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【発明の名称】 コンクリートクラックの深さの磁気的計測方法
【発明者】 【氏名】芳賀 昭

【氏名】大塚 浩司

【要約】 【課題】本発明は、コンクリート構造物のクラックの深さをコンクリート表面から磁気的に非破壊検査する方法を得ることを目的とする。

【解決手段】コンクリートクラックに注入した磁性体粉、励磁コイル、コンデンサバンク、放電スイッチ、検出コイルおよびデジタルオシロからなっている。コンクリートクラックに注入した磁性体粉をコンクリート表面から瞬間強磁界により磁化し、それによる誘導磁界の大きさを測定することにより、コンクリートクラックの深さを判定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンクリートクラックに磁性体粉を注入し、該コンクリート表面から励磁コイルによりクラック中の磁性体粉を瞬間強磁界により磁化し、その磁化されたクラック中の磁性体粉から生ずる磁界の大きさを検出することにより、コンクリートクラックの深さを判定するようにしたことを特徴とするコンクリートクラックの深さの磁気的計測方法。
【請求項2】請求項1で磁性体粉を瞬間強磁界により磁化し、その磁化されたクラック中の磁性体粉から生ずる磁界を検出しケプストラム解析によってコンクリートクラックの深さを判定するようにしたことを特徴とするコンクリートクラックの深さの磁気的計測方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンクリート構造物に生じているクラックの深さをコンクリート表面から磁気的な方法によって非破壊検査する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超音波法は、超音波を入力し受振子までの到達時間からクラックの深さを判定する方法であるが、鉄筋コンクリートのように複合体の場合や、アスファルト鋪装で覆われたコンクリート橋架床版上面部のような複合体の場合には、弾性波の伝搬速度が大きく異なり誤差を生ずる欠点がある。そのため、精度が著しく悪く実用に供されない場合もある。
【0003】AE法は、原理的には受振子側のみの計測機器を用いた超音波法の手法であるが、原理的には新たなクラックの発生が進行中でなければ何も検出されず、既存の内部クラックについては検出できない欠点がある。
【0004】レーダー法は、マイクロ波をアンテナを用いて入射および受信する方法で、地中レーダーとして埋設物探査などに用いられているが、コンクリート中の内部クラックの検出にも適用可能と考えられているが開発途上であり、いまだ実用化されていない。
【0005】また、X線造影撮影法においては、医学の分野で用いられるX線造影撮影法を応用したもので、かなりの精度で微細なクラックを非破壊で時系列上で連続的に計測可能であるが、現在のX線発生装置の出力エネルギーの関係からせいぜい0.3m程度の厚みのコンクリート構造物のクラックの計測に適用可能であるが、1〜2mにおよぶ厚いコンクリートの構造物のクラックの計測は不可能である。X線発生装置は可搬するには大掛かりで現場の実構造に応用する際には困難を伴い、またダムなどのコンクリート擁壁のような構造物の場合には、X線フィルムを設置できないのでこの方法は使えない。さらに、道路橋の桁の床板の裏面のクラックを検査する様な場合には、道路面にX線フィルムを設置する必要があることから、交通規制を敷く必要があり交通渋滞など社会的、経済的影響が大きいなどの問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の超音波法、AE法、レーダー法、X線造影撮影法によるコンクリートクラック非破壊検査装置は、上記のようにその各々の原理により一長一短があり、コンクリート構造物のある現場でクラックの形状を判定するのは非常に困難であるという問題があった。本発明は、コンクリート表面から非破壊でクラックの検査深度が深く、高精度で、作業性に富み廉価な検査法により、クラックの深さを判定する方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、コンクリートクラックの非破壊検査を磁気的に行う方法に係わるもので、コンクリート表面よりクラックに磁性体粉を注入し、さらにコンクリート表面から励磁コイルに流したパルス大電流により瞬間的に磁化し、コンクリート表面に生ずる磁界の大きさや磁界分布を測定することにより非破壊でクラックの深さを判定する事が可能な方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明のコンクリートクラックの磁気的非破壊検査方法の実施例について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例によるコンクリートクラック非破壊検査方法の要部の斜視図である。