| 【発明の名称】 |
蛍光相関分光解析装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】高本 尚宜
【氏名】松本 浩幸
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| 【要約】 |
【課題】走査型FCSの採用を可能とするとともに光収集効率の高い共焦点光学系を有し蛍光測定のS/N比が優れた蛍光相関分光解析装置を提供する。
【解決手段】励起光源11から出力された励起光は、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14等を経て、対物レンズ22に入射して被測定試料2に集光照射される。被測定試料2で発生した蛍光は、対物レンズ22および結像レンズ25等を経て、光検出器31の光電面上に結像される。この光検出器31では、光電面で発生した光電子はイメージ部においてアパーチャプレート上に電子像として結像され且つ偏向され、アパーチャを通過した電子が増倍され出力される。光検出器31から出力された信号の自己相関関数が解析部40において求められ、この自己相関関数に基づいて、被測定試料中の蛍光分子の拡散運動が解析される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 視野内の被測定試料中の蛍光分子の拡散運動を解析する蛍光相関分光解析装置であって、前記視野内において点状の励起光を前記被測定試料に照射するとともに、前記被測定試料における励起光照射位置を調整する照射位置調整手段を有する励起光照射光学系と、前記励起光照射光学系により励起光が照射された前記被測定試料中の蛍光分子から発生した蛍光を結像する蛍光結像光学系と、前記蛍光結像光学系により結像された蛍光の像面位置に設けられ蛍光光子の入射に伴い光電子を発生させる光電面と、この光電面で発生した光電子を電子像として結像するとともに該光電子を偏向させるイメージ部と、このイメージ部により結像された電子像のうちアパーチャに到達した部分の光電子を通過させるアパーチャプレートと、このアパーチャを通過した光電子を増倍して2次電子を発生させる増倍部と、この増倍部で発生した2次電子の個数に応じた信号を出力する陽極と、を有する光検出器と、前記励起光照射光学系の前記照射位置調整手段による前記被測定試料への励起光照射位置の調整と、前記光検出器の前記イメージ部による光電子の偏向とを、互いに関連させて制御する制御手段と、前記光検出器の陽極から出力された信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数に基づいて前記被測定試料中の蛍光分子の拡散運動を解析する解析部と、を備えることを特徴とする蛍光相関分光解析装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、視野内の被測定試料中の蛍光分子の拡散運動を解析する蛍光相関分光解析装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】蛍光法は、溶液中における極微小な粒子と粒子との結合、分子と分子との結合、抗原抗体反応などを評価する方法として最もよく用いられる。蛍光相関分光法(FCS: Fluorescence Correlation Spectroscopy)は、その蛍光法の中の一つの手法として利用されている。FCSは、蛍光分子の並進拡散運動を測定する方法として良く知られ、その運動から蛍光分子の分子量や分子の形状の情報を得ることができる。したがって、蛍光を発する物質に他の物質が結合すると、結合する前と比較して、その拡散運動は遅くなるため、FCSはその変化を検出することができる。 【0003】一般的なFCSは、蛍光分子が存在する溶液の極微小領域に存在する平均数個の蛍光分子からの蛍光発光を測定する。そして、この蛍光強度の時間変動(ゆらぎ)の自己相関関数を求め、この自己相関関数に基づいて蛍光分子の並進拡散運動(拡散定数)を測定し、その拡散定数の違いにより、物質と物質との結合を評価している。 【0004】また、走査型FCSは、被測定試料中の各極微小領域を走査し、走査に対しての相関を評価することにより、走査範囲における蛍光分子の並進拡散運動を解析できる方法である。