| 【発明の名称】 |
次亜塩素酸濃度の測定方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】野田 直広
【氏名】黒田 昌美
|
| 【要約】 |
【課題】次亜塩素酸の濃度測定で、従来からのDPD法、オルトトリジン法、電流滴定法は、試薬や手作業を必要とするため自動化には適さず、ポーラログラフ法は、測定精度が低く電極の安定性が悪いため信頼性に欠ける。本発明はこの欠点を解決して、測定精度は有試薬式と同等以上で試薬を消費せず自動連続測定が可能な、次亜塩素酸濃度測定方法を提供することにある。
【解決手段】光学的に透明な基板に固定化したN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)に試料液を接触させ、試料液中の次亜塩素酸でDPDを酸化して生じるDPDの吸光度から次亜塩素酸濃度を定量することで解決できる。また、計測部の試料液を乱流にして試料液置換の高効率化を図り、測定に使用したDPDを還元して繰返し使用し、pH値を測定して補正を行う。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)を光学的に透明な基板に固定化し、このDPDに試料液を接触させ、試料液中に含まれる次亜塩素酸によってDPDを酸化し、この酸化によって生じるDPDの吸光度から、試料液中の次亜塩素酸濃度を測定することを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項2】請求項1記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、DPDを光導波路表面に固定化することを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項3】請求項1または2記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、DPDを固定化した計測部に試料液を流通させ、このDPDの吸光度から試料液中の次亜塩素酸濃度を算出することを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項4】請求項3記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、DPDを凹部に固定化し、凹部の構造によって試料液流を乱流にし、DPD固定化面に接触する試料液を効率よく置換することを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項5】請求項3記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、試料液流に対する障害物をDPD固定化面の上流に設け、この障害物の作用によって試料液流を乱流にし、DPD固定化面に接触する試料液を効率よく置換することを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項6】請求項3記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、DPD固定化面の裏面に超音波振動子を密着させ、この超音波振動子の動作によってDPD固定化面を振動させ、DPD固定化面に接触する試料液を効率よく置換することを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項7】請求項1ないし6のいずれかに記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、DPDを還元して酸化前の状態に復元し、繰返し測定を行うことを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項8】請求項7記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、DPDの還元を還元剤による化学反応で行うことを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項9】請求項7記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、DPDの還元を電気化学反応で行うことを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項10】請求項1ないし9のいずれかに記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、試料液のpH値を計測し、このpH値に応じて次亜塩素酸濃度の補正を行うことを特徴とする酸化剤濃度の測定方法。 【請求項11】請求項1ないし9のいずれかに記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、pH緩衝液の添加によって試料液のpH制御を行うことを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。 