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【発明の名称】 細胞機能測定用容器、細胞機能測定用キット及び細胞機能測定方法
【発明者】 【氏名】稲垣 孝司

【氏名】小林 幸司

【氏名】阿部 佳子

【氏名】栗山 澄

【要約】 【課題】従来法より操作が簡単で、危険性がなく、高精度に細胞機能を測定しうる細胞機能測定用容器、細胞機能測定用キット及び細胞機能測定方法を提供する。

【解決手段】血液細胞が産生する生理活性物質を測定する際に用いられる細胞機能測定用容器であって、予め容器中のエンドトキシンの量が上記生理活性物質の測定値に影響を与えないように規定された容器内に、血液細胞に生理活性物質を産生させるのに十分量のエンドトキシンが、採取した血液と接触可能な状態で収納されており、該エンドトキシンの血液と接触された際の全液中の濃度が0.6〜1000EU/mlとなるようにされてなることを特徴とする細胞機能測定用容器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 血液細胞が産生する生理活性物質を測定する際に用いられる細胞機能測定用容器であって、予め容器中のエンドトキシンの量が上記生理活性物質の測定値に影響を与えないように規定された容器内に、血液細胞に生理活性物質を産生させるのに十分量のエンドトキシンが、採取した血液と接触可能な状態で収納されており、該エンドトキシンの血液と接触された際の全液中の濃度が0.6〜1000EU/mlとなるようにされてなることを特徴とする細胞機能測定用容器。
【請求項2】 血液細胞が産生する生理活性物質を測定する際に用いられる細胞機能測定用容器であって、予め容器中のエンドトキシンの量が、測定しようとする液量に等しい水を該容器内に採取して抽出を行ったときの抽出液中の濃度として、0.5EU/ml以下とされている容器内に、血液と接触された際の全液中の濃度が0.6〜1000EU/mlとなるように、採取した血液と接触可能な状態で、エンドトキシンが収納されてなることを特徴とする細胞機能測定用容器。
【請求項3】 請求項1または2記載の細胞機能測定用容器であって、該容器は、一端が開口し他端が閉塞した有底管体からなり、該容器の開口部には血液試料採取時に取り外されることなく密栓されている栓体が取り付けられていることを特徴とする細胞機能測定用容器。
【請求項4】 請求項3記載の細胞機能測定用容器であって、該容器内が減圧にされていることを特徴とする細胞機能測定用容器。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞機能測定用容器と、誘導された生理活性物質の量を定量可能な試薬とを備えることを特徴とする細胞機能測定用キット。
【請求項6】 請求項2記載の細胞機能測定用容器と、容器中のエンドトキシンの量が、測定しようとする液量に等しい水を該容器内に採取して抽出を行ったときの抽出液中の濃度として、0.5EU/ml以下とされているコントロール値測定用容器と、生理活性物質を定量するための定量試薬とを備えることを特徴とする細胞機能測定用キット。
【請求項7】 請求項5または6記載の細胞機能測定用キットを利用することを特徴とする単球及びマクロファージの細胞機能測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、免疫反応や炎症反応などに関与する細胞機能を測定するための細胞機能測定用容器、細胞機能測定用キット及び細胞機能測定方法に関し、より詳細には、血液細胞が産生するサイトカインなどの生理活性物質を測定することにより細胞機能を測定するための細胞機能測定用容器、細胞機能測定用キット及び細胞機能測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】顆粒球、単球、マクロファージ、リンパ球等の白血球は、血液中や各臓器もしくは器官における炎症反応や免疫反応などの種々の生体防御反応において様々な役割を担っている。これらの細胞は、感染症、肝炎などの炎症性疾患;慢性関節リウマチや喘息などの免疫・アレルギー性疾患;癌などの様々な病態において重要な働きをしており、病態の変動と共にこれらの細胞の機能が抑制されたり、増強されたりすることが知られている。
【0003】また、これらの疾患の治療に、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫増強剤、抗癌剤等の様々な薬剤が用いられており、その際にもこれらの細胞の機能が抑制されたり、または増強されたりすることもまた知られている。そのため、各種疾患の病態や薬剤の効果あるいは副作用を把握し、治療指針を決定したり、薬剤の投与量やタイミングを決定するためには、これらの細胞の機能を調べることが重要である。
【0004】従来、病院の検査室や検査センターでは、上記のような理由から細胞機能を測定するために、顆粒球貧食機能試験、顆粒球殺菌能(活性酸素産生能)試験、リンパ球幼若化試験等が行なわれてきた。また、最近では、フローサイトメトリー装置と各種免疫担当細胞表面抗原に対する蛍光標識モノクローナル抗体を用いた表面抗原試験等が行なわれるようになってきた。
【0005】しかしながら、従来の試験法では、細胞分離、細胞培養、顕微鏡測定等の特殊な技術が要求され、測定に長時間を要し、RI施設やフローサイトメーターなどの高価な装置が必要であった。また、これらの細胞機能測定法は、主に顆粒球やリンパ球を対象にしたものであり、単球やマクロファージの機能を検査するものではなかった。
【0006】血液中の単球やこの単球が組織に出て分化、成熟したマクロファージは、食作用を介した異物排除や、抗原提示を介した免疫の成立に関与し、また、サイトカイン、プロスタグランジンなどの様々の生理活性物質を分泌することによって、炎症反応や免疫反応を調節するなど、非常に多彩な機能を持っている。そのため、単球やマクロファージは、顆粒球やリンパ球と同様に、種々の病態においても重要な働きをしており、これらの細胞の機能を調べることは非常に重要である。
【0007】特に、感染症などでは、単球やマクロファージは顆粒球やリンパ球と異なり、細胞数はあまり変動せず、その機能の増幅が主体であり、細胞機能変化を測定することはより重要である(「マクロファージ」徳永 徹著、講談社 サイエンティフィク1986年初版発行)。
【0008】腫瘍壊死因子α(以下、TNF−αという)、インターロイキン−1β(以下、IL−1βという)、インターロイキン−6(以下、IL−6という)は、モノカインと呼ばれ、血液細胞では主に、単球やマクロファージによって産生され、様々な炎症反応や免疫反応に関与するサイトカインである。
