| 【発明の名称】 |
光導波回路 |
| 【発明者】 |
【氏名】奈良 一孝
【氏名】中島 毅
【氏名】柏原 一久
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| 【要約】 |
【課題】半波長板を設けなくても偏波依存性損失の影響を抑制可能なアレイ導波路型回折格子を提供する。
【解決手段】シリコン基板11上に下部クラッドを形成し、その上に、複数の入射導波路12の出射側に入力側スラブ導波路を接続し、その出射側に互いに異なる長さの複数のアレイ導波路14を並設して接続し、その出射側に出力側スラブ導波路15を接続し、その出射側に複数の出射導波路16を接続した導波路構成を有するコアを形成し、コアの上を上部クラッドで覆う。コアに入射する互いに波長が異なる複数の多重入力された光を波長ごとに分離して出力する。クラッドとコアは石英系ガラスにより形成し、光導波路部に発生する複屈折Bの値を|B|≦5.34×10−5とし、上部クラッドの熱膨張係数をαgとし、シリコン基板の熱膨張係数をαsとしたとき、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7と成す。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 石英系ガラスによって形成された下部クラッドとコアと上部クラッドとを有する光導波路部をシリコン基板上に形成してなる光導波回路であって、前記光導波路部に発生する複屈折Bの値が|B|≦5.34×10−5であることを特徴とする光導波回路。 【請求項2】 上部クラッドの熱膨張係数をαgとし、シリコン基板の熱膨張係数をαsとしたとき、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7と成していることを特徴とする請求項1記載の光導波回路。 【請求項3】 1本以上の並設された光入力導波路の出射側に第1のスラブ導波路が接続され、該第1のスラブ導波路の出射側には該第1のスラブ導波路から導出された光を伝播する互いに異なる長さの複数の並設されたアレイ導波路が接続され、該複数のアレイ導波路の出射側には第2のスラブ導波路が接続され、該第2のスラブ導波路の出射側には複数の並設された光出力導波路が接続されて成る導波路構成をコアによって形成し、前記光入力導波路から入力された互いに異なる波長の複数の光信号を、前記アレイ導波路によって各波長ごとに位相差をつけて伝播させて各波長ごとに異なる光出力導波路に入射させ、互いに異なる波長の光を異なる光出力導波路から出力するアレイ導波路型光回折格子と成していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光導波回路。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、光通信などに使用されるアレイ導波路型回折格子などの光導波回路に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、光通信においては、その伝送容量を飛躍的に増加させる方法として、光波長多重通信の研究開発が盛んに行なわれ、実用化が進みつつある。光波長多重通信は、例えば互いに異なる波長を有する複数の光を波長多重化して伝送させるものであり、このような光波長多重通信のシステムにおいては、伝送される複数の光から、光受信側で波長ごとの光を取り出すために、予め定められた波長の光のみを透過する光透過素子等を、システム内に設けることが不可欠である。 【0003】光透過素子の一例として、例えば図6に示すようなアレイ導波路型回折格子(AWG;Arrayed Waveguide Grating)がある。アレイ導波路型回折格子は、基板11上に、同図に示すような導波路構成を形成したものであり、この導波路構成は、1本以上の並設された光入力導波路としての入射導波路12の出射側に、第1のスラブ導波路としての入力側スラブ導波路13が接続され、入力側スラブ導波路13の出射側には、複数の並設されたアレイ導波路14が接続され、複数のアレイ導波路14の出射側には第2のスラブ導波路としての出力側スラブ導波路15が接続され、出力側スラブ導波路15の出射側には複数の並設された光出力導波路としての出射導波路16が接続されて形成されている。 【0004】前記アレイ導波路14は、入力側スラブ導波路13から導出された光を伝播するものであり、互いに異なる長さに形成されている。なお、入射導波路12や出射導波路16は、例えばアレイ導波路型回折格子によって分波される互いに異なる波長の信号光の数に対応させて設けられるものであり、アレイ導波路14は、通常、例えば100本といったように多数設けられるが、同図においては、図の簡略化のために、これらの各導波路12,14,16の本数を簡略的に示してある。 