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【発明の名称】 漏洩磁束探傷法
【発明者】 【氏名】四辻 淳一

【氏名】加藤 宏晴

【氏名】長棟 章生

【要約】 【課題】測定中にリフトオフが変動しても、内部欠陥をS/Nよく検出することのできる漏洩磁束探傷法を提供する。

【解決手段】磁化器3a、磁気センサ4aにより鋼板1はある磁化状態にて探傷される。磁化器3b、磁気センサ4bは磁化器3a、磁気センサ4aとは異なる磁化状態にて鋼板1の探傷を行う。信号処理装置6内では、磁気センサ4aからの信号出力を距離計5aの値に基づきリフトオフ補正装置10aにて、磁気センサ4bからの信号出力を距離計5bの値に基づき補正装置10bにて、それぞれ補正して正規化する。正規化された信号は、バンドパスフィルタ付増幅器11a、11bにより増幅されて演算装置12に入力される。演算装置12は、これらの補正後の信号に対して式により、鋼板1上の同一位置からの信号同士で演算を行い、雑音信号を低減し、相対的に欠陥を強調する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 強磁性体被検体を2つの異なる磁化状態に磁化し、磁気センサにより各々の磁化状態における漏洩磁束の測定を行い、その測定信号同士を演算することにより内部欠陥の検出を行う漏洩磁束探傷法において、前記強磁性体金属被検体と前記磁気センサとの距離を測定し、測定された距離に応じて、前記各々の磁気センサの出力を補正することを特徴とする漏洩磁束探傷法。
【請求項2】 請求項1に記載の漏洩磁束探傷法であって、前記強磁性体金属被検体と前記磁気センサとの距離を測定する距離計は、2つの磁気センサに対して共通に1つ設けられていることを特徴とする漏洩磁束探傷法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、漏洩磁束探傷法に関するものであり、さらに詳しくは、強磁性体被検体を2つの異なる磁化状態に磁化し、磁気センサにより各々の磁化状態における漏洩磁束の測定を行い、その測定信号同士を演算することにより内部欠陥の検出を行う漏洩磁束探傷法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄のような強磁性体の内部に存在する欠陥を検出する方法として、漏洩磁束探傷法が広く用いられている。その一例として、製鉄プラントにおける製鉄検査ラインに組み込まれている磁気センサを利用した磁気探傷装置の構成を図6に示す。
【0003】製品検査ラインを搬送ローラ21、22により、ほぼ一定速度Vで搬送される薄鋼帯23の搬送路に沿って磁気探傷装置24が配設されている。この磁気探傷装置24は、走行状態の薄鋼帯23に磁界を印加する磁化器25と、薄鋼帯23を挟んで磁化器25の対向位置に配設された磁気センサ26と、この磁気センサ26からの検出信号に基づいて薄鋼帯23の内部または表面の欠陥27を検出する信号処理装置28とで構成されている。
【0004】薄鋼帯23に欠陥27が存在すると、この欠陥27に起因して薄鋼帯23内の磁力線が乱され、薄鋼帯23の外部に漏洩して漏洩磁束となる。磁気センサ26はこの漏洩磁束を検出する。漏洩磁束の強度は欠陥27の大きさに対応するので、磁気センサ26の検出信号の信号レベルで欠陥27の大きさが評価できる。
【0005】以上のように、従来の、強磁性体金属被検体の欠陥を、漏洩磁束を測定することによって検出する方法においては、磁気センサの検出信号の信号レベルによって欠陥の大きさを検出していた。しかしながら、磁気センサによって検出される磁気的な信号には、上記の欠陥に起因する漏洩磁束信号以外にも、強磁性体金属被検体における局部的な磁気的特性変化、むらなどに起因する強磁性体金属被検体外部の磁束分布の乱れや、表面粗さにより生じる磁束分布の乱れが含まれる場合がある。この磁束分布の乱れは、欠陥検出という観点からすれば、不要な磁束(雑音磁束)である。
【0006】このような雑音磁束による影響を避けるため、欠陥漏洩磁束に起因する信号と雑音磁束に起因する信号とで周波数が異なることを利用して、欠陥を判断する方法が用いられることがある。図7は欠陥信号と雑音磁束の周波数特性の測定結果の一例を示す図である。すなわち、図7は、薄鋼板を一定速度で走行させた状態において、欠陥に起因する漏洩磁束を磁気センサで検出した場合の欠陥信号の周波数特性と、雑音磁束を磁気センサにより検出した場合の周波数特性を示している。
