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【発明の名称】 汎用位置決めシステムで用いられる測定値フィルタリング方法および装置
【発明者】 【氏名】ヤリ シルエリネ

【要約】 【課題】セルラー基地局からの情報、少なくとも時間の一部分の使用に基づいて、物体の運動状態の1つまたは別の形態の一連の推定値、たとえば、位置または速度または双方の推定値を提供する汎用位置決めシステムで用いられる測定値フィルタリング方法および装置を提供する。

【解決手段】a)物体の運動状態の初期推定値と状態共分散の初期値に反応し、またさらに、各々が異なった時刻に対応する前記状態の一連の測定値に反応して、一連の状態推定値を統計的に決定するフィルタと、b)セルラー基地局によって提供された情報に反応して前記状態の測定値を決定し、それに基づいて前記一連の状態測定値を提供する測定エンジンとを備えた汎用位置決めシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 a)物体の運動状態の初期推定値と状態共分散の初期値に反応し、またさらに、各々が異なった時刻に対応する前記状態の一連の測定値に反応して、一連の状態推定値を統計的に決定するフィルタと、b)セルラー基地局によって提供された情報に反応して前記状態の測定値を決定し、それに基づいて前記一連の状態測定値を提供する測定エンジンとを備えた汎用位置決めシステム。
【請求項2】 a)すべて同じ時刻における複数の状態測定値に対する関連確率を決定する手段であり、前記各関連確率が前記時刻における特定の状態測定値に対応し、また、前記複数の測定値のいずれもが正確でない確率に対する値を提供する関連確率を決定する手段でもある前記手段と、b)前記関連確率を加重として用いて各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成する手段と、c)前記個別の関連確率に基づく前記更新状態の共分散、前記測定値のいずれもが正確でない確率に対する値を提供する前記関連確率、および合成された測定値予測偏差を決定する手段とをさらに備えた請求項1記載の汎用位置決めシステム。
【請求項3】 m(k)個の状態測定値の内j番目の測定値に対するk番目の時刻における前記関連確率を決定する前記手段がβj(k)で表され、また、j=1...m(k)に対して、【数1】

であり、ここで、PGはゲート確率、N{ }は正規分布、υj(k)はj番目の測定値に対する測定値予測偏差、S(k)は時刻kにおける測定値予測偏差共分散であり、【数2】

で与えられ、ここでH(k)は実際の状態情報を測定された状態情報に関連付け、P(k|k−1)は事前推定誤差共分散、R(k)は測定誤差共分散であり、ここで、【数3】

であり、ここで、V(k)は有効化領域の体積、PDは検出確率であり、またさらに、前記複数の測定値のいずれもが正確でない確率に対する値を提供する関連確率を決定する手段がβ0(k)で表され、【数4】

で与えられる請求項2記載の汎用位置決めシステム。
【請求項4】 前記フィルタが、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンが提供した測定値に反応する請求項3記載の汎用位置決めシステム。
【請求項5】 出力ディスプレイをさらに備え、前記測定エンジンと前記出力ディスプレイがともに、前記状態情報を測定する対象である前記物体と同位置に配置され、さらに、前記フィルタと、関連確率を決定する前記手段と、各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成する前記手段と、前記更新済み状態の共分散を決定する前記手段とがすべて非ローカルな施設に収容され、前記施設が、前記状態情報を測定する対象である前記物体から離間して遠隔にあり、前記非ローカル施設と前記測定エンジンと前記出力ディスプレイとが無線通信する請求項2記載の汎用位置決めシステム。
【請求項6】 前記フィルタが有効化領域の有限のゲート幅γに反応し、前記フィルタが前記有効化領域から外れた測定値を拒絶する請求項2記載の汎用位置決めシステム。
【請求項7】 前記有効化領域が、前記ゲート幅γのある所定の値に対する、【数5】

によって定められ、ここで、【外1】

はつぎの測定値の予測値であり、z(k+1)は前記つぎの測定値である請求項6記載の汎用位置決めシステム。
【請求項8】 前記フィルタが、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンが提供した測定値に反応する請求項7記載の汎用位置決めシステム。
【請求項9】 前記フィルタが、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンが提供した測定値に反応する請求項1記載の汎用位置決めシステム。
【請求項10】 出力ディスプレイをさらに備え、前記測定エンジンと前記出力ディスプレイがともに、前記状態情報を測定する対象である前記物体と同位置に配置され、さらに、前記フィルタが非ローカルな施設に収容され、前記施設が、前記状態情報を測定する対象である前記物体から離間して遠隔にあり、前記非ローカル施設と前記測定エンジンと前記出力ディスプレイとが無線通信する請求項1記載の汎用位置決めシステム。
【請求項11】 前記フィルタが拡張カルマンフィルタである請求項1記載の汎用位置決めシステム。
【請求項12】 a)運動状態の初期推定値と状態共分散の初期値に反応し、またさらに、各々が異なった時刻に対応する前記状態の一連の測定値に反応して、一連の状態推定値を統計的に決定するフィルタと、b)位置決め衛星が与える情報に反応して前記状態の測定値を決定し、これに基づいて前記状態の前記一連の測定値を提供する測定エンジンと、c)すべて同じ時刻における複数の状態測定値に対する関連確率を決定する手段であり、前記各関連確率が前記時刻における特定の状態測定値に対応し、また、前記複数の測定値のいずれもが正確でない確率に対する値を提供する関連確率を決定する手段でもある前記手段と、d)前記関連確率を加重として用いて各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成する手段と、e)前記個別の関連確率に基づく前記更新状態の共分散、前記測定値のいずれもが正確でない確率に対する値を提供する前記関連確率、および合成された測定値予測偏差を決定する手段とを備える汎用位置決めシステム。
【請求項13】 出力ディスプレイをさらに備え、前記測定エンジンと前記出力ディスプレイがともに、前記状態情報を測定する対象である前記物体と同位置に配置され、さらに、前記フィルタと、関連確率を決定する前記手段と、各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成する前記手段と、前記更新済み状態の共分散を決定する前記手段とがすべて非ローカルな施設に収容され、前記施設が、前記状態情報を測定する対象である前記物体から離間して遠隔にあり、前記非ローカル施設と前記測定エンジンと前記出力ディスプレイとが無線通信する請求項12記載の汎用位置決めシステム。
【請求項14】 前記フィルタが拡張カルマンフィルタである請求項12記載の汎用位置決めシステム。
【請求項15】 a)物体の運動を支配する非線形確率方程式の使用に基づいてフィルタリングを実行するステップであり、前記フィルタリングが、前記物体の運動状態の初期推定値と状態共分散の初期値とに反応し、さらに、各々が異なる時刻に対応する、状態の一連の測定値に反応して、一連の状態推定値を統計的に決定するフィルタリングステップと、b)前記状態の測定値を決定する基となるセルラー基地局が提供する情報に反応して、前記一連の前記状態の測定値を提供する測定ステップとを含む方法。
【請求項16】 a)すべて同時刻における複数の状態測定値に対する関連確率を決定するステップであり、各関連確率が前記時刻における特定の状態測定値に対応し、また、前記複数の測定値のいずれもが正確でない前記確率に対する値を提供する関連確率を決定する手段と、b)前記関連確率を加重として用いて、各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成するステップと、c)前記関連確率が、前記測定値のいずれもが正確でない確率に対する値となる前記個別の関連確率と、前記合成された測定値予測偏差とに基づいて更新済み状態の前記共分散を決定するステップとをさらに含む請求項15記載の方法。
【請求項17】 m(k)個の状態測定値の内j番目の測定値に対するk番目の時刻における前記関連確率がβj(k)によって表され、また、j=1...m(k)に対して、【数6】