例えば “K. M. Berland, P. T. C. So, Y. Chen, W. W. Mantulin, and E. Gratton, Biophys. J., 1996, 71, pp410-420”の文献では、走査型FCSで、溶液中の蛍光ビーズや蛍光分子の平均濃度や凝集度を測定している。 【0005】走査型FCSの利点は以下に記すことが挙げられる。走査型FCSにおける自己相関関数Gs(τ)は、一般的なFCSにおける自己相関関数G(τ)とは多少異なり、例えば、周期Tで試料面上を円周を描くように走査した場合、相関値はこの周期時間T,2T,3T,4T,...に対し、一般的なFCSで求められるG(τ)と同等の値を示し、それ以外の時間では相関が減少する特性を示す。これは、任意観測領域において、周期時間T毎に繰り返し蛍光強度のゆらぎを評価していることになるため、この任意観測領域中の蛍光分子の並進拡散運動に依存する滞在時間に比べ、この周期時間Tが短い場合において、並進拡散運動に対する蛍光強度のゆらぎが観測されることを意味し、Gs(nT)で一般的なFCSと等価な自己相関波形が求めることができる。さらに一般的なFCSと同様に、Gs(nT)からGs(0)を推定することにより、分子数もしくは濃度を求めることも行える。このことは、一般的なFCSと比較すると、走査手段によって測定領域を大きくした分、多数の蛍光分子を評価したことになり、測定時間に対するS/N比が優れ、極低濃度の試料を識別したり、その濃度を見積もるのに優位なことを示している。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、走査することにより、装置が煩雑になり或いは光学素子の数が増えるため、共焦点光学系を組み合わせた蛍光検出では、光収集効率が低下するなどの問題が生じ、一般的なFCSと比較し走査型FCSではS/N比の向上が望めず、また、測定時間を短縮できない等の問題点が生じる。一般的なレーザ走査型共焦点蛍光顕微鏡を、走査型FCS測定装置として代用した場合、信号である蛍光が走査光学系内を伝送するため、ミラー反射率やレンズ透過率等の影響を受け、光収集効率の低下を余儀なくされ、同時に、伝送時における波面の乱れ等の影響も生じる。また、走査により多数の蛍光分子を評価したとしても、測定としてはS/N比が良くない評価となるため、結果的に測定時間の短縮ができないといった問題が生じる。また、上記文献のように、2光子励起法を組み合わせることにより、共焦点光学系を省略することができ、光検出器側の光学系の負担を軽減させ、光収集効率を一般的なFCSと同程度にすることができるが、超短パルスレーザ光源を使用するなどのコストがかかり、また、観測領域がガウス分布の形状をしていないため、解析が困難であるという欠点を有する。 【0007】本発明は、上記問題点を克服するためになされたものであり、走査型FCSの採用を可能とするとともに光収集効率の高い共焦点光学系を有し蛍光測定のS/N比が優れた蛍光相関分光解析装置を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明に係る蛍光相関分光解析装置は、視野内の被測定試料中の蛍光分子の拡散運動を解析する蛍光相関分光解析装置であって、(1) 視野内において点状の励起光を被測定試料に照射するとともに、被測定試料における励起光照射位置を調整する照射位置調整手段を有する励起光照射光学系と、(2) 励起光照射光学系により励起光が照射された被測定試料中の蛍光分子から発生した蛍光を結像する蛍光結像光学系と、(3) 蛍光結像光学系により結像された蛍光の像面位置に設けられ蛍光光子の入射に伴い光電子を発生させる光電面と、この光電面で発生した光電子を電子像として結像するとともに該光電子を偏向させるイメージ部と、このイメージ部により結像された電子像のうちアパーチャに到達した部分の光電子を通過させるアパーチャプレートと、このアパーチャを通過した光電子を増倍して2次電子を発生させる増倍部と、この増倍部で発生した2次電子の個数に応じた信号を出力する陽極と、を有する光検出器と、(4) 励起光照射光学系の照射位置調整手段による被測定試料への励起光照射位置の調整と、光検出器のイメージ部による光電子の偏向とを、互いに関連させて制御する制御手段と、(5) 光検出器の陽極から出力された信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数に基づいて被測定試料中の蛍光分子の拡散運動を解析する解析部と、を備えることを特徴とする。 