| 【発明の名称】 |
光ファイバコイル |
| 【発明者】 |
【氏名】藤井 隆志
【氏名】細谷 俊史
【氏名】笹岡 英資
【氏名】田中 茂
【氏名】小林 宏平
【氏名】玉野 研治
【氏名】福田 啓一郎
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| 【要約】 |
【課題】光ファイバに加わる外力を軽減し、伝送特性の安定した光ファイバコイルを提供すること。
【解決手段】本発明の光ファイバコイルは、コイル束状態に巻かれた光ファイバ32と、光ファイバ32の周囲に充填され、光ファイバ32の周囲全体を包み込む充填材84とを備えており、光ファイバ32の比重に対する充填材84の比重の比が、0.4〜1.6とされていることを特徴としている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コイル束状態に巻かれた光ファイバと、前記光ファイバの周囲に充填され、前記光ファイバの周囲全体を包み込む充填材とを備えており、前記光ファイバの比重に対する前記充填材の比重の比が、0.4〜1.6とされていることを特徴とする光ファイバコイル。 【請求項2】 前記充填材が、硬化性樹脂を主成分としていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバコイル。 【請求項3】 前記充填材が、JIS K 2220に規定される貯蔵ちょう度が測定温度-40℃〜100℃の全範囲で5〜200の範囲内にある物質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバコイル。 【請求項4】 前記充填材に硬化反応用触媒として白金が含有されると共に、前記光ファイバの被覆層に前記充填材の硬化を阻害する硬化阻害物質としてイソシアネート化合物が含有されており、前記充填材の前記光ファイバ近傍の部分とその外側の部分とで硬化度が異なっていることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバコイル。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、波長分散補償器、モード分散補償器、光増幅器、光ファイバジャイロなどに用いられる光ファイバコイルに関する。 【0002】 【従来の技術】光増幅器、波長分散補償器、モード分散補償器、光ファイバジャイロなどに用いられる光ファイバコイル及びその製造方法としては、特開平10-123342号公報に記載のものなどが知られている。光ファイバコイルは、その光経路上で光信号に対して所望の作用を発揮する。例えば、光増幅器に用いられる光ファイバコイルは、エルビウムをドーピングしたEDF(Erbium Doped optical-Fiber)をコイル化したもので、光ファイバの光経路上で光信号を増幅させる。 【0003】ここで、光を増幅させるためには、ある程度の長さのEDFが必要となるが、光増幅器の内部に効率よく収納するにはEDFをコイル束状態にするのがよい。このため、光ファイバをコイル束状態にした光ファイバコイルが用いられている。光増幅器以外の波長分散補償器、モード分散補償器、光ファイバジャイロなどの他の光学部品に用いられる光ファイバコイルについても同様である。従来の光ファイバコイルは、ボビンに光ファイバを巻き付けて構成されるのが一般的であった。 【0004】しかし、巻き重ねられた光ファイバには張力が残っており、これがもとでマイクロベンドロスが発生する。また、ボビンと光ファイバとの線膨張係数の違いにより、光ファイバにボビン変形による応力がかかるため、伝送損失が温度によって変化してしまう。そこで、上述した公報に記載のもののように様々な工夫を施し、ボビンレスの光ファイバコイルやこれと同等の効果が得られるボビンの構造なども検討されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの様々な工夫によっても、光ファイバの微小な曲げによって発生する曲げ損失(マイクロベンドロス)を完全に除去することはできないため、更なる改善が要望されていた。 【0006】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載の光ファイバコイルは、コイル束状態に巻かれた光ファイバと、光ファイバの周囲に充填され、光ファイバの周囲全体を包み込む充填材とを備えており、光ファイバの比重に対する充填材の比重の比が、0.4〜1.6とされていることを特徴としている。なお、ここに言う光ファイバの比重とは光ファイバ全体での比重である。