であり、ここで、PGはゲート確率、N{ }は正規分布、υj(k)はj番目の測定値に対する測定値予測偏差、S(k)は時刻kにおける測定値予測偏差共分散であり、【数7】

で与えられ、ここでH(k)は実際の状態情報を測定された状態情報に関連付け、P(k|k−1)は事前推定誤差共分散、R(k)は測定誤差共分散であり、ここで、【数8】

であり、ここで、V(k)は有効化領域の体積、PDは検出確率であり、またさらに、前記複数の測定値のいずれもが正確でない確率に対する値を提供する前記関連確率がβ0(k)で表され、【数9】

で与えられる請求項16記載の方法。
【請求項18】 前記フィルタリングが、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンから提供された測定値に反応する請求項17記載の方法。
【請求項19】 前記フィルタリングが有効化領域の有限のゲート幅γに反応し、前記フィルタが前記有効化領域から外れた測定値を拒絶する請求項16記載の方法。
【請求項20】 前記有効化領域が、前記ゲート幅γにある所定の値に対する、【数10】

によって定められ、ここで、【外2】

がつぎの測定値の予測値であり、z(k+1)が前記つぎの測定値である請求項19記載の方法。
【請求項21】 前記フィルタリングが、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンから提供された測定値に反応する請求項20記載の方法。
【請求項22】 前記フィルタリングが、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンから提供された測定値に反応する請求項15記載の方法。
【請求項23】 前記フィルタリングが拡張カルマンフィルタによって実行される請求項15記載の方法。
【請求項24】 a)物体の運動を支配する非線形確率方程式の使用に基づいてフィルタリングを実行するステップであり、前記フィルタリングが、運動状態の初期推定値と状態共分散の初期値とに反応し、さらに、各々が異なる時刻に対応する、状態の一連の測定値に反応して、一連の状態推定値を統計的に決定するステップと、b)位置決め衛星が提供する情報に反応して前記状態の測定値を決定し、これに基づいて前記一連の前記状態の測定値を提供するステップと、c)すべて同時刻における複数の状態測定値に対する関連確率を決定するステップであり、各関連確率が前記時刻における特定の状態測定値に対応し、また、前記複数の測定値のいずれもが正確でない前記確率に対する値を提供する関連確率を決定するステップと、d)前記関連確率を加重として用いて各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成するステップと、e)前記関連確率が、前記測定値のいずれもが正確でない前記確率に対する値となる、前記個別の関連確率と、前記合成された測定値予測偏差とに基づいて更新済み状態の前記共分散を決定するステップとを含む方法。
【請求項25】 前記フィルタリングが拡張カルマンフィルタによって実行される請求項24記載の方法。
【請求項26】 物体の運動状態の初期推定値と状態共分散の初期値に反応し、またさらに、各々が別々の時刻に対応している前記状態の一連の測定値に反応して、一連の状態測定値を統計的に決定する汎用位置決めシステムフィルタにおいて、前記セルラー基地局から情報を受信する測定エンジンによって提供された測定値に反応する汎用位置決めシステムのフィルタ。
【請求項27】 a)すべて同じ時刻における複数の状態測定値に対する関連確率を決定する手段であり、前記関連確率の各々が特定の状態測定値に対応し、また、前記複数の測定値のいずれもが正確でない前記確率に対する値となる関連確率を決定する手段でもある、前記手段と、b)前記関連確率を加重として用いて各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成する手段と、c)前記確率が前記測定値のいずれもが正確でない確率に対する値となる、前記個別の関連確率と、前記合成された測定値予測偏差と、に基づいて更新状態の共分散を決定する手段とをさらに備える請求項26記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項28】 m(k)個の状態測定値の内のj番目の測定値に対するk番目の時刻における関連確率を決定する前記手段がβj(k)によって表され、j=1,...,m(k)に対して、【数11】

であり、ここで、PGはゲート確率、N{ }は正規分布、υj(k)はj番目の測定値に対する測定値予測偏差、S(k)は時刻kにおける測定値予測偏差共分散であり、【数12】

で与えられ、ここで、H(k)は実際の状態情報を測定された状態情報に関連付け、P(k|k−1)は事前推定誤差共分散、R(k)は測定値誤差共分散であり、ここで、【数13】

であり、ここで、V(k)は有効化領域の体積、PDは検出確率であり、前記複数の測定値のいずれもが正確でない確率に対する値となる関連確率を決定する前記手段がβ0で表され、【数14】

で与えられる請求項27記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項29】 前記フィルタが、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンによって提供された測定値に反応する請求項28記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項30】 前記フィルタが有効化領域の有限のゲート幅γに反応し、前記フィルタが前記有効化領域から外れる測定値を拒絶する請求項27記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項31】 前記有効化領域が、前記ゲート幅γのある所定の値に対して、【数15】

