| 【発明の名称】 |
応力振動を抑制する動的陽解法有限要素法 |
| 【発明者】 |
【氏名】蔦森 秀夫
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| 【要約】 |
【課題】動的陽解法有限要素法で得られる応力の計算結果に過度な振動が生じないようにする。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 材料の構成式に、初期の降伏後で再度の降伏前の間、再度の降伏応力よりも小さな降伏応力で降伏する関係を導入した式を用いて行う動的陽解法有限要素法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、動的陽解法有限要素法の改良に関する。 【0002】 【従来の技術】有限要素法の発達、特に、動的陽解法有限要素法の発達が非線形現象の計算を可能にした。動的陽解法有限要素法は主として衝突現象の計算のために発達したが、塑性加工時に生じる現象の計算も可能であり、現在ではプレス成形解析用ソフトの主流になっている。塑性加工現象を計算する場合、計算時間を短縮化するために、計算上の成形速度を実際の成形速度の数十倍程度に上げて計算することが良く行われる。動的陽解法有限要素法で塑性加工現象の計算をする技術の一例が特開平11−191098号公報に記載されている。この技術は、動的陽解法で塑性加工現象を計算する一方、大矢根の理論割れ判定式によって、成形不良の発生を予測する。このとき、計算上の成形速度を実際の成形速度に対して上げすぎると予測精度が低下しすぎてしまう事を報告している。一般に動的陽解法では応力振動が発生することが知られている。成形速度を上げて計算すると応力振動が過大となり、計算精度が落ちる場合がある。動的陽解法で現れる応力振動を抑制する為に、動的陽解法のモデルにシステムダンピングを組み入れる手法が提案されている。しかしながら、ダンピング係数や減衰マトリクスは、解析している物質の形状や物性によって異なる為に、最適なダンピング係数や減衰マトリクスを選定することが難しく、計算精度を落としすぎないで応力振動を適度に抑制することは難しい。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】特開平11−191098号公報に記載されているように、計算上の成形速度を抑えれば、応力振動が抑えられるものの、それでは計算時間が長くなってしまう。さりとて、適度なダンピング係数を選定することも難しい。そこで本発明者は、ダンピング係数を導入することなく、計算上の成形速度を実際の成形速度の数十倍あるいはそれ以上にしても、応力振動の発生を抑制できる動的陽解法有限要素法を開発することにした。 【0004】 【課題を解決するための手段と作用】本発明は、改良された動的陽解法有限要素法に係わり、材料モデル自体にダンピングを入れた。これによって個々の要素ごとの応力に応じたダンピングが可能になる。具体的には、材料の初期の降伏後で再度の降伏前の間、再度の降伏応力よりも小さな降伏応力で降伏する関係を材料の構成式に導入することを特徴とする。 【0005】動的陽解法有限要素法では、時刻tにおける運動方程式の解に基づいて時刻t+Δtでの運動方程式の解を近似的に求めていく。このとき、時間増分ステップごとにひずみ増分を計算し、計算されたひずみ増分に材料の構成式を適用して応力増分を計算する。本発明の改良された動的陽解法有限要素法によると、最初に降伏して加工硬化した材料が再度塑性変形する際に、ひずみ増分から応力増分を計算するのに用いられる材料の構成式がひずみに対して応力が滑らかに変化する構成式となっている為に、計算によって求められる応力が時間に対して過度に振動することを抑制する。 【0006】この改良された動的陽解法有限要素法によると、塑性加工終了時の応力分布が短時間に計算でき、たとえばスプリングバックの計算精度が向上する。 【0007】 【発明の実施の形態】図1は、材料の構成式の算出過程を示す。この算出過程の実行に先立って、材料の単軸の応力-ひずみ関係が測定されている。図2の縦軸は真応力、横軸は弾性ひずみと塑性ひずみの総和を示す。図2の直線1とカーブ2は、材料の単軸の引張り試験をしたときに測定された応力-ひずみ関係を示す。ポイント4は初期降伏に対応する。 【0008】この実施の形態では、ポイント8まで引張られて塑性変形し、ついで圧縮されるときの材料の構成式を図1の算出過程で計算する。図2中、破線で示すカーブ24が等方硬化モデルに基づく従来の構成式を示し、直線部14と18は弾性変形に対応する。ポイント22は従来の構成式における再度の降伏点を示し、このときの降伏応力20は、初期降伏応力6よりも大きく、引張り終了時(ポイント8)での応力12に等しい。再度の降伏応力20(ポイント8での応力12に等しい)と初期降伏応力6との応力差10は加工硬化による。従来の材料の構成式、即ち、直線部1とカーブ2と直線部14と直線部18とカーブ24を用いて、材料を単軸で引張り、ついで圧縮したときに生じる現象を動的陽解法有限要素法で計算した結果を図4に示す。図4で縦軸は真応力、横軸はひずみの絶対値を累積したものである。カーブ41は引張り時の計算結果を示し、ひずみの増大に応じて応力が上昇する。ポイント42は引張りを停止した状態に相当する。直線部43は除荷に伴う弾性変形に相当する。横軸にひずみの絶対値を累積しているので、直線43は右下に下がっている。