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【発明の名称】 紫外および真空紫外領域の反射防止基体
【発明者】 【氏名】高木 悟

【氏名】岡田 要

【氏名】菊川 信也

【要約】 【課題】紫外および真空紫外領域において、表面反射による損失やフレア・ゴーストの発生を抑制し、高い光透過率を有し、ペリクル用基板等に好適な反射防止基体の提供。

【解決手段】紫外および真空紫外領域で透明な基体の少なくとも一つの面に1層からなる反射防止膜を有し、紫外または真空紫外の反射防止中心波長をλ0 とし、波長λ0 における基体の屈折率ns 、波長λ0 における反射防止膜の屈折率n1 および反射防止膜の幾何学的膜厚d1 とすると、n1 <ns 、かつn1 1がほぼ(1/4+m/2)λ0 (mは0以上の整数)に等しいことを特徴とする反射防止基体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】波長155nm〜200nmの紫外および真空紫外領域で透明な基体の少なくとも一つの面に1層からなる反射防止膜を有する反射防止基体であって、反射防止を要する紫外または真空紫外の波長領域の中心波長をλ0 とし、波長λ0 における基体の屈折率ns 、波長λ0 における反射防止膜の屈折率n1 および反射防止膜の幾何学的膜厚d1 とすると、n1 <ns 、かつn1 1 がほぼ(1/4+m/2)λ0 (mは0以上の整数)に等しいことを特徴とする紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項2】波長155nm〜200nmの紫外および真空紫外領域で透明な基体の少なくとも一つの面に基体側から第2層および第1層の順で積層された2層からなる反射防止膜を有する反射防止基体であって、反射防止を要する紫外または真空紫外領域の中心波長をλ0 とし、波長λ0 における基体の屈折率ns 、波長λ0 における第2層の屈折率n2 、第2層の幾何学的膜厚d2 、波長λ0 における第1層の屈折率n1 および第1層の幾何学的膜厚d1 とすると、n1 <ns <n2 、かつn1 1 がほぼ(1/4+m/2)λ0 (mは0以上の整数)に等しく、0.05λ0 ≦n2 2 ≦0.50λ0 である紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項3】波長155nm〜200nmの紫外および真空紫外領域で透明な基体の少なくとも一つの面に基体側から第3層、第2層および第1層の順で積層された3層からなる反射防止膜を有する反射防止基体であって、反射防止を要する紫外または真空紫外領域の中心波長をλ0 とし、波長λ0 における基体の屈折率ns 、波長λ0 における第3層の屈折率n3 、第3層の幾何学的膜厚d3 、波長λ0 における第2層の屈折率n2 、第2層の幾何学的膜厚d2 、波長λ0 における第1層の屈折率n1 および第1層の幾何学的膜厚d1 とすると、下記の条件(1)〜(4)を満足する紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
(1)n1 ,n3 <ns かつn1 ,n3 <n2(2)0<n1 1 ≦0.47λ0(3)0.14λ0 ≦n3 3 ≦0.33λ0(4)0.16λ0 ≦n2 2 ≦0.38λ0 、0.64λ0 ≦n2 2 ≦0.86λ0 、または1.13λ0 ≦n2 2 ≦1.35λ0【請求項4】前記の反射防止膜の幾何学的総膜厚が150nm以下である請求項1〜3いずれかに記載の紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項5】前記の基体がフッ素が1ppm以上ドープされた合成石英ガラスである請求項1〜4のいずれかに記載の紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項6】前記の基体の厚さが100μm〜500μmである請求項5に記載の紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項7】前記の反射防止膜の基体と接する層がフッ化物からなる層である請求項5または6に記載の紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項8】前記の中心波長λ0 