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【発明の名称】 流体法による強制冷凍型超電導コイルの常電導転移検出法
【発明者】 【氏名】杉本 誠

【氏名】磯野 高明

【氏名】小泉 徳潔

【氏名】布谷 喜彦

【氏名】辻 博史

【要約】 【課題】流体法による強制冷凍型超電導コイルの常電導転移検出法であり、特に、核融合装置又はエネルギー貯蔵装置等に使用される強制冷凍型超電導コイルの常電導転移(クエンチ)を検出する方法。

【解決手段】ヘリウムによる強制冷凍型導体を用いた超伝導コイルにおける常電導転移を検出する方法において、ヘリウム流量低下式を作成し、これにヘリウムの実効加熱時間を導入して得られた流量比と発熱量との関係を使用することにより、実際の流量比から常電導転移時のヘリウムの発熱量を予測する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヘリウムによる強制冷凍型導体を用いた超伝導コイルにおける常電導転移を検出する方法において、下記のヘリウム流量低下式にヘリウムの実効加熱時間を導入して得られた流量低下率と発熱量との関係を使用することにより、実際の流量比から常電導転移時のヘリウムの発熱量を予測する方法。

ここで、u0は初期ヘリウム流速、uは加熱後の(低下した)ヘリウム流速、Lは加熱部の長さ、teff(max)は実効加熱時間の最大値であり、ρ0、ρ1はそれぞれ温度T0及びT1におけるヘリウム密度である。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体法による強制冷凍型超電導コイルの常電導転移検出法に関するものであり、特に、核融合装置又はエネルギー貯蔵装置等に使用される強制冷凍型超電導コイルの常電導転移(クエンチ)を検出する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、強制冷凍型超電導コイルは、その優れた電気、機械的特性から核融合炉用などの大型コイルへ適用されている。このコイル運転時に、コイル内部で発生する常電導の検出はコイル保護のために不可欠である。コイルが大型化してコイルの蓄積エネルギーが大きくなるほど、その常電導の検出には重要度が増す。常電導の検出に失敗し、コイル内部でコイル蓄積エネルギーが消費されると、最悪の場合にはコイルは焼損してしまう。
【0003】そこで、図1に示すように、強制冷凍型超電導コイルの冷却流路に冷媒を流しながらコイルに電流を流す場合、コイルが超電導状態に維持されていれば、コイルに熱が発生することなく電流が流れる。しかし、コイルに常電導(通常の電導状態)が発生した場合、コイルに蓄積されるエネルギーを素早くコイルの外に取出さないと、超電導コイルの蓄積エネルギーは全てコイル内で消費され、コイルの焼損、メルトダウンが生じる。そこで、信頼性の高い常電導への転移を検出することが不可欠である。従来は、電圧法(中点法、補正コイル法)及び流体法等の複数の常電導への転移を検出する方法を併用して常電導転移を検出することが行われていた。
【0004】即ち、図2に示すように、電圧法においては、超電導コイルの電圧が急激に下降するにつれてコイルに流れる電流が急激に増大し、超電導コイルの電圧が急激に上昇するにつれてコイルに流れる電流が急激に減少する。そこで、この電圧を検知することにより超電導コイルの常電導への転移を検出していたが、この電圧法では、コイル電圧からインダクタンスによる電圧を差引く必要があった。
【0005】図3に示すように、流体法においては、超電導コイルを冷却するために流される冷媒の流量が減少するにつれて電圧が急激に上昇し、冷媒の流量が0になると電圧が急激に減少する。又、冷媒の流量がしだいに上昇すると、電圧が急激に上昇し、再び急激に減少する。その電圧のピーク間が常電導状態を示している。この流体法では、常電導状態を冷媒流量が0になることで直接測定することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の常電導転移検出法である電圧法(補正コイル法、中点法等)では、コイルのパルス運転時に発生するインダクタンス分の電圧を差し引き、常電導転移時の常電導部からの発生電圧を測定する必要があった。このためS/N比の問題が常にあった。
【0007】一方、供給している冷媒の流量変化からコイル内部での常電導発生を検出する流体法は「超電導コイルの常電導転移検出法」として特許第2798265号に開示されている。そこでは、強制冷凍型超電導体を用いた超電導コイルにおいて、その高磁界側の冷媒導入部に流量計を取り付け、この流量計の変化により超電導転移の検出ことが行われている。
【0008】又、これらの2つの異なる原理を用いた常電導転移検出法を併用して超電導コイルの常電導転移を検出することも行っていた。しかし、これらの従来技術においては、常電導転移発生時における冷媒の流量低下量と内部発熱量の相関が分らず、冷媒の流量(流速)変化から、コイル内部での常電導転移の際の発生量を直接予測することがきないという問題点があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記従来の検出方法を改良して、供給している冷媒の流量(流速)変化から直接コイル内部での常電導転移の際の発生量を予測する常電導転移(クエンチ)検出法である。即ち、従来技術では、コイル内部での常電導の発生量を直接予測することができなかったが、本発明においては、コイル内部での発熱量と冷媒の流量低下を式で関連づけ、これに基づいてコイルが常電導転移(クエンチ)した場合の流量変化量を測定することにより常電導発生量を予測できるようになった。
【0010】
【発明の実施の形態】図4に示されるような、ヘリウムで強制冷凍される円筒形状の超電導コイルにおいて、局所的かつ急速な加熱をその強制冷凍超電導コイルに加え、これにより生ずる加熱部におけるヘリウムの温度上昇とコイルの発熱量を式で示すと、次の式(1)で表される。
【0011】
【式1】