【請求項12】請求項1ないし11のいずれかに記載の次亜塩素酸濃度の測定方法において、DPDを固定化しない参照光路を設けることを特徴とする次亜塩素酸濃度の測定方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】次亜塩素酸(HOCl)は上下水道やプール、食品工場などで微生物汚染防止に利用される薬品である。また、衣類の漂白剤として用いられることもある。本発明は、このような応用において使用される次亜塩素酸濃度の測定方法に関する。 【0002】 【従来の技術】次亜塩素酸の消毒効果は、主としてその酸化力に因るものと考えられている。消毒作用が多種類の病原生物に及ぶことや、効果の残留性が他の方法では得難いことなどから、次亜塩素酸を用いる消毒方法は、衛生管理の上で非常に有効な手段となっている。 【0003】消毒効果を確実にするには、次亜塩素酸濃度を高めるべきであるが、注入量が多くなると、発癌性副生成物の増加、異臭(カルキ臭)の発生、目や皮膚への刺激の増大、薬品費用の増加といった様々な問題が付随しておこる。このために、計測制御機構を用いて注入量を必要最低限に抑えることが望ましく、有効に対応できる次亜塩素酸濃度の測定技術が求められている。水道の給配水管網における次亜塩素酸の濃度管理は、こうした計測制御を行っている端的な例である。 【0004】次亜塩素酸の濃度測定の従来技術としては、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(以下、DPDと記載する)法、オルトトリジン法、電流滴定法、ポーラログラフ法などがある。このうち、手分析ではDPD法が、連続測定が必要な場合にはポーラログラフ法が多く用いられている。DPD法は、pH6.3のりん酸緩衝液の存在下で、DPDが酸化されて505nmおよび545nmを吸収し赤色を呈するセミキノンとなることを利用した分析法である(ぶんせき1986,9,pp.90−96参照)。次亜塩素酸に対して過剰なDPDを加えると、速やかな反応で試料液中のすべての次亜塩素酸がDPDの酸化に消費され、呈色によって次亜塩素酸濃度を定量できる。この方法は現場の簡易分析などで最も一般的に使用されており、pH緩衝剤とDPDをピローにパックした簡易試験セットが市販されている。 【0005】ポーラログラフ法は、金電極を陰極、銀電極を陽極として電極間に適当な電圧を加え、そのとき流れる拡散電流から試料液中の次亜塩素酸を求める分析法である。この方法は試薬を必要とせず、連続的に測定値が得られるため、オンライン監視が必要な水道水のモニタリングなどに適用されている。次亜塩素酸は、pHの違いやアンモニアとの反応によって消毒効果が変化し、また、殺菌作用によって消毒効果が失われていく。このため、実際に消毒に寄与する有効量は、初めに加えた量ではなく、消費されずに残っている量ということになる。そこで、水道分野などでは残留塩素という概念が生まれ、この言葉が主として使われている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】DPD法、オルトトリジン法、電流滴定法は、測定精度が±0.05mg/Lと優れているが、試薬や手作業を必要とするため、自動化には適していない。一方、ポーラログラフ法は、試薬を必要とせず連続測定が可能であるが、測定精度が0.1mg/L程度であり、電極の安定性が悪いため信頼性に欠ける。 【0007】本発明では、上記のような従来法の欠点を解決し、(1)測定精度は有試薬式と同等以上で、(2)試薬を消費せず、(3)自動連続測定が可能である、という特長を有する次亜塩素酸濃度測定方法を提供することを課題としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明では、上記の課題を解決するために、DPDを光学的に透明な基板に固定化し、そのDPDに試料液を接触させ、試料液中に含まれる次亜塩素酸によってDPDを酸化し、酸化によって生じるDPDの吸光度から、試料液中の次亜塩素酸濃度を定量することとする。 【0009】上記の光学的に透明な基板としては、ガラスや光学プラスチックなどを用いて、DPDを固定化し、単純に吸光度を測定してもよいが、高感度で吸光度を測定する場合には、この基板として光導波路の表面を用い、DPDを固定化することが有効である。DPDを固定化した計測部に試料液を流通させる場合も、DPDの吸光度は試料液中の次亜塩素酸濃度に相関があるので、DPDの吸光度に基づき次亜塩素酸濃度を算出することができる。試料液を流通させる場合、正確な測定のためには、DPDを固定化した計測部において、試料液が効率よく置換される必要がある。 【0010】試料液の置換を良くするには、計測部において試料液を乱流にすることが有効である。そのためには、DPDを凹面に固定化し、凹面の作用で試料液流を乱流にする方法や、DPD固定化面の上流に試料液流に対する障害物を設け、該障害物の作用によって試料液流を乱流にする方法が有効である。また、これらの方法の他に、DPD固定化面の裏面に超音波振動子を密着させ、その超音波振動子によってDPD固定化面を振動させることも、試料液置換の高効率化に効果がある。 