トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験




【発明の名称】 酸素濃度測定用素子及びその製造方法及びそれを具えるセンサ
【発明者】 【氏名】谷岡 明彦

【氏名】今津 恒夫

【氏名】井上 浩三

【要約】 【課題】測定感度および精度が高く、各種化学溶剤等厳しい測定環境への耐性が高く、かつ長期間安定な測定が行える酸素濃度測定用素子及びその製造方法及びそれを具える酸素センサを提供する。

【解決手段】酸素分子の存在によりその蛍光強度が減ずる蛍光物質と、液状の酸素透過性化合物とを混合し、これを多孔質フィルタ中に均一に分散させた後、固定化して基板ガラス上に形成し、その表面に、蛍光検知部から外部に蛍光・励起光が漏れ出すことを防止し、外光を遮断する蛍光反射・外光遮断層とで覆って酸素濃度測定用素子を構成する。この酸素濃度測定用素子を蛍光検知部として用い、紫外線発光ダイオードから放射される励起光を光ファイバを経て蛍光発生層へ照射し、発生される蛍光を光ファイバを経てフォトダイオードで受光するように構成した酸素センサを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 励起光及び蛍光が透過する基板と、この基板上に設けられ、励起光の下で、酸素濃度に応じて蛍光強度の減少を示す多環式芳香族または複素環式芳香族の蛍光物質を、多孔質フィルタ内に均一に分散、固定させた蛍光発生層と、この蛍光発生層の上に設けられ、蛍光発生層から放射される蛍光を反射し、外光を遮断し、酸素を透過すると共に蛍光発生層を保護する被覆層と、を具えることを特徴とする酸素測定用素子。
【請求項2】 前記被覆層が、蛍光発生層から放射される蛍光を反射すると共に酸素を透過する蛍光反射層、外光を遮断すると共に酸素を透過する外光遮断層、及び、酸素を透過する保護層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の酸素測定用素子。
【請求項3】 前記被覆層が、蛍光発生層から放射される蛍光を反射し、外光を遮断すると共に酸素を透過する蛍光反射・外光遮断層、及び、酸素を透過する保護層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の酸素測定用素子。
【請求項4】 前記フィルタが、酸素透過性化合物で形成されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の酸素測定用素子。
【請求項5】 前記フィルタが、フッ素系化合物またはシリコン系化合物で形成されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の酸素測定用素子。
【請求項6】 前記被覆層、前記保護層、前記蛍光反射・外光遮断層、前記蛍光反射層、または、前記外光遮断層が、酸素透過性フッ素系化合物またはシリコン系化合物で形成されていることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の酸素測定用素子。
【請求項7】 前記基板が、石英ガラス、耐熱ガラス、またはサファイアガラスで形成されていることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の酸素測定用素子。
【請求項8】 前記被覆層、前記蛍光反射・外光遮断層、前記蛍光反射層、または、前記外光遮断層が、炭素、酸化鉄、チタン及びその化合物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた材料の粉末を含むことを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の酸素測定用素子。
【請求項9】 励起光の下で、酸素濃度に応じて蛍光強度の減少を示す多環式芳香族または複素環式芳香族の蛍光物質の粉末を処理精製し、この処理精製した蛍光物質の粉末を、酸素透過性液状ポリマ中に分散させた分散液を、多孔質フィルタに塗布、浸透させて蛍光物質を前記フィルタ中に固定して蛍光発生層を形成し、この蛍光発生層を基板の上に固定し、その上に被覆層、または、蛍光反射・外光遮断層を形成することを特徴とする酸素測定用素子の製造方法。
【請求項10】 励起光の下で、酸素濃度に応じて蛍光強度の減少を示す多環式芳香族または複素環式芳香族の蛍光物質の粉末を処理精製し、この処理精製した蛍光物質の粉末を、酸素透過性液状ポリマ中に分散させた分散液を、多孔質フィルタに塗布、浸透させて蛍光物質を前記フィルタ中に固定して蛍光発生層を形成し、この蛍光発生層を基板の上に固定し、その上に、蛍光反射層、外光遮断層を順次に形成することを特徴とする、酸素測定用素子の製造方法。