【0009】これまで、血液や血液から分離した白血球からの上記サイトカイン産生機能を調べるため種々の方法が報告されている。例えば、特表平1−503331号公報、特開平2−196961号公報、特開平3−285692号公報には、血液にリポ多糖(LPS)やレクチンを反応させ、産生誘導されたTNF−α、IL−1β等のサイトカインを測定する方法が開示されている。
【0010】また、特開平6−209992号公報、特開平7−67955号公報には、特定の表面粗さを有する高分子材料や特定の化学構造を有する高分子材料と血液を接触させ、TNF−αの産生を誘導する方法が開示されている。
【0011】特開平7−299732号公報、特開平7−151752号公報には、特定の表面粗さを有する高分子材料と血液を接触させ、TNF−αやIL−1βの産生量を測定する生体反応検査方法が開示されている。
【0012】特表平7−500905号公報には、TNF−αやIL−1βのヒト末梢血白血球からのサイトカインの産生誘導量を測定することによって、試験物質の免疫活性能力を測定する方法が開示されている。
【0013】しかしながら、従来の病院の検査室や検査センターで行なわれてきた細胞機能測定方法や上記の公開特許公報に開示の方法には、以下のような問題点があった。
【0014】すなわち、これらの試験は、何れも被験者から注射器で血液を採血後、ピペッティングなどの用手法により血液を種々の反応容器に移し変えたり、白血球などを分離するための細胞分離、機能測定のための細胞培養等の特殊な操作が必要であった。そのため、検査従事者は、血液に触れて、肝炎、AIDSなどの様々な感染症に感染する危険性があった。
【0015】また、これらの操作中に、血液試験中に種々の殺菌や埃などが混入するおそれがあり、これらの汚染物あるいは操作による物理的刺激によって、血液中の細胞が不必要に刺激され、測定結果に悪影響を及ぼすおそれもあった。
【0016】さらに、血液を採取し、特定の反応容器内において、白血球からのサイトカイン、特にTNF−α、IL−1β、IL−6の産生量を測定する従来法の他の問題として、例えば、注射器のような血液採取器や反応容器中に、もともとグラム陰性菌由来のLPSなどのエンドトキシンが混入している場合が挙げられる。エンドトキシンは、極微量で白血球からTNF−α、IL−1β、IL−6の産生を誘導するため、例えば、製造工程での微量の埃の混入、使用する洗浄液からの汚染により、少量のエンドトキシンが上記血液採取器や反応容器に混入した場合、信頼できる測定結果を得ることは不可能であった。
【0017】上述した問題のため、従来よりも操作が簡単で危険性がなく、精度の良い細胞機能測定方法が望まれている。他方、従来血中の種々の生理活性物質の測定、血液細胞の機能測定、血液細胞の表面抗原測定法において、血液抗凝固剤が用いられている。しかしながら、抗凝固剤のエンドトキシン含量には、一般的な基準はなく、注射剤として用いられる抗凝固剤について、第十三改正日本薬局方解説書「エンドトキシン試験法」にウサギの最小発熱投与量として5EU/kgを規格値の設定基準とした指針があるのみである。エンドトキシンは、グラム陰性菌の細胞壁外膜成分のリポ多糖体であり、極微量で白血球等の血液細胞を刺激して、TNF−α、IL−1β、IL−6または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子等の種々のサイトカインなど生理活性物質を産生し、発熱活性やエンドトキシンショックなどの様々な生理作用を有している(日本医学館「炎症とサイトカイン’87炎症セミナー」p103−108)。また、血液細胞から産生された上記サイトカイン等の生理活性物質は、オートクリン、パラクリンに作用し合い、ヒスタミンもしくはアラキドン酸代謝産物または、種々のサイトカインなどのさらなる産生を引き起こし、血液細胞の様々の機能を修飾したり、血液細胞表面抗原の量的、質的変化を引き起こす。従って、血液抗凝固剤がエンドトキシン含量に汚染され、しかもそのエンドトキシン含量が生理活性物質の産生を引き起こすレベルにあるならば、血中の様々の生理活性物質の測定、血液細胞の機能測定及び血液細胞の表面抗原測定を正確に行うことは不可能である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】以上のような点に鑑み、本発明者らは、WO98/07031号公報において、ヒト末梢血白血球を、0.6〜100,000EU/mlの範囲に制御したエンドトキシンを用いて刺激し、誘導されたTNF−αやIL−1β等のサイトカインを測定する方法を開示し、従来技術の欠点を解消し、操作が簡単で、危険性がなく、高精度に細胞機能を測定しうる細胞機能測定用容器、細胞機能測定用キット及び細胞機能測定方法を開示した。ところが、ヒト抹梢血白血球を、0.6〜1000EU/mlの低濃度エンドトキシンを用いて刺激した場合には、産生されるサイトカイン量はほぼプラトー(Plateau) となるが、それ以上の高濃度エンドトキシンで刺激した場合には、産生されるサイトカイン量が急激に変化する。一方エンドトキシンを細胞機能測定容器に収納する際に、その含量を極めて精度良く制御することは非常に困難である。以上から、上記高濃度エンドトキシンで刺激を行う場合には、エンドトキシン含量のわずかな誤差によって、測定値のバラツキが非常に大きくなり、測定精度が悪くなることが問題であった。
【0019】また、従来の研究では、高濃度のエンドトキシン(10,000〜100,000EU/ml)が刺激剤として用いられてきた。しかしながら、高濃度エンドトキシン刺激は、非生理的条件での試験であった。実際、グラム陰性菌感染症患者の血液中のエンドトキシン濃度は、せいぜい0.5〜5EU/mlであることが報告されている(稲田捷也:「血漿中エンドトキシン測定における界面活性剤加熱処理法の評価」、基礎と臨床p173-179、第26巻第11号、平成4年9月20日)。この様な条件では、非特異的に種々の細胞が刺激される恐れがあった。通常、エンドトキシン刺激によるTNF−αなどのサイトカインの産生は単球やマクロファージから起こると考えられている。しかし、高濃度エンドトキシン刺激では顆粒球からもTNF−αが産生されることが報告されており(Dominik B.Dubravec:「Circulating human peripheral blood granulocyte synthesize and secrete tumor necrosis factor α」,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.87, pp6758-6761, 1990)、従来の高濃度エンドトキシンを用いる測定では単球及びマクロファージに特異的な結果を得ることはできなかった。
