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【発明の名称】 溶液濃度計測方法および溶液濃度計測装置
【発明者】 【氏名】河村 達朗

【要約】 【課題】被検溶液中の特定成分の計測可能な濃度範囲を拡大し、さらに、サンプルセルの汚れ、被検溶液の懸濁、浮遊粒子などの阻害因子がある場合でも、正確な溶液濃度を簡便に測定できる手段を提供する。

【解決手段】特定成分に起因して被検溶液の光学特性を変化させる試薬を混入する前後の被検溶液の透過光強度および/または散乱光強度を計測し、これらの計測値から被検溶液中の特定成分の濃度を求める。さらに前記方法でタンパク質濃度を求めるとともに、前記試薬混入前に被検溶液の旋光度を計測し、タンパク質とタンパク質以外の旋光性物質の濃度とを確定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検溶液中の特定成分の濃度を計測する方法であって、前記特定成分に起因する被検溶液の光学特性を変化させる試薬を混入する前後の前記被検溶液の透過光強度および/または散乱光強度を計測し、これらの計測値にもとづいて、前記被検溶液中の特定成分の濃度を求めることを特徴とする溶液濃度計測方法。
【請求項2】 前記透過光強度および散乱光強度を測定し、前記試薬混入前後の散乱光強度の計測値から、低濃度域の前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を決定し、前記試薬混入前後の透過光強度の計測値から、高濃度域の前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を決定することを特徴とする請求項1記載の溶液濃度計測方法。
【請求項3】 前記透過光強度および散乱光強度を測定し、前記試薬混入前後の透過光強度の計測値と前記試薬混入前後の散乱光強度の計測値とを照合することにより、前記被検溶液中の浮遊粒子による誤計測の有無を検知することを特徴とする請求項1または2記載の溶液濃度計測方法。
【請求項4】 濃度が既知の基準溶液と前記被検溶液とについて、前記試薬混入前後の透過光強度および散乱光強度の少なくとも一方を同条件で計測し、前記基準溶液の計測値により、前記被検溶液の計測値を補正して前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶液濃度計測方法。
【請求項5】 前記基準溶液が、前記特定成分を含まない水であることを特徴とする請求項4記載の溶液濃度計測方法。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の溶液濃度計測方法によって前記被検溶液のタンパク質濃度を求め、前記試薬混入以前に前記被検溶液の旋光度を計測することによって前記被検溶液中の旋光性物質濃度を求め、ついで前記タンパク質濃度および前記旋光性物質濃度から、前記タンパク質以外の旋光性物質の濃度を求めることを特徴とする溶液濃度計測方法。
【請求項7】 被検溶液に光を照射する光源と、前記光が前記被検溶液を透過するように前記被検溶液を保持するサンプルセルと、前記被検溶液を透過した光を検知する光センサー1および/または前記被検溶液中を前記光が伝搬する際に発生した散乱光を検知する光センサー2と、前記被検溶液に前記被検溶液中の特定成分のみの光学特性を変化させる試薬を混入する混入機と、前記混入機を制御し、前記光センサーの出力信号を解析するコンピューターとを備え、前記試薬混入前後の前記光センサー1および/または2の出力信号の計測値から、前記被検溶液中の特定成分の濃度を求めることを特徴とする溶液濃度計測装置。
【請求項8】 略平行光を投射する単色光源と、前記略平行光のうち特定方向の偏光成分のみを透過する偏光子と、前記偏光子を透過した光が透過するように被検溶液を保持するサンプルセルと、前記被検溶液に磁場を印加する手段と、前記磁場を制御する磁場制御手段と、前記磁場を制御する際に前記磁場を振動変調する磁場変調手段と、前記被検溶液を透過した光のうち特定方向の偏光成分のみを透過する検光子と、前記検光子を透過した光を検知する光センサーと、前記光センサーの出力信号を前記磁場変調手段の振動変調信号を参照信号として位相敏感検波するロックインアンプと、前記磁場制御手段の磁場制御信号と前記ロックインアンプの出力信号にもとづいて前記被検溶液の旋光度を算出し、これを旋光性物質の濃度に換算する手段と、前記被検溶液に前記被検溶液中の特定成分のみの光学特性を変化させる試薬を混入する混入機と、前記混入機を制御し、前記光センサーの出力信号を解析するコンピューターとを備え、前記試薬混入前後に計測した被検溶液の透過光強度の計測値から、または前記光センサーの出力信号を前記透過光の信号と見なして、前記光センサーの出力信号の計測値から、前記被検溶液のタンパク質濃度を求め、前記算出された旋光度と前記タンパク質濃度から、前記被検溶液の前記タンパク質濃度と前記タンパク質以外の旋光性物質の濃度を確定することを特徴とする溶液濃度計測装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被検溶液中に溶解している溶質の濃度、例えばタンパク質濃度および旋光性物質の濃度を計測する方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の溶液濃度計測装置としては、分光器、液クロマトグラフィなどがある。また、尿検査装置としては、試薬を含浸した試験紙などに尿を浸し、これの呈色反応を分光器などによって観測し、尿の成分を検査するものがあった。ここで使用される試験紙は、グルコース、タンパク質等の個々の検査項目に応じてそれぞれ用意されている。