【0009】この蛍光相関分光解析装置は、視野内の被測定試料で離散的に存在している蛍光分子の挙動を蛍光相関分光法により評価し、その分子の並進拡散運動の運動特性さらには分子濃度を解析する装置である。この蛍光相関分光解析装置によれば、励起光照射光学系により、視野内において点状の励起光が被測定試料に照射されるととともに、被測定試料における励起光照射位置が照射位置調整手段により調整される。励起光照射光学系により励起光が照射された被測定試料中の蛍光分子から蛍光が発生すると、その蛍光は、蛍光結像光学系により光検出器の光電面上に結像される。この蛍光の像は、励起光照射光学系により被測定試料へ照射される点状の励起光の形状に応じたものとなる。 【0010】光検出器においては、蛍光像が形成された光電面から光電子が発生し、この光電子がイメージ部によりアパーチャプレート上に電子像として結像される。また、この光電子が偏向されることにより、アパーチャプレート上の電子像の結像位置が調整される。アパーチャプレート上の電子像のうちアパーチャに到達した部分の光電子は、アパーチャを通過し、増倍部により増倍される。そして、この増倍により生じた2次電子の個数に応じた信号が陽極より出力される。 【0011】励起光照射光学系の照射位置調整手段による被測定試料への励起光照射位置の調整と、光検出器のイメージ部による光電子の偏向とは、制御手段により互いに関連して制御される。すなわち、被測定試料における励起光照射位置から発生した蛍光光子が光検出器の光電面に到達して発生した光電子がアパーチャプレートのアパーチャを通過するよう、光検出器のイメージ部による光電子の偏向が制御される。そして、解析部により、光検出器の陽極から出力された信号の自己相関関数が求められ、この自己相関関数に基づいて被測定試料中の蛍光分子の拡散運動が解析される。 【0012】より具体的には、励起光源から出力された励起光は、励起光照射光学系の照射位置調整手段(例えばX軸ガルバノメータミラーおよびY軸ガルバノメータミラー)によりXおよびY軸方向それぞれに偏向され、対物レンズ光軸に対してX軸方向およびY軸方向それぞれの偏向角をもって対物レンズに入射し、ガウス型の光強度分布を持つビームスポットとして被測定試料上に集光される。このビームスポット内に蛍光分子が存在する場合、その蛍光分子は励起され蛍光を発する。その蛍光は、対物レンズによって集められ、ダイクロイックミラーにより励起光照射光学系とは異なる蛍光結像光学系へと分離され、バンドパスフィルタを通過し、光検出器の撮像面に結像する。 【0013】被測定試料上に照射される励起光ビームスポットは、照射位置調整手段により、例えば等速運動である円を描くように走査され、この円形走査の周期は、励起光ビームスポット内に滞在する蛍光分子の並進拡散運動よりも速く設定される。そして、光検出器のイメージ部により光電子を偏向させることにより、顕微鏡視野内のビームスポット位置を常に追従し、その位置から発せられる蛍光を検出することができる。 【0014】この光検出器は、イメージ部および増倍部を含み、光電面に入射した蛍光を光電子に変換し、イメージ部において集束コイルおよび偏向コイルによって、光電子を電子像として結像するとともに、その像位置をアパーチャープレート上で動かし、アパーチャを通過した光電子のみを増倍部において増倍し、陽極から信号として出力する。イメージ部における光電子の偏向が、常に顕微鏡下の励起光ビームスポット位置に追従するよう制御することにより、共焦点光学系と等価な光学システム構成とすることができる。 【0015】光検出器で検出された蛍光は、パルス信号に変換され、マルチチャンネルスケーラによって走査周期よりも短いビン幅で計数され記録される。この記録された信号は自己相関演算され、その演算結果より走査領域における蛍光分子の並進拡散運動が解析される。 【0016】顕微鏡視野内における励起光ビームスポット位置と、そこから発せられる蛍光を光検出器によって検出するための電子像の偏向位置とを一致させる手段として、照射位置調整手段から得られる走査位置信号を基準とし、光検出器内の電子像の偏向位置を決めることができる。さらに、周期的な走査を要しない一般的なFCSとして用いた場合、励起光ビームスポット位置のみを移動するだけで、走査位置信号で制御されている光検出器内の電子像の偏向位置は励起光ビームスポット位置に追従するため、被測定試料面上の任意位置における蛍光分子の評価を、被測定試料を動かさないで行うことができる。