【0020】本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来法の欠点を解決し、従来法より操作が簡単で、危険性がなく、高精度に細胞機能を測定しうる細胞機能測定用容器、細胞機能測定用キット及び細胞機能測定方法を提供することにある。特に、本発明は、血液細胞の中の単球及びマクロファージの機能を特異的に測定できる細胞機能測定用キットを提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明(以下、本発明1という)では、血液細胞が産生する生理活性物質を測定する際に用いられる細胞機能測定用容器であって、予め容器中のエンドトキシンの量が上記生理活性物質の測定値に影響を与えないように規定された容器内に、血液細胞に生理活性物質を産生させるのに十分量のエンドトキシンが、採取した血液と接触可能な状態で収納されており、該エンドトキシンの血液と接触された際の全液中の濃度が0.6〜1000EU/mlとなるようにされてなることを特徴とする細胞機能測定用容器を提供する。
【0022】また、請求項2記載の本発明(以下、本発明2という)では、血液細胞が産生する生理活性物質を測定する際に用いられる細胞機能測定用容器であって、予め容器中のエンドトキシンの量が、測定しようとする液量に等しい水を該容器内に採取して抽出を行ったときの抽出液中の濃度として、0.5EU/ml以下とされている容器内に、血液と接触された際の全液中の濃度が0.6〜1000EU/mlとなるように、採取した血液と接触可能な状態で、エンドトキシンが収納されてなることを特徴とする細胞機能測定用容器を提供する。
【0023】また、請求項3記載の本発明(以下、本発明3という)では、請求項1または2記載の細胞機能測定用容器であって、該容器は、一端が開口し他端が閉塞した有底管体からなり、該容器の開口部には血液試料採取時に取り外されることなく密栓されている栓体が取り付けられていることを特徴とする細胞機能測定用容器を提供する。
【0024】請求項4記載の本発明(以下、本発明4という)では、請求項3記載の細胞機能測定用容器であって、該容器内が減圧にされていることを特徴とする細胞機能測定用容器を提供する。
【0025】また、請求項5記載の本発明(以下、本発明5という)では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞機能測定用容器と、誘導された生理活性物質の量を定量可能な試薬とを備えることを特徴とする細胞機能測定用キットを提供する。
【0026】また、請求項6記載の本発明(以下、本発明6という)では、請求項2記載の細胞機能測定用容器と、容器中のエンドトキシンの量が、測定しようとする液量に等しい水を該容器内に採取して抽出を行ったときの抽出液中の濃度として、0.5EU/ml以下とされているコントロール値測定用容器と、生理活性物質を定量するための定量試薬とを備えることを特徴とする細胞機能測定用キットを提供する。
【0027】また、請求項7記載の本発明(以下、本発明7という)では、請求項5または6記載の細胞機能測定用キットを利用することを特徴とする単球及びマクロファージの細胞機能測定方法を提供する。
【0028】以下、本発明の詳細を説明する。
[本発明1〜4(以下、単に本発明ともいう):細胞機能測定用容器]本発明における細胞機能測定用容器は、生理活性物質を産生させるのに十分量のエンドトキシンを容器内に収納するに先だって、容器中のエンドトキシンの量が生理活性物質の測定値に影響を与えないように規定されている。そして、この様にエンドトシンの量が規定されている容器内に、生理活性物質を産生させるのに十分量のエンドトキシンが収納されている。この収納されるエントトキシンの量は、血液試料の採取時に血液と接触された際の全液中の濃度が0.6〜1000EU/mlとなるようになされている。
【0029】本発明における生理活性物質としては、例えば、TNF−α;IL−1、IL−4、IL−5、IL−6等のインターロイキン;IFNα、IFNβ、IFNγ等のインターフェロン;コロニー刺激因子;IL−8、RANTES等の走化性因子などの種々のサイトカインや、PGE2、PGI2等のプロスタグランジン;LTB4、LTC4等のロイコトリエン;一酸化窒素;活性酸素;ヒスタミン;血小板活性化因子(PAF)などの種々のケミカルメディエーターが挙げられる。また、可溶性ICAM1などの接着因子、可溶性IL−2レセプターなどの可溶性サイトカインレセプター、マトリックスメタロプロテイナーゼ、マクロファージ特異的エラスターゼなどの細胞内顆粒酵素も挙げられる。上記生理活性物質のうち、より好ましくは、サイトカインが用いられる。
【0030】上記の生理活性物質を測定する方法としては、例えば、測定しようとする上記生理活性物質に対するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体及びペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素及び各々の酵素の発色基質などを利用した酵素免疫測定方法が挙げられる。
【0031】本発明におけるエンドトキシンとしては、血液細胞、特に顆粒球、単球、マクロファージ、リンパ球等の白血球と反応し、これらの細胞の活性化を促し、上記生理活性物質(サイトカイン等)の誘導を引き起こす材料であり、従来、上記細胞の活性化物質として知られる種々の材料が用いられ、例えば、微生物由来の細胞壁多糖(LPS)、また、種々の天然もしくは合成高分子材料に固定化した材料等が用いられる。
【0032】本発明の細胞機能測定用容器において、十分量のエントトキシンが収納される前の、容器中のエンドトキシンの量が生理活性物質の測定値に影響を与えないように規定された容器としては、容器中のエンドトキシンの量が、測定しようとする液量に等しい水を該容器内に採取して抽出を行ったときの抽出液中の濃度として、0.5EU/ml以下とされている容器であるのが好ましい。
【0033】上記エンドトキシン量の具体的な抽出方法は、採取血液量と同量のエンドトキシンフリー水を該容器内に採取し、37℃、1時間の条件で攪拌下抽出を行う。なお、上記の抽出を行う際のエンドトキシンフリー水の量は、上記のように測定しようとする採取血液量に全く等しい量である必要は必ずしもなく、抽出が十分になされるなら測定しようとする採取血液量未満であってもよいが、この場合であっても、抽出液中のエンドトキシン含量が0.5EU/ml以下であることが好ましい。
【0034】上記エンドトキシン量の測定方法は、第十三改正日本薬局方解説書「エンドトキシン試験法」における発色合成基質の加水分解による発色を指標とする比色法であり、例えば、市販品のエンドスペシー(生化学工業社製)を用いて測定することができる。