【0003】しかしながら、上記のような方式においては、装置が大規模になるという問題があった。また、計測できる濃度範囲が限定されており、限定濃度範囲を超えた被検溶液は希釈して供試する必要があり、工程が煩雑になる問題もあった。さらに、被検溶液そのものの濁りや光学窓の汚れに影響されて、正確な計測結果が得られない場合があった。また、被検溶液中に浮遊している各種粒子や泡等が、計測に使用されている光の光路中に存在すると、これによって誤動作が引き起こされるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題を解決して、信頼性が高く、小型で維持管理が容易な溶液濃度計測装置およびその装置設計を可能にする計測方法を提供することを目的とする。また、本発明は、簡便で高精度な尿検査を可能にする手段を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決すべく、本発明は、被検溶液中の特定成分の濃度を計測する方法であって、前記特定成分に起因する被検溶液の光学特性を変化させる試薬を混入する前後の前記被検溶液の透過光強度および/または散乱光強度を計測し、これらの計測値にもとづいて、前記被検溶液中の特定成分の濃度を求めることを特徴とする溶液濃度計測方法を提供する。
【0006】この場合、前記透過光強度および散乱光強度測定し、前記試薬混入前後の散乱光強度の計測値から、低濃度域の前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を決定し、前記試薬混入前後の透過光強度の計測値から、高濃度域の前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を決定するのが有効である。さらにこの場合、前記試薬混入前後の透過光強度の計測値と前記試薬混入前後の散乱光強度の計測値とを照合することにより、前記被検溶液中の浮遊粒子による誤計測の有無を検知するのが有効である。
【0007】また、濃度が既知の基準溶液と前記被検溶液とについて、前記試薬混入前後の透過光強度および散乱光強度の少なくとも一方を同条件で計測し、前記基準溶液の計測値により、前記被検溶液の計測値を補正して前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を求めるのが有効である。前記基準溶液は、前記特定成分を含まない水であるのが有効である。
【0008】さらに本発明は、上記溶液濃度計測方法によって前記被検溶液のタンパク質濃度を求め、前記試薬混入以前に前記被検溶液の旋光度を計測することによって前記被検溶液中の旋光性物質濃度を求め、ついで前記タンパク質濃度および前記旋光性物質濃度から、前記タンパク質以外の旋光性物質の濃度を求めることを特徴とする溶液濃度計測方法をも提供する。
【0009】また、本発明は、被検溶液に光を照射する光源と、前記光が前記被検溶液を透過するように前記被検溶液を保持するサンプルセルと、前記被検溶液を透過した光を検知する光センサー1および/または前記被検溶液中を前記光が伝搬する際に発生した散乱光を検知する光センサー2と、前記被検溶液に前記被検溶液中の特定成分のみの光学特性を変化させる試薬を混入する混入機と、前記混入機を制御し、前記光センサーの出力信号を解析するコンピューターとを備え、前記試薬混入前後の前記光センサー1および/または2の出力信号の計測値から、前記被検溶液中の特定成分の濃度を求めることを特徴とする溶液濃度計測装置も提供する。
【0010】さらに本発明は、略平行光を投射する単色光源と、前記略平行光のうち特定方向の偏光成分のみを透過する偏光子と、前記偏光子を透過した光が透過するように被検溶液を保持するサンプルセルと、前記被検溶液に磁場を印加する手段と、前記磁場を制御する磁場制御手段と、前記磁場を制御する際に前記磁場を振動変調する磁場変調手段と、前記被検溶液を透過した光のうち特定方向の偏光成分のみを透過する検光子と、前記検光子を透過した光を検知する光センサーと、前記光センサーの出力信号を前記磁場変調手段の振動変調信号を参照信号として位相敏感検波するロックインアンプと、前記磁場制御手段の磁場制御信号と前記ロックインアンプの出力信号にもとづいて前記被検溶液の旋光度を算出し、これを旋光性物質の濃度に換算する手段と、前記被検溶液に前記被検溶液中の特定成分のみの光学特性を変化させる試薬を混入する混入機と、前記混入機を制御し、前記光センサーの出力信号を解析するコンピューターとを備え、前記試薬混入前後に計測した被検溶液の透過光強度の計測値から、または前記光センサーの出力信号を前記透過光の信号と見なして、前記光センサーの出力信号の計測値から、前記被検溶液のタンパク質濃度を求め、前記算出された旋光度と前記タンパク質濃度から、前記被検溶液の前記タンパク質濃度と前記タンパク質以外の旋光性物質の濃度を確定することを特徴とする溶液濃度計測装置も提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】上述のように、本発明の溶液濃度計測方法は、被検溶液中の特定成分の濃度を計測する方法であって、前記特定成分に起因する被検溶液の光学特性を変化させる試薬を混入する前後の前記被検溶液の透過光強度および/または散乱光強度を計測し、これらの計測値にもとづいて、前記被検溶液中の特定成分の濃度を求めることを特徴とするものである。
