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【発明の名称】 鉄筋コンクリートの健全性判定装置
【発明者】 【氏名】花崎 紘一

【氏名】落合 正水

【氏名】倉林 清

【氏名】関根 一郎

【氏名】齋藤 章

【氏名】土橋 吉輝

【氏名】佐藤 幸三

【要約】 【課題】鉄筋コンクリート表面と接触する測定電極等を必要とすることなく、鉄筋コンクリートの健全性を簡単にかつ正確に測定することができる鉄筋コンクリートの健全性判定装置を提供すること。

【解決手段】鉄筋コンクリートの健全性判定装置は、鉄筋コンクリートの面を測定対象面とし、前記測定対象面又はその近傍の磁場を多点測定し、前記多点測定により得られたデータを処理することにより、前記鉄筋コンクリートの電流密度分布を得ることにより、鉄筋12の腐食ポイントPの健全性を判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉄筋コンクリートの面を測定対象面とし、前記測定対象面又はその近傍の磁場を多点測定するセンサ手段と、前記多点測定により得られたデータを処理することにより、前記鉄筋コンクリートの健全性を判定する処理手段と、を含むことを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項2】 請求項1において、前記磁場センサ手段は、前記測定対象面と略平行及び略垂直方向の磁場を測定することを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項3】 請求項2において、前記各磁場センサ手段は、前記測定対象面と略平行方向の磁場を測定する検出部と、前記測定対象面と略垂直方向の磁場を測定する検出部と、を含むことを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記センサ手段は、所定のルールに基づき配置された複数の磁気センサを含み、鉄筋コンクリートの測定対象面又はその近傍の磁場を多点測定することを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項5】 請求項4において、前記複数の磁気センサは、所定のルールに基づきマトリクス配置され、かつ磁気センサの間隔は、鉄筋コンクリートの鉄筋間隔の少なくとも1/2以下とすることを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記センサ手段は、鉄筋コンクリートの任意の測定対象面に当接し、磁場を多点測定することを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項7】 請求項1〜6のいずれかにおいて、前記センサ手段は、バックグラウンドの磁場を相殺する磁場を発生するバックグラウンド相殺手段を含むことを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれかにおいて、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データの所定データに対する差分を所定のルールに基づき演算し、測定データに含まれるバックグラウンドの磁場影響成分を除去する処理を行うことを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれかにおいて、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データの直流成分データを処理することにより、測定対象面の鉄筋コンクリート中に存在する鉄筋の健全性を判定することを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項10】 請求項9において、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データに含まれる、測定対象面と水平及び略垂直の直流成分データを処理することにより、測定対象面の鉄筋コンクリート中に存在する鉄筋の健全性を判定することを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項11】 