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【発明の名称】 地絡標定装置及び方法
【発明者】 【氏名】吉田 高志

【氏名】角川 高則

【要約】 【課題】地絡継電器が作動しない微地絡時や再閉路成功時でも地絡事故点が標定でき、広い範囲に渡る定期巡回、再閉路後の設備点検が不要となり、保守作業の効率を高める。

【解決手段】配電系統の地絡サージ波形を実測して第1の波形パラメータを算出し、同時に前記配電系統を模擬した電気回路網を用意して地絡事故点と地絡抵抗値を種々変えて前記電気回路網の出力から得られる第2の波形パラメータを求め、上記第1の波形パラメータと第2の波形パラメータとの相関が最大となる点を地絡事故点として標定する。また、地絡抵抗値が大きい、いわゆる微地絡の状態では、配電系統の地絡サージ波形を実測して第1の波形パラメータを算出し、また上記配電系統を模擬した電気回路網を用意し、第1の波形パラメータから推定地絡抵抗値を算出したものをこの電気回路網に与え、地絡事故点のみを様々に変えて波形パラメータ2を求め、上記波形パラメータ1と前記波形パラメータ2との相関が最大となる点を地絡事故点として標定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】地絡により生じる地絡サージの電圧及び/又は電流波形を測定する波形測定手段と、前記地絡サージ波形からサージ波形の特徴を表す第1の波形パラメータを求める波形解析手段と、予め与えられた地絡事故点を含む配電系統の電気回路網の状態空間モデルと、該状態空間モデルを用いて地絡事故点を想定し、その場合に発生する地絡サージ波形の特徴を表す第2の波形パラメータを計算する系統解析手段と、前記波形解析手段及び前記系統解析手段のそれぞれで得られた地絡サージの第1、第2の波形パラメータを比較する波形パラメータ比較手段と、前記状態空間モデルの地絡事故点及び/又は地絡抵抗値を変化させる手段と、前記得られた第1と第2の波形パラメータの相関が最大となる点を地絡標定する手段と、を備えて成ることを特徴とする地絡標定装置。
【請求項2】前記波形パラメータから地絡抵抗値を求める機能を有する前記波形解析手段と、前記波形解析手段で得た地絡抵抗値を入力可能な配電系統の電気回路網の状態空間モデルと、地絡事故点のみを変化させる手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載の地絡標定装置。
【請求項3】前記配電系統の電気回路網の状態空間モデルを、与えられた電気回路網を構成するよう予め用意され状態方程式が与えられている部分回路ブロックを組み合わせて配置接続するように指示入力するための入力手段と前記配置・接続された前記部分回路ブロックが有する個々の状態行列から前記電気回路網全体の状態行列を生成する状態行列生成手段と生成された前記電気回路網全体の状態行列に基づいて前記電気回路網のステップ応答を求める手段と、を有することを特徴とする請求項1及至2に記載の地絡標定装置【請求項4】与えられた電気回路網を構成するよう予め用意され状態方程式が与えられている部分回路ブロックを組み合わせて配置接続するように指示入力するための入力手段と、前記配置接続された部分回路ブロックの各々を自由に複写、移動、配置、接続して前記電気回路網を構成する回路網構成手段と、前記部分回路ブロックが有する各々の素子定数及び/又は系統定数を設定/変更する定数設定/変更手段と配置接続された前記部分回路ブロックが有する個々の状態行列から前記電気回路網全体の状態行列を生成する状態行列生成手段と、を有することを特徴とする請求項1及至3に記載の地絡標定装置。
【請求項5】前記電気回路網の状態行列を2次系部分および/又は1次系部分との並列接続された形式に変換する手段と、前記電気回路網の入力端子の位置と出力端子の位置を指定する手段と、前記2次系部分と前記1次系部分の各々のステップ入力により生じる応答波形関数を求める手段と、求めた応答波形関数を合成して前記電気回路網のステップ応答関数を出力する手段とを備えることを特徴とする請求項1及至4に記載の地絡標定装置。
