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【発明の名称】 ノルボルネン系樹脂組成物及び位相差板
【発明者】 【氏名】荒川 公平

【要約】 【課題】積層形成の必要がなく、単一素材で低コストで形成可能であり、広帯域において高性能な位相差板を提供する。

【解決手段】ノルボルネン系樹脂と、固有複屈折値が負であり、波長450nm、波長550nmのときの固有複屈折値(Δn)をそれぞれΔn(450)、Δn(550)としたとき、固有複屈折値の波長分散が、次式、|Δn(450)/Δn(550)|≧1.02、を満たすポリマーと、を含有するノルボルネン系樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする位相差板である。前記ポリマーがポリスチレン系ポリマーである態様が好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ノルボルネン系樹脂と、固有複屈折値が負であり、波長450nm、波長550nmのときの固有複屈折値(Δn)をそれぞれΔn(450)、Δn(550)としたとき、固有複屈折値の波長分散が、次式、|Δn(450)/Δn(550)|≧1.02、を満たすポリマーと、を含有することを特徴とするノルボルネン系樹脂組成物。
【請求項2】 ポリマーがポリスチレン系ポリマーである請求項1に記載のノルボルネン系樹脂組成物。
【請求項3】 複屈折を有する位相差板に用いられる請求項1又は2に記載のノルボルネン系樹脂組成物。
【請求項4】 請求項1から3のいずれかに記載のノルボルネン系樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする位相差板。
【請求項5】 波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、それぞれRe(450nm)、Re(550nm)、Re(650nm)としたとき、これらが次式、Re(450nm)<Re(550nm)<Re(650nm)、を満たす請求項4に記載の位相差板。
【請求項6】 広帯域1/4波長板及び広帯域1/2波長板のいずれかである請求項4又は5に記載の位相差板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パソコン、AV機器、携帯型情報通信機器、ゲームやシュミレーション機器、車載用のナビゲーションシステム等、種々の分野の表示装置として利用され得る反射型液晶表示装置等に好適な位相差板、及び該位相差板に好適に用いられるノルボルネン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】レターデーション(Re)が波長の長さの1/4であるλ/4板は、反射型LCD、光ディスク用ピックアップ、防眩フィルムなど多くの用途を有している。一方、レターデーション(Re)が波長の長さの1/2であるλ/2板は、液晶プロジェクターなどに利用されている。前記λ/4板や前記λ/2板としては、各用途において、人間の目が視認し得る可視光領域の全ての入射光に対してその機能が十分に発揮されることが望まれる。可視光領域全域の入射光に対してλ/4板やλ/2板として機能する広帯域位相差板としては、例えば、特開平5−27118号公報、特開平5−100114号公報、特開平10−68816号公報、特開平10−90521号公報等に、相互に異なる光学異方性を有する2枚のポリマーフィルムを積層して形成したものが提案されている。
【0003】しかしながら、これらの場合、その製造には、一方向に延伸した延伸フィルムを、延伸方向に対して相互に異なる角度をなす方向にカットした2種のチップを得、これらを貼り合わせて積層する必要がある。このλ/4板では、各ポリマーフィルムの光学異方性(光軸や遅相軸の傾き)は、延伸フイルムの延伸方向に対して、どれだけの角度でチップを切り取るかによって決定されるので、精密な裁断技術が必要となる。また、2枚のチップを貼り合わせる際には、接着剤を塗布したり、精密な位置合わせが必要になり、製造工程が煩雑である。即ち、粘着加工、チップ化、貼合等のコストアップ要因のプロセスが必要であり、チップ化に伴う加工屑などの汚染、貼合角の誤差による位相差のバラツキなどの実際の性能にも悪影響を及ぼす問題がある。可視光全域で1/4波長又は1/2波長のレターデーションを有し、かつ使用に耐え得る耐久性を有する広帯域λ/4板、広帯域λ/2板を、積層形成ではなく、単一素材で形成する技術は未だ提供されていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の課題を解決することを目的とする。本発明は、積層形成の必要がなく、単一素材で低コストで形成可能であり、広帯域において高性能な位相差板、及び該位相差板に好適に用いられるノルボルネン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、<1> ノルボルネン系樹脂と、固有複屈折値が負であり、波長450nm、波長550nmのときの固有複屈折値(Δn)をそれぞれΔn(450)、Δn(550)としたとき、固有複屈折値の波長分散が、次式、|Δn(450)/Δn(550)|≧1.02、を満たすポリマーと、を含有することを特徴とするノルボルネン系樹脂組成物である。
<2> ポリマーがポリスチレン系ポリマーである前記<1>に記載のノルボルネン系樹脂組成物である。
<3> 複屈折を有する位相差板に用いられる前記<1>又は<2>に記載のノルボルネン系樹脂組成物である。
<4> 前記<1>から<3>のいずれかに記載のノルボルネン系樹脂組成物を用いて形成されることを特徴とする位相差板である。
<5> 波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、それぞれRe(450nm)、Re(550nm)、Re(650nm)としたとき、これらが次式、Re(450nm)<Re(550nm)<Re(650nm)、を満たす前記<4>に記載の位相差板である。