請求項1〜9のいずれかにおいて、前記処理手段は、前記各磁気センサにより測定された前記測定対象面と略平行方向の直流成分磁場データに基づき第1のコンター図データを生成するとともに、前記各磁気センサにより測定された前記測定対象面と略垂直方向の直流成分磁場データに基づき第2のコンター図データを生成し、生成された第1及び第2のコンター図データに基づき鉄筋コンクリート内部の鉄筋の腐食位置を特定することを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項12】 請求項1〜11のいずれかにおいて、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データの交流成分データを処理することにより、測定対象面の鉄筋コンクリート内部の腐食環境を判定することを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【請求項13】 請求項12において、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データの交流成分データを処理することにより、鉄筋コンクリートの比抵抗分布を求め、比抵抗分部に基づき鉄筋コンクリート内部の腐食環境を判定することを特徴とする鉄筋コンクリートの健全性判定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄筋コンクリートの健全性の判定、特に鉄筋コンクリート内部の鉄筋の健全性や、鉄筋コンクリート内部の腐食環境を判定するために用いる鉄筋コンクリートの健全性判定装置に関する。
【0002】
【背景技術及び発明が解決しようとする課題】鉄筋コンクリートを健全性、特に鉄筋の腐食の状態や、鉄筋コンクリートが腐食しやすい状態にあるかどうかを判定することは、鉄筋コンクリートの保守管理を行う上で極めて重要となる。
【0003】従来、このような判定を行うために、自然電位法や電気抵抗法が用いられていた。
【0004】自然電位法を用いた判定手法としては、鉄筋とコンクリート表面間の電位、特に鉄筋の腐食に伴い発生する電位を多点で測定して鉄筋の腐食を検出するものがある。
【0005】また、他の自然電位法を用いた判定手法としては、鉄筋コンクリート表面における電位差を多点で測定し、各測定点における電位差に基づき鉄筋の腐食を検出するものがある。
【0006】また、前記電気抵抗法を用いた判定手法としては、鉄筋コンクリート表面に接触した電極間に電圧をバイアスしておき、その電極間の抵抗を測定するものがある。このような測定を、鉄筋コンクリート表面の多点において行うことにより、鉄筋コンクリート表面の比抵抗分布を測定でき、この比抵抗分布に基づき鉄筋コンクリートの健全性を判定する。
【0007】このような従来の判定手法は、いずれも、測定電極を各測定ポイント毎に移動させながら測定しなければならない。このため、コンクリート表面の多数の測定ポイントからの測定データを得るためには、時間と手間がかかるという問題があった。
【0008】さらに、前記従来の判定手法では、測定電極を鉄筋コンクリートの表面に接触させ、電位差や抵抗値を測定している。このため、鉄筋コンクリート表面が絶縁性の材料でコーティングされているような場合には、これを除去しなければ判定のための測定ができないという問題もあった。
【0009】さらに、測定電極の接触部分の付近に、コンクリートに比べ導電性が大きく異なる部材、例えば鉄筋や大きな骨材等が存在する場合には、測定誤差が発生し、正確な健全性の判定を行うことが難しいという問題もあった。
【0010】本発明は、このような従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、鉄筋コンクリート表面と接触する測定電極等を必要とすることなく、非破壊状態で鉄筋コンクリートの健全性を簡単にかつ正確に測定することができる鉄筋コンクリートの健全性判定装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】(1)前記目的を達成するため、本発明に係る鉄筋コンクリートの健全性判定装置は、鉄筋コンクリートの面を測定対象面とし、前記測定対象面又はその近傍の磁場を多点測定するセンサ手段と、前記多点測定により得られたデータを処理することにより、前記鉄筋コンクリートの健全性を判定する処理手段と、を含むことを特徴とする。