【0005】入射導波路12には、例えば送信側の光ファイバが接続されて、波長多重光が導入されるようになっており、入射導波路12を通って入力側スラブ導波路13に導入された光は、その回折効果によって広がって複数の各アレイ導波路14に入射し、各アレイ導波路14を伝播する。 【0006】この各アレイ導波路14を伝播した光は、出力側スラブ導波路15に達し、さらに、出射導波路16に集光されて出力されるが、各アレイ導波路14の長さが互いに異なることから、各アレイ型導波路14を伝播した後に個々の光の位相にずれが生じ、このずれ量に応じて集束光の波面が傾き、この傾き角度により集光する位置が決まるため、波長の異なった光の集光位置は互いに異なることになり、その位置に出射導波路16を形成することによって、波長の異なった光を各波長ごとに異なる出射導波路16から出力できる。 【0007】例えば、同図に示すように、1本の入射導波路12から波長λ1,λ2,λ3,・・・λn(nは整数)の波長多重光を入力させると、これらの光は、入力側スラブ導波路13で広げられ、アレイ導波路14に到達し、出力側スラブ導波路15を通って、前記の如く、波長によって異なる位置に集光され、互いに異なる出射導波路16に入射し、それぞれの出射導波路16を通って、出射導波路16の出射端から出力される。そして、各出射導波路16の出射端に光出力用の光ファイバを接続することにより、この光ファイバを介して、前記各波長の光が取り出される。 【0008】このアレイ型導波路回折格子においては、回折格子の波長分解能が回折格子を構成する各アレイ導波路14の長さの差(ΔL)に比例するために、ΔLを大きく設計することにより、従来の回折格子では実現できなかった波長間隔の狭い波長多重光の光合分波が可能となり、高密度の光波長多重通信の実現に必要とされている、複数の信号光の光合分波機能、すなわち、波長間隔が1nm以下の複数の光信号を分波または合波する機能を果たすことができる。 【0009】上記アレイ導波路型回折格子は、石英系ガラスによって形成された下部クラッドとコアと上部クラッドとを有する光導波路部10を、シリコンの基板11上に形成してなる光導波回路であり、シリコン基板11上に下部クラッドを形成し、その上側に上記導波路構成のコアを形成し、コアの上側にはコアを覆う上部クラッドを設けて形成されている。また、上部クラッドは、従来は、例えば、純石英にB2O3とP2O5をそれぞれ5mole%ずつ添加した石英系ガラスによって形成されていた。 【0010】図7には、アレイ導波路型回折格子の製造工程が示されており、以下、同図に基づいて光導波回路の製造方法について説明する。まず、同図の(a)に示すように、シリコン基板11上に下部クラッド1bの膜とコア2の膜とを順に形成し、次に、同図の(b)に示すように、マスク8を用いて、フォトリソグラフィーとリアクティブイオンエッチング法を適用し、それによって、同図の(c)に示すように、コア2の膜を加工してアレイ導波路型回折格子の光導波路パターンを形成し、前記光導波路構成のコア2を形成する。 【0011】次に、同図の(d)に示すように、コア2の上部側に、コア2を覆う態様で上部クラッド1aの膜を形成する。なお、上部クラッド1aの膜は、火炎加水分解堆積法によって上部クラッドガラス微粒子5を堆積し、この上部クラッドガラス微粒子5を例えば1200℃〜1250℃で焼結することによって形成される。 【0012】ところで、本来、上記のような光波長多重通信用の光透過素子として適用されるアレイ導波路型回折格子において、TEモード(TE mode)とTMモード(TE mode)の偏波依存性損失(PDL)は零に近いほど好ましいものであるが、従来のアレイ導波路型回折格子においては、中心波長λB±0.1nmの範囲における前記偏波依存性損失(PDL)が、3dBはあった。 【0013】そこで、この偏波依存性損失を補うために、従来のアレイ導波路型回折格子においては、図8に示すように、全てのアレイ導波路14を横切る態様で、アレイ導波路14の途中に、ポリイミドなどによって形成された半波長板3を挿入し、この半波長板3の入射側と出射側とで偏波を90度回転させることにより、前記偏波依存性損失の影響を回避していた。なお、半波長板3は、ポリイミドに限らず、石英系のものも用いられているが、ポリイミドにすると、その厚みを薄くできるため、従来のアレイ導波路型回折格子に設ける半波長板3としてはポリイミド製のものが最も優れている。 