<6> 広帯域1/4波長板及び広帯域1/2波長板のいずれかである前記<4>又は<5>に記載の位相差板である。
【0006】
【発明の実施の形態】(ノルボルネン系樹脂組成物)本発明のノルボルネン系樹脂組成物は、ノルボルネン系樹脂と、固有複屈折値が負であるポリマーとを含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
【0007】−ノルボルネン系樹脂−前記ノルボルネン系樹脂は、分子が一軸性の秩序をもって配向したときに、光学的に正の一軸性を示す特性を有する。前記ノルボルネン系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、透明性、低吸水性、耐熱性に優れ、光学用途に好適である点で熱可塑性ノルボルネン樹脂が好ましい。
【0008】前記熱可塑性ノルボルネン樹脂は、ノルボルナン骨格を繰り返し単位として有してなり、その具体例としては、特開昭60−168708号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、などに記載されたものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0009】本発明においては、前記熱可塑性ノルボルネン樹脂の中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】前記構造式において、A、B、C及びDは、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0012】また、前記熱可塑性ノルボルネン樹脂の中でも、下記構造式(V)で表されるテトラシクロドデセンの少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物と、をメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】前記構造式において、A、B、C及びDは、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0015】前記ノルボルネン系樹脂の重量平均分子量としては、5,000〜1,000,000程度であり、8,000〜200,000が好ましい。
【0016】−固有複屈折値が負であるポリマー−前記固有複屈折値が負であるポリマーは、分子が一軸性の秩序をもって配向したときに、全体の光学特性が負の一軸性を示す特性を有する高分子である。前記固有複屈折値が負であるポリマーとしては、1種単独で前記特性を有するものであってもよいし、2種以上をブレンドした時に前記特性を有するものであってもよい。
【0017】前記固有複屈折値が負であるポリマーは、その固有複屈折値の波長分散が大きいものが選択され、具体的にはその固有複屈折値の波長分散が、波長450nm、波長550nmのときの固有複屈折値(Δn)をそれぞれΔn(450)、Δn(550)としたとき、次式、|Δn(450)/Δn(550)|≧1.02、を満たすものから選択され、次式、|Δn(450)/Δn(550)|≧1.05、を満たすものが好ましい。なお、前記|Δn(450)/Δn(550)|の値は、大きい方が好ましいが、ポリマーの場合は通常2.0以下である。
【0018】前記ポリマーとしては、ポリスチレン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、セルロースエステル系ポリマー(前記固有複屈折値が正であるものを除く)、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・メチルメタクリレート共重合体、などのポリスチレン系ポリマーが特に好ましい。
【0019】前記固有複屈折値が負であるポリマーの前記ノルボルネン系樹脂に対する配合割合としては、両者の固有複屈折値の絶対値の大きさや、成形温度における複屈折の発現性等により異なり、一概に規定することはできないが、重量比(ノルボルネン系樹脂:固有複屈折値が負であるポリマー)で5:5〜9:1が好ましく、7:3〜8:2がより好ましい。
【0020】−その他の成分−前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば相溶化剤などが好適に挙げられる。前記相溶化剤は、前記ノルボルネン系樹脂と、前記固有複屈折値が負であるポリマーとを混合した際に相分離が生じてしなう場合等に好適に使用することができ、該相溶化剤を使用することによって、前記ノルボルネン系樹脂と、前記固有複屈折値が負であるポリマーとの混合状態を良好にすることができる。
【0021】−用途−本発明のノルボルネン系樹脂組成物は、複屈折を有する位相差板に好適に用いることができる。
【0022】(位相差板)本発明の位相差板は、前記本発明のノルボルネン系樹脂組成物を用いて形成される。本発明の位相差板は、波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、それぞれRe(450nm)、Re(550nm)、Re(650nm)としたとき、これらが次式、Re(450nm)<Re(550nm)<Re(650nm)、を満たすのが好ましい。本発明の位相差板としては、広帯域1/4波長板及び広帯域1/2波長板のいずれかであるのが好ましい。
【0023】本発明の位相差板の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、以下のようにして製造することができる。即ち、前記本発明のノルボルネン系樹脂組成物を、溶液化して塗布し乾燥することにより成膜化する溶液製膜法、あるいはペレット化して溶融押出して成膜化する押出成形法、等に従って位相差板に製造することができる。