【0012】本発明は、鉄筋コンクリートの測定面またはその近傍の磁場を多点測定し、これにより得られたデータを処理することにより、鉄筋コンクリートの健全性を判定する構成を採用する。従って、鉄筋コンクリート表面と電気的に接触するプローブが不要となるため、鉄筋コンクリートの健全性の判定を迅速かつ簡単に行うことができ、しかも鉄筋コンクリート表面が絶縁性の材料でコーティングされているような場合でも、健全性の判定を正確に行うことができる。
【0013】さらに、本発明によれば、磁場を測定しているため、鉄筋コンクリート表面の測定ポイント付近に大きな骨材等が存在する場合でも、鉄筋コンクリートの健全性判定を良好におこなうことが可能となる。
【0014】ここにおいて、前記磁場センサ手段は、前記測定対象面と略平行及び略垂直方向の磁場を測定することが好ましい。さらに好ましくは、前記磁気センサは、測定対象面と略平行な水平面内において、水平の異なる2方向、より好ましくは直交する2方向の磁場を測定するように形成すればよい。
【0015】また、前記各磁場センサ手段は、前記測定対象面と略平行方向の磁場を測定する検出部と、前記測定対象面と略垂直方向の磁場を測定する検出部と、を含むように形成すればよい。
【0016】ここにおいて、略平行方向の磁場を測定する検出部は、互いに交差する2方向、より好ましくは直交する2方向の磁場を測定する複数の検出部を組み合わせて形成することが好ましい。
【0017】さらに、前記各磁気センサは、略平行方向の磁場を測定する検出部と、略垂直方向の磁場を測定する検出部とがユニット化されて形成されたものを用いることが好ましい。
【0018】(2)また、前記センサ手段は、所定のルールに基づき配置された複数の磁気センサを含み、鉄筋コンクリートの測定対象面又はその近傍の磁場を多点測定することが好ましい。
【0019】以上の構成を採用することにより、より正確に鉄筋コンクリートの健全性の判定を行うことが可能となる。
【0020】ここにおいて、前記複数の磁気センサは、所定のルールに基づきマトリクス配置されるように形成することが好ましい。
【0021】以上の構成とすることにより、鉄筋コンクリート内部に異常等が存在すると判定された場合、その部位の特定を簡単なデータ処理で正確に行うことが可能となる。
【0022】(3)また、前記磁気センサの間隔は、鉄筋コンクリート内の鉄筋の間隔の少なくとも1/2以下に設定することが好ましい。
【0023】通常鉄筋コンクリート内部における鉄筋の間隔は、狭いもので10cm程度であるため、前記磁気センサの間隔は、5cm以下に設定することが好ましい。これにより、さらに正確に鉄筋コンクリートの健全性の判定を行うことが可能となる。
【0024】(4)また、前記センサ手段は、鉄筋コンクリートの任意の測定対象面に当接し、磁場を多点測定するように形成することが好ましい。
【0025】以上の構成とすることにより、鉄筋コンクリートの任意の箇所の健全性判定を簡単にかつ正確に行うことが可能となる。
【0026】(5)また、前記センサ手段は、バックグラウンドの磁場を相殺する磁場を発生するバックグラウンド相殺手段を含むことが好ましい。
【0027】すなわち、本発明の装置を使用する環境下では、鉄筋コンクリート内部から発生する磁場以外に、地磁気や、送電線等から発生する磁場等が、バックグラウンドの磁場として存在する。本発明によれば、このようなバックグラウンドの磁場を相殺することにより、鉄筋コンクリートの健全性の判定をさらに正確に行うことができる。
【0028】ここにおいて、前記バックグラウンド相殺手段は、各磁気センサの磁場検出方向に向けて存在するバックグラウンド磁場を相殺するように形成することが好ましい。
【0029】例えば、各磁気センサが、測定面と略平行な水平面における2方向の磁場と、前記測定面と略垂直な方向の磁場の、合計3方向の磁場を測定する場合には、各測定方向、ここでは3方向のバックグラウンド磁場をすべて相殺するようにバックグラウンド相殺手段を形成すればよい。このようなバックグラウンド相殺手段としては、例えば各測定方向に向けて個別に磁場を発生させるループを複数組設け、これをセンサ手段と一体的に形成する。そして、測定開始前に、特定の磁気センサが検出する各測定方向の磁場が0となるように、各ループに電流を通電し、バックグラウンド磁場を相殺する。このような設定終了後に、本発明の装置を用いて、鉄筋コンクリートの健全性の判定を行えばよい。