【0012】ここで、Estrandは超電導素線の単位体積あたりの発熱量(J/m3)、Aheはヘリウムの流路断面積(m2)、Astrandは超電導素線の断面積(m2)、ρはヘリウム密度(kg/m3)、Cpはヘリウム定圧比熱(J/(kg・K))、Tはヘリウム温度(K)、T0はヘリウム初期温度(K)、T1はヘリウム加熱後温度(K)である。
【0013】叉、図4の場合におけるヘリウムの流量低下式は次の式(2)で表される。
【0014】
【式2】

【0015】ここで、u0は初期ヘリウム流速、uは加熱後の(低下した)ヘリウム流速、Lは加熱部の長さ、Δtは加熱時間であり、ρ0、ρ1はそれぞれ温度T0及びT1におけるヘリウム密度である。
【0016】更に叉、超電導コイルの管路の壁が加熱され、これが管路内のヘリウムに伝わって行く場合において、超電導コイルのヘリウム管路内の中心、即ち最も加熱源から離れた位置yをy=Dh/2で表し、この位置yで管壁から熱が伝わり、そこでのヘリウム温度が最大となる時間を実効加熱時間と定義すると、その実効加熱時間(teff)は次の式(3)で表される。
【0017】
【式3】

【0018】ここで、Dhは水力直径、Cpはヘリウム定圧比熱(J/(kg・K))、λはヘリウムの熱伝導率(W/(m・K))である。
【0019】y軸に沿ったヘリウム温度分布は図5に示され、叉加熱源の位置、即ち管壁の位置であるy=0におけるヘリウム温度の時間経過及び実効加熱時間は図6に示されとおりである。この実効加熱時間はヘリウム定圧比熱(Cp)及び熱電導率λの関数であり、ヘリウムの定圧比熱の温度、圧力の依存性を示す図7のとおり、温度4K近傍ではヘリウムの定圧比熱が最大値を待つ。このため、実効加熱時間の温度、圧力依存性を示す図8のとおり、実効加熱時間もこの温度領域で最大値を持つことになる。図7に示されるとおり、0.33MPaの圧力では定圧比熱25.5J/(g・K)の最大値を5Kで有する。叉、0.33MPaでは4.5Kでの定圧比熱は4,4J/(g・K)である。
【0020】上記式(3)で定義した実効加熱時間は、4.5Kで1.7sであるものが、5.7Kで最大値となり、その値は5.7sになる。僅かの温度差で、ヘリウムの定圧比熱と実効加熱時間は大きく変動する。
【0021】急速加熱によってヘリウム温度は上昇するため、その最大値付近の実効加熱時間がヘリウムの流量低下に対して支配的であることが分かる。そこで、ヘリウムの流量低下式(2)に実効加熱時間の最大値teff(max)を用いて表すと、次の式(4)で表される。
【0022】
【式4】