【0024】以上により得られた位相差板は、波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、それぞれRe(450nm)、Re(550nm)、Re(650nm)としたとき、これらが次式、Re(450nm)<Re(550nm)<Re(650nm)、を満たしていれば、そのまま使用することができ、前記式を満たしていない場合には、組成比や延伸温度などの条件を変更することにより、前記式を満たすように前記レターデーション(Re)の値を制御した後で使用するのが好ましい。前記延伸としては、機械的流れ方向に延伸する縦一軸延伸、機械的流れ方向に直交する方向に延伸する横一軸延伸(例えば、テンター延伸など)などが好適に挙げられるが、延伸に異方性が存在すれば二軸延伸であってもよい。
【0025】−用途−本発明の位相差板は、単一成形体で所望の特性を発揮するため、2枚以上を積層形成する必要がなく、低コストで製造可能であり、広帯域において高性能を示し、パソコン、AV機器、携帯型情報通信機器、ゲームやシュミレーション機器、車載用のナビゲーションシステム等、種々の分野の表示装置として利用可能な反射型液晶表示装置等に好適に使用することができる。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0027】(実施例1)前記ノルボルネン系樹脂として、ノルボルネン樹脂(ジェイエスアール社製、アートンF)19重量部と、前記固有複屈折値が負である材料として、ポリスチレン(東洋スチレン(株)製、HRM−2−211L)6重量部と、相溶化剤(ノルボルネンとスチレンとの共重合体)若干量と、を塩化メチレン溶液に溶解して塗布溶液(25重量%)を調製した。なお、前記ポリスチレンは、波長450nm、波長550nmのときの固有複屈折値(Δn)をそれぞれΔn(450)、Δn(550)としたとき、その固有複屈折値の波長分散が、|Δn(450)/Δn(550)|=1.05であった。
【0028】前記塗布溶液をガラス板上にドクターブレードを用いて流延し、乾燥して、厚みが104μmである透明フィルムを形成した。この透明フィルムを150℃で23%一軸延伸して位相差板を得た。この位相差板について、レターデーション測定器(王子計測社製、KOBRA21DH)を用いて、そのRe値の波長分散を計測した。その結果を図1に示した。図1に示すように、該位相差板は、波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、それぞれRe(450nm)、Re(550nm)、Re(650nm)としたとき、これらが次式、Re(450nm)<Re(550nm)<Re(650nm)、を満たしており、広帯域で1/4波長板特性を示していた。
【0029】(比較例1)実施例1において、ポリスチレンを使用せず、透明フィルムの厚みを105μmとし、該透明フィルムを155℃で36%一軸延伸した以外は、実施例1と同様にして位相差板を作製し、実施例1と同様にRe値の波長分散を計測した。その結果を図1に示した。図1に示すように、該位相差板は、広帯域1/4波長板特性を示さなかった。
【0030】(比較例2)実施例1において、ノルボルネン樹脂を使用せず、透明フィルムの厚みを97μmとし、該透明フィルムを110℃で17%一軸延伸した以外は、実施例1と同様にして位相差板を作製し、実施例1と同様にRe値の波長分散を計測した。その結果を図1に示した。図1に示すように、該位相差板は、広帯域1/4波長板特性を示さなかった。
【0031】(実施例2)前記ノルボルネン系樹脂として、ノルボルネン樹脂(ジェイエスアール社製、アートンF)19重量部と、前記固有複屈折値が負である材料として、ポリスチレン(東洋スチレン(株)製、HRM−2−211L)6重量部と、相溶化剤(ノルボルネンとスチレンとの共重合体)若干量と、を塩化メチレン溶液に溶解して塗布溶液(25重量%)を調製した。なお、前記ポリスチレンは、波長450nm、波長550nmのときの固有複屈折値(Δn)をそれぞれΔn(450)、Δn(550)としたとき、その固有複屈折値の波長分散が、|Δn(450)/Δn(550)|=0.82であった。
【0032】前記塗布溶液をガラス板上にドクターブレードを用いて流延し、乾燥して、厚みが210μmである透明フィルムを形成した。この透明フィルムを150℃で23%一軸延伸して位相差板を得た。この位相差板について、レターデーション測定器(王子計測社製、KOBRA21DH)を用いて、そのRe値の波長分散を計測した。その結果を図2に示した。図2に示すように、該位相差板は、波長450nm、550nm、650nmにおけるレターデーション(Re)の値を、それぞれRe(450nm)、Re(550nm)、Re(650nm)としたとき、これらが次式、Re(450nm)<Re(550nm)<Re(650nm)、を満たしており、広帯域で1/2波長板特性を示していた。
【0033】(比較例3)実施例2において、ポリスチレンを使用せず、透明フィルムの厚みを219μmとし、該透明フィルムを155℃で35%一軸延伸した以外は、実施例1と同様にして位相差板を作製し、実施例2と同様にRe値の波長分散を計測した。その結果を図2に示した。図2に示すように、該位相差板は、広帯域1/2波長板特性を示さなかった。
【0034】(比較例4)実施例2において、ノルボルネン樹脂を使用せず、透明フィルムの厚みを127μmとし、該透明フィルムを110℃で24%一軸延伸した以外は、実施例1と同様にして位相差板を作製し、実施例2と同様にRe値の波長分散を計測した。その結果を図2に示した。図2に示すように、該位相差板は、広帯域1/2波長板特性を示さなかった。
【0035】
【発明の効果】本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができ、積層形成の必要がなく、単一素材で低コストで形成可能であり、広帯域において高性能な位相差板、及び該位相差板に好適に用いられるノルボルネン系樹脂組成物を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【出願日】 平成12年1月14日(2000.1.14)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2001−194527(P2001−194527A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−5446(P2000−5446)