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【発明の名称】 光導波路デバイスの製造方法
【発明者】 【氏名】北村 光弘

【氏名】賣野 豊

【氏名】下田 毅

【要約】 【課題】形状にあわせて最適な屈折率差を有する光導波路を集積した小型且つ低損失な光導波路デバイスを高い歩留まりで製造する。

【解決手段】基板上に石英系のコア層とクラッド層とが設けられ、前記コア層とクラッド層との屈折率差が第1の屈折率差である光導波路部分1と、前記第1の屈折率差と異なる第2の屈折率差である光導波路部分2とを備えた光導波路デバイスの製造方法において、前記コア層5の上面にマスク材料6を形成する第1の工程と、前記コア層5の上面に前記マスク材料6を選択的に残した前記第1の光導波路部分2を形成すると共に、コア層の上面に前記マスク材料を設けない前記第2の光導波路部分1を形成する第2の工程と、全面に前記コウ層5と異なる組成の第1のアッパークラッド層7を堆積させる第3の工程と、前記第1の光導波路部分2の前記第1のアッパークラッド層7のみを選択的に除去する第4の工程と、全面に前記第1のアッパークラッド層7と異なる組成の第2のアッパークラッド層8を堆積させた第5の工程と、を含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に石英系のコア層とクラッド層とが設けられ、前記コア層とクラッド層との屈折率差が第1の屈折率差である第1の光導波路部分と、前記第1の屈折率差と異なる第2の屈折率差である第2の光導波路部分とを備えた光導波路デバイスの製造方法において、前記コア層の上面にマスク材料を形成する第1の工程と、前記コア層の上面に前記マスク材料を選択的に残した前記第1の光導波路部分を形成すると共に、コア層の上面に前記マスク材料を設けない前記第2の光導波路部分を形成する第2の工程と、全面に前記コア層と異なる組成の第1のアッパークラッド層を堆積させる第3の工程と、前記第1の光導波路部分の前記第1のアッパークラッド層のみを選択的に除去する第4の工程と、全面に前記第1のアッパークラッド層と異なる組成の第2のアッパークラッド層を堆積させた第5の工程と、を含むことを特徴とする光導波路デバイスの製造方法。
【請求項2】 前記第4工程では、前記第1のアッパークラッド層と共に前記マスク材料も除去することを特徴とする請求項1記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項3】 前記基板がSiないし石英であり、前記コア層およびクラッド層がP,Ge,Bのうちのどれか一つ乃至複数のドーパントを含む石英であることを特徴とする請求項1又は2記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項4】 前記マスク材料が金属材料であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の光導波路デバイスの製造方法。
【請求項5】 前記第5の工程では、常圧CVD法を用いて第2のアッパークラッド層を成膜することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の光導波路デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光導波路デバイスの製造方法に係わり、光通信等に用いて好適な光導波路デバイスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】インターネットの急激な普及にともない、光通信システムの商用化展開が非常な勢いで進んでいる。通常の電話回線で3万回線以上を伝送できる2.5Gb/sシステムなどが多くの地域で導入されており、情報伝送容量の拡大にあわせて、波長多重方式によって多重数倍の大容量化を図る方式が既に実用化されるに至っている。初期の数波レベルの波長多重から、現在では、80波レベルまでの高密度波長多重方式が商用化されるようになってきた。このような波長多重光通信方式においては、異なる波長を有する複数の信号光を1本の光ファイバに導入するための合波器、また波長多重された光信号から異なる波長の信号に切り分けるための分波器が重要となり、その一例として、アレイ導波路格子(以下、AWGという)が注目されている。AWGは入出力2つのスターカップラの間に同じ光路長差を有するアレイ状の光導波路が形成されたものであり、アレイ導波路が高次の回折格子の役割を担うことによって合分波の機能を示すものである。Si基板や石英基板上に石英系の光導波路を形成したAWGはすでに商用化されており、実際の光通信システムに用いられている。現在商用化されているAWGは3cm×4cm程度のサイズのものが一般的であり、温調機能が必要であることから、パルチエ素子に貼り付けて、パッケージに収容されており、パッケージ全体のサイズは5cm×6cm程度となるため、伝送装置のボード内で少なからぬスペースを占有してしまい、デバイスの小型化が重要な課題の一つとなっている。