【0023】ここで、u0は初期ヘリウム流速、uは加熱後の(低下した)ヘリウム流速、Lは加熱部の長さ、teff(max)は実効加熱時間の最大値であり、ρ0、ρ1はそれぞれ温度T0及びT1におけるヘリウム密度(kg/m3)である。
【0024】式(4)において、ヘリウム温度がT0→T1に上昇すると、ヘリウムの密度はρ0→ρ1となり、またこの温度領域ではρ0>ρ1となる。一方、コイル内部で発熱が起こると、その温度上昇は式(1)で求められ、その時にはヘリウム温度はT0→T1(T0<T1)になっている。このT1の時のヘリウム密度ρ1によりその時の発熱量が式(4)と関連付られる。
【0025】したがって、図9に示される実線は、その横軸の発熱量(mJ/cm3−strand)を式(1)から計算し、この時のヘリウム温度T1の際のヘリウム密度ρ1を使用して式(4)から図9の縦軸の流量低下率u/u0が得られる。
【0026】図9から発熱量を予測する際には、例えば、冷媒条件0.78Mpa、初期流量4g/sの場合、u/u0=0.5となる発熱量は2800mJ/cm3−strandである。即ち、超電導素線の体積当り、2800mJ/cm3の発熱がコイル内部で起きると、u/u0=0.5となのであるから、初期流量が4g/sから2g/sへと流量が低下することを意味している。
【0027】また、コイル内部での発熱量の許容値はコイル設計条件により決定する。これに応じて許容できる流量低下率(u/u0)が決まり、これがコイルの遮断操作管理の値になる。
【0028】
【実施例】実効加熱時間を導入した流量低下式(4)と実際の測定値(点線)との比較を行った結果を図9に示す(流量低下式の値を実線、測定値を点線)。ここでは、測定結果から、ヘリウム流量低下量はその初期値に依存するために、初期流量の異なる3つのヘリウム冷媒を使用する条件下で比較した。その結果、ヘリウム初期流量が大きいほど、流量低下式による解析値と測定値とは一致した。叉、入熱量が小さい(<3000mJ/cm3−strand)ほど、両者は一致した。
【0029】即ち、コイルの加熱量と、その際の実効加熱時間を導入した流量低下式から得られるヘリウムの流量比(u/u0)との関係をヘリウム流の各圧力について作成しておき、これと実際の各圧力についてのヘリウム流量比を比較することにより、コイルにおける発熱量を予測することができた。
【0030】したがって、従来技術では、コイル内部での常電導の発生量を直接予測することができなかったが、本発明においては、実効加熱時間の最大値を流量低下式の加熱時間として適用することにより、コイルが急速加熱された場合のヘリウムの流量低下量からコイル内部の発熱量を予測することができた。
【0031】
【発明の効果】本発明により、コイルが常電導転移した場合の流量変化量を測定することにより内部発熱量を予測できるもで、これまで未解明であった常電導転移発生時のコイル内部のエネルギー消費量が、ヘリウム流量低下量から直接測定することが可能になり、ヘリウム流量変化量を監視するだけでコイルの保護動作管理を行うことができるようになった。
【出願人】 【識別番号】000004097
【氏名又は名称】日本原子力研究所
【出願日】 平成12年1月6日(2000.1.6)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫 (外5名)
【公開番号】 特開2001−194327(P2001−194327A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−813(P2000−813)