【0030】また、バックグラウンドの磁場の影響は、次のような手法を用いて相殺することもできる。
【0031】すなわち、本発明において、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データの所定データに対する差分を所定のルールに基づき演算し、測定データに含まれるバックグラウンドの磁場影響成分を除去する処理を行うことが好ましい。
【0032】例えば、多点測定により得られた各磁場データと、特定のセンサにより得られた磁場データとの差分を演算することにより、測定データに含まれる共通のバックグラウンドの磁場影響成分を除去することができ、正確な健全性判定を行うことが可能となる。
【0033】ここで、差分演算を行う特定のセンサとしては、前記複数のセンサのいずれかのセンサを所与のルールで適宜選択して用いてもよく、またバックグラウンド影響成分を除去するための専用のセンサを特別に設け、これを差分演算のためのセンサとして用いてもよい。
【0034】(6)また、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データの直流成分データを処理することにより、測定対象面の鉄筋コンクリート中に存在する鉄筋の健全性を判定することが好ましい。
【0035】このように各磁場データの直流成分データを処理することにより、鉄筋コンクリート中に存在する鉄筋に腐食が発生した場合に、その発生を検出することができる。
【0036】ここにおいて、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データに含まれる、測定対象面と水平及び略垂直の直流成分データを処理することにより、測定対象面の鉄筋コンクリート中に存在する鉄筋の健全性を判定するように形成することが好ましい。
【0037】さらに、前記処理手段は、前記各磁気センサにより測定された前記測定対象面と略平行方向の直流成分磁場データに基づき第1のコンター図データを生成するとともに、前記各磁気センサにより測定された前記測定対象面と略垂直方向の直流成分磁場データに基づき第2のコンター図データを生成し、生成された第1及び第2のコンター図データに基づき鉄筋コンクリート内部の鉄筋の腐食位置を特定するように形成することが好ましい。
【0038】コンター図データとして、コンクリートの測定対象面またはその近傍における磁場分布や電流密度分布を求めることにより、鉄筋コンクリート内部の鉄筋の腐食の活性度や、その位置を正確に特定することができる。
【0039】(7)また、本発明によれば、鉄筋コンクリート内部の鉄筋の腐食の発生やその位置だけでなく、鉄筋コンクリート内部の腐食環境も判定することができる。
【0040】すなわち、本発明において、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データの交流成分データを処理することにより、測定対象面の鉄筋コンクリート内部の腐食環境を判定することが好ましい。
【0041】すなわち、多点測定により得られた各磁場データには、前述した直流成分以外に、交流成分も含まれる。この交流成分のデータは、鉄筋コンクリート内部の腐食環境を特定するだけの有効なデータとして用いることができ、この交流成分データを用いることにより鉄筋コンクリート内部の腐食環境を判定することができる。
【0042】ここにおいて、前記処理手段は、前記多点測定により得られた各磁場データの交流成分データを処理することにより、鉄筋コンクリートの比抵抗分布を求め、比抵抗分部に基づき鉄筋コンクリート内部の腐食環境を判定することが好ましい。
【0043】(8)なお、前記各磁気センサとしては、各種のものを用いることができ、例えば磁気抵抗素子を用いた磁気センサや、ホール効果により磁場を検出するホール素子を用いた磁気センサを用いてもよく、さらには超電導磁気素子(SQUID)や、フラックスゲート素子等を必要に応じて適宜用いればよい。なお、必要に応じ、これ以外のセンサを、前記磁気センサとして用いてもよいことは言うまでもない。
【0044】
【発明の実施の形態】次に、本発明の好適な実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0045】(1)全体構成図1、図2には、本発明が適用された鉄筋コンクリートの健全性判定装置の好適な実施例が示されており、図1はその側面概略説明図、図2はセンサ部の正面図である。