【請求項11】 前記蛍光物質の処理精製を、アニリン、過塩素酸、アセトン、エタノール、硫化水素、硫酸、または硫黄系化合物溶液によって行うことを特徴とする、請求項9または10に記載の酸素測定用素子の製造方法。
【請求項12】 前記被覆層を、炭素、酸化鉄、チタン及びその化合物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた材料の粉末を分散させた酸素透過性のシリコン系化合物及びまたはフッ素系化合物の溶液をフッ素系化合物フィルタまたはシリコン系化合物フィルタに塗布した後、固定化して形成することを特徴とする、請求項9に記載の酸素測定用素子の製造方法。
【請求項13】 前記蛍光反射・外光遮断層、または、前記蛍光反射層及び前記外光遮断層の各々を、炭素、酸化鉄、チタン及びその化合物、及びこれらの混合物からなる群から選ばれた材料の粉末を分散させた酸素透過性のシリコン系化合物及びまたはフッ素系化合物の溶液を塗布した後、固定化して形成することを特徴とする、請求項9または10に記載の酸素測定用素子の製造方法。
【請求項14】 励起光を放射する光源と、この光源からの励起光を透過する基板と、この基板上に設けられ、励起光の下で、酸素濃度に応じて蛍光強度の減少を示す多環式芳香族または複素環式芳香族の蛍光物質を、多孔質フィルタ内に均一に分散、固定させた蛍光発生層と、この蛍光発生層の上に設けられ、蛍光発生層から放射される蛍光を反射し、外光を遮断し、酸素を透過すると共に蛍光発生層を保護する被覆層、または、蛍光発生層から放射される蛍光を反射し、外光を遮断すると共に酸素を透過する蛍光反射・外光遮断層とを具える酸素測定用素子と、前記蛍光発生層から放射される蛍光を前記基板を経て受光する蛍光検知部と、この蛍光検知部からの出力信号を処理して酸素濃度を指示する信号を出力する信号処理部と、を具えることを特徴とする酸素センサ。
【請求項15】 前記光源に、青色及び励起用紫外線を放射するLEDを設けたことを特徴とする、請求項14に記載の酸素センサ。
【請求項16】 前記蛍光物質の励起光の波長を中心とする通過帯域を有するバンドパスフィルタと、このバンドパスフィルタを透過した励起光を受光するフォトダイオードと、このフォトダイオードの出力を受け、励起光強度を一定に保つ光源駆動アンプとを設けたことを特徴とする請求項14に記載の酸素センサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸素濃度を測定するための酸素濃度測定用素子、特に光励起により発する蛍光が測定すべき酸素濃度に応じてその強度を減ずるという、いわゆる「蛍光消光減少」に基づく酸素濃度測定用素子に関するものである。本発明は、さらにこのような酸素濃度測定用素子を製造する方法並びにこのような酸素濃度測定用素子を具える酸素濃度センサにも関するものである。
【0002】
【従来の技術】酸素濃度を計測するセンサとしては、従来から種々の原理に基づくものが実際に用いられてきた。例えば、酸素の電子受容体としての性質を利用し、酸素透過膜によって被覆した電極を使用して酸素の電気化学的還元の際に流れる電流を検知したり、高温状態にあるセラミックの酸素濃淡電池作用に基づく酸素イオン伝導性を利用して酸素を検知するものが知られている。更に、近年、光励起により発する蛍光が、存在する酸素の濃度に応じてその強度を減ずる「蛍光消光現象」を利用した酸素濃度の測定が提案されている。この現象に基づく酸素センサは、気体・液中の0〜100%の酸素分圧を測定が可能であること、電解液や酸素透過性膜を用いないので長期間連続して測定できること、圧力の影響を受けにくいこと、静止した溶液中でも測定が可能であること等の多くの優れた特性を有している。例えば、特開平6-180287号公報には、蛍光試薬をシリコンオイル中に混合し、その後、架橋・固定化して上述したような酸素センサ素子を製造する方法が開示されている。更に、特開平10-132742号公報には、蛍光試薬を微細結晶として混合させる方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した蛍光消光型の酸素濃度測定用センサの酸素検知素子は、デカシクレン、ペリレン、テトラセン、ベンズアントラセン等の多環式芳香族分子または複素環式芳香族分子を、シリコン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、テフロン等の酸素透過性化合物に固定化する必要がある。そのため種々の方法が提案されてきたが、実用的な精度および感度を有する測定ができる程度に十分な蛍光を発生するデカシクレンなどの蛍光試薬の量を固定化することは困難であった。また、デカシクレンをシリコンオイル中に分散させた後、加熱してゲル状の蛍光層を製作することも提案されているが、この場合にも感度が低いとともに蛍光分子の分散が均一とはならず特性のばらつきが大きかった。デカシクレンを微細結晶として用いる方法でも特性のばらつきを十分に小さくすることはできなかった。
