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【発明の名称】 FM−CWレーダ装置
【発明者】 【氏名】平尾 学

【要約】 【課題】ターゲット認識にサイクル数の連続性を用いているため、マルチパスによるレベル変化の激しい等悪条件下では認識速度が低下したり、ターゲットを見失うことがある。

【解決手段】ターゲットとして認識されている確定ターゲットを更新する場合三角波の上下区間におけるビート信号のスペクトラムのピークを組み合わせた仮ピークペアのうち、確定判別条件を満足する仮ピークペアが存在しなかった時は更新対象の確定ターゲットの推定範囲内において上下区間のいずれか一方にビート信号のスペクトラムのピークが存在するかを判別し、ピークが存在する時は上下区間のいずれかにそのピークと対をなす仮想ピークがあると想定し、仮想ピークを含む仮ピークペアに基づいて確定ターゲットの更新を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 三角波によってFM変調された連続波をターゲットに送信すると共に、ターゲットから反射された反射波を受信し、送信波と受信波をミキシングして得られたビート信号の周波数解析を行うことにより、ターゲットとの距離及び相対速度を検出するFM−CWレーダ装置において、ターゲットとして認識されている確定ターゲットを更新する場合、三角波の上下区間におけるビート信号のスペクトラムのピークを組み合わせた仮ピークペアのうち、確定判別条件を満足する仮ピークペアが存在しなかった時は、更新対象の確定ターゲットの推定範囲内において三角波の上下区間のいずれか一方にビート信号のスペクトラムのピークが存在するかどうかを判別し、ピークが存在する時は上下区間のいずれかにそのピークと対をなす仮想ピークがあると想定し、仮想ピークを含む仮ピークペアに基づいて確定ターゲットの更新を行うことを特徴とするFM−CWレーダ装置。
【請求項2】 前記仮想ピークを想定した場合に確定ターゲットの更新に失敗した時は、確定ターゲットの推定範囲よりも広い拡張推定範囲内に仮ピークペアが存在するかを判別し、仮ピークペアが存在する時はその確定ターゲットに基づいて仮ピークペアを推定し、推定された仮ピークペアを確定ターゲットとして更新することを特徴とする請求項1に記載のFM−CWレーダ装置。
【請求項3】 三角波によってFM変調された連続波をターゲットに送信すると共に、ターゲットから反射された反射波を受信し、送信波と受信波をミキシングして得られたビート信号の周波数解析を行うことにより、ターゲットとの距離及び相対速度を検出するFM−CWレーダ装置において、新たに出現した障害物をターゲットとして確定判別する場合、現サイクルから所定サイクル前までに三角波の上下区間に現われるビート信号のスペクトラムの仮ピークペアを監視し、且つ、仮ピークペアの速度に応じてサイクル数と仮ピークペアの出現数による確定判別条件を異ならせて、仮ピークペアを確定ターゲットとして確定するかを判別することを特徴とするFM−CWレーダ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、障害物との距離や相対速度の検出等に用いられるFM−CWレーダ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車等に搭載されるレーダ装置は、前方や後方を走行する他の自動車などを監視して自車との距離及び相対速度を同時に測定する装置として知られている。特に、前方を走行する自動車の監視は自動車の追突あるいは衝突事故を未然に防ぐものであり、今後大いに役立つものと期待されている。また、車載レーダには、ミリ波帯の電波を応用したミリ波レーダ装置があり、ミリ波レーダ装置の方式にも三角波によるFM変調波の連続波を用いたFM−CWレーダ方式が知られている。
【0003】このようなFM−CWレーダ装置は、三角波によってFM変調された連続波を送信波として前方に位置する自動車等の障害物に向けて送信し、障害物によって反射されて戻ってきた反射波を受信波として取り入れて、その時の送信波と受信波をミキシングして得られたビート信号を、例えば、FFT(Fast Fourier Transform)のような周波数解析手法を用いて信号処理することにより障害物との距離及び相対速度を算出するものである。