一般に、光ファイバはガラス部分や樹脂被覆層などの異なる比重を持つ複数の素材で構成されている。ここに言う光ファイバの比重とは、これを全体としてみたときの比重である。さらに、充填材は、気体・液体・固体の何れの状態であっても良く、これらが混ざり合った状態であっても構わない。 【0007】請求項2に記載の光ファイバコイルは、請求項1に記載の発明において、充填材が、硬化性樹脂を主成分としていることを特徴としている。 【0008】請求項3に記載の光ファイバコイルは、請求項1又は2に記載の発明において、充填材が、JIS K 2220に規定される貯蔵ちょう度が測定温度-40℃〜100℃の全範囲で5〜200の範囲内にある物質であることを特徴としている。貯蔵ちょう度については、日本工業規格のJIS K 2220-1993に規定されている〔JIS K 2220-1993の2.(14)、5.3.1(4)、5.3.6等〕。ただし、JIS K 2220においては測定温度を25℃としているが、ここでは、測定温度-40℃〜100℃の全範囲において貯蔵ちょう度が上記の範囲内にある物質を用いる。 【0009】請求項4に記載の光ファイバコイルは、請求項2に記載の発明において、充填材に硬化反応用触媒として白金が含有されると共に、光ファイバの被覆層に充填材の硬化を阻害する硬化阻害物質としてイソシアネート化合物が含有されており、充填材の光ファイバ近傍の部分とその外側の部分とで硬化度が異なっていることを特徴としている。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明の光ファイバコイルの実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。 【0011】図1は、本発明に係る光ファイバコイルの第一実施形態を示す断面図であり、図2は、その蓋82を取り外した状態の平面図である。本実施形態の光ファイバコイルは、波長分散補償光ファイバ(Dispersion Compensation optical-Fiber:以下、DCFとも言う)によるDCFM(Dispersion Compensation optical-Fiber Module)として用いられているものである。DCFは、シングルモード光ファイバなどの伝送路用光ファイバと逆符号の波長分散特性を持つ光ファイバで、光伝送路の波長分散を相殺させることができる光ファイバである。 【0012】図1、図2に示されるように、本実施形態の光ファイバコイルは、矩形の底面を有する収納ケース80内にコイル束状態にされた光ファイバ32が収納されている。光ファイバ32の両端は、それぞれピグテールファイバ45に融着部分44で接続されている。収納ケース80内には、光ファイバ32を包み込むように充填材84が充填されている。ここで、充填材84は、コイル束状態の光ファイバ32の間にも入り込んでいることが好ましい。そして、収納ケース80には蓋82が取り付けられて、密封されている。 【0013】図3は、光ファイバ32の断面図であり、図4は、その屈折率プロフィールを示す図である。図3に示されるように、この光ファイバ32は、その中心にコア及びクラッドからなるガラス部分11を有し、ガラス部分11の周囲に二層の紫外線硬化型樹脂によって形成された被覆層13,15を有している。 【0014】この光ファイバ32の比重は1.4である。ガラス部分11は、コアの径aが2.5μm、ディプレスト部の径bが6.6μmの二重クラッド型DCFであり〔図4参照〕、その外径cは130μmである。また、一次被覆層13の厚みdは30μm、二次被覆層15の厚みeも30μmであり、光ファイバ32全体の外径fは250μmであった。クラッド部の屈折率に対するコア部、ディプレスト部それぞれの屈折率の増減であるΔ+、Δ-は、それぞれ、1.9%、-0.4%である。 【0015】なお、20℃において、一次被覆層13のヤング率は9.8×10-7Pa(0.10kgf/mm2)であり、二次被覆層15のヤング率は9.8×10-5Pa(10kgf/mm2)である。このDCFの波長分散、波長分散傾斜は、それぞれ波長1.55μmで-120ps・nm-1・km-1、-0.28ps・nm-2・km-1であり、伝送損失は0.40dB/kmである。この波長分散値及び波長分散傾斜値は、この光ファイバコイルに対して接続される伝送路用光ファイバのものと逆符号とされている。即ち、本実施形態の光ファイバコイルを用いることによって、伝送路の光ファイバによって生じた波長分散を補償できる。また、波長帯伝送用としては波長分散傾斜を逆符号とすることにより、波長帯にわたり波長分散を補償することができる。 