| 【発明の名称】 |
磁場内導電材料の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】無漏田正雄
【氏名】田中良二
【氏名】国府田明
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| 【要約】 |
【課題】銅箔などの導電材料の表面に異なる金属の薄膜を作る工程において、製造担当者の熟練を要することなく、薄膜の厚みを仕様通りに正確かつ均一に再現性良く製造することのできる磁場内導電材料の製造方法を提供する。
【解決手段】磁化率が異なる複数の材料を組み合わせ、見かけの磁化率をゼロもしくは使用雰囲気の磁化率に近似させることによって、周囲の磁場に磁場歪みを及ぼさないようにした磁場内導電材料の製造方法であって、組み合わせる材料の厚みをイオンスパッタ法及び/またはイオンエッチング法で制御する工程を含むことを特徴としている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】磁化率が異なる複数の材料を組み合わせ、見かけの磁化率をゼロもしくは使用雰囲気の磁化率に近似させることによって、周囲の磁場に磁場歪みを及ぼさないようにした磁場内導電材料の製造方法であって、組み合わせる材料の厚みをイオンスパッタ法及び/またはイオンエッチング法で制御する工程を含むことを特徴とする磁場内導電材料の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、核磁気共鳴装置などの高均一磁場を利用する分析装置に用いて好適な磁場内導電材料の製造方法に関し、特に、高感度核磁気共鳴装置のプローブ用コイルなどに使用する磁場内導電材料の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】核磁気共鳴装置のプローブ部分は、高周波信号の供給及び検出用のサンプルコイル、コイルボビン、電気回路、温度制御装置などから構成されている。そして、サンプルコイルは同調用コンデンサと組み合わせて同調回路を形成し、高周波磁界の照射によって試料中の共鳴子が発する自由誘導減衰信号を検出している。 【0003】核磁気共鳴装置の感度を高めるために、この同調回路のQを高めて、微弱な自由誘導減衰信号を効率良く検出することが行なわれる。サンプルコイルと同調用コンデンサとから構成される同調回路のQは、サンプルコイルと同調用コンデンサを結合するリード線のインダクタンスや浮遊容量の影響を受けるので、リード線の長さを短くし、同調回路のQを高くすることが提案されている。例えば、本出願人による特公平3−6470号公報には、コイルのリード線の重なり部分に誘電体を介在させて同調用コンデンサを形成し、Qの高い同調回路を形成することを提案している。 【0004】ところが、近年、核磁気共鳴装置の発展は著しく、磁場強度では18T(1Hの共鳴周波数:750MHz)の装置も商品化されている。このような状況下、装置の磁場強度が上昇するにつれて、前述したような同調回路のQのみならず、プローブの主要な構成要素であるサンプルコイル及びコイルボビンなどに使用されている材料物質に固有な磁化率の影響による静磁場の歪みが大きな問題になってきた。例えば、銅は−0.77×10-6cgs unitの体積磁化率を示すので、磁場中に置かれると銅が磁化してしまい、静磁場の均一度に悪影響を与える。そこで、銅に比べて磁化率の小さな銅合金で作られたサンプルコイルをプローブの部品として用いることが提案されている。 【0005】磁化率の小さな銅合金のサンプルコイルは、所定の成分を混合した銅合金を延伸して、所望の形状に成形して得ているが、銅合金の調製時に成分の金属が均質に混合せず、不均一を生じることがあり、その銅合金を延伸して製造した線材から製造したサンプルコイルにも、部分的な磁化率の不均一が生じることは避けられなかった。 【0006】また、均質な合金が得られた場合にも、銅と異種の金属を混合した銅合金は、銅に比べて導電率が低く、磁化率の面で満足することができても、導電率の面では目的に合致するものとは限らないという問題があった。 【0007】そこで、銅合金を用いる代わりに、銅とは反対の磁性を持った金属を銅と共に合わせ用い、複合材料として使用する方法、すなわち、銅箔の表面に銅の反磁性を打ち消すような常磁性の金属膜を付けることにより、全体として見かけの磁化率を小さくする方法が提案されている。