【0012】上記の試薬は、被検溶液中の濃度測定対象とする特定成分のみと反応して、変色や濁りなどを生じ、前記被検溶液にその特定成分の濃度に対応した度合いの光学的変化を引き起こすものである。このような試薬を被検溶液に混入させることで、被検溶液の光学特性を変化させ、この特定成分の濃度を測定することができる。例えば、尿を被検溶液とした場合には、試薬を混入してタンパク質成分を凝集させることで尿の光学特性を変化させ、試薬混入前後の散乱光強度の差(試薬混入後の散乱光強度−試薬混入前の散乱光強度)および/または試薬混入前後の透過光強度の比(試薬混入後の透過光強度/試薬混入前の透過光強度)から、尿中のタンパク質を求めることができる。
【0013】さらに、本発明の溶液濃度計測装置は、前記被検溶液に光を照射する光源と、前記光が前記被検溶液を透過するように前記被検溶液を保持するサンプルセルと、前記被検溶液を透過した光を検知する光センサー1および/または前記被検溶液中を前記光が伝搬する際に発生した散乱光を検知するように配置した光センサー2と、前記被検溶液に前記被検溶液中の特定成分に起因する被検溶液の光学特性を変化させる試薬を混入する混入機と、前記混入機を制御し、前記光センサー1および/または光センサー2の出力信号を解析するコンピューターとを備え、前記試薬混入前後の前記光センサー1および/または光センサー2の出力信号の計測値から、前記被検溶液中の特定成分の濃度を求めることを特徴とするものである。
【0014】上記の本発明による溶液濃度計測方法あるいは装置により、前記試薬混入前後の透過光強度または散乱光強度の少なくとも何れか一方を計測することによって、前記被検溶液中の特定成分の濃度を求めることができる。そして、透過光強度と散乱光強度の双方を計測することにより、さらに下記の利点が付加される。まず、前記試薬混入前後の散乱光強度の計測値から、低濃度域の前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を決定し、前記試薬混入前後の透過光強度の計測値から、高濃度域の前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を決定することにより、より広い濃度範囲の被検溶液について、高精度に前記特定成分の濃度を求めることができる。なお、本発明においていう「高濃度」および「低濃度」については、後述する。
【0015】さらに、前記試薬混入前後の透過光強度の計測値と前記試薬混入前後の散乱光強度の計測値とを照合することにより、前記被検溶液中における泡、未溶解の各種塩、ほこり、ゴミなどの浮遊粒子による誤計測の有無を検知することができ、誤測定や装置の誤作動を防止することができる。また、濃度が既知の基準溶液と前記被検溶液とについて、前記試薬混入前後の透過光強度および/または前記試薬混入前後の散乱光強度を同条件で計測し、前記基準溶液の計測値により、前記被検溶液の計測値を補正して前記被検溶液中の前記特定成分の濃度を求めることにより、光学窓層などの透過率低下などの影響が消去され、さらに高精度な計測が可能になる。この場合、前記特定成分を含まない水を簡便な基準溶液として用いることができる。
【0016】さらに、本発明においては、前記試薬混入以前に前記被検溶液の旋光度を計測するとともに、上記本発明によるいずれかの溶液濃度計測方法によって、前記被検溶液のタンパク質濃度を求め、前記タンパク質濃度と前記旋光度とから、前記タンパク質濃度と前記タンパク質以外の旋光性物質の濃度を確定することができる。この方法により被検溶液中のタンパク質とタンパク質以外の旋光性物質との度を同時に測定するために、下記の装置を用いることができる。
【0017】即ち、略平行光を投射する単色光源と、前記略平行光のうち特定方向の偏光成分のみを透過する偏光子と、前記偏光子を透過した光が透過するように被検溶液を保持するサンプルセルと、前記被検溶液に磁場を印加する手段と、前記磁場を制御する磁場制御手段と、前記磁場を制御する際に前記磁場を振動変調する磁場変調手段と、前記被検溶液を透過した光のうち特定方向の偏光成分のみを透過する検光子と、前記検光子を透過した光を検知する光センサーと、前記光センサーの出力信号を前記磁場変調手段の振動変調信号を参照信号として位相敏感検波するロックインアンプと、前記磁場制御手段の磁場制御信号と前記ロックインアンプの出力信号にもとづいて前記被検溶液の旋光度を算出し、これを旋光性物質の濃度に換算する手段と、前記被検溶液に前記被検溶液中の特定成分のみの光学特性を変化させる試薬を混入する混入機と、前記混入機を制御し、前記光センサーの出力信号を解析するコンピューターとを備えた装置である。
【0018】この装置により計測された前記試薬混入前後の前記透過光強度の計測値から、前記被検溶液のタンパク質濃度を求め、前記算出された旋光度と前記タンパク質濃度から、前記タンパク質濃度と前記タンパク質以外の前記被検溶液の旋光性物質の濃度を確定する。この場合、前記光センサーの出力信号を前記透過光の信号見なして、前記光センサーの出力信号の計測から、前記被検溶液のタンパク質濃度を計測することができる。
【0019】さらに、上記の装置に加えて、前記略平行光を変調する手段を備えることにより、前記被検溶液に試薬を混入し、前記光センサーの出力信号を計測する際に、前記ロックインアンプの参照信号を前記略平行光の変調信号として前記光センサーの出力信号を位相敏感検波し、前記ロックインアンプの出力信号を前記透過光の信号と見なして、前記試薬混入前後の前記ロックインアンプの出力信号の計測値から、前記被検溶液のタンパク質濃度を求め、前記旋光度と前記タンパク質濃度から、前記タンパク質濃度と前記タンパク質以外の前記被検溶液の旋光性物質の濃度を確定することもできる。