【0003】また、幹線系に用いられるものの他に、双方向の通信が要求されるアクセス系システムにも小型の光導波路デバイスが強く求められている。合波、分波、分岐などの機能を有する光導波路デバイスの素子サイズは、概略、曲線導波路部分の曲線半径によって制限される。より小さな曲率半径でも低損失な曲線導波路を形成するには、コア層とクラッド層との屈折率差Δを大きく設定してやればよい、例えば、通常石英系の光導波路で採用される、0.4%程度の屈折率差Δの導波路の場合、曲がり損失を0.1dB以内にするには、曲率半径を40mm以上とする必要があるが、屈折率差Δを1%とすることにより、曲率半径を10mm以下にすることが可能となる。しかし、単純に屈折率差Δを大きくするだけでは、光ファイバとの結合損失が増加してしまい、素子サイズの小型化は図れても、光モジュールとしての損失増加につながってしまう。したがって、小型でかつ低損失な光モジュールを作製するために、曲線領域を高屈折率差に、ファイバ等との光結合部分を低屈折率差となるような構造とすればよい。その一例として、石井らは、1998年発行の電子情報通信学会総合大会講演論文集、エレクトロニクス1,論文#C−3−148にて、部分的に屈折率差を変化させた石英光導波路を開示している。石井らは、アンダークラッド、コア成膜後に、RIE法によって矩形の導波路コアを形成し、その後、曲線領域上部に成膜阻止用のシャドーマスクを設置して、FHD(Frame HydrosysDeposition)法(火焔堆積法)によって屈折率差Δが0.3%に相当するアッパークラッドを成膜、さらにマスクを除去した後、屈折率差Δが0.6%に相当するアッパークラッド層を成膜した。この方法によって光導波路に沿って部分的に屈折率差Δの値の異なる光導波路を形成することに成功した。
【0004】しかしながら、このような従来例による方法では、シャドーマスクと、コア層との距離を狭く(例えば数μmのオーダー)できず、したがって、高屈折率差領域と低屈折率差領域との境界部分を精密に設定することが困難である。したがって所望の領域に高屈折率差、及び低屈折率差の導波路を精密な位置精度で形成することができず、小型、且つ、低損失な光導波路デバイスを高い歩留まりで実現することができなかった。更に、FHD法という1400℃程度の高温のプロセスを用いることから、用いるシャドーマスクが早く劣化してしまい、生産性の点で不十分であるという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を改良し、特に、小型且つ低損失な光導波路デバイスを提供すると共に、形状にあわせて最適な屈折率差を有する光導波路を集積した小型且つ低損失な光導波路デバイスを高い歩留まりで製造することを可能にした新規な光導波路デバイスの製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記した目的を達成するため、基本的には、以下に記載されたような技術構成を採用するものである。
【0007】又、本発明に係わる光導波路デバイスの製造方法の第1態様は、基板上に石英系のコア層とクラッド層とが設けられ、前記コア層とクラッド層との屈折率差が第1の屈折率差である第1の光導波路部分と、前記第1の屈折率差と異なる第2の屈折率差である第2の光導波路部分とを備えた光導波路デバイスの製造方法において、前記コア層の上面にマスク材料を形成する第1の工程と、前記コア層の上面に前記マスク材料を選択的に残した前記第1の光導波路部分を形成すると共に、コア層の上面に前記マスク材料を設けない前記第2の光導波路部分を形成する第2の工程と、全面に前記コア層と異なる組成の第1のアッパークラッド層を堆積させる第3の工程と、前記第1の光導波路部分の前記第1のアッパークラッド層のみを選択的に除去する第4の工程と、全面に前記第1のアッパークラッド層と異なる組成の第2のアッパークラッド層を堆積させた第5の工程と、を含むことを特徴とするものであり、又、第2態様は、前記第4工程では、前記第1のアッパークラッド層と共に前記マスク材料も除去することを特徴とするものであり、又、第3態様は、前記基板がSiないし石英