【0016】充填材84としては、熱硬化性あるいは紫外線硬化性のシリコーン樹脂、あるいは、ブタジエン、シリコーンなどのゴムをシリコーン、ナフテンなどの溶剤で膨潤させ、必要に応じて他の樹脂等を添加した高粘性ジェリー状混和物などが使用できる。この充填材84の比重は2.0である。即ち、光ファイバ32の比重に対する充填材84の比重の比(以下、比重比ということとする)は、2.0/1.4=約1.4である。 【0017】光ファイバ32は充填材84の内部に保持されることになるが、光ファイバ32には、上述した比重比に応じた外力が加わる。即ち、光ファイバ32の比重をx、充填材84の比重をyとすると、アルキメデスの原理により、光ファイバ32の単位体積あたりにしてyだけ光ファイバ32を上方に押し上げようとする力(浮力)が発生する。光ファイバ32の比重xが充填材84の比重yよりも小さければ、浮力と重力の合成力(y−x)は正の値となり、光ファイバ32を上方に持ち上げようとする力として働く。また、光ファイバ32の比重xが充填材84の比重yよりも大きければ、浮力と重力の合成力(y−x)は負の値となり、光ファイバ32を下方に押し下げようとする力として働く。 【0018】光ファイバ32を押し下げ、あるいは押し上げようとする浮力と重力の合成力が大きいと、光ファイバ32に加わる力が大きくなり、いわゆる側圧による伝送損失の悪化と同様に、伝送損失の悪化を招く。この力の相対的な大きさは、上述した浮力と重力との合成力(y−x)を光ファイバ32の比重xで割った値、即ち、(y−x)/xと表すことができる。これは、y/x−1のように変形することができる。即ち、浮力と合力の合成力は、上述した比重比y/xの値によって決まる。そこで、本実施形態においては、比重比が光ファイバ32の伝送損失に影響を与えない範囲内(0.4〜1.6)に設定されている。上述した比重比が0.4未満であると、光ファイバ32を押し下げようとする力が大きくなりすぎて伝送損失を悪化させてしまう。一方、比重比が1.6を超えるようであると、光ファイバ32を持ち上げようとする力が大きくなりすぎて伝送損失を悪化させてしまう。 【0019】なお、0.4と1.6という値は、浮力と重力との合成力において、符号が逆で絶対値が等しくなる関係にある。即ち、比重比が0.4であるときに光ファイバ32に加わる押し下げる力の絶対値と、比重比が1.6であるときに光ファイバ32に加わる持ち上げる力の絶対値とは等しいと考えられる。なお、ここに言う比重比に用いる充填材84の比重は、最終的に光ファイバ32に接する部分の比重である。 【0020】また、充填材84は硬化性樹脂である。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂が一般的であるが、効果のための条件は熱や紫外線以外でも良い。本実施形態においては、熱硬化性のゲル状の樹脂を用いて、これを熱硬化させた。充填材84としてこのような硬化性樹脂を用いれば、光ファイバ32を包み込んで保持する状態を容易に実現することができる。即ち、硬化させる前に充填材84によって光ファイバ32を包み込ませてから硬化させることによって、光ファイバ32を包み込んで保持する状態を容易に実現できるからである。なお、充填材84が硬化性樹脂であって、光ファイバ32を包み込むときは液体で、その後固体化し、その際の比重が変化する場合、充填材84の比重とは固体化前の液体状態での比重を意味する。 【0021】さらに、この充填材84は、JIS K 2220に規定される貯蔵ちょう度が測定温度-40℃〜100℃の全範囲で5〜200の範囲内にある物質である。なお、-40℃〜100℃の温度範囲は、光ファイバコイルの実用使用温度である。このような樹脂を用いずに、コイル束状態の光ファイバ32を通常の接着剤や樹脂で光ファイバを固定すると、硬化時の接着剤や樹脂のヤング率は5×108Pa以上に達するため、光ファイバ32に過大な押圧力がかかって、それに伴う曲げ歪みが発生して好ましくない。このような柔軟性に富み、高粘性の物質を充填材として使用することにより、光ファイバコイルを構成する光ファイバに曲げ歪みを加えるような過大な押圧力を及ぼすことなく、光ファイバを確実に固定することが可能である。 【0022】これには、上述した貯蔵ちょう度を有するものが好ましい。貯蔵ちょう度が5未満であると、光ファイバのマイクロベンドによる長波長側損失が大きくなりすぎ、実用に向かない。また、貯蔵ちょう度が200を超えるようであると、充填材84によって光ファイバコイルの形状を保持できないので、使用しているうちにコイル束状態が巻き崩れるなどして伝送特性を安定化させることができない。 