【請求項6】前記状態行列を対角要素とそれに隣接する要素以外を”0”とする変換手段を有することを特徴とする請求項1及至5に記載の地絡標定装置。
【請求項7】任意の数学モデルで表現された部分回路ブロックを状態行列に変換することを特徴とする請求項1及至6に記載の地絡標定装置。
【請求項8】前記ステップ応答関数を用いて波形を合成しステップ応答波形として出力する手段を備えることを特徴とする請求項1及び至7に記載の地絡標定装置【請求項9】予め用意されている部分回路ブロック以外の部分回路ブロックの追加や既存の部分回路ブロックの修正を行う手段を備えることを特徴とする請求項1及至8に記載の地絡標定装置。
【請求項10】得られたステップ応答関数を演算して入力がステップ以外の場合の出力応答を求める手段を有することを特徴とする請求項1及至9に記載の地絡標定装置。
【請求項11】前記波形解析手段は、前記波形測定手段の特性を入力する手段を有し、前記波形測定手段で採取した地絡サージ波形の波形パラメータを予め用意された前記波形測定手段の特性で補正する特性補正手段を有することを特徴とする請求項1及至10に記載の地絡標定装置。
【請求項12】測定により得られた地絡により生じる地絡サージ波形からそのサージ波形の特徴を表す第1の波形パラメータを求め、予め与えられた地絡事故点を含む配電系統の電気回路網の状態空間モデルを用いて地絡事故点を想定し、その場合に発生する地絡サージ波形の特徴を表す第2の波形パラメータを求め、前記状態空間モデルの地絡事故点及び/又は地絡抵抗値を変化させて前記得られた第1と第2の波形パラメータの相関が最大となる点を地絡標定することを特徴とする地絡標定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は配電系統の地絡標定装置及び方法に関し、特にその地絡事故点を特定することができる、地絡標定装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現状の地絡保護システムとしては、主に次のような方式が採用されている。即ち、配電線は、遠隔制御機能を有する自動区分開閉器によって複数の区間に分割することが可能な構成であり、地絡事故の発生時には変電所の再閉路継電方式及び配電自動化システムにより、故障区間を特定し、その電源側及び負荷側の開閉器を開放して故障区間を切り放すとともに、健全区間への早期の送電を可能にしている。
【0003】また、再閉路成功時(例えば、強風により立木が配電線に一時的に接触して地絡状態になったものの、間もなく立木は配電線から離れてしまい地絡の原因が除去されるなど、短時間で供給支障が解消される場合)には地絡区間が判定できないため、事後の設備点検や定期的な設備巡視を行なって再発の未然を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、現在の方式は、地絡事故の検出・遮断と故障区間の除去を主体としており、事故点位置を特定する機能を持たない。従って、長亘長の配電線の場合は、故障が一区間内に局限された場合でもなお広範囲であるから事故点探査・復旧に相当量の作業を要する。また、再閉路成功時には区間限定ができないため、広範囲に及ぶ設備点検・巡視を行なう必要があり、作業量が多く効率が良くないという問題がある。
【0005】これを解決するには、地絡事故点を特定する技術及びその装置が必要である。今までに、地絡時に発生するサージ波形を用いて事故点を標定する手法としては、(Lehtonen, M. :Transient Analysis for Ground Fault Distance Estimationin Electrical Distribution Networks. Espoo/Finland: Tech. Res. Cent. ofFinland. Publ. No. 115,1992)などが検討されてきたが、十分な標定精度が得られているとは言い難く、実用的な技術が望まれている。