同図において1はコンクリート構造物、2はコンクリートクラック、3はコンクリートクラックに注入した磁性体粉、4は空心に巻かれたソレノイドコイルであり、5aおよび5bはソレノイドコイル中心軸上の上端および下端の二か所に設置された同一の直径、同一巻数の検出コイルであり差動的に接続されている。検出コイルに誘導されるコンクリートクラックに注入した磁性体粉の磁化による電圧はデジタルオシロ等の計測器により波形を記録する。地表面に立てた法線の方向をZ軸とし、これに直交し、かつ互いに直交する方向をX方向およびY方向と定める。探査すべきコンクリート面上にソレノイドコイルの中心軸が垂直になるように設置し、高電圧発生直流電源からなる充電回路、電気エネルギーを貯えるコンデンサーバンク、および放電スイッチを通しソレノイドコイルに瞬間的大電流を流し、瞬間強磁界を発生させ、それによりコンクリートクラックに注入した磁性体粉を磁化し、それによって生ずるクンクリート表面での磁界分布を測定する。この時、例えば、コンクリートの抵抗率を500Ω・mとし、瞬間磁界の周波数成分が5MHzまでおよぶとすれば、スキンデップスは約5mとなり励磁磁界はコンクリート深くまで減衰することなく浸透する。この瞬間強磁界により磁性体粉は磁化し、その結果誘導磁界を生じ検出コイル5a、5bに鎖交する磁束の差による電圧が誘導される、いわゆる1次微分形の検出コイルである。
【0009】以下、上記の様子を実験結果を交えて少し詳しく説明する。図2は、図1のX−Z面の断面図である。励磁用ソレノイドコイルによって生ずるコイルの外の磁界分布はおおむね、コイル端より発散する磁界分布を形成する。また、二つの検出コイルは同一の直径で巻数も同じであり、これを差動的に接続し、励磁磁界による誘導電圧を打ち消して、これによる電圧は生じることなく、クラック中の磁性体粉の誘導磁界のみによる電圧だけを生ずる。検査すべきクラックにコンクリート表面から磁性体粉を注入する。コンクリート表面に現れているクラックのほぼ中心と、ソレノイドコイルの中心軸をにこのソレノイド形励磁コイルの中心軸をクラックのコンクリート表面上の点に合わせて設置し、励磁磁界を印加するとクラック中の磁性体粉が長手方向に磁化され誘導磁界を生じ、検出コイル5aと5bに鎖交する磁束の差による電圧が誘導される。クラックの長さに比例して検出コイルに誘導される電圧も増加するので、磁性体粉の長さが判定できる。深いクラックすなわち磁性体粉が長い場合には、磁性体の先端まで磁性体を磁化するのには、十分な大きさな励磁磁界を印加する必要があるが、ソレノイドコイルの磁界分布は主として中心軸に平行な成分が多く、従って磁性体粉の長手方向に有効に励磁磁界が印加されることになり、深いクラックの磁性体を磁化するのに適している。さらに検出コイルが差動的に接続されているので、励磁磁界が強くなつても、励磁磁界による電圧は生じず、磁性体の磁化による電圧のみを誘導するので高感度、高精度の計測が可能となる利点がある。
【0010】クラックに注入した磁性体粉の磁化の瞬間的な高速単発現象の測定は、近年のデジタル機器の発達により測定機器が廉価に手に入り、容易に測定ができる状況である。ところで連続的に強磁界を発生するには大容量の電源設備を必要とし多額の費用を用するが、瞬間的強磁界を利用すれば連続的に発生する定常磁界よりはるかに簡便な設備と費用で目的が達成できる。すなわち図3の回路で、まず充電回路のスイッチを閉じてコンデンサーに充電したのち、放電スイッチを閉じると瞬間的大電流がコイルに流れ、瞬間的に強磁界を作り出す。コンデンサーに貯えられた電気エネルギーはコイル内の磁界のエネルギーとなり、一部はコイル、リード線その他回路全体の抵抗Rによるジュール熱となり失われる。例えばC=3000μF、充電電圧1000Vとすれば、蓄積される電気エネルギーは1.5KJであり、抵抗で消費される電気エネルギーを零とし、これがすべて磁気エネルギーに変換されたとすれば、100cmの空間に約6Tの強磁界を生ずることができる。周知のようにコンデンサーに充電し、放電スイッチを閉じ、瞬間的大電流がコイルに流れる様子は過渡現象で、その現象は微分方程式であらわされ、回路のC、L、Rの値により、次の3つの場合に分かれる。

コンクリートクラック深さの磁気的非破壊検査の目的のためには、どの条件でも可能であるが、減衰振動では正極性の電流波形を得るため負極性の電流をスイッチ回路で切断しなければならない。
