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【発明の名称】 光学測定装置
【発明者】 【氏名】関和 三直

【氏名】松村 義彦

【要約】 【課題】投光部と受光部との間に介在された試料の光学特性を測定する場合、投光部と受光部との組を複数設け、検出された各光量に基づき装置変動の影響をキャンセルすることが行われているが、測定系ごとの装置変動に差があれば、測定誤差が増大する。

【解決手段】検出器3a,3bで検出された各光量に基づき装置変動度、具体的にはセル1a,1bの壁の汚れ等に基づく光減衰率ty′を算出し、当該光減衰率ty′としきい値とを比較し、しきい値を超える場合にはその旨を出力する。光減衰率ty′の値をそのまま出力してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】投光部と受光部との間に介在された試料の光学特性を測定する光学測定装置であって、光源の光を試料に投光する複数の投光部と、試料を透過した光を受光する前記投光部と組になった受光部と、各受光部の受光した光量を検出する光量検出部と、光量検出部により検出された各光量に基づき装置変動の影響をキャンセルする演算を行うことのできる演算部とを有し、前記演算部は、光量検出部により検出された各光量に基づき装置変動度を算出するものであることを特徴とする光学測定装置。
【請求項2】前記演算部は、算出された装置変動度を出力するものであることを特徴とする請求項1記載の光学測定装置。
【請求項3】前記演算部は、算出された装置変動度としきい値とを比較し、当該装置変動度がしきい値を超える場合には、そのことを出力するものであることを特徴とする請求項1記載の光学測定装置。
【請求項4】前記装置変動は、光源の光量の変動であることを特徴とする請求項1記載の光学測定装置。
【請求項5】前記装置変動は、投光部から受光部までの光路(試料を除く。)の透過率の変動である請求項1記載の光学測定装置。
【請求項6】前記装置変動は、光量検出部の検出感度の変動であることを特徴とする請求項1記載の光学測定装置。
【請求項7】前記試料は、セルに入った液体であり、前記装置変動は、セルの壁の汚れに基づくことを特徴とする請求項5記載の光学測定装置。
【請求項8】前記演算部が出力するときは、試料の光学特性の測定データにコメントを付けて行うことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の光学測定装置。
【請求項9】前記演算部が出力するときは、試料の光学特性の測定を中止することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の光学測定装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、投光部と受光部との間に介在された試料の光学特性を測定する光学測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】投光用光源の光を溶液に投光し、溶液を透過した光を受光して、その受光光量に基づき、溶液の吸光度を測定する装置が知られている。
【0003】溶液を保持するのにフローセルを使用している場合は、測定回数が多くなると、セルの内面が汚れるようになり、この汚れのために、透過光量が低下するので、実際よりも見かけ上吸光度が増加し、測定誤差が発生する。
【0004】そこで、前記投光部と受光部との組(以下「測定系」という)を2つ設け、投光部と受光部との間に光路長の異なるセルをそれぞれ挿入した状態で、溶液に各セル内を連続通過させ、溶液の吸光度を測定することにより、セルの汚れに基づく透過率の低下をキャンセルする提案がなされている(特開平1−210980号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記提案によれば、各セルの汚れを同じとして計算しているが、実際には、セルの汚れは、セルごとに独立して変化していくので、セルの汚れの程度に差が生じる。この差は、長時間使用するにつれて(つまりセルの汚れがひどくなるにつれて)顕著になる。
【0006】このため、セルの汚れに基づく透過率の低下を完全にキャンセルすることができず、測定誤差が増大する。
【0007】以上のような汚れの差が測定誤差につながるという問題は、セルの汚れだけでなく、光源の光量低下、光路(試料を除く)の透過率の低下、検出部の感度の劣化などの装置変動が、著しく大きくなったときにも発生する。
【0008】そこで、本発明は、光源から検出部までの装置変動度をモニターし、試料の測定誤差が大きくならないうちに、対策をとることのできる光学測定装置を実現することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】本発明の光学測定装置は、光源の光を試料に投光する複数の投光部と、試料を透過した光を受光する前記投光部と組になった受光部と、各受光部の受光した光量を検出する光量検出部と、光量検出部により検出された各光量に基づき装置変動の影響をキャンセルする演算を行うことのできる演算部とを有し、前記演算部は、光量検出部により検出された各光量に基づき装置変動度を算出するものである。
【0010】ここで装置変動とは、試料以外の、測定装置が測定に影響を与える要因に基づく変動という。装置変動度とはその変動の大きさをいう。