【0006】そこで、本発明の目的は、地絡継電器が作動しない微地絡時や再閉路成功時でも地絡事故点が標定でき、広い範囲に渡る定期巡回、再閉路後の設備点検が不要となり、保守作業の効率を高めることができる地絡標定装置及び方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の問題点を解決するため本発明による地絡標定装置及び方法は、次のような特徴的な構成を備えて構成される。
【0008】(1)地絡により生じる地絡サージの電圧及び/又は電流波形を測定する波形測定手段と、前記地絡サージ波形からサージ波形の特徴を表す第1の波形パラメータを求める波形解析手段と、予め与えられた地絡事故点を含む配電系統の電気回路網の状態空間モデルと、該状態空間モデルを用いて地絡事故点を想定し、その場合に発生する地絡サージ波形の特徴を表す第2の波形パラメータを計算する系統解析手段と、前記波形解析手段及び前記系統解析手段のそれぞれで得られた地絡サージの第1、第2の波形パラメータを比較する波形パラメータ比較手段と、前記状態空間モデルの地絡事故点及び/又は地絡抵抗値を変化させる手段と、前記得られた第1と第2の波形パラメータの相関が最大となる点を地絡標定する手段と、を備えて成る地絡標定装置。
【0009】(2)前記波形パラメータから地絡抵抗値を求める機能を有する前記波形解析手段と、前記波形解析手段で得た地絡抵抗値を入力可能な配電系統の電気回路網の状態空間モデルと、地絡事故点のみを変化させる手段と、を有する上記(1)の地絡標定装置。
【0010】(3)前記配電系統の電気回路網の状態空間モデルを、与えられた電気回路網を構成するよう予め用意され状態方程式が与えられている部分回路ブロックを組み合わせて配置接続するように指示入力するための入力手段と前記配置・接続された前記部分回路ブロックが有する個々の状態行列から前記電気回路網全体の状態行列を生成する状態行列生成手段と生成された前記電気回路網全体の状態行列に基づいて前記電気回路網のステップ応答を求める手段と、を有する上記(1)乃至(2)のいずれかの地絡標定装置【0011】(4)与えられた電気回路網を構成するよう予め用意され状態方程式が与えられている部分回路ブロックを組み合わせて配置接続するように指示入力するための入力手段と、前記配置接続された部分回路ブロックの各々を自由に複写、移動、配置、接続して前記電気回路網を構成する回路網構成手段と、前記部分回路ブロックが有する各々の素子定数及び/又は系統定数を設定/変更する定数設定/変更手段と配置接続された前記部分回路ブロックが有する個々の状態行列から前記電気回路網全体の状態行列を生成する状態行列生成手段と、を有する上記(1)及至(3)のいずれかの地絡標定装置。
【0012】(5)前記電気回路網の状態行列を2次系部分および/又は1次系部分との並列接続された形式に変換する手段と、前記電気回路網の入力端子の位置と出力端子の位置を指定する手段と、前記2次系部分と前記1次系部分の各々のステップ入力により生じる応答波形関数を求める手段と、求めた応答波形関数を合成して前記電気回路網のステップ応答関数を出力する手段とを備える上記(1)乃至(4)のいずれかの地絡標定装置。
【0013】(6)前記状態行列を対角要素とそれに隣接する要素以外を”0”とする変換手段を有する上記(1)乃至(5)のいずれかの地絡標定装置。
【0014】(7)任意の数学モデルで表現された部分回路ブロックを状態行列に変換する上記(1)乃至(6)のいずれかの地絡標定装置。
【0015】(8)前記ステップ応答関数を用いて波形を合成しステップ応答波形として出力する手段を備える上記(1)乃至(7)のいずれかの地絡標定装置【0016】(9)予め用意されている部分回路ブロック以外の部分回路ブロックの追加や既存の部分回路ブロックの修正を行う手段を備える上記(1)乃至(8)のいずれかの地絡標定装置。
【0017】(10)得られたステップ応答関数を演算して入力がステップ以外の場合の出力応答を求める手段を有する上記(1)乃至(9)のいずれかの地絡標定装置。