が150nm〜200nmのいずれかの波長である請求項1〜7のいずれかに記載の紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項9】前記の中心波長λ0 が157nmまたは193nmである請求項8に記載の紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項10】波長632.8nm付近での反射率が、3.5%以下である請求項1〜9のいずれかに記載の紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項11】前記中心波長λ0 と同じ波長の光に対する光透過率の最大値と最小値との差が1%以下である請求項1〜10のいずれかに記載の紫外および真空紫外領域の反射防止基体。
【請求項12】請求項1〜11のいずれかに記載の反射防止基体からなる半導体製造装置用光学部材。
【請求項13】請求項1〜11のいずれかに記載の反射防止基体からなる低反射ペリクル用基体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外および真空紫外領域の反射防止基体に関する。特に、半導体集積回路製造工程中の紫外、および真空紫外領域の露光工程に用いられる各種の低反射レンズ、低反射フォトマスク基板、および低反射ペリクル用基体(ペリクル膜)に好適な反射防止基体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体集積回路の集積度向上のために、半導体集積回路製造用露光装置の高解像度化が進められている。露光装置の解像度を向上する方法として、露光光源の短波長化が進められ、露光光源は、g線(波長:435nm)からi線(波長:365nm)に移行し、最近では、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)が使われ、さらに真空紫外領域のArFエキシマレーザ(波長:193nm)やF2 レーザ(波長:157nm)の実用化検討も始まっている。
【0003】これらの露光装置に使用される光学部材としては、レンズ、フォトマスク、フォトマスクの防塵カバーとして用いられるペリクルなどがある。レンズやフォトマスクの素材としては合成石英ガラス、ペリクル膜の素材としては、合成石英ガラスやフッ素系透明樹脂が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、合成石英ガラスやフッ素系透明樹脂といった素材は、露光波長が短波長になればなるほど、屈折率が大きくなり、そのままでは表面反射による光量損失やフレア・ゴーストの発生が顕著になる。また、紫外および真空紫外領域において、求められる高い光透過率、例えば、95%以上の光透過率が確保できない問題がある。
【0005】そこで本発明は、紫外および真空紫外領域において、表面反射による損失やフレア・ゴーストの発生を抑制することができる反射防止基体を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、高い光透過率を有する反射防止基体を提供することを第2の目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、波長155nm〜200nmの紫外および真空紫外領域で透明な基体の少なくとも一つの面に1層からなる反射防止膜を有する反射防止基体であって、反射防止を要する紫外または真空紫外の波長領域の中心波長をλ0 とし、波長λ0 における基体の屈折率ns 、波長λ0 における反射防止膜の屈折率n1 および反射防止膜の幾何学的膜厚d1 とすると、n1 <ns 、かつn1 1 がほぼ(1/4+m/2)λ0 (mは0以上の整数)に等しいことを特徴とする紫外および真空紫外領域の反射防止基体(以下、「第1の基体」という)を提供する。本発明において、n1 1 がほぼ(1/4+m/2)λ0 (mは0以上の整数)に等しい、とは、(0.187+m/2)λ0 ≦n1 1 ≦(0.327+m/2)λ0 であることをいう。
【0007】また、本発明は、波長155nm〜200nmの紫外および真空紫外領域で透明な基体の少なくとも一つの面に基体側から第2層および第1層の順で積層された2層からなる反射防止膜を有する反射防止基体であって、反射防止を要する紫外または真空紫外領域の中心波長をλ0 とし、波長λ0 における基体の屈折率ns 、波長λ0 における第2層の屈折率n2 、第2層の幾何学的膜厚d2 、波長λ0 における第1層の屈折率n1 および第1層の幾何学的膜厚d1 とすると、n1<ns <n2 、かつn1 1 がほぼ(1/4+m/2)λ0 (mは0以上の整数)に等しく、0.05λ0 ≦n2 2 ≦0.50λ0 である紫外および真空紫外領域の反射防止基体(以下、「第2の基体」という)を提供する。