であり、前記コア層およびクラッド層がP,Ge,Bのうちのどれか一つ乃至複数のドーパントを含む石英であることを特徴とするものであり、又、第4態様は、前記マスク材料が金属材料であることを特徴とするものであり、又、第5態様は、前記第5の工程では、常圧CVD法を用いて第2のアッパークラッド層を成膜することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に係わる光導波路デバイスの製造方法は、基板上に石英系のコア層とクラッド層とが設けられ、前記コア層とクラッド層との屈折率差が第1の屈折率差である第1の光導波路部分と、前記第1の屈折率差と異なる第2の屈折率差である第2の光導波路部分とを備えた光導波路デバイスの製造方法において、前記コア層の上面にマスク材料を形成する第1の工程と、前記コア層の上面に前記マスク材料を選択的に残した前記第1の光導波路部分を形成すると共に、コア層の上面に前記マスク材料を設けない前記第2の光導波路部分を形成する第2の工程と、全面に前記コア層と異なる組成の第1のアッパークラッド層を堆積させる第3の工程と、前記第1の光導波路部分の前記第1のアッパークラッド層のみを選択的に除去する第4の工程と、全面に前記第1のアッパークラッド層と異なる組成の第2のアッパークラッド層を堆積させた第5の工程と、を含むことを特徴とするものであるから、従来例のような、シャドーマスクを用いる代わりに、コア層上面に直接マスクを形成し、その上にマスク材料が保持される程度の低い温度にて石英膜を成膜する手段を採用した。マスクをコア層上面に直接形成できるので、従来例において問題となったような、マスクの形成された部分とそうでない部分との境界部位置の不確定さが大幅に低減される。このため、小型且つ、低損失な優れた特性の光導波路デバイスを高い歩留まりを持って製造することが可能となる。
【0009】
【実施例】以下に、本発明に係わる光導波路デバイスの製造方法の具体例を図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係わる光導波路デバイスの具体例の構造を示す図、図2は製造途中段階での断面図、図3は製造最終段階での断面図であって、これらの図には、基板上に石英系のコア層とクラッド層とが設けられ、前記コア層とクラッド層との屈折率差が第1の屈折率差である第1の光導波路部分2と、前記第1の屈折率差と異なる第2の屈折率差である第2の光導波路部分1とを備えた光導波路デバイスの製造方法において、前記コア層5の上面にマスク材料6を形成する第1の工程と、前記コア層5の上面に前記マスク材料6を選択的に残した前記第1の光導波路部分2を形成すると共に、コア層5の上面に前記マスク材料を設けない前記第2の光導波路部分1を形成する第2の工程と、全面に前記コア層5と異なる組成の第1のアッパークラッド層7を堆積させる第3の工程と、前記第1の光導波路部分2の前記第1のアッパークラッド層7のみを選択的に除去する第4の工程と、全面に前記第1のアッパークラッド層7と異なる組成の第2のアッパークラッド層8を堆積させた第5の工程と、を含む光導波路デバイスの製造方法が示され、又、前記第4工程では、前記第1のアッパークラッド層7と共に前記マスク材料6も除去する光導波路デバイスの製造方法が示されている。
【0010】以下、本発明の第1の具体例を更に詳細に説明する。図1は、本発明によって作製した光導波路デバイスの平面図である。両端の領域には直線導波路(第2の導波路部分)1が形成され、中央部分には曲線導波路(第1の導波路部分)2が形成されている。この第1の具体例においては、両端の直線部分にて、屈折率差Δ=0.4%、中央の曲線部分にて屈折率差Δ=1.0%となるように設定した。曲線導波路2の曲率半径は10mmと小さく設定した。このような光導波路デバイスを作製するには、以下のようにすればよい。図1中の直線部であるA−A’部の断面、及び曲線部であるB−B’部の断面構造をそれぞれ図2(a)、(b)に示すように、まずSi基板3上にGeおよびPをドープした石英(GPSG)膜よりなるアンダークラッド層4、それとは異なる量のGe及びPをドープした石英(GPSG)膜よりなるコア層5を続けて成膜する。アンダークラッド層4、コア層5はそれぞれ厚さ15μm、4μmとした。この時のコア層5とアンダークラッド層4との屈折率差Δは0.5%程度に設定した。この後コア層5上の全面にマスク材6(この具体例においてはWSi材料を用いた)を成膜し、更に、図1中の曲線導波路2の領域のみをパターニングする。更に、その上にフォトレジストを形成し、輻4μmの導波路形状にエッチングを行う。