【0018】(11)前記波形解析手段は、前記波形測定手段の特性を入力する手段を有し、前記波形測定手段で採取した地絡サージ波形の波形パラメータを予め用意された前記波形測定手段の特性で補正する特性補正手段を有する上記(1)乃至(10)のいずれかの地絡標定装置。
【0019】(12)測定により得られた地絡により生じる地絡サージ波形からそのサージ波形の特徴を表す第1の波形パラメータを求め、予め与えられた地絡事故点を含む配電系統の電気回路網の状態空間モデルを用いて地絡事故点を想定し、その場合に発生する地絡サージ波形の特徴を表す第2の波形パラメータを求め、前記状態空間モデルの地絡事故点及び/又は地絡抵抗値を変化させて前記得られた第1と第2の波形パラメータの相関が最大となる点を地絡標定する地絡標定方法。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。図1は本発明による地絡標定装置の構成を示す図である。原理的には、系統から実際に地絡サージ波形を採取してこれを波形Aとし、また、系統を模擬した等価回路に地絡事故点を与え仮想の地絡サージ波形を算出してこれを波形Bとする。そして等価回路上で地絡事故点を種々変えて波形Aと波形Bとの相関をとり、これが最大となる地絡位置を求めこれを事故点と標定している。
【0021】まず、実測した地絡サージ波形を処理する部分について説明する。地絡が発生すると、変電所に備え付けのCT、PT、ZCT、GPT等の出力から地絡サージ波形が得られる。この地絡サージ波形は、波形測定手段11の入力に印加される。この波形測定手段11は、A/Dコンバータ、波形メモリ等で構成されており、入力された地絡サージ波形をデジタル信号に変換し、デジタル値の形で波形メモリに格納する。
【0022】波形測定手段11の出力は、波形解析手段12に入力される。この波形解析手段12は、CPUあるいはDSP、ROM、RAM等で構成されており、地絡サージ波形の波形パラメータを算出する。ここで言う波形パラメータとは、過渡振動波形である地絡サージ波形を一意的に規定する、周波数、初期振幅、位相、減衰定数の各パラメータである。波形パラメータを算出する波形解析アルゴリズムとしては一般的なFFTに代えて解析精度の高い修正Pisarenko法(糸長雅弘:修正Pisarenko法による減衰正弦波のパラメータ推定,九州大学工学部集報,Vol.63,No.5,pp567-571(1990))を用いている。波形解析アルゴリズムとしてはここで述べる修正Pisarenko法の他、KT法(R.Kumaresan,D.W.Tufts:Estimating the Parameters of Exponentially Damped Sinusoids and Pole-Zero Modeling in Noise,IEEE Trans.Acoust.Speech Signal Process. Vol.30, No.6, pp833-840, Dec, 1982)等の自己回帰法を用いることもできる。
【0023】これはFFT法は、演算が比較的簡単で高速という特徴を有する反面、周波数分解能が解析窓長の逆数で一義的に決まってしまい、必ずしも希望する周波数分解能が得られないからである。また、解析波形と整数周期の関係にない波形が存在すると、得られるスペクトルの裾が広がってしまい本当の周波数成分がわからないという問題点を有している。
【0024】これに対し、修正Pisarenko法をはじめとする自己回帰モデルに基づく波形解析手法(自己回帰法)は、解析信号を減衰振動(および振動のない指数関数)の集合に分解する手法である。そしてFFTのような周波数分解能は存在しない。
【0025】そもそも、地絡事故により発生するサージ信号は系統固有の定数で決まる過渡応答と考えることができる。このため、系統が線形な受動素子(L、C、R)のみで構成されているならば、発生する過渡応答波形は減衰振動の集合として定義できる。そのため、地絡サージ信号の解析にはFFT法よりも自己回帰法の方が適している。
