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【発明の名称】 空間電荷測定装置
【発明者】 【氏名】川端 欣哉

【氏名】名切 卓男

【氏名】仲川 隆

【氏名】住本 勉

【氏名】小川 英子

【氏名】品川 潤一

【要約】 【課題】ケーブルのシースや遮蔽層を除去することなく、ケーブル絶縁体層中の空間電荷分布を測定する。

【解決手段】電力ケーブル50の絶縁体層52に圧力波を印加するための圧力波発生手段2と、圧力波に応答して絶縁体層中に発生する電気信号を検出する信号検出手段3と、信号検出手段の出力に基づいて絶縁体層中の空間電荷を測定する測定手段4とを備え、圧力波発生手段は、電力ケーブルの外周に同軸的に円弧状で配設される圧電素子21と、圧電素子を挟み込むように配設される扇型の圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23とから構成され、さらに、圧電素子と圧力波伝搬部材との間隙にはこれらと音響インピーダンスが近い第一の反射抑制部材25が充填され、圧電素子と圧力波吸収部材との間隙にはこれらと音響インピーダンスが近い第二の反射抑制部材26が充填されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】被測定ケーブルの絶縁体に圧力波を印加するための圧力波発生手段と、前記圧力波に応答して前記絶縁体中に発生する電気信号を検出する信号検出手段と、前記信号検出手段の出力信号に基づいて前記絶縁体中の空間電荷を測定する測定手段とを備え、前記圧力波発生手段は、前記被測定ケーブルの外周に同軸的に円弧状で配設される圧電素子と、前記被測定ケーブルおよび前記圧電素子間に配設され、一端面が前記被測定ケーブルのケーブルシースの外周に密接するような曲面から成り、他端面が前記圧電素子と直接又は間接的に密接するような面から成る圧力波伝搬部材と、前記圧電素子の前記圧力波伝搬部材の密着面とは反対側の面に配設され当該反対側の面に直接又は間接的に密接するような面から成る圧力波吸収部材とから構成されている空間電荷測定装置であって、前記圧電素子と前記圧力波伝搬部材との間隙には、当該圧電素子および当該圧力波伝搬部材と音響インピーダンスが近い第一の反射抑制部材が充填され、前記圧電素子と前記圧力波吸収部材との間隙には、当該圧電素子および当該圧力波吸収部材と音響インピーダンスが近い第二の反射抑制部材が充填されていることを特徴とする空間電荷測定装置。
【請求項2】前記圧電素子がセラミックで、且つ前記圧力波伝搬部材および前記圧力波吸収部材がアルミニウムの場合には、前記第一の反射抑制部材および前記第二の反射抑制部材は鉛であることを特徴とする請求項1記載の空間電荷測定装置。
【請求項3】前記各反射抑制部材の前記圧電素子、前記圧力波伝搬部材および前記圧力波吸収部材との各密着面には、それぞれシリコーンオイルが塗布されていることを特徴とする請求項1または2記載の空間電荷測定装置。
【請求項4】前記圧力波伝搬部材は、曲率半径の異なる複数の前記被測定ケーブルの前記ケーブルシースに密着させるために、少なくとも2つ以上に径方向で分割可能に一体化されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の空間電荷測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は空間電荷測定装置に係り、特に圧力波法(PWP法)を用いた空間電荷測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、絶縁体中に異物や欠陥などが存在するケーブルに直流電圧を印加すると、異物や欠陥部の存在箇所に空間電荷が誘起されることが知られており、この空間電荷分布がケーブルの劣化等を診断する上で重要な指標の1つとなっている。
【0003】この空間電荷分布を測定する方法の1つとして圧力波法(PWP法)がある。圧力波法は、外部から絶縁体試料に圧力波を印加して空間電荷に変位を与え、この空間電荷の変位に起因して発生する変位電流の時間変化を測定することにより、空間電荷分布を測定するものである。したがって、この圧力波法を用いてケーブル絶縁体中の空間電荷分布を測定する場合には、複数個の平板状の圧電素子を円弧状に配置したり、圧電素子自体を円弧状に加工したりして、測定範囲をある程度広げる必要がある。
【0004】また、圧電素子には、当該圧電素子から前方に発生した圧力波をケーブル絶縁体中へ伝搬させるための圧力波伝搬部材と、当該圧電素子から後方に発生した圧力波が空気との界面で生じる反射を防止するための圧力波吸収部材とを固定させる必要がある。なお、これら圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材は、圧電素子へ電圧を印加する際の電極としての機能も兼備している。