【0008】さらに、本発明は、波長155nm〜200nmの紫外および真空紫外領域で透明な基体の少なくとも一つの面に基体側から第3層、第2層および第1層の順で積層された3層からなる反射防止膜を有する反射防止基体であって、反射防止を要する紫外または真空紫外領域の中心波長をλ0 とし、波長λ0 における基体の屈折率ns 、波長λ0 における第3層の屈折率n3 、第3層の幾何学的膜厚d3 、波長λ0 における第2層の屈折率n2 、第2層の幾何学的膜厚d2 、波長λ0 における第1層の屈折率n1 および第1層の幾何学的膜厚d1 とすると、下記の条件(1)〜(4)を満足する紫外および真空紫外領域の反射防止基体(以下、「第3の基体」という)を提供する。
(1)n1 ,n3 <ns かつn1 ,n3 <n2(2)0<n1 1 ≦0.47λ0(3)0.14λ0 ≦n3 3 ≦0.33λ0(4)0.16λ0 ≦n2 2 ≦0.38λ0 、0.64λ0 ≦n2 2 ≦0.86λ0 、または1.13λ0 ≦n2 2 ≦1.35λ0【0009】具体例を以下に挙げる。第1の基体における反射防止膜、すなわち、基体と接する膜としては、MgF2 、AlF2 、BaF2 、LiF、SrF2 、Na3 AlF6 、NaAlF2 およびCaF2 からなる群から選ばれる1種以上からなる膜が挙げられる。特に、MgF2 およびCaF2 からなる群から選ばれる1種以上からなる層であることが好ましい。
【0010】第2の基体における反射防止膜を構成する各層としては、MgF2 、AlF2、BaF2 、LiF、SrF2 、Na3 AlF6 、NaAlF2 、CaF2 、LaF2 、PbF2 、YF3 、SiO2 、Al2 3 およびHfO2 からなる群から選ばれる1種以上からなる膜が挙げられる。より具体的には、基体側の層(第2層)としては第1の基体の反射防止膜として挙げた前記の膜が挙げられ、その上の層(第1層)としては、LaF2 、PbF2 、YF3 、SiO2 、Al2 3 およびHfO2 から選ばれる1種以上からなる膜が挙げられる。第2の基体における反射防止膜は、各層がMgF2 、CaF2 、SiO2 、Al2 3 およびHfO2 から選ばれる1種以上からなる膜であることが好ましい。
【0011】第3の基体における反射防止膜を構成する各層としては、MgF2 、AlF2、BaF2 、LiF、SrF2 、Na3 AlF6 、NaAlF2 、CaF2 、LaF2 、PbF2 、YF3 、SiO2 、Al2 3 およびHfO2 からなる群から選ばれる1種以上からなる膜が挙げられる。より具体的には、基体側の層(第3層)およびその上の層(第2層)としては第2の基体の反射防止膜として挙げた前記の膜が挙げられ、最外層(第1層)としては、MgF2 、AlF2 、BaF2 、LiF、SrF2 、Na3 AlF6 、NaAlF2 、CaF2 およびSiO2 から選ばれる1種以上からなる膜が挙げられる。第3の基体における反射防止膜は、各層がMgF2 、CaF2 、SiO2 、Al2 3 およびHfO2 から選ばれる1種以上からなる膜であることが好ましい。波長150〜200nmでの光吸収を抑える観点からは、反射防止層を構成する材料が、MgF2 、CaF2 、Na3 AlF6 、YF3 、PbF2 およびSiO2 から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0012】本発明において、反射防止を要する紫外または真空紫外領域の中心波長(以下、「反射防止中心波長」という)λ0 とは、反射防止基体が用いられる光学部材を透過する紫外および真空紫外領域の露光光線の波長をいい、使用する露光光源に応じて異なる。反射防止中心波長λ0 は、150nm〜250nmのいずれかの波長であり、特に、150nm〜200nmのいずれかの波長であることが好ましい。λ0 としては、例えば157nmまたは193nmが挙げられる。波長193nmをλ0 とする反射防止基体は、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)に対する反射防止が最も有効に機能する。また、波長157nmをλ0 とする反射防止基体は、F2 レーザ(波長:157nm)に対する反射防止が最も有効に機能する。