で定められ、ここで、【外3】

はつぎの測定値の予測値、z(k+1)は前記つぎの測定値である請求項30記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項32】 前記フィルタが、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンから提供された測定値に反応する請求項31記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項33】 前記フィルタが、衛星とセルラー基地局双方からの情報受信する測定エンジンによって提供された測定値に反応する請求項26記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項34】 前記フィルタが拡張カルマンフィルタである請求項26記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項35】 前記フィルタが非線形フィルタである請求項1記載の汎用位置決めシステム。
【請求項36】 前記フィルタが線形フィルタである請求項1記載の汎用位置決めシステム。
【請求項37】 前記フィルタが非線形フィルタである請求項12記載の汎用位置決めシステム。
【請求項38】 前記フィルタが線形フィルタである請求項12記載の汎用位置決めシステム。
【請求項39】 前記フィルタリングが非線形フィルタによって実行される請求項15記載の方法。
【請求項40】 前記フィルタリングが線形フィルタによって実行される請求項15記載の方法。
【請求項41】 前記フィルタリングが非線形フィルタによって実行される請求項24記載の方法。
【請求項42】 前記フィルタリングが線形フィルタによって実行される請求項24記載の方法。
【請求項43】 前記フィルタが非線形フィルタである請求項26記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項44】 前記フィルタが線形フィルタである請求項26記載の汎用位置決めシステムフィルタ。
【請求項45】 前記汎用位置決めシステムが全地球位置決めシステムである請求項1記載の汎用位置決めシステム。
【請求項46】 前記汎用位置決めシステムが全地球位置決めシステムである請求項12記載の汎用位置決めシステム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は一般的には位置決めシステムに関する。より特定的には、本発明は、このような位置決めシステム、または物体の運動の位置の他にも1つまたは他の側面の推定値を、セルラー基地局と衛星から獲得した情報を用いて提供する拡張カルマンフィルタなどのフィルタの応用に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】衛星位置決めシステム(SATPS)受信機は一般に、その視線(LOS)の距離をいくつかの衛星または宇宙船に対して三角測量することによってその位置を決定する。GPS受信機は、たとえば、緯度、経度、高度および時間を伴う4次元ソリューションを、たった4つの衛星に対してLOS距離を用いて計算する。このソリューションの精度は距離の測定値の精度の直接的な関数である。
【0003】SATPS受信機は普及と応用という点で急速に成長している。たとえばGPS受信機は、航空、海洋および地上の応用分野では今や一般的である。自動車の分野では、車両の位置は一般的に、道路地図の電子ディスプレイ上に表示される。したがって、この分野では、ある瞬間からつぎの瞬間への車両の移動を正確に追跡する、包括的に「地上追跡」と呼ばれる連続的に更新される位置ソリューションをドライバに提供することが重要である。経験によれば、消費者は地上追跡の忠実度を、受信機を選択する際の最も重要な判断基準の1つであると考えている。したがって、GPS受信機の電子地図上に表示される地上追跡に際して、車両の実際の経路とは関係のない見せかけのジャンプ、階段の段差、突起、振動、揺さぶりなどを有しないことがきわめて重要である。
【0004】しかしながら、自動車用のSATPS受信機の地上追跡内容を決定するのに用いられる位置ソリューションに不連続性をもたらす多くの要因がある。位置ソリューションの不連続性の1つの発生源が「選択的利用可能性」(SA)であり、これが民事用GPS受信機の精度を約100メートルに制限してしまう。SAは、国家安全保障という目的のために米国政府が意図的に用いているものである。米国国防省(DOD)は、衛星の距離信号に意図的に誤差を注入することによってSAを実現している。
【0005】位置ソリューション不連続性のもう1つの一般的な発生源は多経路として知られている現象によるものであり、この場合、特定の衛星からの真のLOS信号は、多分同じ情報を提供する追加の信号とともにGPS受信機のアンテナに到達するが、この追加の信号は、建築物や断崖などの近くにある物体からの反射によるものである。この多経路現象は自動車用受信機の場合にはとくにやっかいであるが、その理由は、自動車用受信機は都市や高い建築物で囲まれたところでしばしば使用されるからである。この環境は渓谷に似ているために、時として「都会渓谷」と呼ばれる。発生源がなにであれ、多経路は、追加信号が非常に強くで非常に有害であるため極めてやっかいな問題である。
【0006】位置ソリューション不連続性のさらに別の発生源は、SATPS受信機によって用いられる衛星の星座が変化し得ることである。すなわち、SATPS受信機は瞬間毎に見る衛星の星座が異なることがある。GPS受信機がたとえば都会渓谷という環境下にある場合、受信機が様々な建築物を過ぎて移動するに連れて個々の衛星が遮断されたりつぎに遮断から解かれたりすることがある。この不連続性がこの状況下で発生する理由は、位置ソリューションにおける誤差は用いられる衛星の星座に基づいているからである。(他の条件が等しいとすると、ほぼ同じ方向に位置している2つの衛星は、互いに非常に異なった方向にある2つの衛星の場合より誤差の大きい位置情報を提供する。)GPS受信機が提供する位置ソリューションの基盤となる星座が突然異なれば、それに連れて発生する異なった誤差のために位置がジャンプしたり不連続になったりしかねない。
【0007】位置決めシステムに提供される測定データの不確定性に対する回答がカルマンフィルタの使用にあることが技術上周知である。図1は、RFアンテナ11、測定エンジン12およびカルマンフィルタ14を含む従来のGPSタイプの位置決めシステム10の簡略化された流れ図であり、このシステムは時刻kにおける位置に対して位置推定値【外4】

【0008】を提供するものである。この測定エンジン12は複数の軌道上の衛星からRF信号をアンテナ11を介して受信して、測定された位置と速度、すなわち、この測定値に基づいて、カルマンフィルタによって提供される予測状態情報に対する測定された状態情報をカルマンフィルタ14に提供する。
【0009】測定エンジン12の構造は応用分野によって異なる。一般に、測定エンジン12は、RF信号を導入(pull in)するために必要なアナログ電子系(たとえば、前置増幅器、増幅器、周波数コンバータなど)を含むが、さらに特定の衛星に対応する特定のGPSコードを検出するコード相関器を含む。測定エンジン12は検出された衛星に対する視線(LOS)距離を、ローカルの搭載クロックと衛星コードが送信された時刻を示す衛星からのデータを用いて推定する。このようにして決定されたLOS距離は疑似距離と呼ばれるが、その理由は、これは単に、ローカルで検出された時間に基づいた、実際の距離の推定に過ぎないからである。図1の位置決めシステムでは、測定エンジン12はある時間にわたって獲得した疑似距離をプロセスの状態の測定値z(k)に、すなわち、その位置が決定されている移動物体の位置と速度に変換する。
【0010】プロセス(たとえば、車両の運動)の状態x(k)を推定する際に、(標準的な)カルマンフィルタは、このプロセスが次式のような線形確率差分方程式にしたがって時間の経過とともに推移するという仮定に基づいて推定する。
【0011】
【数16】