これは、例えば、反磁性の銅箔(厚さ10〜20μm)の表面にサンプルコイルの形状を画き、化学エッチングによってサンプルコイルの形をした銅箔を得た後、湿式電解めっきで該銅箔の両面に常磁性のロジウム薄膜を作る方法、あるいは銅箔の表面に酸化マンガンを塗布し、還元して常磁性の金属マンガン薄膜を作る方法によって実現されるものである。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この方法にも問題は存在している。それは、銅箔の表面に湿式電解めっきでロジウム薄膜を作る際、同時に表裏両面にめっきするため、目的の厚さになるように、正確かつ均一に再現性良くめっきされるように製造工程を制御することが困難なことである。電流、電圧、めっき液濃度、めっき液温度、銅箔の形状の違いに由来する局部電界など、パラメータが多いため、仕様通りのめっき膜厚精度を満たすように製造することは極めて困難であり、製品の歩留まりが悪かった。 【0009】また、銅箔の表面に酸化マンガンを塗布し、還元して常磁性の金属マンガン薄膜を作る方法は、製造に熟練を要する上に、できあがった製品自体が不安定で、銅箔の表面が化学変化を起こしやすく、例えば、高温での長時間の使用には耐えられなかった。 【0010】本発明の目的は、上述した点に鑑み、銅箔などの導電材料の表面に異なる金属の薄膜を作る工程において、製造担当者の熟練を要することなく、薄膜の厚みを仕様通りに正確かつ均一に再現性良く製造することのできる磁場内導電材料の製造方法を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明にかかる磁場内導電材料の製造方法は、磁化率が異なる複数の材料を組み合わせ、見かけの磁化率をゼロもしくは使用雰囲気の磁化率に近似させることによって、周囲の磁場に磁場歪みを及ぼさないようにした磁場内導電材料の製造方法であって、組み合わせる材料の厚みをイオンスパッタ法及び/またはイオンエッチング法で制御する工程を含むことを特徴としている。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本発明では、核磁気共鳴装置のプローブに使用されているサンプルコイルの材料(反磁性体箔)やシールドリングの材料(反磁性体箔)を空気と同じ磁化率(常磁性)に補正するために、反磁性体箔の表面に常磁性体膜を作る際、次のような計算式(1)を用いて常磁性体膜の最適な膜厚を計算する。 【0013】 dpara = ddia(χair−χdia)/2(χpara−χair)・・・・・・(1) ここで、dparaは、反磁性体箔の表面に作る常磁性体膜の厚み、ddiaは、反磁性体箔の厚み、χparaは、単位体積当たりの反磁性体の磁化率、χdiaは、単位体積当たりの常磁性体の磁化率、χairは、単位体積当たりの空気の磁化率を表わしている。 【0014】さて、図1は、水素核(1H)の核磁気共鳴装置用プローブに用いられる1Hサンプルコイルの銅箔の展開図と、該銅箔をプローブに組み立てたときの組立図を示したものである。まず、銅箔を化学的にエッチングしたり、セラミック刃物で切断したりして、図1の展開図に示したような形のコイルパターン1を作成する。次に、作成されたコイルパターン1の反磁性を補正するために、常磁性体膜として白金の薄膜を、蒸着またはイオンスパッタして、コイルパターン1の表裏両面に作成する。このとき、白金の膜厚dparaは、目標蒸着膜厚の5〜20%の誤差を含むことになる。核磁気共鳴装置にとって必要な膜厚の誤差は0.5%以下なので、何らかの誤差修正が必要になる。 【0015】そこで、次のような2通りの方法で、常磁性体膜の作成と膜厚の修正とを行なうようにする。 (イ)片面ずつ、目標膜厚dparaよりも薄めに、蒸着またはイオンスパッタによって常磁性体膜を作成した後、作成された膜厚をX線膜厚計で評価しながら、数回に分けて少しずつ、イオンスパッタ法で膜厚を増加させる。スパッタ条件として、電圧、電流を少しずつ小さくして行き、膜厚精度を徐々に上げていく。常磁性体の膜厚が厚くなり過ぎたときには、イオンエッチング法により、膜厚を薄く修正する。 (ロ)片面ずつ、目標膜厚dparaよりも厚めに、蒸着またはイオンスパッタによって常磁性体膜を作成した後、作成された膜厚をX線膜厚計で評価しながら、数回に分けて少しずつ、イオンエッチング法で膜厚を減少させる。エッチング条件として、電圧、電流を少しずつ小さくして行き、膜厚精度を徐々に上げていく。常磁性体の膜厚が薄くなり過ぎたときには、イオンスパッタ法により、膜厚を厚く修正する。 