【0013】本発明の反射防止基体を半導体製造装置用光学部材として用いた場合に、フォトリソグラフィ工程において良好な転写パターンが得られることから、本発明の反射防止基体の反射防止中心波長λ0 における光透過率は90%以上であることが好ましい。光透過率は、特に95%以上、さらには96%以上、またさらには98%以上であることが好ましい。
【0014】本発明の反射防止基体は、波長155nm〜200nm、特に、波長155nm〜250nmの紫外および真空紫外領域で透明な合成石英ガラスまたはフッ素系透明樹脂を基体として用いることが好ましい。本発明において、透明とは、合成石英ガラスでは、波長155nm〜200nmの紫外および真空紫外領域における内部透過率が50%以上、特に70%以上、さらには80%以上、またさらには95%以上であることをいう。また、フッ素系透明樹脂では、例えば、主鎖に環構造を有するものについては150〜200nm(特に150〜250nm)の紫外および真空紫外領域における内部透過率が80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることをいう。
【0015】本発明においては、レーザ耐性の観点から、基体がフッ素が1ppm以上(特に10ppm以上、さらには100ppm以上)ドープされた合成石英ガラスであることが好ましい。
【0016】さらに、フッ素が1ppm以上ドープされた合成石英ガラスを基体として用いた場合、基体と接する層としてフッ化物からなる層を用いると、基体との密着力が高まり、基体自身のレーザ耐性とあいまって、レーザ耐性が顕著な反射防止基体が得られる。
【0017】第1〜3の基体において、反射防止膜は、基体の少なくとも一つの面に形成され、基体の表裏両面、または片面のみに形成される。第1〜3の基体において、反射防止膜が基体の両面に形成される場合、表裏2面に形成される膜は、異なる成分および幾何学的膜厚からなるものでもよい。
【0018】第1〜3の基体において、基体と接する層(すなわち、第1の基体における反射防止膜、第2の基体における第2層、第3の基体における第3層)、ならびに第2または3の基体における最外層(すなわち、第1層)は、耐久性の観点から、CaF2 および/またはMgF2 からなる層が好ましい。さらに屈折率が小さく、より優れた反射防止性能が得られるという点からMgF2 からなる層が好ましい。
【0019】第3の基体において、反射防止膜の第2層は、紫外および真空紫外領域において、吸収係数が小さい点で、SiO2 および/またはCaF2 からなる層が好ましい。特に、耐擦傷性に優れる反射防止膜が得られる点で、SiO2 が好ましい。SiO2 は、Al、B、P等を本発明の作用効果を損なわない程度少量含んでいてもよい。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は、第1の基体の一態様を示し、基板1の表裏両面に、1層からなる反射防止膜2aおよび2bを有するものである 反射防止中心波長をλ0 とし、基板1の波長λ0 における屈折率をns とし、反射防止膜2a,2bの波長λ0 における屈折率をそれぞれn1a,n1bおよび幾何学的膜厚をそれぞれd1a,d1bとしたとき、n1a,n1b<ns 、かつn1a1aおよびn1b1bがそれぞれほぼ(1/4+m/2)λ0 (mは0以上の整数)に等しい場合に、波長λ0 の近傍で反射率(反射防止中心波長λ0 での片面反射率)が3%以下、好ましくは2%以下の紫外および真空紫外領域の反射防止基体を得ることができる。
【0021】図2は、第2の基体の一態様を示し、基板1の表裏両面に、基板側から順に第2層3a,3b、および第1層4a,4bの2層からなる反射防止膜3および4を有するものである。反射防止中心波長をλ0 とし、基板1の波長λ0 における屈折率をns 、第2層3a,3bの波長λ0 における屈折率をそれぞれn2a,n2bおよび幾何学的膜厚をそれぞれd2a,d2bとし、第1層4a,4bの波長λ0における屈折率をそれぞれn1a,n1bおよび幾何学的膜厚とそれぞれd1a,d1bとしたとき、n1a<ns <n2a、n1b<ns <n2b、かつn1a1aおよびn1b1bがそれぞれほぼ(1/4+m/2)λ0 (mは0以上の整数)に等しく、さらに、0.05λ0 ≦n2a2a≦0.50λ0 、0.05λ0 ≦n2b2b≦0.50λ0 を満足することによって、波長λ0 の近傍で反射率(反射防止中心波長λ0 での片面反射率)が3%以下、好ましくは2%以下の紫外および真空紫外領域の反射防止基体を得ることができる。
