トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置
【発明者】 【氏名】佐藤 祐樹

【氏名】戸田 昭彦

【要約】 【課題】微小領域においても流体の流れに影響を与えずに、精度良く直接観測可能な流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置を提供する。

【解決手段】流体中にトレーサを導入して前記流体の流動挙動を光学的に観測する方法であって、前記トレーサとして、蛍光物質12が封入されたマイクロカプセル10を用いる。流体観測装置は、マイクロカプセル10が導入された被観測流体を導く光学セルと、光を出射する光源と、マイクロカプセル10からの蛍光を適当な倍率で拡大する顕微鏡と、蛍光を撮像するビデオカメラと、光学セルとビデオカメラの間に配置され、光源からの出射光を光学セルに導くビームスプリッタ、および光源からの出射光の波長の光を除去する光学フィルターなどからなる光学部材などにより構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】流体中にトレーサを導入して前記流体の流動挙動を光学的に観測する方法であって、前記トレーサとして、蛍光物質が封入されたマイクロカプセルを用いる流体の流動挙動の観測方法。
【請求項2】前記マイクロカプセルの形状が、実質的に球状である請求項1記載の流体の流動挙動の観測方法。
【請求項3】前記マイクロカプセルの粒径が、0.1〜100μmの範囲内である請求項2記載の流体の流動挙動の観測方法。
【請求項4】前記蛍光物質が有機物である請求項1〜3のいずれかに記載の流体の流動挙動の観測方法。
【請求項5】前記マイクロカプセルが、前記蛍光物質と前記蛍光物質を溶解または分散させる媒体を含む請求項1〜4のいずれかに記載の流体の流動挙動の観測方法。
【請求項6】前記媒体が液体の場合には、前記マイクロカプセルが前記蛍光物質と前記媒体を被覆する壁材をさらに含む請求項5記載の流体の流動挙動の観測方法。
【請求項7】前記媒体もしくは前記壁材が有機高分子である請求項5または6記載の流体の流動挙動の観測方法。
【請求項8】流体の流動挙動を光学的に観測する流体観測装置であって、蛍光物質が封入されたマイクロカプセルが導入された被観測流体を導く光学セルと、光を出射する光源と、光を受光して受光信号を出力する受光部と、前記光源からの出射光を前記被観測流体中の前記マイクロカプセルに導き、前記マイクロカプセル中の蛍光物質から発せられる蛍光を前記受光部に結合させる光学部材とを有する流体観測装置。
【請求項9】前記光源からの出射光の波長が、前記蛍光物質の吸収領域の波長である請求項8記載の流体観測装置。
【請求項10】前記受光部が撮像部である請求項8または9記載の流体観測装置。
【請求項11】前記受光部が電荷結合型撮像素子である請求項10記載の流体観測装置。
【請求項12】前記光学部材が、前記光学セルと前記受光部の間に配置され、前記光源からの出射光の波長の光を除去する光学フィルターを含む請求項8〜11のいずれかに記載の流体観測装置。
【請求項13】前記流体の流動挙動を光学的に観測する流体観測装置には、前記受光部から出力された受光信号を処理する信号処理部をさらに有する請求項8〜12のいずれかに記載の流体観測装置。
【請求項14】前記信号処理部において、画像処理を行う請求項13記載の流体観測装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置に関し、特に機械部品や機械装置などと接触して使用される気体あるいは液体などの流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】大型の飛行機や小型のハードディスクヘッドなどの高速移動体、あるいはポンプや各種バルブなどの流体輸送設備や輸送機械などの他、例えばエアコンなどの熱媒体として、あるいは油圧機器などの作動流体として、さらには機械そのものの潤滑剤として、さまざまな形態で機械装置は流体と関わり合いをもって使用されている。そのため、これらの機械装置の性能、効率および信頼性向上のため、流体の流れを解析することがしばしば求められる。特に近年では機械装置の小型化が進み、数μmから数mm程度の微小領域での流動観察、計測手法といった観測方法の必要性が高まってきている。
【0003】従来技術において、流体の流動挙動を直接観測する方法として、例えば多数の短い糸(タフト)のなびき具合から流れの方向を知るタフト法、物体表面に油と顔料の混合物を塗布して、流れによって現れるすじ模様から流れの状態、方向、速度を知る油膜法、流体中にその流体とともに運動する微粒子を混ぜて、その動きを追跡して流れを観測する方法であるトレーサ法、光学的方法として、密度の変化に基づく屈折率の変化を利用したシュリーレン法の他、ホログラフ法およびレーザスペックル法など、様々な方法が使用されている。