この照射位置調整手段として、フィードバック制御機能付きガルバノメータミラーや位置センサー機能付きピエゾ電歪素子を利用したものをも用いることができる。 【0017】より高速な照射位置調整手段として共振型光学スキャナや音響光学偏向器をも用いることができ、この場合における励起光ビームスポット位置と電子像偏向位置とを一致させる手段として照射位置調整手段と光検出器とを外部タイムベースによって同期動作させる方法が用いられる。 【0018】 【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。 【0019】図1は、本実施形態に係る蛍光相関分光解析装置1の構成図である。この蛍光相関分光解析装置1は、被測定試料2に励起光を照射する励起光照射光学系として、励起光源11、コリメータ光学系12、X軸ガルバノメータミラー13、Y軸ガルバノメータミラー14、ガルバノメータミラー用ドライバ15、リレーレンズ16〜19、ダイクロイックミラー21および対物レンズ22を備えている。また、この蛍光相関分光解析装置1は、被測定試料2中の蛍光分子から発生した蛍光を結像する蛍光結像光学系として、ダイクロイックミラー21、対物レンズ22、バンドパスフィルタ24および結像レンズ25を備えている。また、この蛍光相関分光解析装置1は、光検出器31、光検出器用ドライバ32、アンプ33、マルチチャンネルスケーラ34および解析部40を備えている。 【0020】励起光源11は、被測定試料2中の蛍光分子を励起する励起光を出力するものであり、例えば、波長532nmのレーザ光を励起光として出力するLD励起Nd:YAGレーザ光源が好適に用いられる。コリメータ光学系12は、励起光源11から出力された励起光を入力し、この励起光の光束径を適正化して平行光束として出力する。このコリメータ光学系12は、励起光が対物レンズ22へ入射する際の光束径を最適化するものであり、対物レンズ22が有する瞳径よりも入射する光束径が小さくなるように励起光の光束径を最適化する。このような最適化は、対物レンズ22によって集光される励起光ビームの形状をガウス分布とするための手法である。 【0021】コリメータ光学系12により光束径が適正化されて出力された励起光は、X軸ガルバノメータミラー13、リレーレンズ16、リレーレンズ17、Y軸ガルバノメータミラー14、リレーレンズ18およびリレーレンズ19を順に経て、蛍光顕微鏡20内に導入される。X軸ガルバノメータミラー13は励起光をX軸方向に偏向させるものであり、Y軸ガルバノメータミラー14は励起光をY軸方向に偏向させるものであり、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14それぞれの偏向角はガルバノメータミラー用ドライバ15により制御される。 【0022】Y軸ガルバノメータミラー14、リレーレンズ18およびリレーレンズ19それぞれの配置は、一般的なレーザ光走査顕微鏡で用いられている場合と同様な配置をとる。すなわち、対物レンズ22の瞳位置がY軸ガルバノメータミラー14の反射面またはその近傍に投影されるようにリレーレンズ18および19それぞれは配置される。このような光学素子の配置により、Y軸ガルバノメータミラー14によって走査される励起光は、対物レンズ2の光軸に対して偏向角を持って入射させることができ、その励起光は、対物レンズ22によって試料2に集光され且つY軸方向に走査されることになる。 【0023】さらに、リレーレンズ16およびリレーレンズ17それぞれは、Y軸ガルバノメータミラー14の反射面またはその近傍に投影された対物レンズ22の瞳を、さらにX軸ガルバノメータミラー13の反射面またはその近傍に投影するものである。これにより、X軸ガルバノメータミラー13によって走査される励起光は、Y軸と直交するX軸方向に走査されることになる。 【0024】すなわち、これらX軸ガルバノメータミラー13、Y軸ガルバノメータミラー14およびリレーレンズ16〜19により、対物レンズ22の焦点面では、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14により反射された励起光によるビームスポットが形成される。