【0004】更に、蛍光層や、蛍光層の上に設ける遮光層の膜厚、及び、その形状を一定にする必要があるが、従来の方法ではこれらを正確に調整することは、極めて困難であり、膜圧、形状による特性のばらつきも大きかった。
【0005】従って、本発明の目的は、より感度が高く特性のばらつきがない酸素濃度測定用素子及びその製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、このような酸素濃度測定用素子と、蛍光を受光する蛍光検知部と、この蛍光検知部からの出力信号を処理して酸素濃度を指示する信号を出力する信号処理部とを具え、安定的に長期間使用でき、特性のばらつきがない酸素センサを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による酸素濃度測定用素子は、励起光及び蛍光が透過する基板と、この基板上に設けられ、励起光の下で、酸素濃度に応じて蛍光強度の減少を示す多環式芳香族または複素環式芳香族の蛍光物質を、多孔質フィルタ内に均一に分散、固定させた蛍光発生層と、この蛍光発生層の上に設けられ、蛍光発生層から放射される蛍光を反射し、外光を遮断し、酸素を透過すると共に蛍光発生層を保護する被覆層を、具えることを特徴とするものである。本発明においては、上述した被覆層は上述した全ての機能を有する単一の層として構成するか、または、それぞれの機能を有する3つの独立した層を積層して構成するか、または、蛍光発生層から放射される蛍光を反射し、外光を遮断すると共に酸素を透過する蛍光反射・外光遮断層と、保護機能を有する保護層とを積層して構成することができる。また、上述した多孔質フィルタは、均一な膜厚、かつ均一な酸素透過性を有し、均一な多孔質である必要がある。このようなフィルタにおいて、蛍光物質は、このフィルタ内の多数の微細な孔に入り込み、極めて均一に分散されるとともに安定に存在することとなる。
【0007】また、本発明による酸素濃度測定用素子の製造方法は、励起光の下で、酸素濃度に応じて蛍光強度の減少を示す多環式芳香族または複素環式芳香族の蛍光物質の粉末を処理精製し、この処理精製した蛍光物質の粉末を、酸素透過性液状ポリマ中に分散させた分散液を、多孔質フィルタに塗布、浸透させた後、加熱して蛍光物質を前記フィルタ中に固定して蛍光発生層を形成し、この蛍光発生層を基板の上に固定し、その上に蛍光発生層から放射される蛍光を反射し、外光を遮断すると共に酸素を透過すると共に蛍光発生層を保護する被覆層を設けることを特徴とするものである。この被覆層は、単一の層として形成するか、または、2つまたは3つの層を積層して形成することができる。
【0008】更に、本発明よる酸素センサは、励起光を放射する光源と、この光源からの励起光を透過する基板と、この基板上に設けられ、励起光の下で、酸素濃度に応じて蛍光強度の減少を示す多環式芳香族または複素環式芳香族の蛍光物質を、多孔質フィルタ内に均一に分散、固定させた蛍光発生層と、この蛍光発生層の上に設けられ、蛍光発生層から放射される蛍光を反射し、外光を遮断し、酸素を透過すると共に蛍光発生層を保護する被覆層とを具える酸素測定用素子と、前記蛍光発生層から放射される蛍光を前記基板を経て受光する蛍光検知部と、この蛍光検知部からの出力信号を処理して酸素濃度を指示する信号を出力する信号処理部とを具えることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】実施例1以下に、本発明による酸素濃度測定用素子の製造方法の代表的な例について説明する。初めに、蛍光物質を以下のようにして処理精製する。5gのデカシクレンと、300ccのアニリンを3角フラスコに入れ、十分に攪拌・混合する。このデカシクレン−アニリン混合液を、温度60℃で2時間加熱・混合する。デカシクレン−アニリン混合液に、過塩素酸を入れてpH=3.0に調整する。8時間放置し、不溶性物質を沈降させる。500メッシュのステンレス製の濾過網で、デカシクレン−アニリン混合液の上澄み液を濾過する。濾過液を遠心分離器によって、例えば2000回転で2時間以上、5000回転で30分以上、10000回転で10分以上という条件で分離させる。遠心分離した液の上澄み液を捨て、残りの沈殿物とアセトンを混合・攪拌し、再度遠心分離機にかけて、分離させる。更に、このような遠心分離を2回繰り返す。遠心分離機で沈殿させた物質を、60℃で5時間乾燥させて処理精製した蛍光物質を得る。