この時、エッチングにはRIE法を用いた。この工程にて、曲線導波路2上面にはマスク材6が形成され、同時に直線導波路1にはマスク材6が存在しない構造にすることができる。このようにして作製した基板の上に全面にGPSGの第1のアッパークラッド層1を厚さ10μm成膜した。この段階での断面構造は図2(a)、(b)のようになっている。第1のアッパークラッド層7の組成は、直線導波路1部分で屈折率差Δ=0.4%となるように設定した。続いて曲線導波路2を含む領域のみをRIEによってエッチングを行い、第1のアッパークラッド層7を除去する。この際、曲線光導波路2上のみにマスク材6が形成されているため、第1のアッパークラッド層7のみが除去され、コア層5はそのまま保存される。その後、マスク材6を選択的に除去し、直線導波路1部分を含む全面に第2のアッパークラッド層8を常圧CVD法により成膜する。第2のアッパークラッド層8は第1のアッパークラッド層7よりも屈折率が低く、曲線導波路2部分でΔ=1.0%となるように設定した。上記のように、本発明による製造方法では、高屈折率差、低屈折率差導波路の境界を精密に決定することができ、従来例にて問題となったような、境界部の不確定による損失増加、例えば、曲線導波路2部分まで低屈折率差導波路となってしまうと、曲がり損失が極端に増加してしまう、等の問題を解決することができる。以上のようにして作製した光導波路につき、直線部両側とも10mm、曲線部曲率半径10mm、全長43mmとして、損失を評価した結果、以下のような値を得た。
【0011】A:本発明(直線屈折率差=0.4%、曲線屈折率差=1.0%)
全挿入損失=0.75dBB:全て屈折率差=0.4%の場合全挿入損失>10dBC:全て屈折率差=1.0%の場合全挿入損失=1.25dBそれぞれの損失内訳は以下の表のようである。(単位:dB)
【0012】
【表1】

【0013】ここでは、均一の屈折率差を有する光導波路を比較のために示してある。従来例の場合には、シャドーマスクの境界部が本発明の場合と同様にできていれば、略同等の低損失特性が得られるものと考えられるが、その製造上のバラツキが大きくなることが問題である。製造の歩留まりは、上記具体例に示したような単純な構成の場合、従来例では、約40%であったのに対し、本発明においては、略100%の歩留まりが得られた。
【0014】図4には、本発明の第2の具体例である光導波路の平面構造を示した。この場合には、屈折率差の異なる領域間の境界部で、第1の具体例で示した過剰損失を低減するために、屈折率差の変化にあわせて徐々に導波路幅Wを変化させる構成とした。具体的には、高屈折率差(1.0%)領域で幅4μm、低屈折率差(0.4%)領域で幅6μmとし、境界部の長さ100μmの範囲でコア幅が徐々に変化するテーパ領域10を形成し、テーパ導波路とした。これによって第1の具体例において発生した0.1dB程度の過剰損失をほぼ無視できるレベルまで低減することができた。
【0015】同様の手法によって小型、且つ、低損失なAWGや、光アクセス系用の光送受信導波路モジュールを作製することは容易である。尚、本発明の具体例においては、石英膜としてGe、Pをドープした石英膜を用いたが、用いる材料はこれに限るものではなく、Bなどをドープした石英膜、或いはNを含む系の材料を用いても何ら差し支えない。基板としてもSiに限らず、石英やセラミックなどの材料を用いて何ら差し支えない。また、マスク材としてWSiを用いたが、勿論これに限るものではなく、他の金属材料、誘電体材料、あるいは半導体材料などを用いて何ら差し支えない。更に、成膜方法としてTEOSオゾン系のAPCVD法を用いたが、プラズマを利用したCVD法や減圧CVD法など他の成膜方法を採用しても何ら差し支えない。
【0016】
【発明の効果】本発明に係わる光導波路デバイスの製造方法は、上述のように構成したので、形状にあわせて最適な屈折率差を有する光導波路を集積した小型で、且つ、低損失な光導波路デバイスを高い歩留まりで製造することが可能となった。
【出願人】 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【出願日】 平成10年8月17日(1998.8.17)
【代理人】 【識別番号】100070530
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 泰之
【公開番号】 特開2001−194545(P2001−194545A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−375059(P2000−375059)