【0020】上記の本発明による溶液濃度計測方法あるいは溶液濃度計測装置により、尿を始めとする髄液、血清、血漿、唾液などの体液や、乳製品、酒、食酢などの食品、培養液などの産業用液、および人工透析液やその廃液などの被検溶液中に含まれる特定成分の濃度を求めることができる。これらの被検溶液中の濃度測定対象とする特定物質としては、ホルモン、酵素などの各種タンパク質、コレステロールなどの脂質、ウイルス、および細菌などが挙げられる。また、これらの特定物質の濃度を求める際に用いる試薬としては、トリクロロ酢酸、スルホサリチル酸などの酸性溶液や抗体溶液などを用いることができる。
【0021】また、上記の本発明による溶液濃度計測方法あるいは溶液濃度計測装置により、上記被検溶液の測定可能な濃度範囲が拡大でき、被検溶液中のタンパク質などの上記特定成分の正確な濃度を簡便に計測できる。さらに、前記被検溶液の旋光度を計測した後、前記試薬を混入してタンパク質濃度を計測することで、タンパク質の濃度とグルコースなどのタンパク質以外の旋光性物質を同時に決定することができる。これらのことから、本発明による溶液濃度計測方法あるいは溶液濃度計測装置は、尿を被検溶液として尿タンパク濃度や尿糖値を測定して検査する場合に特に有用であり、検査の信頼性や精度を向上させ、検査工程を大幅に簡略化することができる。以下、本発明の実施の形態を具体的な例を挙げて詳細に説明する。
【0022】《実施の形態1》被検溶液に、被検溶液に含まれる特定成分に起因して前記被検溶液の光学特性を変化させる試薬を混入する前後の透過光強度および/または散乱光強度を計測し、それらの計測値から被検溶液中の特定成分の濃度を求める例について、以下に詳細に説明する。
【0023】図1は溶液濃度測定装置の構成を模式的に示す正面図で、図2は図1の光学系のみを模式的に示す平面図である。図1および2において、1は半導体レーザモジュールからなる光源を示し、波長780nm、強度3.0mW、ビーム直径2.0mmの略平行光2を投射する。サンプルセル3は、ガラス製で上部に開放された開口部を有し、底面が10×10mm、高さが50mmの直方体状容器であり、側面は透明な光学窓である。このサンプルセル3は、その内部に収容された被検溶液10に略平行光2を照射することができ、また、透過光および散乱光9を外部に取り出すことができる。被検溶液10を透過した光を検知する光センサー4および被検溶液中を光が伝搬する際に発生した散乱光9を検知する光センサー5により、それぞれ透過光および散乱光が検知される。試薬を注入する注入口6はサンプルセル3の底部に位置している。ピペッタ7により、サンプルセル3中の被検溶液に注入口6を通じて、試薬を所定容量注入する。コンピューター8は、光源1およびピペッタ7を制御し、光センサー4および5の出力信号を解析する。
【0024】上記の溶液濃度測定装置を用いて、尿を被検溶液として尿タンパク濃度を検査する場合の動作は次の通りである。まず、被検溶液10をサンプルセル3へ導入する。コンピューター8が光源1を動作させ、同時に光センサー4および5の出力信号のモニターを開始する。次に、コンピューター8がピペッタ7を制御して、注入口6を通じてスルホサリチル酸試薬(硫酸ナトリウムを2−ヒドロキシ−5−スルホ安息香酸水溶液に溶解させた試薬)をサンプルセル3へ導入する。被検溶液にスルホサリチル酸試薬が混入されると、タンパク質成分が凝集して被検溶液10が濁り、透過光強度が低下し、散乱光強度が増加する。この試薬の混入の前後の光センサー4および5のそれぞれの出力信号の計測値を解析することで、タンパク質濃度を求める。
【0025】タンパク質濃度が2mg/dlの被検溶液10を用い、上記の方法で測定した透過光強度および散乱光強度、即ち、光センサー4および5の出力信号をそれぞれ図3および4に示す。同様に、タンパク質濃度が15mg/dlの被検溶液を用いた時の各出力信号を図5および6に示し、タンパク質濃度が100mg/dlの被検溶液を用いた時の各出力信号を図7および8に示す。図3〜8において、横軸は試薬混入後の経過時間(秒)を示し、混入前60秒から混入後300秒までの透過光あるいは散乱光の強度変化を示している。図3、5および7から、透過光の強度(光センサー4の出力信号)は、タンパク質が高濃度になるほど低下していることがわかる。また、図4、6および8から散乱光の強度(光センサー5の出力信号)は、タンパク質が高濃度になるほど増加していることがわかる。
【0026】このような、散乱光強度の変化および透過光強度の変化とタンパク質濃度との関関係をそれぞれ図9および10に示す。図9においては、試薬混入後300秒経過時の散乱光強度と混入前の散乱光強度との差(試薬混入後の散乱光強度−試薬混入前の散乱光強度)を縦軸に示した。図10においては、試薬混入前の透過光強度と混入後300秒経過時の透過光強度との比(試薬混入後の透過光強度/試薬混入前の透過光強度)を縦軸に示した。なお、図9および10には前記の被検溶液以外に、タンパク質濃度が0、5、30、60mg/dlの尿を被検溶液としてそれぞれ追加して計測した結果を示した。これらの場合、計測した被検溶液はすべて、試薬の混入前には光学的に水と同程度に透明であり、透過光強度と散乱光強度は水と同じであった。従って、これらから得られた図9および図10の前記相関関係は、それぞれ尿中のタンパク質濃度を計測する際の標準的な検量線として使用できる。