直線部44は圧縮応力を加え始めた後の弾性変形を示す。ポイント45は最初の引張り工程で降伏して加工硬化した材料が再度降伏するポイントに相当する。カーブ47は材料が圧縮されて塑性変形している間の応力-ひずみの関係を示している。計算結果を図示したカーブ47に現れる振動46が、応力振動をあらわしており、従来の材料の構成式を用いて動的陽解法有限要素法で計算すると、応力振動が発生してしまう。 【0009】この実施の形態では、図2に示した再度の降伏点22での降伏応力20よりも軽応力16で降伏が開始するものとする。ポイント26で降伏したのちは、n乗硬化則、即ち、σ=Kx(εe+εp)nに従ってカーブ28を得る。計算すると、カーブ28はカーブ24よりも急に変化し、ポイント30で交差する。ポイント30で交差したとき以降は、カーブ24を延長したカーブ32を採用する。結局、この実施の形態では、引張・圧縮にさらされる材料の構成式を、直線部1、カーブ2、直線部14、直線部18、カーブ28、カーブ32で構成する。直線部1、カーブ2、直線部14、直線部18、カーブ28、カーブ32で構成された構成式を用いて、材料を単軸で引張り、ついで圧縮したときに生じる現象を動的陽解法有限要素法で計算した結果を図3に示す。図3の縦軸は真応力、横軸はひずみの絶対値を累積したものである。図3と図4を対比すると明らかに、計算される応力は、図3の場合には時間に対して滑らかに変化するのに対し、図4では激しく変化して応力振動47が現れる。図3では応力振動が現れない。 【0010】図1は、直線部1、カーブ2、直線部14、直線部18、カーブ28、カーブ32で構成される構成式を、直線1とカーブ2の測定結果から得る過程を示している。図1の処理は、短時間間隔をおいて繰り返し実行される。ステップS2では、ひずみ増分を計算する。ステップS4では、材料が弾性域にあるものとして応力の増分を計算する。ステップS6では、図2のポイント4に示した初期降伏後か否かを判定する。図2の直線部1を得ている間は、ステップS6でノーとなる。ステップS12ではS4で計算された応力増分から計算される応力から弾性域か塑性域かを判定する。図2の直線部1に対応する部分では、ステップS6がノーで、ステップS12が弾性域となり、測定された弾性係数に基づいて直線部1が計算される(ステップS16)。降伏点4をすぎると、ステップS6はイエスとなるものの、塑性変形しているのでステップS8がノーとなり、ステップS10を実行することなく、ステップS12に進む。ステップS12では塑性域と判別され、ステップS14が実行される。ステップS14では、測定結果を分析することで得られた弾塑性の構成テンソルCepを用いて、カーブ2が計算される。以上の計算の結果、計算される直線部1とカーブ2は、材料の引張り試験で得られものに等しくなる。 【0011】ポイント8で引張り応力が除荷された後、直線部14に沿って弾性変形している間は、ステップS8がイエスとなる。この結果、直線部14、18の構成式が計算される。直線部18の構成式の計算中に、計算される応力が再度の降伏応力20に接近してくる。この実施の形態ではそれ以下の応力16(以下応力を絶対値で考えて大きい小さいをいう)で降伏するものとする。計算上、再度の降伏応力16を加工硬化した材料の降伏応力20のα%(αは60〜80%程度が好ましい)として計算をする。このステップがS10に示される。こうして計算すると、それ以降は、ステップS10によって、n乗硬化則に基づいてカーブ28の硬化曲線が計算される。図1のステップS12の降伏判定では、計算された応力がカーブ24を超えたときに実際に降伏したと判定する。このために、ポイント30以降は、ステップS8がノーとなり、ステップS10は実行されず、ステップS14によってカーブ32が計算される。 【0012】このようにして、直線部1、カーブ2、直線部14、直線部18、カーブ28、カーブ32からなる材料の構成式が計算され、計算された構成式を用いて材料を単軸で引張りついで圧縮したときに生じる現象を動的陽解法有限要素法で計算すると、図3に示すように、応力振動をもたらすことがなく、安定した応力-時間の関係を算出することができる。 【0013】 【発明の効果】この発明によると、材料の構成式に、初期の降伏後で再度の降伏前の間、再度の降伏応力よりも小さな降伏応力で降伏する関係を導入するために、動的陽解法有限要素法で計算される応力と時間の関係が安定し、例えば塑性加工品に残る応力分布を短時間で精度よく計算することが可能となり、塑性加工後のスプリングバック量の計算精度等が向上する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年1月18日(2000.1.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091742 【弁理士】 【氏名又は名称】小玉 秀男 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−201408(P2001−201408A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月27日(2001.7.27) |
| 【出願番号】 |
特願2000−8636(P2000−8636) |
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