【0035】予めエンドトキシン量が規定された容器に収納される、血液細胞に生理活性物質を産生させるのに十分な、エンドトキシンの量は、血液試料採取後において全液中のエンドトキシンの濃度が0.6〜1000EU(国際エンドトキシンユニット)/mlとなる量である必要があり、より好ましくは、8〜800EU/mlとなる量である必要がある。上記濃度が0.6EU/ml未満では、TNF−α、IL−1β及びIL−6の誘導量が少なくなりすぎることがあり、1000EU/mlを越える場合は、血液細胞の中の単球及びマクロファージの機能を特異的に測定できないばかりでなく、測定誤差も大きくなるためである。上記した全液とは、血液及びエンドトキシンの溶解液との総和を、また血液抗凝固剤を用いる場合には、その溶液との総和を示す。
【0036】上記エンドトキシンの測定容器中での存在状態は、通常、粉末状又は、水等の溶媒に溶解された溶液状態であるエンドトキシンを、例えば、固体状、ゲル状又は、液体状で容器内に存在させてもよく、さらに、適当な溶媒に溶解され、容器の内壁面に塗布又は、添加された後、粉末状にして存在させてもよい。
【0037】上記溶媒としては、例えば、リン酸緩衝液、ハンクス緩衝液等の緩衝液やMEM、RPMI−1640等の通常の培地等の生理的緩衝液であればいずれも用いられる。さらに、市販の注射用水(例えば、LPSフリー水;大塚製薬社製)、生理食塩水(例えば、大塚製薬社製)を用いることもできる。
【0038】上記エンドトキシンの収納方法としては、エンドトキシンが測定容器内で、血液と接触可能な状態とされていれば、特に限定されない。
【0039】本発明における細胞機能測定用容器の形状としては、特に限定されず、例えば、チューブ状、プレート状のものが挙げられ、チューブ状のものとして、採血管、試験管等が、プレート状のものとして、マイクロプレート等が挙げられ、減圧操作を行いうるものが好ましい。
【0040】本発明の細胞機能測定用容器は、容器内が減圧されていることが好ましく、その減圧の程度は、常圧の血液と上記測定容器が連結された際に、上記測定容器内に常圧の血液が吸入され得る程度の圧力であればよく、その圧力は、吸入しようとする血液の量によって決められ得る。すなわち、吸入しようとする血液の量が多いほど、減圧の程度を大きくすればよい。
【0041】上記測定容器の材質としては、例えば、プラスチックやガラス等が挙げられる。上記プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれもが用いられる。
【0042】上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0043】上記熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂等が挙げられる。
【0044】上記測定容器のチューブ状のものにおいては、その内部を減圧に維持するために、通常、栓体を使用する。上記栓体の材質としては、例えば、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。上記減圧の程度は、上記測定容器の中に常圧の検体血液が吸入され得る程度の圧力であればよく、吸入しようとする検体血液の量によって決められる。
【0045】上記測定容器において、チューブ状のものを用いる場合は、採取する血液量は、測定容器の容積によって異なるが、通常4〜5mlの容積の容器を用いる場合であれば、0.5〜2ml程度でよい。また、マイクロプレート状のものを用いる場合の採取血液量は、0.05ml〜2ml程度でよい。
【0046】本発明における細胞機能測定用容器を用いて細胞機能を測定する際の血液量は、上記測定容器の容積によって異なるが、通常4〜5mlの容積の測定容器を用いる場合には、0.5〜2ml程度でよい。
【0047】測定容器の製造方法の一例を挙げると、内部を減圧にすることが可能な容器に、上記エンドトキシン及び血液抗凝固剤を加え、容器を所定の減圧状態にした後、上記測定容器に栓をする方法が挙げられる。
【0048】上記容器としては、例えば、一端が開口し、他端が閉塞してなる有底管体が好ましく、開口部は栓体によって閉塞可能なものが好ましい。さらに、該栓体は、容器の開口部には血液試料採取時に取り外されることなく密栓される構成が好ましい。また、上記有底管体としては、例えば、サイトカインの誘導反応の後、上記サイトカイン量を測定するための遠心分離操作に好適な試験管状のものがより好ましく、その寸法としては、外径が5〜30mm、高さ20〜150mm程度のものが好ましい。
【0049】また、本発明の測定容器は、エンドトキシンや雑菌の混入を避けるために、できる限りクリーンな環境で製造されることが好ましく、可能であれば、製造後に公知の滅菌処理を施すことが好ましい。
【0050】本発明における細胞機能測定用容器により血液細胞の細胞機能を測定する方法について説明する。まず、血管または採血容器と上記測定容器とを連通させ、上記測定容器中に検体血液を吸入させる。次いで上記測定容器を適度に振とうしながら、血液細胞とエンドトキシンとを接触させ反応させて誘導する。反応後、静置もしくは、遠心分離により、血球と血漿に分離して血漿中のサイトカイン量を各々の定量可能な試薬により定量する。
【0051】測定容器における血液とエンドトキシンとの反応温度は、低くなると細胞の代謝活性が低くなり、サイトカイン誘導量が少なくなりすぎることがあり、高くなると細胞に障害が生じて、サイトカイン誘導量が少なくなりすぎることがあるので、サイトカイン誘導量が少なくなるので、26〜45℃が好ましく、より好ましくは、30〜42℃である。
【0052】後述の実施例から明らかなように、本発明で規定する0.6〜1000EU/mlの範囲にある低濃度のエンドトキシン(例えば、100EU/ml)刺激では、TNF−αの産生は、反応開始1時間後から検出され、4〜8時間後ではプラトーになり、24時間後では産生量が低下した。一方、従来の方法である高濃度のエンドトキシン(例えば、50,000EU/ml)刺激では、TNF−αの産生は8時間後まで産生量が増大した。すなわち、本発明のように0.6〜1000EU/ml程度の低濃度エンドトキシン刺激による方法は、従来の高濃度のエンドトキシンを用いる方法よりも、短時間で安定した結果を得ることができる。これらの結果から、測定容器における血液とエンドトキシンとの反応時間は、反応時間が短くなると、サイトカイン誘導量が少なくなりすぎることがあり、長くなりすぎると測定結果が出るのが遅くなり、また、サイトカイン誘導量も約4時間をピークとして少しづつ減少する傾向があるため、1〜6時間が好ましく、より好ましくは2〜4時間である。
【0053】上記方法によって誘導されたサイトカインの測定方法は、公知の種々の方法が用いられ、例えば、酵素免疫試薬を用いた方法が挙げられる。