そして、その励起光のビームスポットは、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14それぞれのミラー偏向角を制御することにより、対物レンズ22の視野内における焦点面上の任意位置へ移動させることができる。また、ガルバノメータミラー用ドライバー15は、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14それぞれを高精度に駆動するためのものであり、各ガルバノメータミラー内のミラー偏向角を検知するセンサからの走査位置信号、および、外部から印加される走査信号に対し、励起光照射位置をフィードバック制御する機能を有している。 【0025】蛍光顕微鏡20は、ダイクロイックミラー21、対物レンズ22、ステージ23、バンドパスフィルタ24および結像レンズ25を含んで構成されている。ダイクロイックミラー21は、リレーレンズ19より到達した励起光を対物レンズ22へ向けて反射させるとともに、対物レンズ22より到達した蛍光をバンドパスフィルタ24へ向けて透過させる。対物レンズ22は、無限遠補正系のものであり、ステージ23上に載置された被測定試料2に対してスポット状の励起光を照射するとともに、励起光が照射されて被測定試料2の蛍光分子から発生した蛍光を集光する。バンドパスフィルタ24は、対物レンズ22から出力されダイクロイックミラー21を透過した光のうち、蛍光を透過させ、励起光の散乱成分を遮断する。結像レンズ25は、対物レンズ22の焦点面の像を光検出器31の撮像面に結像するように配置される。 【0026】光検出器31は、結像レンズ25により結像された蛍光の像を撮像面上に受光する。光検出器用ドライバ32は、この光検出器31を駆動する。図2は光検出器31の構成を説明する図である。図3は光検出器31の動作を説明する図である。 【0027】図2に示すように、この光検出器31は、真空容器310の中に、光電面311、加速電極312、アパーチャプレート313、ブランキング電極314、第1ダイノード315、ダイノード3161〜3164および陽極317を有している。また、この光検出器31は、真空容器310の周囲に偏向コイル320および集束コイル330を有し、真空容器310の外部に電極341および342を有している。 【0028】光電面311は、蛍光結像光学系により結像された蛍光の像面位置に設けられ、蛍光光子の入射に伴い光電子を発生させる。加速電極312、偏向コイル320および集束コイル330を含むイメージ部は、この光電面311で発生した光電子を、集束コイル330により電子像として結像するとともに、偏向コイル320により該光電子を偏向させる。アパーチャプレート313は、このイメージ部により結像された電子像のうちアパーチャに到達した部分の光電子を通過させる。第1ダイノード315およびダイノード3161〜3164を含む増倍部は、このアパーチャプレート313のアパーチャを通過した光電子を増倍して2次電子を発生させる。陽極317は、この増倍部で発生した2次電子の個数に応じた信号を電極341および342へ出力する。 【0029】図3に示すように、この光検出器31では、蛍光結像光学系により蛍光像が光電面311上に結像され、この蛍光像に応じて光電面311から光電子が放出される。この光電子は、集束コイル330により、アパーチャプレート313上に電子像が形成され、アパーチャプレート313のアパーチャを通過した光電子のみが、増倍部へ取り込まれて増倍され出力される。さらに偏向コイル320により、アパーチャプレート313上の電子像を動かすことにより、光電面311上に結像される蛍光像の任意位置の光を検出することが可能となっている。 【0030】したがって、被測定試料2上の励起光照射位置から発生した蛍光を常にモニタできるように光検出器31の偏向コイル320を制御することにより、共焦点光学系と等価な光学システムが形成される。例えば、対物レンズ22として倍率60倍(NA1.2)のものを用い、集光ビーム径がおよそ0.7μmのガウス型の光強度分布を有する励起光のビームスポットが形成された場合、アパーチャ直径40μmであるアパーチャプレート313を使うと、光電面311上における蛍光ビームスポットの等価的な大きさとアパーチャサイズとがほぼ一致し、蛍光ビームスポットの中心位置とアパーチャの中心位置とを一致させると、FCSを行う上で理想的な共焦点光学系が成り立つ。 