【0005】さらに、圧力波法で、ケーブルのシースや遮蔽層を除去することなく、非破壊でケーブル絶縁体中の空間電荷分布を測定するには、ケーブルに印加する圧力波が十分に大きくなる厚さ寸法の大きい圧電素子が必要になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、平板状の圧電素子を円弧状に配置させると、圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材と間隙が生じる難点がある。このような間隙が存在し、且つこの間隙に空気が介在すると、空気と、圧電素子、圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材との音響インピーダンスの相違から、これらの界面で圧力波が反射してしまい、外部に現れる圧力波の強度が小さくなると共に、図10に示すような多重反射が生じてしまう。また、平板状の圧電素子の厚さ寸法が大きく、圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材の圧電素子との対向面が曲面の場合には、大きな間隙が生じてしまうので、圧力波の反射が極めて大きくなる難点がある。
【0007】このような難点に対して、円弧状に配置された平板状の圧電素子と、圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材とを間隙なく密着させることが考えられるが、圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材の加工精度等の問題で実際上は困難である。
【0008】本発明はこのような従来の難点を解決するためになされたもので、ケーブルのシースや遮蔽層を除去することなく、ケーブル絶縁体層中の空間電荷分布を測定することができる空間電荷測定装置を提供することを目的とする。
【0009】
【発明を解決するための手段】このような目的を達成する本発明の空間電荷測定装置は、被測定ケーブルの絶縁体に圧力波を印加するための圧力波発生手段と、圧力波に応答して絶縁体中に発生する電気信号を検出する信号検出手段と、信号検出手段の出力に基づいて絶縁体中の空間電荷を測定する測定手段とを備え、圧力波発生手段は、被測定ケーブルの外周に同軸的に円弧状で配設される圧電素子と、被測定ケーブルおよび圧電素子間に配設され、一端面が被測定ケーブルのケーブルシースの外周に密接するような曲面から成り、他端面が圧電素子と直接又は間接的に密接するような面から成る圧力波伝搬部材と、圧電素子の圧力波伝搬部材の密着面とは反対側の面に配設され当該反対側の面に直接又は間接的に密接するような面から成る圧力波吸収部材とから構成されている空間電荷測定装置であって、圧電素子と圧力波伝搬部材との間隙には、当該圧電素子および当該圧力波伝搬部材と音響インピーダンスが近い第一の反射抑制部材が充填され、圧電素子と圧力波吸収部材との間隙には、当該圧電素子および当該圧力波吸収部材と音響インピーダンスが近い第二の反射抑制部材が充填されているものである。
【0010】このような空間電荷測定装置によれば、圧電素子と圧力波伝搬部材との間隙に第一の反射抑制部材が、また、圧電素子と圧力波吸収部材との間隙に第二の反射抑制部材がそれぞれ充填されているので、空気の介在を防止することができる。これにより、圧力波の強度の低下を抑制し、また、多重反射を抑制することができるため、ケーブルのシースや遮蔽層を除去することなく、非破壊でケーブル絶縁体中の空間電荷分布を測定することができる。
【0011】また、本発明の空間電荷測定装置において圧電素子がセラミックで、且つ圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材がアルミニウムの場合には、第一の反射抑制部材および第二の反射抑制部材は鉛であることが好ましい。これにより、金属の中でも比較的柔らかい鉛を反射抑制部材として用いることができるので、圧電素子と圧力波伝搬部材との間隙、および圧電素子と圧力波吸収部材との間隙に反射抑制部材を、それぞれ隙間なく埋めることができる。
【0012】また、本発明の空間電荷測定装置において、各反射抑制部材の圧電素子、圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材との各密着面には、それぞれシリコーンオイルが塗布されていることが好ましい。これにより、インピーダンス不整合がさらに改善される。
【0013】また、本発明の空間電荷測定装置において圧力波伝搬部材は、曲率半径の異なる複数の被測定ケーブルのケーブルシースに密着させるために、少なくとも2つ以上に径方向で分割可能に一体化されていることが好ましい。これにより、1つの装置で、曲率半径の異なる複数の被測定ケーブルを、シースや遮蔽層を除去することなく、非破壊でケーブル絶縁体中の空間電荷分布を測定することが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の空間電荷測定装置における好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。なお、空間電荷を測定する電力ケーブル50は、導体51に架橋ポリエチレンから成る絶縁体層52を被覆し、さらに、この絶縁体層52に外部遮蔽層53を介してケーブルシース54で被覆したものを測定用試料とする(図1(a))。