【0012】ここで、w(k)はプロセスノイズ、A(k)は駆動機能の不在下における時間ステップkにおける状態を時間ステップk+1における状態に関連付けるn×nマトリックス、u(k)は状態xに対する制御入力(駆動機能)、Bはこの制御入力を状態xに関連付けるn×lマトリックスである。標準的なカルマンフィルタはさらに、自身がプロセスの状態を推定する際に用いる測定値はプロセスの状態に線形に関連している、すなわち、測定値z(k)(すなわち、時刻kにおける測定された位置)は、次式による状態x(k)(すなわち、時刻kにおける実際の位置)に対応しているという仮定に基づいている。
【0013】
【数17】

【0014】ここで、s(k)は測定ノイズ、m×nマトリックスHは状態x(k)を測定値z(k)に関連付けている。前記の仮定の内のどちらかが当てはまらない場合、標準のカルマンフィルタは使用できない、または、少なくともほぼ線形にプロセスの状態に関連したプロセス測定データに関する(たとえば、衛星によって)提供された情報から最初に誘導しないと、また、少なくとも、1つの測定値からつぎの測定値に至るプロセスの推移における非線形性の効果が重要でなくなるほどに充分近接した時間間隔で測定しないと少なくとも使用できない。
【0015】位置決めシステムが衛星からの情報を位置測定のベースとして用いるような車両中の位置決めシステムの場合、プロセス(位置決めシステムを収容している車両の運動)の状態(位置であるが、一般的には速度でもある)と位置測定値間の依存関係は非線形である、すなわち、衛星は式(2)ではなく次式の疑似範囲を提供する。
【0016】
【数18】

【0017】ここで、xi(k)はたとえば車両の3次元位置のi番目の成分、【外5】

【0018】は衛星のそれと同じで、toは車両中の位置決めシステムのクロックと衛星のクロック間のクロックのオフセット、cは光線速度を示す。
【0019】一般に、標準のカルマンフィルタが依存している前記の2つの仮定のどちらかが違反された場合、いわゆる拡張カルマンフィルタが使用可能であることが技術上周知である。(時として、非線形測定値の場合には、いわゆる変換測定値カルマンフィルタ(CMKF)が拡張カルマンフィルタの替わりに使用される。)このようなフィルタにおいては、あるプロセスの推定状態の現行の平均と共分散に関して、また、このプロセスの状態を推定する際に用いられる測定値に対して線形化が実施される。この線形化によって、プロセスの状態を推定するに際してカルマンタイプのフィルタを使用できるが、この方式は、反復的または直接的のソリューションなど、ソリューションを現行の測定値(だけ)に依存する他の方式と比較して帰納的である(先行する時刻におけるソリューションは、現行の測定値とともに、つぎの時刻におけるソリューションに導く)。
【0020】拡張カルマンフィルタが技術上周知であるとはいえ、先行技術はこのようなフィルタや他のタイプのフィルタを、位置決めシステム中で、セルラー基地局が提供した、理想的には、セルラー基地局と衛星の双方が提供した情報に基づいて用い、これによって、いかなる時刻においても、セルラー基地局からだけの情報にまたはセルラー基地局と衛星双方からの情報がシステムの状態の1つの測定値として用いられることを教示していない。
【0021】さらに必要とされるのは、位置決めシステムにとって、いかなる時刻においても、このような複数の測定値を組み合わせて、位置決めシステムの信頼性をさらに向上させる方法である。セルラー基地局データは衛星データに影響と同じ誤差を持たないので、位置決めシステムは、双方の種類のデータ、それゆえ、同じ時刻における少なくとも2つの測定値、すなわち一方は衛星データに純粋に基づいたデータ、他方ではセルラーデータに純粋に基づいたデータを別々に、また同時に使用すれば、信頼性を向上させることができる。(セルラーデータにおけるノイズと不正確性の主要な発生源は、衛星のそれとは同一ではない、すなわち、セルラーシステムのおける誤差の原因は、大気、多経路および局所利用可能性ではなくて、信号経路上の障害物、距離測定量子化および干渉周波数である。)2つの異なったタイプの位置決め測定値の発生源を用いることは、元来、より信頼性の高い位置決めシステムを提供し得るとはいえ、いかなる時刻においても、特定の測定値または測定値の基盤となる特定の情報は1つまたは別の誤差発生源(必ずしも、正確な測定を「迷わす」だけを意図する局所的多様性ではない)によって大いに損傷を受けることがあることもまた真実である。したがって、ハイブリッド位置決めシステムの場合でも(測定値の発生源の種類が異なっているという意味においてハイブリッド)、ある測定値または一部の情報(たとえば、疑似距離値)を体系的に消去する、すなわち、測定値または一部の情報の誤差の統計的な尺度に基づいて消去することは依然として有利である。
【0022】
【課題を解決するための手段】したがって、本発明は、汎用位置決めシステム用のフィルタと、それに対応する汎用位置決めシステムと方法を提供するものである。これらの方法はすべて、セルラー基地局からの情報、少なくとも時間の一部分の使用に基づいて、物体の運動状態の1つまたは別の形態の一連の推定値、たとえば、位置または速度または双方の推定値を提供する。この汎用位置決めシステムは、物体の運動状態の初期推定値と状態共分散の初期値に反応し、またさらに、各々が異なった時刻に対応する前記状態の一連の測定値に反応して、一連の状態推定値を統計的に決定するフィルタと、前記状態の測定値を決定する際に基づくセルラー基地局によって提供された情報に反応して、前記一連の状態測定値を提供する測定エンジンと、を含んでいる。本発明の一部の態様では、フィルタは拡張カルマンフィルタなどの非線形フィルタであり、他の態様では線形フィルタである。
【0023】本発明のさらなる態様では、汎用位置決めシステムはまた、すべて同じ時刻における複数の状態測定値に対する関連確率を決定する手段であり、前記各関連確率が前記時刻における特定の状態測定値に対応し、また、前記複数の測定値のいずれもが正確でない確率に対する値を提供する関連確率を決定する手段でもある前記手段と、前記関連確率を加重として用いて各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成する手段と、前記個別の関連確率に基づく前記更新状態の共分散、前記測定値のいずれもが正確でない確率に対する値を提供する前記関連確率、および合成された測定値予測偏差を決定する手段とを含んでいる。
【0024】本発明の別の態様では、汎用位置決めシステムのフィルタは、衛星とセルラー基地局双方からの情報を受信する測定エンジンによって提供される測定値に反応する。
【0025】本発明のさらに別に態様では、汎用位置決めシステムはまた出力ディスプレイを含むが、この場合、測定エンジンと出力ディスプレイの双方が、状態測定値の測定対象である物体と同位置に置かれ、またさらに、フィルタと関連確率を決定する手段と各個別の測定値予測偏差を単一の測定値予測偏差に合成する手段と更新状態の共分散を決定する手段がすべて非ローカルな施設、すなわち状態情報を測定する対象から分離して遠隔している施設によって収容され、また、この非ローカル施設と測定エンジンと出力ディスプレイが無線通信している。
【0026】本発明のさらに別の態様では、汎用位置決めシステムフィルタは、有効化領域の有限なゲート幅γに反応し、また、この有効化領域から外れる測定値を拒絶する。
【0027】本発明のさらに別の態様では、汎用位置決めシステムはまた、出力ディスプレイを含むが、この場合、測定エンジンとこの出力ディスプレイの双方が状態情報の測定対象である物体と同じ位置おかれ、またさらに、フィルタが非ローカルな施設、すなわち、状態情報の測定対象である物体から分離して遠隔している施設によって収容されており、また、前記非ローカル施設と測定エンジンと出力ディスプレイが無線通信している。
【0028】1つの特定の応用例では、汎用位置決めシステムフィルタは拡張カルマンフィルタ(EKF)である。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明の前記のそして他の目的、特徴および利点は、添付図面に関連して与えられるつぎの詳細な説明を考慮すれば明らかであろう。
【0030】好ましい実施形態では以下に説明するように、本発明は位置決め(ナビゲーション)システムの1部としての拡張されたカルマンフィルタ(EKF)の使用を含む。しかしながら、本発明はそのようなシステムにおけるEKFまたは他のすべての非線型フィルタだけの使用に限定されることはなく、代りに位置測定システムにおける、または速度等の物体の運動の別のアスペクトを測定するシステム、したがってここでは(必ずしも位置を測定するとは限らないので)汎用位置決めシステムと呼ばれているシステムにおいてすべての他の種類のフィルタをも用いることができる。
【0031】標準的カルマンフィルタの背景および用いられる表記法再び図1を参照すると先行技術による位置決めシステム10では、カルマンフィルタ24はプロセスに関連する測定値に基づいて、運動する車両の位置および速度などのプロセスの状態x(k)を推定するためにしばしば用いられる。離散時間制御されたプロセスの(未知のそして完全に認識されることは決してない)状態x(k)は式(1)に支配されると仮定され、測定値z(k)は式(2)にしたがって状態x(k)に対応すると仮定される。測定値z(k)はアンテナ21によって受信された情報に基づいて、測定エンジン22によって与えられる。
【0032】カルマンフィルタは測定値z(k)と力学方程式(前記等式1)の知識とを用いて、多かれ少なかれ測定値z(k)を考慮に入れ、カルマン利得K(k)に基づいて以下の説明のように計算された事後推定値【外6】