【0027】図9において、各実測値をスムーズに結んで実線で示し、散乱光強度の変化量(試薬混入前後の散乱光強度の差)に対して直線的に変化しているタンパク質濃度0〜15mg/dlの領域の実測値を結んだ直線を延長させて点線で示した。この実線と点線から明らかなように、タンパク質濃度が約15mg/dlまでは実線と点線が重なり、散乱光強度の変化量はタンパク質濃度に比例している。しかし、これより高濃度になるにつれて、次第に比例関係よりも低い実測値を示している。これは、タンパク質濃度が高くなり、光が散乱される確率が高くなると、散乱光が発生した地点からサンプルセルの外まで伝搬する際に、再び散乱される確率も高くなり、光センサー5に散乱光が到達する確率が低下するからである。従って、散乱光強度の変化から濃度を算出する場合には、直線性が確保できる低濃度域(約15mg/dl以下)において、より高精度な濃度を求めることができる。
【0028】図10において、横軸はタンパク質濃度を、縦軸(対数表示)は試薬混入前後の透過光強度の比を示す。各実測値をスムーズに結んで実線で示し、直線的に変化しているタンパク質濃度15〜100mg/dlでの実測値を結んだ直線を延長させて点線で示した。図10で示したように、タンパク質濃度が2mg/dlや5mg/dlのような低濃度の場合には、この点線から外れる場合がある。これは、図3と図5および7を比較すると明らかなように、全出力信号に比べて変化割合が小さすぎるため、各種ノイズの影響を受けやすいからである。このことから、透過光強度の計測値からタンパク質濃度を算出する場合において、各種ノイズの影響を避けるためには、被検溶液が高濃度域(約15mg/dl以上)にあることがより望ましいことが分かる。
【0029】以上のようにして、試薬混入前後の透過光強度あるいは試薬混入前後の散乱光強度を計測することにより、被検溶液の特定成分の濃度を求めることができる。さらに、上記双方の強度を計測することにより、低濃度域の被検溶液については、散乱光強度の計測値から溶液濃度を算出し、高濃度域の被検溶液については、透過光強度の計測値から溶液濃度を算出することで、実質的に高精度に測定できる被検溶液の濃度範囲、即ちダイナミックレンジを拡大できる。これにより、従来必要であった高濃度被検溶液の希釈等の工程が不要になり、計測および検査の高精度化、効率化、省力化に有効な実用的効果を高めることができる。尚、本実施の形態では、試薬混入直前と300秒経過時点の透過光強度および散乱光強度の計測値から溶液濃度を求めたが、この時間差は計測装置、被検溶液や試薬などの特性に応じて適宜に設定すればよい。
【0030】本実施の形態においては、低濃度域を約15mg/dl以下、高濃度域を約15mg/dl以上とし、低濃度域では散乱光強度を計測し、高濃度域では透過光強度を計測すると高精度な結果が得られる。しかし、本実施の形態における低濃度および高濃度の範囲は、サンプルセル3の光路長、散乱光9の被検溶液中における伝搬距離、および光学系の配置などの種々のファクタによって異なるため、上記数値範囲に限定されるものではない。したがって、本発明においていう「低濃度」とは、被検溶液の特定成分濃度と散乱光強度の変化との関係を示すグラフにおいて(図9)、直線性を有する部分に対応する濃度範囲をいい、「高濃度」とは、被検溶液の特定成分濃度と透過光強度の比との関係を示すグラフにおいて(図10)、直線性を有する部分に対応する濃度範囲をいう。これらは、当業者であれば、本発明に係る方法を実施する前にあらかじめ決定しておくことができる。
【0031】実際に透過光の光路長を上述した10mmよりも長くすれば、15mg/dl以下の濃度においても、透過光強度を高精度で計測することができる。ただし、このように光路長を長くすると、高濃度域においては光センサー4の出力信号が小さくなりすぎ(約10-4V)、濃度を求めることが困難になる。さらに、光路長を長くすると、装置全体の規模も必然的に拡大することになり、実用上あまり好ましくはない。以上のように、本発明によれば、装置の構成および規模が一定の制約を受ける場合において、散乱光および透過光の双方を利用することにより、高濃度域および低濃度域のすべてにおいて精度良く濃度を計測することができ、ダイナミックレンジを拡大することができる。
【0032】《実施の形態2》次に、図1および2の計測装置を用いて、各種塩などが析出して混濁した尿を被検溶液として特定成分の濃度を求める例について詳細に説明する。まず、被検溶液10としてタンパク質濃度15mg/dlの混濁した尿をサンプルセル3へ導入し、実施の形態1の場合と同様にして、試薬混入前後の光センサー4および/または光センサー5の出力信号の変化を観測する。この試薬混入前後の光センサー5および4の出力信号の経時変化をそれぞれ図11および12に示す。これらの図は、図3〜8と同様に試薬混入前60秒から混入後300秒までの出力信号の変化を示している。