【0004】上記の方法の中で、トレーサ法は、対象流体が液体もしくは気体のどちらの場合でも使用することができ、さらに適用可能な流速の範囲が広いため、流体の流動挙動を観測する方法として、最も広く一般的に使用されている方法の1つである。その一方で、上記トレーサ法を適用する際に、最も注意すべき点は、導入したトレーサが、対象とする流体の流れを乱すおそれがないかどうかという点である。トレーサが流体の抵抗となり、流れを乱す場合には、トレーサ法は適用できない。
【0005】トレーサが流体の抵抗となる物理的な作用は、トレーサに作用する浮力、重力、遠心力などである。ここで、用いるトレーサおよび観測対象である流体の密度をそれぞれρt およびρf とし、トレーサを球とみなしてその直径をdとし、流体の粘性抵抗(粘度)をηとすると、トレーサが上記物理的作用によって、流体の流れと異なる方向に向かう速度成分UP は、(1−ρt /ρf )と(d2 /η)との積で表される。すなわち、(ρt /ρf )を1に近づければ(1−ρt /ρf )が零に近づき、UP が零に近似できることから、対象とする流体の流れを乱すことはなく、トレーサ法を適用することができる。あるいは(d2 /η)を零に近づくほど小さくしても同様に、UP が零に近似できることから、導入したトレーサが、対象とする流体の流れを乱すことはなく、トレーサ法を適用することができる。
【0006】上記のような原則に基づき、トレーサおよび流体の密度ρt およびρf をできるだけ等しくするように、トレーサには、煙や染料のように、粒径の非常に小さいものが選択されて、使用されている。また、泡や特別な中空のガラス玉などを用いることにより、トレーサの密度を小さくして、トレーサおよび流体の密度ρt およびρf をできるだけ等しくすることもある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来の泡などを用いたトレーサ法では、泡を発生するための特別な装置が必要になるだけでなく、泡は壊れやすく存在しうる時間が限られており、また、中空のガラス玉などの製作も容易ではないことから、現実にはトレーサの粒径を小さくすることで、流れに及ぼす影響を少なくする場合が多い。
【0008】また、従来のトレーサ法は、流体中のトレーサ表面で反射、散乱する光を撮影し観測するものであったが、例えば機械部品のごく表面における流体、あるいは細管等の小さな間隙における流体の流動挙動の観測等、数μmから数mm程度の微小領域における流体の流動挙動の観測に、従来技術であるところのトレーサ法を適用する場合には、光学的に拡大して撮影するため、撮像装置に入射するトレーサからの反射光強度は減少することから、ノイズ光であるトレーサ以外の部分からの反射光とのコントラストが低下し、その結果、当該観測は不可能か、あるいは観測が行えたとしても、その測定精度は非常に低いものであった。
【0009】上記の問題点を解決する方法として、従来技術において、既存の蛍光物質をトレーサとして使用し、適切な光学フィルターを用いて、トレーサからの蛍光だけを撮影し、前記のノイズの原因となる反射光を分離する方法が知られている。しかしながら、こうした既存の蛍光物質は一般に無機物であるため、その密度は一般的な流体に比べて非常に大きいことから、上記のように流れに及ぼす影響が無視できない。
【0010】また、特に、微小領域の観測では、既存の蛍光物質の粒径では、大きすぎるため、既存の蛍光物質をトレーサとして使用する場合には、その粒径を小さくして使用する必要があった。しかしながら、蛍光物質の形状と大きさを揃えて、微細に粉砕することは非常に困難であり、その結果、既存の蛍光物質を観測用トレーサとして使用する従来技術においては、微小領域の流れを観測することは不可能であった。
【0011】さらに、既存のさまざまな蛍光物質をそのまま流体中に導入して使用する場合、流体中の他の物質と接触することによって生じる蛍光物質の発光強度の低下や、蛍光物質が水や油などの流体へ溶解してしまったり、化学反応を起こしてしまったりするという問題もあった。
【0012】上記のように、従来技術においては、数μmから数mm程度の微小領域の流体の流動挙動を精度良く直接観測するトレーサ法がなく、必要に応じて、スケールアップしたモデルを製作するなどして観測されていた。
【0013】本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、従って、本発明は、微小領域においても流体の流れに影響を与えずに、精度良く直接観測可能な流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の流体の流動挙動の観測方法は、流体中にトレーサを導入して前記流体の流動挙動を光学的に観測する方法であって、前記トレーサとして、蛍光物質が封入されたマイクロカプセルを用いる。