【0054】上記酵素免疫測定試薬は、測定しようとする上記サイトカインに対するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、ペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼなどの酵素、並びにそれぞれの酵素の発色基質などから構成されており、マイクロプレートなどの固相表面上に予め、測定されるサイトカインに対するモノクローナル抗体を固定化したサンドイッチ酵素免疫測定方法が、測定前に固定化する必要はなく再現性においても優れているため好ましい。
【0055】以下に、本発明の細胞機能測定用容器を用いて、細胞機能を測定する一様態を詳しく説明する。まず、血液とエンドトキシンとを上記測定容器の中で反応させ、サイトカインを誘導し、誘導後の測定容器を1200Gで遠心して、血球成分と血漿成分とを分離させる。次いで、分離された血漿と上記サイトカインに対するポリクローナル抗体とをマイクロプレートのウェルに、ピペッティングにより添加し、37℃で2時間反応させる。次いで、反応後の血漿液を吸引除去等の手段で廃棄し、さらに、未反応成分を除くため、Tween20等のノニオン系の界面活性剤を含有する中性pHの洗浄用緩衝液で上記ウェルを洗浄する。次いで、西洋わさびペルオキシダーゼを固定化した上記サイトカインに対するポリクローナル抗体をピペッティングにより上記ウェルに添加し、37℃で1時間反応させる。次いで、未反応の西洋わさびペルオキシダーゼ固定化抗体を除くため、上記ウェルを上記洗浄用緩衝液で洗浄した後、過酸化水素、テトラメチルベンジジンを含む基質溶液を添加し、5〜10分間反応させる。次いで、1M硫酸溶液を添加し、反応を停止させて、酵素反応による基質の発色を450nmの吸光度から測定する。この測定値と、既知濃度の上記サイトカインを用いて作成した検量線とから、上記サイトカインの産生誘導量を測定する。
【0056】また、本発明の測定容器中には、必要に応じて血液抗凝固剤が収納されてもよい。上記血液抗凝固剤としては、ヘパリン化合物、クエン酸化合物、シュウ酸化合物等が挙げられ、ヘパリンナトリウム等が細胞の生物学的反応を阻害しないので好ましい。
【0057】上記血液抗凝固剤は、該血液抗凝固剤中のエンドトキシン含量が、血液と混合された時に血液細胞から生理活性物質を産生しない量であることが好ましい。すなわち、血液抗凝固剤自体のエンドトキシン含量が上記のように低くされると、それによって検査を行うまでの間に採血した血液に不要な刺激を与えることが抑制される。その結果、採血した血液の生理活性物質が、血液抗凝固剤によって産生され難く、種々の生理活性物質の測定や細胞機能の測定をより、いっそう精度良く行うことができる。また、採血後、検査を行うまで、血液試料を長時間保存することができる。上記血液抗凝固剤中のエンドトキシン含量は、多くなるとTNF−α、IL−1、IL−6等のサイトカインの産生が引き起こされ、正確な測定ができなくなる。従って、血液抗凝固剤のエンドトキシン含量は、採取した血液中において生理活性物質としてのサイトカインを産生しない量に制限することが望ましい。血液抗凝固剤中のエンドトキシン含量が反応血液中に0.5EU/mlを超えると、TNF−α、IL−1、IL−6等のサイトカインの産生が引き起こされる。従って、血液抗凝固剤のエンドトキシン含量は、反応液中でのエンドトキシン含量が0.5EU/ml以下とされるのが好ましい。
【0058】上記血液抗凝固剤の量は、採取血液量に応じて異なるが、通常血液中に、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムであれば0.5〜5mg/ml、クエン酸ナトリウムであれば3〜5重量%、ヘパリンナトリウムであれば4〜50U/mlの量で用いられる。従って、本発明の血液抗凝固剤のエンドトキシン含量は、血液抗凝固剤の量と採取血液量によって適宜選択され、最終的に採取した血液中でのエンドトキシン含量が0.5EU/ml以下とされるのが好ましい。例えば、ヘパリンナトリウムを用いて1mlの血液を採取して試験する場合、ヘパリンナトリウムは4〜50U/ml添加されるので、そのエンドトキシン含量は0.125EU/ヘパリンユニット以下とされ、好ましくは0.01EU/ヘパリンユニット以下である。
【0059】上記エンドトキシン含量の少ない血液抗凝固剤の製造方法としては、加熱処理、酸、アルカリ処理による不活化やメンブレンフィルターによる限外濾過、アニオン性のキトサン系樹脂やエンドトキシンに対して特異的に結合するポリミキシンB、エンドトキシンに対する抗体を固定化した吸着剤による除去方法等、公知の種々の方法を用いることができる。但し、加熱処理、酸、アルカリ処理による不活化は、血液抗凝固剤によってはそれ自身が失活する場合があるので、メンブレンフィルターによる限外濾過、吸着剤による除去が好ましい。
【0060】[本発明5・6:細胞機能測定用キット]本発明5における細胞機能測定用キットは、上記本発明1〜4の細胞機能測定用容器と生理活性物質の量を定量可能な試薬とを組み合わせることにより構成される。上記細胞機能測定用キットの使用方法の一例としては、前記したごとく本発明1の細胞機能測定用容器を用いて細胞機能を測定する一実施様態を説明した方法と同様に行うことができる。
【0061】また、本発明6の細胞機能測定用キットは、上記本発明2の細胞機能測定用容器(以下、第1測定容器という)と、容器中のエンドトキシンの量が、測定しようとする液量に等しい水を該容器内に採取して抽出を行ったときの抽出液中の濃度として、0.5EU/ml以下とされているコントロール値測定用容器(以下、第2測定容器という)と、生理活性物質を定量するための定量試薬と組み合わせることにより構成される。この本発明6における細胞機能測定用キットでは、第1測定容器にて、血液中の生理活性物質を定量し、第2測定容器にて、エンドトキシンとの反応により産生されたものではない血液中の生理活性物質量(コントロール値)を定量し、これらの差により、エンドトキシンにより産生された正確な生理活性物質産生量を測定できる。
【0062】上記第2測定容器としては、上記本発明2の細胞機能測定用容器の構成で説明した、生理活性物質を産生させるのに十分量のエンドトキシンを収納する前の容器を用いることができる。すなわち、容器内のエンドトキシンの量が、生理活性物質の測定値に影響を与えないように、測定しようとする液量に等しい水を容器内に採取して抽出を行ったときの抽出液中の濃度として、0.5EU/ml以下とされている容器が用いられる。エントトキシンの抽出方法や測定方法は、上記本発明1〜4の細胞機能測定用容器にて説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0063】なお、上記第1測定容器の詳細については、前述の本発明2の細胞機能測定用容器にて説明したとおりである。