【0023】本実施形態の光ファイバの製造時には、まず。光ファイバ32をボビンに巻き付けた後、ボビンの胴を抜き取ってコイル束状態とし、光ファイバ32の一本一本の周囲にゲル状の充填材84を充填する。充填材84は熱硬化性樹脂であるので熱硬化させ、光ファイバコイルとして完成させた。 【0024】上述した光ファイバコイルの効果を確認するため、-20〜70℃の各6時間保持5サイクルの熱サイクル試験を行った。-20℃での5回の損失測定値と70℃での5回の損失測定値の計10の損失測定値の最大値と最小値との差を損失変動量として算出した。測定は、このDCFMを恒温槽に入れて熱サイクルをかけた後、DCF部分のみを恒温槽から取り出し、1550nm光源とパワーメータを用いて行った。その結果、測定波長1550nmのときの損失変動量は0.022dB/kmであった。分散補償器(DCFM)の温度特性によるファイバ部の許容損失変動量は0.025dB/km程度であるため、本実施形態のDCFMはこれを達成している。 【0025】次に、第二実施形態について説明する。本実施形態については、上述した第一実施形態と同一又は同等の構成部位については、同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。本実施形態の図1相当図を図5に示す。 【0026】本実施形態の充填材84は、その比重が0.97であり、硬化反応用触媒として白金触媒が含有されている。また、本実施形態の光ファイバ32は、第一実施形態の光ファイバ32とほぼ同一であるが、充填材84の硬化を阻害する硬化阻害物質としてのイソシアネート化合物が光ファイバ32の二次被覆層15に含有されている。なお、イソシアネート化合物は、光ファイバ32の二次被覆層15だけでなく、一次被覆層13にも含有されていても構わない。なお、比重比は、0.97/1.4=0.7となる。 【0027】このようにすることによって、充填材84の硬化時に、充填材84の光ファイバ32に接する部分が二次被覆層15に含有されたイソシアネート化合物によって硬化が阻害され、図5に示されるように、光ファイバ32の近傍に液状部84aが形成される。光ファイバ32からある程度離れた部分は、二次被覆層15に含有されたイソシアネート化合物によって硬化を阻害されることなく、通常通り硬化され、弾性固体部84bが形成される。このように液状部84aと弾性固体部84bとに同一の素材を用いて、その硬化度を変えることによって、光ファイバコイルの製造をより効率的に行うことができる。 【0028】また、ここで、光ファイバ32の二次被覆層15に硬化阻害物質を含有させておくことで、液状部84aを形成させたい部分の硬化度だけを容易に低くすることができ、光ファイバコイルの製造上非常に好都合である。また、このとき、本実施形態においては、充填材84に硬化反応用触媒として白金を含有させておき、硬化阻害物質としてイソシアネート化合物を用いている。このように、硬化反応用触媒とその触媒作用を打ち消す硬化阻害物質という組み合わせは、光ファイバコイルの充填材84の硬化過程を有効に利用しており、好適に液状部84aを形成させることができる。 【0029】このようにして、充填材84は、液状部84aと弾性固体部84bとからなるものとして形成される。光ファイバ32に接する部分が液状又は半液状の液状部84aとされ、この液状部84aの外側がある程度の弾性を有する弾性固体部84bとされている。ここに言う液状又は半液状とは、光ファイバ32が内部で自由にその位置を変更することができる状態を言い、位置を変更した後にその液状又は半液状の部分から元の位置に戻される力を実質的に受けない状態をいう。 【0030】本実施形態の液状部84aと弾性固体部84bとは同一素材によって形成されているが、その硬化度が異なる。上述した光ファイバコイルの製造においては、コイル束状の光ファイバ32を、収納ケース80の内部に充填された液状又は半液状の充填材84内に埋没させ、その後充填材84を硬化させる。あるいは、予め収納ケース80の内部にコイル束状の光ファイバ32を載置してから収納ケース80内に充填材を充填し、その後充填材84を硬化させる。 【0031】この際、光ファイバ32の周囲の硬化度をその外側よりも小さくすることによって、上述した液状部84aと弾性固体部84bとを形成させる。なお、図5には、便宜上、液状部84aと弾性固体部84bとの境界を明確に示したが、本実施形態においては、液状部84aと弾性固体部84bとの境界は、明確に形成されたものではなく、徐々に硬化度が変化しているような境界である。 