【0015】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法によれば、蛍光物質をマイクロカプセル化し、その蛍光物質が封入されたマイクロカプセルを流体中に導入し、その運動を観測することで、蛍光物質が流体中の他の物質と、接触あるいは化学反応することによって生じる発光強度の低下などの問題を防止でき、精度良く流体の流動挙動を観測することができる。
【0016】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法は、好適には、前記マイクロカプセルの形状が、実質的に球状である。これにより、被観測領域の流路を構成する材料との吸着、エッジ部にトレーサが詰まるという、観測を実施する際の問題を防止することができる。また、マイクロカプセルを球状にすることで、流体の流れに対し抵抗となり、観測精度を低下させる原因となる、トレーサに作用する力を、正確に見積もることができることから、観測誤差を正確に見積もった観測をすることができる。
【0017】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法は、好適には、前記マイクロカプセルの粒径が、0.1〜100μmの範囲内である。マイクロカプセルの粒径は、被観測領域のスケールに応じて決定されるが、上記範囲内の粒径であれば、微小領域における流体の流動挙動の観測に、トレーサとして使用するのが適当であり、粒径が0.1μm以下では、マイクロカプセル1個当たりの蛍光強度が小さく、観測が困難であり、粒径が100μm以上では上述した式におけるdが大きくなってしまい、その結果、Up が零に近似できなくなり、流体の流れを乱すおそれがあることから、微小領域における流体の流動挙動の観測に用いるには、適当でないからである。
【0018】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法は、好適には、前記蛍光物質が有機物である。蛍光物質に密度の小さい有機蛍光物質を用いることで、トレーサによる被観測流体の流れの乱れを防止でき、微小領域における流体の流動挙動を精度良く観測することができる。
【0019】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法は、好適には、前記マイクロカプセルが、前記蛍光物質と前記蛍光物質を溶解または分散させる媒体を含む。さらに好適には、前記媒体が有機高分子である。これにより、蛍光物質が流体中の他の物質と接触する事によって生じる蛍光物質の発光強度の低下、蛍光物質の流体中への溶解または流体との化学反応などを防止でき、十分な発光を行う状態が保持される。保持する媒体が、有機高分子である合成樹脂である場合には、この媒体をそのままマイクロカプセルの壁材として、使用することが可能である。
【0020】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法は、好適には、前記媒体が液体の場合には、前記マイクロカプセルが前記蛍光物質と前記媒体を被覆する壁材をさらに含む。さらに好適には、前記壁材が有機高分子である。これにより、蛍光物質が流体中の他の物質と接触する事によって生じる蛍光物質の発光強度の低下、蛍光物質の流体中への溶解または流体との化学反応などを防止でき、十分な発光を行う状態が保持される。この場合、壁材として、有機高分子である合成樹脂を用いることにより、一般的な手法により、上記マイクロカプセルを簡易に製造することができる。
【0021】さらに、上記の目的を達成するため、本発明の流体観測装置は、流体の流動挙動を光学的に観測する流体観測装置であって、蛍光物質が封入されたマイクロカプセルが導入された被観測流体を導く光学セルと、光を出射する光源と、光を受光して受光信号を出力する受光部と、前記光源からの出射光を前記被観測流体中の前記マイクロカプセルに導き、前記マイクロカプセル中の蛍光物質から発せられる蛍光を前記受光部に結合させる光学部材とを有する。
【0022】上記の本発明の流体観測装置によれば、光源からの出射光が、光学部材を通して、被観測流体中のマイクロカプセルに照射され、当該光を吸収したマイクロカプセル中の蛍光物質により蛍光が発せられ、当該蛍光が光学部材により、受光部に結合され、受光部から、受光信号が出力されることにより、流体中のマイクロカプセルの挙動を観測することができる。
【0023】上記の本発明の流体観測装置は、好適には、前記光源からの出射光の波長が、前記蛍光物質の吸収領域の波長である。これにより、蛍光物質の電子状態を励起することができ、励起された電子が基底状態に戻るときに発せられる蛍光が受光部に結合することにより、流体中のマイクロカプセルの挙動を観測することができる。