【0015】本発明の空間電荷測定装置は図1に示すように、被測定電力ケーブル50の絶縁体層52に圧力波を印加するための圧力波発生手段2と、圧力波発生手段2からの圧力波に応答して導体51、外部遮蔽層53の間に発生する電気信号を検出する信号検出手段3と、信号検出手段3の出力信号に基づいて絶縁体層52中の空間電荷を測定する測定手段4とを備えている。
【0016】圧力波発生手段2は、電力ケーブル50の外周に同軸的に円弧状で配設される圧電素子21と、電力ケーブル50および圧電素子21間に配設される圧力波伝搬部材22と、圧電素子21の圧力波伝搬部材22に対する密着面とは反対側の面に配設される圧力波吸収部材23とから構成され、圧電素子21にはパルス電圧発生器24が接続されている。
【0017】具体的には、複数個の平板状の圧電素子21が電力ケーブル50の軸心から所定長さ離れた位置で当該軸心を中心にして円弧状に配置されている(図1(b))。また、圧力波伝搬部材22は、一端面が電力ケーブル50のケーブルシース54の外周に密接するような曲面から成り、他端面が円弧状に配置された圧電素子21に沿うような曲面から成るもので、圧力波吸収部材23は、圧電素子21の圧力波伝搬部材22に対する密着面とは反対側の面に沿うような曲面から成るもので、何れも所謂扇型に形成されている。このような圧電素子21としては大きな圧力波を発生することができるセラミック(PZT)やニオブ酸リチウム(LiNbO3)が好ましく、この場合、圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23としては、アルミニウムが好ましい。
【0018】なお、圧電素子21の圧力波強度を高めるためには、必然的に当該圧電素子21の厚みを厚くしなければならない。しかしながら、図2に示すように、円弧状に配置された圧電素子21と、圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23との間に間隙ができるので、圧電素子21と圧力波伝搬部材22との間隙に当該圧電素子21および当該圧力波伝搬部材22と音響インピーダンスが近い第1の反射抑制部材25を充填し、圧電素子21と圧力波吸収部材23との間隙に当該圧電素子21および当該圧力波吸収部材23と音響インピーダンスが近い第2の反射抑制部材26を充填する。
【0019】このような第1の反射抑制部材25および第2の反射抑制部材26としては、圧電素子21がセラミックで、圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23がアルミニウムの場合には、音響インピーダンスが近い鉛が好適である。鉛は、金属の中でも比較的柔らかいので、圧電素子21と圧力波伝搬部材22との間隙、および圧電素子21と圧力波吸収部材23との間隙に第1および第2の反射抑制部材25、26を、それぞれ充填後、圧接することにより隙間なく埋める、即ち、圧電素子21と、圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23とを間接的に密接させることができる。これにより、圧電素子21、圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23の各密着面に、目に見えない傷や凹凸があっても、鉛の柔軟性により圧接することで凹凸等を埋めることができるので、圧力波の反射を抑制することができる。なお、各反射抑制部材25、26の圧電素子、圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材との各密着面には、それぞれシリコーンオイルが塗布されていることが望ましい。
【0020】また、圧力波伝搬部材22は図2に示すように、曲率半径の異なる2つの電力ケーブルのケーブシースに密着させるため、圧力波伝搬部材22Aおよび圧力波伝搬部材22Bのように径方向で2分割可能に一体化させてもよい。即ち、圧力波伝搬部材22Aに対して、先端側の曲率半径が異なる複数の圧力波伝搬部材を用意すれば、電力ケーブル側の圧力波伝搬部材を交換するだけで、曲率半径の異なる複数の電力ケーブルに対応させることができる。
【0021】ここで、圧電素子21上面で発生した圧力波が、さまざまな界面において反射を繰返し、例えばA、B、Cのような伝搬経路で電力ケーブル50の絶縁体層52に到達するとして、圧電素子21、2つの圧力波伝搬部材22A、22Bおよび圧力波吸収部材23中の圧力波の伝搬速度を、それぞれVAI、VPTZとすれば、圧力波が発生してから電力ケーブル50の外周に到達するまでの時間は、伝搬経路Aで、【0022】
【数1】