【0010】次に上述したようにして処理精製した蛍光物質を用いて酸素測定用素子を製造する。最初に蛍光発生層を作製する。液状の酸素透過性ポリマーである「サイトップ(旭ガラスの登録商標)」溶液に、処理精製した蛍光物質の微粉末を入れて混合・攪拌する。図1に示すように、基板ガラス(すりガラス面)1に、上記の蛍光物質−酸素透過性化合物混合液を2滴たらし、酸素透過性化合物である厚さ20−100μm、メッシュ10−100nmのフッ素系化合物をその上に乗せて、このフッ素系化合物に液を染み込ませ、基板ガラス−フッ素系化合物間の空気を追い出し、密着させる。この状態で12時間自然乾燥させ、その後、乾燥機で100℃、2時間乾燥させて蛍光発生層2を得る。
【0011】次に、蛍光反射層3を作製する。サイトップ溶液に酸化チタン粉末を入れて混合・攪拌する。基板ガラス1の上に形成した蛍光発生層2の表面に酸化チタン−サイトップ混合液を細い筆などで塗布し、自然乾燥後、再度塗布し、6時間以上自然乾燥させ、その後、乾燥機で150℃で2時間乾燥させて蛍光反射層3を形成する。すきまの空気を追い出すために、圧力700Kg/cm、6分間以上という条件で油圧プレスする。
【0012】次に、外光遮断層4を作製する。サイトップ溶液に金属チタン粉末を入れて混合・攪拌する。塗膜を剥離させやすいフッ素系化合物に、金属チタン−サイトップ混合液を細い筆などで2回塗布し自然乾燥させ、塗膜を剥離させる。基板ガラス1の表面に形成した蛍光発生層2の上に形成した蛍光反射層3の表面にサイトップ溶液を塗布し、30分位乾燥し、半乾きの状態にさせる。そこに、上述したように剥離させた塗膜を乗せて接着し、12時間自然乾燥させる。その後、乾燥機で、2時間乾燥させて外光遮断層4を得る。すきまの空気を追い出すために、圧力700Kg/cm、6分間以上という条件で油圧プレスする。
【0013】このようにして、図1に示す酸素濃度測定用素子が得られる。この酸素濃度測定用素子は、外側(測定すべき酸素と接触する側)から順に、膜厚が20μmの保護層5、膜厚が5μmの外光遮断層4、膜厚が5μmの蛍光反射層3、膜厚が20μmの蛍光発生層2、厚さ2mmの基板ガラス1から構成される。以下、各層について説明する。
【0014】保護層5は、フッ素系化合物にフッ素系化合物溶液を含浸し、熱処理後、プレス圧縮して形成する。これによって、水、スチーム、油、アルコール等、液体の浸潤を完全に防止させる。液体が少しでも浸潤すると酸素ガスの移動交換が悪くなったり、また光学特性が変化し応答特性、感度が非常に悪くなってしまうからである。
【0015】外光遮断層4は、金属チタン微粉末とフッ素系化合物溶液とを混合し、その混合液を塗布し乾燥させたものである。蛍光の光強度は非常に微弱であり、外部から光が侵入すると外乱ノイズになり測定誤差が生じ測定が不安定になってしまうため、この層で外光を遮断する必要がある。
【0016】蛍光反射層3は、酸化チタン微粉末とフッ素系化合物溶液とを混合し、その混合液を塗布し乾燥させたものである。内部の励起光、蛍光が外部に漏れても測定誤差が生ずるが、この層はこの内部からの光漏れを防止する必要がある。この白色の層で励起光、蛍光を反射して集光効率を高くすることにより、感度を塗らない時より3倍以上に高くすることができる。
【0017】蛍光発生層2は、蛍光物質を外径13mm、厚さ20μm、メッシュ40nmのフッ素系化合物内に液状性フッ素系化合物によって均一に分散させ、固定化したものである。
【0018】基板ガラス1は、外径10mm、厚さ2mmであって、材質が石英ガラス、耐熱ガラス、サファイアガラス等を使用すると安定して測定可能である。
【0019】図2は、本発明による酸素センサの、上述した酸素濃度測定用素子10を組み込んだ酸素検知部の構造を示すものである。図2の上方が測定すべき酸素と接触する部分である。基板ガラス1、蛍光発生層2、蛍光反射層3、外光遮断層4および保護層5によって構成される酸素濃度測定用素子10は、ステンレス(SUS316)製のセンサキャップ11の先端に保持し、このセンサキャップをプローブホルダ12の先端に固定している。