【0014】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように、半波長板3を挿入してアレイ導波路型回折格子を形成すると、半波長板3に入射した光の一部が入射導波路12の入射側に戻る、いわゆるリターンロスが生じる。半波長板3をアレイ導波路14に対して直交するように挿入した場合には、このリターンロスの値が約―35dBにもなり、光波長多重通信システムに用いられる素子において、−40dBよりも大きいリターンロスが生じると、光通信に支障を来すために、アレイ導波路型回折格子を光波長多重通信用として適用できなくなってしまう。 【0015】なお、半波長板3をアレイ導波路14と直交する軸対して8度傾けて斜めに挿入した場合は、リターンロスを−40dB程度にすることも可能であるが、その場合、たとえ厚みが薄いポリイミド製の半波長板3を適用するにしても、半波長板3を挿入するための溝(スリット)の形成や半波長板3の挿入が技術的に難しくなって、アレイ導波路型回折格子の歩留まりが低下してしまうことになる。 【0016】また、現在用いられているポリイミド製の半波長板3は、その長さが約8mmであり、例えば25μm間隔でアレイ導波路14を並設しようとすると、最大320本のアレイ導波路14しか配設できない。したがって、将来、波長間隔の狭いアレイ導波路型回折格子を実現するためにアレイ導波路14の本数を増加しようとしても、アレイ導波路14の本数に制約が生じ、対応が困難になるといった問題が生じることになる。また、ポリイミド製の半波長板3の長さを長くしようとすると、半波長板3自体の製造歩留まりが低下し、それに伴ってアレイ導波路型回折格子のコストアップが生じることになる。 【0017】さらに、半波長板3を挿入してアレイ導波路型回折格子を形成するためには、ダイサーなどによって半波長板3の挿入スリットを加工し、そのスリットに半波長板3を挿入し、さらに、接着剤等を用いて半波長板3を固定しなければならないため、アレイ導波路型回折格子の作製工程数が多くなり、その分だけアレイ導波路型回折格子のコストが高くなってしまうといった問題もあった。 【0018】本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、少ない工程で作製することが可能でコストが安く、しかも、リターンロス特性に優れ、偏波依存性損失の影響を抑制可能で、さらに、25μm間隔でアレイ導波路を320本以上並設可能とする優れたアレイ導波路型回折格子などの光導波回路を提供することにある。 【0019】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。すなわち、第1の発明は、石英系ガラスによって形成された下部クラッドとコアと上部クラッドとを有する光導波路部をシリコン基板上に形成してなる光導波回路であって、前記光導波路部に発生する複屈折Bの値が|B|≦5.34×10−5である構成をもって課題を解決する手段としている。 【0020】また、第2の発明は、上記第1の発明の構成に加え、前記上部クラッドの熱膨張係数をαgとし、シリコン基板の熱膨張係数をαsとしたとき、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7と成している構成をもって課題を解決する手段としている。 【0021】さらに、第3の発明は、上記第1又は第2の発明の構成に加え、1本以上の並設された光入力導波路の出射側に第1のスラブ導波路が接続され、該第1のスラブ導波路の出射側には該第1のスラブ導波路から導出された光を伝播する互いに異なる長さの複数の並設されたアレイ導波路が接続され、該複数のアレイ導波路の出射側には第2のスラブ導波路が接続され、該第2のスラブ導波路の出射側には複数の並設された光出力導波路が接続されて成る導波路構成を前記コアによって形成し、前記光入力導波路から入力された互いに異なる波長の複数の光信号を、前記アレイ導波路によって各波長ごとに位相差をつけて伝播させて各波長ごとに異なる光出力導波路に入射させ、互いに異なる波長の光を異なる光出力導波路から出力するアレイ導波路型光回折格子と成している構成をもって課題を解決する手段としている。 【0022】例えば前記アレイ導波路型回折格子を光波長多重通信システムに適用する場合、偏波モードであるTEモードとTMモードの偏波依存性損失(PDL)は零に近いほど好ましいものであり、このPDLの値をどの程度にしたら光波長多重通信用として適切かを本発明者が検討したところ、PDLを0.5dB以下にすることが望ましいことが分かった。そして、本発明者は、PDLを0.5dB以下にするためは、アレイ導波路型回折格子におけるTEモードとTMモードの中心波長シフト量をどのような値にしたら適切かを模擬実験により検討した。 