【0032】また、本実施形態における液状部84aの形成形態は、図5に示されるように、光ファイバ32のごく近傍のみが液状部84aとされたが、コイル状の光ファイバ全体を収納し得る一つの大きなドーナツ状の液状部が形成されても良い。 【0033】また、光ファイバ32は、液状部84aの内部で拘束されにくい状態となっている。このため、光ファイバ32と充填材84(弾性固体部84b)との熱膨張率が異なっていても、光ファイバ32は液状部84aの内部である程度位置を変化せることができ、温度変化によって光ファイバ32に外力が加わるのを防止できる。即ち、本実施形態の光ファイバコイルは、優れた温度特性をも有している。 【0034】なお、本実施形態においても、充填材84(硬化後の弾性固体部84b)は、JIS K 2220に規定される貯蔵ちょう度が測定温度-40℃〜100℃の全範囲で5〜200の範囲内にある物質であり、特に貯蔵ちょう度10のものが用いられている。光ファイバ32には、液状部84aを形成させることによって過大な力が加わることを防止できるが、光ファイバ32と弾性固体部84bとが接触する可能性もあるので、弾性固体部84bに上述した物性値を持たせることで、より一層光ファイバ32への外力の負荷を防止することができる。 【0035】このとき、弾性固体部84bの貯蔵ちょう度が5未満であると、光ファイバ32のマイクロベンドによる長波長側損失が大きくなりすぎ、実用に向かない。また、貯蔵ちょう度が200を超えるようであると、弾性固体部84bによって液状部84aの形状及びその内部の光ファイバ32のコイル状の形態を保持できないので、使用しているうちに液状部84aが維持できなくなったり、コイル束状態が巻き崩れるなどして伝送特性を安定化させることができない。 【0036】上述した比重比による硬化や、上述した貯蔵ちょう度を有する充填材84を用いた効果に加えて、光ファイバ32の近傍とその外側とで硬化度を変えたことによる効果が加算され、本実施形態の光ファイバの伝送特性はさらに優れたものとなる。本実施形態の光ファイバコイルの効果を確認するため、第一実施形態と同様な熱サイクル試験を行った。その結果、測定波長1550nmのときの損失変動量は0.018dB/kmであった。 【0037】次に、第三実施形態について説明する。本実施形態についても、上述した第一実施形態と同一又は同等の構成部位については、同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。 【0038】本実施形態の充填材84は、その比重が1.4のジェリー状の半液体状の物質であり、その貯蔵ちょう度は150である。また、本実施形態の光ファイバ32は、第一実施形態の光ファイバ32と同一である。即ち、比重比は、1.4/1.4=1となり、光ファイバ32には、押し下げようとする力も持ち上げようとする力も作用しない状態となる。光ファイバ32は、収納ケース80内の充填材84中に浮遊しているような状態である。本実施形態の光ファイバコイルについても、その効果を確認するため、第一実施形態と同様な熱サイクル試験を行った。その結果、測定波長1550nmのときの損失変動量は0.010dB/kmであり。比重比が1であるときが特に良好な伝送特性を得ることができることが分かる。 【0039】上述した実施形態と比較するために、以下の比較例についても同様の試験を行った。第一比較例は、第一実施形態で用いた光ファイバ32をコイル束状態とし、この束を可能な限りバサバサとなるようにして、分散補償器(DCFM)を完成させた。ここでは、充填材を用いておらず単なる空気である。即ち、空気が充填材となっており、その比重はほぼ0であるので、比重比もまた0となる。また、貯蔵ちょう度も無限大となる。同様の熱サイクル試験を行ったところ、測定波長1550nmのときの損失変動量は0.223dB/kmであり、上述した実施形態の方が優れていることが分かった。 【0040】また、第二比較例は、第三実施形態の充填材84の代わりに、比重0.52のオイルを用いたものである。比重比は、0.52/1.4=0.37になる。この充填材(オイル)の貯蔵ちょう度は150である。同様の熱サイクル試験を行ったところ、測定波長1550nmのときの損失変動量は0.121dB/kmであり、上述した実施形態の方が優れていることが分かった。 【0041】本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、収納ケースの形態は、上述した実施形態のものに限定されず、ドーナツ型や底面が平面ではなく曲面となっているものなどでもよい。また、請求項1に記載の発明に関しては、液状部が形成されればその製造方法は上述した実施形態のような製造方法によらなくても良い。