【0022】図3は、第3の基体の一態様を示し、基板1の表裏両面に、基板側から順に第3層5a,5b、第2層6a,6b、および第1層7a,7bの3層からなる反射防止膜を有するものである。反射防止中心波長をλ0 とし、基板1の波長λ0における屈折率をns とし、第3層の波長λ0 における屈折率をそれぞれn3a,n3bおよび幾何学的膜厚をそれぞれd3a,d3bとし、第2層の波長λ0 における屈折率をそれぞれn2a,n2bおよび幾何学的膜厚をそれぞれd2a,d2bとし、第1層の波長λ0 における屈折率をそれぞれn1a,n1bおよび幾何学的膜厚をd1a,d1bとしたとき、下記の条件(1)〜(4)を満足し、かつ、n3a、d3a、n2a、d2a、n1a、d1aをそれぞれn3b、d3b、n2b、d2b、n1b、d1bとしても下記の条件(1)〜(4)を満足する場合に、波長λ0 の近傍で反射率(反射防止中心波長λ0 での片面反射率)が3%以下、好ましくは2%以下の紫外および真空紫外領域の反射防止基体を得ることができる。
(1)n1a,n3a<ns かつn1a,n3a<n2a(2)0<n1a1a≦0.47λ0(3)0.14λ0 ≦n3a3a≦0.33λ0(4)0.16λ0 ≦n2a2a≦0.38λ0 、0.64λ0 ≦n2a2a≦0.86λ0 、または1.13λ0 ≦n2a2a≦1.35λ0【0023】本発明においては、反射防止膜の幾何学的総膜厚が150nm以下であることが好ましい。基体の両面に反射防止膜を形成する場合は、各反射防止膜の幾何学的総膜厚がそれぞれ150nm以下であることが好ましい。150nm以下にすることで、各層の膜厚が必然的に抑えられるため、層内への不純物混入が低減され、透過率向上に寄与し得る。また、150nm以下にすることで、各層の膜厚が必然的に抑えられるため、(蒸着等の)成膜時において各層の表面粗さを抑えることができ、結果として反射防止能が向上するとともに、反射防止膜の平滑性(後述)にも寄与し得る。また、150nm以下にすることで、反射防止膜表面に生じる張力はそれほど高くなく、複屈折(後述)を抑えられる。
【0024】さらに、本発明の反射防止基体において、反射防止膜の層構成、各層の屈折率、および各層の幾何学的膜厚を適宜選択して、波長632.8nm付近での反射率を3.5%以下とすると、He−Neレーザーを使用した露光装置のアライメントなどが容易に行えるため、有利である。
【0025】本発明においては、反射防止中心波長λ0 と同じ波長の光に対する光透過率の最大値と最小値との差が1%以下である反射防止基体であることが好ましい。光透過率の最大値と最小値との差が1%超では、反射防止基体を低反射ペリクル用基体として用いた場合、屈折により光路が変わり、ウエハ上に転写されるパターンに位置ずれが生じるおそれがある。光透過率の最大値と最小値との差は特に0.5%以下であることが好ましい。またフォトリソグラフィ工程において、良好な転写パターンを得るためには、ペリクル膜の光透過率を90%以上とし、かつペリクル膜全体における光透過率のばらつきを1%以内に抑えることが好ましい。ここで、「光透過率のばらつき」とは、光透過率の最大値から光透過率の最小値を引いた差をいう。
【0026】本発明の反射防止基体は、半導体製造装置用光学部材、すなわち、紫外および真空紫外領域の露光工程に用いられる各種の低反射レンズ、低反射フォトマスク基板、および低反射ペリクル用基板等に好適である。特に、低反射ペリクル用基板(従来、樹脂フィルムが多用されていたことから一般に「ペリクル膜」と呼ばれる)においては、厚みが1μm〜2000μmであることが好ましい。厚みが1μm未満では、取り扱いが困難となり、2000μm超では、基板の光吸収が顕著になる。特に、光学的な均一性の観点から、基体の厚さは100μm〜500μmであることが特に好ましい。
【0027】本発明の反射防止基体の製造は、基体の表裏両面または片面に、電子ビーム蒸着装置、イオンプレーティング装置、スパッタなどの成膜装置を用いて、前記構成の反射防止膜を積層することによって行うことができる。例えば、電子ビーム蒸着装置を用いる場合には、真空容器内に基体とMgF2 やSiO2 などの蒸着材料をセットした後、真空容器内を1×10-3Pa以下に排気して、光学式や水晶振動式の成膜速度モニターで膜厚をモニターしながら、前記構成の反射防止膜を順次積層する。この際、フッ化物層を蒸着する場合には、反応ガスの導入などは特に必要ではないが、酸化物層を蒸着する場合には、酸化を促進するために酸素などの酸化性ガスを0.1Pa程度の分圧で導入すると望ましい。また、基体を300〜400℃程度に加熱して成膜を行うと、反射防止膜の耐久性や光学特性の向上の観点から好ましい。基体の表裏両面に反射防止膜を形成する場合には、基体を裏返すことによって片面ずつ成膜することができる。