【0026】この波形解析手段12からは前記の各波形パラメータが出力され、次段の波形パラメータ比較手段13に入力される。
【0027】以下では、上述の実測地絡サージ波形の比較対象となる、系統を模擬した系統等価回路網によるシミュレーション波形の発生について述べる。その後、その波形に特有な波形パラメータを生成する方法について説明する。尚、以下で述べる系統等価回路網作成手段14については、本願出願人になる既出願の特開平10−269276号に開示されている。
【0028】図2は、系統等価回路網作成手段14の詳細構成図である。図2において、系統等価回路網作成手段14は、キーボード及びマウスから成り、予め登録されている基本的な部分回路ブロックを選択するブロック選択キー14a、選択された該部分回路ブロックに回路定数等のパラメータを入力する定数入力キー14b、前記部分回路ブロック間の接続及び入出力箇所を指定するための接続情報キー14c、変換手法キー14dの各々を備えている。表示部140は、各種情報をディスプレイするものである。そして系統等価回路網作成手段14の出力は、系統解析手段15に加えられる。
【0029】以下では、上記の回路構成を持つ系統等価回路網作成手段を用いて系統のステップ応答を求める方法について具体的に説明する。
【0030】図3は、解析を行う系統モデルの一例であり力率改善コンデンサや負荷を含んだ梯子型系統等価回路である。図のように需要家1、需要家2というように負荷(需要家)の場所で区切り、これを基本的な部分回路ブロックとする。事故点は需要家間の線路インピーダンスの途中に置き、地絡抵抗Rgとステップパルス u(t) を用いて地絡を模擬する。
【0031】図に示す回路網を、図中の点線で囲んだように、予め装置に登録されている基本的な部分回路ブロックに適合するようにユーザが分割する。
【0032】図4は一連の回路網解析動作の説明図であり、この画面は図2の表示部140に現われるものである。又、以下の各種入力は同じく図2の系統等価回路網作成手段14から入力される。
【0033】図4において、部分回路ブロック画面1は、需要家の負荷状態に対応した基本的な部分回路ブロックを各種集めた画面であり、メニューとして予め用意しておく。各々の部分回路ブロックは、線間容量C、対地静電容量CE、線路インピーダンスL、R等により構成される回路である。そして、ここにはブロック内部の回路の概略を示す図の他、他のブロックとの接続のための端子、ステップパルスを接続するための入力端子、ブロック内部の電流や電圧を出力するための出力端子等を一組にして登録する。また、部分回路ブロック内部の素子値で決定される状態行列のための計算式を定義しておく。なお、部分回路ブロック画面1は、図形表示されているが、部分回路ブロックは文字情報で表示してもよい。また、部分回路ブロックの回路情報は状態行列、極−零点モデル等他の数学モデルを使用してもよい。
【0034】次に、部分回路ブロックを適宜組み合わせて図3に示す分割前の回路に配置結線する。そのための配置画面2には、部分回路ブロック画面1の部分回路ブロックのうち必要なものを複写して配置する。前記配置画面2に配置された部分回路ブロック3、4は配線手段5により接続される。部分回路ブロック3、4には、配置画面2の中で容易に識別できるようにユニークな番号を付与する。なお、識別ができれば良いので、番号でなくてもよく、文字列であっても、また自動的に識別番号が付与されても、手動で付与するものであってもよい。
【0035】定数入力画面6により、配置画面2に配置された各々の部分回路ブロック内部の定数を入力する。定数を入力すると、部分回路ブロック毎の状態行列が自動的に作成される。このようにして、配置画面2に配置された全ての部分回路ブロックの定数の入力を行う。尚、この定数入力は部分回路ブロック画面1で行ってもよい。
【0036】部分回路ブロックの配置結線、定数入力が終了すると、次に地絡模擬用のステップパルス8を接続する入力の位置と、その応答結果を見る出力位置9とを部分回路ブロックの番号等で指定する。ステップパルス8は、図4では電流源となっているが、部分回路ブロックの定義を変更すればステップパルス電圧源とすることもできる。また、部分回路ブロック内でのステップパルスを接続する場所も、部分回路ブロックの定義を変更することによって変更可能である。