【0046】本実施の形態の健全性判定装置は、測定対象となる鉄筋コンクリート10の任意の表面14を測定対象面とするセンサ部100と、スキャナ200と、処理手段として機能するコンピュータ300とを含む。
【0047】センサ部100は、所定のルールに従ってマトリクス配置された複数の磁気センサ110と、各磁気センサ100を保持する保持部材120と、電磁シールド部130とを含み、全体が一体的に形成され、当接面102を鉄筋コンクリート10の表面14の所望位置に当接するように構成されている。
【0048】前記保持部材120として、本実施例では発泡スチロールが用いられている。
【0049】前記電磁シールド部130は、当接面102のエリアを除いたセンサ部100の周囲を蓋状に覆うように形成されている。
【0050】(2)センサ部図2は、センサ部100を、その当接面102側から見た概略説明図である。
【0051】実施例のセンサ部100は、当接面102を鉄筋コンクリート表面14へ当接した際、マトリクス配置された複数の磁気センサ110が当接面102を介して鉄筋コンクリート表面14に対向し、表面14またはその近傍の磁場を多点測定するように構成されている。
【0052】各磁気センサ110は、測定対象となる鉄筋コンクリート10の鉄筋12の配列間隔よりも狭い間隔となるように形成されている。本実施の形態の磁気センサ110の配列間隔は、鉄筋の配列間隔の1/2以下とすることが好ましく、鉄筋コンクリートの鉄筋の最小配列間隔は、10〜15cmと考えられ、従って、実施例の磁気センサ110の配列間隔は、その半分の5cm程度、もしくはこれ以下の間隔とすることが好ましい。
【0053】図3には、前記磁気センサ110の構成が示されている。
【0054】実施例の磁気センサ110は、当接面102に対して略垂直方向の磁気を測定するとともに、当接面102と略平行な方向の磁場を測定するように構成されている。特に、本実施の形態の磁気センサ110は、X、Y、Zの3方向の磁場を測定するように構成されている。
【0055】同図において、X、Y軸は、当接面102と略平行な水平面内において直交する2方向を表し、Z軸は当接面102と直交する方向を表している。
【0056】そして、実施例の磁気センサ110は、Z軸方向、X軸方向、Y軸方向の磁場の強さをそれぞれ個別に測定する第1の検出部112Z、第2の検出部112X、第3の検出部112Yが1つのユニットとして形成されている。
【0057】以上の構成とすることにより、当接面102と直交するZ軸方向の磁場の強さは第1の検出部112Zを用いて検出でき、さらに当接面102と略平行な方向の磁場の強さは、第2及び第3の検出部112X、112Yの検出値をベクトル的に合成した値として測定することができる。
【0058】これら各検出部112Z、112X、112Yは、例えば磁気抵抗素子、ホール素子、超電導磁気素子(SQUID)、フラックスゲート素子等の各種の素子を用いて形成することができる。本実施例では、磁気抵抗素子が用いられている。
【0059】磁気抵抗素子は、いわゆる磁気抵抗効果を用いて所定方向の磁場を感知するように構成されている。その具体的な構成は、すでに周知であるので、ここではその説明は省略する。
【0060】以上の構成とすることにより、実施例のセンサ部100を、測定対象となる鉄筋コンクリート10の表面14の所望位置に当接し、測定を開始することにより、鉄筋コンクリート表面14と直交する方向の磁場は第1の検出部112Zにより検出され、コンクリート表面14と略平行な磁場は第2、第3の検出部112X、112Yを用いて検出されることになる。
【0061】しかも、本実施の形態では、センサ部100の当接面102に沿って、複数の磁気センサ100が図2に示すようにマトリクス配置されているため、コンクリート表面14の磁場を多点測定することができる。
【0062】スキャナ200は、マトリクス配置された各磁気センサ110の検出信号を所定の順番で順次コンピュータ300へ供給する。なお、スキャナー200は、センサ部100と一体的又はその近傍に設けることが好ましい。
【0063】コンピュータ300は、処理手段として機能するものであり、このようにして順次供給されるデータを処理することにより、鉄筋コンクリート10の健全性の判定を行う。
【0064】本実施例では、鉄筋コンクリート10の内部に存在する鉄筋12の腐食等の健全性を判定するとともに、鉄筋コンクリート10が間接的に腐食環境にあるか否かを判定する。