【0031】再び図1を参照しながら蛍光相関分光解析装置1の全体構成を説明する。光検出器31から出力される信号は、プリアンプ33およびマルチチャンネルスケーラ34を経て解析部40へ入力する。これにより、光子計数法(フォトンカウンティング法)による光強度計測が行えるような構成となっている。光検出器31は、光電子増倍管と同等のものであり、増倍部ゲインを高くした場合、光子計数法による計測が可能である。したがって、光検出器31に入射する蛍光光子に対応して出力されるパルスをプリアンプ33により増倍し、マルチチャンネルスケーラ34によりパルスの数を計数することにより、光強度を計測することができる。また、マルチチャンネルスケーラ34は、ディスクリミネータの機能を有しており、ビン幅毎の光子数を計数することにより、光強度の経時変化をS/N比良く計測できる。 【0032】解析部40は、光検出器31から出力されプリアンプ33およびマルチチャンネルスケーラ34を経て入力した信号の自己相関関数を求め、この自己相関関数に基づいて被測定試料2中の蛍光分子の拡散運動を解析する。解析部40は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。 【0033】励起光照射光学系のX軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14それぞれの偏向角(すなわち被測定試料2への励起光照射位置)の調整と、光検出器31のイメージ部による光電子の偏向角(すなわちアパーチャプレート313上の電子像の位置)とを、互いに関連させて制御するための手段として、ガルバノメータミラー用ドライバ15から出力される走査位置信号を用いる方法がある。X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14による被測定試料2上の励起光照射位置は、ガルバノメータミラー用ドライバ15より印加される電圧の値に対し1対1の対応をとる。また、光検出器31による被測定試料2上の蛍光検出位置は、光検出器用ドライバ32より印加される電圧に対し1対1の対応をとる。したがって、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14による被測定試料2上の励起光照射位置と、光検出器31による被測定試料2上の蛍光検出位置とを、電気的に一致させることが可能である。さらに、メカニカル動作が全く無い光検出器31は、高速応答が可能であり、光電面311上の任意位置の蛍光強度を瞬時に計測できることから、被測定試料2上に走査される励起光ビームスポット位置からの蛍光を常時検出できる。 【0034】例えば、X軸ガルバノメータミラー13を駆動する走査信号をガルバノメータミラー用ドライバ15より印加した場合、X軸ガルバノメータミラー13は、その走査信号の振幅に対応した偏向角でフィードバック制御され、このとき走査位置信号は、X軸ガルバノメータミラー13のX軸方向の偏向角位置を電圧で示すことになる。この走査位置信号の振幅およびオフセットを調整して、この調整された走査位置信号を光検出器用ドライバ32内のX軸偏向コイルを制御する回路へ印加することにより、X軸ガルバノメータミラー13の偏向動作と同様に光検出器31のX軸偏向制御を行うことができる。Y軸も同様に、Y軸ガルバノメータミラー14からの走査位置信号の振幅およびオフセットを調整して、この調整された走査位置信号を光検出器用ドライバ32内のY軸偏向コイルを制御する回路に印加することにより、Y軸ガルバノメータミラー14の偏向動作と同様に光検出器31のY軸偏向制御を行うことができる。光検出器31を配置する際の方位を、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14によるX軸、Y軸の方位に合わせることにより、被測定試料2面上で走査される励起光ビームスポットに対し、光検出器31は追従して、その励起光ビームスポット内から発せられる蛍光を計測することができる。 【0035】ガルバノメータミラー用ドライバー15に外部信号として、X軸について一定周期Tで一定振幅Aの余弦波を入力させ、Y軸についても一定周期Tで一定振幅Aの正弦波を入力させた場合、被測定試料2上の励起光ビームスポットは、等速円運動である走査が行われる。