【0004】この距離及び相対速度の算出には、三角波の上り区間と下り区間に対応するビート信号のスペクトラムにおいて、障害物を示すピーク周波数が用いられる。単一の障害物の場合、上り区間のピーク周波数faと下り区間のピーク周波数fbから距離Rと相対速度Vは、それぞれピーク周波数の和算値と差分値に比例する形、即ち、距離R=A・((fa+fb)/2)
相対速度V=A・((fa−fb)/2) (A:定数)
による演算式により求められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のFM−CWレーダ装置においては、障害物が複数存在する場合は、上り区間と下り区間のスペクトラムに障害物の数だけピークが現われるため、複数の障害物の距離と相対速度を検出するためにはこれらの上り区間のピークと下り区間のピークを正確に組み合わせることが必要である。そこで、従来は一つの方法として、上り区間と下り区間のスペクトラムのピークの全組み合わせによる障害物の距離と相対速度から一定時間後の障害物の位置を推測して整合がとれているピーク同士を組み合わせることで、それぞれ複数の障害物との距離、相対速度を求めている。
【0006】しかしながら、従来においてはターゲットの認識にサイクル数の連続性を用いているため、近接する複数の障害物の相対速度が緩やかである場合は、障害物のすれ違う時間が長いため、スペクトラム同士の干渉が起こり、ターゲットを見失い易い等の問題があった。また、道路の舗装状態によりマルチパスの影響が大きい場合は、スペクトラムのレベル変動が大きくなり、ターゲットの認識に時間がかかったり、ターゲットを見失うという問題があった。
【0007】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたもので、ターゲットを見失うことなく、確実に追従することが可能なFM−CWレーダ装置を提供することを目的とする。
【0008】また、本発明は、新たに現われたターゲットを高速に認識可能なFM−CWレーダ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のFM−CWレーダ装置は、上記目的を達成するため、三角波によってFM変調された連続波をターゲットに送信すると共に、ターゲットから反射された反射波を受信し、送信波と受信波をミキシングして得られたビート信号の周波数解析を行うことによりターゲットとの距離及び相対速度を検出するFM−CWレーダ装置において、ターゲットとして認識されている確定ターゲットを更新する場合、三角波の上下区間におけるビート信号のスペクトラムのピークを組み合わせた仮ピークペアのうち、確定判別条件を満足する仮ピークペアが存在しなかった時は、更新対象の確定ターゲットの推定範囲内において三角波の上下区間のいずれか一方にビート信号のスペクトラムのピークが存在するかどうかを判別し、ピークが存在する時は上下区間のいずれかにそのピークと対をなす仮想ピークがあると想定し、仮想ピークを含む仮ピークペアに基づいて確定ターゲットの更新を行うことを特徴としている。
【0010】また、本発明のFM−CWレーダ装置は、三角波によってFM変調された連続波をターゲットに送信すると共に、ターゲットから反射された反射波を受信し、送信波と受信波をミキシングして得られたビート信号の周波数解析を行うことにより、ターゲットとの距離及び相対速度を検出するFM−CWレーダ装置において、新たに出現した障害物をターゲットとして確定判別する場合、現サイクルから所定サイクル前までに三角波の上下区間に現われるビート信号のスペクトラムの仮ピークペアを監視し、且つ、仮ピークペアの速度に応じてサイクル数と仮ピークペアの出現数による確定判別条件を異ならせて、仮ピークペアを確定ターゲットとして確定するかを判定することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明のFM−CWレーダ装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1において、まず、1は前方に位置する自動車等の障害物に送信波を送信するレーダヘッドである。レーダヘッド1は三角波によってFM変調された連続波を生成する送信部、生成された連続波を送信する送信アンテナ、障害物から反射された反射波を受信する受信アンテナ、受信波と送信波をミキシングするミキシング部等を備えていて、ミキシングして得られたビート信号を出力する。レーダヘッド1からのビート信号はローパスフィルタ(LPF)2でノイズ成分が除去された後、増幅器3で増幅され、A/D変換器4でデジタル信号に変換してマイクロプロセッサ5に供給される。