【0064】本発明6における細胞機能測定用キットにより細胞機能を測定するには、採血容器と上記第1測定容器とを連通させ、第1測定容器中に血液検体を導き、次に第1測定容器を適度に振とうしつつ、血液細胞とエンドトキシンを反応させる。
【0065】また、コントロール値を得るためには、採血容器と上記第2測定容器とを連通させ、第2測定容器に血液検体を導く。また、血液抗凝固剤を予め添加し、減圧された第2測定容器を用い、直接第2測定容器に血液を採取することもできる。この場合には、第2測定容器と第1測定容器を連結し、検体血液を第2測定容器から第1測定容器に分注することができる。
【0066】次に上記のようにして、血液が導かれた第1、第2測定容器にて生理活性物質の産生を誘導し、その後、静置もしくは遠心分離することにより、血球と血漿を分離し、血漿中の生理活性物質量を酵素免疫試薬などにより定量する。この際、第1、第2測定容器の血漿中の生理活性物質量をそれぞれ異なる測定感度を有する第1、第2の酵素免疫測定試薬で別々に測定しても良い。
【0067】なお、第1測定容器における血液とエンドトキシンとの反応温度が、低くなると細胞の代謝活性が低くなり、サイトカイン誘導量が少なくなり、高くなると細胞に障害が生じ、サイトカイン誘導量が少なくなるので、26〜45℃が好ましく、より好ましくは30〜42℃である。
【0068】血液とエンドトキシンとの反応時間については、サイトカインの産生が効率的に行われ、過度の溶血を引き起こさない反応時間である1〜6時間が好ましく、より好ましくは2〜4時間である。
【0069】本発明6における細胞機能測定用キットでは、第1測定容器中の血液中の生理活性物質、すなわちエンドトキシンとの反応により産生された血液中の生理活性物質量を第1の酵素免疫試薬により定量し、エンドトキシンとの反応により産生されたものではない血液中の生理活性物質量については、第2測定容器の血液中の生理活性物質量を第2の酵素免疫測定試薬を用いて定量し、これらの差により、エンドトキシンにより産生された正確な生理活性物質産生量を測定できる。
【0070】通常、エンドトキシンと反応させていない血液中のサイトカイン量(すなわち、第1測定用反応器の血液中のサイトカイン量)は、数pg/ml〜数百pg/mlであり、エンドトキシンと反応させた後の血液中のサイトカイン量は数百pg/mlから数千pg/ml以上である。
【0071】しかしながら、数pg/ml〜数千pg/mlという幅広い測定感度を有するサイトカイン測定試薬は存在しない。従って、1,000pg/ml以上のサイトカイン量の測定では、適当な希釈溶液で血漿を希釈し、測定しなければならなかった。ところが、血漿の希釈操作は煩雑であり、希釈液や希釈容器を別途必要とし、測定にかかる時間が非常に長くなる。また、測定値は、希釈倍数の積により求められるため、測定値の精度が低下するという問題があった。
【0072】これに対して、本発明6では、エンドトキシンと反応させていない血液中のサイトカイン量(すなわち、第2測定容器の血液中のサイトカイン量)を、例えば測定感度10〜1,000pg/mlのような高感度の第1の酵素免疫測定試薬で測定し、エンドトキシンと反応させた血液中のサイトカイン量(すなわち、第1測定容器の血液中のサイトカイン量)を、例えば測定感度500〜約10,000pg/mlのような低感度の第2の酵素免疫測定試薬で測定することができる。
【0073】従って、上述したような煩雑な希釈操作を必要としない。また、上記サイトカインが、TNF−α、IL−1βの場合には、第1の酵素免疫測定試薬は、感度が10〜500pg/ml、第2の酵素免疫測定試薬の感度が500〜10,000pg/mlであることが好ましく、IL−6の場合には、第1の酵素免疫測定試薬の感度は10〜1,000pg/ml、第2の酵素免疫測定試薬の感度は1,000〜20,000pg/mlが好ましい。
【0074】上記第1,第2の酵素免疫測定試薬は、測定しようとする上記サイトカインに対するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、ペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼなどの酵素、並びにそれぞれの酵素の発色基質などから構成されており、マイクロプレートなどの固相表面上に予め、測定されるサイトカインに対するモノクローナル抗体を固定化したサンドイッチ酵素免疫測定方法が、測定前に固定化する必要はなく再現性においても優れているため好ましい。
【0075】固相表面へのモノクローナル抗体の固定化方法については、公知の物理吸着法や化学結合法など任意であるが、物理吸着法が操作が簡便であるため好ましい。異なる測定感度の第1,第2の酵素免疫測定試薬は、サイトカインに対するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル工程及びペンオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素及び各々の酵素の発色基質の濃度などを適宜、調製することによって達成し得る。
【0076】例えば、サンドイッチ酵素免疫測定方法を用いる場合、マイクロプレートに固定化する上記サイトカインに対するモノクローナル抗体の固定化量を調整することによって感度の異なる第1,第2の酵素免疫測定試薬を調製できる。すなわち、マイクロプレート表面上に固定化されたモノクローナル抗体の量に応じて、モノクローナル抗体と結合し得る測定対象サイトカインの量も変化するため、測定感度の異なる試薬が調製できる。
【0077】また、固定化されたモノクローナル抗体に結合したサイトカインを検出するための試薬、すなわち、固定化モノクローナル抗体とは別の測定対象サイトカインに対する酵素標識モノクローナル抗体、もしくは酵素標識ポリクローナル抗体を異なる濃度に調製することによっても可能である。
【0078】また、アビジン−ビオチンなどの特異的結合様式を上記の酵素免疫測定系に取り入れる方法、例えば、上記の固定化モノクローナル抗体とは別の測定対象サイトカインに対する酵素標識抗体の代わりに、ビオチン標識抗体を用い、さらにアビジン標識酵素を用いる方法がある。
【0079】[本発明7:細胞機能測定方法]本発明7における細胞機能測定方法は、上記本発明における細胞機能測定容器に血液を導入し、細胞機能を測定することを特徴とする。この場合、好ましくは前述したように、血液抗凝固在中のエンドトキシン含量は、血液と混合されたときに血液細胞から生理活性物質を産生しない量に制限されている血液抗凝固剤が予め細胞機能測定容器内に収容される。本発明7における細胞機能測定方法の一実施様態を以下に説明する。100EUのエンドトキシンと10Uのヘパリンナトリウムを添加し、1mLの血液が採取できるように減圧下で打栓した細胞機能測定用容器に、被験者から1mLの血液を採取する。ついで、温度26〜45℃で、1〜6時間インキュベートして、血液細胞のうち特に単球、マクロファージからTNF−αの産生を誘導する。ついでこの血液を1600Gで遠心分離して、血漿中の産生TNF−α量を酵素免疫測定法にて測定する。