【0037】入力および出力の位置、各部分回路ブロックの接続情報、定数入力が終了すると、解析する回路網全体の入出力特性が1入力1出力の状態方程式7として作成される。
【0038】7の状態方程式はこのままでは解析が困難なので、状態方程式中の状態行列を対角要素とそれに隣接する要素以外は「0」となる形(式(1))に対角化変換(例えば、白岩謙一「基礎課程 線形代数入門」、サイエンス社、1992、181ページ〜184ページ)を行う。このように対角化変換することにより、解析対象の電気回路は2次系回路(対角要素のうち、2×2行列の部分)と1次系回路の並列接続として表現できる。(例えば、本田他「制御数学の基礎と演習」、日刊工業新聞社、1992、112ページ〜117ページ)
【数1】

【0039】対角化変換された式(1)において、2次系部分の状態行列である式(2)から導かれるインパルス応答は式(3)により得られる。更に、1次系部分の状態行列である式(4)から導かれるインパルス応答は式(5)により得られる。(例えば、本田他「制御数学の基礎と演習」、日刊工業新聞社、1992)
【0040】従って、前述のように、この変換により解析対象の電気回路は2次系及び1次系回路の並列和として表わされるので、解析対象全体のインパルス応答は、図5のように2次系部分と1次系部分の個々のインパルス応答の和として得ることができる。
【0041】また、解析対象全体の伝達関数についても、解析対象の電気回路が単純なラプラス変換を有する2次系部分と1次系部分の並列接続で表現できるため、個々の伝達関数の総和として容易に算出できる。
【0042】以上述べたように、本発明になる回路網解析装置では、解析対象回路全体を部分ブロックに分割し、その後回路を1つにまとめるという手法をとっている。
【0043】このため、同じ電気回路網で、入力あるいは出力の位置を変更して再度インパルス応答あるいは伝達関数を求める場合、既に作成した配置画面2から、入力と出力の位置を指定し直して状態方程式7を作成するだけでよい。
【0044】従来からの方法では、入出力の位置を変更すると、回路方程式をまた1から立て直さなければならない。
【0045】このように本発明によれば、入出力箇所を変更した場合、図3の対象回路網について、回路図の入力、方程式の入力などを一から繰り返す必要がないため回路網解析を効率的に行える。
【0046】図6は、本発明の他の実施形態であり、電気回路のインパルス応答を表示する装置の構成を示す。インパルス応答関数生成手段100は、前の実施形態で示したような方法で供試回路網のインパルス応答関数を計算する。時間情報生成手段110は、インパルス応答関数の時間変数の値を発生するもので、通常はt=0(秒)から、波形が概略収束するまでの時間を予め定めた時間ステップで出力する。時間波形演算/表示手段120は、インパルス応答関数生成手段100と時間情報生成手段110のデータを用いて当該回路網(図3)のインパルス応答を表示する。以上述べた100〜120の各手段はCPU(図示せず)で制御されている。
【0047】この表示に当たっては、必要に応じて表示画面に目盛(グリッド)を付加できる。また、縦軸のスケールを変更する事によりインパルス応答の表示振幅を変更できる。更に、この縦軸の変更のみならず前記時間情報生成手段11からのデータをも変更することにより、インパルス応答を希望のスケーリングで表示できる。
【0048】以上のように、系統等価回路網作成手段14で生成された状態方程式は、系統解析手段15に入力され、伝達関数すなわちインパルス応答関数が計算される。
【0049】ところで、地絡サージは、典型的には事故点にステップ電圧を印加したと考えられる。このため地絡サージの影響が観測点においてどのように現れるかは系統等価回路網のステップ応答を調べればよい。また、ステップ応答はインパルス応答を積分すればよいので、結局、系統解析手段15で得られたインパルス応答を積分すればステップ応答を算出でき、この応答波形から地絡サージの波形パラメータ(仮にBと名付ける)を求めることができる。