【0023】この検討に際し、まず、アレイ導波路型回折格子の各偏波モード(TEモードおよびTMモード)での光通過スペクトルをそれぞれ測定し、TEモードの中心波長±β(βは予め定めた値であり、例えば0.8nm)におけるTMモードの通過損失値とTMモードの中心波長±βにおけるTMモードの通過損失値との差の最大値を偏波依存性損失とする。そして、例えばTEモードの通過スペクトルを固定して、擬似的にTMモードの通過スペクトルをTEモード側にずらしていき、このずらした量を偏波モードによる中心波長シフト量とし、この中心波長シフト量に対し前記偏波依存性損失をプロットし、グラフ化して、偏波モードによる中心波長シフト量と前記偏波依存性損失との関係を求めた。 【0024】その結果が図2に示されており、同図に示すように、アレイ導波路型回折格子における偏波モードであるTEモードとTMモードの中心波長シフト量を0.05nm以下にすることにより、前記PDLを0.5dB以下にできることが確認された。そこで、本発明者は、光波長多重通信用としてアレイ導波路型回折格子を用いる場合に適切なTEモードとTMモードの中心波長のシフト量ΔλBは0.05nm以下の値であると決定した。 【0025】また、アレイ導波路型回折格子などの光導波回路において、上記偏波モードによる光透過中心波長のシフトは、光導波路部に発生する複屈折の値により影響されると考えられている。そして、上記偏波モードによる中心波長シフト量ΔλBは、光導波路部に発生する複屈折の値Bと、コアの屈折率ncと、コアを伝播する光の中心波長λ0とによって、次式(1)によって表わせる。 【0026】 ΔλB=|B・λ0/nc|・・・・・(1) 【0027】ここで、λ0を現在検討されている光波長多重通信システムにおける中心波長である1550nmとし、コアの屈折率は、正確にはコアの組成によって決まるものであるが、純石英の屈折率により近似できるものであるため、λ0の波長の光を入射させたときの純石英の屈折率である1.45をncとして、光導波路部に発生する複屈折の値Bの範囲を求めたところ、|B|≦5.34×10−5の範囲とすれば、偏波モードによる中心波長シフト量ΔλBの値を前記範囲内として、前記偏波依存性損失をアレイ導波路型回折格子に求められる損失範囲内にできることが分かった。 【0028】以上の検討結果に基づき、上記構成の本発明おいては、石英系ガラスによって形成された下部クラッドとコアと上部クラッドとを有する光導波路部をシリコン基板上に形成してなる光導波回路において前記光導波路部に発生する複屈折Bの値を|B|≦5.34×10−5としたものであるから、この光導波回路における前記TEモードとTMモードの中心波長シフト量を0.05nm以下の適切な値とすることができ、それにより、偏波依存性損失(PDL)の値を0.5dB以下の適切な値にすることが可能となる。 【0029】したがって、本発明の光導波回路を例えば波長1.55μm帯の光波長多重通信システムに適用すれば、半波長板を設けなくても偏波依存性損失の影響を抑制できるアレイ導波路型回折格子等とすることが可能となり、このアレイ導波路型回折格子は、半波長板を必要としない分だけ作製工程数を少なくできるし、歩留まりも向上でき、コストの低減や、チャンネル数の増加も図ることが可能となる。 【0030】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略する。 【0031】まず、本発明に係る光導波回路の第1実施形態例について説明する。本実施形態例の光導波回路は、図1に示すアレイ導波路型回折格子であり、図6に示したアレイ導波路型回折格子と同様に、シリコン基板11と光導波路部10を有しており、光導波路部10のコアの導波路構成も図6に示したアレイ導波路型回折格子と同様である。本実施形態例のアレイ導波路型回折格子の特徴的なことは、光導波路部10(上部クラッド1aとコア2と下部クラッド1b)に発生する複屈折Bの値を、特徴的な値、すなわち、|B|≦5.34×10−5とし、それにより、図8に示した従来のアレイ導波路型回折格子に設けた半波長板3を設けなくても偏波依存性損失の影響を低減できるようにし、光波長多重通信用として適した光導波回路としたことである。 【0032】本実施形態例において、上部クラッド1aは、純石英にB2O3とP2O5をそれぞれ約8mole%ずつ添加した石英系ガラス(SiO2−B2O3−P2O5系)によって形成されており、上部クラッド1aをこのような組成にすることにより、上記のように、光導波路部10に発生する複屈折Bの値を、|B|≦5.34×10−5としている。 