【0011】次に、コンクリートクラックの深さを判定するため、クラックを単純化し厚さ2mm、幅40mmで各種の深さのスリットをコンクリート中に作り、クラックを模擬して実験を行った。そのクラックはコンクリート中にZ軸からの偏角が30°で延びており、アモルファス磁性体の超微粒子粉を注入している。励磁コイルは直径が4cm、長さ10cmで直径2mmφのフォルマール銅線を1層あたり26ターンを3層巻き、合計78ターン巻いたもので、コイル抵抗R=0.522Ω、インダクタンス L=160μHで、検出コイルの巻数は100ターンである。またコンデンサの容量は4500μF、充電電圧は100Vである。これらの値は過減衰の条件にあたり、瞬間の電流のピーク値は約400Aであり、発生する磁束はコイル中心で、0.72T、コイル端で約0.4Tである。コンクリート表面に現れているクラックのほぼ中心と、このソレノイド形励磁コイルの中心軸をクラックのコンクリート表面上の点に合わせ、上記の装置で瞬間強磁界を印加するとクラック中の磁性体粉が磁化され誘導磁界を生じ、検出コイル5aと5bに鎖交する磁束の差による電圧が誘導される。図4は検出コイルの電圧波形を示したもので、クラックの深さが深いほど、ピーク電圧が大きくなることが了解される。図5はこれらの結果をまとめたもので、横軸にクラックの深さ、縦軸に、検出コイルに誘導される電圧のピーク値を示している。これより、クラックの深さに比例して検出コイルに誘導されるピーク電圧も増加するのでクラックの深さが判定できることが分かる。
【0012】本発明によれば、コンクリートクラックの深さが、圧入した磁性粉の磁化によってコンクリート表面の外部に生ずる磁界の大きさを測定することにより無侵襲で判定する事ができる。また、磁性体粉としてアモルファスの超微粒子粉を使用しこれと液体を混合し磁性流体とすれば、微細なコンクリートクラックにも磁性体粉を注入でる。さらに、液体として、たとえばエポキシ系樹脂を使用しとアモルファスの超微粒子粉と混合してクラックに注入すれば、クラックの深さ測定とエポキシ系樹脂が固化しクラックが密閉され、クラックの補修の作用も期待でき一石二鳥の効果を有する。
【0013】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。第1番目に、コンクリートクラックに注入した磁性体粉をコンクリート表面から瞬間強磁界により磁化しそれによる誘導磁界を差動形検出コイルによって電圧を測定することによって、コンクリートクラックの深さを精度良く判定できる。第2番目に、連続的な定常強磁界を発生させるには、多大の費用を要するが、瞬間的に磁界を発生させれば連続的に発生させるよりはるかに簡便に強磁界を作る事ができる。これにより厚いコンクリート構造物でも十分な大きさの励磁磁界が浸透し磁性粉を磁化し、例えば、1mにもおよぶクラックの深さの計測が可能となる。第3番目に、橋の路盤のように、コンクリートを表面にアスファルトで覆っている場合にも、アスファルトに穴を穿ち、コンクリートクラックに磁性体を注入し、アスファルト表面から瞬間強磁界で励磁することにより、アスファルトの下のクラックの先端の磁性体も十分磁化できるので、アスファルト表面からもクラックの深さの計測ができる。第4番目に、瞬間磁界で励磁しているため、検出コイルに誘導される電圧もパルス波形であり、直流から10MHz程度の高周波までの広帯域の周波数成分をもつので単一の周波数の連続磁界で励磁を行う場合より、より多くの情報を有する。したがってケプストラのような信号解析法の適用が可能でより高精度の深さ判定が可能である。第5番目に、この測定方法による検査装置は、単純で小形、可搬性がありかつ測定が早い等の特徴があり、その結果あらゆる現場のコンクリート構造物のクラックの非破壊検査を低コストで提供する事ができる。第6番目は、磁性体粉として超微粒子粉を使用し、液体として、たとえばエポキシ系樹脂と混合し磁性流体としてクラックに注入すれば、エポキシ系樹脂が固化した後はクラックが密閉され、クラックの補修の作用もあり一石二鳥の効果を有する。
【出願人】 【識別番号】597126103
【氏名又は名称】芳賀 昭
【識別番号】593219894
【氏名又は名称】大塚 浩司
【出願日】 平成11年11月5日(1999.11.5)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−133442(P2001−133442A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−352144