【0065】以下にその詳細を説明する。
【0066】(3)鉄筋の腐食等の健全性判定図4には、鉄筋コンクリート10の内部の鉄筋12のあるエリアPに、腐食が発生した状態が模擬的に示されている。
【0067】図4(A)に示すように、鉄筋12に腐食が発生すると、鉄筋コンクリート10内には鉄筋の腐食ポイントPを起点として、矢印1000で示す方向に直流電流が流れる。そして、この直流電流に対して図中矢印2000で示す方向に磁場が発生することになる。
【0068】すなわち、鉄筋12に腐食が発生すると、鉄が酸化される化学反応が進行する。このときに、腐食ポイントPの周囲にイオンが発生し、図中矢印1000で示す方向に電流を流す起電力が発生する。具体的には、腐食ポイントPを中心として鉄筋12の両側に向けて電流が流れ、これがコンクリート内部を循環して腐食ポイントPに戻るという電流の流れが発生する。このようにして電流が流れると、図中矢印2000で示す方向に磁場が発生する。
【0069】図4(B)は、図4(A)のA−A断面概略である。同図に示すように、鉄筋12内を流れる電流により、その周囲に磁場Hが発生する。コンクリート表面またはその近傍における磁場Hの強さは、マトリクス配置された各磁気センサにより、図4(C)に示すように、略垂直方向成分HV及び水平方向成分HHとして検出される。
【0070】なお、図4(C)は、各磁気センサ110で検出される略垂直及び水平方向の磁場に含まれる直流成分HV、HHの分布を表している。
【0071】コンピュータ300は、各磁気センサ110が測定するHV及びHHの値に基づき、図5に示すように、コンクリート表面の磁場分布や電流密度分布を表すコンター図を生成する。図5(A)は、略垂直方向成分HVに基づき作成したコンター図、同図(B)は水平方向成分HHに基づき作成したコンター図である。
【0072】従って、鉄筋コンクリート内部の鉄筋12に腐食等の以上が発生した場合には、この腐食に伴いコンクリート内部を流れる電流により図5(A)、(B)に示すような磁場分布や電流密度分布が得られ、これにより鉄筋の腐食の発生及びその活性状態(腐食の進行速度)を判定することができる。
【0073】これに加えて、図4(B)、(C)に示すように、磁場の略垂直方向成分HVの絶対値が最大となる2点の位置14a、14bと、鉄筋12とを結ぶ線は、コンクリート表面14に対して45度の角度をなす。従って、図4(C)に示すように、磁場HV、HHが測定されることにより、図4(B)に示す前述した2点14a、14bを特定し、この2点の位置14a、14bから鉄筋コンクリート14の内部に存在する電流の流れる鉄筋12の空間的な位置を特定することができる。
【0074】しかも、鉄筋12に腐食等が発生した場合に得られる図5(A)、(B)に示す分布は、鉄筋12の腐食ポイントPを中心にして特定のパターンを示す。従って、図5(A)、(B)に示す分布から、鉄筋コンクリート10内の鉄筋12に腐食が発生した場合には、その腐食ポイントPの位置を正確に特定することができる。
【0075】なお、前述した鉄筋コンクリート10の健全性の判定のための説明は、説明を簡単なものとするために、鉄筋コンクリート10の1カ所に腐食が発生した場合を説明した。しかし、実際には1本の鉄筋12の複数箇所に腐食が発生したり、または複数の鉄筋に腐食が発生する場合もある。このような場合には、図10(A)に示すように得られる鉄筋コンクリート表面の略垂直及び水平方向の磁場分布のデータ(同図ではHVのみを示す)をインバージョン、すなわち逆解析することにより、図11(B)に示すように各腐食ポイント毎の磁場分布HV1、HV2…を得ることができ、この結果、鉄筋コンクリート10内部に存在する複数の腐食部位Pの存在及びその位置を検出することができる。
【0076】(4)鉄筋コンクリートの腐食環境の健全性判定前述したように、鉄筋コンクリート10内に存在する鉄筋12の腐食等の健全性判定は、磁気センサ110で検出される磁場の略垂直及び水平方向の磁場に含まれる直流成分に基づいて行われる。
【0077】ところが、鉄筋コンクリート10等が存在する環境内には、各種の交流磁場がバックグラウンドとして存在することが多く、このような環境のもとではバックグラウンドとして存在する交流磁場により、鉄筋コンクリート10内に起電力が発生し、交流電流が流れることになる。磁気センサ110は、このような交流電流の発生によって引き起こされる磁場を、前述したと同様に略垂直方向の交流成分H´V及び水平方向の交流成分H´Hとして検出する。