【0033】また、上部クラッド1aの組成を上記のようにすることによって、本実施形態例では、上部クラッド1aの熱膨張係数をαgとし、シリコン基板11の熱膨張係数をαsとしたとき、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7と成している。 【0034】さらに、本実施形態例において、上部クラッド1aの厚みは、約30μmとしており、コア2は、下部クラッド1bを形成する石英系ガラスにGeO2をドープすることによって形成されており、コア2の屈折率は、GeO2のドープによって、クラッド1の屈折率よりも大きく形成されている。 【0035】なお、本発明者は以下のような検討を行なって本実施形態例の構成を決定した。まず、前記の如く、アレイ導波路型回折格子において、前記図2に基づく検討結果から、アレイ導波路型回折格子における偏波モードであるTEモードとTMモードの中心波長シフト量ΔλBの範囲を0.05nm以下とすれば、偏波依存性損失(PDL)の値を0.5dB以下の適切な値にすることができること、すなわち、前記ΔλBの範囲を0.05nm以下にすることにより、半波長板3を設けなくても、光波長多重通信システムに適用した場合の偏波依存性損失の影響を抑制できるアレイ導波路型回折格子とできることを確認した。 【0036】そして、前記ΔλBの範囲を0.05nm以下とするために、前記式(1)と、現在検討中の光波長多重通信システムの信号光波長の中心波長波長1550nmと、この波長の光を入射したときの純石英の屈折率1.45とに基づいて光導波路部10に発生する複屈折Bの範囲を求めた。 【0037】その結果、|B|≦5.34×10−5とすればよいことが分かったので、光導波路部10に発生する複屈折Bの値を|B|≦5.34×10−5とした。 【0038】また、本発明者が、図7の(a)〜(c)に示す工程により、シリコン基板11上に下部クラッド1bとコア2を形成した回路において、上部クラッド1aを設ける代わりに、上部クラッド1aと同様の屈折率を持つマッチングオイルを滴下して、このマッチングオイルを疑似上部クラッドとし、偏波依存性の測定を行なったところ、TEモードとTMモードの偏波の差による光透過中心波長のずれ量が0となった。なお、このずれ量は、従来のアレイ導波路型回折格子においては、0.2nm程度の大きいものであった。 【0039】この現象は、マッチングオイルを室温で滴下した疑似上部クラッドは、コア2に熱歪みを加えることがなく、また、液体であるためにコア2に応力歪みを加えることもないために、マッチングオイルによってコア2の変形を招くことがなく、コア2の変形に伴う中心波長ずれが生じないのに対し、光導波路部10に発生する複屈折が大きい従来例においては、この複屈折によって上記のようなTEモードとTMモードの偏波の差による光透過中心波長の大きなずれが生じるためであると考えられる。 【0040】すなわち、本発明者の検討により、偏波の差による光透過中心波長のずれを抑制し、偏波依存性損失を抑制するためには、上部クラッド1aの組成を最適化し、光導波路部10の複屈折の値が上記範囲となるようにすればよいことが分かった。 【0041】また、アレイ導波路型回折格子を作製に際し、従来は、前記の如く、上部クラッド1a形成時に上部クラッド1aとなるクラッドガラス微粒子を1200〜1250℃で焼結していたが、この焼結温度はコア2のガラス転移温度以上であったため、この焼結時にコア2が変形を起こしたり、上部クラッド1aの冷却過程で熱歪みがコア2に加わり、これらの変形や歪みによって、アレイ導波路型回折格子の偏波依存性が生じることが分かった。 【0042】そこで、本実施形態例では、前記上部クラッド1aは純石英にB2O3とP2O5をそれぞれ約8mol%ずつ添加することにより、上記焼結温度をコア2のガラス転移温度である約1150℃よりも低い約1100℃としてアレイ導波路型回折格子を作製した。なお、上部クラッド1aとなるガラス微粒子厚を約300μmとして、このガラス微粒子を約1100℃で焼結したところ、厚み約30μmの上部クラッド1aが形成された。 【0043】次に、前記複屈折Bの値が、次式(2)により表わせることに注目し、上部クラッド1aの熱膨張係数の最適化を検討した。 【0044】 B=(C2−C1)Eg(αg−αs)ΔT・・・・・(2) 【0045】なお、上記式(2)において、C1は、入射光の偏光方向に平行な上部クラッド1aの光弾性定数であり、C2は、入射光の偏光方向に垂直な上部クラッド1aの光弾性定数であり、Egは上部クラッド1aのヤング率であり、αg,αsはそれぞれ上部クラッド1a、シリコン基板の熱膨張係数であり、ΔTは、上部クラッド1aを形成する石英系ガラスが固化してから室温までの温度低下分である。 