【0011】この光学測定装置によれば、光量検出部により検出された各光量に基づき装置変動度を算出する。これは、同じ試料の光透過条件が測定系ごとに違うように設定されている場合に、可能となることである。
【0012】そして、前記演算部は、算出した装置変動度の値を出力してもよく、当該装置変動度としきい値とを比較し、当該装置変動度がしきい値を超える場合には、そのことを出力してもよい。
【0013】これにより、試料の測定誤差が大きくなっても、そのことに気づかずに測定結果を利用する、という事態を未然に防止することができる。したがって、常に精度のよい測定データを得ることができる。
【0014】前記試料が、セルに入った液体であり、前記装置変動は、セルの壁の汚れに基づく場合は、本発明によれば、セルの汚れがひどくならないうちに、セルを洗浄することができるので、セルの汚れの差はあまり生じない。したがって、セルの汚れに基づく透過率の低下がキャンセルされた溶液の吸光度を正確に測定することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】図1は溶液の吸光度測定装置の概略構成図である。
【0017】吸光度測定装置は、光路長の違う2つのフローセル(以下「セル」という)1a,1bを有している。試料液を導く管7は、入口の近くで二手に分かれて、それぞれセル1a,1bに接続される。両セル1a,1bの出口に接続された管8a,8bは、1つに合流し、排出口より排出される。
【0018】各セル1a,1bには、光源2a,2bの光が入射され、セル1a,1bを通過した光は、検出器3a,3bにより検出される。検出器3a,3bの出力は、増幅器4a,4bにより増幅され、A/D変換器5a,5bでディジタル信号に変換される。このディジタル信号は、コンピュータ演算部6に入力され、ここにおいて、溶液の吸光度が算出される。
【0019】光源2a,2bは、試料液の吸光度測定に適した波長の光を照射するものが選ばれる。各セル1a,1bは、当該波長の光が透過できる材質で構成される。例えば可視光線ならガラス、アクリル樹脂などの透明体が使用される。検出器3a,3bは、フォトマルチプライヤ、PINダイオードなどで構成されるが、いずれの種類を用いるかは、当該波長の光を高感度で検出できるかどうか等で決められる。A/D変換器5a,5bは、増幅器4a,4bのアナログ信号を所定ビット数のディジタル信号に変換するものである。
【0020】なお、図1において、光源や検出器は2つあるが、光源、検出器を1つにして光分岐器と光シャッター(例えば扇形の回転板)を用いて、2つの測定系を構成してもよい。
【0021】コンピュータ演算部6は、2系統の検出光量に基づいて、試料液の吸光度を算出する。その算出方法を以下説明する。
【0022】長い方のセルの光路長をL,短い方のセルの光路長をS,長い方のセルの試料液の透過率をtcl,短い方のセルの試料液の透過率をtcsとする。セルの汚れに基づく減衰率(以下、単に「セルの汚れ」ということがある)をty,長い方のセルで測定された透過率をtsl,短い方のセルで測定された透過率をtssとする。tcl,tcs,tyは未知である。tyは、両セルで異なるが、試料液の吸光度を算出する計算では同一とする。
【0023】tclとtcsとの違いは、セルの光路長の違いにのみ基づくものであるので、tcl=tcs(L/S) (1)となる。また、試料液の透過率と測定された透過率との関係は、tss=tcs(1−ty) (2)tsl=tcl(1−ty) (3)上の3つの式(1)〜(3)から、 tcs=(tss/tsl)S/(S-L)=(tsl/tss)S/(L-S) (4) tcl=(tss/tsl)L/(S-L)=(tsl/tss)L/(L-S) (5)が導かれる。また、(2)式から、ty=(1−tss/tcs) (6)が導かれる。
【0024】前記(4)(5)式は、長い方のセルでの測定透過率tslと短い方のセルでの測定透過率tssと、各セルの長さの比とから、試料液の透過率tcs又はtclが求められることを示している。したがって、試料液の吸光度は、その対数をとることにより求められる。
【0025】前記の吸光度の算出では、セルの汚れtyは、両セルで同じであるとしていた。しかし実際には、汚れの程度が異なる。
【0026】短い方のセルの汚れに基づく減衰率をtys、長い方のセルの汚れに基づく減衰率をtylと書くと、(2)式(3)式は、tss=tcs(1−tys) (7)tsl=tcl(1−tyl) (8)となる。(1)(7)(8)式から、 tcs=[tsl(1−tys)/tss(1−tyl)]S/(L-S) (9) tcl=[tsl(1−tys)/tss(1−tyl)]L/(L-S) (10)が導かれる。
【0027】ここで、例えば、セル長の比L/Sを2、短い方のセルの試料液の透過率tcsを50%、長い方のセルの試料液の透過率tcl(tcl=tcs2)を25%とする。短い方のセルで測定される透過率tss、長い方のセルで測定される透過率tslは、(7)(8)式を満たすものである。また、セルの汚れの比tyl/tysは、汚れの度合いが違っても一定1.1であるとする(この汚れの比を1.1と仮定したが、実際には、使用者が装置の汚れのバラツキを実測して設定する)。