【0033】を決定する。推定値【外7】

【0034】は、測定値z(k)の後にそれらの測定値を考慮にいれて求められるという点で事後と呼ばれる。
【0035】カルマンフィルタの使用に際しての主要な仮定は、プロセスの雑音と測定値の雑音は両方とも白色であり正規確率分布を有するということである。
【0036】
【数19】

【0037】ここでQ(k)はプロセス雑音の共分散(マトリックス)であり、R(k)は測定誤差の共分散(マトリックス)である。(ここで、N(a,b)は平均値aと共分散bをもつ正規分布である。)カルマンフィルタの実行に際して、フィルタについてのR(k)とQ(k)が時々測定される、またはフィルタを使用する前に1度だけ値が仮定される。R(k)とQ(k)に用いられる値の選択はフィルタの「同調」を設定するといわれ、別のカルマンフィルタを用いてオフラインで実行される場合もある。幾つかの応用分野においては、R(k)とQ(k)は一定とされる。
【0038】再び図1を参照すると、カルマンフィルタの動作は一般に2つの部分に分かれる。時間更新部分と測定値更新部分である。時間更新部分では、カルマンフィルタ(すなわち、事後推定された状態【外8】

【0039】)の出力が、仮定された力学方程式(1)の中で用いられて、つぎのプロセスの状態の事前推定値【外9】

【0040】が決定される。
【0041】
【数20】

【0042】ここで表記【外10】

【0043】は、得られた値が事後推定値【外11】

【0044】を仮定することに基づいていることを意識的に示すために用いられる。
【0045】時間更新部分はまたつぎの等式を用いていわゆる事前推定値誤差共分散を決定する。
【0046】
【数21】

【0047】ここで、事前推定値誤差共分散P(k|k−1)は事前推定値誤差【外12】

【0048】に基づいており、以下のように定義される。
【0049】
【数22】

【0050】ここで、E(a)はランダム変数aの期待値であり、P(k)は事後推定値誤差【外13】

【0051】に基づく対応する事後推定値誤差共分散である。
【0052】第2に、カルマンフィルタの動作の測定値更新部分では、カルマン利得K(k+1)がつぎの式を用いて計算される。
【0053】
【数23】

【0054】それからそれを用いて、つぎの式にしたがって事後状態推定値【外14】

【0055】が決定される。
【0056】
【数24】

【0057】ここで、υ(k+1)はいわゆる測定値予測偏差(または測定値残差:予測とのちがい)であり、つぎのように定義される。
【0058】
【数25】

【0059】推定値【外15】

【0060】はそれから、k+1に対応する時間におけるプロセスの状態についてのカルマンフィルタの推定値として出力ディスプレイ16に出力され、さらにカルマンフィルタの動作のつぎの第1の時間更新部分で用いられる。最後に、第1の動作の更新部分はさらに新たな事後推定値誤差共分散P(k+1)を要求し、それはつぎの式を用いて計算される。
【0061】
【数26】

【0062】カルマンフィルタの動作はもちろん【外16】

【0063】およびP(k+1|k)に対する初期推定値から始めなければならず、先行技術にはどのようにして初期値を選択するかについての示唆が含まれている。
【0064】セルラーの測定情報を用いる拡張されたカルマンフィルタつぎに図2を参照すると、本発明において位置決めシステム20は拡張されたカルマンフィルタ24(EKF)に基づき、セルラー基地局からまたは好ましくは衛星からも獲得された情報をある時刻における(単一の)測定値として用いることができる。標準的カルマンフィルタの場合と同様にそのような情報から、システムの状態(すなわち、位置決めシステムを収容する物体の位置場合により速度も)の時間更新および測定値更新が実行される。測定値z(k)は異なるアンテナ21aと21bによって受信された情報に基づいて、瞬間時刻Kにおいて異種の測定エンジン22によって与えられるが、それらのアンテナは一方が衛星等の情報発生源から情報を受信することを意図したものであり、他方はセルラー基地局等の別種の情報発生源から情報を受信することを意図したものであるという点で種類が異なっている。
【0065】本発明を用いる位置決めシステムの動作において、セルラー基地局からの情報は衛星からの情報よりも信頼性に欠ける場合がしばしばあるので、衛星からのデータだけを用いたほうが有利な場合がある。最良の形態では本発明による位置決めシステムは、セルラーデータ(または衛星データ)を無視することを自動的に選択する機能を持つとともに、セルラーデータ(または衛星データ)を使用しないように使用者が命令を出すこともできる。
【0066】したがって状態と時間の更新を実行する際に、測定値z(k)と先行する推定値【外17】