【0046】そこで、式(2)におけるC1に、入射光の偏光方向に平行な石英ガラスの光弾性定数である−0.65×10−12(Pa−1)を代入し、C2に、入射光の偏光方向に垂直な石英の光弾性定数である−4.22×10−12(Pa−1)を代入し、Egに石英のヤング率である7.29×1010(Pa)を代入し、ΔTには、前記上部クラッド1aの焼結温度から求められる値1000℃を代入し、|B|≦5.34×10−5となるようにする上部クラッド1aの熱膨張係数αgを求めたところ、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7とすると、|B|≦5.34×10−5とできることが分かった。 【0047】そこで、本実施形態例では、上記のように、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7となるようにした。なお、光導波路部10の複屈折Bの値を|B|≦5.34×10−5とし、上部クラッド1aの熱膨張係数αgを、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7とするために、図4の(a)、(b)に示すグラフデータに基づいて、上部クラッド1aを形成するために純石英にドープするドーパントとそのドープ量とを求めた。 【0048】すなわち、図4の(a)に示す、ドーパントの種類に対応するドーパント添加量と屈折率との関係から、上部クラッド1aとなる石英系ガラスを形成するために純石英にドープするドーパントドープ量と、形成される石英系ガラスの屈折率との関係を求め、一方、同図の(b)に示す、ドーパント添加量と熱膨張係数との関係から、上部クラッド1aとなる石英系ガラスを形成するために純石英にドープするドーパントドープ量と、形成される石英系ガラスの熱膨張係数との関係を求めた。 【0049】なお、同図の(a)に示す屈折率は、Na−D線の光を入射したときの屈折率であり、光波長多重通信用として用いる波長帯の中心波長である波長1550nmよりも短波長の光を入射したときの屈折率であるため、屈折率が全体的に高めの値となっており、ドーパントがゼロの純石英の屈折率が約1.458となっているが、前記の如く、波長1550nmの光を入射させたときの純石英の屈折率は約1.45である。したがって、上部クラッド1aにドープするドーパントドープ量と、形成される石英系ガラスの屈折率との関係を求めるときには、このような屈折率シフト量を考慮して前記関係を求めた。 【0050】そして、これらの関係に基づき、本実施形態例では、上部クラッド1aを形成するために純石英にドープするドーパントをB2O3とP2O5とし、これらのドープ量を共に約8mol%とすることによって、上部クラッド1aの屈折率が純石英と同じ値になるようにし、かつ、上部クラッド1aの熱膨張係数αgが、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7となるように設計した。 【0051】そして、上部クラッド1aを形成するクラッドガラス微粒子の堆積時に、上記のようにして求めたドーパントを添加した。なお、実際は、合成中(堆積中)のドーパントの揮発などが考えられるため、試行錯誤によって、上記値(B2O3とP2O5のドープ量が共に約8mol%)となる前後でドーパントの添加量の適量を調整し、光導波路部10の複屈折Bの値が|B|≦5.34×10−5、上部クラッド1aの熱膨張係数αsが、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7となるように、上部クラッド1aの組成を決定した。 【0052】また、実際に作製した本実施形態例の光導波回路について、以下の計算により、第1のクラッド1aの熱膨張係数を求めた。 【0053】光導波回路に発生する内部応力σは、光導波回路の基板面方向の反り半径をRとしたとき、次式(3)により表わされるものである。 【0054】 σ={Esb2}/{6(1−γs)R・d}・・・・・(3) 【0055】なお、上記式(2)において、Esはシリコン基板11のヤング率であり、その値は1.3×1011(Pa)、bはシリコン基板11の厚さであり、本実施形態例において、その値は1.0×10−3(m)、γsはシリコン基板11のポアソン比であり、その値は0.28、dは上部クラッド1aの厚み(下部クラッド1bの上面から上部クラッド1aの上面までの距離)であり、その値は0.03×10−3(m)である。 【0056】また、光導波回路に発生する熱応力σTは、次式(4)により表わされるものである。 【0057】 σT=Eg(αg−αs)ΔT・・・・・(4) 【0058】なお、式(4)において、Egは上部クラッド1aのヤング率であり、その値を純石英の値により近似すると、7.29×1010(Pa)であり、Eg、αg、αs、ΔTはそれぞれ、前記式(2)と同様のものを示し、同様の値である。 