【0024】上記の本発明の流体観測装置は、好適には、前記受光部が撮像部である。さらに好適には、前記受光部が電荷結合型撮像素子である。これにより、蛍光が撮像部により電気信号に変換され、走査によって、電気信号(受光信号)となって取り出されることにより、流体中のマイクロカプセルの挙動を撮像することができる。また、他の撮像素子などによっても、蛍光が電気信号に変換され、取り出されることにより、流体中のマイクロカプセルの挙動を撮像することができる。
【0025】上記の本発明の流体観測装置は、好適には、前記光学部材が、前記光学セルと前記受光部の間に配置され、前記光源からの出射光の波長の光を除去する光学フィルターを含む。これにより、受光部には、蛍光のみが結合されることになり、前記光源からの出射光が受光部に結合されることによる、出射光とのコントラストの低下を防止して、微小領域においても、マイクロカプセルの挙動を正確に観測することができる。
【0026】上記の本発明の流体観測装置は、好適には、前記流体の流動挙動を光学的に観測する流体観測装置には、前記受光部から出力された受光信号を処理する信号処理部をさらに有する。さらに好適には、前記信号処理部において、画像処理を行う。これにより、受光部から出力された受光信号が信号処理部により、所定の規則で、水平、垂直に走査して並べられていき、光学像の画像処理が行われることにより、マイクロカプセルの挙動を観測することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置について、図面を参照して下記に説明する。
【0028】図1は本実施形態に係る流体の流動挙動の観測方法にトレーサとして用いる蛍光物質が封入されたマイクロカプセルの断面図である。マイクロカプセル10の表面は、例えば樹脂などの壁材11で覆われており、その中に、例えば有機物の蛍光物質12および蛍光物質12を溶解、分散させる媒体13が封入されている。上記のマイクロカプセル10の形状は、後述の実施例で示す製造方法により、実質的に球状となっており、粒径は、0.1〜100μmの範囲内である。
【0029】有機の蛍光物質12としては、すでに市販されているものが多数あるため、目的とする蛍光波長および密度などに応じて任意の物質を選択して使用することができる。ここで、観測の感度の面から、発光量子収率の高い蛍光物質12を用いることが好ましい。同様に、マイクロカプセル10に占める蛍光物質12の割合は、高い程マイクロカプセル1個当たりの発光量が多くなるため好ましい。
【0030】蛍光物質12を保持する媒体13が、樹脂である場合には、この媒体13をそのままマイクロカプセル10の壁材11として、使用することが可能である。この場合、樹脂は、内部で蛍光物質12が十分な強度で発光し、蛍光物質12を励起する出射光および蛍光を透過する程度の透過性を有し、流体中で容易に破壊しなければ、任意のものを用いることができる。また、樹脂は、単一成分あるいは、複数の成分を組み合わせて使用することができる。
【0031】蛍光物質12を保持する媒体13が、液体である場合には、壁材11として、例えば有機高分子である合成樹脂を用いる必要がある。媒体13である液体は、内部で蛍光物質12が十分な強度で発光するという条件を満たせば、特に制限はない。水、アルコールなどが代表的なものであり、単独あるいは複数の溶媒を組み合わせて使用することができる。なお、壁材11としての樹脂についての条件は、上記に述べた通りである。
【0032】上記のマイクロカプセル10の粒径を、0.1〜100μmの範囲内としたのは、マイクロカプセル10の粒径は、被観測領域のスケールに応じて決定されるが、上記範囲内の粒径であれば、微小領域における流体の流動挙動の観測に、トレーサとして使用するのが適当であり、粒径が0.1μm以下では、マイクロカプセル1個当たりの蛍光強度が小さく、観測が困難であり、粒径が100μm以上では大きすぎ、上述した式における粒径dが大きくなってしまい、その結果、Up が零に近似できなくなり、流体の流れを乱すおそれがあることから、微小領域における流体の流動挙動の観測に用いるには、適当でないからである。
【0033】上記の蛍光物質12が封入されたマイクロカプセル10を流体中にトレーサとして導入することにより、蛍光物質12が流体中の他の物質と接触することによって生じる発光強度の低下、あるいは蛍光物質の流体中への溶解または流体との化学反応などを防止でき、十分な発光を行う状態が保持され、精度良く流体の流動挙動を観測することができる。
【0034】また、蛍光物質12に密度の小さい有機蛍光物質を用いることで、トレーサとなるマイクロカプセル10による被観測流体の流れの乱れを防止でき、微小領域における流体の流動挙動を精度良く観測することができる。