【0011】また、測定に使用したDPDを還元することで、酸化前の状態に復元すれば、繰返し測定に使用することが可能である。DPDの還元は、アスコルビン酸や亜硝酸といった還元剤を用いた化学反応で行ってもよいし、電気化学的に行うこともできる。次亜塩素酸は、試料液のpHによって形態が変化し、それに伴って酸化力が変化する。したがって、pHが変化する環境で正確な次亜塩素酸濃度を求めるには、pH値を測定し、その値に応じて次亜塩素酸濃度を補正する必要がある。pH緩衝液を添加して試料液のpHを制御し、それによってpHの影響を解消する方法を用いることもできる。DPDを固定化しない参照光路を設け、不純物やゴミ、光源の光量変動などを補正することも正確な測定を行う上で有効である。 【0012】 【発明の実施の形態】以下に、本発明を6つの項目に分け、9つの実施例を中心にして説明する。 1.DPD固定化方法と吸光度の計算例DPDを光学的に透明な基板に固定化する場合、固定化する基板としては、ガラスやプラスチックなど様々な材料が使用できるが、個々の材料に応じて固定化方法を選ばなくてはならない。 【0013】例えば、ガラス基板(SiO2 )への固定化は次のような方法がある。清浄なガラス表面に、例えば(ブロモアルキル)ジメチルクロロシランを作用させて表面処理した後、さらにアルカリ存在下においてDPDを作用させ、共有結合によってDPDをガラス表面に固定化することができる。上述のDPDの固定化が、以下のような理想的条件で行われたと仮定し、生成したDPD単分子膜が次亜塩素酸によって酸化されたときの吸光度を計算で求めた。 【0014】 ・ガラスセル表面のSiの間隔:0.17[nm] ・DPDがガラスセル表面にある全てのSiと結合・DPDの次亜塩素酸による酸化率:100%・酸化されたDPDの551nmにおけるモル吸光係数:2.1×104 [M-1・cm-1] その結果、固定化できるDPDの量は1.5〜2×1015個/cm2 すなわち2.5〜3.3×10-9mol/cm2 、波長551nmにおける吸光度は約0.005という計算値が得られた。この吸光度は、通常の分光光度計で検出可能であるが、より高感度に吸光度を測定するには、光導波路を用いることが有効である。 2.次亜塩素酸濃度の測定例次亜塩素酸濃度測定に関する具体例を、実施例1、2で述べる。 〔実施例1〕実施例1は、DPDを光導波路上に固定化して検出部とし、試料液をその検出部に流通させることで、連続測定を可能にしたもので、計測部の概略図を図1に示す。以下で、この図を引用しながら、本発明による測定の内容を説明する。 【0015】試料液は、試料液入口1から定量ポンプ2に吸引され、濁質除去用のフィルタ3と逆止弁4を通って計測部に注入される。測定に必要な流量は、検出部の容積が小さいために毎分数mL程度でよく、これは従来の連続測定法であるポーラログラフ法が毎分300〜500mLを消費するのに対してほぼ100分の1と非常に少ない量である。濁質除去用フィルタ3としては、捕捉粒径1μm程度の中空糸フィルタを用いることができる。計測部内のフローセル5は、試料液流に対して垂直方向に平面的に広がっている。試料液は、メッシュフィルタ7を通過することで乱流となった後、DPDを固定化した計測面6に達する。メッシュフィルタ7としては、例えば口径0.1mm程度のものが用いられる。試料液を乱流にすることで、計測面において試料液が効率よく置換される。計測面を通過後、フローセルは収束し、試料液は前述の定量ポンプ2を通って試料液出口8を通り廃液となる。 【0016】DPDが固定化された計測面は、光導波路9の一部である。この光導波路に対しては、光源10から発せられた照射光が投光側光ファイバ11を介して入射する。照射光は計測面において次亜塩素酸濃度に応じた光吸収を受け、受光側光ファイバ12を介して受光素子13で光電変換される。酸化されたDPDは、ほぼ500〜550nmの波長帯域で光を吸収するため、光源10と受光素子13との組合せとしては、次のようなパターンが可能である。すなわち、光源10が発光ダイオードやレーザ、白色光源と光学フィルタを組合せたものであって、500〜550nmの波長帯域で光を発している場合は、受光側は波長特性を問われないので、受光素子13としては通常のフォトダイオードを用いることができる。500〜550nmの波長帯域には様々な波長特性を持った発光ダイオードが低価格で市販されているので、これを使用することが合理的である。レーザを用いる場合は、502nmや514nmのアルゴンレーザ、532nmのNd:YAGレーザ、543.5nmのHe−Neレーザなどが使用できる。光源10がタングステンランプやハロゲンランプなどの白色光源の場合には、受光側では光学フィルタや分光器によって特定波長を抽出した後に、受光素子13としてはフォトダイオードなどを用い、吸光度を測定する必要がある。 【0017】投受光に用いる光ファイバ11、12は、コア径が1mm以上のものが望ましく、プラスチックファイバが適している。コア径の大きい光ファイバを使うことにより、光ファイバと光導波路ろの光軸ズレを許容できる範囲が広くなるため、実用上好ましいからである。実施例1の計測部の寸法は、図2に示すように、概ね次の通りである。