【0016】常磁性体膜の膜厚の修正に、低真空で取り扱い可能なイオンスパッタ法やイオンエッチング法を使用すると、1回の修正に要する時間が、蒸着法を使用したときに比べて1/4〜1/3の時間で行なえるという利点があり、繰り返しの膜厚修正作業が比較的楽に実施できる。 【0017】図2は、上記(ロ)の方式による常磁性体薄膜の作成過程を示したものである。図2の横軸には、3つの銅箔の表裏に白金薄膜を作成したときに要したイオンスパッタ及び/またはイオンエッチングの回数を示している。また、図2の縦軸には、銅箔表面に形成された白金薄膜の膜厚を示している。図2から明らかなように、2〜5回のイオンスパッタ及び/またはイオンエッチングにより、白金薄膜は、目標の厚さの0.5%以内の膜厚に到達していることが判る。 【0018】図3は、このようにして作成されたコイルパターンの一実施例の断面を示したものである。式(1)に基づいて算出されるように、銅箔(反磁性体)の厚みは10μm、銅箔の表面に作成された白金薄膜の厚みは1740Åである。 【0019】このようにして作成された平板状のコイルパターン1を、図1のようにガラスボビン2の外側に巻き付けて、1Hサンプルコイルを組み立てる。また、ガラスボビン2の内側には、白金薄膜を表面に付けたコイルパターンのない銅箔を巻き付けて、シールドリング3として使用する。 【0020】このとき、核磁気共鳴装置プローブのサンプルコイルとシールドリングが、空気と同じ磁化率に正確に補正されているかどうかで、核磁気共鳴装置プローブの良否が決まる。すなわち、核磁気共鳴装置で理想的なスペクトルを得るためには、試料を均一な磁場の中に置くことが不可欠である。サンプルコイルやシールドリングの磁化率と空気の磁化率との間にわずかでも差があると、サンプルコイルやシールドリングの形状に沿って磁化を生じ、試料回りの均一磁場を乱すことになる。この磁場の乱れは、室温シムでは補正することができない高次の磁場分布を持っている。従って、予め高次の磁場歪みを防ぐためには、サンプルコイルやシールドリングの磁化率と空気の磁化率との差は小さいほど良い。 【0021】均一磁場が実現することにより、スペクトルは磁場の乱れによる線幅の広がりがなくなり、線型性能や分解能が向上する。また、線幅が細くなり、ピーク強度が増すので、スペクトルのS/N比が改善し、感度向上が実現される。図4は、図3のような構成で磁化率補正された核磁気共鳴プローブで測定されたクロロホルムの1H核の核磁気共鳴スペクトルの例である。 【0022】1Hサンプルコイルとしては、現在、図3に示すように、銅箔の厚さ10μm、白金薄膜の厚さ174nm、有効高さ16mmの大きさのものが実用化されているが、本発明の方法を応用すれば、銅箔の厚さ〜40μm、白金薄膜の厚さ〜700nm、有効高さ〜30mmの大きさの大型の1Hサンプルコイルを実用化することができる。 【0023】尚、サンプルコイルのインダクタンスと高周波の周波数が一定であれば、サンプルコイルの高周波抵抗が小さいほど、核磁気共鳴プローブの電気特性の1つであるQ値が高くなる。例えば、厚さ10μmの銅箔でサンプルコイルを作るよりも、より厚い銅箔を使用した方が核磁気共鳴プローブのQ値が高くなる。また、電気抵抗の大きい白金の薄膜の厚さを薄くして、電気抵抗の小さい銅箔部分を流れる電流量を増やすように構成するほど、高周波電流の表皮効果のため、核磁気共鳴プローブのQ値は高くなる。核磁気共鳴装置の分解能が同じであれば、スペクトルのS/N比は、核磁気共鳴プローブのQ値の平方根に比例する。 【0024】 S/N ∝ √Q ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) これらのことを考慮すると、銅箔の反磁性を銅箔表面の白金薄膜の蒸着の厚さのみによって補正するのは必ずしも得策ではなく、むしろ、銅箔の反磁性の補正は高周波電流があまり流れない銅箔の内部で行なうと共に、銅箔表面の蒸着膜は、サンプルコイル全体の磁化率を最終的に微調整する役割を負わせるにとどめた方が良い場合もある。その具体例を図5に示す。 【0025】図5は、サンプルコイルの材料として、2枚の銅箔を用い、銅箔と銅箔の間に所定の厚さのアルミニウム中間箔(常磁性体)を挟むことによって、銅箔の持つ反磁性を補正するように構成したクラッド板である。常磁性のアルミニウム中間箔の厚さを調節することにより、クラッド板全体の見かけの磁化率を、わずかながら常磁性にしたり反磁性にしたりすることができる。 