【0050】状態方程式には、地絡事故点および地絡抵抗値を入力しているが、地絡事故点および地絡抵抗値の何れか一方でも異なれば、計算結果の波形パラメータは異なってくる。このように、状態方程式で記述された配電系統の等価回路網で生じるシミュレートされた地絡サージの波形パラメータ(B)は、波形パラメータ比較手段13に入力される。そして前記波形解析手段12により出力された波形パラメータ(仮にAと名付ける)と比較される。
【0051】波形パラメータ比較手段13では2つの波形パラメータの相関値を計算し、この値を事故点・地絡抵抗値変化手段16に与えている。この事故点・地絡抵抗値変化手段16では図7に示すように地絡事故点、地絡抵抗値を変化させて状態方程式にフィードバックして地絡サージを求めている。図7ではある一つの地絡抵抗値に対して、地絡事故点を変電所から系統末端までスイープして各ポイントに対する波形パラメータを算出しているが、これは地絡抵抗値のほうをスイープしてもかまわない。
【0052】このように波形パラメータの比較結果に応じて地絡事故点および地絡抵抗値を様々に変化させながら波形パラメータ(B)を算出し、これと実測で得た波形パラメータ(A)とを比較して両者の差異が最小となるようにすれば図8に示すように地絡点が標定できる。
【0053】図9は、本発明の別の実施形態を示す図であり、特に微地絡状態の地絡位置標定にマッチしたものである。
【0054】本発明者は系統の地絡位置標定に関し数々の実験を行った。その結果、地絡抵抗が大きい、いわゆる微地絡の状態における地絡サージは波形パラメータのほとんどのエネルギーは振動しない指数関数成分で占められているという知見を得た。また、この指数関数成分は系統の3相一括の対地容量と地絡抵抗との時定数で決まることもわかった。従って、これらの結果を用いることにより接地抵抗の値を推定できることがわかった。
【0055】図9において、地絡サージ波形は、実際に観測したサージ波形である。この地絡サージ波形は、波形測定手段21に印加される。この波形測定手段21は、A/Dコンバータ、波形メモリ等で構成されており、入力された地絡サージ波形をデジタル信号に変換し、デジタル値の形で波形メモリに格納する。
【0056】波形測定手段21の出力は、波形解析手段22に入力される。この波形解析手段22は、CPUあるいはDSP、ROM、RAMで構成されており、地絡サージ波形の波形パラメータを算出する。ここでいう波形パラメータとは、その波形を一意的に規定する周波数、初期振幅、位相、減衰定数の各パラメータである。波形パラメータを算出する波形解析アルゴリズムは前述の実施例と同様に修正Pisarenko法を用いている。この波形解析手段22では前記の波形パラメータの算出とともに地絡抵抗値の推定機能を有している。そして波形パラメータは次段の波形パラメータ比較手段23に入力される。一方、地絡抵抗推定値は系統等価回路網作成手段24に入力される。この部分の説明は前述の実施形態例と同様であるため省略する。
【0057】そして波形解析手段22より得られた推定地絡抵抗値を前記系統等価回路網作成手段24の状態方程式に与え、その場合における状態方程式を系統解析手段25に出力する。系統解析手段25の出力である波形パラメータは、波形解析手段22より出力された波形パラメータと比較される。そして最も近い波形パラメータとなるように事故点変化手段26により地絡事故点を図10に示すように種々に変化させながら状態方程式の作成・系統解析を行ない地絡事故点を標定する。
【0058】この方法は、配電線のインピーダンスと比べて地絡抵抗値が大きな場合、地絡サージの主成分が配電系統の対地静電容量と地絡抵抗で決まる時定数の指数関数となる場合に有効であり、標定計算量および計算に要する時間を大幅に短縮できる利点がある。