このとき、この走査の円の直径は、印加する余弦波および正弦波それぞれの振幅Aで決定され、また、その中心は、印加する余弦波および正弦波それぞれのオフセットで決定される。これらの周期T、振幅Aおよびオフセットそれぞれは、試料濃度や被測定試料2中の蛍光分子の並進拡散定数に応じて適切に決めることができる。 【0036】この励起光スポットの円走査に対し、光検出器31は、その走査位置信号で駆動される。このとき、光検出器31の視野サイズはX軸およびY軸それぞれの偏向コイルに印加する電圧で決定できるため、それに対応するように、走査位置信号の振幅Aおよびオフセットを調整し、光検出器31の視野サイズと励起光スポットの走査範囲とが一致するようにし、また、被測定試料2面における励起光ビームスポット走査のX軸およびY軸それぞれの方位と、光検出器31のX軸およびY軸それぞれの方位とが一致するように、光検出器31を取り付けることにより、共焦点光学系と等価な蛍光検出が行える。 【0037】このようにして光検出器31により検出された蛍光は、光電子パルスとして光子計数法としての処理がされる。すなわち、光検出器31から出力された光電子パルスは、プリアンプ33で増幅され、マルチチャンネルスケーラ34内のディスクリミネータにより暗電流がカットされ、予め設定しておいたビン幅で計数される。このビン幅は、円走査における周期Tに応じて適切に決められるもので、T/10以下に設定することが望ましい。 【0038】マルチチャンネルスケーラ34で得られる蛍光強度の経時変化は、ビン幅を最小時間幅Δtとして平均蛍光強度で規格化した自己相関演算を行うことにより、自己相関波形Gs(τ)が得られる。この自己相関波形Gs(τ)は、走査周期をTとした場合に、T,2T,3T,...にピークを示す波形であり、このピーク値の包絡線を解析することにより、被測定試料2中の蛍光分子の濃度および並進拡散定数が求められる。 【0039】また、走査を行わないで、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14それぞれに印加する外部信号を一定電圧値とした場合においては、一般的なFCSに関する測定が行える。この場合、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14それぞれに印加する信号を変えることにより、対物レンズ22の視野内の被測定試料2上の任意位置の計測が行える。これは、光検出器31が、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14それぞれの走査位置信号によって制御されているからであり、励起光ビームスポット位置を制御するだけで、蛍光検出が行え、被測定試料2を動かす必要がなくなる。例えば、被測定試料2として細胞を用い、その細胞内の局所的領域における蛍光プローブを評価したい場合に有効で、何点かの局所的な位置におけるFCSの測定を円滑に順次行うことができる。 【0040】なお、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14に替えて、位置センサーを内蔵するピエゾ電歪素子を用いたチルティングミラーも用いることができる。この場合、偏向角精度が高い走査が可能となる。 【0041】また、X軸ガルバノメータミラー13およびY軸ガルバノメータミラー14に替えて、より高速に励起光走査が可能なデバイスである共振型光学スキャナや音響光学偏向器を用いることができる。この場合、励起光の偏向角を検知する位置センサーを用いると、この位置センサーの応答速度が問題となることから、上記実施例のような制御方法は行えない。この場合、外部タイムベースによる同期法によって、励起光ビームスポット位置と光検出器31内の電子像位置の制御を行う。 【0042】この同期法としては、例えば、XY軸共振型光学スキャナや音響光学偏向器等の照射位置調整手段による励起光のXY軸走査および光検出器31の偏向コイルのXY軸制御に関し、それぞれ計4チャンネルのファンクションジェネレータを用いる。そして、それらチャンネルの出力を外部のタイムベース(基準クロック)によってロック(フェーズ・ロック・ループ)することで、それぞれのチャンネルより出力される信号の周波数安定度を向上させることができる。