【0033】図11から明らかなように、試薬の混入前、即ち−60〜0秒における光センサー5の出力信号(散乱光強度)は0.05V程度である。実施の形態1に用いたような混濁が無い被検溶液の場合は、混入前の光センサー5の出力信号は0.0Vであることから、この出力信号の差が本実施の形態の被検溶液元来の混濁程度を示しているといえる。この値は図9を検量線として、タンパク質濃度に換算すると4〜5mg/dlに相当する。一方、試薬を混入後300秒経過した時点の光センサー5の出力信号は、0.22Vで、0秒時点の出力信号との差は0.17Vとなる。図9を検量線として、この出力信号の差(0.17V)をタンパク質濃度に換算すると15mg/dlとなり、この濃度が予め計測された既知濃度に一致する。このことから、混濁が無い被検溶液から求めた図9の検量線を用いて、試薬混入前後の光センサー5の出力信号の差から混濁被検溶液のタンパク質濃度を正確に求められることが確認できた。以上のように、試薬の混入前後の散乱光強度の差より、溶液濃度を算出することで、混濁等の影響が消去された正確な溶液濃度を求めることが可能になる。
【0034】また、図12において、試薬の混入前、即ち−60〜0秒において、光センサー4の出力信号(透過光強度)は0.55Vである。一方、実施の形態1に用いたような混濁が無い透明な被検溶液の場合は、混入前の光センサー4の出力信号は0.6Vであることから、この相違は被検溶液の混濁によるものといえる。図12から、試薬混入前での光センサー4の出力信号が0.55V、混入後300秒経過した時点での出力信号が0.42Vであり、その比は0.76となる。図10を検量線として、この出力信号の比(0.76)をタンパク質濃度に換算すると15mg/dlとなり、この濃度は予め計測された既知濃度に一致する。このことから、図10を検量線として用いて、試薬混入前後の光センサー4の出力信号の比を求め、混濁が無い被検溶液から求めた図10を検量線として、タンパク質濃度に換算することで、混濁した被検溶液の正確なタンパク質濃度が求められることが確認できた。
【0035】また、透過光強度の変化からタンパク質濃度を求める場合においては、上記の試薬のほかに、ビューレット試薬(酒石酸カリウムナトリウムと硫酸銅を水酸化ナトリウム溶液に溶解させた試薬)を用いることも可能である。ただし、この場合には、波長が540nm程度の光源を使用するのが好ましい。これを用いて、混濁した被検溶液を計測する場合でも、本実施の形態のように、混濁等の影響を受けず、正確に濃度を求めることが可能になる。
【0036】《実施の形態3》次に、図1および2に示した計測装置を用い、実施の形態1と同様の方法により、光センサー4および光センサー5の双方の出力信号を計測して両者を照合することにより、浮遊粒子、泡等による計測妨害の有無を検知する例を説明する。被検溶液中に、浮遊粒子や泡が存在し、これらが略平行光2の光路に侵入すると、これらに略平行光2が強く散乱されて透過光強度および/または散乱光強度の正確な計測が妨害される。この場合、透過光強度は大きく減少し、一方、散乱光強度は光センサー5の視野角、および浮遊粒子や泡が光路中に存在する位置などによって、大きく減少する場合と増加する場合がある。
【0037】これら浮遊粒子や泡による妨害が無い場合は、図9および10で示したように、散乱光強度の計測値と透過光強度の計測値には、一定の関係が存在する。例えば、被検溶液のタンパク質濃度が、15mg/dlの時、試薬混入前後の散乱光強度の差は0.17Vで、試薬混入前後の透過光強度の比は0.76である。ところが、上記のような妨害が存在すると、このような関係から外れた値が計測されることになる。従って、試薬混入前後の光センサー4の計測値から図9の検量線にもとづいて求めたタンパク質濃度と、光センサー5の出力信号の計測値から図10の検量線にもとづいて求めたタンパク質濃度との、双方の濃度値が一致するか否かを照合することで、前記の妨害の有無を検知することができる。
【0038】以上のように本実施の形態によれば、試薬混入前後の透過光強度および試薬混入前後の散乱光強度の双方を測定し、これらを照合することで、泡、未溶解の各種塩、ほこり、ゴミなどの浮遊粒子による妨害を検知して誤計測を防止できる。これにより、計測の信頼性を向上させることができ、その実用的効果は極めて大きく、計測および検査の高信頼化および省力化が可能になる。
【0039】《実施の形態4》次に、図1および2に示した計測装置におけるサンプルセルの汚損などによる光学窓の透過率の低下が生じた場合に、被検溶液と基準溶液についての双方の、光センサー4および/または光センサー5の出力信号を同条件で計測し、基準溶液の計測値により被検溶液の計測値を補正して、被検溶液中の特定成分の濃度を求める例について説明する。サンプルセル3を長期間使用したような場合には、各種の残留物質が付着して、各光学窓の透過率が低下する。この場合、透過光強度の絶対値が低下するため、試薬混入前後の透過光強度の比の精度が低下し、試薬混入前後の散乱光強度の差は減少することになる。従って、これらの場合には、精度良く溶液濃度を求めることができない。
【0040】このような長期間使用による光学窓の透過率低下の影響を、タンパク質濃度が既知の被検溶液(基準溶液)についての計測をすることで補正することができる。例えば、予め、タンパク質濃度が15mg/dlの基準溶液について計測する。この際、スルホサリチル酸試薬の混入前と混入後300秒経過後の散乱光強度の差が、0.15Vの場合は、次のように実施の形態1で得られた図9の検量線を補正する。即ち、図9では、タンパク質濃度が15mg/dlの時の上記散乱光強度の差は0.17Vであるため、図9の検量線より得られる濃度を0.17/0.15倍して補正した新たな検量線を用いて溶液濃度を求める。上記のように、基準溶液の試薬混入前後の散乱光強度の変化を計測し、既知の検量線と照合することで、光学窓の透過率の低下の影響を補正した新たな検量線を求めることができる。これを用いることにより、光学窓の透過率が低下した場合でも、正確な濃度測定が可能となる。