【0059】尚、上記の説明では1つの推定地絡抵抗値を選定し、これについて地絡事故点をスイープして事故点を標定したが、この他の方法として、複数の推定地絡抵抗値を用い、各々の推定地絡抵抗値について地絡事故点をスイープして、その中から最も確かな地絡事故点を標定してもよい。
【0060】図11は、本発明の更に別の実施形態を示す図である。地絡現象を観測する場合、波形測定用の波形センサ(波形測定手段)31として、一般的には変電所既設のCT、PT、ZCT、GPT等が使用される。しかし、これらの電圧・電流センサは周波数特性や非直線性等を有しているため理想的な特性はしておらず、このため測定誤差(波形変化)が必ず生じる。基本波や10数次の高調波等、配電系統で通常問題とされる周波数範囲ではCT等のこれらセンサによる影響は無視できる。しかし、地絡サージには高い周波数成分(数kHz以上)が含まれるため、CT等の特性が測定に及ぼす影響はかなり大きいといえる。
【0061】従って、波形センサで検出したこれらの誤差を含むサージ波形を波形解析し、それによって地絡事故点標定を行なうと標定誤差が生じてしまう。そこで予めこれら波形センサの特性を伝達関数として求めておく。そして測定・解析で得られた波形パラメータをセンサの伝達関数で補正する。これにより、より正確なサージ波形のパラメータが得られ、結果として地絡事故点標定精度の向上が計れる。すなわち、図11に示すように波形解析手段32に特性補正手段32bを設け、この部分でCT等のセンサ自身の特性を補正する。具体的には次のようになる。すなわち、真の地絡サージ波形をF(s)、波形測定手段(センサ)の誤差をも含んだ伝達関数をH(s)とすると、波形測定手段31の出力にはF'(s)=F(s)×H(s)なるセンサ部分の誤差を含んだ信号が現れる。次段の波形解析手段32ではこのF'(s)を前記H(s)で除せばF'(s)/H(s)=F(s)となり、真の地絡サージ波形が求まる。
【0062】尚、ここで述べた波形測定手段31は、前述の実施例で説明した波形測定手段11、21と同じものである。また、波形解析手段32は、特性補正手段32bを除けば、前述の実施形態例で説明した波形解析手段12、22と同じものである。
【0063】
【発明の効果】以上、説明したように本発明の地絡標定装置によれば、配電系統の地絡サージ波形を実測して第1の波形パラメータを算出し、同時に前記配電系統を模擬した電気回路網を用意して地絡事故点と地絡抵抗値を種々変えて前記電気回路網の出力から得られる第2の波形パラメータを求め、前記第1の波形パラメータと前記第2の波形パラメータとの相関が最大となる点、すなわち地絡事故点を標定している。
【0064】また、地絡抵抗値が大きい、いわゆる微地絡の状態では、配電系統の地絡サージ波形を実測して第1の波形パラメータを算出し、また前記配電系統を模擬した電気回路網を用意し、前記第1の波形パラメータから推定地絡抵抗値を算出したものをこの電気回路網に与え、地絡事故点のみを様々に変えて波形パラメータ2を求め、前記波形パラメータ1と前記波形パラメータ2との相関が最大となる点、すなわち地絡事故点を標定している。
【0065】更に、サージ波形を検出するCT等センサの誤差を補正する手段を設けることにより測定系の誤差がキャンセルされ標定精度の向上を図ることができた。
【0066】かかる本発明によれば、地絡継電器が作動しない微地絡時や再閉路成功時でも地絡事故点が標定でき、広い範囲に渡る定期巡回、再閉路後の設備点検が不要となり、保守作業の効率を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
【識別番号】000128094
【氏名又は名称】株式会社エヌエフ回路設計ブロック
【出願日】 平成11年7月28日(1999.7.28)
【代理人】 【識別番号】100081710
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正博
【公開番号】 特開2001−41995(P2001−41995A)
【公開日】 平成13年2月16日(2001.2.16)
【出願番号】 特願平11−213527