また、それぞれのチャンネルから出力される正弦波信号の振幅、オフセットおよび位相それぞれを励起光走査領域に応じて設定することにより、照射位置調整手段および光検出器31を制御することが可能となり、共焦点光学系と等価な蛍光検出を行うことができる。この場合、位置精度が悪い照射位置調整手段を用いると蛍光検出はできなくなるが、共振型光学スキャナや音響光学偏向器等は位置精度が高いため用いることができる。 【0043】 【発明の効果】以上、詳細に説明したとおり、本発明に係る蛍光相関分光解析装置は、視野内の被測定試料で離散的に存在している蛍光分子の挙動を蛍光相関分光法により評価し、その分子の並進拡散運動の運動特性さらには分子濃度を解析する装置である。この蛍光相関分光解析装置によれば、励起光照射光学系により、視野内において点状の励起光が被測定試料に照射されるととともに、被測定試料における励起光照射位置が照射位置調整手段により調整される。励起光照射光学系により励起光が照射された被測定試料中の蛍光分子から蛍光が発生すると、その蛍光は、蛍光結像光学系により光検出器の光電面上に結像される。この蛍光の像は、励起光照射光学系により被測定試料へ照射される点状の励起光の形状に応じたものとなる。 【0044】光検出器においては、蛍光像が形成された光電面から光電子が発生し、この光電子がイメージ部によりアパーチャプレート上に電子像として結像される。また、この光電子が偏向されることにより、アパーチャプレート上の電子像の結像位置が調整される。アパーチャプレート上の電子像のうちアパーチャに到達した部分の光電子は、アパーチャを通過し、増倍部により増倍される。そして、この増倍により生じた2次電子の個数に応じた信号が陽極より出力される。 【0045】励起光照射光学系の照射位置調整手段による被測定試料への励起光照射位置の調整と、光検出器のイメージ部による光電子の偏向とは、制御手段により互いに関連して制御される。すなわち、被測定試料における励起光照射位置から発生した蛍光光子が光検出器の光電面に到達して発生した光電子がアパーチャプレートのアパーチャを通過するよう、光検出器のイメージ部による光電子の偏向が制御される。そして、解析部により、光検出器の陽極から出力された信号の自己相関関数が求められ、この自己相関関数に基づいて被測定試料中の蛍光分子の拡散運動が解析される。 【0046】したがって、この蛍光相関分光解析装置を用いることにより、極微小な粒子と粒子との結合、分子と分子との結合、さらに抗原抗体反応を評価する際に、被測定試料の濃度が非常に低くても、励起光照射光学系の照射位置調整手段および高光収集効率の光学システムの作用により、短時間の測定条件で、それぞれの蛍光分子の運動解析を確実に行うことができ、その結果より、顕微鏡下に存在する蛍光分子の識別が行える。 【0047】さらに、一般的なFCSで測定する場合において、単に励起光ビームスポット位置を制御するだけで、顕微鏡視野内における任意位置の被測定試料を評価できるため、例えば細胞の生化学的な反応を追跡する場合において、局所的な変化を円滑に測定できる。その結果、抗原抗体反応を用いたイムノアッセイ法、抗原決定基(エピトープ)の計測、細胞のレセプター数の計測、細胞表面の特異抗原の測定など、微量物質の計測の多様化において、蛍光プローブを用いて容易に試料評価を行える。
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| 【出願人】 |
【識別番号】595047385 【氏名又は名称】株式会社分子バイオホトニクス研究所
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| 【出願日】 |
平成12年1月13日(2000.1.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088155 【弁理士】 【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−194305(P2001−194305A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月19日(2001.7.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−4698(P2000−4698) |
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