【0078】このようにして検出される略垂直及び水平方向の交流成分H´Vと、水平方向の交流成分H´Hから、次式で示す関数に基づき、鉄筋コンクリート10の比抵抗ρが求められることが知られている。
ρ=f((H´V/H´H2
具体的には、(H´V/H´H2と、比抵抗ρとの間には比例関係があることが知られている。
【0079】従って、コンピュータ300は、各磁気センサ110で測定される磁場の略垂直及び水平方向成分の値から、鉄筋コンクリート10の比抵抗分布を求めることができる。
【0080】図6には、鉄筋コンクリートの抵抗率ρと、鉄筋コンクリートの腐食性との関係が示されている。
【0081】コンピュータ300は、前述したように得られた鉄筋コンクリート10の比抵抗分布と、図6に示す評価のためのデータとに基づき、鉄筋コンクリート10が間接的に腐食環境にあるか否かを判定する。
【0082】(5)バックグラウンドノイズの相殺ところで、センサ部100を使用する環境では、地磁気やその他の磁場(例えば送電線から発生する磁場)等のバックグラウンドノイズが存在する。バックグラウンドとして存在する磁場は、比較的大きいものであるため、これを相殺してやらなければ、健全性の判定を正確に行うことができない。
【0083】本実施例の装置では、このようなバックグラウンドを相殺する手法として、以下に説明する2つの手法のいずれか1つを適宜採用する。
【0084】(5−1)バックグラウンドを相殺する第1の手法マトリクス配置された複数の磁気センサ110のいずれか1つをバックグラウンドの基準値検出用として用い、この基準値検出用のセンサの検出値を、各センサ110の検出値から引き算する差分演算処理を行う。
【0085】このような差分演算処理を行うことにより、各センサ110の検出値からバックグラウンドの影響が相対的に相殺されることになり、この結果、バックグラウンドノイズの影響が相対的に相殺された、コンター図データを得ることができる。
【0086】このコンター図データを用いることにより、バックグラウンドの影響を相殺し、鉄筋コンクリート10の内部の鉄筋12の健全性判定を行うことができる。
【0087】なお、バックグラウンドの基準値検出用のセンサは、前述したようにマトリクス配置された磁気センサ110のいずれか1つを用いてもよいが、これ以外にも、センサ部100内にバックグラウンドの基準値検出用の専用のセンサを設け、前述したような差分演算処理を行ってもよい。
【0088】(5−2)バックグラウンドの影響を相殺する他の手法センサ部100に、バックグラウンドの磁場を発生するバックグラウンド相殺手段を設ける。
【0089】例えば、センサ部100のいずれかの箇所にバックグラウンド検出用のセンサ110BGを設ける。このセンサ110BGは、マトリクス配置された他の磁気センサ110と同様に形成される。
【0090】そして、図7に示すように、磁気センサ110BG及びマトリクス配置された複数のセンサ群110が検出するZ軸方向、X軸方向、Y軸方向のバックグラウンド磁場をそれぞれ相殺するZ軸方向、X軸方向、Y軸方向の磁場をそれぞれ発生するための第1のループ140Z、第2のループ140X、第3のループ140Yをセンサ部100に設ける。
【0091】これら3組のループ140Z、140X、140Yは、それぞれ電流を通電することによりバックグラウンド相殺用の磁場を発生するコイルとして機能するものである。
【0092】そして、センサ部100を用いて健全性の判定を行うに先立って、磁気センサ110BGの検出するZ軸方向、X軸方向、Y軸方向の3方向のバックグラウンドの磁場が0となるように、各ループ140Z、140X、140Yに通電して、バックグラウンドの影響が除去できるような状態を設定する。このように設定された状態では、マトリクス配置された磁気センサ110に対するバックグラウンドの影響も除去されることになる。
【0093】この状態で、センサ部100を鉄筋コンクリート10の所望の表面14に当接することにより、鉄筋コンクリート10の健全性の判定を、バックグラウンドの影響を受けることなく正確に行うことができる。
