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【発明の名称】 ダイクロイックプリズム
【発明者】 【氏名】高橋 司

【要約】 【課題】s偏光とp偏光の半値波長差の大きいダイクロイックミラーを実現する。

【解決手段】光学ガラスの基板11の表面に、スパッタ法による14〜24層のダイクロイックミラーを成膜する。蒸着法によるダイクロイックミラーに比べて、s偏光とp偏光の半値波長差を拡大し、赤反射ダイクロ膜10a、青反射ダイクロ膜10bを有するカラー画像合成用のダイクロイックプリズム10の光学特性を改善できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ビームスプリッタによって分割されたp偏光成分を透過し、s偏光成分を反射する青色用と赤色用のダイクロイックミラーを備えたダイクロイックプリズムであって、前記ダイクロイックミラーが、14ないし24層の膜構成を有し、各層がスパッタ法によって成膜されたものであることを特徴とするダイクロイックプリズム。
【請求項2】 高屈折率層がTiO2 膜であり、低屈折率層がSiO2 膜であることを特徴とする請求項1記載のダイクロイックプリズム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カメラ、複写機、プリンタ等の光学機器に用いられるダイクロイックプリズムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、光源からの光を赤、青、緑の3種類の波長光に分割し、カラー画像に合成するダイクロイックプリズムは、青反射ダイクロ膜および赤反射ダイクロ膜等のダイクロイックミラーの成膜を蒸着法によって行うのが一般的であった。例えば図6に示す液晶プロジェクタ光学系において、光源101からの光を偏光ビームスプリッタ102でs偏光成分とp偏光成分の2系統に分割し、この分割された各偏光成分の光のうち、透過光であるp偏光成分の光はトリミングフィルタ103を介してダイクロイックプリズム104に照射され、反射光であるs偏光成分の光はダイクロイックミラー105,106および全反射ミラー107〜109によって2色用に分割され、ダイクロイックプリズム104内の赤反射ダイクロ膜104aと青反射ダイクロ膜104bにそれぞれ照射される。
【0003】この構成によって、赤光路と青光路ではs偏光によって高反射特性をもち、また、透過光である緑光路をp偏光にすることにより、反射帯のリップルが少なく透過帯の幅が広い特性を持つダイクロイックプリズムを実現することができる。
【0004】そして、ダイクロイックプリズム104に照射された各色の光はカラー画像に合成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来の技術によれば、蒸着法によってダイクロイックプリズムの青反射ダイクロ膜や赤反射ダイクロ膜を成膜した場合は、透過フィルターを用いた膜厚制御方法のため、成膜できる膜厚に制限があり、設計上・製作上の障害になっていた。また、緑光路においてp偏光を用いているが、s偏光とp偏光の半値波長の差を広くとることができないために、緑光路の光をp偏光に変えることの利点が充分に生かしきれていなかった。
【0006】本発明は上記従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、青反射ダイクロ膜や赤反射ダイクロ膜等のダイクロイックミラーにおけるs偏光とp偏光の半値波長幅を拡大し、すぐれた分光特性を有するダイクロイックプリズムを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のダイクロイックプリズムは、ビームスプリッタによって分割されたp偏光成分を透過し、s偏光成分を反射する青色用と赤色用のダイクロイックミラーを備えたダイクロイックプリズムであって、前記ダイクロイックミラーが、14ないし24層の膜構成を有し、各層がスパッタ法によって成膜されたものであることを特徴とする。
【0008】
【作用】s偏光成分を反射する赤反射ダイクロ膜、青反射ダイクロ膜を、スパッタ法によって成膜される合計14ないし24層の膜構成にする。
【0009】蒸着法の替わりにスパッタ法を採用すれば、膜厚制御が容易であるために、14ないし24層の膜構成のダイクロ膜設計上の制約が大幅に緩和される。また、スパッタ法によれば、緻密で屈折率の高い膜を成膜することができるため、緑光路にp偏光を用いた場合にs偏光との透過波長域差の幅を広くとることが可能となる。
【0010】これによってダイクロイックプリズムの光学特性を大幅に改善し、高品質なカラー画像を合成することができる液晶プロジェクタ光学系等を実現できる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】図1の(a)は、一実施の形態によるダイクロイックミラーの膜構成を示すもので、これは、BK7等の基板11の表面に、TiO2 を主成分とした高屈折率層であるTiO2 膜12と、SiO2 を主成分とした低屈折率層であるSiO2膜13をスパッタ法によって交互に成膜した合計20層からなるダイクロイックミラーである。
【0013】このように、合計20層のスパッタ法によるTiO2 の高屈折率層とSiO2の低屈折率層からなるダイクロイックミラーを、図1の(b)に示すように、赤色用のダイクロイックミラーである赤反射ダイクロ膜10aと、青色用のダイクロイックミラーである青反射ダイクロ膜10bとして、各層の膜厚をそれぞれ最適化し、4個のプリズム1〜4の所定の端面に成膜し、プリズム1〜4を貼り合わせてダイクロイックプリズム10を得る。