【0028】
【実施例】以下、具体例によって、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0029】(実施例1〜27および比較例)
(基板の準備)公知のスート法により、SiCl4 を酸水素火炎中で加水分解させ、形成されたSiO2 微粒子を基材上に堆積させて直径400mm、長さ600mmの多孔質石英ガラス体を作製した。次いで、得られた多孔質石英ガラス体を圧力容器にセットし圧力を133Pa(1Torr)程度までに減圧し、次いで不活性ガス(例えばHe等)を導入し圧力を常圧とする。再度圧力を133Pa程度までに減圧し、次いで不活性ガス(例えばHe等)希釈したSiF4 ガスを導入する。常圧付近になったところで、前記の不活性ガスで希釈したSiF4 ガスの導入を停止し、所定時間放置することで、多孔質石英ガラス体にフッ素をドープした。
【0030】そして、フッ素がドープされた多孔質石英ガラス体を、雰囲気制御可能な電気炉内で熱処理(150Pa以下の減圧下で昇温し、1000〜1300℃にて所定時間保持し、続いて1450℃まで昇温し、この温度にて10時間保持)し、透明石英ガラス体(直径200mm、長さ200mm)を得た。これを研削研磨して、フッ素が100ppmドープされた合成石英ガラス基板(直径200mm、厚み300μm、波長155nm〜250nmの波長領域における内部透過率は70%以上、波長157nmにおける内部透過率は90%、波長193nmおよび248nmにおける内部透過率は99%以上)を得た。
【0031】(反射防止膜の成膜)蒸着装置(蒸着源を、電子ビーム方式または抵抗加熱方式により加熱できる蒸着装置)を用いて、前記のフッ素ドープ合成石英ガラス基板の表裏両面に、表1および2に示す構成の反射防止膜を形成して、それぞれ図1、2または3に示す構造の反射防止基体を製造した。
【0032】なお、各層の成膜方法は以下のとおりである。蒸着装置の真空容器内に、フッ素ドープ合成石英ガラス基板と3種類の蒸着材料(MgF2 、SiO2 およびAl2 3 )とをセットした後、真空容器内を1×10-3Pa以下に排気した。次いで、光学式の成膜速度モニターで膜厚をモニターしながら、所望の蒸着材料を加熱(MgF2 の場合は電子ビーム方式により加熱、SiO2 、Al2 3 の場合は抵抗加熱方式により加熱)して所望の層を基板上に蒸着し、多層の場合はこれを繰り返すことで反射防止膜を基板上に形成した。
【0033】ただし、酸化物層を蒸着する場合には、酸化を促進するために酸化性ガス(本例では酸素ガス)を0.1Pa程度の分圧で導入した。また、基板を300℃程度に加熱して成膜を行った。片面蒸着後、基板を裏返して同様に蒸着することで基板の表裏両面に反射防止膜を形成した。
【0034】(評価)反射防止中心波長λ0 での透過率の測定実施例1〜27で得られた反射防止基体について、反射防止中心波長λ0 での透過率を測定した。150〜190nmの範囲においては、真空紫外分光光度計(ActonReserch社製、VTM−502)を用いて透過率を測定した。また、190〜700nmの範囲についての透過率の測定は、分光光度計(Varian社製、Cary500)を用いて行った。
【0035】反射防止中心波長λ0 での反射率の測定実施例1〜27で得られた反射防止基体について、片面の反射防止膜の分光反射性能を下記の方法にしたがって測定し、その結果から反射防止中心波長λ0 での反射率(片面反射率)を求めた。分光反射性能は、基板の裏面をサンドブラストで粗面化し、裏面での反射光を散乱させ表面での反射のみを測定できるようにした。150〜190nmの範囲においては、真空紫外分光光度計(ActonReserch社製、VTM−502)を用いて測定した。また、190〜700nmの範囲については、分光光度計(Varian社製、Cary500)を用いて測定した。比較例(反射防止膜を有しない合成石英ガラス基板)についても反射防止中心波長λ0 での反射率を求めた。
【0036】膜厚の測定実施例19については、反射防止膜(片側)の幾何学的総膜厚をDEKTAKを用いて測定した。