【0028】セルの汚れに差があることを知らない測定者は、短い方のセルで測定された透過率tss、長い方のセルで測定された透過率tslに基づき、(4)式を用いて短い方のセルの試料液の透過率tcs′を求め、(5)式を用いて長い方のセルの試料液の透過率tcl′を求める。
【0029】以上のtys、tyl、試料液の見かけの透過率tcs′、tcl′の関係を表にすると、表1のようになる。表1には、(6)式に基づいて計算した見かけ上のセルの汚れty′ty′=1−tss/tcs′ (11)と、短い方のセルで測定される透過率tssと長い方のセルで測定される透過率tslとの比RR=tss/tsl (12)も掲げている。
【0030】
【表1】

【0031】この表1から、セルの汚れの比tyl/tysが一定でも、セルの汚れがひどくなるにつれて、試料液の見かけの透過率tcs′と真の透過率tcsとの差は大きくなる。
【0032】表1によれば、透過率の測定誤差tcs′−tcsを0.6%以内に抑えるには、セルの汚れは、10%以内にしなければならないことが分かる。つまり、両セルの汚れに差が発生することを前提にすれば、測定誤差を抑えるには、セルの汚れが少ない方がよい。そこで、セルの汚れを監視してセルの洗浄をすればよい。
【0033】そこで、本発明の実施形態では、コンピュータ演算部6は、セルの汚れを(11)式を用いて監視する。そしてその値ty′を表示、印字などするための信号を出力してもよく、その値ty′がしきい値を超えれば、その旨を表示、印字などするための信号を出力してもよい。この場合、値ty′がしきい値を超えれば測定を中止してもよく、中止しないで、測定値にその旨の表示を付加してもよい。
【0034】使用者は、前記表示、印字に基づいて、セルの洗浄を行うことができる。セルの洗浄方法は、慣用されている方法で行えばよい。
【0035】なお、前記(11)式のty′は、実際のセルの汚れtys、tylとは違うが、セルの汚れが少ない範囲では、例えばty′が10%以内であれば、実際のセルの汚れtys、tylとの差は少ない。したがって、汚れが少ないうちは、 (11)式を用いてセルの汚れを監視しても問題はない。
【0036】いままでは、セルの汚れのみを問題にしてきたが、これが光源の光量低下であっても同様である。各光源は、使用時間がほぼ同じであれば同じように劣化すると考えられるが、実際には個々にばらつきがある。そこで、セルの汚れに基づく減衰率tyを光源の光量低下に基づく減衰率tyと読み換えれば、いままでと同じような手順によって光源の光量低下を監視し、使用者に知らせることができる。
【0037】また、検出器の感度劣化、光ファイバーなどの光学系の劣化による光量低下、部分的な温度変化による光路条件の変化なども、いままでと同じような手順によって監視することができるので、その値が大きくなれば、使用者に知らせることとすれば、測定誤差の増加を防ぐことができる。
【0038】装置変動要因が特定できない場合や、装置変動要因が重複している場合もあるが、そのときでも、何らかの装置変動が生じていることを使用者に知らせることができるので、使用者は、測定装置を詳細に点検することにより、装置変動要因を発見し除くことができる。
【0039】本発明の実施の形態は以上のとおりであるが、本発明の実施は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、図1は溶液の吸光度測定装置の構成は、図1に掲げたものに限定されない。
【0040】図2は、他の構成を持った溶液の吸光度測定装置の概略構成図である。図1の構成との違いは、2組の投光ファイバー12a,12bと、受光ファイバー13a,13bとをセル11a,11bに保持し、投光ファイバー12a,12bの投光端と受光ファイバー13a,13bの受光端との間に試料液14を介在させていることである。投光ファイバー12a,12bの投光端と受光ファイバー13a,13bの受光端との間の距離は、互いに異なっている。この構成では、投光ファイバー12a,12bの投光端、及び受光ファイバー13a,13bの受光端に汚れが付着し、それが装置変動要因になる。
【0041】なお、図2において、光源や検出器は2つあるが、光源、検出器を1つにして、投光ファイバーと受光ファイバーとを必要数分岐して、光シャッターを用いて切り替えることにより、測定系を複数構成してもよい。ただし、光源や検出器は1つなので、そのばらつきは生じない。よって、光源や検出器の変動の影響は全部キャンセルされ、ここでの測定誤差の要因とならない。
【0042】その他、測定系が3組以上あっても2組ずつ前記装置変動度の監視を行えばよく、試料液に代えて固体や気体の試料を用いてもよいなど、本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【出願人】 【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
【出願日】 平成12年1月14日(2000.1.14)
【代理人】 【識別番号】100075155
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外2名)
【公開番号】 特開2001−194302(P2001−194302A)
【公開日】 平成13年7月19日(2001.7.19)
【出願番号】 特願2000−6873(P2000−6873)