【0041】《実施の形態5》実施の形態4で述べた光学窓の透過率の低下の影響を補正するための基準溶液として、特定成分を含有しない水を用いた例について説明する。被検溶液が特定成分を含有しない水の場合は、試薬混入によって反応して水の光学特性を変化させる特定成分の濃度がゼロなので、実施の形態4で示したような散乱光強度の差は発生しない。そのため、補正に要する数値を算出することができない。そこで、サンプルセル3に水を入れた状態の透過光強度を計測する。例えば、この時の透過光強度が0.5Vの場合は、次のように補正する。図3、5および7より、試薬を混入前の透明な状態では透過光強度は0.6Vであるので、図9の検量線より得られた濃度を0.6/0.5倍する補正を行うことにより正確な濃度を求めることができる。
【0042】上記のように、基準溶液として水を用いて透過光強度を計測することで、光学窓の透過率低下の影響を補正することができる。また、残留物質の付着具合が同等な場合には、透過光が出射する光学窓と、散乱光が出射する光学窓との透過率の低下が同じであるため、水に対する上記の透過光強度の低下から、散乱光強度の変化量を補正することもできる。以上のように本実施の形態によれば、基準溶液として水を使用することができるため、簡単に光学窓の透過率の低下を補正することができる。特に、タンパク質水溶液を管理保管することが難しい家庭などにおいては、簡便なので実用的効果は極めて大きい。
【0043】《実施の形態6》次に、試薬混入前に被検溶液の旋光度を計測するとともに、試薬混入前後に被検溶液の透過光強度を計測し、これらの計測値から、タンパク質濃度とタンパク質以外の旋光性物質の濃度を確定する方法の例について詳細に説明する。図13は本実施の形態の計測方法に基づく計測装置の模式図である。半導体レーザモジュールの光源1から、波長670nm、強度3.0mW、ビーム直径2.0mmの略平行光2を投射する。偏光子11は、紙面に平行な偏光成分の光のみを透過する。被検溶液を収容するサンプルセル12は、被検溶液に略平行光2の伝搬方向に磁場を印加できるようにソレノイドコイル13を巻いた構造になっており、実質光路長は10mmである。これは、被検溶液の光ファラデー効果を用いて、ソレノイドコイル13に流す電流を変調しながら制御することによって、略平行光2の偏光方向を変調しながら制御するものである。このように、被検溶液自身のファラデー効果によって、旋光度を計測する方式の基本原理は、特開平9−145605号公報に記載されている。
【0044】試薬は注入口14からサンプルセル12に混入され、空気は通気口15から出入りする。検光子16は、紙面に垂直な偏光成分の光のみを透過するように配置されている。検光子16を透過した略平行光2を光センサー17で検出する。コイルドライバー18により、ソレノイドコイル13に流す電流を制御し、信号発生器19により、ソレノイドコイル13に流す電流を変調する変調信号をコイルドライバー18に供給する。ロックインアンプ20により、ソレノイドコイル13の変調信号を参照信号として光センサー17の出力信号を位相敏感検波する。被検溶液の旋光度を計測する際は、コンピューター21により、ロックインアンプ20の出力信号がゼロになるように、コイルドライバー18に制御電流信号を供給する。
【0045】本実施の形態の場合は、ソレノイドコイル13に、振幅0.001アンペア、周波数1.3kHzの変調電流を流している。これらによって、ロックインアンプ20の出力信号がゼロになる制御電流信号を見いだし、旋光度を算出する。ここでは、被検溶液中の旋光性物質であるタンパク質やグルコースによって生じた旋光度と、磁場印加による被検溶液の溶媒水のファラデー効果による偏光方向の回転角が一致する磁場を与える制御電流信号によって前記旋光度を求める方法を採った。そして、ピペッタ22は、チューブ23を通じて、注入口14より、サンプルセル12中の被検溶液に試薬を所定量注入する。コンピューター21は、光源1およびピペッタ22を制御し、光センサー17の出力信号を解析する。
【0046】上記の装置を用いて、尿を被検溶液としてグルコース濃度(尿糖値)と、尿タンパク濃度を検査する場合の動作は次の通りである。まず、被検溶液をサンプルセル12へ導入する。コンピューター21で光源1とコイルドライバー18を動作させ、被検溶液の旋光度を計測する。次に、コンピューター21でコイルドライバー18の動作を停止させ、同時に光センサー17の出力信号のモニターを開始する。次に、コンピューター21でピペッタ22を制御して、注入口14よりスルホサリチル酸試薬をサンプルセル12中の被検溶液へ混入する。この混入の前後の光センサー17の出力信号の変化を、透過光強度の変化と見なして、解析された試薬混入前後の透過光強度の比から、実施の形態1と同様な方法により、図10に相当する検量線を作製しておく。
【0047】上記の計測の例として、尿糖値が100mg/dl、尿タンパク濃度が15mg/dlの尿を被検溶液として用いた場合の旋光度の計測値は、0.0034°であった。この波長(670nm)におけるグルコースの比旋光度は40°deg/cm・dl/kgであるので、計測された旋光度がすべてグルコースにより発現されていると仮定すると、グルコース濃度即ち尿糖値は85mg/dlと計算される。一方、透過光強度の比から求めたタンパク質濃度は15mg/dlであったので、タンパク質の比旋光度が−40°deg/cm・dl/kgであることから、タンパク質により発現された旋光度は−0.0006°と算出される。従って、グルコースにより発現された真の旋光度は前記の0.0034°から−0.0006°を差し引いた0.0040°となり、この旋光度に対応するグルコース濃度は100mg/dlと算出される。