【0035】マイクロカプセル10の形状を実質的に球状とすることにより、被観測領域の流路を構成する材料との吸着、エッジ部にトレーサが詰まるという、観測を実施する際の問題を防止することができる。また、マイクロカプセル10を球状にすることで、流体の流れに対し抵抗となり、観測精度を低下させる原因となる、トレーサとなるマイクロカプセル10に作用する力を、正確に見積もることができることから、観測誤差を正確に見積もった観測をすることができる。
【0036】図2は、本発明の実施形態に係る流体観測装置の構成図である。本発明の実施形態に係る流体観測装置20は、マイクロカプセル10が導入された被観測流体を導く光学セル23と、光を出射する光源21と、マイクロカプセル10からの蛍光を適当な倍率で拡大する顕微鏡25と、蛍光を撮像するビデオカメラ(受光部および信号処理部)26と、光学セル23とビデオカメラ26の間に配置され、光源21からの出射光を光学セル23に導くビームスプリッタ22、および光源21からの出射光の波長の光を除去する光学フィルター24などからなる光学部材などにより構成されている。
【0037】上記の本発明の実施形態に係る流体観測装置20において、光源21としては、前記蛍光物質12の吸収領域の波長の光を出射するものを用いる。なお、光源21としては、使用する蛍光物質12の種類や濃度、蛍光物質12を保持する媒体13、およびマイクロカプセル10の壁材11の選択により、吸収光量の大きいマイクロカプセルをトレーサとして使用する場合には、エネルギー密度の高い光源であるレーザ光源を使用することが好ましい。
【0038】上記構成において、ビデオカメラ26でのマイクロカプセル10からの蛍光を撮像の際に、光源21からの出射光をも撮像してしまうことによる、出射光とのコントラストの低下を防止して、光源21からの出射光の波長の光を除去する光学フィルター24が配置されている。従って、当該光学フィルター24によって、光源21からの出射光の波長の光を容易に除去するためには、光源としては、水銀ランプやレーザー光源のように、単一波長の光を発する光源を用いることが好ましい。
【0039】上記構成の流体観測装置20において、光源21からの出射光が、ビームスプリッタ22により反射され、光学セル23を通過して、被観測流体中のマイクロカプセルに照射されることにより、当該光を吸収したマイクロカプセル中の蛍光物質により蛍光が発せられ、当該蛍光がビームスプリッタ22を通過し、光学フィルター24を通過して、顕微鏡25により適当な倍率に拡大され、ビデオカメラ26に結合される。
【0040】蛍光がビデオカメラ26の中の撮像部である、例えばCCD(Charge CoupledDevice 、電荷結合型撮像素子) により、電気信号に変換され、水平垂直の走査によって1次元の電気信号(受光信号)となって取り出され、当該電気信号がビデオカメラ26の中の信号処理部により、所定の規則で、水平、垂直に走査して並べられていき、光学像の画像処理が行われることにより、流体中のマイクロカプセル10の挙動を観測することができる。上記蛍光を受光するには、CCD以外の撮像管、あるいはその他の受光素子を用いることも可能である。
【0041】本発明の流体観測装置20によれば、上記のトレーサとしてマイクロカプセル10を用いた流体の流動挙動を簡易な構成で、精度良く観測することができる。
【0042】本発明に係る流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置の実施形態は、上記の説明に限定されない。例えば、マイクロカプセル10の製造方法は、限定されるものではなく、例えば、噴霧乾燥法やコアセルベーション法などの一般的な手法を用いてマイクロカプセル10を製造することができる。また、マイクロカプセル10の構成物質として、本実施形態における構成物質以外の構成物質、例えば、樹脂に対する安定化剤、補強材、あるいは蛍光物質12に対する安定化剤、増感剤等を加えることもできる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0043】
【実施例】以下に、本発明に係る流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置についての実施例を、図面を参照して下記に説明する。
【0044】上記のマイクロカプセル10を一般的な方法の1つを用いて製造した実施例について説明する。まず、500mlのセパラブルフラスコ中に、蒸留水200mlおよびドデシル硫酸ナトリウム(関東化学製)2.0gを加えて、ウォーターバスを用いて液温を40℃に保ちつつ、撹拌羽根を用いて、十分溶解させた。
【0045】次に、蛍光物質12として、有機蛍光物質であるクマリン6(アクロス社製)0.2gを溶解させたメチルメタクリレート(関東化学製)100gを上記セパラブルフラスコ中に投入し、撹拌を行って、蛍光物質含有メチルメタクリレートを水中に乳化、分散させた。