【0067】に基づいて最終的にシステムの状態の推定値【外18】

【0068】を提供する際に、EKFは線形確率差分方程式(1)と(2)を前提とせずに、代りにプロセスはつぎの非線型確率差分方程式によって支配されると仮定し、【0069】
【数27】

【0070】(ここで再び、u(k)は駆動機能であり、w(k)は平均値がゼロのプロセスノイズである)、またそれに対応して、測定値z(k)と状態x(k)は次式で表される非線型の関係を持つと仮定される。
【0071】
【数28】

【0072】(ここで、s(k)はやはりゼロ平均測定ノイズである)。
【0073】これらの仮定があり、また関数fおよびhが周知であれば、EKFの動作は式(12)と(13)を用いた状態と測定ベクトルの近似(測定値予測偏差を決定するのに用いられる測定ベクトルの近似)に基づくが、プロセスと測定ノイズすなわちwとsの両方に対してはゼロの値を用い、すなわち、【0074】
【数29】

【0075】また近似された状態ベクトルは事前推定(予測された)状態ベクトルである、すなわち、【0076】
【数30】

【0077】であると主張される。
【0078】非線形方程式(12)と(13)はそれから式(14)と(15)によって与えられるように、【外19】

【0079】に対して実質的にテイラー級数展開を実行することによって線形化される。この線形化のプロセスは、それぞれがマトリックスである4つのヤコビアンを用いて以下の要素を持つEKFの式(下記を参照)を形成する。
【0080】
【数31】

【0081】ここで、xとzはそれぞれ実際の状態と測定ベクトルであり、【外20】

【0082】は事前状態推定値であり、【外21】

【0083】は事後状態推定値であり、wとsは再びプロセスと測定値のノイズを表す。したがってヤコビアンマトリックスAのi−j番目の要素は、w(k)=0においておよび【外22】

【0084】において求められた、状態ベクトルx(k)のj番目の要素に関するベクトル関数fのi番目の要素の偏導関数である。(状態xは4個以上の空間座標をもつことができる、それはたとえば6個の要素、3つの空間位置と3つの速度を持つことができる。)
支配する方程式(12)と(13)の線形化に基づいて、また式(17)〜(20)によって定義されるヤコビアンを用いて、EKFは以下のように作動する。図2を参照すると、まず【外23】

【0085】に対して初期推定値が与えられ(すなわち、状態ベクトルの各要素に対する値が第1の時刻において予測される状態に与えられる)、また共分散P(k|k−1)に対しても初期推定値が与えられる(すなわち、第1の時刻において状態ベクトルの各要素の共分散に対して値が与えられる)。どのようにして初期値を選択するかについては、先行技術の中にいくつかの提案が含まれている。
【0086】つぎに測定値の更新が実行され、位置決めシステムによって状態ベクトルの出力の推定が行われる。これはいわゆるカルマンゲインK(k)を次式にしたがって計算することによってまず達成される。
【0087】
【数32】

【0088】それからこれを用いて事後状態推定値【外24】

【0089】を次式にしたがって決定する。
【0090】
【数33】

【0091】ここで、υ(k)は測定値予測偏差(または測定値残差:予測とのちがい)であり、EKFに対してのそれは、測定値予測偏差の定義を【外25】

【0092】に対する式(15)および事前推定値を主張する式(16)を用いて、次式を用いて計算される。
【0093】
【数34】

【0094】推定値【外26】

【0095】はそれからk+1に対応する時刻におけるプロセス状態のカルマンフィルタの推定値として出力ディスプレイ16に出力され、それからカルマンフィルタの動作のつぎの第1の時間更新部分においてまた用いられる。(マトリックスVはノイズが白色であると想定される場合は単位マトリックスである。)最後に標準的カルマンフィルタの動作の場合と同様に、第1の、動作の測定値更新部分はまた新たな事後推定値誤差共分散P(k)を要求し、それは再び(標準的カルマンフィルタの場合と同様に)次式を用いて計算される。
【0096】
【数35】

【0097】つぎに、時間更新部分において、カルマンフィルタの出力(すなわち、事後推定された状態【外27】

【0098】)は式(14)に用いられ、また事前推定値を主張する式(16)を用いて、プロセスのつぎの状態の事前推定値【外28】

【0099】を決定する。
【0100】
【数36】

【0101】時間更新部分はまた(標準的カルマンフィルタの場合と同様に)いわゆる事前推定値誤差共分散を次式を用いて決定する。
【0102】
【数37】

【0103】ここで、事前推定値誤差共分散P(k|k−1)は事前推定値誤差【外29】

【0104】に基づいており、それはつぎのように定義される。
【0105】
【数38】

【0106】ここで、E(a)は確率変数aの期待値であり、P(k)は事後推定値誤差【外30】

【0107】に基づく対応する事後推定値誤差共分散である。(マトリックスWはノイズが白色であると想定される場合は単位マトリックスになる。)
【0108】(確率的データの組合わせを用いる拡張カルマンフィルタ)セルラー基地局からの入力を用いる、またはセルラー基地局と衛星からの入力を用いる前記のEKFに基づく位置決めシステムは、各時刻における単一の測定値z(k)に基づいて進む。(単一の測定値z(k)は幾つかの発生源からの情報を用いるが、少なくともそのいくつかはセルラー基地局である。)各時刻におけるいくつかの測定値zi(k)を組合わせることによって位置決めシステムの信頼性をより向上させることができ、その測定値の少なくともいくつかはセルラー基地局によって提供される情報に基づいている。そのような位置決めシステムをここでは複数発生源位置決めシステムと呼ぶ。
【0109】ここで図3を参照すると、本発明の別のアスペクトにおいて、位置決めシステム30は確率的データの組合せ(PDA)を用いるように修正されたEKF34を用いることによって、各時刻における測定値の組み合せを用いることが可能になるが、少なくとも1つの測定値はセルラー基地局から受信した情報に少なくとも部分的に基づいている。本発明のこのアスペクトの好ましい実施形態では、m個の異なった測定値z1(k)、z2(k)、…、zm(k)は、異なるアンテナ21aと21bによって受信した情報に基づいて、各時刻kにおいて修正された異種の測定エンジン32によって与えられるが、それらのアンテナは、一方が衛星等の1つの情報発生源からの情報を受信することを意図したものあり、他方はセルラー基地局等の別種の情報発生源からの情報を受信することを意図したものであるという点で種類がことなっている。ここで複数発生源EKFと呼ぶものに基づいたこの複数発生源位置決めシステム内の修正された異種の測定エンジン32は、それが各時刻kにおいてm個の測定値を与えるということを別にすれば、一時に1つの測定値を与えるEKF24の異種の測定エンジン22と基本的に同じである。
【0110】本発明によると、本発明のEKFによって与えられるような物体の状態推定値【外31】