【0007】図7に示されるように、一般に欠陥信号の方が雑音磁束よりも高い周波数分布を持っている。そこで、信号処理装置に遮断周波数fを有するハイパスフィルタを組み込むことにより、磁気センサから当該信号処理装置に出力された検出信号の内、欠陥信号を雑音磁束に比べて相対的に強調して抽出することが可能である。このように漏洩磁束探傷法において、欠陥検出能を上げるため、適当な定数を持つフィルタを使用する方式は実開昭61−119760号公報にも開示されている。
【0008】しかしながら、図7に示すように、欠陥信号の周波数特性と雑音磁束の周波数特性は重なり合う部分もあるため、検出すべき欠陥が小さくて欠陥信号のレベルが小さい場合や、雑音磁束が大きい場合には、たとえ前記のようなハイパスフィルタを設けて欠陥信号を周波数弁別したとしても、欠陥を検出できるレベルまで、雑音磁束を除去することは困難であるという問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これら、従来の技術の問題点を解決するために、発明者らは、強磁性体被検体を2つの異なるレベルに磁化し、各々の磁化条件での漏洩磁束を測定し、測定された漏洩磁束を演算して内部欠陥を精度良く検出する方法を発明し、平成11年特許願第29782号として特許出願した(以下、「先願発明」という)。この先願発明の概要を、図8を用いて説明する。
【0010】製品検査ラインでは、鋼板31が搬送ロール32、33によって、一定速度Vで搬送されている。鋼板31の搬送路に沿って磁気探傷装置34が設置されている。この磁気探傷装置34は主に磁化器35a、35b、磁気センサ36a、36b、信号処理装置37によって構成されている。磁気センサ36a、36bは、鋼板31を挟んでそれぞれ磁化器35a、35bの対向位置に配置されている。
【0011】磁化器35aによる磁化は、磁化器35bによる磁化よりも強く設定され、鋼板31を磁気飽和に近い程度まで磁化するようになっている。磁気センサ36aは、磁化器35aで磁化された状態での鋼板31よりの漏洩磁束を測定する。磁気センサ36bは、磁化器35bで磁化された状態での鋼板31よりの漏洩磁束を測定する。信号処理装置37は、磁気センサ36a、36bで検出された鋼板31の同一位置の磁気信号同士を演算し、雑音磁束を低減する。これにより、相対的に欠陥信号が強調され、S/N比が向上する。
【0012】たとえば、磁気センサ36aで検出された出力をVa、鋼板31の同じ位置において磁気センサ36bで検出された信号をVbとすると、信号処理装置の出力として、A=k1(Vaーk2Vb) …(1)
が得られるようにする。ここで、k1、k2は定数であり、k2の値は、欠陥28のない場所でAの値が0に近くなるように設定する。
【0013】図9に信号処理の様子を示す。(a)は磁気センサ36aの出力で、印加する磁界が強い方の信号とする。(b)は磁気センサ36bの出力で磁界が弱い方の出力とする。それぞれ欠陥部と雑音部があるが、欠陥部と雑音部の出力比が異なっており、雑音部を除去するように係数を決定することにより、欠陥部がより強調される(c)の結果となり、S/N比が向上する。
【0014】しかしながら、先願発明においても、磁気センサと鋼板等の距離(以後「リフトオフ」という)の変動により、測定値が影響を受け、ノイズレベルが大きくなってS/N比が低下するという問題を生じていた。すなわち、(1)式におけるk2は、リフトオフが所定値のときのノイズレベルを基準にして決定されるが、一般にリフトオフが小さくなると、信号、ノイズともレベルが高くなり、リフトオフが小さくなると、信号、ノイズともレベルが低くなる。よって、リフトオフが変動すると、(1)式によりうまくノイズを消去できないことになるのである。リフトオフが変動する要因としては、鋼板等の形状が変動したり、リフトオフを一定に保つ追従機構の追従誤差等があげられる。