【0014】スパッタ法においては、成膜レートの時間的変動が小さくて、安定しているため、成膜時間のみで膜厚の制御を行うことができる。従って、蒸着法のようにフィルタを用いることによる成膜技術上の制約がなく、柔軟な膜構成の設計ができる。
【0015】また、スパッタ法によって成膜した薄膜は緻密で、屈折率が高いため、緑光路にp偏光を用いるダイクロイックプリズムにおいては、蒸着法で成膜したダイクロイックミラーを用いる場合に比べて、s偏光との透過波長域差の幅を広くとることができる。
【0016】このようにすぐれた分光特性を有するダイクロイックプリズムを液晶プロジェクタ光学系等に用いることで、極めて高画質なカラー画像を得ることができる。
【0017】なお、上記のスパッタ法によるダイクロイックミラーの膜構成は、図1の(a)に示す20層の薄膜を有するものに限定されることなく、ダイクロイックミラーとして一般的に用いられる14ないし24層の膜構成に広く適用できることが判明している。
【0018】(実施例1)スパッタ成膜装置にBK7の光学ガラスを入れ、1×10-4Pa以下の圧力に真空排気したのち、図1の(a)に示すダイクロイックミラーのTiO2 膜、SiO2 膜をDC電圧、RF電圧のどちらか一方、あるいはその両方をターゲットに印加してO2 、Ar、H2 Oを導入して成膜した。ここで得られた各物質の単層膜の分光測定を行ってそれぞれの分散式を算出した。設計中心波長λ(587nm)のλ/4の光学的膜厚で交互に20層積層した場合に得られる分光特性を図2の(a)に示す。
【0019】この図からs偏光とp偏光の透過率が50%になる波長の差を比較すると短波長側では63nm、長波長側では125nmとなる。
【0020】(実施例2)実施例1の膜構成を基本として赤反射ダイクロ膜、青反射ダイクロ膜になるよう膜厚を一律に調整し、さらに上下三層を調整層として膜厚を調整してカット波長、リップル低減などある程度の分光特性を最適化することにより、スパッタ法による赤反射ダイクロ膜、青反射ダイクロ膜を有するダイクロイックプリズムを設計製作した。その膜構成を末尾の表1に示す。この場合の緑透過光の分光特性をs偏光およびp偏光について求めた結果を図3の(a)に示す。青反射、赤反射のs偏光の半値波長を設定し、そのときのp偏光の透過率が80%になる波長の幅は128nmになる。
【0021】次に、実施例2の膜構成において入射角度を±10度変えて斜めから入射した場合の分光特性を図4に示す。実際の光学系においては全ての光線がプリズムに対して垂直に入射される訳ではないので、入射角度を変えても緑光路を使うことができる波長範囲が広い方が望ましい。図4の(a)が−10度から入射した場合、同図の(b)が+10度から入射した場合の分光特性である。透過率80%の赤側+10度と青側−10度の波長幅は176nmとなった。
【0022】(比較例1)蒸着法によって成膜して得られた分散値を用いて実施例1と同様にダイクロイックミラーの設計・製作を行った場合の分光特性を図2の(b)に示す。この図からs偏光とp偏光の透過率が50%になる波長の差を比較すると蒸着法では短波長側では60nm、長波長側では115nmとなる。同じ設計にも関わらずスパッタ法による膜構成の方が短波長側、長波長側ともに透過域の幅を広くとることができる。
【0023】(比較例2)実施例2と同様の手法で蒸着膜の分散式を用いてダイクロイックプリズムの設計・製作を行った場合の赤反射ダイクロ膜と青反射ダイクロ膜の膜構成を末尾の表2に示す。この場合の緑透過光の分光特性をs偏光およびp偏光について求めた結果を図3の(b)に示す。実施例2と同様にs偏光の半値波長を設定し、そのときのp偏光の透過率が80%になる波長の幅は118nmとなった。やはり比較例1の場合と同じく、同様の膜構成の設計にも関わらずスパッタ法による膜構成の方がp偏光の幅を広くとることができ、分光特性にすぐれたクロスダイクロ膜であることがわかる。
【0024】次に、比較例2の蒸着法によるダイクロイックミラーの入射角を変えた場合の分光特性を図5に示す。図5の(a)が−10度から入射した場合、同図の(b)が+10度から入射した場合の分光特性である。
【0025】透過率80%の赤側+10度と青側−10度の波長幅は106nmとなった。やはり比較1、2の場合と同じく、同様の膜構成の設計にも関わらずスパッタ法による膜構成の方がp偏光の幅を広くとることができた。またスパッタ法による膜構成の場合、長波長側におけるカット波長での透過率を低くとることができる利点がある。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【発明の効果】本発明は上述のとおり構成されているので、次に記載するような効果を奏する。
【0029】ダイクロイックミラーのs偏光とp偏光の透過波長域差の幅を広くして、光学特性にすぐれたダイクロイックプリズムを実現できる。
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成12年1月6日(2000.1.6)
【代理人】 【識別番号】100095991
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 善朗
【公開番号】 特開2001−194525(P2001−194525A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−560(P2000−560)