例えば、コイル状にした光ファイバ全体をオイル中に浸して光ファイバの周囲にオイルを付着させ、これを通常通り充填材でモールドしても良い。あるいは、充填材のベース剤や硬化剤の調合量を変化させて液状部となる未硬化状態を作りやすくするという手法もある。 【0042】また、さらに、上述した実施形態の光ファイバコイルは、波長分散補償光ファイバ(DCF)を用いたものであったが、その他の光ファイバを用いたものであってもよい。例えば、シングルモード光ファイバ、波長分散シフト光ファイバ、NZ型波長分散シフト光ファイバ、エルビウム添加光ファイバ又は偏波保持光ファイバなどを用いた光ファイバコイルであってもよい。 【0043】シングルモード光ファイバ(Single Mode optical-Fiber:SMFとも言う)は、1.3μmの波長帯域で光信号の伝送を行うことを主目的に設計された光ファイバである。この光ファイバを用いて1.55μmの波長帯域で光信号の伝送を行うと波長分散という現象を起こす。この波長分散は、波長分散補償光ファイバをモジュール化したもの(DCFM)などで補償される。これとは反対に、SMFは、上述したDCFなどによって負の波長分散となった光信号をそれ自身の正の波長分散で補償する場合などにも用いられる。この場合、使用にあたってはモジュール化される場合がある。 【0044】波長分散シフト光ファイバ(Dispersion Shifted optical-Fiber:DSFとも言う)は、1.55μmの波長帯域で光信号の伝送を行うことを主目的に設計されて光ファイバである。1.55μmの波長帯域に対する波長分散値が零であるという特性を有している。DSFは、ラマン散乱励起用光ファイバとして用いられる場合がある。使用にあたってはモジュール化される場合がある。 【0045】NZ型波長分散シフト光ファイバ(Non Zero Dispersion Shifted optical-Fiber:NZ-DSFとも言う)は、上述したDSFの場合に起こる非線形現象を低減するため、波長分散が零となる波長を1.55μmから多少ずらして設計した光ファイバである。NZ-DSFは、ラマン散乱励起用光ファイバとして用いられる場合がある。 【0046】エルビウム添加光ファイバ(Erbium Doped optical-Fiber:EDFとも言う)は、コアにエルビウムイオンを添加した光ファイバである。波長0.98μm,1.48μmの光を吸収した状態で1.53〜1.61μmの波長帯域の信号光を入射させると誘導放出を起こし、信号光のパワーを増幅させることができる。通常は、モジュール化された形態で、光アンプ(Erbium Doped optical-Fiber Amplifier:以下、EDFAとも言う)などとして利用される。 【0047】偏波保持光ファイバ(Polarization Maintaining optical-Fiber:PMFとも言う)は、直線偏波を保持したまま伝送する光ファイバであり、光ファイバジャイロや偏波モード分散補償器などに利用される。通常は、モジュール化してPMFM(Polarization Maintaining optical-Fiber Module)として用いる。 【0048】 【発明の効果】本発明の光ファイバコイルは、コイル束状態に巻かれた光ファイバと、光ファイバの周囲に充填され、光ファイバの周囲全体を包み込む充填材とを備えており、光ファイバの比重に対する充填材の比重の比(比重比)が、0.4〜1.6とされているので、比重比に起因して光ファイバに発生する外力(浮力)を軽減することができ、伝送特性を良好なものとすることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002130 【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年8月25日(2000.8.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088155 【弁理士】 【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−194537(P2001−194537A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月19日(2001.7.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−255948(P2000−255948) |
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