【0059】ここで、前記内部応力がすべて熱応力で発生したとすると、σ=σTとなるから、前記式(3)、(4)より、次式(5)が導かれる。 【0060】 αg=αs+[{Esb2}/{6Eg(1−γs)d・R・ΔT}]・・・・・(5) 【0061】そこで、前記のようにして作製した光導波回路の反り量を、接触式の表面形状測定器を用いて測定し、この測定反り量を前記式(5)に代入することにより、上部クラッド1aの熱膨張係数の実際の値を求めた。このとき、シリコン基板の熱膨張係数はαs=3.0×10−6℃−1を用いている。 【0062】その結果、光導波回路の反り半径Rが258mとなったため、上部クラッド1aの熱膨張係数αgは、2.95×10−6℃―1となることが確認された。なお、このときの光導波回路は、シリコン基板11を下側にしたときに、上に凸(シリコン基板11側が凹)となるように反っており、上部クラッド1aの熱膨張係数αgの値2.95×10−6℃―1を式(2)に代入することにより、複屈折Bの値を求めた。その結果、前記複屈折Bの値は1.26×10−5の正の値であった。 【0063】本実施形態例によれば、上記検討結果に基づき、光導波路部10に発生する複屈折Bの値を|B|≦5.34×10−5とし、上部クラッド1aの熱膨張係数αgとシリコン基板の熱膨張係数αsとの差を2.0×10−7以下の値(2.95×10−6℃―1)としたために、アレイ導波路型回折格子におけるTEモードとTMモードの中心波長シフト量を0.05nm以下の適切な値とすることができ、それにより、偏波依存性損失(PDL)の値を0.5dB以下の適切な値にすることができる。 【0064】そのため、本実施形態例のアレイ導波路型回折格子を波長1.55μm帯の光波長多重通信システムに適用した場合に、半波長板3を設けなくても偏波依存性損失の影響を抑制でき、半波長板3を必要としない分だけ、作製工程数を少なくできるし、コストの低減も図ることができる。また、本実施形態例によれば、半波長板3を設けないために、半波長板3による反射光が入射導波路12の入射側の戻ることもなく、リターンロスの増大を抑制することができるし、半波長板3挿入用の溝の形成や半波長板3の挿入固定を行なうときのミスにより、歩留まりが低下することも抑制できる。また、25μm間隔でアレイ導波路を320本以上設計可能となる。 【0065】また、一般に、ガラス系材料は引張り応力を受けると、その応力を開放するためにクラックを発生しやすいことが知られており、本実施形態例のように、シリコン基板11側が凸となり、ガラス系材料により形成した光導波路部側にかかる応力は圧縮応力であり、引張り応力によってクラックが発生する虞を回避できる。 【0066】なお、実際に、本実施形態例のアレイ導波路型回折格子のTEモードとTMモードの偏波ごとの通過スペクトルを測定したところ、図3に示すようなスペクトルとなり、TEモードのスペクトルの中心波長とTMモードのスペクトルの中心波長とのずれは、0.01nm以下となり、本実施形態例によれば、従来のアレイ導波路型回折格子におけるTEモードスペクトルの中心波長とTMモードスペクトルの中心波長とのずれ量(約0.2nm)の20分の1以下に抑制できることが確認された。 【0067】次に、本発明に係る光導波回路の第2実施形態例について説明する。本第2実施形態例は上記第1実施形態例とほぼ同様に構成されており、本第2実施形態例が上記第1実施形態例と異なる特徴的なことは、コア2および上部クラッド1aの組成を上記第1実施形態例と異なるものとし、それにより、コア2のガラス転移温度や上部クラッド1aの熱膨張係数を上記第1実施形態例と異なるものとしたことである。 【0068】具体的には、本第2実施形態例では、コア2をTiO2ドープ石英(SiO2−TiO2)により形成し、それにより、コア2のガラス転移温度を約1200℃とした。さらに、上部クラッド1aは、石英にB2O3を10mol%、P2O5を1mol%、GeO2を10mol%ドープして形成した。それにより、上部クラッド1aの焼結温度は約1150℃とした。なお、これらの組成の決定も、上記第1実施形態例と同様にして行なった。 【0069】本第2実施形態例の光導波回路において、上記第1実施形態例と同様にして反り量を求めたところ、反り半径Rが120mであり、この反り半径Rの値に基づいて、上記式(5)から求めた上部クラッド1aの熱膨張係数は、3.1×10−6℃―1であった。なお、本第2実施形態例では、上記第1実施形態例と異なり、シリコン基板11を下側にして上に凹(光導波路部側が凹)となるように反っており、上部クラッド1aの熱膨張係数αgの値3.1×10−6℃―1を用い、式(2)から前記複屈折率Bの値は、−2.7×10−5の負の値であった。 