【0015】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、測定中にリフトオフが変動しても、内部欠陥をS/Nよく検出することのできる漏洩磁束探傷法を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための第1の手段は、強磁性体被検体を2つの異なる磁化状態に磁化し、磁気センサにより各々の磁化状態における漏洩磁束の測定を行い、その測定信号同士を演算することにより内部欠陥の検出を行う漏洩磁束探傷法において、前記強磁性体金属被検体と前記磁気センサとの距離を測定し、測定された距離に応じて、前記各々の磁気センサの出力を補正することを特徴とする漏洩磁束探傷法(請求項1)である。
【0017】前出のように、磁気センサの出力は、一般にリフトオフが小さくなると、信号、ノイズともレベルが高くなり、リフトオフが小さくなると、信号、ノイズともレベルが低くなる。よって、各々の磁気センサのリフトオフを測定し、その測定値に応じて各磁気センサの出力を補正して正規化し、正規化された出力同士を演算するようにすれば、リフトオフが変動してもその影響を受けず、S/N比よく内部欠陥を検出することができる。
【0018】前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記強磁性体金属被検体と前記磁気センサとの距離を測定する距離計は、2つの磁気センサに対して共通に1つ設けられていることを特徴とするもの(請求項2)である。
【0019】2つの磁化状態における磁化状態を検出する磁化器と磁気センサは、互いに近接して設置されることが多い。よって、これらの2つの間においては、リフトオフはほとんどの場合同一である。従って、このような場合には、2つの磁気センサについて共通に1つの磁気センサを設けることにより、磁気センサの数を減らすことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態の1例である漏洩磁束探傷法を実施する装置の概要を示す図であり、薄鋼板の内部介在物探傷に適用する例を示すものである。図1において、1は薄鋼板、2a、2bは搬送ローラ、3a、3bは磁化器、4a、4bは磁気センサ、5a、5bは磁気センサのリフトオフを測定する距離計、6は信号処理装置、7は漏洩磁束探傷装置、8は内部欠陥、9a、9bは磁化器電源、10a、10bはリフトオフ補正回路、11a、11bはバンドパスフィルタ付増幅器、12は演算装置である。
【0021】信号処理装置6は、磁気センサ4a、4bの出力を、距離計5a、5の出力で補正するリフトオフ補正回路10a、10b、バンドパスフィルタ付増幅器11a、11b、補正後のデータを演算する演算装置12から構成される。
【0022】この製品検査ラインでは、鋼板1の搬送路に沿って漏洩磁束探傷装置7が設置されている。この漏洩磁束探傷装置7は、主に磁気センサ4a、4b、磁化器3a、3b、信号処理装置6、磁化器電源9a、9bから構成されている。磁化器3a、3bは磁化器電源9a、9bにより電力を供給され、鋼板1を磁化する。磁気センサ4a、4bと鋼板1との距離であるリフトオフはL1、L2は、距離計5a、5bにより検出される。磁化器3a、磁気センサ4aにより鋼板1はある磁化状態にて探傷される。磁化器3b、磁気センサ4bは磁化器3a、磁気センサ4aとは異なる磁化状態にて鋼板1の探傷を行う。
【0023】信号処理装置6内では、磁気センサ4aからの信号出力を距離計5aの値に基づきリフトオフ補正回路10aにて、磁気センサ4bからの信号出力を距離計5bの値に基づきリフトオフ補正回路10bにて、それぞれ補正して正規化する。正規化された信号は、バンドパスフィルタ付増幅器11a、11bにより増幅されて演算装置12に入力される。
【0024】演算装置12は、これらの補正後の信号に対して(1)式により、鋼板1上の同一位置からの信号同士で演算を行い、雑音信号を低減し、相対的に欠陥を強調する。なお鋼板とセンサの距離は、磁気センサ4a、4bの設置状況によっては同時に変動する場合もあるので、この場合には、1個の距離計にて測定しても構わない。
【0025】