【0048】これらのことから、本実施の形態により、試薬混入前の被検溶液の旋光度と試薬混入前後の透過光強度の比を計測することにより、尿糖値と尿タンパク濃度を同時に正確に確定できることが確認できた。尚、前記タンパク質濃度(15mg/dl)の計測は、光センサー17の出力信号を透過光強度の信号と見なして、その試薬混入前後の値を計測し、予め作製しておいた前記検量線と照合することにより行った。以上のように本実施の形態によれば、タンパク質濃度と、タンパク質以外の旋光性物質としてグルコースの濃度を同時に測定することができるので、尿を被検溶液とした場合に、特にその実用性が高い。その理由を以下に述べる。
【0049】尿タンパク濃度が正常な場合は、尿中の旋光性物質としては、グルコースが支配的なので、尿の旋光度を計測することでおよその尿糖値を検査できる。しかし、尿タンパク濃度を旋光度計測以外の計測方式で求めることにより、より正確な尿検査ができる。なぜなら、グルコースとともに、タンパク質も旋光性物質であるため、グルコースより発現された旋光度と、タンパク質により発現された旋光度を加算した旋光度が尿の旋光度として計測されるからである。そこで、本実施の形態のように、旋光度の計測とともに、上記のように試薬混入前後の光学的物性変化からタンパク質濃度を求め、この濃度により、旋光度の計測結果を補正することにより、尿糖値と尿タンパク濃度を正確に確定することができる。ちなみに、旋光度の計測前に試薬を混入すると、タンパク質成分が凝集あるいは着色するので、被検溶液中を光が透過しないことや、タンパク質が変性して旋光度を変化させることがあり、尿糖値と尿タンパク濃度を正確に測定できない。
【0050】《実施の形態7》次に、被検溶液のタンパク質濃度とタンパク質以外の旋光性物質の濃度とを同時に計測する他の例について詳細に説明する。図14は本実施の形態による計測装置の模式図であり、図13の装置に光変調器24を付加したもので、光変調器24以外の符号は図13と同じである。光変調器24は、コンピューター21から指令があると、信号発生器19の変調周波数で、略平行光2を強度変調する。旋光度を計測している時は、コンピューター21の指令に基づき、変調は行わず、略平行光2をすべて透過している状態に固定しておく。
【0051】本実施の形態では、旋光度は実施の形態6と同様に計測する。タンパク質濃度を計測する際は、ソレノイドコイル13には電流を流さず、コンピューター21の指令により、光変調器24により、略平行光2を強度変調する。この時も、ロックインアンプ20は、信号発生器19の出力信号を参照信号として、光センサー17の出力信号を位相敏感検波している。このロックインアンプ20の出力信号は、実質的に被検溶液の透過率を反映しているため、ロックインアンプ20の出力信号を透過光強度と見なせる。従って、コンピューター21がピペッタ22を制御して、注入口14よりスルホサリチル酸試薬をサンプルセル12へ混入して、この混入の前後のロックインアンプ20の出力信号の変化を解析することで、タンパク質濃度を正確に計測できる。計測されたタンパク質濃度と旋光度から、実施の形態6と同様にして、タンパク質以外の旋光性物質の濃度を確定することができる。
【0052】尚、本実施の形態と実施の形態6ではいずれも、偏光子11と検光子16がクロスニコル配置にあるため、光センサー17に到達する光の強度は非常に小さい。従って、本実施の形態のように、略平行光2を強度変調し、光センサー17の出力信号を位相敏感検波して帯域を制限することで、信号対雑音比(S/N)を向上させる効果が非常に大きくなり、タンパク質濃度の測定精度が向上する。以上のように本実施の形態により、略平行光2を変調することで、タンパク質濃度を高精度で計測できる。本実施の形態は、被検溶液が尿の時に、特にその実用性が高い。また、上記本発明の実施の各形態においては、試薬を混入する場合、試薬を直接被検溶液にピペッタ等で注入する形態を示したが、被検溶液に試薬を滴下する形態でも同様の効果が得られる。
【0053】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、被検溶液元来の混濁や着色の影響、光学窓等の透過率低下の影響などを補正することができ、タンパク質などの特定成分の正確な濃度を求めることができる。また、計測可能な被検溶液の濃度範囲を拡大することができる。その結果、被検溶液中の特定成分の濃度を高精度で求めることができ、しかも、高信頼性で実用性が高い省力化された溶液濃度の測定、とりわけ尿中のタンパク質濃度の測定が可能になる。また、被検溶液中のタンパク質とタンパク質以外の旋光性物質の双方の濃度を求めることもでき、特に被検溶液が尿の場合、尿タンパク濃度と尿糖値を同時に正確に測定できるので、尿検査工程を大幅に簡略化でき、その実用的効果は極めて大きい。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成12年9月13日(2000.9.13)
【代理人】 【識別番号】100072431
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 和郎
【公開番号】 特開2001−194308(P2001−194308A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−278797(P2000−278797)