【0012】マイクロプロセッサ5は、周波数解析処理器51、ターゲット認識器52、危険判別器53から成っている。周波数解析処理器51は、A/D変換器4により一定時間でサンプリングされたビート信号の離散値データからFFT(Fast Fourier Transform)等の周波数成分解析手法を用いてスペクトラムを抽出する。ターゲット認識器52は周波数解析処理器51で算出されたスペクトラムに基づいて障害物までの距離と相対速度を算出し、危険判別器53はターゲットまでの距離と相対速度に基づいて障害物に対する危険度を判別する。危険度合が所定値以上であった時は警報器6に通知し、警報器6により警報表示、警報音等による警報を発して使用者に危険であることを報知する。
【0013】図2はターゲット認識器52の内部構成を示すブロック図である。図2において、ピーク周波数検出器521は周波数解析処理器51で得られたスペクトラムから一定以上のしきい値をもつピークを検出する。ターゲット追従器522はすでに確定しているターゲットの次サイクルでの推定位置にピークペアがあるかどうかを判別してターゲットの追従を行う。仮ピークペア検出器523は確定ターゲット以外の新規ターゲットに対して最も適合度合いが高いピークペアを仮ピークペアとして求める。ターゲット確定器524は前サイクルで推定した位置に仮ピークペア検出器523で求められた仮ピークペアがあるかどうかを判別してターゲットの確定を行う。距離及び相対速度検出器525は、確定しているターゲットについてそのピークペアから当該レーダ装置と障害物の距離及び相対距離を算出する。
【0014】次に、本実施形態の具体的な動作について説明する。図3は本実施形態の全体的な動作を示すフローチャートである。なお、図3はマイクロプロセッサ5によるメインルーチンを示している。マイクロプロセッサ5はメインルーチンの他に周波数解析処理等各種のプログラムを実行する。また、本実施形態では、自動車に図1の装置が搭載され、前方に走行する自動車等を障害物とする場合を例として説明する。まず、メインルーチンがスタートする前に車両のエンジンを作動させるため、イグニッションキーを操作して電源が投入されたものとする。また、電源投入から一定時間経過後にマイクロプロセッサ5のリセットが解除され、リセットの解除によりマイクロプロセッサ5が起動され、零番地からプログラムを実行する。
【0015】図3において、マイクロプロセッサ5は、まず、イニシャライズ処理を行い(S31)、各種変数を初期化する。次いで、周波数解析処理(S32)、ターゲット認識処理(S33)、危険判別処理(S34)を行う。この周波数解析処理、ターゲット認識処理、危険判別処理は、それぞれマイクロプロセッサ5の周波数解析処理器51、ターゲット認識器52、危険判別器53の処理である。具体的に説明すると、まず、レーダヘッド1において送信波と障害物から反射された反射波を受信した受信波とをミキシングしてビート信号が生成される。ビート信号はLPF2、増幅器3を通ってD/A変換器4に供給され、D/A変換器4ではレーダヘッド1から三角波によって周波数変調された連続波が送信されると同時にA/D変換を開始する。
【0016】A/D変換器4によるビート信号の離散値化されたデータは逐一マイクロプロセッサ5の内部メモリに蓄積される。また、このA/D変換は一定のサンプリング時間毎に実行され、そのためにサンプリング時間の監視にはタイマー割り込等が用いられる。A/D変換器4によるビート信号の離散値化は三角波の一周期分実行され、この時点で三角波の上り区間と下り区間に相当するビート信号の離散値データがマイクロプロセッサ5に蓄積される。周波数解析処理器51では三角波の上下区間に相当するビート信号の離散値データからFFT(Fast Fourier Transform)等に代表される周波数解析手法により各々の区間の離散的なスペクトラムが生成される(S32)。FFT等の周波数解析手法については周知であるので詳しい説明を省略する。
【0017】ターゲット認識器52では、詳しく後述するように離散的なスペクトラムに基づいて障害物との距離と相対速度を検出し(S33)、危険判別器53はターゲット識別器52で得られた距離と相対速度に基づいて自車の障害物に対する危険度を判定し(S34)、危険度が高いと判断した時は警報器6で危険であることを報知する。周波数解析処理器51、ターゲット認識器52、危険判別器53は三角波の一周期毎(1サイクル毎)に図3のS32〜S34の処理を繰り返し行い、先行する自動車等の障害物に対する危険度が高くなると警報器6から警報を発して使用者に報知する。