【0111】(すなわち物体の位置と速度)の確率密度関数は、(k−1)番目の時刻までのすべての先行する測定値の集合Z(k−1)に条件付けられている場合は、すなわち式(3)と(4)で表される仮定に対応して【0112】
【数39】

【0113】である場合は、正規分布すると想定される。またすべての測定値予測偏差(測定値残差)υj(k)は、すべての先行する測定値Z(k−1)に条件つけられている場合、すなわちつぎのようになる場合は正規分布すると想定される。
【0114】
【数40】

【0115】ここで、測定ノイズが白色と想定されるので平均値はゼロとされる。これらの前提の下に関連確率(すなわち、測定値に関連した)が、j=1、…、m(k)として次式によって決定される。
【0116】
【数41】

【0117】ここで、m(k)は測定値の数であり、ここで、【0118】
【数42】

【0119】ここで、υj(k)はj番目の測定値に対する測定値予測偏差であり、S(k)は時刻kにおける測定値予測偏差共分散、すなわちS(k)=H(k)P(k|k−1)HT(k)+R(k)であり、そこでは、【0120】
【数43】

【0121】ここで、V(k)は後に(式40)に説明される有効化領域の体積である、また特別の関連確率は、測定値のどれも正確でないという確率(または同じことであるが、少なくとも1つの測定値は正確であるという確率)に応じて次式で定義される。
【0122】
【数44】

【0123】式(8)で与えられるカルマンゲインK(k)はまた、測定値予測偏差共分散S(k)=H(k)P(k|k−1)HT(k)+R(k)を用いて、K(k)=P(k|k−1)HT(k)S-1(k)と表される。
【0124】式(31)において量PDはいわゆる検出の確率であり、事前に決定される、それは正確な測定値が得られる確率である。それは位置決めシステムの使用者によって事前に指定される。PDを求めるには多くの方法があり、それは統計的に、解析的に、または経験的に(試行錯誤的に)求めることができる。たとえば受信機の不調を含む妨害または装置の故障のために衛星または基地局のすべてを常に監視することができないというように、測定値は測定を妨げる条件に関連した何らかの誤差を常に有しているので、実際にはPDが1に等しくなることは決してない。
【0125】式(30)と(31)における量PGはいわゆるゲート確率である。それは有効化ゲートの幅に基づいて測定値予測偏差の正規分布を制限するために用いられる因子である。測定の事前有効化が行われないためにいかなる測定値もEKFに提供される場合は、PGは無限幅のゲートに対応する値1を持つ。予測された測定値から大きく離れすぎた測定値が排除されれば、PGは1より小さい値を持つ。PGにそのような値を用いることによって測定値の正規分布のエッジを取り除くことができる。1より小さいPGの値は、測定値の次元nz(すなわち測定自由度の数であり、レンジの測定だけの場合は1であり、結合レンジおよびドップラー測定に対しては2である)、および有効化ゲートの幅γ(テール確率の値としてγを取る)の関数としてのχ2テール確率表から見つけられる。
【0126】
【外32】

【0127】を表すためにgを用い(したがってgは標準偏差の数に等しい)れば、平均として受入れられる測定値を、測定値のすべての集合の3分の2だけに制限する値を持つように、gを事前に決定することができる。本発明では図2に示されるように、それは事前決定された値gであり、それからPGの値が導き出される。
【0128】有効化領域の体積V(k)は(【外33】

【0129】を用いて)つぎのように定義される。
【0130】
【数45】

【0131】であり、ここで、Γ(a)はΓ関数(したがってたとえば、nを整数としてΓ(n+1)=n!)である。cnzはまたnz次元の単位超球の体積と解釈できる。したがってたとえば、c1=2、c2=π、c3=4π/3、などである。式(34)はcnzに対する一般的な表現である。
【0132】式(29)と(32)によって決定された関連確率βi(k)を用いれば、つぎの式:【0133】
【数46】

【0134】によって結合した測定値予測偏差υ(k)が決定され、それを用いて、式9にしたがってすなわち標準的カルマンフィルタの場合と同様に、プロセスの状態が更新される。
【0135】プロセスの状態の更新は通常通り計算されるが、更新された状態に関連する共分散すなわち事後推定値誤差共分散P(k+1)は、標準的なカルマンフィルタにおけるのとは異なる方法で、すなわち式(11)によらないで計算される。代りにそれはつぎの式を用いて得られる。
【0136】
【数47】

【0137】ここで、PC(k)は正確な測定値であると仮定されて更新された状態の共分散であり(すなわち、それはβ0(k)をゼロに設定して計算された状態の共分散であり)、つぎの式によって与えられる。
【0138】
【数48】

【0139】ここで、【外34】

【0140】は測定値予測偏差の広がりであり、つぎの式で与えられる。
【0141】
【数49】

【0142】したがって、式(36)で与えられ測定値の信頼性に対応することを意図されたカルマンフィルタ内の測定値の加重は、本発明のPDA修正されたEKF内では、式(11)で与えられるそれとは異なる。実際その加重は、それが測定値の信頼性の変化に対してより敏感であるという点で、標準的なカルマンフィルタの加重とは異なる。PDA修正されたEKFは期待値から大きく離れた測定値を排除するので、PDA修正されたEKFのこのより敏感な応答性は慎重であり、したがって残りの測定値により大きな信頼性を与えることは賢明なことである。したがって修正された加重は、衛星およびセルラー基地局のような異なる測定値発生源によって与えられる測定値に対してより適している。標準的カルマンフィルタ内での加重を大きく変更するためには、通常EKFの外部の何らかの手段を用いるか、またはEKFを再初期化する必要がある。PDA修正されたEKFがソフトウェアとして実行される好ましい実施形態では、より大きな応答性に対するコストは、標準的なEKFに比べるとわずかに増大した計算のための負荷である。
【0143】(事前有効化を備えた拡張カルマンフィルタベースの位置決めシステム)さらに図3を参照すれば、本発明による位置決めシステムの別の態様において、前述の同じ表記を用いた有限ゲート幅γに対応するgの事前決定された(有限の)値を用いた事前有効化モジュールによって、測定値の事前有効化が実行される。事前有効化を実行する際、測定値は正規分布すると仮定され、その確率密度関数は次式で与えられる。
【0144】
【数50】