【0080】
【実施例】次に、実施例、比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0081】以下の実施例、比較例において使用した、ガラス製の器具、容器は250℃で2時間の乾熱処理を行い、プラスチック製の器具、容器は市販のエンドトキシンフリーのものを用いるか、予め、0.2M水酸化ナトリウム水溶液に一晩浸してエンドトキシンを失活させ、十分にエンドトキシンフリー水で洗浄したものを用いた。また、操作はクリーンベンチ内で行った。
【0082】(実施例1〜4、比較例1〜5)
(1)細胞機能測定用容器の製造ポリエチレンテレフタレート製の4mlの採血管(直径12.6×75mm)をエンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)4mlで10回よく洗浄し、濃度が200U/mlとなるようにヘパリンナトリウム(ノボ・ノルディスクA/S社製、商品名ノボ・ヘパリン注1000)を含有させた注射用生理食塩水(大塚製薬社製)を0.05ml添加した。更に、E.coli UKT−B由来エンドトキシン(日本薬局方標準品Lot.8920)を注射用生理食塩水(大塚製薬社製)に溶解、段階希釈して、上記ヘパリン含有採血管のそれぞれ2本づつに、ヘパリンナトリウム溶解生理食塩水とエンドトキシン溶解生理食塩水との合計の溶液中に該エンドトキシン濃度が、0EU/ml(比較例1)、0.2EU/ml(比較例2)、0.5EU/ml(比較例3)、0.8EU/ml(実施例1)、8EU/ml(実施例2)、80EU/ml(実施例3)、800EU/ml(実施例4)、8000EU/ml(比較例4)及び80000EU/ml(比較例5)になるように0.05ml添加し、室温、減圧条件で乾燥させた。
【0083】次いで、エンドトキシンフリー水(大塚製薬社製)よく洗浄した、管径に合うブチルゴム製の栓体を上記の採血管の開口部に、開口部を密栓しないように、軽く載せた後、減圧にできる容器内に置き、上記容器を減圧にしてゆき、570mmHgに減圧したところで、採血管の開口部を密栓した。このようにして製造された減圧採血管を実施例1〜4、及び、比較例1〜5の細胞機能測定用容器とした。
【0084】(2)TNF−α、IL−1β、IL−6の誘導能の測定方法健常人ボランティアから、注射針のついた注射器に、5mlずつヘパリン採血し、その注射針を上記(1)で得られた種々の濃度のエンドトキシンを添加した減圧採血管のブチルゴム製の栓体部分に突き刺し、該採血管内に、検体血液0.9mlを採取した。次いで、予め37℃に保温しておいた恒温器の中の転倒混和用ロッカープラットフォームに血液を採取した各々の減圧採血管をとりつけ、4時間、転倒混和した。混和後、各々の反応器を1600G、10分間、4℃で遠心して、上澄みの血漿を採取した。採取した血漿中のTNF−α、IL−1β、各サイトカイン量(pg/ml)を各々のモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定キットを用いて測定した。TNF−α産生(誘導)量の測定は、Genzyme 社製、商品名「 PREDICTA Human TNF-α ELISA KIT(検出限界35pg/ml)」を用いて行った。また、IL−1β産生(誘導)量の測定は、Genzyme 社製、商品名「 PREDICTA Human IL-1β ELISA KIT」を用いて行った。尚、この測定方法の検出限界濃度は15pg/mlであった。測定はそれぞれ、各5本行った。
【0085】(結果)上記測定結果を図1及び表1に示した。図1は、LPS濃度(EU/ml)(血液と接触した際の血中(全液中)のエンドトキシン濃度)に対する血漿中のTNF−α、IL−1βの濃度について、各5本の採血管から得られた値の平均値を示した。また、表1は、上記同様に血漿中のTNF−α、IL−1βの濃度について、各5本の採血管から得られた値のCV値(=標準偏差/平均値×100)を示した。上記結果より、エンドトキシン濃度が0.6EU/ml以上において、TNF−α、IL−1βの産生誘導が起こることが認められた。また、エンドトキシン濃度が、8〜800EU/mlで、TNF−α、IL−1βの誘導量は、ほぼ等しい値を示した。そして、8000EU/mlまでは、エンドトキシン濃度の増加に対して、TNF−α、IL−1βの誘導量は、増加しているが、80000EU/mlでは、8000EU/mlからの誘導量に比べ少なくなっている。また、エンドトキシン濃度が800EU/ml以下では、測定値のバラツキが非常に小さく精度の良い測定ができた。しかし、8000EU/ml以上では、測定値のバラツキが大きくなった。
【0086】
【表1】

【0087】(実施例5、比較例6)50mL採血用シリンジ(テルモ社製)に、注射針をつけてノボヘパリン(1000U/mL)を10〜20U/血液1mLになるように採取し、注射針を21Gの翼状針に付け替えて、1名の健常人(K.K.)の肘静脈から、45mLの血液を採取した。コントロール値測定用容器(エンドトキシン量0.1EU/管)、低用量LPS反応管(100EU/管(実施例5))、高用量LPS反応管(50,000EU/mL管(比較例6))に、採取血液を1mLずつ分注した(LPSフリーチップを使用)。直ちに振とう混和条件(10回/min)にて37℃で培養した。反応開始から1、2、4、8、24時間後に、4℃、1600Gで遠心分離し、上澄みの血漿をエッペンドルフチューブに分注して−80℃に凍結保存した。凍結保存した血漿を室温で融解しTNF−α測定用EIA試薬を用いて血漿中TNF−α濃度を測定した。
【0088】(結果)上記測定結果を表2に示した。表2は、TNF-α産生反応時間と産生されたTNF-α量との関係を示しており、各々3本の反応容器から得られたTNF−α産生量の平均値とその標準偏差で表した。
【0089】
【表2】

【0090】表2から明らかなように、低用量LPS刺激(実施例5)でのTNF−α産生量は、4時間でプラトーに達した。一方、高用量LPS刺激(比較例6)では、8時間までTNF−α産生量が増加し、少なくとも8時間以降にプラトーに達すると考えられた。この結果から、全液中のエンドトキシン濃度が0.6〜1000EU/mlである低用量LPS刺激の方が短時間で精度の良い測定ができると結論できる。