【0018】図4はターゲット認識器52の具体的な処理を示すフローチャートである。図4において、まず、ピーク周波数検出器521は三角波の上り区間、下り区間に相当するビート信号の離散的なスペクトラムから上り区間のピーク周波数、下り区間のピーク周波数をそれぞれ検出する(S40)。このピーク周波数は一定以上のしきい値を持つスペクトラムを抜き出し、その中心周波数を求めることで検出することができる。このようにして障害物と等しい数のスペクトラムのピークが上下区間で同一数得られる。
【0019】次に、仮ピークペア検出器523は仮ピークペアを算出する(S41)。仮ピークペアとは、上り区間と下り区間におけるスペクトラムのピークの仮の組み合わせをいう。なお、この場合、図5に示すようにレーダ車の前方に3台の先行者が走っているものとする。矢印は先行方向を示している。また、図6は三角波、図7は図6に示す三角波によりFM変調された電波によって得られたビート信号をFFT等の周波数解析を行うことにより得られたスペクトラムを示している。この時は先行車が3台であるため、それに対応して上り区間、下り区間ともに3つのピークが現われる。
【0020】図8は仮ピークペア算出処理を詳細に示すフローチャートである。図8において、まず、上り区間に未検索のピークがあるかどうかを調べる(S81)。これは、図7に示すように順々に上り区間のピークに対応して下り区間のピークを仮ピークペアとして算出していくためである。もし、上り区間に未検索のピークが残っていれば、S82に進み、そうでなければリターンに進む。この時は、最初の検索であるためS82に進み、上り区間で最も低周波のピークを選択してPkup(i)とする。これは、順々に周波数の低いピークから検索して仮ピークペアを求めるためである。この時は、図7に示すように最も低周波のfupaが選ばれる。
【0021】次いで、Pkup(i)に対する下り区間の仮ピークペア検索範囲を設定する(S83)。これは、Pkup(i)に対応する下り区間のピークの存在する範囲を限定するもので、効率的に仮ピークペアを算出するためのものである。実際には、相対速度が零の場合は上り区間と下り区間のピーク位置は一致するが、零でない場合はその位置は異なる。ここで、相対速度の検出範囲を例えば±200km/hとすると、それにより下り区間の検索範囲が決まる。この時は、図7に示すように検索範囲aを設定したものとする。検索範囲を設定すると、下り区間の検索範囲にあるピークを順々に検索し、未検索のピークがあるかどうかを調べる(S84)。この時は、図7に示すようにピークfupaに対応する下り区間の検索範囲aにピークfdnaとピークfdnbが存在する。すべてを検索していなければS85へ進み、すべてを検索したならばS81に戻る。ここでは、最初の検索なのでS85へ進む。
【0022】S85では下り区間の検索範囲で最も低周波数のピークを選択してPKdn(j)とする。これも、順々に周波数の低いピークから検索して仮ピークペアを求めるためである。この時は、ピークfdnaが選ばれ、上り区間のピークfupaと下り区間のピークfdnaが仮ピークペアとして得られる。また、仮ピークペアの集合PPi{(fupa、fdna)}に要素として加え(S85)、S84に戻る。S84では同様に下り区間の検索範囲aに未検索のピークがあるかどうかを調べる。この時は、ピークfupaに対応する下り区間の検索範囲aにはピークfdnbが存在するので、S85で同様に最も低周波のピークfdnbを選択し、上り区間のピークfupaと下り区間のピークfdnbが仮ピークペアとして得られる。
【0023】また、仮ピークペアの集合PPi{(fupa、fdna)、(fupa、fdnb)}に要素として加え(S86)、再びS84に戻る。S84では同様に下り区間の検索範囲aに未検索のピークがあるかどうかを調べ、この時は上り区間のピークfupaに対応する下り区間の検索範囲には未検索のピークは存在しないので、S81へ進む。S81では同様に上り区間に未検索のピークがあるかどうかを調べ、この時は未検索のピークfupb、fupcがあるので、再びS82へ進む。S82ではピークfupaの場合と同様に最も低周波のfupbを選択し、S83で未検索のピークPkup(i)に対して下り区間の仮ピークペア検索範囲を設定し、その後、検索範囲内に存在するピークPkdn(j)とのペアを仮ピークペアとして求める処理を行う。検索範囲は図7に示すように検索範囲bを設定したものとする。