【0145】ここで、Z(k)は再びk番目の時刻までのすべての次元の先行測定値の集合であり、測定予測値と呼ばれる【外35】

【0146】はたとえば式(10)の場合のように項目【外36】

【0147】の単なる省略表現である。つぎに前記のゲートパラメータγに基づいて有効化領域が定義され、それは各時刻kとともに変化し、つぎの式によって与えられる、【0148】
【数51】

【0149】ここで、S-1(k+1)は測定値予測偏差共分散の逆数であり、γは再び前記のように片側のχ2分布から得られる事前定義された閾値である。再び【外37】

【0150】をgで表せば、式(40)はまたしばしばつぎのように書かれる、【0151】
【数52】

【0152】ここで、υ(k+1)は前記のように測定値予測偏差すなわち【外38】

【0153】である。
【0154】測定値が有効化領域内に入る特定の確率が存在する。gの値は事前決定されてつぎのような確率に影響を及ぼす、すなわち、gの値が大きければ大きいほど、測定値が有効化領域内に入る確率はより大きくなる。特定の測定値に対して式(41)の左辺がg2よりも大きい量と見なされれば、測定値は例外値とみなされて、つぎの位置(プロセスの状態)を推定する際にカルマンフィルタによって用いられない。
【0155】したがって本発明においては、前記のようにgの値によって決定される幅を伴う、1つ以上の様々な考慮に基づいて設定され得る幅を伴うガウスの確率密度関数が測定値に対して仮定されている。
【0156】前記のPDAおよび標準偏差gをもつゲートの式における項目のいくつかは、位置の推定に用いられる拡張EKFから直接得られることに注意されたい。さらにPDA加重の使用は、信号対ノイズ比(SNR)、ビット誤り率(BER)または例外値排除または測定値加重のための他の入力の使用を排除するものではないことにもまた注意されたい。
【0157】(分散型フィルタリング)本発明の好ましい実施形態ではフィルタリングは位置決めシステムそれ自身の中で実行されるけれども、追跡される物体とともに移動する位置決めシステム構成部品から分離され離れておりかつそれらの位置決めシステム構成部品と無線だけで通信する演算施設内で実行される1つ以上のフィルタの構成部品を持つことも重要であり、また実際にいくつかの具体例では望ましい。
【0158】ここで、図4を参照すると、追跡される物体とともに移動するローカルな構成部品41と、遠隔施設に収容されるフィルタリングハードウェアモジュールである非ローカルな構成部品34とを含む、本発明による分散型位置決めシステムが示される。非ローカルな構成部品34は本発明のフィルタリング演算を実行し、また位置決めシステムのローカルなモジュール41すなわち異種の測定エンジン22および出力ディスプレイ16と無線だけで通信する。無線通信は、異種の測定システムの出力をフィルタモジュール34(すなわち、非ローカルな構成部品)に与える無線通信信号を表わす破線42によって、またフィルタモジュール34の出力を出力ディスプレイ16に与える無線通信信号を表わす破線43によって示されている。(示されている無線通信を行うのに必要なアンテナおよび対応する受信機および送信機のハードウェアが暗示的に示されている。)そのような実施形態では、非ローカルな構成部品34は、ローカルな構成部品41を持つ特定の位置決めシステムに対してだけでなく、位置決めシステムを用いる物体に搭載されたいくつかの構成部品だけを持つ図示されていない他の位置決めシステムに対してもフィルタリングの演算を実行する。いくつかの応用分野においては非ローカルな構成部品34は、セルラー電話通信に用いられるものに類似したプロトコルを用いる異なった位置決めシステムのそれぞれと通信する遠距離通信の一部である。
【0159】ここで図5を参照すると、本発明に記載されている汎用位置決めシステム内における測定値フィルタリング方法のフローチャートが示されている。
【0160】上に説明された装置は、本発明の原理の応用の例証となるだけであることを理解されたい。とくに前記のように本発明には、拡張カルマンフィルタと呼ぶことができるフィルタが含まれるだけでなく、たとえば非線形確率差分方程式(式12)によって支配されるプロセスの状態情報の測定値を受容する、位置測定システム内のすべての種類のフィルタも含まれる。さらに本発明による位置決めシステムは、もちろん常に位置の推定値をもたらす訳ではない。その理由は、幾つかの状況下では、たとえば位置を推定するのに必要な多数の発生源からのデータの受信を一時的に妨げる環境的影響のために充分な測定データが得られないからである。そのような場合、位置決めシステムはたとえばヘッディングおよびクロックバイアスだけを一時的に推定する。
【0161】したがって、本発明は狭義の位置決めシステムだけでなく、位置を単に1つの例として一般に物体の運動の1つまたは別の形態を推定するシステムにも、等しく応用されることを理解すべきである。位置決めをするシステムである場合は、運動の他の形態についての値をも推定することができるにもかかわらず、単に「位置決めシステム」と呼ばれることが多い。しかしながら他の場合には、最も重要な運動の形態は位置以外のそれであるかもしれない、たとえばそれは角速度、または線加速度または角加速度、または単に線速度であるかもしれない。したがって、本発明は一般に汎用位置決めシステムの一部として説明されることが多いが、いくつかの応用においては位置の推定を、しかし他の応用においては必ずしも位置を含まずに運動の他の形態の推定を行なうと理解すべきである。
【0162】さらに、ここに開示された実施形態の多くの変形および代替装置が本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって考案されることが可能であり、添付のクレームはそのような変形例および装置を対象として扱うことを意図したものである。
【0163】
【発明の効果】本発明によればセルラー基地局からの情報、少なくとも時間の一部分の使用に基づいて、物体の運動状態の1つまたは別の形態の一連の推定値、たとえば、位置または速度または双方の推定値を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】591138463
【氏名又は名称】ノキア モービル フォーンズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NOKIA MOBILE PHONES LTD.
【出願日】 平成12年11月13日(2000.11.13)
【代理人】 【識別番号】100065226
【弁理士】
【氏名又は名称】朝日奈 宗太 (外1名)
【公開番号】 特開2001−194444(P2001−194444A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−345762(P2000−345762)