【0026】このようにして、銅箔の磁化率を空気の磁化率付近に制御した後、クラッド板全体がなお反磁性の場合は、白金(常磁性体)の薄膜を銅箔表面にコーティングすることにより、クラッド板全体の見かけの磁化率を空気の磁化率に補正するようにする。また、銅箔とアルミニウム中間箔とを張り合わせた結果、クラッド板全体が常磁性になった場合は、金(反磁性体)の薄膜を銅箔表面にコーティングすることにより、クラッド板全体の見かけの磁化率を空気の磁化率に補正するようにする。 【0027】図5の(a)は、40μmの厚さの2枚の銅箔の間に40μmのアルミニウム層を設け、銅箔の表面に2600Åの金の薄膜を蒸着して磁化率を補正した例であり、図5の(b)は、40μmの厚さの2枚の銅箔の間に36μmのアルミニウム層を設け、銅箔の表面に590Åの白金の薄膜を蒸着して磁化率を補正した例である。 【0028】このように、中間にアルミニウム層を設けた銅箔により磁化率補正された核磁気共鳴プローブで測定されたクロロホルムの1H核の核磁気共鳴スペクトルの例を図6に示す。また、同様に、中間にアルミニウム層を設けた銅箔により磁化率補正された核磁気共鳴プローブで測定されたエチルベンゼンの1H核の核磁気共鳴スペクトルの例を図7に示す。 【0029】尚、上記実施例では、サンプルコイルやシールドリングの見かけの磁化率を空気の磁化率に合わせた例について述べたが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、サンプルコイルやシールドリングを周囲の様々な磁化率に合わせることが可能である。例えば、サンプルコイルやシールドリングが窒素ガス中に置かれる場合には、サンプルコイルやシールドリングの見かけの磁化率を窒素ガスの磁化率に合わせるように金属薄膜の厚みを制御すれば良いことは言うまでもない。このときの金属薄膜の厚みは、式(1)のχairを窒素の単位体積当たりの磁化率χN2に置き換えることによって算出できる。 【0030】また、上記実施例において、白金薄膜や金薄膜は、単に核磁気共鳴プローブの見かけの磁化率を制御しているだけではない。すなわち、核磁気共鳴プローブを構成する銅箔の表面は、湿気及び二酸化炭素を含む空気中では、徐々に緑色の塩基性炭酸銅(緑青、CuCO3・Cu(OH)2)を生じて常磁性に変化し、これを空気中で熱すると黒色の酸化銅(CuO2)となる。白金薄膜や金薄膜は、これらの化学変化を阻止し、化学的に安定な核磁気共鳴プローブを形成する役割をも果たしている。 【0031】また、図1では、鞍形コイルの例を示したが、サンプルコイルの形状は鞍形に限定されるものではなく、例えば、ソレノイド形であっても良い。 【0032】また、上記実施例では、サンプルコイルやシールドリングに用いることが可能な材料として銅箔(反磁性体)の例を挙げたが、他の金属箔、例えば銀箔(反磁性体)を用いても良い。 【0033】また、磁化率補正用として使用できる金属は、常磁性体としては、白金やアルミニウムの他に、パラジウム、ロジウム、イリジウム、錫などがあり、反磁性体としては、金の他に銀、銅などがある。 【0034】 【発明の効果】以上述べたごとく、本発明の磁場内導電材料の製造方法によれば、磁化率が異なる複数の材料を組み合わせ、見かけの磁化率をゼロもしくは使用雰囲気の磁化率に近似させることによって、周囲の磁場に磁場歪みを及ぼさないようにした磁場内導電材料の製造方法において、組み合わせる材料の厚みをイオンスパッタ法及び/またはイオンエッチング法で制御するようにしたので、磁場内導電材料の見かけの磁化率を高い精度で所望の値に近似させることが可能になった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004271 【氏名又は名称】日本電子株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年1月14日(2000.1.14) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2001−194440(P2001−194440A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月19日(2001.7.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−5589(P2000−5589) |
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