【0037】複屈折の測定実施例19については、HINDS社製のEXICOR350ATを用いて複屈折を測定した。本発明の反射防止基体を半導体製造装置用光学部材、特に低反射ペリクル基体として用いる場合は、フォトリソグラフィ工程への適合性の観点から、複屈折は2nm以下(特に1.5nm以下)であることが望まれる。
【0038】表面粗さRa(平滑性)の測定表面粗さRaは原子間力電子顕微鏡(セイコー社製SPI3700)を用いて測定した。Raが小さければ、光の散乱が起こりにくく、露光に際して迷光が生じず、露光パターンのずれが生じにくい。また、本発明の反射防止基体を低反射ペリクル基体として用いた場合、Raが小さければ異物をエアーブローにて落とし易い。上記観点から、Raは1nm以下であることが好ましい。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】実施例1、3および5はn1 1 =0.25λ0 の例を、ならびに実施例2、4および6はn1 1 =(0.25+1/2)λ0 の例を示す。
【0042】実施例7〜9、11〜13、および15〜17は、n1 1 がほぼ0.25λ0 で、かつ0.055λ0 ≦n2 2 ≦0.45λ0 の例を示し、実施例10、14および18は、n1 1 =(0.25+1/2)λ0 で、かつ0.055λ0 ≦n2 2 ≦0.45λ0 の例を示す。
【0043】実施例19、22および25は、n1 1 とn3 3 が共にほぼ0.25λ0で、かつ0.16λ0 ≦n2 2 ≦0.38λ0 の例を示す。実施例20、23および26は、n1 1 とn3 3 が共にほぼ0.25λ0 で、かつ0.64λ0 ≦n2 2 ≦0.86λ0 の例を示す。
【0044】また、実施例21、24および27は、1.13λ0 ≦n2 2 ≦1.35λ0 の例を示す。
【0045】また、実施例19の反射防止膜(片側)の幾何学的総膜厚は76nmであり、複屈折は0.2nmであり、Raは0.6nmであった。
【0046】(実施例28)実施例19で得られた反射防止基体についてレーザ耐性を確認した。レーザ照射試験は、F2 レーザ、1mJ/cm2 /pulse、300Hz、照射エネルギ合計10000J/cm2 の条件で行った。結果、レーザ照射試験後も透過率は低下せず、反射防止膜は剥がれた箇所はなく、損傷も見うけられなかった。
【0047】(実施例29)実施例19で得られた反射防止基体をCO2 レーザを用いて、低反射ペリクル用基体(120mm×145mm×300μm厚)に加工した。得られた低反射ペリクル用基体をペリクルフレームに接着し低反射ペリクルを作成した。低反射ペリクルの表面をエアーブローし、異物の有無をPI−1000(QCOPTICS社製)により確認したところ異物が検出されなかった。
【0048】また、XYステージ上に低反射ペリクルを載置し、移動可能として、5mm間隔の格子点について、前記と同様にして反射防止中心波長λ0 (157nm)での透過率を測定した。結果、透過率の最大値と最小値との差は0.3%であった。低反射ペリクルをラインアンドスペース(0.15μm幅)用のフォトマスク上にペリクルマウンタを用いて装着後、フォトリソグラフィを行った結果、良好なパターンが得られた。
【0049】
【発明の効果】本発明の反射防止基体は、紫外および真空紫外領域において優れた反射防止性能を有し、表面反射による光量損失やフレア・ゴーストの発生を抑制することができるため、高透過率を示す。そのため、半導体集積回路の製造における波長150nm〜200nmの紫外、および真空紫外光を用いる露光工程に用いられる各種レンズ、フォトマスク基板、およびペリクル用基板(ペリクル膜)などに好適に用いられる。また、膜構成、各層の屈折率、各層の光学的膜厚を適宜選択することによって、波長632.8nm付近での反射率も、3.5%以下とすることができ、He−Neレーザーを使用した露光装置のアライメントなどが容易に行えるという利点もある。
【出願人】 【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
【出願日】 平成12年11月1日(2000.11.1)
【代理人】 【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔 (外1名)
【公開番号】 特開2001−194506(P2001−194506A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−334220(P2000−334220)