【0024】この時は、上り区間のピークfupbに対して検索範囲b内にはピークfdnaとピークfdnbが存在しており、S85で最も低周波のピークPdnaが選ばれ、上り区間のピークfupbに対し下り区間のfdnaが仮ピークペアとして得られ、仮ピークペアの集合PP2 {(fupd、fdna)、(fupb、fdnb)}に加えられる。また、S84〜S86の処理を繰り返し行い、上り区間のピークfupbに対し下り区間のfdnbが仮ピークペアとして得られ、仮ピークペアの集合に要素として加えられる。S84で下り区間の検索範囲b内に未検索のピークがなくなると、S81に戻って上り区間に未検索のピークがあるかどうかを調べる処理を行う。
【0025】この時は、上り区間にピークfupcが存在しているので、S82でそのピークfupcが選ばれ、S83で下り区間の検索範囲が設定される。この時は図7に示すように検索範囲cが設定されたものとする。次いで、S84で検索範囲c内に未検索のピークがあるかどうかを調べ、この時は上り区間のピークfupcに対し下り区間の検索範囲c内にピークfdncが存在しているので、上り区間のピークfupcに対して下り区間のピークfdncが仮ピークペアとして得られ、仮ピークペアの集合PP3 {(fupc、fdnc)}に加えられる。次にS81に戻り、上り区間のすべてのピークについて検索したので仮ピーク算出処理を終了する。以上により(fupa、fdna)、(fupa、fdnb)、(fupb、fdna)、(fupb、fdnb)、(fupc、fdnc)が仮ピークペアとして得られる。
【0026】図4に戻る。仮ピークペア算出処理を終了すると、S42ですでにターゲットとして認識されている確定ターゲットの確定更新を行う。図9は確定ターゲットの確定更新処理を詳細に示すフローチャートである。図9において、まず、S90ですでにターゲットとして認識されている確定ターゲットがあるかどうかを調べる。確定ターゲットとは後述する仮ピークペアの確定判別においてターゲットとして認識された障害物を指している。即ち、現在、図4のターゲット認識処理を三角波の1周期(1サイクル)毎に行っていて、この時図5に示すように自車の前に3台の自動車が走行していると、図7の(fupa、fdna)、(fupb、fdnb)、(fupc、fdnc)が確定ターゲットとして認識されている。確定ターゲットがなければ未確定のターゲットのみか、或いはしきい値以上のスペクトラムのピークが存在しないかのいずれかであり、確定更新は実行せずにそのままリターン処理する。
【0027】一方、確定ターゲットがある場合はS91で確定ターゲットすべてについて確定判別を行ったかどうかを調べて、すべての確定ターゲットについて確定更新を行ったならリターン処理する。未だすべての確定ターゲットについて確定更新を行っていないなら、未確認の確定ターゲットについてS92以降で確定更新を行う。確定更新は第1〜第3確定更新処理の3段階で行うようになっていて、第1確定更新処理で失敗した時は第2の確定更新処理を行い、第2の確定更新処理で失敗した時は更に第3確定更新処理を行う。
【0028】まず、第1確定更新処理を図10に基づいて説明する。図10において、始めにS100で更新の対象となる確定ターゲットと、先に得られた複数の仮ピークペアのうち以下の確定判別条件を満たす仮ピークペアが存在するかどうかを調べる。これは、以下の(1)、(2)式により判別を行う。
【0029】
ns−Rerror <Rn <Rns+Rerror …(1)
rns −Verror <Vrn<Vrns +Verror …(2)
(1)、(2)式のRns、Rerror 、Vrns 、Verror は、Rns=Rn-a +a×Δt×[(Vrn+Vrn-a)/2]
error =ΔR+a×Δt×ΔVrrns =Vrn-a−(Vmycar −Vmycar-a
error =ΔVr +a×Δt×Gmaxである。但し、Rn は仮ピークペアから算出される距離Rn-a は前サイクルの確定ターゲットから算出される距離Vrnは仮ピークペアから算出される相対速度Vrn-aは前サイクルの確定ターゲットから算出される相対速度Vmycar は現サイクルの自車速度Vmycar-1 は前サイクルの自車速度ΔRは距離誤差ΔVr は相対速度誤差Δtはサイクル周期Gmax は加速減速度の最大値である。