【0046】次に、完全に乳化状態になった後、重合開始剤である過硫酸アンモニウム(東京化成製)0.2gおよび亜硫酸水素ナトリウム(東京化成製)0.2gを徐々に投入した。
【0047】次に、すべての重合開始剤を投入した後、ウォーターバスの温度を60℃まで上げ、3時間重合反応を行なった。
【0048】次に、セパラブルフラスコをウォーターバスから外して、室温まで冷却後、乳化液をミニスプレードライヤーB- 191(柴田科学機器工業製)を用いて、噴霧乾燥することにより、図1に示す構造のクマリン6含有ポリメチルメタクリレートのマイクロカプセル10を製造することができた。
【0049】図3は、上記の製造方法により製造されたマイクロカプセル10を、走査電子顕微鏡を用いて、撮像した写真である。図3に示すマイクロカプセル10の平均粒径は、レーザー粒度測定器を用いて、求めたところ、13μmであった。
【0050】図4は、上記の本実施形態に係る流体観測装置20を用いて撮像した流体の流動挙動の観測条件を説明するための説明図である。本実施例では、図4に示すように、微小な複列の溝30、31内における流体中にマイクロカプセル10を導入して流体の流動挙動を観測した。図4において、複列の溝の溝幅は0.2mm、マイクロカプセル10の平均粒径は10μm、溝31内の流体は流速約1m/secで流れており、溝30内の流体は静止しているため流速は0m/secである。なお、本実施例では、流体として、工業用潤滑油であるダフニースーパーマルチオイル♯22(出光興産)を用いた。
【0051】上記の観測条件の下で、実際に本実施形態に係る流体観測装置20を用いて撮像した流体の流動挙動の観測結果を図5に示す。
【0052】図5では、微小領域における流体中のマイクロカプセル10からの蛍光がコントラスト良く撮像されており、これにより、微小領域の流体の流動挙動を精度良く観測することができることがわかる。
【0053】図5(a)は、流体の流速が約1m/secの溝31内、および流体が静止している溝30内に、それぞれマイクロカプセル10を導入した時点における流体の流動挙動の観測結果である。図5(a)によれば、溝31内および溝30内の流体中のマイクロカプセル10の発光強度は、図5(a)の図面上中央部が最も強くなっている。
【0054】図5(b)は、図5(a)から、0.5×10-3秒後の観測結果を示したものである。図5(b)では、図5(a)と比較して、溝30内の流体中のマイクロカプセル10の発光位置に変化は見られなく、流体が静止していることがわかるが、溝31内の流体中のマイクロカプセル10の発光位置は、特に最も発光強度の高い部分を見ればわかるように、図5(a)と比較して、図面上左に移動しており、流体が流動している様子を示している。
【0055】図5(c)は、図5(b)から、0.5×10-3秒後の観測結果を示したものである。図5(c)においても同様に、図5(b)と比較して、溝30内の流体中のマイクロカプセル10の発光位置に変化は見られなく、流体が静止していることがわかるが、溝31内の流体中のマイクロカプセル10の発光位置は、特に最も発光強度の高い部分を見ればわかるように、図5(b)と比較して、図面上さらに左に移動しており、流体が流動している様子を示している。なお、被観測流体としては、上記のほか、蛍光物質12を励起する出射光および蛍光を透過する程度の透過性を有する流体であれば、任意のものを用いることができる。
【0056】
【発明の効果】本発明の流体の流動挙動の観測方法によれば、微小領域における流体の流動挙動を観測する場合でも、トレーサとして使用するマイクロカプセルが、流体の挙動を乱すことはないため、精度良く観測することができる。また、マイクロカプセルに封入する蛍光物質の種類や量などを制御することにより、マイクロカプセル1個当たりの発光量を大きくできるため、蛍光を拡大して撮像する場合でも、蛍光以外の反射光などとのコントラストが低下することもなく、精度良く、流体の流動挙動を観測することができる。さらに、蛍光物質をマイクロカプセルに封入することにより、蛍光物質が流体中の他の物質と、接触あるいは化学反応することによって生じる発光強度の低下などの問題を防止でき、精度良く、流体の流動挙動を観測することができる。
【0057】本発明の流体観測装置によれば、上記のトレーサとしてマイクロカプセルを用いた流体の流動挙動を簡易な構成で、精度良く観測することができる。
【出願人】 【識別番号】000004385
【氏名又は名称】エヌオーケー株式会社
【出願日】 平成12年1月14日(2000.1.14)
【代理人】 【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
【公開番号】 特開2001−194379(P2001−194379A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−10231(P2000−10231)