【0023】伝搬経路Bで、【0024】
【数2】

【0025】伝搬経路Cで、【0026】
【数3】

【0027】となる。伝搬経路Aは電力ケーブル50への最短経路であるので、もっとも早く到達し、伝搬経路B、Cは2つの圧力波伝搬部材22A、22Bおよび圧力波吸収部材23の長さにより到達時間が決まる。なお、tAは伝搬経路Aの伝搬時間、tBは伝搬経路Bの伝搬時間、tCは伝搬経路Cの伝搬時間、l1は第1の圧力波伝搬部材22Aの長さ、l2は第2の圧力波伝搬部材22Bの長さ、l3は圧電素子21の厚さ、l4は圧力波吸収部材23の長さである。
【0028】また、電力ケーブル50に到達した圧力波は絶縁体層52を伝搬して導体51に到達するが、絶縁体層52を通り抜けるのにかかる時間tXLPEは絶縁体層52中の圧力波の伝搬速度をVXLPEとすると、【0029】
【数4】

【0030】となる。なお、dは絶縁体層52の厚さである。空間電荷に対応した電気信号が電流波形として測定できる時間tは、圧力波が電力ケーブル50に到達して導体51側に通り抜けるまでの間であるから、【0031】
【数5】

【0032】となる。この間に別の圧力波が絶縁体層52中を伝搬すると、それにより発生した電気信号が第1圧力波による信号波形に重畳されてしまうので、2つの圧力波伝搬部材22A、22Bおよび圧力波吸収部材23の大きさはtB、tCが式(5)の範囲外に納まるように設計しなければならない。
【0033】一方、平板状の圧電素子21を図3に示すような配列にすると、1つの圧電素子21の中央部O点から発生した圧力波と、端部X点から発生した圧力波とでは、電力ケーブル50の中心までの各到達距離L1、L2、即ち、中央部O点から発生した圧力波の到達時間t1、端部X点から発生した圧力波の到達時間t2が異なることになる。この到達時間の差Δtは、【0034】
【数6】