【0020】蛍光検知部の酸素濃度測定用素子10をセンサキャップ11の先端に固定するために、エポキシ系接着剤は、主剤と硬化剤を混合し、真空ベルジャーに入れ真空ポンプで15分間吸引し、脱泡を行う。脱泡後の接着剤をセンサキャップ11の内面に塗り、基板ガラス1とセンサキャップ11とを接着させる。乾燥機で50℃、5時間以上乾燥させて形成した接着層を符号12で示す。このように先端に酸素濃度測定用素子を固定したセンサキャップ11をプローブホルダ12に嵌合する。このとき基板ガラス1の裏面とプローブホルダ12の先端面との間にOリング13を介挿する。
【0021】図3は、本発明による酸素センサの全体の構成を示すものである。上述したように先端に酸素濃度測定用素子を固定したプローブホルダ12の内部には、一端をガラス基板1の裏面に当接したライトガイドロッドLGRを配置し、その他端にそれぞれ一端が当接するように一対の光ファイバ14および15を延在させ、一方の光ファイバ14の他端(入射側)をブルーフィルタ16を介して、紫外線を発生する発光ダイオード17と対向させる。また、他方の光ファイバ15の他端(出射側)はグリーンフィルタ18を介してフォトダイオード19と対向させる。
【0022】ブルーフィルタ16の出射側には、光軸から外れた位置に励起光補償用のフォトダイオード20を設け、その出力を発光ダイオード17を駆動するための演算・制御回路21にフィードバックする。この演算・制御回路21には中央処理ユニット(CPU)22から規準信号を供給し、この規準信号とフォトダイオード20からの信号とのずれに基づいて発光ダイオード17の駆動電流を制御し、常に一定の輝度の励起光が放射されるようにする。
【0023】測定すべき酸素の濃度に応じて酸素濃度測定用素子10の表面から、それぞれ酸素透過性を有する保護層5、外光遮断層4および蛍光反射層3を経て蛍光発生層2内に酸素が入り込む。この蛍光発生層2には、発光ダイオード17から放射される紫外線を光ファイバ14を経て照射するので、蛍光が発生されるが、入り込んだ酸素による蛍光消光現象によって蛍光量は酸素濃度に反比例して減少する。この蛍光を基板ガラス1下部に装着された光ファイバ15を経てフォトダイオード19で受光する。発光ダイオード17が放射する励起光の波長は385nm、バンド幅は20nmであり、酸素によって消光される蛍光の波長は510nm、バンド幅は20nmである。
【0024】フォトダイオード19の出力信号を、プリアンプ23で増幅した後、サンプル・ホールド回路24でサンプリングし、得られるサンプル値を演算増幅器25および計器本体側のアンプ26でさらに増幅した後、A/D変換器27でディジタル信号に変換し、CPU22に供給する。CPU22では、このようにして供給されるフォトダイオード19の出力信号を処理して酸素濃度を求めることができる。
【0025】プローブホルダ12の先端には、温度センサ31をも設け、その出力信号をアンプ32で増幅して計器本体へ送り、A/D変換器33でディジタル信号に変換した後、CPU22へ供給する。酸素濃度と温度との相関関係を予め求めておき、CPU22で酸素濃度を演算により求める際に、温度センサ31によって検出した温度による補正を行うことにより、測定精度を向上することができる。
【0026】上述したようにして求めた酸素濃度を表す信号は、CPU22に接続した液晶ディスプレイ41で表示したり、D/A変換器42でアナログ信号に変換して出力したり、RS−232Cインターフェイス43を介してディジタル信号として出力する。
【0027】次に上述した実施例の各種特性を説明するとともに比較例との特性の差異を説明する。先ず、感度特性について説明する。サンプル1は、本実施例によって作成した0.02mmの膜厚のセンサチップである。サンプルNo.2として、特開平10-132742号公報の蛍光試薬を微細結晶として混合させる方法によって、センサチップとしてデカシクレンをアニリンに溶解させ、沈殿物を除去した後、上澄み液にアセトンを加えて再結晶化させ、アセトン、エタノールで洗浄・精製した蛍光材料を液状シリコーンポリマ中に混合、溶解し、重合して所定の形状に硬化させて0.10mmの膜厚の蛍光発生層を作成したセンサチップを準備した。サンプルNo.3としてデカシクレン粉末をそのままシリコーンポリマ中に分散させて作ったセンサチップを準備し、サンプルNo.4としてデカシクレンをアニリンに溶解したときに生じる沈殿物を再結晶化して得られる蛍光材料を液状シリコーンポリマ中に混合、溶解し、硬化させたセンサチップを準備した。これらのサンプルNo.3およびNo.4の蛍光発生層の膜厚も0.10mmとした。これらのサンプルを温度25℃、窒素雰囲気(酸素濃度0%)中において2時間以上経過後に測定した信号強度と、空気中(酸素濃度20.9%)で測定した信号強度との差を求めた結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

