:15,000) 0.5gを含有する分散媒溶液1リットル(pH=5)を反応溶液に40℃に保ち、この溶液に、撹拌しながら、ダブルジェット法で0.29Mの硝酸銀と0.29MのKBr溶液を各々20mlずつ40秒間で添加した。添加後この分散媒溶液を15分かけて75℃に昇温し、昇温から15分後にアルカリ処理ゼラチン35gと水250 mlを含んだ分散媒溶液を新たに添加した。pHを6.0に調整した後、1.2Mの硝酸銀溶液を流量を加速しながら734 ml添加した。この間、pBrが2.93に保たれるようにKBr溶液とKI溶液の混合溶液を同時に添加した。この際、添加銀量に対して I- が3mol%となる量のKI溶液とKBr溶液が添加される。得られた粒子の平均投影面積円相当直径は1.12μm (変動係数 16.2%)、粒子の平均厚みは0.15μm であった。なお、平板粒子の平均投影面積円相当直径、粒子の厚さの測定は米国特許第4,434,226号に記載の方法に従い粒子の電子顕微鏡写真により求めることが出来る。
【0074】「乳剤 2-2, 2-3:[Ru(CN)6]4- 、[Ru(bpy)2Cl2]0をドープしたヨウ臭化銀平板乳剤」(比較例)
乳剤2-1において粒子体積で80%〜100%にあたる部分に、粒子全体の銀1モルあたり1×10-4モルに相当する量の[Ru(CN)6]4- または2.5×10-4モルに相当する[Ru(bpy)2Cl2]0が添加された乳剤を調製し乳剤2-2および乳剤2-3とした。
【0075】「乳剤 2-4、2-5:[Co(acac)3]0、[Ru(acac)3]0をドープしたヨウ臭化銀平板乳剤」(本発明)
乳剤2-1において粒子体積で80%〜100%にあたる部分に、粒子全体の銀1モルあたりそれぞれ5×10-5モルに相当する量の[Co(acac)3]0、[Ru(acac)3]0がそれぞれ添加された乳剤を調製し乳剤2-4、2-5とした。
【0076】上記の乳剤2-1〜2-5に銀1モルあたり8.0×10-6モルのチオ硫酸ナトリウムと3×10-6モルの塩化金酸及びチオシアン酸カリウムを添加し60℃で最適に化学増感した。これらの乳剤は実施例1と同様な方法で塗布し塗布試料2-1〜2-5を得た。
【0077】これら試料に、センシトメトリー用露光 (10-2秒)を光学楔を介して与えたあと、実施例1と同じ方法で現像し、常法により停止、定着、水洗、乾燥し、光学濃度を測定した。表2には塗布試料2-1〜2-5(分光増感色素ブランク試料)の各試料にハロゲン化銀の固有吸収が見られる波長で露光した時の相対感度を示してある。
【0078】
【表2】

【0079】臭化銀八面体乳剤で高感度化の効果が大きかった[Co(acac)3]0、[Ru(acac)3]0をドープに用いた。これらの錯体をドープした乳剤では、これまで知られていた高感化ドーパントである[Ru(CN)6]4- 、あるいは[Ru(bpy)2Cl2]0をドープした乳剤よりも大きな高感度化がもたらされることがわかった。特に[Co(acac)3]0をドープした乳剤で最も高感度化の効果が大きかった。
【0080】実施例3「乳剤3;本発明の[Co(acac)3]0をドープしたヨウ臭化銀平板乳剤」実施例2で得られた乳剤2-4を最適に化学増感し、分光増感を施した後、特開平9−146237号の実施例2の試料201の感材の第3層の乳剤として使用し、同特開平の実施例と同じ処理をして良好な結果が得られた。
【0081】実施例4「乳剤4;本発明の[Co(acac)3]0をドープしたヨウ臭化銀平板乳剤」実施例2で得られた乳剤2-4を最適に化学増感し、分光増感を施した後、特開平10−20462号の実施例1の試料110の感材の第3層の乳剤として使用し、同特開平の実施例と同じ処理をして良好な結果が得られた。
【0082】
【発明の効果】本発明の錯体をハロゲン化銀粒子にドープすると、実施例に示した様に、ドープなしの乳剤あるいはヘキサシアノ錯体等の既存のドーパントをドープした乳剤よりも、高感度で固有減感の著しく小さいハロゲン化銀感光材料を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成12年3月14日(2000.3.14)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平 (外4名)
【公開番号】 特開2001−264916(P2001−264916A)
【公開日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願番号】 特願2000−70751(P2000−70751)