【0030】ここで、上記判別式を満足しなかった場合は、S104で第1確定更新処理は未完了としてリターンする。上記判別式を満足する場合は、S101でその仮ピークペアを新たな確定ターゲットとして更新し、S102でその仮ピークペアを以後行う仮ピークペアの新規確定判別の対象から除外し、S103で第1確定更新処理により確定ターゲットの更新処理を完了したとしてリターンする。次に、図9のS93で第1確定更新処理を完了したかどうかを判定し、完了していればS91から同様の処理を行い、残りの確定ターゲットの更新処理を行う。一方、第1確定更新処理が未完了である時は、確定ターゲットの更新に失敗した時であり、S94で第2確定更新処理を行う。第1確定更新処理を失敗する原因としてはレーダ特性により図7のピークが各サイクル毎に現われず、確定更新できない等が挙げられる。
【0031】第2確定更新処理を図11に基づいて説明する。図11において、まず、S110で更新対象となる確定ターゲットの推定範囲内において上下区間のいずれか一方にビート信号のスペクトラムのピークが存在するかどうかを調べる。即ち、レーダ特性により上り区間と下り区間のうち一方のピークが消失することがあるため、確定ターゲットの推定範囲内の上下いずれか一方にピークが存在すれば、ピークが消失していても確定ターゲットの更新を行い、救済しようというものである。S110で推定範囲内の上下いずれかにピークが存在すれば、S111でそのピークと対をなす仮想ピークが上下いずれかにあるものとして(1)、(2)式の条件式を満足するピークが存在するかどうかを判定する。もし、S110で(1)、(2)式を満足するピークが見つからなかった時はS115で第2確定更新処理は未完了としてリターンする。
【0032】一方、S110で(1)、(2)式を満足するピークが一方に見つかった時はS111でその確定ターゲットからそのピークを含む仮ピークペアを推定し、S112で推定された仮ピークペアを新たな確定ターゲットとして更新する。次いで、S113でその仮ピークペアを以後行う仮ピークペアの新規確定判別の対象から除外し、S114で第2確定更新処理により確定ターゲットの更新を完了としてリターンする。ここで、第2確定更新処理においてS110で更新対象となる確定ターゲットの推定範囲内に上下いずれか一方にピークが存在するか否かを判定しているが、これは前述のようにレーダ特性により上下区間の一方のピークが消失する時に有効である。
【0033】即ち、マルチパス等の影響があった場合や受信レベルの低いターゲットを捕捉する場合、つまり、しきい値ぎりぎりのターゲットは上下区間のレベルの若干の差により一方のピークが検出できないことがあるが、検出できなかったピークの代わりに仮想ピークを推定することにより、確定ターゲットの更新を行うことができる。また、図13に示すようにターゲットが近接しすぎると、ターゲットのスペクトラムが干渉を起こし、一方のスペクトラムが吸収されたり、あるいはスペクトラムの干渉によりピークの検出がばらついたりすることがある。このような場合、図11の第2確定更新処理を行うことにより確定ターゲットの更新が可能である。
【0034】次に、図9のS95で第2確定更新処理を完了したかどうかを判定し、完了していればS91から残りの確定ターゲットに対して同様の処理を行う。また、第2確定更新処理を失敗し、第2確定更新処理が未完了である時はS96に進んで第3確定更新処理を行う。図12は第3確定更新処理を詳細に示すフローチャートである。図12において、まず、S120で第3確定更新処理をk回連続して実行したかどうかを判定する。第3確定更新処理は、後述するように確定ターゲットの更新を推定して行うため、回数制限を設けて推定による誤判定を防いでいる。S120でk回連続して実行していなければ、S121でその確定ターゲットの拡張推定範囲内に仮ピークペアが存在するかどうかを判定する。拡張推定範囲とは第2確定更新処理で用いた標準推定範囲を更に一定区間拡張したものである。S121で拡張推定範囲内に仮ピークペアが存在する時は、S122に進んで、その確定ターゲットから仮ピークペアを以下の(3)、(4)式を用いて推定する。
【0035】
n =Rn-a +a×Δt×[(Vrn+Vrn-a)/2] …(3)
rn=Vrn-a−(Vmycar −Vmycar-a ) …(4)