すなわち、外形寸法の横14、縦15、高さ16はそれぞれ30mm、30mm、10mm、DPDを固定化した検出面の長さ17は20mm、検出面の幅(光導波路の幅)18は0.8mm、光導波路の厚み19は0.1〜50μm程度、光導波路上に固定化されたDPD膜の厚み20はおよそ1nm、試料液流路の厚み21は0.5mmである。 【0018】光電変換後の電気信号は演算処理によって次亜塩素酸濃度に換算される。実施例1によって測定を行った場合の結果の模式図を図3に示す。図3の下側の図は、DPDの吸光度の経時変化であり、上側の図は、DPDの吸光度から算出される次亜塩素酸濃度の経時変化である。固定化されたDPDは、所定の周期で自動的に還元され、吸光度がゼロに復帰するようになっている。ただし、吸光度が所定のしきい値を超えた場合には、自動還元のタイミングを待たずに強制的に還元が行われるしくみになっている。これは、検出面に固定化されたDPDが全て酸化されると、それ以上吸光度が増加しなくなり、測定が不能になることを考慮したためである。また、還元を行っている時間は、測定値の得られない不感時間である。 〔実施例2〕実施例2は、ガラスセルの内面にDPDを固定化して測定用セルとし、通常の吸光度測定によって次亜塩素酸濃度を測定する場合の例で、その検出部の概略を図4に示す。 【0019】この実施例では、試料液22を測定用セルに注入し、試料液中の次亜塩素酸とガラス壁面に固定化されたDPD23とが完全に反応するように、マグネティックスターラーで試料液を攪拌し、1分ほど経過した時点で分光光度計によって照射光24、透過光25から吸光度を測定すれば、この測定結果から試料液中の次亜塩素酸濃度を算出できる。ガラスセルの外形寸法は、縦および横を共に12.5mm、高さを45mmとしておけば、市販の分光光度計のセルホルダーにセットできるため便利である。 3.効率的な試料液置換方法の例試料液の置換を効率的に行う方法について、実施例3、4に具体例を示す。 【0020】実施例1として説明したような試料液流通タイプの測定を行う場合、DPDを固定化した計測面において、測定すべき試料液が既に測定を終えた試料液と効率よく置き換わる必要がある。流体の流れには層流と乱流という2種類の形態があるが、特に層流においては、流速は壁面に近づくほど遅くなり、理論的には壁面で流速がゼロになってしまう。したがって、試料液流が層流の場合、計測面における試料液の置換は効率よく行われない。試料液の置換を効率化するためには、試料液流を乱流にしなくてはならない。 【0021】流れが層流になるか乱流になるかは、レイノルズ数を指標として判断ができる。試料液が水の場合、レイノルズ数2300付近を境界として、それ以上の値になる流れは乱流に、それ以下の値になる流れは層流になる。図1、図2に示した実施例1では、計測面における流路は20mm×0.5mmであり、試料液が水のとき、流速を2.3m/sec以上にしなければレイノルズ数2300を超えず、乱流にならない。この流速2.3m/secは流量1380mL/minに相当し、これは日量として2トン近くの水量であるから実用的とは言いにくい。 〔実施例3〕乱流発生の他の選択肢は、レイノルズ数の境界値を下げることである。このためには、流路に障害物を設け、強制的に流れを乱せばよい。図1にはメッシュフィルタを使う方法を示したが、実施例3では、図5に示すようにDPD固定化面を凹部26に配置する方法で行っている。 【0022】この図において、試料液は27の方向に流れているとする。試料液が水の場合に適切な凹部の寸法は、検出面(光導波路)の幅が図2の18に示したように0.8mmだとすると、深さは2mm以下が望ましい。それ以上の深さになると、試料液の置換効率が悪くなる。 〔実施例4〕また、実施例4として、図6に示した超音波振動子28を用いる方法も有効である。超音波振動子の振動方向を試料液流に対して垂直に設定した場合29は、計測面と試料液との間に密着−剥離の力が繰返し加わり、流れが乱され、試料液の置換効率が向上する。この際の振動数は10〜100kHz、振幅は0.1〜10μm程度である。振動方向を試料液流に対して平行に設定した場合30は、計測面と試料液との相対的な流速が、振動周期と同期して増加すると考えられる。これらは単純にレイノルズ数の境界値を下げたとは言えないが、流れを乱すという意味では効果的である。 4.DPDの還元の例DPDの酸化還元は可逆的な反応である。したがって、次亜塩素酸によって酸化されたDPDを何らかの方法で還元すれば繰返し測定に用いることができ、実用上非常に大きな価値がある。DPDの還元のについては、実施例5、6に述べる方法で測定を行った。 〔実施例5〕単純な還元方法としては、アスコルビン酸、亜硝酸などの還元剤を0.1〜10mM程度の溶液として添加することが考えられる。実施例5として、還元剤を用いてDPDを再生する方法を図7に示す。 【0023】この図において、測定時は電磁弁31が試料液32側に開いており、定量ポンプ33によって送液が行われる。還元時は電磁弁が還元剤を含む溶液34側に開き、定量ポンプの吸引によって還元剤が測定部に流入することでDPDを還元する。図7中の35は吸光度測定のための照射光、36は透過光である。 