【0094】なお、ここではバックグラウンドを検出する専用の磁気センサ110BGを設ける場合を例に取り説明したが、マトリクス配置された磁気センサのいずれか1つを、バックグラウンド検出用の磁気センサとして用い、前述と同様な処理を行ってもよい。
【0095】(6)判定回路の具体例図8には、本発明の適用される健全性判定装置の機能ブロック図の一例が示されている。
【0096】実施例において、コンピュータ300は、ディスプレイ等の出力部340、キーボード等の入力部350を有するとともに、バックグラウンド補正部310、スキャナ制御部320、前述した判定処理を行ないその判定結果を出力部340に出力する処理部330としても機能する。
【0097】バックグラウンド補正部310は、前述した健全性の判定処理に先立って、各ループ140Z、140X、140Yの通電電流を制御し、バックグラウンド補正用のセンサ110BGが検出するZ軸方向、X軸方向、Y軸方向のバックグラウンド磁場の値が0となるような制御を行う。具体的には、センサ110BGの検出データに基づき、ループ駆動部142を制御し、ループ郡140Z、140X、140Yのそれぞれに供給する電流を、センサ110BGが検出するZ軸、X軸、Y軸方向のバックグラウンドの磁場の値が0となるように制御する。
【0098】前記スキャナ制御部320は、スキャナ200を制御し、マトリクス配置された磁気センサ110で検出されるデータを順次処理部330に取り込むように制御を行う。
【0099】処理部220は、このようにして得られたデータに基づき、前述した健全性の判定処理を行い、その判定結果を出力部340へ出力する。
【0100】図9は、本実施例の装置の動作を示すフローチャートである。
【0101】まずステップS10において、バックグラウンド補正部310を用いて、センサ部100に作用するバックグラウンドとしての磁場の影響がなくなるように各ループ140Z、140X、140Yに流れる電流を制御する。
【0102】そして、ステップS20〜S50の、判定動作を行う。
【0103】まず、センサ部100を、鉄筋コンクリート10の所望の表面10に当接し、判定のためのデータ収集を開始する。
【0104】このとき、マトリクス配置された磁気センサ110を順次スキャンし、検出データをコンピュータ300に取り込む。
【0105】次にステップS30で、得られたデータを元に、図5に示すような鉄筋コンクリート表面の磁場分布や電流密度分布を作成し、鉄筋コンクリート10の内部に存在する鉄筋の健全性の判定を行う。
【0106】さらに、ステップS10において、得られたデータに基づき鉄筋コンクリート表面の比抵抗分布を作成し、鉄筋コンクリートが腐食環境にあるか否かを間接的に評価する。
【0107】そして、ステップS50で、ステップS30、S40で得られた判定、評価等の結果を出力部340に出力する。具体的にはディスプレイ上に表示したり、プリンタ等からプリントアウト出力する。
【0108】このようにして、本実施例の健全性判定装置によれば、センサ部100を鉄筋コンクリート10の所望の表面に当接するのみで、その当接エリアを測定対象面として、鉄筋コンクリート10の健全性の判定を迅速にかつ簡単に行うことができる。
【0109】なお、本発明では、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で各種の変形実施が可能である。
【0110】例えば、前記実施例では、コンクリート表面の略垂直及び水平方向の磁場をそくていする場合を例に取り説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、場合によってはいずれか1方向のみを測定することによっても、良好な判定結果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
【識別番号】000174910
【氏名又は名称】三井金属資源開発株式会社
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
【出願日】 平成12年1月17日(2000.1.17)
【代理人】 【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫 (外2名)
【公開番号】 特開2001−194341(P2001−194341A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−7785(P2000−7785)