n は前サイクルの確定ターゲットから推定される距離Rn-a は前サイクルの確定ターゲットから算出される距離Vrnは前サイクルの確定ターゲットから推定される相対速度Vrn-1は前サイクルの確定ターゲットから算出される相対速度Vmycar は現サイクルの自車速度Vmycar-1 は前サイクルの自車速度Δtはサイクル周期である。
【0036】次いで、S123で推定された仮ピークペアを新たな確定ターゲットとして更新し、S124でその仮ピークペアを以後行う仮ピークペアの新規確定判別の対象から除外する。また、S125で第3確定更新処理により確定ターゲットの更新処理を完了としてリターンする。一方、S120で第3確定更新処理をk回実行しても確定更新を未完了であった時やS121で確定ターゲットの拡張推定範囲内に仮ピークペアが存在しなかった時は、S126で第3確定更新処理により確定ターゲットの更新処理は未完了としてリターンする。本実施形態では、第3確定更新処理において確定ターゲットの拡張推定範囲内に仮ピークペアが存在している時に(3)、(4)式を用いて仮ピークペアを推定し、その仮ピークペアを新たな確定ターゲットとして更新しているので、図13に示すようにスペクトラム干渉によりピーク位置が標準推定範囲から大きく逸脱した場合でも確定ターゲットの更新を行うことができる。
【0037】次に、図9のS97で第3確定更新処理が完了したかどうかを判定し、完了していればS91に戻って残りの確定ターゲットについて同様の処理を行う。また第3確定更新処理を未完了であれば、S98でその確定ターゲットの確定を解除し、再度S91に戻って残りの確定ターゲットに対して同様の処理を行う。以下S91〜S98の処理を繰り返し行い、すべての確定ターゲットについて処理を終了したところで確定ターゲットの更新処理を完了する。
【0038】確定ターゲットの更新処理を完了すると、図4のS43で新規ピークペアの確定判別処理を行う。これは、現在確定している確定ターゲット以外に新たに出現した障害物をターゲットとして確定するための判別を行う処理である。例えば、現在図5に示すように3台の自動車が確定ターゲットとして更新されていて、これ以外に新たに自動車等の障害物が出現したらS43の処理を行うことで、その障害物を新たなターゲットとして確定するものである。なお、S43で新たに出現した障害物をターゲットとして確定すると、次のサイクルでは確定ターゲットとして認識される。
【0039】図14は新規ピークペアの確定判別処理を詳細に示すフローチャートである。図14において、まず、S140で定数a=N1サイクルとし、S141で現サイクルをNサイクルとした時にN−aサイクルに仮ピークペアがあるかどうかを判定する。(N−a)サイクルに仮ピークペアがあれば、S142でその仮ピークペアと現サイクルにおいて(1)、(2)式の条件式を満足する仮ピークペアがあるかどうかを判定する。もし、(1)、(2)式を満足する仮ピークペアが存在すれば、S143〜145でターゲットの確定判別のためにターゲットの時間的な連続性を判定する。即ち、N1サイクルの間に仮ピークペアを監視し、その間にn回条件式を満たすとターゲットとして確定するものである。これによりターゲットの連続性を回数から時間に変換し、ターゲットの確定を高速化することが可能である。
【0040】図15は新規ピークペアの初期速度と判定条件の関係を示している。初期速度をV1,V2,V3に分け、速度がV1の時は判定条件はn/N1、V2の時はn/N2、V3の時はn/N3としている。但し、速度はV1<V2<V3である。各速度は一定の範囲を持っている。具体的には、S143〜S145で仮ピークペアの速度に応じて判定条件を異ならせ、仮ピークペアの速度がV1の時はS143、速度がV2の時はS144、速度がV3の時はS145でそれぞれ対応する判定条件で判定を行う。ここで、仮ピークペアの速度がV1であれば、S143でその仮ピークペアはN1回中n回満たしているかを判定する。例えば、N1=5、N2=4、N3=3、n=3とすると、仮ピークペアが5サイクル中に3回出現するかを判定する。
【0041】この時は、S143において5サイクル中1回であるため、S147,S148へ進み、a=a−1として再度S141からの処理を行い、S143でその仮ピークペアは5サイクル中3回出現するかを判定する。以下、同様の処理を繰り返し行い、S143で5サイクル3回を満足すればS146でその仮ピークペアを確定ターゲットとする。