〔実施例6〕透明電極上にDPDを固定化すれば、次亜塩素酸によって酸化されたDPDを電気化学的に還元することができる。実施例6として、電気化学的還元機構を付加する方法を図8に示す。 【0024】この図では、DPDを透明電極37に固定化している。透明電極材料としては、酸化錫(SnO2 )、酸化インジウム(In2 O3 )およびこれらの混合物(ITO)が挙げられる。透明電極は、通常、スパッタリングによって薄膜状に形成される。したがって、ガラス基板に薄膜を形成させてその表面にDPDを固定化し、次亜塩素酸によって生じるDPDの吸光を測定することが可能である。還元時にはスイッチ38によって電圧39が印加される。DPD固定化側を陰極として、陽極40との間にDPDを還元できる所定の電圧を上回る電圧を加えれば、酸化されたDPDを還元できる。電気化学的還元の利点は、還元剤が不要になることである。 5.pH特性の補正の例次亜塩素酸は試料液のpHに依ってその形態を変える。通常の水道水などで現れるpH5〜10といった範囲では、次式のように次亜塩素酸イオンと平衡している。 【0025】HOCl ←→ OCl- +H+この平衡は、アルカリ性になるほど右に傾き、次亜塩素酸イオンが増える。次亜塩素酸と比較した場合、次亜塩素酸イオンの酸化力は数10分の1である。従って、試料液のpHが変動する状況下で次亜塩素酸濃度を正しく定量するには、pHに応じた補正演算を行うか、さもなければ測定時にpHを一定にする必要がある。pH特性の補正については、実施例7、8に具体的方法を例示した。 〔実施例7〕実施例7として、試料液のpHを測定し、その値によって計測値を補正する方法を図9に示す。 【0026】この図において、試料液41は、計測部上流に配された定量ポンプ42によって、DPD固定化方式の次亜塩素酸検出部43とともにpHセンサ44に送られる。43で得られた吸光度測定値を44のpH測定値で補正することで、正しい次亜塩素酸濃度を算出する。 〔実施例8〕実施例8として、試料液にpH緩衝液を添加し、pHを所定の値に保つことでpHの影響を排除する方法を図10に示す。 【0027】この例では、pH緩衝液(りん酸緩衝液pH6.3)45が、試料液46とともに定量ポンプ47に吸引されて計測部に流入する機構になっている。pH値は6.3以外の値であっても、濃度既知の標準液で行う校正時と実試料の測定時とで、pHが変動しなければ正しい測定ができる。 6.参照光路追加の例DPDを固定化した計測面には、試料液に含まれる不純物が付着したり、ゴミによってキズがついたりする。また、試料液自体に、測定すべき波長帯域の光を吸収する物質が含まれている可能性もある。また、光源の光量変動も透過光量の絶対値を変化させる。DPDが次亜塩素酸で酸化されて光を吸収する以外にも、こうした様々な要因によって測定光は減衰し、正確な吸光度測定が妨げられる。DPDを固定化しない参照光路を設け、不純物やゴミ、試料液自体の光吸収、光源光量変動といった影響を測定光路と同様に受けるように構成すれば、参照光路の透過光量によって、変動要因を補正することができる。 〔実施例9〕実施例9として、参照光路を追加した計測部の概略を図11に示す。 【0028】ここでは、照射光48が投光側光ファイバ49によって2光路に分岐され、一方が測定光路50に、もう一方が参照光路51に入射する。両光路において、上記変動要因の影響が等しいと仮定すれば、測定光路の透過光量52を、参照光路の透過光量53で補正することで、正しい次亜塩素酸濃度を算出できる。 【0029】 【発明の効果】本発明により、次亜塩素酸濃度に関して有試薬式のDPD法と同等の精度(±0.05mg/L以内)の測定を、試薬を消費することなく、自動連続で行うことが可能となった。また、従来、連続測定用途に使用されてきたのポーラログラフ法は、金や銀を電極に用いるために装置が高価だったが、本発明で使用する材料は安価であり、しかもDPDを固定化する検出部は量産が可能なため、大幅なコスト低減が期待できる。 【0030】給配水管網における次亜塩素酸(残留塩素)濃度計測では、従来から高精度化および単価低減による多点化が求められてきたが、本発明の効果によって、これに応えることが可能となる。さらに、本発明による低価格化は、各家庭での水道水常時モニタリングといった新たな需要を生む可能性を持っている。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005234 【氏名又は名称】富士電機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年1月11日(2000.1.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088339 【弁理士】 【氏名又は名称】篠部 正治
|
| 【公開番号】 |
特開2001−194307(P2001−194307A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月19日(2001.7.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−2759(P2000−2759) |
|