この表1から、本発明によるサンプルNo.1の感度は、サンプルNo2 に比べて2倍以上も高く、サンプルNo3に比べれば50倍以上も高いことがわかる。サンプルNo.1は膜厚が0.02mmと他のサンプルの20%しかないことを考慮すると、膜厚あたりのサンプルNo.1の感度は、No.2に比べて10倍以上も高く、サンプルNo.4に比べれば250倍以上も高いことがわかる。
【0029】次に長期安定性についての試験を行った結果を示す。測定条件としては、上述したサンプルNo.1〜No.4を空気中で温度20℃に保ち、信号強度の時間的変化、すなわちドリフト率を測定した。その結果を表2示す。
【0030】
【表2】

【0031】このグラフから本発明による実施例であるサンプルNo.1では、長期間に亘って感度の変動はきわめて少なく、2000時間での、ドリフト率は、0.0%である。サンプルNo.2は、179時間でドリフト率0.1%であるが、本発明によるサンプルNo.1では、その10倍以上の時間である2000時間でもドリフト率0.0%であり、サンプルNo.1は顕著に安定性が優れている。さらに、サンプルNo4は、表1からわかるように感度そのものは大きいが、大きなドリフト率を示し安定性がないことがわかる。
【0032】実施例2図1の実施例1では、蛍光反射層3、外光遮断層4という構成となっているが、図4に示すように、これを一体として蛍光反射・外光遮断層53として形成することもできる。即ち、蛍光反射層は、蛍光発生層側では主として蛍光発生層から放射される蛍光を反射する機能を果たすが、一方、被検物質側では外光を遮断する機能をも併せ持つものである。従って、実施例1では蛍光反射層3と外光遮断層4とを積層した構造となっているが、図4に示すように、蛍光反射・外光遮断層53として1層で形成し、蛍光発生層52から放射される蛍光を反射する機能及び外光を遮断する機能を果たさせることももちろん可能である。
【0033】実施例3図1の実施例1では、蛍光反射層3、外光遮断層4、保護層5という構成となっているが、図5に示すように、これを一体として被覆層63として形成することもできる。即ち、実施例1で保護層5として使用したフッ素系化合物フィルタに、蛍光を反射し、外光を遮断する機能を果たす物質を塗布し、一体として被覆層63を形成させるものである。具体的には、膜厚70〜80μmのフッ素系化合物フィルタに、金属チタン−サイトップ混合液を細い筆などで2回塗布し自然乾燥させる。基板ガラス61の表面に形成した蛍光発生層62の上にサイトップ溶液を塗布し、30分位乾燥し、半乾きの状態にさせる。そこに、上述したフィルタを乗せて接着し、12時間自然乾燥させる。その後、乾燥機で、2時間乾燥させて被覆層63を得る。すきまの空気を追い出すために、圧力700Kg/cm、6分間以上という条件で油圧プレスする。油圧プレスによって被覆層63は、最終的には約20〜30μmとなる。図5のように、被覆層63の上部(被検物質側)には薄い薄膜の金属チタン−サイトップ層64が形成される。
【0034】
【発明の効果】本発明による酸素濃度測定用素子は、多孔質フィルタの内部に蛍光物質を均一に分散し、安定に固定したものであるので、感度および精度が高いと共に長期間に亘って安定に動作するものである。また、蛍光発生層、被覆層、蛍光反射・外光遮断層の膜厚及び形状ともに再現性が高く、特性のばらつきを非常に小さくすることができる。また、このような優れた特性を有する酸素濃度測定用素子を具える酸素センサは、感度が良く、長期間安定に連続して測定することが可能である。さらに、このような酸素濃度測定用素子を製造する本発明の方法によれば、特性の優れた素子をきわめて再現性高く製造することができる。
【出願人】 【識別番号】593117796
【氏名又は名称】株式会社オートマチック・システムリサーチ
【出願日】 平成12年1月6日(2000.1.6)
【代理人】 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
【公開番号】 特開2001−194304(P2001−194304A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−685(P2000−685)