【0070】本第2実施形態例も上記第1実施形態例とほぼ同様の効果を奏することができる。 【0071】また、実際に、本実施形態例のアレイ導波路型回折格子のTEモードとTMモードの偏波ごとの通過スペクトルを測定したところ、図5に示すようなスペクトルとなり、TEモードのスペクトルの中心波長とTMモードのスペクトルの中心波長とのずれは、0.02nm以下となり、TEモードスペクトルの中心波長とTMモードスペクトルの中心波長とのずれ量を従来例に比べて格段に抑制できることが確認された。 【0072】なお、本発明は上記実施形態例に限定されることはなく、様々な実施の態様を採り得る。例えば、上記第1実施形態例では、上部クラッド1aは、純石英にB2O3とP2O5をそれぞれ約8mole%ずつ添加した石英系ガラス(SiO2−B2O3−P2O5系)によって形成し、コア2は、下部クラッド1bを形成する石英系ガラスに、さらに、GeO2をドープすることによって形成し、上記第2実施形態例では、上部クラッド1aは、石英にB2O3を10mol%、P2O5を1mol%、GeO2を10mol%ドープして形成し、コア2はTiO2ドープ石英(SiO2−TiO2)により形成したが、上部クラッド1a、コア2の組成は特に限定されるものではなく、適宜設定されるものである。 【0073】すなわち、本発明において、光導波路部10(上部クラッド1a、コア2および下部クラッド1b)に発生する複屈折Bの値が|B|≦5.34×10−5となり、上部クラッド1aの熱膨張係数αgは、シリコン基板11の熱膨張係数をαgとして、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7となるように、上部クラッド1aの組成を決定し、クラッド1よりも屈折率が大きくなるようにコア2の組成を決定すればよい。 【0074】また、上記各実施形態例の光導波回路は、アレイ導波路型回折格子としたが、本発明の光導波回路は、必ずしもアレイ導波路型回折格子とするとは限らず、石英系ガラスによって形成された下部クラッド1bとコア2と上部クラッド1aとを有する光導波路部をシリコン基板上に形成してなる様々な光導波回路に適用できるものである。 【0075】 【発明の効果】本発明によれば、光導波路部に発生する複屈折Bの値を|B|≦5.34×10−5の適切な値とし、クラッドからコアに与える応力によってコアに与える歪みを小さくしたものであるから、この光導波回路における前記TEモードとTMモードの中心波長シフト量を0.05nm以下の適切な値とすることができ、それにより、偏波依存性損失の値を0.5dB以下の適切な値にすることができる。 【0076】そのため、本発明の光導波回路を例えば第3の発明のようにアレイ導波路型回折格子として、波長1.55μm帯の光波長多重通信システムに適用した場合に、半波長板を設けなくても偏波依存性損失の影響を抑制できるアレイ導波路型回折格子とすることが可能となり、半波長板を必要としない分だけ、作製工程数を少なくできるし、それにより、歩留まりを向上させ、コストの低減も図ることができる。また、25μm間隔でアレイ導波路を320本以上設計可能となる。 【0077】また、上部クラッドの熱膨張係数をαgとし、シリコン基板の熱膨張係数をαsとしたとき、αs−2.0×10−7≦αg≦αs+2.0×10−7と成している構成のものにあっては、上部クラッドの熱膨張係数を最適化し、確実に上記優れた効果を奏する光導波回路を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005290 【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年1月5日(2000.1.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100093894 【弁理士】 【氏名又は名称】五十嵐 清
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| 【公開番号】 |
特開2001−194541(P2001−194541A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月19日(2001.7.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−380(P2000−380) |
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