【実施例】以下、本発明を、薄鋼板中の微小な内部介在物をオンラインにて検出する装置に適用した例について、図2を参照しながら説明する。以下の図において、発明の実施の形態以後の図に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略することがある。図2は実施例である方法を実施するために使用した漏洩磁束探傷装置の概略ブロック図であり、図1に示したものとほぼ同じ構成であるが、信号処理装置の中に遅延回路13、及びA/D変換器14、計算機15が設置されていることが異なっている。
【0026】製品検査ラインを搬送される薄鋼板1の厚さは1mmである。また、この鋼板1は搬送ローラ2a、2bによりほぼ一定速度V=30m/minで搬送される。各磁気センサ4a、4bのリフトオフL1、L2は、共に1.0mmに設定されている。図示していないが、複数個の磁気センサ4a、4bが板幅方向に直線的に5mmピッチで配列されており、200組400個の磁気センサにて1m幅を探傷する。磁気センサ4aの列と4bの列との距離は1mとした。
【0027】磁化器3a、3bと鋼板との距離はそれぞれ5mmとし、磁化器3aの磁化力は4000AT、磁化器3bの磁化力は1000ATとした。磁気センサ4aの出力は、距離計5aの信号より求めた係数によりリフトオフ補正回路10aにて補正されて正規化され、遅延回路13にて薄鋼板が磁気センサ4aと4bの間を走行する時間である2秒遅延される。その後バンドパスフィルタ付増幅器11aにて100倍増幅され、200Hz〜800Hzの信号のみが取り出される。
【0028】一方磁気センサ4bの出力は遅延回路を経ずに、同様にリフトオフ補正回路10b、バンドパスフィルタ付増幅器11bを通る。処理された4a、4bのそれぞれの信号はA/D変換器14にてディジタル化され計算機15のメモリーに格納される。計算機15は、処理された格納された4aの探傷データを前記(1)式におけるVa、処理されて格納された4bの探傷データを前記(1)式におけるVbとして、(1)式により、Aを求め、Aの値が所定値以上になると欠陥があると判定する。
【0029】図3に探傷信号例を示す。(a)はある強い磁化条件による磁気センサ4aの出力信号であり、(b)は(a)とは異なる弱い磁化条件による磁気センサ4bの出力信号である。(1)式による演算後の信号Aが(c)である。波形(a)中の欠陥a-1と欠陥a-2は、リフトオフが同じならば同レベルに出力されるはずの欠陥であるが、実際にはリフトオフが変動しているために、10%程度の差が生じている。
【0030】また、(b)の出力信号にもリフトオフのばらつきのために、リフトオフの変動が無い場合には同じ信号であるはずの信号に、b-1とb-2の如く差が10%程度生じると、その結果、a-1とb-1の差分c-1((1)式による演算結果)と、a-2とb-2の差分c-2((1)式による演算結果)のばらつきが大きくなり、本来同じ大きさであるべきc-1とc-2の大きさが異なることになる。
【0031】そこで、各々のセンサのリフトオフ距離計5a、5bにて測定し、図4に示すようなグラフに対応するテーブル用いて係数を求め、リフトオフ補正回路10a、10bにて信号の補正(正規化)を行うと、各々の補正信号は、図5の(a-1)'と(a-2)'、(b-1)'と(b-2)'のようになり、(1)式による演算結果は、(c-1)'と(c-2)'のようになって、両者の欠陥信号は同一となる。よって、リフトオフの変動に対しても安定して効果的に探傷が可能となる。なお係数を求めるテーブルは、探傷を行う磁化条件毎に異なるため、予めその磁化条件にて調査し、磁化条件毎に準備しておく必要がある。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のうち、請求項1に係る発明においては、リフトオフが変動してもその影響を受けず、S/N比よく内部欠陥を検出することができる。
【0033】請求項2に係る発明においては、磁気センサの数を減らすことができる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成12年1月11日(2000.1.11)
【代理人】 【識別番号】100094846
【弁理士】
【氏名又は名称】細江 利昭
【公開番号】 特開2001−194342(P2001−194342A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−2249(P2000−2249)