【0042】図16は仮ピークペアの初期速度がV1の場合にN1=5、n=3とした時にS143の確定判別が満たされるパターンの例を示している。図16(a)のパターン1の場合は仮ピークペアがサイクル毎に交互に現われ、仮ピークペアは5サイクル中3回現われている。また、図16(b)のパターン2、図16(c)のパターン3の場合は仮ピークペアの現われるサイクルは異なっているが、いずれの場合も仮ピークペアは5サイクル中3回現われている。図16のいずれの場合もS143の条件を満足し、S146でその仮ピークペアを確定ターゲットとする。
【0043】本実施形態では、このようにサイクルの連続性に比べてN1という時間で連続性をいくつかのパターンで判定するため、非常に柔軟性に富んでいる。これにより、低速度のターゲットに対しては比較的時間をかけて誤認識のないようにし、高速度のターゲットに対しては短時間ですばやく認識することができる。これは特に複数の低速度ターゲットが近接している場合等では上下区間のペアリングが短時間では難しく、誤認識を招く恐れがある場合に効果的である。なお、低速度ターゲットの認識は自車と相対位置関係の変化が遅く若干時間を要しても悪影響はなく、一方高速度ターゲットは短時間でもその振る舞いが大きく認識が容易であるため問題は生じない。また、高速度ターゲットは自車との相対位置変化が大きいため、すばやく認識する必要がある。
【0044】一方、仮ピークペアの速度がV2である時はS144でその仮ピークペアはN2回中n回を満たしているか、即ち、4サイクル中3回現われているかを判定する、また、仮ピークペアの速度がV3である時はS145でその仮ピークペアはN3回中n回を満たしているか、即ち、3サイクル中3回現われているかを判定する。以下、同様の処理を繰り返し行い、それぞれ条件を満たしていれば、S146でその仮ピークペアを確定ターゲットとする。次に、S147でN−1サイクルまで調べ終わると、リターンし新規ピークペアの確定判別処理を完了する。確定されたターゲットについては、以後レーダ検知範囲から外れて消滅するまで追従する。
【0045】新規ピークペアの確定判別を完了すると、図4のS44で確定ターゲットの距離と相対速度を算出する処理を行う。距離Rと相対速度Vは以下の式により得られる。
【0046】
R=kr×{(Pkup1(N)+PKdn1(N))/2} …(5)
V=kv×{(Pkup1(N)−PKdn1(N))/2} …(6)
kr,kvはFM−CWレーダの各パラメータにより定まる定数である。以上で図4の1サイクルのターゲット認識処理を終了する。ターゲット認識処理を完了すると、図3のS34で危険判別処理を行う。即ち、算出されたターゲットとの距離及び相対速度に基づいてターゲットが自車に対して危険であるかどうかを判定し、危険である時は警報器6によりドライバーに報知する。以上で1サイクル(三角波の1周期)の処理を終了し、以下同様の処理を三角波の1サイクル毎に繰り返し行う。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、確定ターゲットを更新する場合、マルチパス等の影響があっても受信レベルの小さいターゲットであっても、更には近接したターゲットのスペクトラムが干渉を起こした場合であっても確定ターゲットを確実に更新でき、ターゲットを見失うことなく追従することができる。また、新たに出現したターゲットを確定判別する場合、速度に応じて確定判別条件を異ならせることにより全速度のターゲットの確定判別を正確に行うことができる。この際、低速度ターゲットに対しては比較的時間をかけて誤認識がなく、高速度ターゲットに対しては短時間ですばやく認識することができる。更に、ターゲットの連続性を単なるサイクルの連続回数ではなく、一定時間内の連続性で認識しているので、マルチパス等によりデータが欠落してもターゲットを見失うことなく認識でき、新たに現われたターゲットを高速で認識できる。従って、複数の障害物の正確な距離と相対速度を検出でき、信頼性の高いFM−CWレーダ装置を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【出願日】 平成11年6月29日(1999.6.29)
【代理人】 【識別番号】100065385
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 穣平
【公開番号】 特開2001−13240(P2001−13240A)
【公開日】 平成13年1月19日(2001.1.19)
【出願番号】 特願平11−184114