【0035】なので、1つの圧電素子21の幅Wが大きくなるほど、また、1つの圧電素子21から電力ケーブル50の中心までの距離が遠くなるほど大きくなる。したがって、Δtが大きくなると、信号波形の半値幅が大きくなり位置分解能が低くなるので、圧電素子21の幅Wは位置分解能を損なわないように設計しなければならない。
【0036】信号検出手段3は図1に示すように、主にコンデンサC1および検出抵抗R1から構成され、電力ケーブル50の導体51の一端にコンデンサC1が接続され、このコンデンサC1に検出抵抗R1が接続され、この検出抵抗R1に電力ケーブル50の外部遮蔽層53が接続されている。また、検出抵抗R1と外部遮蔽層53との接続点はアースに接続され、外部遮蔽層53およびアース間には圧電素子21が接続されている。なお、電力ケーブル50の導体51の他端には、電力ケーブル50に電荷を誘起する直流発生器10が接続されている。
【0037】測定手段4は、プリアンプ41およびオシロスコープ42から成り、プリアンプ41の一方の入力側はコンデンサC1と検出抵抗R1との間に接続され、他方の入力側は検出抵抗R1とアースとの間に接続されている。このプリアンプ41の出力側はオシロスコープ42に接続されている。
【0038】このように構成された空間電荷測定装置1の測定動作について説明する。なお、圧電素子21はセラミック、圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23はアルミニウム、第1の反射抑制部材25および第2の反射抑制部材26は鉛を用いるものとし、また、各反射抑制部材25、26の圧電素子21、圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23との各密着面にはシリーンオイルが塗布されているものとする。
【0039】まず、直流発生器10で電力ケーブル50の導体51および外部遮蔽層53間に直流電圧を印加すると、図4に示すように、外部遮蔽層53に正の表面電荷が誘起され、導体51側に負の表面電荷が誘起される。次に、電力ケーブル50にパルス電圧発生器24でパルス電圧を印加して圧電素子21から圧力波を発生させると、圧電素子21が円弧状に配設されていることから、圧力波伝搬部材22における圧力波の伝搬経路が音響レンズの役目を果たすので、圧力波強度が増幅される。この強度が増幅された圧力波は表面電荷が誘起された導体51および外部遮蔽層53に伝搬するので、この圧力波により急峻に動かされた外部遮蔽層53側の正の表面電荷と導体51側の負の表面電荷に応答した変位電流が、外部遮蔽層53と導体51との間に接続された検出抵抗R1に流れるので、信号検出部4のオシロスコープ42で観測することができる。即ち、検出抵抗R1で検出された変位電流は、信号検出部4のオシロスコープ42に図4(b)に示すような波形となって現れる。なお、図4(a)に示すように、この検出電流を信号処理することにより波形が明確になる。
【0040】このように、導体51側の負の表面電荷に基づく変位電流を検出することができたことから、圧電素子21から発生した圧力波が導体51にまで伝搬していたことが確認できた。また、上述した電荷測定においては、絶縁体層52には空間電荷が存在しないことが確認できた。
【0041】この際、圧電素子21と圧力波伝搬部材22との間隙に音響インピーダンスが近い第1の反射抑制部材25が、圧電素子21と圧力波吸収部材23との間隙に音響インピーダンスが近い第2の反射抑制部材26がそれぞれ充填されているので、セラミックおよびアルミニウムに比べて約5桁小さい音響インピーダンス(図5)の空気の介在を防止することができる。これにより、圧力波の強度の低下を抑制し、また、多重反射を抑制することができるので、電力ケーブル50のケーブルシース54や外部遮蔽層53を除去することなく、非破壊でケーブル絶縁体52中の空間電荷分布を測定することができる。さらに、各反射抑制部材25、26の圧電素子21、圧力波伝搬部材22および圧力波吸収部材23との各密着面にシリーンオイルが塗布されているので、インピーダンス不整合がさらに改善される。
【0042】なお、本発明の空間電荷測定装置における好ましい実施の形態例においては、平板状の圧電素子が用いられていたが、これに限らず、圧電素子自体を円弧状に加工したものを用いてもいいのは言うまでもない。
【0043】また、本発明の空間電荷測定装置における好ましい実施の形態例においては、圧力波発生手段が扇型に形成されていたが、これに限らず、図6に示すように、圧電素子210を円筒状に形成させ、この両面に円筒状に形成させた圧力波伝搬部材220および圧力波吸収部材230を配設してもよい。これにより、電力ケーブル50の外周を圧力波発生手段200で覆うことができ測定部を拡大できるので、測定感度の向上を図れる。また、図7に示すように、扇型に形成された圧力波発生手段2を電力ケーブル50の一部位の外周をすべて覆うように円筒状に配設してもよい。これにより、分割可能に電力ケーブル50の外周を覆うことができるので、測定感度の向上を図れると共に作業効率を向上できる。