【0091】(実施例6、比較例7)免疫異常モデル動物での免疫機能検査法としての有用性検討7週齢のルイス系雄性ラット5匹を一週間の予備飼育の後、6mg/ml Mycobacterium tubercurosis H37RA/流動パラフィン(局方品)のアジュバント液を右後肢足せき皮下に投与した。アジュバント液は、Mycobacterium tubercurosis H37RA粉末を乳棒とメノウ乳鉢にて粉砕し、流動パラフィンを少しずつ加えながら、すり潰し、20mlの均一な懸濁液にした後、 スクリュー蓋付ガラス試験管(50ml)に移して、121℃で、20分間オートクレーブ滅菌し、充分ソニケーション後、均一懸濁液としたものを用いた。足せき浮腫はPlethysmometer(Ugo Basile社製)にて測定し、アジュバント関節炎をモニターした。
【0092】アジュバント投与ラットから、アジュバント投与前、および投与後8、15日目、23日目に頸静脈より、各ラットの血液をヘパリンNa(8から10unit/ml)添加2.5mlシリンジ(テルモ社製)と採血針は22Gとを用いて2mL採血した。採取した血液0.2mLを採血後すぐに、最終1mg/mlになるように予めEDTA−2Kを添加したエッペンドルフチューブにいれ、生理食塩水で2倍に希釈して、自動血球計数装置K-1000(Sysmex社製)にて白血球数を測定した。また、採取血液0.8mlを抗生物質入りRPMI1640培地で2倍に希釈し、TNF−α産生誘導に用いた。
【0093】TNF-α産生誘導は、LPS(E.Coli.055B5)100EU(実施例6)、及び50,000EU(比較例7)をあらかじめ添加後乾燥させた反応管に採血した希釈血液を0.5mLずつ添加し、37℃で4時間穏やかに撹拌しながら培養して行った。その後、血漿を遠心分離して、血漿中の産生TNF−α量をELISAキット(Genzyme社製)にて測定した。また、リンパ球幼若化能は、微量洗浄全血法にて行った。
【0094】(結果)上記測定結果を図2及び図3に示した。図2は、低用量LPS(200EU/ml)刺激によるTNF−α産生量とリンパ球幼若化能との相関を示し、図3は、高用量LPS(50,000EU/ml)刺激によるTNF−α産生量とリンパ球幼若化能との相関を示している。免疫系の異常を起こしている病態モデルとして、アジュバント関節炎を発症したラットにおいて、低濃度LPS刺激によるTNF−α産生能とリンパ球幼若化能との間には相関性が認められた(p=0.1)のに対し、高濃度LPS刺激では相関性が認められなかった。これらの結果、低濃度LPSを用いる方法は、免疫機能異常をより特異的に検出できるといえる。
【0095】(実施例7)単球及びマクロファージ特異性の検討10〜20U/mlになるようにあらかじめヘパリンを添加した注射器で健常人ボランテァの肘静脈から50mlを採血した。LPS収納量が、それぞれ、675・339・123・53・24・5.5及び0.1(EU/管)である7本の試験反応管に、Breferdine Aを10μg/0.02mlを添加し、上記健常人から採血したヘパリン加血液を1mlずつ分注して、37℃、4時間反応を行った。次に、FastImmune Cytokine System(BECTON DICKINSON社製)のプロトコールに従って、キャップ付きポリスチレン製遠心管にPE標識マウス抗ヒトLeuM3モノクローナル抗体を20μlずつ添加した。次に、上記の操作後の血液を100μlずつ添加し、3秒間撹拌した。アルミ箔で遠心管を包み、室温で15分間反応を行った。この後、局方蒸留水で10倍希釈したFACS Lysing Solutionを2ml添加し、3秒間Vortexした。アルミ箔で遠心管を包み、室温で10分間反応を行った。次いで、500Gで5分間遠心しペレットを吸引しないように上清を除去した。次いで、FACS Permeabilizing Solutionを500μl添加し、3秒間Vortexし、アルミ箔で遠心管を包み、室温で10分間反応を行った。次いで、洗浄液(0.5%BSA-PBS)を4ml添加し、500Gで5分間遠心し、ペレットを吸引しないように上清を除去した。次にFITC標識マウス抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体およびそれと同じ濃度のFITC標識マウスIgG1を20μl添加し、3秒間撹拌して、アルミ箔で遠心管を包み、室温で30分間反応を行った。次いで、洗浄液を4ml添加し、500Gで5分間遠心し、ペレットを吸引しないように上清を除去した。次いで、500μlの1%パラホルムアルムアルデヒドを添加し、3秒間撹拌した。このサンプルを冷暗所に保存し、24時間内に、フローサイトメーター(EPICS-XL)を用いて測定を行った。FS/SSでリンパ球、単球、顆粒球を分画した。リンパ球、単球、顆粒球分画の細胞内TNF−α陽性のリージョンを、FITC標識マウスIgG1染色の結果から、各々F.I.≧10, F.I.≧10, F.I.≧30とし、各々の分画においての細胞内TNF−α陽性細胞の割合を評価した。
【0096】(結果)上記測定結果を表3に示した。細胞内TNF−α陽性細胞は、ほとんどがCD14陽性の単球及びマクロファージ分画においてのみ認められ、TNF−α産生細胞は単球及びマクロファージであると結論できる。この結果から、エンドトキシンの全液中の濃度が、0.6〜1000EU/mlの範囲にあれば、全血からをわざわざ単球及びマクロファージを分離しなくても、TNF−α産生能を指標にした特異性の高い単球機能検査が可能であることが示された。
【0097】
【表3】

【0098】
【発明の効果】本発明は上記構成からなるため、細胞の不要な活性化が惹起される問題もなく、正確に血液細胞、特に白血球のサイトカイン等の生理活性物質の産生能力を測定することができる。また、全血をそのまま利用することができ、血液から単球やリンパ球等を分離する必要がないため、操作が簡単化され、分離操作に伴う活性低下の問題も解消された高精度に細胞機能を測定できる。さらに、被験者から血液を採血後、ピペッティング等の手段で血液を種々の測定容器に移し替えたり、細胞分離、細胞培養等の操作を必要としないため、試験者は、肝炎、AIDS等の種々の感染症に感染する危険性もほとんどないうえに、測定時間も短縮でき、RI施設やフローサイトメーター等の高価な装置も必要としない。さらに加えて、血液細胞の中の単球及びマクロファージの機能を特異的に測定することができる。
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【出願日】 平成12年11月6日(2000.11.6)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−194366(P2001−194366A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−337894(P2000−337894)