【0044】さらに、本発明の空間電荷測定装置における好ましい実施の形態例においては、圧力波伝搬部材を2分割可能に一体化させていたが、これに限らず、分割数は被測定電力ケーブルのケーブシースの曲率半径に応じて増やしてもよい。これにより、1つの装置で、曲率半径の異なる複数の被測定電力ケーブルを、シースや遮蔽層を除去することなく、非破壊でケーブル絶縁体中の空間電荷分布を測定することが可能になる。
【0045】次に、以下のような条件で、平板電極を用いた予備実験を行い、圧電素子で発生する圧力波の波形を観測した。
【0046】実験方法は図8に示すように、直径30mm、厚さ2mmの円板状のセラミックの圧電素子101を上下からアルミニウム電極102、103で厚さ方向に挟み込み、直径30mm、厚さ52μmのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)シート104をアルミニウムの圧力波伝搬部材105の下部に配置し、このPVDFシート104の下部にPMMA(ポリメチルメタクリレート)の圧力波吸収部材106を配置した。また、これらの積層体の各部材を圧接させるために、アルミニウム電極102の上部に直径30mm、重さ1Kgの重錘107を載せた。
【0047】このような状態で、アルミニウム電極102、103間にパルス電圧を印加し、圧電素子101で発生する圧力波の波形をPVDFシート104で観測した。
[実験1]圧電素子101と、アルミニウム電極102、103との間に、鉛の反射抑制部材やシリコーンオイルを挿入せず、圧電素子101と、アルミニウム電極102、103とを直接的に密接して測定した。
【0048】測定結果は図9(b)に示すように、後述するシリコーンオイルを圧電素子101の両面に塗布した場合(図9(c))に比べて、圧力波強度が約10分の1になり、波形が乱れることがわかった。これは、圧電素子101や、アルミニウム電極102、103の界面が平らな面といえども数μmオーダーの凹凸が存在すると考えられるので、この界面に微小な隙間が生じるからである。この隙間に空気が介在すると、図5に示すように、空気の音響インピーダンスがセラミックやアルミニウムに比べて約5桁小さくなるので、圧力波はこの界面でほとんど反射してしまうことになる。したがって、外部に現れる圧力波強度は小さくなり、また、多重反射の影響を受けることになる。
[実験2]圧電素子101と、アルミニウム電極102、103との間に、シリコーンオイルを挿入し、圧電素子101と、アルミニウム電極102、103とを間接的に密接して測定した。
【0049】測定結果は図9(c)に示すように、隙間にシリコーンオイルが入るので、インピーダンス不整合が若干改善され、圧力波強度が大きくなることがわかった。しかしながら、6.8μsの正極性、7.2μsの負極性のピークのように反射の影響が見られる。
[実験3]圧電素子101と、アルミニウム電極102、103との間に、鉛板の反射抑制材とシリコーンオイルとを挿入し、圧電素子101と、アルミニウム電極102、103とを間接的に密接して測定した。
【0050】測定結果は図9(d)に示すように、圧力波強度は増し、正負一対のピーク以外には反射波がほとんど見られなくなった。
【0051】なお、実験1〜3とは別に、圧接強度を弱めたり、シリコーンオイルを塗布せずに鉛板のみを挿入して測定実験を試みたが、何れの場合でも発生する圧力波強度が弱く、反射の影響が見られた。
【0052】これらのことから、セラミックの圧電素子と、アルミニウムの圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材との各間隙を埋めて反射を抑制するには、金属の中でも比較的柔らかく、セラミックおよびアルミニウムと音響インピーダンスが近い鉛を、シリコーンオイルを塗布して用いることが有効であることがわかった。
【0053】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明の空間電荷測定装置によれば、圧電素子を測定ケーブルの外周に同軸的に円弧状で配設するために生じる当該圧電素子と、圧力波伝搬部材および圧力波吸収部材との各間隙に反射抑制部材を充填することにより、かかる間隙における空気の介在を防止することができるので、圧力波の強度の低下を抑制し、また、多重反射を抑制することができる。これにより、ケーブルのシースや外部半導電層を除去することなく、非破壊で一定面積のケーブル絶縁体中の空間電荷分布を測定できるようになるので、異物、欠陥部を検出することが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】昭和電線電纜株式会社
【出願日】 平成11年7月28日(1999.7.28)
【代理人】 【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【公開番号】 特開2001−41989(P2001−41989A)
【公開日】 平成13年2月16日(2001.2.16)
【出願番号】 特願平11−213742